Title
評価選別の見るべき方向
Author(s)
大城, 博光
Citation
沖縄県公文書館研究紀要 = OKINAWA PREFECTURAL
ARCHIVES BULLETIN OF STUDY(3): 93-98
Issue Date
2001-03-30
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/8162
評 価 選 別 の 見 るべ き方 向
大 域 博 光†
は じめに 1 評価選別 における疑問 2 評価選別の 目的は リス トラ ? 3 残す経費(保存 コス ト)v
S 棄 てる経費(廃棄 コス ト) 3.1 残す経費の削減 3.2 棄てる経費の削減 3.3補足 「評価選別 にみる公文書館 の役割」 おわ りに は じめに 物事 には、当初の 目的が時代 の経過 において変化 してい くことは よ くみかけ られる。た とえば、 イン ターネッ トが、軍事 目的に開発 されたのが、世の中の情勢の変化 によ り、学術研 究 ネ ッ トワー クとして 発展 し、現在 では、商用化 の波 にの り広 く一般化 されてい る。 この ように、公文書 の記録媒体が紙 か らデジタル媒体 に変換 しつつある近年 において、従来の紙媒体 の評価選別の 目的が、その まま電子記録 の評価選別 に対応す るのであろ うか。 今後、必要性がせ まられる電子記録の評価選別 に対応 してい く 為 に、評価選別の本来の 目的 を先戻 って探 り、そ こか ら評価選別のあるべ き姿 を検証 してい きたい。 1 評価選別 における疑問 「公 文書 は、本来、その全 てを公文書館 において保存す ることが望 ま しい。」 とい う文言 は、評価選 別 に関す る文献で よ く見かける記述である。それは、公文書 は歴史的資料 として万人に とって不要 な資 料 は無い。 と解釈で きる。 また、「評価選別 は不要 な資料 を廃棄す る。」 とい う文 言 もあ る。それは先述 した ことと相反す る もの だ と私 は解釈 している。 この文言 は、存在価値 のない もの を棄 てるべ くして棄 てている と解釈 で きる。 はた して、公文書 に歴 史的資料 として不要 な資料があるのであろ うか0 一般的 に評価選別 は公 文書館法第4条 「公文書館 は歴史資料 として重要 な公文書 を保存 し ・・
」 と あるように、歴史的重要性 な どの尺度で もってお こなっている。仮 に、その尺度 を数値化 し0,I,2,3・-・ 10点で現す と、不要 な資料 を廃棄す る とい うことは、
Oと1以上 を境界線 として評価選別 をお こなってい る とい うことになる。歴史的重要性 とい う客観的 な尺度 を用 い、万人 に とって0点で した と判定す るこ とがで きるのであろ うか。 やは り、不要 な資料 を廃棄 してい るのではな く、 1点以上 の資料 を しかたな く廃棄 しているのだ と考 え られる。 実際、その解釈 どお りだ とすれば、全 て を保存す ることが望 ま しい に もかかわ らず、何故 、評価選別 をし、必要 な資料 を廃棄す る必要があるのだろ うか。 T財団法 人沖縄県 文化振興会公 文書管理部公 文書総務課公文書専 門員また、一般的な評価選別 における論法 と しては次の ようになる。
「
公文書 は、本来、その全てを公文書館 において保存することが望 ましいo
」
1
しか しなが ら
「
年々発生する膨大 な量の公文書のすべてを保存することは不可能であるo
」
J
したが って
はた してそ うであろうか。全 てを保存す る為の検討 をつ くした結果が 「不可能」 なのだろうか。 2 評価選別の 目的 は リス トラ ? 評価選別の 目的 を明確 にす る前 に、まず、評価選別 をお こなうことで為 し得 るメリッ トを考 えてみる。 「リス トラ」効果 年 々加算す る膨大 な公文書 の維持 ・管理 に関わる経費 を、公文書の数量 を減 らす ことによ りその組織 の許容範囲内に経費 を削減で きる。 「吟醸」効果 米の表面 を削 りとって良質の部分 だけ を用 い、最 も質の高い吟醸酒 を作 る製法 と同 じように、歴史的 価値判断で公文書 を振 るいにかけ、精選 された良質の資料 のみ を保存 してい くことがで きる。 「吟醸」効果 において、1万件 の資料群 よ り、精選 された100件 の資料群か ら必要 な資料 を探す方が簡 単 なのは言 うまで もない。 しか し、それは資料 の管理方法の問題 であ って、精選す ることは、良質な史 料 と良質でない資料 の 目録 や保管場所 を分 ければ よい ことである。 したが ってメ リッ トはあって も、必 ず しも振 るいか ら落 ちた資料 を廃棄する理由にはな らない。捨 てた9900件 を欲す る人 もいるはずである。 この ように考 える と、評価選別 によ り資料 を廃棄す るのは、やは り経費削減がその 日的である と思 わ れる。 しか しここで考 えて見 る。評価選別 の後 、公文書 を廃棄する手法が、公文書館 とい う組織 において標 準化 されて きているが、経費削減がその 目的であるな らば、本 当 に リス トラ以外 の手 はないのであろう か。全文書保存の為のあ らゆる方向性 を検討 し、最終的 にだ した結論が、ある レベルに達 しない資料 に 対する 「首切 り」 なのか。 3 残 す経費(保存 コス ト)V
S 棄 てる経費(廃棄 コス ト) 経費削減の為 に、評価選別 を行 っているのであれば、残す経費 と棄 てる経費 を比較検証す る必要があ る。それは、廃棄 した資料 に対 して 「残 す経費1
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棄 てる経費」 の関係 が成 り立 てば、経費削減の為の 評価選別 とい う理論が成 り立 たない。 -【残す経費 -廃棄 した資料(年 間)の保存 コス ト×年数] 残す経費 を試算す る上で最 も困難 なのが年数である。廃棄 した資料 の年 間の保存 コス トを算 出 し、それが棄 てる経費 と-一 致す る年数が川Oになった とす る。 それは「100年 間は赤字 だが101年か らは黒字 になるので、それ までは硯納税者 に負担 を し て もらお う。」 とい うことになる。3-1 残す経費の削減 保存 にかかるコス トとして次の経費が考 え られる。 a.資料の保存設備 と環境維持 にかかる経費 b.記録媒体 の管理 と保全 にかかる経費 現状では、保存 コス トの大部分 を占めるのが、紙文書 の保存場所 の確保 ・維持経費 になると思 われる。 (1)媒体変換費
v
s
廃棄 コス ト しか し、紙か ら別の容積が圧縮 される媒体 に記録 を転写す る とどうだろ う。 た とえばマ イクロフ ィ ルムの場合 は、保存 スペ ースが約1.66%之に圧縮 され、媒体 の複 製 も容易 にで きるこ とか ら紙 よ りも保 全 コス Uは削減で きる。 この容積圧縮率の 「1
.66%」 とい う値 は評価選別 による容積圧縮率(-選別率)4 と比較 して も遜色が ない値 であ る。す なわち次項 で述べ る評価 選別 にかか る経 費 よ り、媒体 変換 費(こ こではマ イクロフィルム撮影費)が安 くすめば、廃棄す る必要 はな くなるはずであ る。 (2)原紙保存の重みV
S
廃棄 される公文書の重み 前述 した媒体変換 によ り保存 コス トの削減が複製 によ りな された として も、原紙 を廃棄す るには問 題 は残 る。 それは、原紙 と比べ その複 製媒体 は、その歴 史的価値 あ るいは物 と しての市場価 格 は劣 る か らであ る。 しか し、複製す るこ とに よ り、何 が失 われ るのだろ うか。
5記述 内容 と同時代 を経過 した 記録媒体が もつその何 か を継承す ることが、公文書館 の役割、責務 なのであろ うか。 その原紙が もつ重み を重視 しなければ、媒体変換 に よ り残す経費の削減が な されれば、公 文書 を廃 棄する必要はな くな り、歴史事実の損失の恐 れ も無 くなるのである。 す なわち、評価選別 によ り公文書 を廃棄す ることを選ぶのか、複製 に よ り全 ての公文書の記述内容 を残 し、原紙 を廃棄す るのかの選択 である。 3-2 棄てる経費の削減 廃棄 にかかるコス トとして次の経費が考 え られる。 ・評価選別作業にかかる経費 ・評価選別要員育成 にかかる経費 評価選別 の手法 は色 々あ るであろ う。 しか し、その 目的が経 費削減であ るの だか ら、長時 間 をかけ16rnTTIマ イクロフ ィルムカー トリッジの容積 を】0cm(縦)×IOcm(横)×2.5cm(巾)とす る。A4を2,500枚 を撮 影 した と して、紙 に換算す る と30cm(舵)×20(横 )×25cm(巾)になる。す なわ ち紙- マ イクロ フ ィルムの圧縮率 は約1/60=1.66%となる。 記録媒体 の劣化防止 や修複 及 び代替物(バ ックア ップ)作成 な ど。 保管文書容量(午) a.選別率(%) -b.選別率(%) -移管文書容量(年) 書庫容量 ×100 - 評価選別実施 後の結果 ×100- 評価 選別実施前 の指針 移管文書容量(午 )×書庫 許容年数 b.の選別率 は、書庫容量や書庫許容年数 か ら、評価選別実施前 の指針 となる値 を算 出す るこ とがで きる。 しか しなが ら、評 価選別 は想定 した選別率 に従 ってお こな う もの で はな く、 あ くまで評価 選別基準 に従 ってお こな う ものであ る。 す なわ ち、 歴 史的 に重要 な年の保管文書量 は平年 よ り保 管文書容量 は増 え、選別率 は大 き くなるはずであ る。 5 記録媒体 を複製す るこ とに よ り、原媒体 のみが持 ち、継承 しなければな らない情報 が失 われ るのであれ ば、電子記録 の場 合 に も注意 しなければいけないO例 えば8イ ンチの フロ ッピーデ ィス クに記録 された情報 を、記憶 容量 や再生環境 及 び耐用 年数 を考慮 し、別媒体へ変換す ることがで きな くな り、移管 され た記録媒体 をその まま保管す るこ とになる。
淡 々とお こな うのではな く、効率的 に作業 をお こない 「残す経費 >棄 てる経費」の関係 を保 てなければ その本来の 目的 を失 う。 公文書 の保存期 間は、図1に示す ように、主管課 において硯用文書 を行政的判断で保存期 間を設定す る。その保存期 間が経過 した非現用文書 を公文書館職員が評価選別基準 によ り最終的な保存/廃棄の判 定す る。 この評価選別基準 による選別 は歴史的重要性 とい う主観的な判断 を複数人で均 一 にや っていかなけれ ばいかない。その為、要員育成やその作業 に相当の時間 と労力が必要になる。 図1文書の保存期 間の判定体系 繰 り返すが、評価 選別 による歴 史事実の損失 を恐れ、大量の人件費 を消費 しているのでは、評価選別 の本来の 目的 を達成で きない。評価選別 をいか に合理的 にお こない、棄 てる経費 を削減す るか、 とい う 意識が重要 なのである。 公 文書館が設立 され、沖縄県 文書編集保存規程(以下保存規程)にあ る文書保存期 間は、主管課での保 存期 間であって、その文書 の生存期 間 を示す ものではな くなった。 例 えば、保存規程 にある 「文書保存期 間を定める基準」 に、公文書館職員が評価選別 に必要 といわれ る資質 をもって歴 史的重要性 を注入 し、主管課(その文書 に最 も詳 しい)がその基準 に従 い、公文書の最 終保存期 間を設定す る体系 を構築で きないだろ うか。そ うすれば、公文書館 に移管 された全ての公文書 に対 し公文書館職員が 目を通 し判断す る必要 はない。 この例 えは、 この手法 の提案 とい うわけでは まった くない。評価選別手法 を検 討す る うえでの方向性 の提示である。評価選別が経費削減が 目的である限 り、合理性 を考慮 した経費削減 になる評価選別手法 を構築 してい くべ きである。
ここまで評価選別の手法 として、本文のキーワー ドとなる経費面だけを強調 して記述 して きた。 ここ で主題 と多少ずれて しまうが、評価選別の手法ではな く基準のあ りかたについて補足する。 3-1補足 「評価選別基準 にみる公文書館の役割」 物事の目的の変化 をは じめにふれたが、公文書館 は、歴史的に重要なものだけを保存 し、歴史的文化 施設 とい う位置づけを確保 していればよいのであろうか。 行政機関において、情報公開が義務づけ られている近年、その責務 は文書が移管 されるとともに公文 書館 にも引 き継がれているはずである。保存期 間が過 ぎた事象 を県民 に問われて、「文書が廃棄 されて いるのでわか りません 。」で許 され るのであろうか
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行政が選別する文書の保存期 間は、県民 に対する説明責任の執行猶予ではないはずである。とすると、 評価選別基準 には、歴史的重要性 だけでな く情報公開制度の本質 となる行政の説明責任 も1指針 として 含 まれて くるはずである。 公文書の保存 システムが確立 される前の散在 している資料 に対 し、「何 を集めるか」 とい う判断には、 歴史的重要性だけを尺度 に判断 して もその 目的は果たせ られるだろう。保存規定 において、当事者であ る主管課が 自ら文書 を廃棄することを禁止 し、第三者すなわち公文書館 に廃棄の判断が委ね られた現在、 「何 を残すか」 とい う判断 (評価選別基準) には、歴史的希少価値 か ら生 まれる 「古 さ」 は意味 をなさ ない。現在、発生 している文書 に対 し、後世の歴 史研究者だけでな く、現在の県民が欲す る資料(問い に応 える資料)を如何 に選別 し、残すか とい う判断 も重要 となる。その結果が後世の歴史 を研究 したい 者にも重要かつ充分 な歴史資料 となるのではないだろうか。 I. 沖縄県では、公 文書館 は総務部文書学事課 、県立図書館 は教育庁生涯学習振興課 、県立 博物館 は教育庁文化課の出先機関 と なっている。体制的には、出先機関は、その本庁主管課 と同様 の業務 目的の位置付 けが されているはずであるあわりに ここまで、「評価選別の 目的は、経費削減である。」 と断言 して きた。すなわち、その組織の許容範囲 で保存がなされれば資料 を廃棄する必要はないのである。 近年では合理化の波 にの り、公文書 自体が紙か ら電子記録 に変わ りつつある。7 電子記録 はその記録容積の圧縮性 は紙 と比較にならず、保存スペースにかかる経費は雲泥の差である。 保全 にかかる経費 も記録量 に比例 して増 えるもので もない