• 検索結果がありません。

都市緑地における地表性甲虫類の群集生態学的研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "都市緑地における地表性甲虫類の群集生態学的研究"

Copied!
140
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

都市緑地における地表性甲虫類の群集生態学的研究

著者

李 哲敏

内容記述

学位授与大学: Osaka Prefecture University(大阪

府立大学), 学位の種類: 博士(農学), 学位記番号

: 論環境第7号, 学位授与年月日: 2009-09-30, 指

導教員: 石井 実.

(2)

大阪府立大学博士(緑地環境科学)学位論文

都市緑地における地表性甲虫類の群集生態学的研究

李 哲 敏

(3)

目次

緒 言

・・・・

1

1章都市緑地における地表性甲虫類の種多様性

・・・・

5

2章河川敷における地表性甲虫類の種多様性

第 3章都市公園における地表性甲虫類の種多様性

• 2

1

• 3

6

総合考察

摘要

謝辞

引用文献

ハU

F h u

-•

i

F 同 U

• 6

3

64

Summary

• 7

9

(4)

緒 昌

都市域の拡大は、人間の生活空間を創成する一方、そこに生息する野生生物

の生息場所を消失あるいは変質させ、地域的な絶滅や減少を引き起こすなどの

負の影響も及ぼす (Gonza1ez

e

t

a

1

.

1998; Nieme1a 1

9

9

9

;

Tscharntke

e

t

a

1

.

2002

など)。その一方で、都市域にあるさまざまなタイプの都市緑地は、都市住

民に潤いのある空間を提供するとともに、野生生物の生息環境としても重要な

役割を担ってきた。

都市緑地では、これまでに鳥類(茂木・柳井, 2005;橋本ら, 2005; Ruben and

I

a

n

2009など)、晴乳類 (Georgeand Crooks,

2006;自・夏原, 2006など)、

両生類(大津ら, 2003; Hamer and McDonne 1

1

2008

など)などの脊椎動物をは

じめ、チョウ類(石井ら, 1991;今井・夏原, 1996;夏原, 2000など)、

トンボ

類(河瀬・夏原, 2007など)、アリ類(頭山・中越, 1994;由井ら, 2001; Pacheco

and Vasconce1os

2007

など)、アザミウマ類(中尾ら, 2001)、バッタ類(養父

, 2001など)、 トピムシ類(富田ら, 2

0

0

0

)

、シデムシ科やコガネムシ科(島

, 1985;島田ら, 1

9

9

1

など)、クワガタムシ類(田中・石井, 2001)、地表性

甲虫類 (Grandchamp

e

t

a1

.

2000; Nieme1aθ

t

a1

.

2002; I

s

h

i

t

a

n

i

e

t

a1

.

2

0

0

3

;

Keller and Largiad

r

,2003; Magura

e

t

a1

.

2

0

0

4

;

K

o

i

vu1a and Vermeu1en

2005 ;谷脇ら, 2005; E1ek and Lovei,

2007; Fuji t

a

e

t

a

1

.

2008;香川ら,

2008など)などの昆虫類を対象として群集生態学的な調査や研究が行われてき

た。これらの調査や研究では、いずれも都心や市街地にある都市緑地の野生生

物の群集では、郊外の森林や農耕地などとは種構成や優占種などが異なること

が指摘されている。例えば、大阪の都市域の緑地では,日甫乳類・~虫類・両生

(5)

類(田中・石井, 2

0

0

1

)

トンボ類(今井, 1994;西川│ら, 2008など)、クモ類

(加村, 2

0

0

8

)

、苔類(道盛, 2

0

0

8

)

などの生物群について、郊外よりも顕著に

種数が少ないことが指摘されている。また、知見が集積しているチョウ類では、

1

9

3

0

年代には 4

8

種で、あった大阪市内の定着種が、都市化が進んだ 1

9

9

0

年代に

は 2

4種にまで減少したとされている(今井, 1

9

9

3

)

。都市域における野生生物

との共存を考えるには、都市化が各グループ。の生物に及ぼす影響の解析が必要

である。

ある場所の野生生物にとっての生息環境を評価するためには、できるだけ多

くの生物群について、その群集構造を調査するべきであるが、そのためには膨

大な時間と労力を要する。そこで、指標生物として適当な生物群を対象として

調査し、環境の評価に利用する方法が一般的である(石谷, 2

0

0

3

)

。地表性甲

虫類は、歩行活動を主体として地表面付近を生活場所とする甲虫類の総称で、

シ デ ム シ 科 Silphidae、 ゴ ミ ム シ ダ マ シ 科 Tenebrionidae、 ハ ネ カ ク シ 科

Staphylinidae

、ハンミョウ科 Cicincelidae、オサムシ科 Carabidae、ホソクピ

ゴミムシ科 Brachinidaeなどが含まれる。地表性甲虫類は、各種の陸上生態系

内において植食者、肉食者、腐食者などの生態的地位を占めるほか、日甫乳類、

鳥類、腿虫類、両生類などの食物にもなる (

H

o

l

l

a

n

d

,2002など)など、地域の

生態系の中で重要な役割を果たしている。オサムシ亜科 Carabinae など一部の

種群では、後麹が退化するなど、移動能力が限られ、地理的隔離による種分化

や変異が認められる(大津ら, 2

0

0

2

)

。また、紙コップなどを用いた簡便なピッ

トフォールトラップ法を用いることで、調査者の採集能力による捕獲成果の差

が小さく、ほぼ定量的な調査を行うことが可能であるなど、指標生物として最

適の条件を備えている(石谷, 2

0

0

3

)

前述の地表性甲虫類のうち、オサムシ科とホソクピゴミムシ科は、種数が多

(6)

く、食性が多様で、分類学的研究や生態学的研究が比較的進んでいることから、

世界的にも研究対象とされてきた。地表性甲虫類は、ヨーロッパから約 2,800

種、北アメリカ(新北区)から約 3

800

種、日本からは 1

2

7

6

種(平嶋ら, 1

9

8

9

)

が記録されている。日本の種数は、イギリスの約 3

5

0

種 (

T

u

r

i

n

,1

9

8

9

)

と比較

するとかなり多いが、日本では石灰岩地帯の洞窟や地下浅層などに分布するチ

ピゴミムシ亜科がかなり大きなウエイトを占めることも lつの理由である(石谷,

2

0

0

3

)

こ れ ら の 甲 虫 類 を 環 境 指 標 と す る 研 究 が ヨ ー ロ ッ パ を 中 心 に 進 め ら れ

(

B

u

t

t

e

r

f

i

e

l

d

e

t

a

1

.

1995; Luff

, 1996; Ferris and Humphrey, 1

9

9

9

など)、

とくに都市化が及ぼす影響を調べるために、都市-近郊の環境傾度に沿った群

集構造の変化の研究が日本、フィンランド、カナダ、ブルガリア、ハンガリー

などで行われてきた (

N

i

e

m

e

l

a

e

t

a

1

.

2002; I

s

h

i

t

a

n

i

e

t

a

1

.

2003; Magura

e

t

a

1

.

2004; Desenderθ

t

a

1

.

2

0

0

5

)

。また、都市化が特定の性格の種に及

ぼす影響 (

M

a

g

u

r

a

e

t

a

1

.

2004; Elek and L

o

v

e

i

2

0

0

7

など)や道路による緑

地の分断が種数・遺伝的多様性に及ぼす影響 (

K

e

l

l

e

rand Largiad

, 2003;

K

o

i

vula and Vermeulen

, 2005)、 植 生 へ の 踏 圧 が 群 集 構 造 に 及 ぼ す 影 響

(

G

r

a

n

d

c

h

a

m

p

e

t

a

1

.

2

0

0

0

)

などが議論されてきた。

日本における地表性甲虫群集の研究は、木元・保田(1990-1994) の北海道

利尻山、大雪山黒岳の研究をはじめとして、都市森林 (

I

s

h

i

t

a

n

i

θ

t

a

1

.

2003 ;

F

u

j

i

t

a

e

t

a

1

.

2

0

0

8

)

、河川敷 (

I

s

h

ii

e

t

a

1

.

1996; I

s

h

i

t

a

n

i

e

t

a

1

.

1

9

9

7

)

水田(巣瀬, 1992; Yahiro

e

t

a

1

.

1992;李ら, 2

0

0

8

)

、耕作畑 (

I

s

h

i

t

a

n

i

e

t

a

1

.

1994; I

s

h

i

t

a

n

i

and Yano

, 1

9

9

4

)

、ブドウ園 (

Y

a

n

o

e

t

a

1

.

1

9

8

9

)

、都市

緑地(石谷, 1

9

9

6

)

、農場 (Yahiroθ

t

a

1

.

1990; Siddiquee

e

t

a

1

.

2005;

香川ら, 2

0

0

8

)

、森林(平松, 2002a,

2002b

2

0

0

4

)

、森林試験地(松本, 2005;

(7)

2

0

0

8

a

)

などで行われてきた。しかし、日本では I

s

h

it

a

n

i

e

t

a

1

.

(

2

0

0

3

)

が広

島市において調査を行い、都市域では種数が少なく、大型種が確認されなかっ

たなどの報告をするなど、一部の研究(石谷、 1

9

9

6;

I

s

h

i

t

a

n

i

e

t

a1

.

2003

Fuj

i

t

a

e

t

a

1

.

, 2008

など)以外は、都市緑地でのまとまった研究はほとんど行

われていない

そこで本研究では、オサムシ科とホソクピゴミムシ科(以下、地表性甲虫)

を研究対象として、南大阪地域の市街地にある都市緑地および市街地近郊にあ

る里山林、水田、河川敷を都市緑地として野外調査を行い、都市化が群集構造

に及ぼす影響を解析した。本研究ではまず、都市緑地における地表性甲虫群集

の概要を把握するために、里山林、水田、河川敷、都市公園などの大型都市緑

地で調査を実施した。次に、連続した自然環境である河川敷の地表性甲虫類群

集の特徴を明らかにするために、大和川の河川敷において調査を行った。また、

市街地に点在する大小の公園の地表性甲虫類群集の特徴を明らかするために、

堺市内外の立地条件の異なる公園で、調査を行った。これらの結果に基づき、都

市緑地に成立する地表性甲虫類の特性および都市化が群集構造に及ぼす影響を

明らかにするための解析を行った。

(8)

1

章都市緑地における地表性甲虫類の種多様性

大阪は日本でも最も都市化の進んだ地域のひとつであり、とくに平野部は古

くから人が住み着き、市街化が進んで人口密度がきわめて高い(金城, 1

9

9

6

)

また、大阪湾岸部は埋め立てが進み、新たに造成された埋立地には、港湾施設

や空港のほか、工業団地、商業施設、流通センター、大規模娯楽施設、発電所、

廃棄物処理場、集合住宅などがあり、人工干潟の野鳥園や緑化公園、植樹帯な

どを除けば、自然環境の乏しい地域になっている。一方で、北側には北摂山地、

東側には金剛・生駒山地、南側には和泉山脈などがあり、明治の森固定公園や

金剛・生駒・紀泉固定公園として、森林を主体とする豊かな自然が保全されて

きた(石井ら, 2001)。また、それらの山地と平地の境にある正陵地域を中心に

里山林や稲作水系を主体とする「広義の里山

J

(石井

200

1)が散在し、いまや

絶滅危

d

倶種となった多くの里山性の野生生物の生息場所となっている。

大阪の平野部を特徴づける自然環境として、淀川や大和川をはじめとする大

小の河川や 1

0

,000ヶ所以上にもおよぶため池がある(柴田, 1

9

9

1

;

石井ら, 2001;

佐久間・稗知, 2

0

0

7

)

。市街地を流れる河川は護岸整備が進み、河川敷は散策路や

運動場などとして利用されているが、水辺にヨシ帯やヤナギ類などの河辺林の

見られるところもある。ため池は、本来、稲作水系の水源として重要な役割を

果たしていたが、里山林などと同様、市街地に造られた都市公園などの都市緑

地の中に取り込まれ、景観要素として残存していることも少なくない。都市公

園などの緑地についても、面積や立地、内部に含まれる自然環境などの点でさ

まざまである。

このように、大阪の市街地の周辺には、広義の里山や河川敷のような連続し

た、あるいは広がりのある緑地、市街地の中に島のように孤立している都市公

(9)

園のような緑地など、さまざまなタイプの緑地が存在するが、移動能力の乏し

い種も含まれる地表性甲虫類の生息環境としいう視点でなされた研究はほとん

どなかった。そこで、本章ではオサムシ科とホソクピゴミムシ科を研究対象と

して、都市緑地に成立する地表性甲虫群集の概要を把握するために、南大阪地

域の里山林や水田、河川敷、都市公園などを含む大型の都市緑地においてピッ

トフォールトラップ法による捕獲調査を実施し、各種の体サイズや分布型など

にも注目しながら、都市化が群集構造に及ぼす影響について解析を行った。

(10)

調査地および方法

調査は、

2005年 4

"

"

'1

2

月に大阪府南部の大和川河川敷(地点1)、

2

ヶ所の大

規模都市公園(地点

2

3

)

、大学キャンパス(地点

4

)

、水田(地点

5

)

、里山林

(地点 6

)

の合計 6地点において、ピットフォールトラップ法により行った (

F

i

g

.

1

-

1)。トラップにはプラスティック製のカップ(口径

7cm

,深さ

1

0

c

m

)

を用い、

誘引物は入れず、雨水を抜くために底に小さな穴を開けた。

トラップは、地点

ごとに異なる環境を数ヶ所選び、それぞれ

5

"

"

'

2

0

個を

5m

間隔で

1

列に、開口部

を地面と同じ高さにして埋設した。

トラップの設置期間は

1

週間とし、各地点

において

3

8

回ずつ行った。地点

1

"

"

'

6

に設置した各回のトラップ数は、それぞ

40

50

40

40

30

40

個で、実際に回収したのべトラップ数は、それぞれ

1392

1

3

7

0

1084

1349

1

0

6

2

1

4

8

8

個で、あった。各地点の概要およびトラッ

プの設置場所は以下のとおりである。

地点

1

(大和川河川敷) :大和川に架かる行基大橋の下流側両岸(左岸:松原

市,右岸:大阪市)の高水敷。トラップは、左岸側のセイタカヨシ

P

h

r

a

g

m

it

e

s

k

a

r

k

a

とヤナギ類

S

a

l

i

x

s

p

p

.

が優占する植生部分に

1

0

個、裸地部分の多いレクリエー

ショングラウンドに

1

0

個、合計

20

個を設置した。右岸側については、

トダシ

A

r

u

n

d

i

n

e

l

l

ah

i

r

t

a

やヤブカラシ

C

a

y

r

a

t

i

a

j

o

n

i

c

a

などの草本が優占する

高水敷に

20

個を設置した。

地点

2

(大仙公園) :堺市の都心付近に位置する約

35ha

の都市公園で

1976

に造成された。仁徳天皇稜と隣接し、内外に小古墳が点在している。

トラップ

は、数本のトウカエデ

Acerb

u

e

r

g

θ

'

r

i

a

n

u

m

並木の樹下のメヒシバ

D

i

g

i

t

a

r

i

a

c

i

l

i

a

r

i

s

などの草本が優占する草地に

1

0

個、モウソウチク

P

h

y

l

l

o

s

t

a

c

h

y

s

p

u

b

e

s

c

e

n

s

林 の 林 床 に

1

0

個 、 ア ラ カ シ

Q

u

e

r

c

u

sg

l

a

u

c

a

、 シ ラ カ シ

Q

.

(11)

m

y

r

s

i

n

a

e

f

o

l

i

a

などの植え込みの林床に

1

0

個、サワグルミ

P

t

e

r

o

c

a

r

y

ar

h

o

i

f

o

l

i

a

などの落葉樹が植栽されセイタカアワダチソウ

S

o

l

i

d

a

g

oa

l

t

i

s

s

i

m

a

が優占する

草地に

1

0

個、ヒラドツツジ

R

h

o

d

o

d

e

n

d

r

o

nh

i

r

a

d

o

a

z

a

r

θ8

とヤマザ、クラ

P

r

u

n

u

s

J

a

m

a

s

a

k

u

r

a

などの落葉樹の植え込みに

1

0

個、合計

50

個を設置した。

地点

3

(大泉緑地):堺市東部と松原市南西部にまたがる約

88ha

の都市公園で

1964

年に造成された。約

200

3

2

万本の樹木が植えられていた。

トラップは、

マサキ

E

u

o

n

y

m

u

sJ

a

p

o

n

i

c

u

s

の植え込み近くの芝生に

1

0

、 トウカエデなどの

落葉樹が植栽されヤブガラシなどの草本が優占する草地に

1

0

個、アラカシ林の

林床に

1

0

個、数本のアキニレ

U

l

m

u

sp

a

r

v

i

f

o

l

i

a

とケヤキ

Z

e

l

k

o

v

as

e

r

r

a

t

a

植栽されエノコログサ

S

e

t

a

r

i

av

i

r

i

d

i

s

などの草本が生えた地表に

1

0

個、合計

40

個を設置した。

地点

4

(大阪府立大学キャンパス) :堺市の市街地に位置し、調査を行った南

東側の部分は

1965

年に造成された約

49ha

のキャンパス内に水田や果樹園、調

整池などもある。

トラップは、シナサワグルミ

P

.

s

t

e

n

o

p

t

e

r

a

などの落葉樹や

アラカシなどの常緑樹の植栽された樹林の林床に

1

0

個、数本のケヤキが植栽さ

れた芝地に

1

0

個、イチョウ

G

i

n

k

g

ob

i

1

0

b

a

などの落葉樹が植栽されたメヒシバ

などのイネ科草本の優占する草地に

1

0

個、ブドウ(灯

t

i

s

s

p

.

)の果樹園に隣

接したイヌタデ

P

e

r

s

i

c

a

r

i

al

o

n

g

i

s

e

t

a

などの優占する草地に

1

0

個、合計

40

を設置した。

地点

5

(水田の畦畔) :堺市南部の富蔵地区の丘陵地にある水田地帯で、

4

'

"

'

-

'

9

月に稲作が行われ、周囲にはアラカシなどを主体とする二次林が散在していた。

トラップは、

4

ヶ所の水田の畦、および水田と二次林の聞の

2

ヶ所にそれぞれ

5

個ずつ、合計

30

個を設置した。

地点

6

(里山林の林縁) :堺市南部の鉢ヶ峯の丘陵地にあるコナラ

ι

s

e

r

r

a

t

a

(12)

とクヌギ

Q

.

acutissimaを主体とし、林床にネザサ Pleioblastuschino v

a

r

.

v

i

r

i

d

i

sのある里山林と水田が隣接した場所で、公園墓地が近くにあった。トラ

ップは、水田の畔に

20

個、里山林の林縁に

20

個、合計

40

個を設置した。

各地点の地表性甲虫類群集の構造を比較するために、種数、捕獲個体数、密

度(10 トラップ当たりの捕獲個体数)、種構成に加え、 Simpson (

19

4

9

)

の多様

度指数 (1-.

.

i

)

、 Shannonand Weaver (

1

9

4

9

)の種多様度指数

(

H

'

)

、Pielou(

1

9

6

9

)

の種均衡度指数 (

J

'

)

、Sφrensen (

19

4

8

)

の類似度指数

(

Q

s

)

による解析を行

った。

1-

.

.

i

H¥f

Qs

は次式により算出した。

1

-

.

.

i

1

-

~

n

i

(

n

i -

1

)

/

N (

N

-

1

)

H'

-

~

((n

i -

1

)

l

o

g

2

(

n

i -

1

)

)

J

'

-

~

((n

i -

1

)

l

o

g

s

(

n

j -

1

)

)

ただし、

n

j

は i番目の種の個体数、 Nは全種の合計個体数を、 5は種数を示す。

Q

s

=

2

c /

(a +

b )

a

b

:

両地点の種数

c

:

その共通種数

また、各地点で捕獲された各種のサイズと分布型別の種数の割合について、

次の基準に基づき解析を行った。サイズについては、上野ら (

1

9

8

5

)

に記載さ

れている平均体長に基づき、小型

(10mm

以下)、中型

(11-20mm)

、大型

(21mm

以上)の 3階級に分類した。分布型については、上野ら(19

8

5

)

、平嶋ら(19

8

9

)

申 ・ 予 (1

9

9

4

)

に記載されている分布情報に基づき、日本のみから記録されて

いる種を「日本固有種」、日本に加えて東南アジア周辺からも記録のある種を「南

方系種J、中国北部あるいは極東ロシア地域からも記録のある種を「北方系種J、

韓国や台湾、中国などから広く記録されているそれ以外の種を「温帯広域種

J

とした。

(13)

結 果

本 章 の 調 査 に よ り 、 オ サ ム シ 科 Carabidae 5

3

種 、 ホ ソ ク ピ ゴ ミ ム シ 科

Brachinidae 2

種、合計 55種 5,1

2

3

個体の地表性甲虫類が捕獲された (Table1

-

1

)

種数を地点別に見ると、堺市南部丘陵の里山林の林縁(地点

6

)

が 47種で最も

多く、以下、同丘陵にある水田地帯の畦畔(地点 5

)

の 38種、大和川河川敷(地

点1)の 34種と続いた。一方、市街地にある都市公園や大学キャンパスでは種

数はやや少なく、最も規模の大きい大泉緑地(地点 3

)

でも 30種、大阪府立大

学キャンパス(地点 4

)

では 29種、最も小さい大仙公園(地点 2

)

では 27種が

確認された。一方、密度(1

0

トラップ当たりの捕獲個体数)については、地点

6 (

1

0

.

3

)

で最も高く、地点 2 (

3

.

9

1)で最も低いという傾向は種数と同じであ

ったが、残りの 4ヶ所については、種数とは異なり、地点 1(

8

.

7

0

)

、地点 3(

7

.

4

4

)

地点 5 (

4

.

3

9

)

、地点 4 (

4

.

2

5

)

の順であった。

全地点の合計捕獲個体数からみた優占種は、オオクロツヤヒラタゴミムシ

S

y

n

u

c

h

u

s

n

i

t

i

d

u

s

(

密度は 0

.

8

5

)

が最上位種であり、以下、セアカヒラタゴミ

ムシ

D

o

l

i

c

h

u

sh

a

l

e

n

s

i

s

(

0

.

5

4

)

、ヒメツヤヒラタゴミムシ

S

.d

u

l

c

i

g

r

a

d

u

s

(

0

.

4

9

)

、オオズケゴモクムシ

H

a

r

p

a

l

u

se

o

u

s

(

0

.

4

3

)

、ウスアカクロゴモクム

シ H

.

s

i

n

i

c

u

s

(

0

.

4

0

)

と続き、これら上位 5種で全捕獲個体数の約 40%を占

めた (Table 1

-

2

)

。このうちセアカヒラタゴミムシ、オオズケゴモクムシ、ウ

スアカクロゴモクムシの 3種は全 6地点から

オオクロツヤヒラタゴミムシは

地点

1

を除く

5

地点から、ヒメツヤヒラタゴミムシは地点

3

4

を除く

4

地点か

ら、それぞれ記録された (Table 1

-

3

)

地点

1

-

-

-

-

-

6

の最優占種はそれぞれ、ケウスゴモクムシ H

.

g

r

i

s

e

u

s

、コガシラナ

ガ ゴ ミ ム シ

P

t

e

r

o

s

t

i

c

u

sm

i

c

r

o

c

e

p

h

a

l

u

s

、 ミ イ デ ラ ゴ ミ ム シ

P

h

e

r

o

s

o

p

h

u

s

(14)

jessoensis

、オオズケゴモクムシ、ウスアカクロゴモクムシ、オオクロツヤヒ

ラタゴミムシとすべて異なっていたが、それらを含む上位

5種のほとんどは全 6

地点のすべて、あるいはいずれか

5地点の共通種で、あった (

T

a

b

l

e 1

-

2

1

-

3

)。

特徴的なのは地点

6で、上位 3種がツヤヒラタゴミムシ

Synuchus属で、占められ、

3位種のマルガタツヤヒラタゴミムシS.

arcuaticollisは、この地点だけで

記録された種(以下

r

ユニーク種J

) で、あった。また、地点 1は上位 5種のう

3種がゴモクムシ

Harpalus属で、あった点で特徴的だが、それらの 3種はすべ

て全

6地点の共通種で、あった。上位 5種の捕獲個体数の占める割合は、地点 2、

5、6では 70%前後、地点 3、4では約 60%と高く、地点 1では約 4割程度と比

較的低かった

(

T

a

b

l

e1

-

2

)。地点 5、6において、記録された種が多かったにも

かかわらず、種多様度と種均衡度が低かったのは

(

T

a

b

l

e 1

-1)、この特定種へ

の捕獲個体数の偏りによるものと考えられる。

本章の調査で記録された種を各地点で、の出現ノミターンにより 6つの類型に分

類した

(

T

a

b

l

e 1

-

3

)。まず、本章の調査においていずれか 1地点のみで見られ

た「ユニーク種」は

1

2種で、全種数の 22%を占めた(類型1)。とくに、地点 6

で、は前述のマルガタツヤヒラタゴミムシのほか同属のコクロツヤヒラタゴミム

Synuchusmelantho、オサムシ亜科 Carabinae のヤコンオサムシ Carabus

yaconlnusやマイマイカブリ Damasterblaptoides

、それ以外にスジアオゴミム

Haplochlaeniuscostiger

、アトボシアオゴミムシ

Chlaeniusna

θ

v

l

g

e

r

、カ

ド ツ ブ ゴ ミ ム シ

Pentagonica angulosa、 オ オ ホ ソ ク ピ ゴ ミ ム シ Brachinus

scotomedesの合計 8種がユニーク種で、里山林周辺の地表性甲虫群集の特異性

を示すと考えられた。地点

1

ではオオゴモクムシ

H

.

capito

、オオマルガタゴミ

ムシ

Amaragigant旬、オオアトボシゴミムシC. micansの 3種、地点 5でもア

(15)

オマルガタゴミムシ以外は l個体が捕獲されたのみで、あった。一方、市街地内

の緑地である地点

2

3

4

では、ユニーク種やそれらのいずれか

2

ヶ所あるい

は 3ヶ所でのみ捕獲された種はなかった。

本章の調査により南大阪の都市緑地に広く分布することが明らかになったツ

ヤヒラタゴミムシ

S

y

n

u

c

h

u

s

属、ゴモクムシ

H

a

r

p

a

l

u

s

属、マルガタゴミムシ

A

m

a

r

a

属、セアカヒラタゴミムシ

D

o

l

i

c

h

u

s

属、ナガゴミムシ

Pt

θ

'

r

o

s

t

i

c

u

s

属、および

それ以外の種について、各地点の種数と密度を

F

i

g

. 1

-

2

に示した。種数につい

ては、地点 lではマルガタゴミムシ属、地点 5ではゴモクムシ属とナガゴミム

シ属、地点

6

ではツヤヒラタゴミムシ属、ゴモクムシ属、ナガゴミムシ属が比

較的多いのが特徴的で、あった。一方、地点

2

、3

、4では、いずれもこの

5属以

外の種が少なく、これが市街地の公園や大学キャンパスで地表性甲虫相が乏し

い要因であると考えられた。密度については、地点 1ではゴモクムシ属、地点 2

ではナガゴミムシ属、地点 5ではセアカヒラタゴミムシ属、地点 6ではツヤヒ

ラタゴミムシ属とマルガタゴミムシ属が比較的高いなど、地点により傾向が異

なっていた。また、地点 3、4、5ではゴモクムシ属の密度が比較的高かった。

地点 lと 3ではこの 5属以外の種の密度が高かったが,これは両地点でナガヒ

ョウタンゴミムシ

S

c

a

r

i

t

e

st

e

r

r

i

c

o

l

a

p

a

c

i

f

i

c

u

s

とミイデラゴミムシの

2

種が

多く捕獲され、それに加えて、地点

1

ではキアシヌレチゴミムシ

A

r

c

h

i

p

a

t

r

o

b

u

s

f

l

a

v

i

p

θs

、地点

3

ではアトワアオゴミムシ C

.

v

i

r

g

l

i

f

e

r

の密度が高かったこと

を反映している.

本章の調査で捕獲された

5

5

種の地表性甲虫類をサイズ別にみると、中型種が

3

2

(

5

8

.

2

%

)

と最も多く、次いで小型種(1

4

25.5%)

、大型種 (

9

1

6

.

4

%

)

の順であった (

T

a

b

l

e 1

-

1)。どの地点でも小型種より中型種が多く、全種に対

する割合は、小型種については

17.6%

(地点1)

'

"

'

-

'

3

0

.

0%

(地点

3

)

、中型種に

(16)

ついては 59.6% (地点 6

) '

"

'

"

'

7

5

.

9%

(地点 5

)

で、あった (

F

i

g

. 1

-

3

a

)

。大型種に

ついては、里山林の林縁(地点 6

)

で 7種 (14.9%)、河川敷(地点1)で 5種(14.7%)

が記録されたのに対して、地点 2と 5では 2種 (

7

.

4

,5.3%)、地点 3と4では

1

種 (

3

.

3

,3.4%) と少なかった。大型種のうちオオゴミムシ Lesticusmagnus

は地点 5以外の 5地点から記録され、地点 1と市街地内の緑地(地点 2,3,

4

)

で、比較的捕獲個体数が多かった (

T

a

b

l

e 1

-

1

)

0

これに対して、他の 8種の大型

種は捕獲個体数が少なく、記録された地点も限られていた。例えば、オサムシ

亜科の種では、ヤコンオサムシとマイマイカブリは地点

6

、オオクロナガオサム

シ Leptocarabuskumagaiiは地点 1 と 6、エゾカタピロオサムシ Campalita

chinenseは地点 lと2のみで、それぞれ捕獲された。

分布型については、温帯広域種が 25種 (45.5%)、北方系種が 2

1

種 (38.2%)

と大きな部分を占め、日本固有種 (

5

, 9.1%) と南方系種 (

4

, 7.3%) は

少 な か っ た (Table 1-1)。 日 本 固 有 種 の う ち 、 オ オ ホ シ ボ シ ゴ ミ ム シ

Aniso

ctylussignatusはすべての地点で記録され、個体数も比較的多かった

が、他の 4種は個体数、確認、地点ともに少なく、ヤコンオサムシとマイマイカ

ブリは地点 6、オオクロナガオサムシは地点 1と 6、ニッコウヒメナガゴミムシ

Pterostichus polygenusは地点 5と6のみで捕獲された (

F

i

g

. 1

-

3

b

)

。南方系

種については、

トゲアトキリゴミムシ A

θ

'

P

hnidiusadelioidesが全地点で確認

され、比較的個体数も多かったが、他の 3種は個体数、確認地点ともに少なく、

スジアオゴミムシは地点 6 クピボソゴミムシ Galeritaorientalisは地点 5と

6

、ニセケゴモクムシ

H

.

ps

θ

udophionoidesは地点 1、5、6でのみ捕獲された。

日本固有種、南方系種ともに地点

6

では全種が確認されたのは注目に値する。

一方、温帯広域種にはヒメツヤヒラタゴミムシ、ケウスゴモクムシ、ミイデラ

ゴミムシなどが含まれ、全種数に対する割合は 47.4% (地点 5

) '

"

'

"

'

6

0

.

0%

(

(17)

点1)と高かった。また、北方系種にはオオクロツヤヒラタゴミムシ、セアカヒ

ラタゴミムシ、オオズケゴモクムシなどの上位種が含まれ、各地点での割合は

3

1

.

9%

(地点

6

) "

'

3

9

.

5%

(地点

5

)

であった。

各地点問の種構成の類似度

(

Q

s

)

0

.

6

6

'

"

'

"

'

0

.

8

5と比較的高かったが、とくに

地点

3と4、地点 2と 3,地点 5と6の間では 0

.

8以上の高い値を示した (

T

a

b

l

e

1

-

4

)。これに対して、地点 1と2、地点 2と6、地点 lと6の間では 0

.

6台の比

較的に低い値であった。共通種は全ての地点が 20種以上で比較的に多かった。

(18)

考 察

本章の調査で南大阪地域の都市緑地からオサムシ科とホソクピゴミムシ科に

属する

5

5

種の地表性甲虫類が記録された。大阪府南部からはこれまでに

1

0

4

の地表性甲虫類が記録されているが(大阪府

2

0

0

0

)

、今回の調査で新たに

2

8

種が確認され、合計

1

3

2

種になった。本章の調査で確認された

5

5

種はその

42%

に相当し、このことは都市緑地が地表性甲虫類の生息場所として重要であるこ

とを示している。一方で、

5

5

種の大半はユーラシア大陸の東縁部に広く分布す

る温帯広域種や北方系種で占められ、日本固有種は 5種とわずかしか残されて

いないことが明らかになった。また、南大阪地域の都市緑地では、中型種が大

半を占め、大型種が少ないこともわかった。

地点別にみると、最優占種が異なるなど種構成は少しずつ違っていたが、上

位種の多くは他の地点と共通で、あった。しかし、里山林の林縁(地点 6

)

ではツ

ヤヒラタゴミムシ属が優占し、オサムシ亜科の種が比較的多く記録され、ユニ

ーク種 (

8種)や日本固有種 (

5種)、南方系種 (

4

種)、大型種 (

7種)の種数

が最も多いなど、とくにユニークな地表性甲虫群集が成立していることが明ら

かになった。河川敷(地点1)の群集についても、マルガタゴミムシ属の種数が

比較的多く、ゴモクムシ属の密度が高いなどの特徴があり、 3種のユニーク種、

2

種の日本固有種、オサムシ亜科を含む 4種の大型種が認められるなど、特徴的

で、あった。水田(地点 5

)

でも 1種のユニーク種と 2種の日本固有種、 3種の南

方系種が確認された。これに対して、都市公園や大学キャンパスで、はユニーク

種は認められず、日本固有種、南方系種、大型種の数も

1

"

'

2

種と少なかった。

さらに、合計種数も

2

7

"

'

3

0

種であり、里山林の林縁や水田、河川敷

(

3

4

"

'

4

7

種)

と比べて少なかった。これらのことは、都市化により緑地が分断し、市街地の

(19)

中に孤立すると特定の性格の種が衰退し、全地点に共通するような「生息場所

ジェネラリスト

(

h

a

b

it

a

t

g

e

n

e

r

a

l

i

s

t

)

J (

N

i

e

m

e

l

a

e

t

a1

.

1

9

9

2

)

を主体とす

る群集構造に変化することを示している。

都市化により表退しやすい種は、里山林や水田、河川敷のみで確認された種

やそれらの環境で特徴的な種から推定できる。里山林の林縁ではユニーク種の

マルガタツヤヒラタゴミムシとコクロツヤヒラタゴミムシをはじめとするツヤ

ヒラタゴミムシ類が優勢で、本章の調査で記録された同属の 5種すべてが認め

られた。このグループ。の種は「森林性種

(

f

o

r

e

s

ts

p

e

c

i

e

s

)

J

とされており(石

1

9

9

6

;

松本,

2

0

0

5

2

0

0

8

a

など)、近畿地方でも樹林地で多く記録されてい

る。例えば、香川ら

(

2

0

0

8

)

は神戸大学の農場に隣接する樹林で調査を行い、

優占種の中にヒメツヤヒラタゴミムシ、マルガタツヤヒラタゴミムシ、クロツ

ヤヒラタゴミムシ、オオクロツヤヒラタゴミムシが含まれていたと報告してい

る。また、保田ら

(

1

9

9

1)は、奈良県信貴山麓の二次林でコクロツヤヒラタゴ

ミムシやクロツヤヒラタゴミムシを記録している。逆に、ツヤヒラタゴミムシ

類は河川敷などの草地では少ない傾向があり

(

I

s

h

ii

θ

t

a

1

.

1

9

9

6

など)、本章

の調査でも地点 1や 5で、は少なかった。市街地にある都市緑地では同属の 3種

が記録されたが、全地点で数多く捕獲されたオオクロツヤヒラタゴミムシ以外

は少数で、あった。オオクロツヤヒラタゴミムシは都市公園の樹林でも生息でき

る「森林性ジェネラリスト

(

f

o

r

e

s

tg

e

n

e

r

a

l

i

s

t

)

J

であるのに対して、地点

6

のみで記録されたマルガタツヤヒラタゴミムシやコクロツヤヒラタゴミムシな

どは都市化とともに表退しやすし汀森林性スペ、ンャリスト

(

f

o

r

e

s

ts

p

e

c

i

a

l

i

s

t

)

J

と考えられる。

本章の調査で里山林の林縁でのみ確認されたスジアオゴミムシ、アトボシア

オゴミムシ、オオホソクピゴミムシの 3種については、各地の樹林内外で記録

(20)

されており (

Y

a

h

i

r

o

e

t

a1

.

1990;

保田ら, 1991;松本, 2

0

0

5

2008aなど)、

やはり森林環境を好む森林性種と考えられる。松本 (

2

0

0

5

)

は東京都多摩市の

コナラ林などでの調査結果から、アトボシアオゴミムシが放置によりネザサが

伸長した林床でとくに多いことを指摘している。里山林の林縁でのみ確認され

た種のうち、オサムシ亜科のヤコンオサムシとマイマイカブリは大型種であり、

日本固有種でもある。オサムシ亜科の種は後麹が退化し、地表性甲虫類の中で

も移動能力が乏しいと考えられている。 F

u

j

it

a

e

t

a

1

.

(

2

0

0

8

) は阪神地域の都

市緑地で調査を行い、オサムシ亜科の種が森林の分断化により表退しやすいこ

とを指摘している。また、 Kellerand Largiad

(

2

0

0

3

)

は、ヨーロッパに広

く分布する大型のオサムシの一種C. v

i

o

1

a

c

e

u

sでは、道路により生息地が分断

化すると遺伝的変異が減少することを明らかにした。本章の調査の結果を含め、

オサムシ亜科の種は都市化による森林の減少や孤立などにより、衰退しやすい

グループと考えられる。

河川敷(地点1)でしか捕獲されなかった種はオオマルガタゴミムシ、オオア

トボシアオゴミムシと大型種のオオゴモクムシであった。これらの 3種は大和

川の河川敷 (

I

s

h

i

i

et a1

.

1996)

のほか、山口市植野川の河川敷 (

I

s

h

it

a

n

i

e

t

a

1

.

1997)

などでも記録されているが、畑地や果樹園など河川敷以外の場所で

も捕獲された例がある (

I

s

h

it

a

n

i

and Yano

, 1994;石谷, 1

9

9

6

)

0

オオアトボ

シゴミムシについては、地点

5

の水田において、過去に圃場基盤整備直後の畦

畔で多く捕獲されたことから(李ら, 2

0

0

8

)

5

齢、撹乱により創出された遷移初

期草地に一時的に出現する種と考えられる。また、本章の調査で

のみでで、捕獲された種はアオグロヒラ夕ゴゴ、ミムシでで、あつた。本種は、過去にも地

点 5の水田畦畔で捕獲されている(李ら, 2

0

0

8

)

ほか、他の地域でも主に水田

で記録され(香川ら, 2008; Yahiro et a1

.

1992)

、水田に隣接する果樹園で

(21)

も確認されている (

Y

a

n

o

e

t

a

l

.

1

9

8

9

)。これらのことから、本種は水田畦畔

のような水辺周辺の草地に生息すると考えることができる。このように、本章

の調査で、河川敷や水田畦畔でのみ記録された種は、特定の草地環境を選好する

「草地性スペシャリスト (open-habitat specialist)J と呼べる性格のもので

あり、そのために市街地の都市緑地では生息できない可能性がある。

以上のように、森林性の種や草原性の種の中には都市化により衰退しやすい

ものがし、ることが明らかになったが、都市化が地表性甲虫類に及ぼす影響を解

明するためには、市街地の都市緑地にも生息する種の性格についても検討する

必要がある。本章の調査では、市街地の都市公園や大学キャンパス(地点 2

3

4

)

でのみ捕獲された種はなかったが (

T

a

b

l

e 1

-

3

)

、全地点で記録された 1

6種

のうちコガシラナガゴミムシ、ニセマルガタゴミムシ A

.

congrua

、オオズケゴ

モクムシ、アカアシマルガタゴモクムシ丘 t

i

n

c

t

u

l

u

s

、アトワアオゴミムシ、

トゲアトキリゴミムシの 6種は市街地の都市緑地(地点 2

3

4

)

の方が他の 3

地点と比べて捕獲個体数が多かった (

T

a

b

l

e 1

-

1

)

0

興味深いことに、これらの

種のうちオオズケゴモクムシとアトワアオゴミムシ(し、ずれも中型種)を除く

4

種は平均体長

10mm

以下の小型種で、あった。このような傾向は、撹乱地では生息

する地表性甲虫類の体サイズが減少するはずだとする「平均体サイズ減少仮説

(decreasing mean body size hypothesis) J (

G

r

a

y

1

9

8

9

)

を支持するものと

いえる。この仮説については、 Sustec(

1

9

8

7

)

や Niemelaet a

l

.

(

2

0

0

2

)、Magura

et al

.

(

2

0

0

4

) などがヨーロッパにおいて、都市域の地表性甲虫類の体サイズ

が郊外のものと比べて小さいことを報告している

o

また、 Grandchamp e

t

al

.

(

2

0

0

0

)

は、フィンランドの都市緑地での調査結果から、踏圧の高い場所では

地表性甲虫類群集の平均体サイズが減少することを示している。

(22)

ゴミムシ、ナガマルガタゴミムシ A

.

macronota ovalipennis、ゴミムシ A

.

signatus

、ホシボシゴミムシ A

.punctatipennis

、オオホシボシゴミムシ、ケウ

スゴモクムシ、ウスアカクロゴモクムシ、クロゴモクムシ

H

.

niigatanus

、ニセ

クロゴモクムシ

H

.

simplicidensの 1

0

種で、すべて中型種であった (

T

a

b

l

e1

-

1

)

これらを含む 1

6

種の全地点共通種の構成は、ゴモクムシ属が 6種と最も多く、

以下ゴミムシ属 3種、マルガタゴミムシ属 2種、それ以外の属 5種であり、森

林性の傾向が強いツヤヒラタゴミムシ属やオサムシ亜科の種は含まれていなか

った。ゴモクムシ類やマルガタゴミムシ類、セアカヒラタゴミムシなどは河川

敷、農地、住宅地、市街地を含む平地的環境に広く分布する(石谷, 1996など)

ことから、市街地の都市緑地でも生息できる地表性甲虫類の多くは「草原性ジ

ェネラリスト (

o

p

e

n

habitatgeneralist)J

といえるかもしれない。

都市化が昆虫類に及ぼす影響については、とくにチョウ類についてよく調べ

られている。例えば、日浦(19

7

3

)

は都市化によりチョウ類の種数が減少する

ことを指摘したうえで、衰退する種の特徴として森林性、定住性、 l化性、野生

木本食性などをあげた。また、石井 (

2

0

0

1)は里山林と都市緑地のチョウ類群

集を比較し、都市緑地では訪花性や移動性の種が多く、

l

化性の種やササを寄主

とする種が少ないこと、東洋区系の種が多く、日華区系のものが少ないことな

どを指摘した。本章の調査により、地表性甲虫類についても、都市化により種

数が減少することが明らかになった。また、都市化により表退しやすいのは森

林性の種、遷移初期草地の種、日本固有種、大型の種などであることが示され

た。逆に、市街地の都市緑地でも生息するのは、草原性の種や小型の種が多か

った。このような傾向は、都市化にともなう森林の減少や分断・孤立、水辺草

地の減少などによるものと考えられる。また、チョウ類と異なり、飛朔能力が

乏しい種を含む地表性甲虫類では、 Kellerand Largiad

(

2

0

0

3

)や Koivula and

(23)

V

e

r

m

e

u

l

e

n

(

2

0

0

5

)

などの指摘するように道路網の発達も衰退要因になって

と思われる

(24)

2

章河川敷における地表性甲虫類の種多様性

河川は山地から河口まで連続し、いくつかの支流を集め、それらの流域にあ

る森林や農耕地、市街地、干潟など、さまざまなタイプの生態系をつないで流

れる。また、河川の堤外地にも、さまざまな環境が含まれ、砂地や泥地、砂磯、

岩磯で覆われた河原もあれば、高茎・低茎の草地やヨシ原、河辺林などの植生

の発達した河川敷もある。したがって、河川はそれ自体が連続した生態系であ

るとともに、流域の生態系ネットワークの軸として、生物多様性の保全に重要

な役割を果たしていると考えられる(外来種影響・対策研究会, 2008など)。ま

た、都市域を流れる大きな河川にあっては、その河川敷は連続した緑地帯とし

て、野生生物に生息場所および移動経路を提供している(今井, 1998; I

s

h

i

i

et

al

.

1996; Wolfert

e

t

al

.

2002; Gerisch et al

.

2006

など)。

その一方で、主な河川で、は洪水対策のための河川改修が進み、市街地の河川

敷は公園やレクリエーション用地として利用されるなど、野生生物にとっての

生息・生育環境は劣化している。また、近年は河川環境への外来生物の侵入が

顕著であり、例えば、国が管理する河川における 1

9

9

1

'

"

'

-

'

1

9

9

9

年の調査を解析し

た宮脇・鷲谷 (

2

0

0

4

)

によると、外来植物の群落面積は河川敷の全植生面積の

約 15%にも達するとしている。このような外来植物の侵入により在来植物が衰

退するなど、河川環境における生物多様性の低下が指摘されている(石川ら,

2

0

0

3

;浦口ら, 2003;高橋ら, 2008;外来種影響・対策研究会, 2008など)。

河川敷環境の評価については、研究事例の多い植物を除くと、地表性甲虫類

が国内外で比較的よく調査・研究対象とされてきた(富樫, 1986; I

s

h

i

t

a

n

i

e

t

a

l

.

1997; VanLooy

e

t

a

l

.

2005; Hiramatsu

2

0

0

7

など)。例えば石谷(19

9

6

)

は、山林、河川敷、果樹園、畑地、住宅地、市街地などのゴミムシ類群集につ

(25)

いて解析を行い、このグループが環境にきめ細かく適応し、撹乱の程度によく

反応するなど、有力な環境指標になりうると述べている。第 l章でも、河川敷

を含む南大阪の都市緑地において地表性甲虫類(オサムシ科、ホソクピゴミム

シ科)の調査を行い、都市化による自然環境の減少や分断がこのグループの種

多様性に及ぼす影響を明らかにした。

大和川は奈良・大阪両府県の人口密集地帯を流れ、大阪・堺両市の境を抜け

て大阪湾に注ぐ

1

級河川である。流域では都市化が進み、河川自体も護岸の改

修や河川敷の高度利用がなされているが、その一方で、金岡

J

I

・生駒山地の山間

部には砂磯河原や森林後背地のような自然環境も残されている(松本・兎元,

2

0

0

6

;佐久間・稗知, 2

0

07)。大和川の河川敷では、 1

9

8

8年と 1

9

8

9年には保田

ら (

1

9

91)や I

s

h

ii et al

.

(

1

9

9

6

)

により、地表性甲虫類(オサムシ科,ホソ

クピゴミムシ科,シデムシ科)の捕獲調査が行われているが、その後はまとま

った調査はなされていない。

そこで本章では、大和川を調査地として河川敷における地表性甲虫群集の特

徴を把握するとともに、種構成の 1

8年前との比較を行うために、保田ら(19

91

)

および I

s

h

i

i et al

.

(

1

9

9

6

)

とほぼ同じ地点においてオサムシ科とホソクピゴ

ミムシ科のピットフォールトラップ法による捕獲調査を実施した。

(26)

調査地および方法

調査は、 2006年 4"'12月に奈良県・大阪府を流れる大和川の中流および下流

の 5ヶ所の河川敷(地点 7

"

'

1

1

)

において、ピットフォールトラップ法により行

った (

F

i

g

. 2

-

1

)

。調査地点は、原則として I

s

h

i

i

e

t

a

l

.

(

1

9

9

6

)

の調査地点と

同じ場所とし、大きな改変があった場合は近隣の場所を選定した。

トラップに

はプラスティック製のカップ(口径 7cm,深さ 1

0

c

m

)を用い、誘引物は入れず、

雨水を抜くために底に小さな穴(直径約

1

m

m

)

6

個開けた。トラップは、各地

点に 5m間隔で、

2

列に設置し、開口部は地面と同じ高さで埋設した。トラップの

設置期間は 1週間とし、各地点において合計 1

7

回ずつ行った。地点 7"'11に設

置した各回のトラップ数はそれぞれ 40、8

0

、2

0

、8

0

、8

0

で、あったが、消失する

ものがあったため、実際に回収したのべトラップ数は、それぞれ 6

0

3

、1

1

7

8

、1

7

9

956

、1

0

9

6

個で、あった。各地点の概要およびトラップの設置場所は以下のとおり

である。

地点 7 (奈良県斑鳩町) :御幸大橋の下流約 300mの右岸高水敷。川幅(両岸

の堤防問;以下同様)は約 130mで、河床には砂地が発達し、堤内地は住宅地と

農地であった。

トラップは、ネズミムギ

L

o

l

i

u

mm

u

l

t

i

f

l

o

r

u

m

やシロツメクサ

T

r

i

f

o

l

i

u

m

r

e

p

e

n

s

などが優占する草地に 2

0

トダシパが優占する草地に 2

0

個、合計 40個設置した。なお、この地点は I

s

h

ii

e

t

a

l

.

(

1

9

9

6

)

の地点 5と同

じ場所である。

地点

8

(奈良県三郷町) :昭和橋の下流側右岸の高水敷。王子市の中心部に近

く、住宅地に隣接していた。川幅は約 150mで、河床は砂地で、あった。トラップ

は、裸地部分の多い子供の運動広場に 2

0

個、セイヨウカラシナ

B

r

a

s

s

i

c

aj

u

n

c

θa

やネズミムギなどが優占する草地に 20個、セイタカヨシとヤエムグラ

G

a

l

i

u

m

Table   1-1  Mean  number  of  individual  ground  beetles  caught  per  10  traps  at  each  of  6  urban  green  areas,  Sites  1-6,  in  southern  Osaka,  central  Japan  from  April  to  December,  2005
Table  1-2  Five dominant ground beetles in decreasing order and their total catches per 10 traps at each of 6 urban green areas, Sites  1-6,  in southern Osaka, central Japan, in 2005
Table  1-3  Classification of ground beetle species recorded in this study  according to combination of sites where the  species were caught
Table 1-4 The quotient of similarity  (Qs ;  figures lower left from the diagonal)  and number of common species (figures upper right) among the ground beetle  assemblages at 6 urban green areas, 8ites 1-6, in southern Osaka, central  Japan
+7

参照

関連したドキュメント

In this paper, the Bayes estimates are obtained under the linear exponential (LINEX) loss, general entropy and squared error loss function using Lindley’s approximation technique

The aim of this paper is to prove the sum rule conjecture of [8] in the case of periodic boundary conditions, and actually a generalization thereof that identifies the

where G denotes the species of (simple) graphs, C , that of connected graphs, and E, the species of Sets (in French: Ensembles ). A connected graph is called 2-connected if it has

Apply 1 to 2 quarts of Crossbow for small weed control or up to 1.5 gallons of Crossbow for deep-rooted perennial and susceptible woody species control us-

Amount of Remuneration, etc. The Company does not pay to Directors who concurrently serve as Executive Officer the remuneration paid to Directors. Therefore, “Number of Persons”

2 次元 FEM 解析モデルを添図 2-1 に示す。なお,2 次元 FEM 解析モデルには,地震 観測時点の建屋の質量状態を反映させる。.

区部台地部の代表地点として練馬区練馬第1観測井における地盤変動の概 念図を図 3-2-2 に、これまでの地盤と地下水位の推移を図

① 農林水産業:各種の農林水産統計から、新潟県と本市(2000 年は合併前のため 10 市町 村)の 168