第 2 章 河川敷における地表性甲虫類の種多様性
また地点 1 0 では、オオクロツヤヒラタゴミムシとマルガタツヤヒラタゴミム シが比較的多く捕獲されるなど、全地点中最高の 40 種が記録され、種多様度も
最高で、あった。ツヤヒラタゴミムシ類のような「森林性種J(石谷, 1 9 9 6 ; 松本,
2 0 0 5 , 2008a など)がこの地点で多いのは、まとまったヤナギ群落が存在するこ
とによるものと考えられる。地点 7 、8 、1 1 は種数や上位種の構成などが比較的
似ていたが、地点 7 では南方系種が比較的多く、地点 8 で、は大型種やユニーク
種が最も多く、地点 1 1 ではミイデラゴミムシとオオナガゴミムシの捕獲数が極
めて多いなどの特徴が認められた。このように大和川河川敷では、生息場所ジ
ェネラリストを主体に水辺の種や森林性の種などからなる、多様な地表性甲虫
群集が成立していることが明らかになった。
大和川河川敷では、 1 9 8 8 年および 1 9 8 9 年に、今回の調査地点を含む 1 3 ヶ所、
6 ヶ所でピットフォールトラップ法による地表性甲虫類(オサムシ科とホソクピ ゴミムシ科)の調査が行われ、それぞれ 4 3 種 、 3 5 種が捕獲されている(保田ら,
1 9 9 1 ; I s h i i e t a 1 . , 1 9 9 6 ) 。また、第 l 章の地点 1 1 において今回と同様の調 査を実施し、 3 4 種を確認した。このほか、安井ら ( 2 0 0 8 ) は大和川水系のミズ ギワゴミムシ亜科 B e m b i d i i n a e の相について、大阪市立自然史博物館などの収 蔵標本と現地での見採り採集 ( 2 0 0 2 ' " " ' ‑ ' 2 0 0 6 年)により調査し、大和川部分の河 川敷から 1 3 種を記録している。今回の調査では 5 3 種の地表性甲虫類が記録さ れたが、この中にはエゾカタピロオサムシ、カワチマルクピゴミムシ、オオア オミズギワゴミムシ、ニセマルガタゴミムシ、キアシマルガタゴミムシ、 トゲ アトキリゴミムシなど、上記の調査では確認されていない 1 7 種が含まれている ( T a b l e 2 ‑ 1)。一方、上記の 1 9 8 8 年・ 1 9 8 9 年の調査で確認され、今回の調査で は確認できなかった種が 1 1 種 、 2 0 0 5 年の調査でのみ確認された種が 1 種、安井 ら ( 2 0 0 8 ) の調査のみで確認された種が 1 2 種あったため、現時点で大和川河川 敷から記録のある地表性甲虫類の総計は 7 7 種となった。
T a b l e 2 ‑ 5 は、今回調査を行った 5 地点(地点 7 ' " " ' ‑ ' 1 1 ) に限って、地表性甲虫 類の種と過去および今回の調査における確認状況をまとめたものである。ただ し、今回の地点 7 、 8 、 1 0 は 1 9 8 8 年 ( I s h ii et a 1 . , 1 9 9 6 ) と 1 9 8 9 年(保田ら,
1 9 9 1 ) の調査と閉じ場所であったが、地点 9 は 1 9 8 8 年の調査地点の約 100m 上 流、地点 1 1 は 1 9 8 8 年の調査地点の対岸で、あったため、それぞれ異なる地点(そ れぞれ地点 9 a , 9 b ,地点 1 1 a , 1 1 b と表記)として扱った。また、地点 1 1 では 第 1 章にも調査が行われているが、両岸を対象としたため「地点 1 1 a b J とした。
これらの地点では、これまでに 6 2 種の地表性甲虫が確認されているが ( T a b l e
2 ‑ 5 ) 、過去 ( 1 9 8 8 年・ 1 9 8 9 年)の調査で確認され、 2 0 0 5 年および今回の調査で
確認できなかった種はマルクピゴミムシ N . c h i n e n s i s 、オオミズギワゴミムシ R q u a d r i i m p r e s s u m . 、メダカチピカワゴミムシ A s a p h i d i o ns e m i l u c i d u m 、ムラ サキオオゴミムシ T r i g o n o g n a t h a c o r e a n a 、チピツヤゴモクムシ T r i c h o t i c h n u s nanus 、キベリアオゴミムシ α l a e n i n u sc i r c u m d u c t u s の 6 種で、あった。これら はいずれも捕獲数の少ない種で、あった。また、前 4 種については地点 9a のみで 捕獲された種であったため、調査地点の変更により今回は確認できなかったと 考えられる。
これに対して、 1 9 8 8 年・ 1 9 8 9 年の調査では記録されず、第 1 章および今回の 調査で確認された種は 2 3 種にのぼり、捕獲数が数個体 ( 1 0 個体未満)の種 ( 1 6 種)を除外しても 7種を数える。そのうち、カワチマルクピゴミムシ、オオア オミズギワゴミムシの 2 種は地点 9b で、オオナガゴミムシとトゲアトキリゴミ ムシの 2 種は地点 l l a b で、それぞれとくに多く捕獲された。一方、マルガタツ ヤヒラタゴミムシとニセマルガタゴミムシの 2 種は地点 1 0 における捕獲個体数 が多かった。
過去の調査と比較して個体数の増減が大きい種も見られた。例えば、ヤコン オサムシとヒラタゴモクムシは、 1 9 8 8 年・ 1 9 8 9 年の調査ではともに 200 個体前 後が捕獲されたが、今回はそれぞれ地点 8と 1 0 で l 個体が確認されたのみであ った。ヤコンオサムシは成虫・幼虫ともに主にフトミミズ類を利用することか ら ( S o t a ,1 9 8 5 ) 、本種の減少には餌動物も含めた河川敷環境の変化を考える必 要がある。ヒラタゴモクムシは他の河川敷でも記録されているが ( H i r a m a t s u , 2 0 0 7 ) 、大和川では特定の地点(地点 1 0 ) で捕獲される傾向が指摘されている(保 田ら, 1 9 9 1)。しかも、同じ地点でも 1 9 8 8 年に確認されず、 1 9 8 9 年には確認さ れるなど ( T a b l e2 ‑ 5 ) 、年次変動も大きい可能性がある。
逆に、 1 9 8 8 年・ 1 9 8 9 年の調査では数個体しか確認されなかったキボシアオゴ
ミムシとミイデラゴミムシは、今回は多数が捕獲された。第 l章の調査では、
両種は南大阪の都市緑地に広く分布し、とくにミイデラゴミムシは捕獲個体数 も多かった。
種構成について過去の調査と比較すると、どの地点でも上位種の入れ替わり が認められた ( T a b l e2 ‑ 2 , 2 ‑ 5 ) 。地点 7 では 1 9 8 8 年・ 1 9 8 9 年の上位種だ、った ヤコンオサムシが確認できなくなり、代わってオオナガゴミムシやミイデラゴ ミムシ、オオクロナガゴミムシが多数捕獲された。一方、セアカヒラタゴミム シは今回も上位種で、あった。
地点 8 では、 1 9 8 8 年・ 1 9 8 9 年に上位種で、あったナガヒョウタンゴミムシやオ オゴミムシなどが今回も優占していた。しかし、過去の調査で上位種だ、ったヤ コンオサムシは、今回は 1 個体が確認されたのみで、あった。一方、過去の調査 では確認できなかったキボシアオゴミムシやニセマルガタゴミムシなどが今回 は多数捕獲された。
地点 9 は 、 1 9 8 8 年の調査地点(地点 9 a ) が高茎草地の優占する環境だ、ったの
ドキュメント内
都市緑地における地表性甲虫類の群集生態学的研究
(ページ 34-37)