アジア地域における各国の進路指導(職業指導)の国
際比較研究(1) -特に中国の教育制度と進路指導を
中心にして-著者
吉田 辰雄
著者別名
YOSHIDA Tatsuo
雑誌名
アジア・アフリカ文化研究所研究年報
巻
24
ページ
1(244)-14(231)
発行年
1989
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00010200/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.jaアジア地域における各国の進路指導
(職業指導)の国際比較研究(
1
)
一一特に中国の教育制度と進路指導を中心にして一一
はじめに 最近の科学技術の進歩発展は著しく,経済社 会のみならず,教育,学術,文化の諸側面にも 大きな影響を及ぼしている。このような現代社 会や, 21世紀の未来社会に生きる人聞を考える とき,そこには世界各国とも進路指導(職業指 導)としてのガイダンスは不可欠である。 わが国の場合は,最近の臨時教育審議会の数 次にわたる答申に示された教育改革として,こ れからの21世紀へ向かつての成熟化,情報化, 国際化などの社会の変化への対応の必要性を明 確に打ち出し,そのための基本的な考え方とし て,①個性重視の原則,②生涯学習体系への移 行,③変化への対応,の三点を示してし倍。 特に,生涯学習の考え方は,教育を学校教育 という狭い部分に限定しないで,一生涯という 広い視野で学習を継続し社会変化に適応して充 実した生き方を模索していこうとしている。最 近では,産業構造の変化,技術革新の進展,情 報化社会,高齢化社会の進行,価値観の多様化 など,まさに経済社会の構造変化が進んでいる。 こうした状況の中で,如何にして人間がキャ リア (career) を形成していくかということは 重要な課題となっている。改めて進路指導(職 業指導)を通して人間としての「生き方」や, 「人生設計」を確立しなければならない。 わが国の進路指導は,欧米の進路指導の影響 を受けながら発展し現代に至っているが,現代 においては,日本のみならず,欧米各国の動向 士 口田
辰
雄
として,職業指導 (vocationalguidance)から 進路指導 (careerguidance)への移行がみられ る。 現代のわが国の進路指導は,発達理論を根底 に置いて,個人の個性化,社会化を図りながら 進路に関する発達課題に主体的に取り組み,自 己の人生設計に基づいて進路を選択・決定し, やがて社会的職業的自己実現が図られるように 組織的,計画的,継続的に指導・援助すること にある。 しかし,現実の問題としては,この変動社会 に生きる個人の自己理解,職業観の形成,進路 探索,進路意志決定などを主体的に達成する能 力,態度,意欲を育成するための進路指導(職 業指導)そのものが,いま,新たな展開を求め られてしる。今迄,われわれは多分に欧米諸国 の進路指導に目を向けていたが,今日,わが国 の進路指導が直面している諸問題は,多くのア ジア諸国にも共通している問題である。そこで 欧米の進路指導の展開を参考にしつつ,わが国 の国内事情や文化的背景に合うような形に修正, 改善しながら独自の進路指導の施策をおこなっ ていくことが必要である。 このような観点から,今後は欧米のみならず アジア地域における各国の進路指導(職業指導) の比較研究の重要性を認識する必要がある。 ところで,アジア各国は,民族,人種,言語, 歴史,文化,生活習慣,社会体制もそれぞれ異 なっており,また,教育改革の方向や進路指導 (職業指導)の在り方も決して一様ではない。 - 1一(244)アジア地域における各国の進路指導(職業指導〕の国際比較研究(1) 進路指導は,工業化,情報化,個人行動の多様 化などのレベルによって必要性も異なってくる ので各国ともその目的や内容を異にし必ずしも 一様である必要はない。 また,進路指導は,各国の法律や政策,それ に価値体系や企業形態の特質といった文化的側 面を考慮した社会的,政治的なプロセスとして 理解することも大切で、ある。このような立場に 立って,今回は, 日本の隣国である中国の進路 指導(職業指導), 特に中等教育・高等教育段 階における進路指導(職業指導)を手はじめに 取り上げることにする。 中国の中等教育・高等教育段階の進路指導の 実態,特徴,課題を検討していく場合,まず, はじめに,中国の教育制度などの実態を把握し ておくことが大切である。特に,その全体を理 解するには,つぎの諸点,すなわち, ① 国家政策としての教育改革の動向 ② 学校教育制度の拡充整備の状況 ③ 職業技術教育及び進路指導の状況 という観点から検討を進めることが必要と思わ れる。そこで,およそ,この順序に従って検討 していくことにする。 1. 国家政策としての教育改革の動向 (1) 国家目標としての4つの現代化 現在の中国は, 1949年に社会主義国家を建国 してから今日まで約40年の歴史を有する国家で あるが,いま中国は,工業,農業,科学技術, 国防の 14つの現代化Jを国家目標としてかか げ,国家の総力をあげて経済建設を中心とした 近代国家の建設に取り組んでいる。 この 4つの現代化が統一的な新しい国家目標 となったのは, 1978年12月,党第11期中央委員 会第3回 総 会 (3中全会)の決定によるが,こ のような国家目標のもとで,中国の教育は,国 家目標に寄与できる有用な人材の育成を主な任 務としていると言ってよい。かつて,わが国も そうであったが,近代的な国家づくりを目指し て学校教育の充実に多くのエネルギーを注入し てきたが,現在の中国がまさにそうである。即 ち,中国はマンパワー需給の観点から経済発展 の一要素として教育計画を立てている。この点, 現在のわが国のように,個人的ニーズを充足す る必要から教育計画を立てるのと,その発想を 異にしている。 このことは, 1973年3月開催の全国科学会議 における郵小平副主席(当時〉の 14つの現代 化の鍵は科学技術の現代化であり,科学技術の 現代化なしに,農業,工業,国防の現代化は不 可能であるJ,1科学技術の人材の養成の基盤は 教育にある」としづ指摘は,中国現代化建設に おける教育の役割を端的に示したものである。 現代中国は, 82年憲法(第1条)に示すよう に, 1中華人民共和国は,労働者階級が指導し, 労働者と農民の同盟を基礎とする人民民主主義 独裁の社会主義国家である」と国家の性格づけ が明記されている。 また, 14つの基本的原則J(社会主義の道, 人民民主主義独裁,共産党の指導,マルクス・ レーニン主義と毛沢東思想、の堅持)は立国の根 本として,また既定の国策として,いささかも 揺らぎ変わることのあり得ないものとしている のである。 したがって,中国における人間形成の教育は, こうした社会主義国家において求められる社会 主義的人間像を目指したものである。このこと は, 82年憲法第23条に, 1国家は理想、教育,道 徳教育,文化教育,規律,法制教育の普及を通 じ,また,都市,農村のさまざまな大衆に対し 各種の規律,心得を制定,実施することを通じ, 社会主義精神文明の建設を強化する。 国家は,祖国を愛し,人民を愛し,労働を愛 し,科学を愛し,社会主義を愛するという公共 道徳を提唱し,人民に対し愛国主義,国際主義, 共産主義の教育をすすめ,弁証唯物主義,歴史 唯物主義の教育をすすめ……」と述べられてあ る。われわれは,このような中国の国家目標と 教育を前提にして教育における進路指導の問題 を考察する必要がある。 (2) 1教育体制改革に関する決定」にみられる 中国の教育に対する基本的な立場 - 2一(243)
アジア地域における各国の進路指導(職業指導〕の国際比較研究(1) 中国は, 85年5月に共産党中央は, 1"教育体 制改革に関する決定」を発表した。この「決定」 は, 5つの柱からなっており, ① 教育体制の根本目的は民族の資質を高め, 多くの人材を育成することである。 ② 基礎教育を発展させる責任を地方に付与 し,段階において9年制義務教育を実施す る。 ③ 中等教育の構造を調整し,大いに職業技 術教育を発展させる。 ④ 大学の学生募集計画と卒業生の職場配属 制度を改革し,大学の運営自治権を拡大す る。 ⑤ 指導を強化し,各方面の積極的要素を引 き出し,教育体制改革の順調な進展を保証 する。 ことを内容としている。そして,この中で中国 の対外開放,園内活性化,経済体制改革が全面 的に展開される情勢,世界的規模の新技術革命 の高まりが起こっている情勢に臨んで,中国の 教育事業の立ち遅れと教育体制の不備は,一層, 明らかになってきたと述べ,現在の主要な問題 として,つぎの諸点を指摘している。すなわち, 「① 教育事業の管理権限の区分においては,政 府関係部門の学校に対する,とくに大学に対 する締めつけが厳しく,学校のあるべき活力 を失わしめている。また,政府が管理を加え るべき事柄については,よくこれが管理でき ていない。 ② 教育の構造においては,基礎教育が弱く, 学校の数が少なく質が低く,能力のある教師 や必要な設備が深刻に不足し,経済建設が大 量かつ緊急に必要としている職業技術教育が しかるべき発展をしておらず,高等教育内部 の課程段階,学科構成もアンバランスである。 ③ 教育思想,教育内容,教育方法においては, 幼ないうちから独立して生活または思考する 能力を養うことが不十分であり,祖国の富強 のため貢献することを志ざす精神を発揚させ ることが不十分であり,マルクス主義思想に よって生き生きと児童・生徒及び学生を教育 することが不十分で.教育内容が古く,授業 方法が画一的で,実践面が重視されず,設置 専攻が狭すぎ,経済・社会発展の必要から, それぞれかけ離れており,現代科学文化の発 展から立ち遅れている。」 と指摘している。 そして,改革を通じて,教育の新局面をつく り出し,基礎教育を適切に強化し,職業技術教 育を広く発展させ,大学の潜在力と活力を充分 に発揮させ,学校教育,校外教育,学校後の教 育を並行させ,各段階各種の教育が経済と社会 の発展における各方面の需要に充分に対応でき るようにすることを提唱している。 2. 学校教育制度の拡充整備の状況 (1) 中国の学校教育制度 中国の現行学校制度は,図1の学校系統図に 示すように,就学前教育,初等教育,中等教育, 高等教育,それに成人教育から成り立っている。 それらの特徴は,以下のように考えることがで きる。 ① 就学前教育は,幼稚園(原語,幼児園), または小学校付設の幼児学級で,一般に3-6 歳の幼児を対象としている。
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義務教育は, i中華人民共和国義務教育法」 が1986年に成立し, 9年制義務教育が施行され た。ただし実施に当っては,省,市,自治区は, それぞれ経済文化の発達状況によって地域別の 段階的実施が図られることになった。すなわち, げ) 経済文化が比較的発達している地域では 1990年頃までに, 9年制義務教育を実現す る。 (ロ} 経済文化が中程度に発達している地域で は, 1990年頃までに初等義務教育を普及さ せ, 95年頃までに 9年制義務教育を実現す る。 付経済文化の発達の遅れている地域では, 今世紀末までにおおむね初等義務教育を普 及させる。 なお,上海市などの1部の省,市では,既に 9年制義務教育が実施されている。 3 一一(242)アジア地域における各国の進路指導(職業指導)の国際比較研究(1) 高 等 教 育 中 等 教 育 成 人 教 育 機 関 学 中 級 高 初 等 教 育 学 校 1 4 + 1 1 学 高波 初J 三 AP 壬 ル 陣 内 a q L 噌 i A U n B 0 0 ヴ t p D 戸 D 凋 仏 τ η a n L 唱 i n u n E 0 0 η t n O F D d 告 の a η λ M O p u n -“ n F “ 句 E ム 噌 a A 噌 E A 噌 Z A 司 a A 唱' A ' ' A 噌 ' A 噌 E A 噌 ' A 学 年 中国の現行学校系統図 (2"'" 3年)があり,専科のみの学校を専科学 校という。また,最近,主に地方都市が設置す る専科レベルの短期職業大学が創設されたりし ている。なお,大学院レベルの学生・研究生を 養成する課程・機関が,大学及び中国科学院, 中国社会科学院,上海社会科学院などの研究所 に設置されている。 ⑤ 成人教育は,以上の全日制教育機関のほ か,業余学校,夜間・通信大学,ラジオ.7-レ ピ大学等,さまざまな形態の教育機関が開設さ れている。 (2) 教育目標とカリキュラム 中国の教育目標は, 82年憲法(第46条)にも 規定されているように,
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国家は青年,少年,児 童を育成して品性徳性,知力,体位の全面的発 - 4ー(241) 国 1 (2) 初等教育は,小学校(原語,小学)につ いては,一般には, 7歳入学で6年制であるが, 一部の都市では6歳または 6歳半入学がおこな われている。なお,現在,農村部を中心にかな りの地域では小学校は5年制となっている。 ③ 中等教育は,中学校(原語,初級中学3 年制)と後期中等教育機関として普通教育をお こなう高等学校(原語,高級中学3年制),職業 教育を行う中等専門学校(中等専業学校一般に 4年制)・技術労働者学校(技工学校一般に3年 制),農業中学・職業中学 (2...3年制〉などが ある。高級中学は,現在, 2年制をとっている 地域もあるが,漸次3年制に移行しつつある。 ④ 高等教育は,大学(学部・大学院)につ いては,学部レベル (4...5年)の本科と短期小学校の教育課程の基準 <全日制六年制都市小学校教学計画(草案)> 表 1 備 集団的教育活動 自由裁量期間 週当たり 在校活動時数
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中国§山除明前滋継(露出必町線)九)盟問問詩珊時事凶(同) 動 校内大会、学級・ 少先隊活動 活 外 課 体 自 育 活 週当たり 総授業時数 開設教科数 科 教 労 美 音 歌 体 歴 地 自 外 算 至宝"日
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A当 表中のパーセントは6年間の総時間数%をもとに計算した。 A-31 32 3 q、ul--aa2 9臼11196 8 10 1 2 2 7 2 2 1 年 2ill-q4 31i3 23 24 5 6 8 科学技術、読書 文化・娯楽活動 間 1 3 2 2 7 2 2 1 2 1 1 10 1 2n'
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I 29 I 中 十 両 年 (A) 2 2 政 7 3 5 3 5 5 5 4 3 3 ヲtTi_ 口口 戸 時 寸ー 三五 ロ"1 理 品 弓子 史 国 国 数 物 歴 外 イ じ 2 29 2 2 26 2 理 í~;Î 物 生 理 衛 生 楽 育 地 生 体 音 美 - 6 -(239)アジア地域における各国の進路指導(職業指導〕の国際比較研究(1) 際主義の精神を身につけ,共産主義の道徳品性 を身につけ,共産党の指導を擁護し,社会主義 を擁護し,社会主義事業と人民に奉仕する志を 立てるようにし,生徒の労働者階級としての階 級的観点,労働観,大衆的観点,唯物弁証主義 的観点を一歩一歩育てていく。 生徒が小学校教育の基礎の上に,さらに国語, 数学,外国語などの教科の基礎知識と基本的技 能を修得し,独学の能力と問題の分析,解決の 能力を一歩一歩身につけ,一定の生産知識を身 につけ,科学を愛し,学び,用いるすぐれた態 度を養うようにする。 生徒の心身が正常な発達をとげ,健康な体を もつようにし,きちんとした生活習慣と労働習 慣を養う」ことを掲げている。 中学校と高等学校を結ぶ, 6年制中学(初級 中学3年制U,高級中学3年制)の場合は,初級 中学と高級中学のカリキュラムは一貫したもの が定められており,特に, 1"全日制6年制重点中 学教学計画試行草案」によると,教育課程は表 2の通りである。 この中で, 1"労働技術教育」の時聞は,主に, 生徒の労働観,労働習慣を養い,初歩的な労働 技能を習得させることをねらいとし,工・農業 生産,サービス業的な労働の基本技術や職業技 術の教育及び公益労働などを行う,ことに当て ている。 大学については, 1"決定」の中で, 1"大学は, 高度なレベルの専門的人材を養成し,科学技術 及び文化を発展させる重大な任務を担っている。 我が国の高等教育発展の戦略的目標は,本世紀 末まで,学科がすべて整い,課程の長短及び設 置分野のバランスが合理的な体系を確立し,総 規模が我が国経済の実力に相応する水準に達す ること,高度なレベルの専門的人材の養成が基 本的に園内でまかなえること,自主的に科学技 術の開発をすすめ,社会主義現代化建設におけ る重大な理論問題や実際問題を解決するにあた って多大な貢献をすること」と述べている。 また,大学がすべて国家の計画に従って統一 的に学生募集を行い,卒業生すべてが国家によ って職場に配属されるという方法を改めて,つ ぎのような3種類の方法を実施することになっ た。すなわち,①国家計画による学生募集,② 雇用者の委託による学生募集,③国家計画外で の少数の自費学生募集,となっているのである が,しかし,基本的には,①の国家計画による 学生募集が中心であリ,②と③の学生募集は① を補う人材養成の方法としている。大学入学に ついては,学生の質を確保するため,いずれの 学生も大学入学者選抜としての全国統一入学試 験の合格を前提としている。 なお,前述の初級中学,高級中学,大学等の 進学指導,就職指導に関する問題は,改めて後 述することにしたい。 (3) 各学校段階の就学状況と進学状況 初等教育段階の小学校,および中等教育段階 の初級中学,高級中学の学校数,在籍数等を示 すと表3の通りである (1985年現在)。小学校に 関しては, 1987年の調査で全国の入学率は97.1 %となっているが,北京市,上海市などの都市 部では,既にほぼ100%の就学率を達成してい る。他方,初級中学への進学率は,全国平均で, 84年の段階で65.3%,高級中学への進学率は 表 3小学校s 初級・高級中学の規模(1985年) 教 職 員 学 校 卒 業 者 入 学 者 在 学 者 │うち木務教員 校 万人 万人 万人 万人 小 学 校 832,309 1,999.9 2,298.2 13,370.2 602.1 537.7 初 級 中 学 75,903 998.3 1,349.4 3,964.8 216.0 355.7 高 級 中 学 17,318 196.6 257.5 741.1 49.2 〔資料) 中学教育成就 1980-1985 一 7 一 (238)
アジア地域における各国の進路指導 C職業指導〉の国際比較研究(1) 表 4 1986-1988年上海市中学校卒業生の進学状況表 全校の卒人市業数中学生 進(学%率〉学市生校区の卒人の数業中進(進学学者率数) 校郊生人外の卒数中学業進(進学学者率数) 学校種別進学者数 年 代 進学者数 普通高岡中等専科│技術学校│職業学校 1986年 ド9.1901
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27. 6%となっている。また,初級中学卒業後, 高級中学以外の後期中等教育機関(中等専門学 校,技術労働者学校,農業・職業中学)への進 学率は, 46.5%となっている。 しかし,中学への進学率は,地域的に格差が あり,都市部の方がかなり普及しているのに対 し て , 農 村 部 で は 普 及 率 が 低 い の が 現 状 で あ る。 表4は, 1986年から1988年にかけての,上海 市の初級中学及び高級中学の在籍数,進学者数 進学率,それに学校種別進学者数(進学者の内 訳)を表わしたものである。この資料に明らか なように,上海市のような都市部では,後期中 等教育機関や,高等教育機関への進学者が比較 的多いといえる。 なお,北京週報 (1989年1月24日, 4号)に よると,小学校の退学率3.3%,中学校の退学 率6.9%となっており,全国総数でみると小学 ・中学の4.1%(約739万人)の児童・生徒が中 途退学してし、る。 また,大学については, 1987年調査によると, 114.6741 118.7451 4.3ペ
3叶
764 教育程度は人口 10万人あたりの大学卒業程度の 者 は646人となっている。大学の開設状況は, 1985年時点、で,全日制高等教育機関は全国で 1,016校, そのうち大学が574校,専科学校が 324校,短期職業大学が118校となっている。 1987年時点では,大学は1,063校が開設してお り,同一年齢人口に占める全日制大学進学者の 比較は,わずかに3 %前後である。中国では文 字通り,大学生であることは,社会でのエリー トそのものである。 なお,進路指導の立場からみた中国の進学指 導に関する諸問題についての分析的検討は,改 めて後段の部分で取り上げることにする。 3. 中国における職業技術教育の重視とその 展開 (1) 職業技術教育の目的 既に触れたが,中国共産党中央の「教育体制 改革に関する決定」の中に,職業技術教育の発 展の必要性が強調されている。そのことは以下 の文に端的にみることができる。 - 8一(237)アジア地域における各国の進路指導〔職業指導〕の国際比較研究(1) 「社会主義現代建設には,高度なレベルの科 学技術専門家が必要なだけでなく,何千万何百 万という,しっかりした職業技術教育を受けた 初級・中級技術者,管理人,技術労働者及びそ の他, しっかりした職業訓練を受けた都市労働 者が緊急に必要となってくる。 この労働技術をもった大軍をもつことなしに 先進科学技術と先進設備は現実の社会の生産力 とはなり得ない」 「現在ある中等専門学校及び技術労働者学校 の潜在力を充分に掘り起こして,生徒募集を拡 大し,かつ計画的に一群の普通高級中学を職業 中学に改変し,あるいは職業コースを増設し, さらに新設の同種の学校を加え, 5年前後で大 多数の地区の高級中学段階における各種職業技 術学校の生徒の募集数を普通高級中学の生徒募 集数と同数にもっていき,現在の中等教育構造 の不合理な状況を改善するようになければなら ならない」 「職業技術教育の発展は,中等職業技術教育 を重点とし,中等専門学校の中核的役割を発展 させ,同時に高等職業技術学校を積ー極的に発展 させ,同系統の中等職業技術学校の卒業生,及 び当該専攻について実践経験があり成績合格の 在職者を優先的に入学させる。 そして初級から高級までの産業と結びついた 合理的構造をもっ,普通教育と相互乗り入れで きる職業技術教育体系を逐次確立していく。」と 述べている。 こうした考え方に立って,職業技術教育を発 展させるために,中学段階から進路を各コース に分化させるべきであるとの立場をはっている。 (2) 後期中等教育段階の職業技術教育 初級中学卒業後の進路(進学先)として,① 普通高級中学,②中等専門学校,③技術労働者 学校(技工学校),④農業中学・職業中学,があ げられる。 上記のうちの②③④の学校は,中等教育にお いて職業技術教育を行なう学校であり,すべて 後期中等教育(高級中学段階)の学校である。 各々の学校の特徴についてみていくと,つぎの ように述べることができる。 ① 略 ② 中等専門学校一一原語では中等専業学校と いい,入学対象は初級中学卒業生を入学させる ことを建て前としているが,実際には高級中学 卒業生が数多く入学している。しかし,次第に 初級中学卒業生を主とする方向にある。修業年 限は一般に4年であるが,専攻により 3年また は5年の学校がある。 「全日制中等専門学校工作条例」によると, 教育目標は,思想,政治的態度の函養とともに, 高級中学に相当する学力を備え,この基礎の上 に当該専攻の現代化された生産に必要な基礎理 論,専門能力及び実際技能を習得し,問題を分 析し解決する能力を身につけることをねらいと している。 専門分野としては,工業,農業,林業,医学 ・薬学・財政・経済,政治・法律,体育,芸術 などがある。 ③ 技術労働学校一一原語では技工学校といい, 中級の技術労働者を養成する学校である。修業 年限は一般に3年であるが,高級中学卒業程度 の者を入学させる場合は,一般に2年である。 教育目標は,社会主義における 4つの現代化を 実現するため,社会主義の自覚をもち,現代的 な生産技能を修得した4級相当の技能労働者を 養成することをねらいとしている。 ④ 農業中学,職業中学一一一農業中学,職業中 学は,一応,初級中学段階と高級中学段階に分 けることができるが,在学者の約80%が高級中 学段階の学校である。教育課程は普通教育と職 業技術教育を結びつけたものとなっている。 専攻分野は,工業,農業,林業,医科,財政 ・経済,政治・法律,体育,文教,芸術,旅行 ・サービス,となっている。 以上のように,中国では社会主義現代化建設 のため,後期中等教育段階での職業技術教育を 中等専門学校,技術労働者学校,農業中学,職 業中学に負託し,初級・中級技術者などの養成 をおこなっているのである。 9 -(236)
アジア地践における各国の進路指導(職業指導〕の国際比較研究(1) 4. 中国の中等教育・高等教育段階の進路 指導の現状と課題 (1) 中国の最近の社会的経済的状況 進路指導の立場で,特に就職指導,進学指導 を考える場合,まず,その背景として社会的経 済的状況を考慮に入れなければならなし、。進路 指導において進路先(就職・進学)の選択・決 定に関しては,社会経済情勢の影響を非常に強 く受けるからである。また,その時代の制約を 無視するわけにはいかない。 ところで,中国は,近年,制度改革がおこな われ,企業制度に関しでも,国営企業ばかりで なく,現在の企業の種類は,①国営企業,②集 団所有制企業,③個人企業,の三つの種類があ る。国営企業は,全人民所有制の文字通り国家 の経営する企業である。それに対して集団所有 制企業は,地域住民が共同で所有するもので, この場合は損益は自己責任制をとっている。他 方,個人企業は私営企業で,一定の収益は国家 に納める制度である。 中国では従来,就職は国が統一募集,統一配 分で決めていたが,国務院により労働人事制度 の改革 (86年 7月公布,同年10月実施)があり, 「労働契約制度」が導入された。すなわち,国家 企業に新たに採用される一般労働者を対象に, 契約期間(l年契約から8年契約まであり,な かでも 5年契約というのが多し、)を定めて契約 を結ぶもので,これによって,原則的には終身 雇用契約は禁止している。 中国では,それまで職業選択の自由がなく, 国の配置指導により職業に就くという計画配置 であったため,多くの者は能力を発揮できない 職場に終身配置され,転職もできないという弊 害があったが,この労働契約制度の導入によっ て,労働者の志気や意欲を高め,企業の活性化 を図ることをねらいとしている。この制度によ って, )"職業選択の自由」をまがりなりにも保 障する雰囲気が出てきて,企業の活性化が図ら れるというプラス効果もみられるが,しかし, あまり自由な労働市場というのは,中国の社会 主義経済体制のもとで計画性を推進していくた めには「契約の自由」を認め過ぎると計画性が 立たなくなりかねない側面も出てこよう。 周知の通り,中国の総人口約11億人のうちの 約8割が農業人口であるといわれているように, 中国の経済は農業経済を基盤としている。また, かつての人民公社は解体し,生産請負制を導入 し,農産物の生産性を高める制度をとることに なったが,他方,人民公社の解体によって多く の農業余剰労働力が発生したのも事実である。 中国国家は約1億5千万人にも及ぶ,この農 業余剰労働力の産業転換を図ることが求められ, 農村に工場(郷鎮企業)をつくり,農村の余剰 労働力を吸収し,都市への人口流出を防止する などの措置を講じている。農村で離農しても離 村しない(離農不離郷)ことを政策として掲げ, 郷鎮企業で働く「農工民」というタイプの労働 者が現出したのである。 また,人口の移動を,特に都市への流入を防 止するために戸口(戸籍)管理によって,人口 移動を制限し都市人口と農村人口の一定の割合 を維持するなどの政策をとっている。 就職に関しては,中国には, )"頂替制度J(招 工頂替)があって,両親の一方が定年退職する 時に,その後任として自分の子女に就職させる ことを認めている制度があるが,家族主義的, 位襲的な要素が温存されている。ただし,この 頂替制度も86年より国営企業では禁止されるこ とになったようである。 このような中国の社会的状況を進路指導の背 景として理解しておくことが必要で‘ある。 (2) 中国の進路指導,特に就職指導の現状と課 題 日本をはじめ欧米各国においても共通の認識 として,進路指導にとって生徒・学生の進路の 選択・決定(就職・進学)の指導・援助は,学 校進路指導の結晶化という点で大切な指導活動 である。具体的には,中学校ないし高等学校の 3年間(在学年間)に及ぶ指導の成果に基づい て,すなわち, )"生徒理解・自己理解J)"進路情 報の収集とその活用J)"進路相談J)"啓発的経験」 - 10 -(235)
アジア地域における各国の進路指導(職業指導〕の国際比較研究(1) などの指導の成果を踏まえて,生徒一人ひとり が自主的に進路を選択・決定して,自分で選ん だ進路(就職・進学など)に自覚と責任をもっ て第一歩を踏み出せるよう指導・援助すること である。 このように,生徒自身が主体的に将来の生活 設計とのかかわりのなかで,生徒の在学年間の 指導を通じて進路の選択・決定がなされること が望ましし、。万一,そうした進路指導の積み重 ねがないならば,それは単なる「配置指導」や, 「振り分け指導」に終ってしまう危険がある。 単なる分配や振り分け指導は,生徒不在の指導 になり,生徒の能力,資質,適性,興味,関心, 進路希望などを無視したり,また,能力,資質 を開発しないまま就職・進学させることになり, 目的意識のない暖昧な意識の学生や労働者を生 み出すことになる。 日本や欧米各国でも,進路指導の理論の確立 と実践的指導の商で相変らず多くの課題をかか えている。現在,いずれの国々も進路指導を核 にして学校教育の活性化を図ろうとしている状 況にある。 こうした観点から,中国の進路指導の現状と 課題について検討を加えてみたい。日本や欧米 諸国は,既に職業指導 (vocational guidanc巴) から進路指導 (careerguidance) へ の 移 行 が おこなわれ,進路指導, career guidance とい う用語の使い方が一般的であるが,中国の場合 は,むしろ職業指導という用語が一般的である。 しかし,私どもは,その職業指導の内容の中に, いわゆる進路指導 (careerguidance)の指導内 容や指導方法を数多く包含していると見ること ができる。 ところで,中国の各学校の進路状況やその特 徴であるが,卒業後の就職に関しては, ① 中等専門学校卒業者の就職については,原 則的に,主管の中央各業務部門(国務院各部・ 委員会)や省・市・自治区が独自に職場配属を 行い,必要な場合は国家が若干の調整をおこな うなどの方法をとっている。また,国家の重点 建設や特別な必要性に対応するため,国家は中 央業務部門所管の中等専門学校の卒業者の中か ら
5%
の枠内で採用することができるとしてい る。 ② 技術労働者学校の卒業者の就職については, 技術労働者学校の設置者が国務院各部・委員会, 地方及び各種企業であり,中級の技術労働者の 養成をし,卒業者の就職については,各学校の 主管の業務部門である国務院各部・委員会,地 方の局・庁が職場配属をおこなっている。 ③ 農業中学,職業中学卒業者の就職について は,国家による計画的な職場配属をおこなわな いで,卒業者は学校の推薦を通じて雇用者の審 査や選抜を受けて就職するようになっている。 ④ 大学卒業者の就職については,つぎの三つ の種類に分かれている。 ④ 国家教育委員会所管の大学の卒業者と他 の一部の大学卒業者については,国家の計画 に基づき全国範囲で就職する。 ⑥ 中央各部・委員会所管(国家教育委員会 を除く)の大学の卒業者については,それぞ れの直属機関・企業や同種の業務系統に就職 する。 @ 省・市・自治区所管の大学の卒業者につ いては,それぞれの地区内に就職する。 という方法がとられている。 特に,大学卒業者の就職は,従来,国や所管 部門が配属計画を立て,指定された職場に大学 が学生を割り振るとし、う方策がとられていたが, 就職制度の改革がおこなわれ, 85年の「教育体 制改革に関する決定」により,卒業者の配属は, 国家計画の指導の下に,卒業者本人が選択志願 し,学校の推薦を通じて雇用者が選抜雇用する 制度が実施された。したがって,一定の枠内で の職業選択の自由,契約の自由が保障されつつ あるといえる。大学は国家の人材配置計画に従 って大学が雇用者と学生を紹介するなどの方法 がとられるようになった。大学の就職制度は, 現在のところ改革の途上にあるということがで きる。 また,中等教育段階の進路指導(職業指導) に関しては,中国の行政当局及び教育関係者の -11ー (234)アジア地域における各国の進路指導(職業指導〉の国際比較研究(1) 間で,つぎのような指摘がなされている。現在 の中国では普通の中学卒業生は,上級学校に進 学する少数の生徒を除いて,殆んどの生徒が就 職する。若い生徒たちに職業観を形成させ,彼 らが社会主義社会の建設に役立っため,自分の 特性に応じて,比較的ふさわしい職業や専門を 選択・決定するための指導・援助をするため, 現在,普通中学校で職業指導を実施することは, 緊急で重要な任務であるとし、う認識がなされて いる。 今まで長期間にわたって中学校卒業生の就職 は,国が統ーして配属を決めるとし、う制度のた め,就職者と募集者(雇用側)の両方が互いに 選択する可能性が少なかった。その上,中学校 側は,一方的に上級学校への進学率を高めるこ とを追求していて,学校での職業指導をおこな うことが難しい状態であったO そのために現在, 職業意識が希薄であったり,職業に対する考え 方が片寄っている青年が少なくなし、。 例えば,知識集中型の仕事や観光・サーピス 業に夢中になり,労働集中型の職業が軽視され るなどの現象がみられるのもそう珍しくなくな った。それというのも若者が,さまざまな職業 に対して理解が不足しており,自分の長所・短 所もあまりよく理解しておらず,職業の選択も 一方的,無目的的なため就職してから役立つこ とができない状況も生じている。 現在,教育改革も深化・拡大の途上にあり, 学校側は積極的に経済社会の発展の必要に応じ て,また社会主義建設の要求によって「四有」 (すなわち,理想があり,道徳があり,教養があ り,紀律がある)のある人材を養成すべきであ る。また,生徒の能力・適性といった条件に合 致した,ふさわしい職業を選択することを積極 的に生徒に指導しできるだけ人材と社会的需 要が最適な形で合致するようにすることである。 現在,進行中の労働人事制度の改革も,就職者 と募集者の両方が互いに選択できることを可能 にさせつつある。 既に数年前から,ある地域と学校でおこなっ た職業指導の実験が,ある程度,成功を収めて, 生徒や親や教師にも歓迎され,職業指導の必要 性と,指導の可能性が現実に証明されている。
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中富における職業指導の新展開 今回の本論文のしめくくりとして,中国にお ける職業指導がどのように展開されているか, また,今後,どのような展開がなされようとし ているかについて述べてみたい。 中国における職業技術教育,職業指導の歴史 は非常に古し、。中国の職業教育の先駆者である 黄炎培老師は, 1918年に中華職業教育社,中華 職業学校を創立し,中国職業教育の基礎を築い た人であるが,一昨年 (1988年),職業教育社と 学校は創立70周年記念を迎えている。この中華 職業教育社は,専門機関誌「教育と職業」を刊 行しており,この中に職業教育,職業指導に関 する沢山の研究論文や実践報告が収められてい る。しかし,ここでは,その内容について多く を言及することは省略して,最近の中国の職業 指導の展開についてみていくことにする。 なかでも中国の上海市を例にとると,現在, 国家教育委員会の指導のもとで,上海社会科学 院青少年研究所,上海教育科学研究所等で職業 指導についての課題研究が進められつつある。 また,学校現場での実践研究も上海市のモデ ルスグールである上海市海南中学校などでは, 1986年から職業指導についての数多くの実践研 究を積み上げている。しかし,中国では学校教 育の段階では,やっと本格的に取り組み始めた ところであるが,その内容は,日本や欧米の進 路指導の実践研究の内容と大部分,共通してい る。また,啓発的経験,勤労体験学習のような 体験的学習に力を入れていることが実践報告書 から窺い知ることができる。 また,国家教育委員会は最近,通達により, 職業指導の実施を各学校に通知している。閣の 政策としての職業指導の見解を通達の形で出し ているので,ここにその内容を紹介しておくこ とにする。1
1. 職業指導の実施の目的とその指導思想 職業指導をおこなうことは,教育思想、を正 - 12一(233)アジア地域における各国の進路指導(職業指導)の国際比較研究(1) すこと,一方的に進学率を追求する傾向の克 服,学生の全面的発達の促進,学生の自己の 特性や潜在的能力の開発,人材の養成の促進, 教育改革の深化,さらには教育の社会的利益 を高めることや社会の安定や団結を保障する ことなど非常に重要な意義がある。 職業指導をおこない,全面的発達という教 育方針を貫き,単にテストの成績で学生の能 力を計るとし、う見方を変えて,学生の知恵を 発達させ,技能を訓練し,全面的に学生の潜 在的能力を発揮させるべきである。職業指導 をおこなうには,わが国(中国)の国情と各 地方の実態をみて,地方や学校の実態に応じ て実施することである。まったく同じモデル を実施する必要はない。 また,他の地方の経験や外国の経験にも十 分に注意を払うべきである。職業指導をおこ なうに当っては,進学指導とも関連させ,進 学と就職に対する態度を正すべきである。ま た,学生本人や親の原品、とその進路選択を尊 重し,教師が彼らに代って進路選択をしては いけない。 2. 職業指導の任務 この仕事の任務は,職業指導を通して,学 生に社会職業の情況を理解させるための援助 を与えると同時に,科学的な測定方法を通し て学生に自己の学業状況と生理的,心理的状 態,及び職業興味,関心,才能,体質の特徴 を理解するのを援助することによって,学生 が正確に社会的需要と自己の心身の特徴に適 した職業を選択で、きるようにさせる。 職業指導は,中学校生活の全体を通してお こなうべきである。各地方は,この教育を実 施する時には,まず調査研究に基づいておこ なうことである。職業指導は学校の教育計画 の中に入れて,中学校段階に重点を置いて, 中学校1年生, 2年生の時から計画的に,段 階的に職業指導を施す。 3年生,つまり卒業 生に対する進学指導と就職指導は,一層,全 面的におこなわなければならなし、。条件の備 わった学校は,特に高等学校には短期間の養 成班をつくり,高校の卒業生に対して就職の 訓練と指導を施す。 職業指導は,また長期的な任務であり,都 市にある中学校と高校だけでなく,農村と地 方の学校にも積極的に職業指導の教育と指導 をおこなうべきである。各省,自治区,直轄 市がこの仕事を計画する場合は,数年間の時 聞をかけて,まず実験をしなければならない。 そして実際に応じて,適当な形式でその仕事 を展開すべきである。各地域あるいは条件を 備えた学校は,中学校職業指導のカリキュラ ムとテキストを編成し,実験する聞にその経 験をまとめることである。 3. 職業指導の基本方法 各レベルの責任者が調査研究を強め,これ に対する認識を統一し,また教育行政部門が これを重要な仕事として,各地方の教育体制j の改革計画の中に入れるべきである。職業指 導は,学校における思想教育の重要な内容の 一部をなすものである。教務主任はこの仕事 に専門的に責任を持ち,またクラス担任教師 も積極的に参加しそれと同時に職業指導担 当の専任教師を計画的に養成しなければなら ない。 各地方の師範大学と学院,または教育学院 にも職業指導の講座を設けなければならない。 そして,この方面の知識を紹介し,中学校で 職業指導ができるような専門的な教師を計画 的に養成し,このことによって職業指導の教 師がチームを組むことができるようになる。 学校で職業指導の仕事を展開する場合,学 校の思想教育と結びつけ,学生に職業道徳教 育をも施すべきである。また,中学校の教育 と生徒の志望選択についての指導と結びつけ, 労働技術教育と結びつけ,条件の備える地域 では労働技術教育の基地を建てる。その基地 で、実際の労働実践に参加することによって学 生に労働の技能を習得させ,初歩的に学生に 職業に関する意識を持たせ,学生の特長と潜 在的能力を発揮させる。 その他,教育科学研究部門は学校と一緒に, - 13一(232)
アジア地域における各国の進路指導〔職業指導〉の国際比較研究(1) こ の 職 業 指 導 の 研 究 と 実 践 活 動 を 共 同 で 発 展 させることである。 4. 職 業 指 導 の 仕 事 に 対 す る 指 導 の 強 化 以下略」 ここに紹介した文章は, 1989年2月20日付で 中国の国家教育委員会弁公庁・上海市宜湾、区教 育 局 が 出 し た 中 学 校 の 職 業 指 導 を 実 施 す る に 当 つての通知文である。中国においては,現在, 学 校 教 育 を は じ め と し て , 産 業 部 門 , 労 働 部 門 で 多 く の 解 決 し な け れ ば な ら な い 課 題 を か か え て い る 。 科 学 技 術 の 振 興 の た め 多 く の 技 術 労 働 者 の 養 成 を 必 要 と し て い る 。 こ う し た 状 況 に あ っ て , 学 校 教 育 は 職 業 指 導 を 核 に し て 学 校 教 育 の 活 性 化 , 労 働 者 の 自 覚 , 企 業 の 活 性 化 を 図 ろ う と し て い る 。 こ の 通 知 文 は , 今 後 の 中 国 の 職 業 指 導 の 方 向 を 示 し た も の で あ り , 学 校 で の 職 業 指 導 の 指 針 と も な る 貴 重 な も の で , 今 後 の 進 路指導,職業指導の充実が期待される。 あとがき 本論文を書くに当たり,中国上海科学院青少年研 究所金志主主所長,命揮者云研究員, と海市教育科学研 究所銭在森所二長をはじめ多くの先生方に資料提供等 でお世話になった。また,上海社会科学院青少年研 究所の張啓新さんには,関係資料の翻訳をしていた だいた。木学社会学研究所に留学中の呉端君にも いろいろとお世話になった。 ここで改めて,ご協力いただいた諸先生方にお礼 を申し上げる次第である。 引用文献 1. 文部省「海外教育ニュース第8集・第9集」 (教育調査・第116-117集)文部省大臣官房調査 統計課,昭和61年-62年 2. 文部省「中国の教育」文部省大臣官房調査統計 課,昭和62年3月 3. 中国共産党中央「教育体制改革に関する決定J 1985年 5月27日 4. 1"中華人民共和国義務教育法J1986年4月 5. 上海市海南中学校職業指導グルーヅ「中学校3 年生に対する進学と職業指導についての実践的研 究J(特定研究レポート① ③) (中学校段階の職 業指導シンポジウム交流資料)・上海市海南中学 校, 1988年4月 6. 上海市虚湾区教育局通知「積扱開展職業指導工 作主動為社会主義経済服務J1989年2月20日 参考文献 1. 小竹正美・山口政定、・吉田辰雄著「進路指導の 理論と実践」日本文化科学社, 1988年6月 2. 小林達夫著「進路指導の理論的基底の研究」風 問書房,昭和54年1月 3. 日本職業指導協会編「米英における職業指導」 (職業指導研究セミナー要録)日本職業指導協会, 昭和43年3月 4. 日本職業指導協会編「日本職業指導(進路指 導)発達史資料」日本職業指導協会,昭和47年3 月 5. 佐々木輝雄箸「学校の職業教育一中等教育を中 心にJ(佐々木輝雄職業教育論集第2巻〉多摩出 版,昭和62年12月 6 篠原俊雄・水戸谷貞夫編著「進路指導の発達と 展望」実務教育出版,昭和56年6月 7. 若林敬子著「中国の人口問題J東京大学出版会, 1989年4月 8. 教育と職業編集部「教育と職業J(教育与職業) 〔各年度各月号)中華職業教育社 - 14 -(231)