Title
土壌微生物による生分解性プラスチックの分解に関する研
究( 内容の要旨 )
Author(s)
酒井, 康雄
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第294号
Issue Date
2003-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2635
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本個)籍) 学 位 の 種 類 学 位 記.番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学一位 論 文 題 目 審 査 委 員 会 酒 井 康 雄 (静岡県) 博士(農学) 農博甲第294号 平成15年3月13日 学位規則第4条第1項該当 連合農学研究科 生物資源科学専攻 静岡大学 土嘩微生物による生分解性プラスチックの分解に 関する研究 主査 静岡大学 教 授 早 野 恒 副査 静岡大学 助教授 副査 岐阜大学 教 授 副査 信州大学 教 授 副査 静岡大学 教 授 早 津 雅 高見澤 一 入 江 銀 鈴 木 恭 仁 裕 三 治 論 文 の 内 容 の 要 旨 プラスチックなどの合成高分子物質はその利便性のために大量に生産され, 広範に利用されている。しかしその焼却処分では環境汚染物質の生成があり, 土壌環境等での処理では難分解性が指摘されている。そこで生態系の持つ浄化 能力,特に微生物による分解能力を利用して環境への負担を軽減することが可 能な生分解性高分子物質の開発が望まれ,多くの資材が生分解性プラスチック
として開芦されている。しかし,土壌における分解微生物の生態と機能につい
ては不明な点が多い。本研究は今後その物性の良さから沓及すると想定される
ポリプチレンサクシネ」ト(PBS)を主たる研究材料に取り上げ、土壌中にお ける分解能力の評方法をつくり,分解に関与する微生物の生態と機能を解明す ることを目的として行われた。 リン酸を触媒に用いてコハク酸と1,4ブタン▲ジオールから脱水重縮合反応に よりPBS(ん如≒7.0×10り チップを調製し、厚さ0.2∼0.3mmにプレス成型し た。得られたPBS細片は静大付属地域フィールド科学教育研究センター(藤 枝市)畑圃場表層土に埋設すると乾重が半年で約2割減損した。分解に呼応してpBS細片近傍土壌のエステラーゼ活性は裸地土のそれと鱒較して有意に高
く推移した。分解過程のS印叫観察の結果はPBS細片の表面上から侵食・空洞
化が線々に進行することを示したふ
圃場に施用した分解途上のPBS顆粒から の緩衝按によるエステラーゼの脱着パターンは、ラングミュア型の等温脱着式に適合し、エステラーゼが`pBS顆粒に表面吸着していることを示し、ミカエ
ー58-リス・メンテンの飽和動力学とは異なった型の分解反応を想定させた。
土壌のPBS分解性細菌,放線菌及び糸状菌の計数と分離を分別的に行うた
めに2種類の琴択培地を考案した。これらの選択培地を用・いて、藤枝畑土壌に
埋設したPBS細片の近傍土壌について、希釈平板法によりPBS分解菌を計数 した。その結果、細菌,放線菌及び糸状菌で、それぞれ104∼105,105∼10`及び103∼104血gl範士と評価されこPBS不在の土壌に比べて高い密度を示した。
ケリアゾーンを形成する由S分解菌を▲30℃培養平板から3菌株,50℃培養平
板から2菌琴をそれぞれ単離した。.形態観察の結果30℃培養から単離した1
菌株は糸状菌,残りの4勘如ま放線菌セあった。放線菌について16SのNAに
よる系統発生的位置付けを行った結果、それぞれ幻細め甲0和属(30℃), Ac血0血Ⅵ属(50℃)と最も近縁であった。 畑土壌におけるPBS細片の分解性を制御することを目的として、カニ殻由 来のキトサンオリ■ゴ糖を10%混合したPBS細片を作成し、上記同様の手法を 用いて畑土壌埋設による分解性の確認を2ケ月おきに10ケ月間行った。その 結果、PBS細片にキトサンを混合することにより、埋設8過後で5割以上, 埋設40過後には試料の回収が困難な棲までに重量保持率が低下した。このよ うなキトサン添加効果は、同時に行った他の生分解性プラスチック(ポリカプロラクトン,ポリ乳酸等)では見受けられなからた。キトサン添加によるPBS
分解促進の効果の普遍性を検証するために、藤枝造成土の他に札幌黒ボク土、常陸太田灰色低地土、衝之島暗示色士の4耕地土壌を用いて、25℃恒温条件下
でPBSオリゴマ」とキトサンオリゴ糖を加えて6ケ月間培養してPBSの分解
性を調べた。いずれの土壌においてもキトサン添加によるPBS分解促進効果 が認められた。これら4種類め土壌の内、促進効果の高い藤枝造成土と札幌黒ボク土からPBSを急速に分解する糸状菌株を単離した。これらのPBS分解性
糸状菌株は、いずれも形態観察の結果アe〝fc肪抑属と同定され、キトサンを添加した土壌からのみ検出された。これらの結果から、キトサンを混合したP由
細片の土壌中における分解促進には、キトサンにより賦活する由S分解性糸 状菌の関与が示唆された。 審 査 結 果 の 要 旨本研究は生分解性プラスチックの⊥種であるポリプチレンサクシネ
ート(PBS)の土壌中における分解性を土壌生化学的側面から研究し、
以下の点を明らかにした。 エステル結合を有しているPBS細片は藤枝土壌において6ケ月で約 2割分解した。分解に伴ってエステラーゼ活性が細片周辺土壌で高ま った0分解過程のSEM観察の結果は細片の表面上か●ら侵食・空洞化 が徐々に進行することを示した。 圃場、に施用した分解途上のPBS顆粒からの緩衝液によるエステラー ゼの脱着パターンは、ランーグミュア型の等温脱着式に適合し、エステ ラーゼがPBS顆粒に表面吸着していることを示し、ミカエリス.・メー59-ンテンの飽和動力学とは異なった型の分解反応を想定させた。 土壌のPBS分解性細菌,放線菌及び糸状菌中計数と分離を行うため
に2種類の選択培地を考案した。この選択培地を用いると、PBS細片
の近傍土壌の細菌,放線菌及び糸状菌数は、それぞれ104ん105,105∼ 106及び103∼川4c爪1g・1と分別的に評価でき・、培地に形成するクリアゾ ンから柑S分解菌株(主に放線菌)が分離された。その内放線菌に ういて16SrDNAによる系統発生的位置付けを行ったところ、それぞ
れ肋郎αfo軍Orα属,」c∫血′乃α血′・α属と最も近縁であることを確認した-カニ殻由来のキトサンオリゴ糖を混合は無混合に比べてPBS細片の 分解を大幅に促進した。キトサン添加区からはPBSを急速に分解する 糸状菌株(アe乃fc〃〃〟′乃Spp.)を単離した。このことはキトサンを混合し たPBS細片の土壌中における分解促進には、キトサンを栄養源にして 活発化するPBS分解性糸状菌の関与を示唆した。 以上について、審査委員会全員で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究 科の学位論文として十分価値あるものと認めた。 学位論文の基礎となる学術論文 1)Sakai,Y・,I?Okawa,M・,Masuda,T・,Yoshioka,H.,Hayatsu,M.andHayano,K・‥ Usefulness of Soilp-NitrophenylAcetate
Esterase Activity as a Toolto Monitor Biodegradation
of Polybutylene Succinate(PBS)in Cultivated Soil.Poly皿er Journal;34 767」774(2002)
2)Sakai,Y・,Hayatsu,M.and Hayano,K.・:Use of Tween20as a Substrate for Assay of Lipase Activityin Soils.
SoilSci・Plant Nutr.48 729-734(2002)
3)Sakai・Y・・Hayano,E・,Yoshioka,H.,and Yoshioka,H.:A Novel Method of DissoIving Chitosanin Water forIndustrial
Application・PolymerJournal,33'640-6・42(2001)
既発表学術論文
1)Sakai,Y・・Hayano,K・,Yoshioka,H・,Yoshioka,H.Fujieda,T.,
Saito・K・and Yoshioka,H・‥ Chitosan-Coating of Cellulosic Materials Using an Aqueous Chitosan-CO2Solution.
PolymerJourna134144∼148(2002)
2)横川麻里・酒井康雄・早津雅仁・早野恒-:土壌p-ニトロフェニル アセテートエステラーゼ活性測定法の改変.土肥誌、73,45-47
(2002)