Title
光照射による収穫後ウンシュウミカン果実の腐敗軽減と着
色促進に関する研究( 内容と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
山家, 一哲
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 乙第149号
Issue Date
2017-09-22
Type
博士論文
Version
ETD
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/73138
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。[1] 氏 名(本(国)籍) 山家 一哲(三重県) 学 位 の 種 類 博士(農学) 学 位 記 番 号 農博乙第149号 学 位 授 与 年 月 日 平成29年9月22日 学 位 論 文 題 目 光照射による収穫後ウンシュウミカン果実の腐敗軽 減と着色促進に関する研究 審 査 委 員 会 主査 静岡大学 教 授 加 藤 雅 也 副査 静岡大学 准教授 山 脇 和 樹 副査 岐阜大学 教 授 前 澤 重 禮
論 文 の 内 容 の 要 旨
本学位論文は,光照射による収穫後ウンシュウミカン果実の腐敗軽減と着色促進に 関する研究を行ったものである。近年,温暖化の影響によりウンシュウミカン果実の 貯蔵性が低下し,貯蔵中の腐敗が増えるとともに,秋季や収穫前の不安定な気象によ り果実の着色遅れが懸念されている。本研究では,青色LED 光や UV 等の光照射技 術を活用することによる収穫後のウンシュウミカン果実の腐敗(貯蔵病害)の軽減を 主目的とし,赤色LED 光による着色促進や機能性成分増加についても検討を行っ た。 収穫後ウンシュウミカンに青色LED 光(ピーク波長 465 nm)を照射し,青かび 病抑制効果について検証した。その結果,低照度(8 μmol·m-2·s-1)の光照射でも 無照射の場合と比較し,胞子形成部の拡大が48%抑制されたことから,高照度(80 μmol·m-2·s-1)だけでなく低照度の青色LED 光照射も果実腐敗抑制に有効である可 能性が示唆された。次に,栽培期間中の既存技術(浮皮軽減のためのジベレリンとプ ロヒドロジャスモン混用散布,以下GP 剤)と青色 LED 光照射技術の組み合わせに よる腐敗軽減と品質保持効果をカンキツ低温貯蔵庫において約3 か月間調査した。青 色LED 光照射により試験開始 63~92 日目の累積腐敗果率が,低く推移することが 明らかとなったが,GP 散布のみでは,累積腐敗果率に対する抑制効果が認められな かった。 UV-B(280 nm~320 nm)照射による果実の青かび病斑抑制効果と腐敗抑制効 果,UV-B 照射による抵抗性物質の生成における検証では,UV-B 照射により青かび 病,緑かび病を中心とした腐敗が抑制されることが明らかとなり,UV-B 照射 20 日 後の果皮にスコパロンが47 μg∙g-1 F.W.生成されていることを確認した。このことか ら,出荷前のウンシュウミカンにUV-B 照射を行った場合,その後の流通過程におけ る果実腐敗を抑制できる可能性が示された。赤色LED 光(ピーク波長 660 nm)による着色改善の可能性を探るため,コスト 面から普及性が高いと考えられる低照度の赤色LED 光照射が果皮の着色と果実品質 に及ぼす影響を調査した。早期収穫,通常収穫果実ともに,低照度(12 μmol·m-2· s-1)の赤色LED 光照射でも,糖度やクエン酸含量等に影響を与えることなく,ウン シュウミカンの着色を改善することが明らかとなるとともに,収穫期に関わらず,赤 色LED 光照射により果皮のβ‐クリプトキサンチンを増加させることが示された。 以上の研究から,青色LED 光照射がウンシュウミカンの貯蔵病害抑制に有効な技 術であり,長期貯蔵にも活用できること,UV-B 照射により同果実の果皮に抵抗性物 質であるスコパロンが生成され,流通時の腐敗を抑制する可能性が示されたこと,低 照度の赤色LED 光照射により同果実の着色を促進し,果皮のβ-クリプトキサンチ ンも増加させることが結論づけられた。
審 査 結 果 の 要 旨
本論文の公開学位論文発表会は,審査委員,教員,学生の出席のもと,平成29年 8月22日(火)午後1時より静岡大学農学総合棟225号室において実施された。 本論文は,光照射による収穫後ウンシュウミカン果実の腐敗軽減と着色促進に関す る研究を行ったものである。近年,温暖化の影響によりウンシュウミカン果実の貯蔵 性が低下し,貯蔵中の腐敗が増えるとともに,秋季や収穫前の不安定な気象により果 実の着色遅れが懸念されている。本研究では,青色LED 光や UV 等の光照射技術を 活用することによる収穫後のウンシュウミカン果実の腐敗(貯蔵病害)の軽減を主目 的とし,赤色LED 光による着色促進や機能性成分増加についても検討を行った。 本論文の研究内容は,大きく4部により構成される。まず,青色LED 光(ピーク波 長465 nm)による収穫後ウンシュウミカンの青かび病抑制効果について検証した。 その結果,低照度(8 μmol·m-2·s-1)の青色LED 光照射でも無照射の場合と比較し, 胞子形成部の拡大が48%抑制されたことから,高照度(80 μmol·m-2·s-1)だけでな く低照度の青色LED 光照射も果実腐敗抑制に有効である可能性が示唆された。 次に,栽培期間中の既存技術(浮皮軽減のためのジベレリンとプロヒドロジャスモ ン混用散布,以下GP 剤)と青色 LED 光照射技術の組み合わせによる腐敗軽減と品質 保持効果を実際のカンキツ低温貯蔵庫において約 3 か月間調査した。青色 LED 光照 射により試験開始 63~92 日目の累積腐敗果率が,低く推移することが明らかとなっ たが,GP 散布のみでは,累積腐敗果率に対する抑制効果が認められなかった。GP 散 布と収穫後青色 LED 光照射の両方を行った果実は,収穫後の滴定酸含量が高い傾向 にあった。 UV-B(280 nm~320 nm)照射による果実の青かび病斑抑制効果と腐敗抑制効果, UV-B 照射による抵抗性物質の生成における検証では,UV-B 照射により青かび病,緑 かび病を中心とした腐敗が抑制されることが明らかとなり,UV-B 照射 20 日後の果皮 にスコパロンが47 μg∙g-1 F.W.生成されていることを確認した。このことから,出荷前のウンシュウミカンに UV-B 照射を行った場合,その後の流通過程における果実腐敗 を抑制できる可能性が示された。 最後に,赤色LED 光(ピーク波長 660 nm)による着色改善の可能性を探るため,コ スト面から普及性が高いと考えられる低照度の赤色 LED 光照射が果皮の着色と果実 品質に及ぼす影響を調査した。早期収穫,通常収穫果実ともに,低照度(12 μmol·m -2·s-1)の赤色LED 光照射でも,糖度やクエン酸含量等に影響を与えることなく,ウン シュウミカンの着色を改善することが明らかとなるとともに,収穫期に関わらず,赤 色LED 光照射により果皮の β‐クリプトキサンチンを増加させることが示された。 上記の研究から,青色 LED 光照射がウンシュウミカンの貯蔵病害抑制に有効な技 術であり,長期貯蔵にも活用できること,UV-B 照射により同果実の果皮に抵抗性物 質であるスコパロンが生成され,流通時の腐敗を抑制する可能性が示されたこと,低 照度の赤色 LED 光照射により同果実の着色を促進し,果皮のβ-クリプトキサンチ ンも増加させることが結論づけられた。 以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の博士 (農学)の学位論文として十分に価値があるものと認めた。 基礎となる学術論文 1) 山家一哲・高橋哲也・石井香奈子・加藤光弘・小林康志.2015.青色 LED 光照射によるウンシュ ウミカン果実の青かび病抑制効果.園芸学研究.14:83-87.
2) Ittetsu Yamaga, Takeshi Kuniga, Shinichi Aoki, Mitsuhiro Kato and Yasushi Kobayashi. 2016. Effect of ultraviolet-B irradiation on disease development caused by Penicillium italicum in satsuma mandarin fruit. The Horticulture Journal 85:86-91.
3) 山家一哲・古屋雅司.2017.プロヒドロジャスモン加用ジベレリンの秋季散布と収穫後青色 LED 光照射がウンシュウミカンの腐敗に及ぼす影響.日本食品科学工学会誌.64:16-22. 既発表学術論文 1) 山家一哲・杉山泰之・高橋和彦.2014.ナギナタガヤ草生栽培がカンキツ園における表面流去水の 粒径画分別リン濃度に及ぼす影響.農業農村工学会論文集.82:321-327. 2) 熊王康宏・山家一哲・中村茂和.2017.感性評価による温州ミカンの経時変化における潜在構造と 購買評価に関する研究.日本感性工学会論文誌.16:29-34. 3) 山家一哲・中村茂和・加藤光弘.2017.UV-C と UV- B の同時照射が青かび病菌のコロニー発生 と収穫後ウンシュウミカン‘ 青島温州’ 果実の青かび病斑発生に及ぼす影響.熱帯農業研究.印刷 中.