成長体験等の分析資料 (I)
【 資 料 】
成長体験等の分析資料(
1
)
水 島 恵 一
Analysis o
f
.
t
h
e
Cases o
f
Growth Experiences
(
1
)
Keiichi Mizushima
This paper is for quantative description of the cases of the“growth experiences" , on which the author has described qualitatively and theoretically in the previous books and articles. Analysis was made on 60 cases of growth experiences in counseling and psycotherapy (counseling cases) and 40 other cases on which the investigation of growth experiences was avilable (investigation cases). Causes or turning points for growth experiences were classified into 7 categories ; encounter to others, self-expression, satisfaction, suffering, illness, training and social practice (Table 1). Contents or effects of experiences were studied by means of the scale as shown in Table 3 for each category of liveliness, release, stabilization, self-establishment, self-acceptance, insight, sensitivization and encounter . (Table 2). Cases of “peak experiences" were studied at last.
1
. は じ め に
筆者は「人間学J
(1977) 以来の諸著作, 特に人間性心理学大系全10巻を通じて,成長 体験,自己超越体験,その他人間性の深層に 示唆を与える体験例を多く紹介し,それに基 づいて理論的考察も進めてきた.特に「人間 学J
,r
人間性心理学大系第 1巻 2章J
(双方 を含んでここでは「前著」と呼ぶ〉では,ピ ーク体験・超越体験を含む成長体験例10例列, その他ユニークな体験10刷所jを基にした研究・ 理論を展開してきたわけで、あるが,そこでは 数ケースの詳しい叙述,その他の限られたケ ースの叙述を行いながら,理論的展開を中心 にしてきたために, 200例の全体像やそれに よる実証的体験科学としての展開は不十分だ ったように思われる.実際これらの体験例は, 一つ一つがそれ自体で現象学的に意味を与え てくれるものであり,通常の統計研究になじ む性質のものではない.しかしそのことをふ まえた上で,全ケースの全体像をできるだけ 数量的に提示していくことは,前著の体験科 学的基礎づけのために必要だと考え,本論の 分析を行うこととした.ただ,前著で十分操 作的概念規定と評定手続きによらなかったも のを,今回事後に操作的にまとめなおした関 係上,前著の概念規定等に若干の補足ないし 修正を必要とした部分もある. --'-139-『人間科学研究』文教大学人間科学部第15号 1993年 水 島 恵 一 なお,大系全10巻においては,既に上記の 20例列以外のケースも多く用いているので, (その後のケースも含んで〉さらに100例を 追加し, 30例列全体について,その概要を紹 介することにしたい. 念のために,それぞれの100例について改 めてその抽出内容を記すと,次のようになる. 1-1 成長体験例(事例 1-100) 最初の100例には,まず軽度神経症・悩み の例30例(臨床相談例)及びカウンセリング や教育に従事する人々やそれを志す学生の例
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(教育分析例)が含まれる(この6
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リを 以下カウンセリング例と呼ぶ).いずれも治 療ないし自己訓練のために筆者とカウンセリ ングの関係をもち,かなりはっきりした回復 ・成長の体験をもち,かつそれを表明し, 記録が一定以上詳しい人々の例である.次 いで,その他の関係で(筆者自身とのカウ ンセリング関係においてではないが)その人 の成長体験をたまたま詳しく開くことができ たもの40例がある(成長調査例と呼ぶ).こ の成長調査例は後述の成長体験の要件にかな う心的過程が認められたものを,筆者がかな り任意に(とくにカウンセリング例を補う多 採な示唆を得るために)選んだものである. 体験者の年齢は, 20歳代が半数以上 (56) であり, 10歳代が若干 (8),30歳 代 も 多 い (25). 40歳代以上はごく小数 (11) である が,特に人生の労苦を積み重ねたのちの境地 を示す資料を提供している.一般の人口に比 べて,学歴の高い人が多く,特に学生を含む 心理学関係者が多いという偏りはもっている が,教育者・宗教人・芸術家・会社員・主婦 なども含まれている.男女別では,訓練カウ ンセリングを受けた人の中に女性の比率が高 くなっているほか,児童相談に訪れた母親の 例が1例列ある. ここで,成長体験については,従来「主観 的にも客観的にも全人格的成長ないし統合を 現す」ものと規定してきたが,体験者の主観 がすべて表明されているわけではないので, ここでは「一段成熟したJ
I
内的充実J
I
人格 統合が認められるjとしづ基準が少なくとも 否定されないことを前提とした.また,I
生 命感J
I
自由な動きJ
I
感受性J
I
自己受容J
「自己開示J
I
落ち着きJ
I
葛 藤 の 解 発J
I
洞 察J
I
体得」のいずれか3項目以上に該当す ることを前提とした.この結果,前著におけ る成長調査例のうち5例が(記録不十分なた め)規定からはずれる可能性があったが,そ れを確認した上で、従来の100例をサンプノレとし てそのまま用いることとした.なお成長調査 例については,内面の表明および「内的充実J
に関連して,かなり筆者なりに個性的な内面 の持ち主を選んだとし、う面が否定できない. さて, 10例苅の体験内容は大まかに次のよ うに分類で、きた.すなわち,①生命力,自由 さ,柔軟さ,②自己受容と自己開示,③現実 認知・感受性である.それに次いで,④感受 性と現実認知の高次の側面,⑤他者との共 同存在の体験(狭義の共同存在),⑥自己超 越の体験,⑦自覚的態度形成,⑧社会・文 化・人類的存在性に関する体験とし、う分類カ テゴリーである.その詳細は後の課題とする が,分類は数理統計的に行われたものでなく 筆者の理論的枠組みによってこのような分類 が可能であることを確認したものである.① ②③が主としてカウンセリング例において体 験表明されたものであり,本第 1報の主題に なるものである. 1-2 その他の体験例(事例 101-200) 次にその他のユニークな体験100例は,I
人 間学J
において体験科学的論述のために成長 体験例に準じて筆者が採用した人々のもので, カウンセリングによっても回復があまり見ら れなかった人々,特にめだった成長体験を持 っていない人々の体験例を含む.その詳細は 第3報にゆずる. (本第 1報の範囲ではとりあ げていない.) 1-3 追加体験例(事例201-300) 「人間学」以後に得られた体験例で、あるが, 通常の生命的成長体験例・カウンセリング体 験例は 1- 1で、既に十分な例数が得られてい るので,原則としてこの追加体験例からは除成長体験等の分析資料 (I) 外してある.ピーク体験・超越体験その他内 容的に必要な補足をなすケースのみ追加して あるが,詳細は第 2報以下にゆずる. (本第 1報では参考として若干触れるにとどめる
J
以上3
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例全体として,客観的にユニーク だと見られる体験例(ピーク体験,超越体験, 深い暗黒や葛藤の体験等を含む)の知見によ って前著「人間学jや「人間性心理学大系」 が構成された面と,文献研究を含んだ筆者の シェマで,その確認のためにケースを選んだ きたという双方の面がある.なお,3
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例 を 通じて主観的体験記述がねらいであるため, 中学生以下の児童は治療ケースを含めて一切 除外,また客観的には改善や成長が認められ ても,内的体験としての表明がないケースは 除外されている.2
.
成 長 体 験
成長体験の概念規定については前述した. ここでは,成長体験1
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例全例(ピーク体験 を含む〉について見ていくことにするが,特 に生命的成長体験(前述の①一③)に焦点を 当てる.⑤⑥の自己超越および自己超越的共 同存在性については第 2報にゆずる.また, ⑧社会・人類的存在性の体験については第3 報にゆずる. 2-1 成長体験の契機・過程 成長体験の契機ないし原因はそもそも特定 しにくいものであるが,あえて「人間学」で 次のように分類記述した.今その分類とそれ に該当するケースをカウンセリング例(臨床 相談例と教育分析例) 60例及び成長調査初U40 例について筆者の評定によって記すとTable1 のようになる.主観的評定ではあるが,契機 の「はっきりしない」と評定されたものを除 いては,体験者がかなり明確に契機を語って いるので,それに基づいて扱って差し支えな いとみなした.ただ(1)の「出会し、J
が推定と してしかとらえられず数値化できないこと, 成長調査例において(4)の苦悩が強く印象づけ られたため,それ以外の契機にまで探求が及 んでいない例もある等の問題はある. Table 1 成長体験の契機 契 機 カウン(セ60例リン)グ例U 成長(4調0例査)例 (1) 他者との出会い ( 推 定 大 多 数 ) (2) 自 己 表 現 顕著なもの 12 同 5 (3) 欲 求 満 足 等 4 11 (4)挫 折 ・ 苦 悩 等 23 9 (5)病気・死に直面 O 6 (6) 努 力 ・ 修 行。
10 (7)社 会 的 実 践。
8 (1) 広義のカウンセリング(集団療法・生活 場面面接・イメージ面接を含む)での出会 いを含み,他者との出会いがなんらかの契 機になったとみられる場合.カウンセリン グ例 (60例〉の全体がカウンセラーとの出 会いを多かれ少なかれ契機にしていたとみ られるが,体験表現としてはあまり語られ ていない.一方集団心理療法(障害児等の 母親グループを含む〉でのメンバー間の交 わり(
l
o
o
U
)
や生活場面での治療的交わり07
例)において,契機として出会いを評 価するものが特に顕在的に認められている. また,イメージ面接例(5
例)においても 治療者との出会いが強調される傾向にある. 成長調査例についてもカウンセリング的交 流が関係している場合は同様のことがし、え る. (2) 自己表現の促進が契機になったとみられ る場合.カウンセリング例では,ほとんど すべて自己表現が契機となっていたとみな されるが,いわゆる治療的表現→解放とし て 表 現 が 顕 著 な カ タ ル シ ス な い し 除 反 応 として効果をもたらしたと見られるケース はカウンセリング例U60例中 12例(成長調査 例5/40
例)である. (成長体験時におい ても寡黙で自己表現が抑制されていたケー スは5/100
例で,特に2
例 に お い て , あ えて沈黙を保つことによって自己確立が得 られたと述べられているJ
(3) 欲求満足,行動による昇華,その他生活 の上で何らかの課題解決がなされたのが契 機になったとみられる場合.カウンセリン 一141-r人 間 科 学 研 究 』文 教 大 学 人 間科 学 部 第15号1993年 水 島 恵 一 グ例 で は4例 の み で,む しろ成 長 調 査 例 に お い て11例.(1)の 出会 い と も重 複 す るが, 人 間 関係 の満 足 が 多 くを 占め てい る よ うで あ る.100例 全 体 で,愛 情 満 足 に 関 す る 例 が6例(家 族 関係,恋 愛 関 係),仕 事 の 上 で の達 成 感 を契 機 に して い る例 が6例.こ の 他,社 会 活 動 な どに お い て成 長 体 験 が み られ て い る. 以上,(1)② ③ とも契機 と して の出会 いや 表 現 と,成 長 体 験 の 結 果 と し て の 出 会 い や 表 現 (解 放 感)が 分 け て 考 え られ な い場 合 の多 い こ とを 記 して お きた い. (4)挫 折,葛 藤,苦 悩 の果 て に成 長 体 験 に至 った とみ られ る も の.カ ヴ ソセ リソ グ例 で は そ の過 程 で23例 が 自己 の よ り深 い本 質 的 な葛 藤や 苦 悩 に 直 面 し,そ れ を経 て統 合 に 向か って い る.と くに 深 層 の 葛藤 は14例. 成 長 調査 例 に お い ては9例 が挫 折 や 苦 悩 を 契 機 と し てい た とみ な され る.な お,こ の 挫 折 と苦 悩 に つ い ては ピー ク体 験 とそ の 他 の成 長 体 験 の場 合 とでは か な り違 い が あ り, それ に つ い ては 本 論 の最 後 で述べ る. ㈲ 病 気 ・死 に直 面 した こ と,そ の 他 異常 な 事 態 の中 で成 長 体 験 を得 た とみ られ る もの. カ ウソ セ リソ グ例 中 には な く,成 長 調査 例 の中 で6例 のみ で あ り,病 気 中,死 の 恐怖 に と ら え られ た が ゆ え に 回復 時 に 生 き る こ とのす ぼ ら し さ を見 出 した とい う例 も含 ま れ てい る.2例 は 死 の受 容 体 験 を 含 ん で い る.(参 考 まで に 追 加100例 の中 で は 死 に 直 面 した 人 の超 越 体 験 の例 が数 例 あ る.) ㈲ 自 ら の意 図 的 努 力や 修 行 の蓄 積 に よ る と み られ る もの.戦 後 の生 活 苦 の中 で の努 力, 理 想 を信 じて の努 力,宗 教 的 修 行 の例 な ど が,他 の契 機 との重 複:を含 め て成 長 調 査 例 に10例 あ る.(追 加100例 中 では 様 々な 精 神 的 修 行 の例 が あ る.) (7)社 会 的 な実 践 に お い て,個 人 的 成 長 が 社 会 的活 動 と不 可 分 に と らえ られ た も の.㈲ と重 な っ て い る もの4例 を含 み そ の 他 社 会 活 動 が 情 熱 と満 足 に 結 び つ い た もの,地 道 な社 会 活 動 に お い て 人 格 的 成 熟 の 認 め られ た もの な ど8例(成 長 調査 例)が あ る. ⑧ そ の他 及 び は っ き りしな い もの.た とえ ば あ る美 しい 光 景 に ふ れ た と きや,音 楽 が 聞 こ え て きた り,本 を 読 んで いた りした と き に体 験 が 訪 れ る こ と も あれ ば 沈 滞 した 生 活 の後 に訪 れ る こ と もあ る.さ らに 日常 茶 飯事 が契 機 に な っ て い て原 因 を 特 定 で き な い もの も多 い.ま た この中 に は,(7)ま で の 契 機 と重複 しな が ら面接 調 査 が 不 十 分 な た め に 特 定 で きな か った もの も当然 に含 ま れ てい る とみ な され,ま た 「人 間学 」 の 時 点 に お い て一 応 分 類 され な が ら,既 に そ の 詳 細 が不 明 に な っ て し ま って い る もの も含 ま れ る の でTable1で 頻 数 を 記 す こ とは 避 け る. 2-2成 長 体 験 の 内 容 ・効果 次 に,成 長 体 験 内容 に つ い ては,.前 著 では 体 験 記 述 の整 理 項 目 と して7項 目を 用 い た が, 本 論 で は そ れ に 準 じな が ら事 後 評 定 しや す い 次 の 各 カ テ ゴ リーに つ い て 別表Table3の 項 目を 設 定 しな お し,各 ケ ース に つ い て体 験 内 容 を 評 定 整 理 した.た だ し これ らの 項 目は 本 来 一 部 の ケ ー.スに つ い て 体 験者 自身 が評 定 す るた め に用 い た も ので あ り,今 回全 ケ ース に つ い て筆 者 が 客 観 化 して 評 定 す るに あ た って は,推 定 を含 み,か つ カ テ ゴ リーに 属 す る項 目全 体 の 意味 関 連 を考 慮 にい れ て い る.し た が って 因子 分 折 な どの操 作 的 手 続 きは 踏 まず, 各 カテ ゴ リーを そ の ま ま用 い,そ れ ぞ れ に つ い て 半 数 以上 の項 目該 当 を も って指 標 と した (gの 感 受性 の み 別 基 準).た だ し体 験 表 明 に 準 処 して い るた め,面 接 不 十 分 な ケ ー ス で は 該 当 評 定 マ イ ナ スに な った傾 向は 否 定 で き ない. Table2は カ ウ ソ セ リソ グ例60例 及 び 成 長 調 査 例40例 中 評 定 該 当 数 を 記 した もの で あ る. a.生 命 感:「 生 き生 き した感 情 」 「充 実 感 」 「積極 性 」 な どの評 定 項 目に よる もの で, カ ウ ソマ リン グ例60例 中20例,特 に ピ ー ク 体 験 に お い て強 調 され て い る..(成 長 調 査 例 では7/40例.)そ の 他 の評 定 項 目を 含 め 具体 的体 験 記 述 としては,「 生 命的 エ ネル
成長体験等の分 析資料(1) Table2成 長 体 験 の 内容 内 容 カウンセ リング例(60例) 成 長 調 査 例(40例) a生 命 感 20 7 b解 放 感 12 5 c安 ら ぎ 46 14 d自 己 受 容 12 5 e自 己 確 立 15 6 f洞 察 23 9 9感 受 性 30 28 h交 わ り 16 8 ギ ー」 「全 心 身 で,カ ー 杯,創 造 的 に 生 き られ る よ うに な った 」 「瞬 間 瞬 間 が充 実 し て い る」乏 い う感 想 を 述 べ て い る例,そ の 他 「人 間 関 係 や 仕 事 に 自発 的 ・積 極 的 に な った 」 「未来 へ の希 望 が 増 した 」 「人 生 が 有 意 義 に 感 じられ る」 な どが あ る.軽 度 の 生 命 感 ま で含 め る と,ほ とん どの例 が該 当す るが,例 外 と して 感 受 性,自 己洞 察,ゴ行 動 の 落 ち 着 きな どが特 に 強 調 され て い る ケ ー ス,お よび 母 親 の ケ ース では こ の生 命 感 は あ ま り強 調 され て い な い.洞 察 や 感 受性 の 明確 な ケ ー スで は,そ の 筋道 や 感 覚 が前 面 に 出 て,生 命 的過 程 が強 調 され に く い の か も しれ な い. b.解 放 感,開 放 性:「 解 放 的 」 「開 放 的 」 「自由 さ」「柔 軟 さ」 「自然 に動 け る」 等 の 評 定 項 目に よる もの で,カ ウソ セ リソグ例 12/60例(成 長 調 査 例5/40例),aの 生 命 感 と厳 密 に区別 す る こ とは 困難 で あ り,生 命 感 と ともに自然 の全体 的再 統 合 の中に お い て 心的解 放 も体験 され た とみ られ る例 が 多い. なお解 放感 は 自己開 示 と関係 が ある.前 著 で 自己 開 示 を 自己 受 容 と同 じカ テ ゴ リー に入 れ て い た こ とを 修 正 し,こ の解 放 感 の カテ ゴ リーに お い て 扱 った方 が ケー ス の事 実 に 即 して い る よ うで あ る.実 例 とし ては 「行 動 や 思 考 が 自由 に な った 」 「過 去 ・未 来 の 事 に こ だ わ らず 現 在 に立 脚 す る よ うに な っ た 」「傷 つ いた り行 き づ ま って も 回 復 が 早 い」 「べ き,ね ば な ら ぬ,で 動 く こ とが な く な り,自 然 に 生 ぎ られ る 」 等 の 感 想 が (一 部 評 定 項 目 を 含 め)こ の カ テ ゴ リ ー に 属 し て い る. c.安 ら ぎ:「 気 持 ち が 安 ら か に な っ た 」 「無 理 が な くな っ た 」 「葛 藤 が な く な っ た 」 「神 経 症 状 の 緩 和 」 な ど の 評 定 項 目 に よ る も の で,全 般 的 に 該 当 率 が 高 い.カ ウ ン セ リ ソ グ 例 で46/60例(成 長 調 査 例 で14/40 例)で あ る が,生 命 感 お よび 深 層 の 洞 察 ・ 解 発 が な く,安 ら ぎ の み が 強 調 さ れ て い る も のは,母 親 の 例 を 除 い て12/60例(成 長 調 査 例 で は3/40例)で あ る. d.自 己 受 容:「 真 の 自 分 自 身 に な って き た 」 「自 分 に 対 し て 正 直 に 動 け る よ うに な った 」 「あ り の ま ま の 自 分 で い ら れ る 」 「非 防 衛 的 態 度 」 な ど の 評 定 項 目 に よ る.こ れ も全 体 的 成 長 とす べ 七 多 か れ 少 な か れ 関 わ っ て い る よ う で あ る が,特 に 自己 受 容 と し て 表 明 さ れ た ケ ー ス は60例 中12例 お よび40例 中 5例.文 字 ど お り 「あ り の ま ま の 自 分 で い られ る(あ る い は そ れ で い い)」 と い う 感 想 は 多 く語 ら れ る と こ ろ で あ る.内 容 的 に は 主 と して 外 傷 体 験,自 分 の 劣 っ て い る 点, 弱 さ 等 を 含 ん だ あ りの ま ま の 姿 の 受 容 の 例 が 多 い.(上 述 した よ う に,自 己 開 示 と 嫁 必 ず し も相 伴 う とは い え な い.)該 当17例 中8例 は,葛 藤 の 特 に 強 か った も の で あ る. 特 に 苦 悩 の 長 い ケ ー ス に お い て は 運 命 受 容 の ニ ュ ア ソ ス が 強 く,こ れ に つ い て は 第3報 に ゆ ず る.(母 親 に お け る 子 の 障 害 受 容,そ の 他 の 外 的 運 命 受 容 は12例 の 中 に 含 ま れ て い な い.) e.自 己 確 立 ・自 己 の 存 在 感:前 著 で は 触 れ て い な い が,「 自 分 が は っ き り し て き た 」 「こ れ が 本 当 に 自 分 な の だ と い う 感 じ 」 「真 の 自 己 を 見 出 し た 」 「自 己 の 位 置 づ け 」 「独 立 」 な ど の 評 定 項 目 に よ る 自 己 確 立 ・ 存 在 の 実 感 の 体 験 が カ ウ ソ セ リ ソ グ 例 で60 例 中15例(成 長 調 査 で は6/40例).多 く が 青 年 期 の ア イ デ ソ テ ィ テ ィ ー に か か わ る 体 験 で あ り,生 命 感 以 下 を 伴 っ て い る 例 も 多 い. f.洞 察:「 自 分 の 気 持 ち が あ る が ま ま に 見 一143一
r人 間 科 学 研 究 』 文 教 大 学 人 間 科 学 部 第15号1993年 水 島 恵 一 え る よ うに な った 」 「ご ま が し や 逃 避 が で き な くな っ た 」 「自 分 の 問 題 や 欠 点 が 見 え て き た 」 と い う よ う な,い わ ゆ る 治 療 的 洞 察 が 表 明 さ れ て い る も の で,カ ウ ソ セ リ ソ グ 例60例 中23例 で あ る.(成 長 調 査 例 で は 9/40例).前 著 で 感 受 性 と と も に 「現 実 認 知 」 と し て 例 示 し た も の を 含 ん で い る が,と く に 「今 ま で 頭 だ け で わ か っ て い た こ と が 体 ご と(あ る い は 心 か ら)わ か っ て き た 」 と い う表 現 は 単 な る 知 的 洞 察 と区 別 さ れ る ゆ え ん の も の で あ る.し か し 生 命 感 を 伴 わ な い 例 や 知 的 洞 察 の ニ ュ ア ソ ス の 強 い も の も,と くに 成 長 調 査 例 に は 多 い. 以 上 単 な る 知 的 洞 察 を 除 け ばa∼fは カ ウ ン セ リ ソ グ 例 に 典 型 的 な よ う で あ り,カ ウ ソ セ リ ソ グ 例 の 方 に 該 当 率 が 高 い.以 上 が ほ ぼ 一 貫 し て 認 め ら れ る も の は ,カ ウ ソセ リソ グ 例 で は 半 数 以 上,成 長 調 査 例 で は,該 当 率 は 低 い.非 該 当 例 は,生 命 感 よ り も落 ち 着 き が 強 調 さ れ て い る例,知 的 な 洞 察 が 強 調 され て い る 例,感 受 性 が 特 に 強 調 され て い る 例 等 で あ る.a∼fの 相 互 関 連 は,各 項 目 に 戻 っ て 吟 味 し て も 明 ら か で,該 当 基 準 に 達 し て い な い カ テ ゴ リ ー に お い て も,数 項 目 の 該 当 を み て い る例 が 多 い. 注)母 親 の例 で は 自分 自身 の生 命 感 や 自己 受 容 な どは あ ま り表 明 され て いな い.カ ウ ソ セ リン グ 例 の うち,母 親 の相 談 ケ ー ス10例 は,す べ て 子 ど もに関 す る悩 み を主 訴 と して お り,解 発 的 成 長 体 験 の持 ち主 が6例,親 子 の 運 命(障 害 の事 実)の 受 容 を体 験 の主 内 容 と して い る.こ れ に 対 して4例 は は っ き りした 表 現 ・解 発 な く自己 洞 察,子 ど も受 容 に 至 って い る.(子 供 理 解 は 次 の感 受 性 に は 含 め て い な い.) g.感 受 性:外 界 ・自 然 ・内 面 ・他 者 の 心 な ど に 関 す る 感 受 性 で あ る が,今 ま で に 述 べ て き た 一 連 の 過 程 と か な り独 立 し た 面 が み ら れ る.カ ウ ン セ リ ン グ 例 の 成 長 体 験 時 に お け る 感 受 性 と し て は,30/60例 が 該 当 し て い る.ま た,成 長 調 査 例 で は そ も そ も 感 受 性 豊 か な 人 の 場 合 と 区 別 し に く い が, 28/40例 で感 受 性 が 認 め られ る. 100例 全体 に つ い て や や 詳 し くみ る と, ま ず 該 当 者 の 多 数 に お い て 内 的 感 受 性 と で もい うべ き も のが み られ(38/100例). 内的 ・外 的 感 受 性 が 相 伴 って い る例 も多 い. さ らに具 体 的 には,他 者 の 心 に 対 す る感 受 性21,自 然 に対 す る感 受 性12,社 会 的 感 受 性12,芸 術的 感受性4,宗 教的 な い し自己超 越 的感 受性14な どが あげ られ る.具 体 的表 現 と しては 「他者 の気持 ちその他 の現 実 が あ り の ままに見 え る よ うにな った」「外 界 ・自然 ・ 芸 術 に対 す る感受 性 が増 した」 「しみ じみ と した感情 を味わ いう生 活 のひ とこまひ とこ ま を味わ え る よ うに な った」 と述 べ られ る よ う な もの で あ り,さ らに 「社 会 の一 員 と して の 感 じ」「社 会 的 矛 盾 を 痛 い ほ ど 感 じ る」 「自分 の 心 の 矛 盾,嫌 ら し さを 感 じ る」 「どろ どろ した 内面 を 大 事 に し た い 」 「そ れ が か え って人 間 ら しい」 等 の感 想 も得 ら れ て い る.他 者 感 受 性 と しては 「み ん な が それ ぞ れに一 生懸 命 に生 き てい る のだ 」 「一 人一 人 がそれ な りに悩 んだ り,求 め た りして い る とい うこ とに あ らた め て気 が つ いた 」 「他 人 の 本 当 の 心 が感 じ られ る よ うに な っ て きた 」「そ の あ りの ま ま の 姿 が 好 きに な れ る」 「そ の喜 び ・そ の 悲 しみ が じか に 伝 わ って くる」 な どの例が めだ つ,内 的 感受 性 と外 的感 受性 は,多 く相 伴 な ってお り,特 に 強 い 内的感 受性 の 高 ま りを示 した者 の約半 数 は 同時 に他 者 の内面 に対 す る感受 性 も示 して い る.(教 育分 析例 では 自己 の内 面 の感 受 性 と同時 に,自 分 が カ ウ ソセ ラーや教 師 とな っ た ときの他者 感 受性 の高 ま りが確認 され て い る.)一 方 他者 に 対す る感 受 性 の み が 強 調 され て い る例 は,自 分 よ り他 者 を 考 え る性 格 の 人,教 師,社 会 活 動 家 な どの例 で あ る (母親 は 除 外). h.交 わ り 二契機 と して の 出会 い ・交 わ りと 厳 密 に 区別 は で きず,ま た状 態 像 と も区別 しに くい が カ ウ ソセ リソ グ例60例 中16例 に お い て,成 長 体 験 の結 果 と して(な い しそ の 内容 と して)他 者 との交 わ りが 深 ま り,
成 長 体 験 等 の分 析 資 料 ・(1) 共 に生 きる喜 び,他 者 へ の肯 定 的 関 心 等 が 特 に 強 調 され て い る.グ ル ー プ カ ウ ソセ リ ソ グ6例 イ メ ー ジ面接2例,生 活 場 面 面 接1例 に お い て は,そ の場 面 の 中 で 出会 い の喜び が語 られ て い る.(成 長 調 査 例 に お い て出会 い ・交わ り体 験 が強調 され てい る例 は 16.)100例 全体 を通 じて教育 分析 後 の クライ エ ソ トや生 徒 との出会 いが強 調 されて い る例 が4,社 会 生 活 に お け る出会 い6(労 働 組 合 の 同 志 的 出 会 い2,学 生運 動1,そ の 他 3),同 じ悩 み を もつ 母 親 同 士 の 出合 い6, そ の 他 グル ー プや 生 活 場 面 面接 の場 合 の 他 メ ソバ ー との 出会 い11,そ の 他 の 人(友 人 な ど)と の 出 会 い5で あ る.こ れ らは主 と して,「 他 者 と心 を分 か ち合 い,交 わ りを 喜 べ る」「か け が え の な い交 わ り」 「新 鮮 な' 出会 い 」 な どの 表 現 で 語 られ る もの で あ り, 第2報 で 述 べ る共 同 存 在体 験 に近 い もの も あ る.な お 評 定 項 目に は な い が,自 然 との 出会 い10例 も付 記 して お きた い. i.そ の他:第2報 以 下 の課 題 とす る 自己 超 越,共 同存 在,高 次 の感 受 性,自 覚 的 態 度 形 成,社 会 的 人類 的 存 在 性 に関 す る内 容 及 び そ の 周辺 領 域 の 内容 が多 く観 察 され て い る.こ の うち運 命 受 容 な どは,前 述 した 自 己 受 容 と深 くかか わ っ てい る よ うで あ り, また 社 会 的 関 心 は 感 受 性 や 出 合 い と関 係 が あ る.ま た 高次 の洞 察 と して 深 層 の 洞 察, 内面 の 暗 部 へ の直 面,社 会 的 洞察 等 も見 逃 せ な い. こ のほ か 上 記 に分 類 し得 なか った 数 々の 内 容 ・効 果 が み られ てい る.・た とえ ぽ 洞察 を 伴 った 落 ち着 き と して,非 行 少 年 の治 療 過 程 や 猛 烈 社 員 の よ うな活 動 に反 省 の 訪 れ た ケ ー ス 5例 が あ るが,非 行 や 猛 烈 突進 型 の 生活 や 我 が ま まな 生 活 に反 省 が 訪 れ た と きに体 験 され る も のは,む しろ しっ と りと落 ち着 い た 自覚 で あ り,他 人 と共 に生 きて い る実 感(人 に迷 惑 をか け た こ とへ の真 の後 悔 ・親 の愛 に 気づ いた 感 謝 等)で あ る.ま た,自 分 だ け の悩 み に陥 っ て い た 人 が,あ る時 隣人 の苦 労 や 社 会 の動 き に 目覚 め る とい った 体験 もあ る.こ れ らはhま で に 述 べ た 内 容 と相伴 って あ らわ れ るこ と も多 い. お そ ら く主 と して どの よ うな面 で 防衛 ・疎 外 され て いた か に よ って 成長 体 験 の ニ ュア ソ ス も違 って くる.評 定 尺 度 が変 化 形 に な って い る の で 以前 との 比較 が 強 調 され る の は 当然 で あ る が,体 験 表 現 か ら して も,た とえ ぽ 固 い枠 組 み に よ って 思考 や 行動 を縛 っ て いた 人 は 「柔 軟 さ」 の強 調 され た成 長 体 験 を もちや す く,依 存 的 で臆 病 だ っ た 人 は 「独 立 」 「自 由」 とい った ニ ュア ンス を強 調 す る傾 向 に な る.社 会 的 人 間 関係 の面 で萎 縮 し てい た 人 の 成 長 体 験 に お い ては,人 間 関 係 や 社 会 的 活 動 性 の回 復 こそ が 強 調 され る面 が 大 きい と考 え られ る 。た だ し逆 に,成 長 調査 例 に お いて は, そ の人 固有 の性 格 が 評 定 に 現 れや す か った面 も否 定 で きな い よ うで あ る. 3.ピ ー ク 体 験 こ こ で 最 後 に い わ ゆ る 「ピ ー ク 体 験 」 に つ い て 一 括 し て 問 題 に し て お き た い.ピ ー ク体 験 に つ い て 今 ま で は,成 長 体 験 が 急 激 に 強 烈 に 訪 れ た も の と し て,さ ま ざ ま に 記 述 し て き た が,こ こ で 改 め て 「衝 撃 的 な 」 「自 分 で も 不 思 議 な 」 「今 ま で の 人 生 に お い て ほ と ん ど 体 験 し な か っ た よ う な 」 「後 々 ま で 実 感 的 に 残 る 」 体 験 で あ り,「 無 条 件 に よ き も の 」,「自 己 の 成 長,解 放 な い し 統 合 と し て 体 験 さ れ る も の 」 と し て と ら え た い. カ ウ ソ セ リ ソ グ 例60例 中 で は ピ ー ク体 験 と み な さ れ る も の は14例 で あ り,成 長 調 査 例40 例 中 で は3例,さ ら に200番 台 で は21例,こ れ ら 合 計38例 中 超 越 的 ピ ー ク 体 験 が13例 含 ま れ て い る. こ こ で は 自 己 超 越 体 験 以 外 の ピ ー ク体 験25 例(生 命 的 ピ ー ク 体 験 と 呼 ぶ)に つ い て 述 べ る が,ま ず 契 機 と し て は,挫 折,葛 藤,苦 悩 の 末 に 訪 れ る 例 が 極 め て 多 い(14/25例). 前 述 した よ うに,通 常 の 成 長 体 験 と の 間 に 違 い が あ る.カ ウ ソ セ リ ソ グ 例 の 中 で は ピ ー ク 体 験 者12例 の うち9例 が ま と も に 内 的 苦 悩 に 直 面 した も の で あ り,そ の 数 日後 な い し2カ 一145一
r人 間 科 学 研 究 』 文 教 大 学 人 間 科 学 部 第15号1993年 水 島 恵一 月 以 内 に ピ ー ク体 験 が 訪 れ て い る.成 長 調 査 例 で も2例 双 方 が 内的 苦 悩 に 直 面 した もの で あ る.(追 加例 の中 では 超 越 的 な もの を 除 い た11例 中6例 に お い て挫 折 ・苦 悩 の前 段 階 が み られ て い る.) ・な お 苦 悩 へ の 直 面 を 含 み カ ウ ンセ リソ グ過 程 で ピ ー ク体 験 が 生 じた もの14例 の うち9例 は セ ッシ ョン 間oあ る時 期 に起 こ ってい るが, 5例 は セ ジシ ョソ中 に 治療 過 程 の中 で期 せ ず して ピ ー ク体 験 が訪 れ た もの で あ る. そ の 他 の 契機 と しては,家 か らの独 立,仕 事 や 芸 道 な ど特 殊 な達 成 ・、適 応 課 題 と結 び つ い て体 験 が 表 明 され て い る もの3例,・ 恋 愛 の 出会 い に よる とみ られ る もの2例(超 越 体 験 で は 宗 教 的 修 業 に よ る とみ られ る もの も あ る.)ま た,契 機 が つか み に くい も の も多 い (8例).上 述 の原 因が あ って も直 接 の き っ か け は よ くわ か らない もの が あ る.苦 悩 か らの 脱 皮 に して もた とえぽ,馳何 か を一 生 懸 命や ゐ てい る とき に体 験 が 訪 れ た 例 もあ れ ば,日 常 のな ん で も ない こ とを 契 機 に訪 れ た 例 もあ る. 本 を 読 ん でい る とき 「あ っ」 とい う自己 洞 察 の体 験 が 訪 れ た 例,ま た 夜 道 を 歩 い て し.・て, 、「靴 の 音 だ け が 冴 えて きて,そ の 時 不 意 に 何 か は っ き り と した 生 命 を 感 じと った 」 とい う よ うな 例 も あ る. 体 験 内容.に関 して は,(超 越 的 体 験 を 除 け ぽ)そ れ は ま さに生 命 性 が全 面 に 出 てい る も の で あ る.す な わ ち,隼 命 感 解 放 感,自 己 受容,自 己 確 立 を 中 心 とす る もの が大 部 分 で, ,それ は上 述 の 「生 命 的 エ ネ ル ギ 「 」 「生 き 生 き した 感 情 」 「自 由 さ」 「柔 軟 さ」 「活 動 性 」 「積 極 性 」 な どの表 現 を 豊 富 に ど もな った も の であ る.そ れ を体 験 した 人 は 何 カミしか 人 生 、と人 間 性 の無 条 件 の肯 定 に い た って い る.身 体 的 な 面 に つ い てい え ば,身 体 の 全 機 能 が 活 発 に な った とみ なせ る もの,長 い 間 続 い て い た 頭 痛 や 食 欲 不 振 が 一 挙 に 治 った もの,ま た 手 足 の 機 能 的 な麻 痺 が 治 って し ま った とい う 例 さ え あ る, 体 験 記 述 の 具 体 的 な ニ ュ ア ンス と して どの よ うな 側 面 が 強 調 され るか は 人 に よ って 違 う が,「 生 命 力 が 急 に 回復 した」 「真 の 自己 に 気 づ い た 」 「急 に光 が さ して きた 」 「大 地 に 根 を 下 ろ した 」 「人 生 の 意義 に ふ れ た 」 等 々 の 言 葉 で表 現 され て い る もの が 目に つ く.ま た, 月 己 受 容 も同 時 に と もな って い る よ うで あ る が,生 命 感,解 放 感 の 影 に 隠 れ て表 明 され て い な い の で は な い か と思 わ れ る ケ ース もあ る. 身体 器 官 の は た ら きを 「生 命 」 と感 じた例 な ど もあ る. 総 じて 具体 的体 験表 現 と して は 「全 心 身 で, カー 杯,創 造 的 に 」 とい う こ とや,「 瞬 間 瞬 間 の充 実 」「人 生 が有 意 義 に 」 と い うこ とは 生 命 的 ピー ク体 験 者 を 特 徴 づ け る も の で あ り, そ の他 の成 長 体 験 者 との間 に差 が あ る.し か し,ピ ー ク体 験 は 一 般 の成 長 体 験 を 文 字 ど お り急 激 に,し た が っ て純 粋 培 養 した よ うな も の で あ り,そ の意 味 では 通 常 の成 長 体 験 の観 察 に よっ ては 不 明確 に しか と ら え られ な か っ た も の を ま さ に 明確 に示 して くれ る も のだ と い っ て よい よ うで あ る.、 以 上,前 著 「人 間 学 」 「人 間 性 心 理 学 大 系 第1巻2章 」 で用 い て きた100例 の 成 長 体 験 例 の 資 料 を,よ り操 作 的 に と らえ な お し,頻 数 な どを み て きた が,前 著 の事例 ・理 論 研 究 では 不 明確 だ った 点 を 若 干 明 らか に し得 た か と思 わ れ る.全 体 として 前 著 の 論 旨に 大 きな 影 響 を 与 え る も の ではな い が,し か し操 作 的 に ど ら えな お し てい く過 程 で 例 え ぽ 「自己 開 示 」 「現 実 認 知 」 な どの 概 念 規 定 や 位 置 づ け を 修 正 した こ と な どが あげ られ る.ま た,こ こで 中 心 的 に 扱 った 「生 命 的 成 長体 験 」 とい う概 念 が,と くに感 受 性 そ の他 落 ち着 きな ど が前 面 に 出 て い る ケ ー スか らみ て 若 干 注 釈 を 必 要 とす る こ と,そ の他 い くつ か の問 題 点 が 指 摘 され る とみ て よい で あ ろ う.
成長体験等の分析資料(1) 別 表 一Table3一 a生 命 感 ① 自分が生 き生 き して きた ② 外界が生 き生 きみ えて きた ③ 喜 びが増 した ④ 充実感が増 した ⑤ 元気 になった ⑥ 物事 に対 して積極的に なった ⑦ 精一杯生 きられ る ようになった ⑧ 生 きがいが感 じられ る ように なった b解 放 感 ・開放性 ① 解 放感がある ② 開 放的になった、 ③ 自由になった ④ 柔軟 になった ⑤ こだわ りが少な くなった ⑥ 過 去のこ とに くよくよしな くなった' ⑦ 新 しい経験 に気軽にのぞめるよ うに なった ⑧ か らだご と自然に動け るようになった c安 ら ぎ ① 気持が安 らかにな った ② 無理がな くな った ③ 楽にな った ④ リラ ックスで きるようになった ⑤ 葛藤がな くな った ⑥ 神経症状が緩和 された ⑦.落 ち着いてい られ るようになった ⑧ 自然体でい.られ るようにな った d自 己 受 容 ① 真の 自分 自身にな って きた感 じ ② あ りの ままの 自分でい られ るようにな った ③ あ りの ままの 自分でいい とい う気持 にな った ④ 自分に対 して正直に動け るようにな った ⑤ 他者に対 して防衛的で な くな った ⑥ 自分 を他者 の前 に率直に 出せ るようにな った ⑦ 人に どう思われ るか とい う嘩 ・・少な くな ・た ⑧ よ り個 性 的 に な っ た e.自 己確 立 ・自 己 の存 在感 ① 自分 が は っ き り して き た ② 自分 の存 在 に 自信 が持 て る よ うに な った ③ 自分 の存 在 感 が あ る ④ 「これ が本 当 の 自分 な の だ とい う気 持 ち. ⑤ 真 の 自弓 を 見 出 した. ⑥ 自分 を 周 囲 の 中 に は っ き り位 置 づ け られ る. ⑦ 自分 の足 で 立 って い る. ⑧ 自分 と他者 が 独 立 に な って き た. f.洞 察 ① 自分 の 気 持 ち が あ るが ま まに 見 え て き た. ② ご まか しや 逃 避 が で きな くな った. ③ 今 まで 自分 に つ い て頭 だ け で 分 か って いた こ とが 体 ご と分 か って きた. ④ あ っ,そ うだ とい う洞 察. ⑤ 今 まで 気 が つ か な か った 自分 が 見 え て きた. ⑥ 自分 の 問 題 や 欠 点 が 見 え て きた. ⑦ 現 実 が あり の ま ま に 見 え る よ うに な った. ⑧ 物 事 を 正 面 か らみ られ る よ うに な った. 9・ 感 、受 性 一1 ① 感 受 性 が 増 した. ② 物 事 を深 く感 じる よ うに な った. ③'外 界 に対 す る感 受 性が 増 した. ④ 情 緒 が 豊 か に な っ た. ⑤ しみ じみ と した 感 情 を味 わ うよ うに な った. ⑥ 普 通 以 上 の 鋭 い感 覚. 感 受 性 一2 ① 自分 の 内面 の ひ だ を深 く感 じる よ うに な った. ② 自分 の 内面 の 矛 盾 や 葛藤 が 見 えて きた. ③ 人 間 の 内面 に 対す る 感 受性 が 増 した. ④ 人 間 とい う もの が み え は じめ て きた. ⑤ 人 の気 持 が生 き生 き と感 じられ る よ うに な?た. ⑥ 他者 の 気持 が あ りの ま まに 見 え る よ うに な った. ⑦ 他者 の 気持 ち に 対 す る感 受性 が 増 した. ⑧ 芸 術 に 対 す る感 受 性 が 増 した. ⑨ 芸 術 が 身 に しみ 入 る よ うに な っ た. ⑩ 分 か らな か った 芸 術 が 分 か る よ うに な った. ⑪ 宗 教 的 な 関 心 が 生 じた. ⑫ 宗 教 的 な 感 受 性 が 深 ま った. ⑬ 自然 に 対 す る感 受 性 が 増 した. ⑭ 自然 の 味 わ い を 楽 しむ よ うに な った. ⑮ 社 会 に 対 す る感 受 性 が 増 した. ⑯ 社 会 的 矛 盾 を 強 く感 じ る よ うに な つた. ⑰ .社 会 的 な 関 心 が 増 した. h?交 わ リ ① 他 者 と深 く交 わ る よ うに な った.・ ② 他 者 を 愛 せ る よ うに な った. ③ 他 者 の 立 場 に 立 って 考 え られ る よ うに な っ た. ④ 他 者 自身 の こ とを 考 え る こ とが 多 くな っ た. ⑤ 他 者 の 考 え を尊 重 で き る よ うに な った. ⑥ 他 者 との よ い 出会 い を もて た. ⑦ 他 者 との 出会 い が心 を豊 か に して くれ た. ⑧ 共 に生 き る喜 び を味 わ った. 一147一