二〇〇六年五月二七日午前六時
直
前〔
イ
ン
ド
ネ
シ
ア
西
部
時
間
〕、
イ
ン
ド
ネ
シ
ア・
ジ
ャ
ワ
島
中
部
の
ジ
ョ
グ
ジ
ャ
カ
ル
タ
特
別
州
を
中
心
に、マグニチュード六・三の地震
が発生した。この地区にある活断
層
の
働
き
に
よ
る
も
の
と
さ
れ
て
い
る。津波による大きな被害を招い
た二〇〇四年一二月のスマトラ島
沖地震がマグニチュード九・一と
いわれているから、それだけ比較
すれば巨大地震とはいえないのか
もしれない。しかし、震源地が内
陸寄りであったため直下型地震と
なり、被害が拡大したといわれて
いる。被害の正確な規模はいまだ
に把握しきれていないが、六〇〇
〇人前後の死者が出たと考えられ
る。
全
半
壊
し
た
家
屋
数
も
報
告
に
よってばらつきがあるが、二〇万
戸以上になるもようである。地震
の規模に比較して被害が拡大した
もうひとつの理由は、単に煉瓦を
積み上げただけの低耐震構造住宅
が多かったためとされている。
現
地
の
人
た
ち
は
、
こ
の
地
震
を
「
ジ
ョ
グ
ジ
ャ
カ
ル
タ
地
震
」
と
呼
ん
で
い
る
。
ジ
ョ
グ
ジ
ャ
カ
ル
タ
特
別
州
は
州
と同
格
の
特
別
行
政
区
域
で
、
州
都
で
あ
る
ジ
ョ
グ
ジ
ャ
カ
ル
タ
市
の
ほ
か
四
つ
の
県
(
ka
bu
pa
te
n)
か
ら
成
る
が
、
今
回
の
地
震
の
被
害
が
最
も
大
き
か
っ
た
の
は
、そ
の
な
か
の
バ
ン
ト
ゥ
ル
(
B
an
tu
l )
県
で
あ
る
。
実
際
、
死
者
の
三
分
の
二
は
こ
の
県
で
生
じ
て
い
る
と
い
う
。
建
物
の
倒
壊
率
は
五
割
か
ら
七
割
で
、
八
割
と
い
う
報
告
も
あ
る
。
●震災被害報告会
筆
者
は
イ
ン
ド
ネ
シ
ア
に
お
け
る
資
料
収
集
お
よ
び
資
料
事
情
調
査
の
一
環
と
し
て
二
〇
一
二
年
一
一
月
当
初
に
ジ
ョ
グ
ジ
ャ
カ
ルタ
を
訪
問
す
る
こ
と
に
な
っ
て
い
た
が
、
こ
れ
に
合
わ
せ
て
当
地
区
図
書
館
の
ジ
ャ
ワ
島
中
部
地
震
に
よ
る被
災
状
況
の
聞
き
取
り
を
計
画
し
た
。
さ
い
わ
い
当
地
区
図
書
館
界
の
重
鎮
で
あ
る
前
ガ
ジ
ャ
マ
ダ
大
学
図
書
館
長
イ
ダ
氏
(
Id
a
F
aja
r P
riy
an
to
)
か
ら
仲
介
の
労
を
いた
だ
き
、
現
地
で
震
災
被
害
の
報
告
会が
開
催
さ
れ
る
こ
と
な
っ
た
。
報
告
会
は
ジ
ョ
グ
ジ
ャ
カ
ル
タ
地
区
司
書
協
会
主
催
に
よ
り
、
一
一
月
一
日
に
開
催
さ
れ
た
。
イ
ダ
氏
は
当
日
ア
メ
リ
カ
出
張
中の
た
め
、
ウ
ェ
ブ
会
議
シ
ス
テ
ムを
利
用
し
て
の
参
加
と
な
っ
た
。
会
議
に
は
、
同
地
区
の
各
種
図
書
館
から
二
〇
名
ほ
ど
が
参
加
し
た
。
報
告
の
詳
細
をこ
こ
に
述
べ
る
こ
と
はで
き
な
い
が
、
被
害
の
概
要
、
復
旧
作
業
の
内
容
と
進
行
、
図
書
館
サ
ー
ビ
ス
の
再
開
と
評
価
に
大
別
で
き
る
。
特
に
印
象
的
で
あ
っ
た
の
は
、
通
信
網
が
大
き
な
被
害
を
受
け
た
た
め
コ
ン
ピ
ュ
ー
タ
シ
ス
テ
ム
の
復
旧
が
遅
れ
、
オ
ン
ラ
イ
ン
で
の
作
業
が
長
期
間
不
可
能
に
な
っ
た
と
い
う
点
で
あ
る
。
オン
ラ
イ
ン
業
務
が
完
全
に
再
開
し
た
の
は
、
地
域
全
体
と
し
て
は
二
〇
一
〇
年
に
入
っ
て
か
ら
と
い
う
。
そ
れ
ま
で
の
期
間
は
、
カ
ー
ド
目
録
を
作
成
し
た
り
し
て
マ
ニ
ュ
ア
ル
業
務
に
頼
ら
ざ
る
を
え
な
か
っ
た
と
い
う
。
報告によると、ジョグジャカル
タ地区内で最大の被害を被ったの
は、専門図書館のインドネシア芸
術研究所図書館と公立図書館のバ
ントゥル図書館である。前者は海
岸に近いため、地震よりも津波の
被
害
が
大
き
か
っ
た
と
い
う。
バ
ン
トゥル図書館は実際に訪問し、復
旧の状況を確認することができた
(写真参照)
。
震災被害報告会の様子。画面はイダ氏(筆者撮影)
特 集
災 害 と 図 書 館
東
川
繁
ジ
ャ
ワ
島
中
部
地
震
―
地
域
社
会
と
図
書
館
―
21
アジ研ワールド・トレンド No.210 (2013. 3)
●地域社会への貢献
報
告
会
に
お
い
て
各
図
書
館
の
被
災・復興状況以上に報告の時間が
割かれたのは、地域住民に対する
図書館の貢献活動であった。その
際、象徴的に繰り返されたのはゴ
ト
ン・
ロ
ヨ
ン(
gotong
royong
)
と
い
う
言
葉
で
あ
る。
「
相
互
扶
助
」
などと訳されるが、ジャワを中心
としたインドネシアの伝統社会の
特質を表す概念のひとつとされて
いる。
地震に限らず大きな災害の発生
後はいわゆるPTSD(心的外傷
後
ス
ト
レ
ス
障
害
)
が
問
題
に
な
る。
インドネシアの人口構造は若年者
の多いピラミッド型だが、それも
あってか、特に子供たちの心のケ
アが重視されたという。その一環
として、ジョグジャカルタ地区の
図書館が中心になり、本の読み聞
かせ会が活発に行われた。報告に
よると、子供たちは熱心に聞き入
り、次回の訪問を楽しみにしてい
たということである。また、図書
館の多くが施設の被害を受けたた
め、従来の来館型サービス中心か
ら
自
動
車
を
利
用
し
た
移
動
図
書
館
(
ブ
ッ
ク
モ
ビ
ー
ル
)
中
心
の
サ
ー
ビ
スに切り替えたところ、住民にも
好評であったという。
図書館員としての本来の業務以
外で地域社会を支える活動も報告
された。一例として、バントゥル
県
ジ
ュ
テ
ィ
ス(
Jetis
)
郡
の
ブ
ル
スクロン(
Bulus
K
ulon
)地区で
は、ガジャマダ大学図書館の職員
が地震発生の翌月に被災地に出か
け、
瓦礫の撤去作業を行っている。
同図書館に勤務する職員の家族が
犠
牲
に
な
っ
た
こ
と
が
き
っ
か
け
で
あ
っ
た
と
い
う。
同
僚
約
三
〇
人
は、
ス
コ
ッ
プ、
バ
ケ
ツ、
く
わ、
担
架、
一輪車など瓦礫収集・運搬用の道
具
類
は
も
ち
ろ
ん
の
こ
と、
テ
ン
ト、
食料、飲料も持参するという「完
全装備」で現地入りした。道路に
山積した瓦礫を数カ所に集めて歩
道を確保し、住民の通行や仮設住
宅用建設資材の運搬を容易にした
という。
●図書館間国際交流の重要性
今回の訪問では、インドネシア
側が図書館災害に関連する外国の
情報や経営ノウハウを強く求めて
いることを感じた。それは、被災
時の援助というよりももっと中長
期的な視点からの国際協力という
べきものである。特に、同じ地震
多発国である日本に対する関心は
高い。報告会でも日本関連の質問
が多く出された。具体的には、東
日本大震災における図書館界の対
応をはじめとして、図書館の耐震
構造・設計、耐震対応書架、備蓄
用品など施設
・
設備に関すること、
データの保存・保守、図書館情報
ネットワークの在り方など多岐に
わたる。図書館間の国際的な協力
体制の構築が望まれるところであ
ろう。
(
ひ
が
し
か
わ
し
げ
る
/
ア
ジ
ア
経
済
研究所
図書館資料企画課)
奥が新築されたバントゥル図書館。手前は日本の援助で建設さ
れた血液センター(筆者撮影)
震災前の姿に復元された旧バントゥル図書館。現在は震災記念
館となっている。右側は血液センターの屋根(筆者撮影)
震災後ガジャマダ大学内に設置された災害対応施設(筆者撮影)
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アジ研ワールド・トレンド No.210 (2013. 3)