日本型フレキシビリティとME革命
著者
十名 直喜
雑誌名
研究年報
号
5
ページ
35-63
発行年
1992-12-30
URL
http://doi.org/10.15012/00000851
Copyright (c) 1992 十名直喜日本型 フ レキシ ビリテ イ と
ME革
命
十
名
直
喜
1.は
じ め に 現代資本主義のあ り方 とその多様 な型 をめ ぐって,今
日,あ
らためて大 きな 関心 と議論が集 まっている。 とりわけ,
日本資本主義については,国
家 と企業 の結びつ きや企業間の関係,企
業 内の システム,さ
らには企業 と地域,家
庭 と の関係 な ど,市
場経済 を構成す る多様 な諸要素及びその相互の関係 についての 日本の特質 をめ ぐって,多
様 な見解 が輩出す るに至 っている。 その先進的側面 や ダイナ ミズム を評価す る見解や,長
時間労働 ・過労死等に加 えて,政
・官・ 財 におけ る底無 しの癒着問題 などを生み出す不透明かつ前近代的な側面 を強調 す る見解,あ
るいは,そ
れ らの両側面 をともに見 ようとす る見解 など,が
出て きている。 現代 日本の企業 システム, とりわけ,そ
の核心 をなす生産 システムについて は,そ
の積極的側面 (普遍性)と
負の側面 (特殊性)を
総合的に捉 え,
とくに 両側面の結合の仕方に注 目して,重
層的かつ有機的なシステム として把握す る 視点か ら,小
生は先に「 日本型フレキシビ リティ」概念 を提起 した(注1)。 日本型生産 システムに見 る先駆性 と特殊性 は,一
方ではME技
術の導入 を促 し,そ
の「普遍性」 を拡大 して 日本企業の生産性 と国際競争力 を高めたが,他
方では,特
殊性 をは らむ故に種々の負の側面 を生み出 し,拡
大・深化す るに至 っ ている。す なわち,情
報化に基づ く管理密度の増大 とス ピー ド・ア ップは,労
働密度 を飛躍的に高め,国際化 とも結びついての長時間労働 の蔓延 と重なって, 過労死や種々の心身の障害 をもたらしている。 日本型生産 システムにみ るフレキンピ リティは,情
報技術 によって技術的に基礎付 け られ
,
また労働 者の向上欲求や 自発性 を引 き出 しなが らも,労
働 者 の 労働権や 人権へ の深刻 な侵 害 を伴 うとい う「 フ レキシビ リテ ィ」 と重層的 に結 合 して,日 本型 ともいわれ る特質 を生 み出 してい る。本稿 にお いては,ME技
術 との関連 をふ まえつつ,
日本 型 フ レキシビ リテ ィ とは何 か を明 らかにす る。2.日
本型生産 システムの先駆 的側面 と
ME技
術
(1)ME技
術 の もつ技術的特性マ イ クロ・エ レ ク トロニ クス (Micro Electronics i微 小電子工学,略称
ME)
は,超小 型 の コン ピュー タが核 に な って展開 してい る制御 系 の技術 であ る。ME
技術 は,制
御 系 の核 であ る加工 技術領域 を中心 に して展開 して きたが,そ
の基 本機 能 が制御 とい う一般 的機能 にあ るため,あ
らゆ る機械運動 に応用 で きる と い う特質 を もつ。 この ため,各
産 業 に適 用 で きる共通 技術 として,生
産 の各個 別 の過程 に浸透 して い る。 エ レ ク トロニ クスは, メカニ クス (機械 工学)や
, 光 フ ァイバー,
レーザー光 な どの オプ テ ィ クス (光工 学)と
多様 に融合 し,知
覚 ・ 測定・計算・記憶・伝達 な どの,人
間の神経・頭脳機 能 を物体化・客体化 し,労
働 手段 や 製 品に組 み込 んでい く。 メカニ クス とME技
術 を接合 した造語 で あ る メカ トロニ クスは,ME技
術 の 生産 技術へ の浸透 形態に他 な らない。 メカ トロニ クス技術 は,伝
統 的 な機械 原 理 の一 層 の促 進 とい う側 面 と,機
械 原理 の変 革,す
なわ ちサ イバ ネテ ィ クス原 理へ の転換 に基づ 〈異質 な構造 と機能 の創 出 としての側 面 を併せ もっている(注 2)。 従 来 の機械 は,制
御機 構 と運動機構 の同一化 が前提 にな ってお り,機
械 の機 能 の変化 は,必
然 的 に構 造 の変 更 を伴 わ ざる をえない。それ故 に,「生産性 と弾力 性 とは ジ レンマ に陥 る」関係 を余儀 な くされ る。従 来 の機械 原理 の発展 した 自 動機械 にお いて は,機 械 は機構 に よってその動作 を自動制御 す るよ うにな った。 しか し,そ
の機構 はエネル ギー的結合 に よる もの であ り,機
械 の機 能 を制約 し て実現 した もの であ る(注3)。 まさに,機
械 の機 能特 性 は,規
則性,反
復 性■硬 直 性 に あ り,機
械 に 固有 な構造 の閉鎖性 と機 能 の硬 直性 を有 し,運
動機構 の分 離 の不 十分性 とい う原理 的限界 を もってい るのであ る(注 4)。 この ため,伝
統 的 な機械 原理 の枠 内にお いては
,小
品種 大 ロ ッ トの大量生産 方式 として発展 し,生
産 性 の飛躍 的上昇 を実現 したの であ る。 これに対 して,
メカ トロニ クスは,構
造 と機 能 の分 離 に よ り,伝
統 的 な機械 原理 の制約 か らの離脱 を可能 にす る。 す なわ ち,機
械 の機 構 の なか に組 み込 ま れ て い た制御機構 の分 離 が可能 とな り,こ
れが 人間の側 に残 されて いた制御機 能 と結合 して,制
御機 構 が分化 す る。 こ うして,機
械 構造 か ら相 対 的に独 立 し た制御 系 に よる運動 の制御 が可能 とな るの であ る。 この ため に,機
械加 工 の領 域へ の フ ィー ドバ ック・ コン トロー ルの本格 的導入が可能 とな った。 また,工
具 の運動パ ター ンは,単
一 の ものに限定 され る必要 はな く,機
械 系 の外部 か ら の ングナルに よって転換が可能 とな り,機
能 の弾 力化,制
御 ・ 管理 の 自由度 の 拡 大へ の道が拓 かれ たの であ る(注 5)。 こ こに,ME技
術 が もつ フ レキ シ ビ リテ ィ の技術 的基礎 が あ る。 マ イ クロ・コン ピュー タの開発 が,ME技
術 の普 及 に拍車 をかけ るこ ととな っ た(注 6)。 あ らか じめ セ ッ トされ たプ ログラムに従 っていか よ うに も機 能 し得 る と い うマ イ クロ・コンピュー タの汎用特性が,IC(Integrated Circuit i集積 回路)`技術 の急速 な進歩 に よる高性能化 お よび低価格化 とあいまって
,ME技
術 の極 め て広範 な応用 を可能 に したの であ る。 マ イ クロ・ コン ピュー タは コンピュー タ の部 品化 であ るので,す
べ ての機械 製 品に コンピュー タの機能 をもつ部 品 を組 み込む こ とが で きる。これに よって,多
くの機械 製 品は 自動運転 が可能 とな り, また 多機能 の工 業製 品が開発 され るよ うになった。 こ うして,生
産性 と弾 力性 との間の ジレンマ,す
なわ ち トレー ド・ オフの関 係 は,ME技
術 の登場 に よって基本的 に解決 され る方 向に転換 した。しか しなが ら,両
者 の関係 は完全 にな くな る もの ではな く(注7),加 工工程 におけ るワー クの 数 量 と種 類 に よって最適 な生産 システムの範 囲が異 なってお り,し
たが って, 採 用 され るシステム に対応 して,フ レキシビ リティ とコス トの関係 もまた異 なっ て くるの であ るは8)。 情 報 技術 は,MEを
基礎 に して コンピュー タの活用 と電気通信 を結合す るこ と に よる もの であ り,情
報化 とは,
まさに,
コンピュー タの情報処理機 能 と通信 の情報伝達機能 との融合 に他 な らない(注 9)。MEは
,電
子 とい う共通 の媒体 を通図
1
ワークの種類・ 数量 と最適生産 システム 個 30.000 10,000 3,000 1,000 300 100 30 1 3 10 30 100 300種 出所:『マンニス ト』1983年VOL 27,NQ5
伊藤実 F技術革新 とヒューマン・ネ ットワー ク型組織』 日本労働協会 88ページ じて,数
量化 され うるあ らゆ る情 報 の高速,精
確 かつ 大量 の加工,伝
達,貯
蔵 を本 来 の機 能 とす るの であ る。 こ うして,ME技
術 は生産 の あ らゆ る領 域 の情 報 と制御 の統合化,集 中化 を可 能 とす るの であ り,そ
の展 開は さ らに生産領域 を越 えてい く。また,他
方 では, マ イ クロ・プ ロセ ッサー の性能 向上 を契機 として,生
産 の各領 域 の 多様 な条件 に応 じた,情 報 と制御 の分散化 と,そ れに よる弾力的適 応・制御 を進行 させ る(注 1°)。 近代産業 の発展の歴 史は,生
産過程 の分 業化 の歴 史で あ り,労
働 内容 の細分 化・狭 除化 の歴 史 であ ったが,ME技
術 の導入 は,生
産 技術 や 労働 内容 の変化 の 方 向 を根 本 的 に転 換 させ る。 す なわ ち,生
産 技術 の方 向 は,こ
れ までの各産 業 に 固有 の技術 にあ りが ちな分業化 か ら,複
合 化・統合 化へ と転 換 して きて い る。 それ に伴 って,人
間労働 につ いて も,そ
の変化 の方 向は従 来 の労働 にみ られ た 特殊 化・ 専 門化 ・ 狭 除化 か ら一般 化 ・広域 化・ 複合 化 へ と転換 す るに至 って い る(注11)。 そ こには,普
遍 的性格 を もつ革新 的 な制御 技術 の展 開が,そ
れ を担 い うる人 ラ イ ン ト ラ ン 専 用 機 。F M ・ S M ・ C 機 C 機機 N用 個汎 ,」 ワ ー ク の間の資質 の形成
,す
なわ ち普 遍的 に発達 した人間像,多
面 的 で 自律 的 な職 能 形 成 を促 す側 面 がみ られ るの であ る(注12)。 しか しなが ら,他
方 にお いて,オ
ペ レー シ ョンを中心 に した旧来の熟練労働 は,ME技
術 の下 で不 断 に客観化・標 準化 され ソフ トウェアに体化 され,それ に 伴 って解体 が進行 して い くの で あ る。 熟練 技能が,ハ
ー ドとしての労働 手段 の 直接 的制御 の場 面か ら退 く代 わ りに,制
御 の制御 にか か わ る新 しい熟練労働 が 出現 す るに13)。 ンス テム設計や プ ログラ ミングな どの ソフ トウェア労働 にみ られ るよ うな,ME機
器 に 内蔵 され る制御機 能 その もの を考案・設計す る知 的・精神 的労働 が それ で あ る。こ うして,ME化
の進展 は,一
方 におけ る旧熟練 の解体・ 陳腐化 と他 方 におけ る新 熟練 の発生 。創 出 を通 じて,低
熟練 の定型業務 (単純 労働)と
熟練 を要す る判 断業務 とへ の労働 の二極分 化 を惹起 す る。(2)日
本型 生産 システムの先駆性 とME革
命 日本型生産 システムにつ いては,そ
れ をハー ドウェア とソフ トウェアの両側 面 か ら分 析 し,両 者 の有機 的体 系 として把握 す るこ とが可能 であ る。ハー ドウェ ア と しては,生
産 品種 の 多様化・ 高級化 に対応 した設備や工程 レイア ウ トの効 果 的 設計等が あげ られ る。 一 方,
ソフ トウェアにつ いては,
ジ ョブ 。ロー テー シ ョン と多能工化,職
種 区分 の単純化,チ
ー ム性作業 単位 とチー ム ワー ク,小
集 団 に よ る改善 活動 と提 案制 度,各
工程 におけ る品質 の作 り込み,作
業 手順 の現場管理 な ど,高
品質 と 高生産性 を可能 にす る種 々の ノウハ ウが凝縮 して い る。 このハー ドウェア とソフ トウェアは相互 に支 えあ う有機 的 な体 系 として機 能 してお り,そ
れ を「 日本型 フ レキシブル ウェア」 と規定す るこ とが で きる。 こ の 日本 型 フ レキシブル ウェアは,狭
義 の生産過 程 に焦点 を合 わせ た もの であ る が,それ を支 え る企業 内のバ ックア ップ システム としては,人
事 考謀 システム, 企業 内労働 市場,企
業別組合 の3つ
の柱,
さ らには社会 的 なバ ックア ップ ンス テム と して,水
平 的・垂 直的 な企業 間連携,企
業 と国家 の密接 な連携等が あ る。 日本型生産 システムには,ME技
術 の技術 的特性 と適合 しやす く,情 報化社会 の生産 ンステム を先取 りす る側 面がみ られ る。まず第一に
,職
種 区分が大 ぐくりで個々の職務 区分が曖味であるとい う没職 種的側面御4)は,ME技
術が要求す る労働の複合化,広域化に適合する側面をもっ ている。 米国の 自動車産業では,お
よそ 200に ものぼ る基本的な職種が労働協約のな かで も明示的に区別 されてお り,そ
れぞれが特定の賃金率 に結 びつ き,そ
れ ら の職種の間を移動す るためには専任権 などをは じめ とす る厳密 なルールによる 規制があるとい うのが伝統的な姿であった。 これに対 し,
日本企業の場合,職
種 区分 は2種
ない し3種
の区分 に とどまる。この ような大 ぐくりの職種構造は, 技術革新や需要変動 などに応 じて生産構造が変化 した ときに,細
かな職種 区分 に とらわれずに労働力 を柔軟に再配分 で きるとい うメ リッ トがある(注15)。 職種 と 労働者 との結びつ きを緩やかなもの としてお くことが,長
期性や同質性 を重視 した労務管理 の不可欠な前提 となっているのである。 多能工化 を目指 した労務 管理が, この ような傾 向に拍車 をかけてい く。 日本企業におけ る没職種的 ともいえる労務管理は,
日本経済の高度成長 とそ れに伴 う極端 な労働 力不足 とい う歴史的条件 によるところが大 きく,長
期雇用 とセ ッ トに して行 なわれて きた。 とにか く,必
要 な労働者数 をまず確保 して現 場 に配置 し,そ
の上 で職務 に必要 な知識・能力な どを付与す るとい うや り方 を とらざるをえなか ったのである。 そ うした状況下で,新
規学卒の定期採用方式 お よび企業内におけ る配置転換・職種転換方式,定
期昇給制度等が定着 。普及 してい き,
また,そ
の ことが,労
働者・労働組合の側 におけ る職種意識 を稀薄 にさせ,資
本による自由 自在かつ フレキシブルな職種転換 を貫徹 させ てい く。 第二に,日本の労務管理に特徴的な労職混合の側面は,ME化
が促すブルー カ ラーのホワイ トカラー化 を先取 りしているとみ ることがで きよう。 欧米諸国においては,ホ
ワイ トカラー (職員層)と
ブルー カラー (生産労働 者層)は
厳然 と区別 された二つの社会集団 をな している。両者の隔た りは大 き く,通
常は両集団の交流は稀 であ り,企
業内において も,そ
の役割,責
任,権
限お よび処遇 は画然 として区分 されていて,情
報交流の障壁の一つ となってい る。 ところが,
日本においては,第
二次大戦直後の時期 に,労
働組合運動による激 しい労職格差撤廃 闘争 な どに よって
,二
つ の労働 者集 団の関係 が一体化 して しまい,企
業 も労働 組合 にお いて も労職 混合 の特殊 な社会 を作 り上 げて しまっ た。 ブルー カラー に対 して も,月
給制,定
期 昇 給,ボ
ー ナ ス支給 な どホワイ ト カ ラー と同様 の賃金管理 が な され てい る(注16)。こ うしたブルー カラー の ホワイ ト カ ラー化 は,そ
の後に進展す る生産労働 の質的変化 (高熱 。重 筋 肉労働 か ら監 視 ・制御 ・保 全労働 へ の変化)や
生産労働 者 の高学歴化 に も適応 した もの であ り,ME化
へ の対 応 を先取 りす る側面 がみ られ る。 第二 に,
日本企業 に特徴 的 な「 多能工化」 は,小
品種 大量生産体 制 の下 で単 能工化 を志 向 して きた米 国型生産 システム とは異なって,ME化
に適合す る多面 的 な労働 能 力 の形成 を促 す もの とい え よ う。「 多能工化」をは じめ幅広 いオー ル ラウン ドな職務 能力の育成 のため に,日本企業 が行 な ってい るジ ョブ 。ロー テー シ ョンや各種 の企業 内教育 の計画的・組織的 な遂行 は,
日本 型 システムの もつME技
術へ の適合性 を示 す ものであ る。 第四 に,
自動車産 業 な どの「 カンバ ン」方式 にみ られ る生産 管理 の革新,す
なわち市場 情報 を起 点にした生産指示の方向転換 と命令指揮 系統の分 散化(注17)は ,ME技
術 に よって基礎付 け られ る生産 と市場 におけ る情報 の フ ィー ド・バ ック・ システム を先取 りす る側 面 を もつ もの であ る。 第五 に,小
集 団活動 や 改善 活動 にみ られ る,労
働 者 の 自主性 や 向上欲 求 を引 き出 し,そ の継続的 な発揮 を促 して い く労務管理 システムは,ME技
術 が促 す創 造 型 人間像 の方 向に沿 うもの といえよ う(こ18)。 第六 に,技
術 開発や 情報 交換 にお いては,組
立加工 型機械産業 に顕著 にみ ら れ る柔軟かつ幅広 い製 品開発 チー ムの編成方法,あ
るいは新 技術 導入 にみ られ る技術 開発部 門 と製造部 門の一体 となった現場密着型 ともいえる取 り組み方(「技 術・生産 一体 主義」)等
にみ られ るよ うに,多
部 門参加 型かつ現場密着型の ネ ッ トワー ク組 織(注19)は ,現 場 の熟練 ノウハ ウ を不 可 欠 とす るME化
の前提 ともなる もの で あ る。 第七 に,従
来,
日本経 済の二重構 造,中
小 企 業の低 賃金 とい う後進的 な要素 を利用 して進め られて きた大企業 の外部化,す
なわ ち,素
材や部 品の調達 にみ られ る高 い比率 の外 注化 とい う,
日本 に独得 な階層的かつ分散 的形式 は,組
織の肥大化に伴 う経営の硬直化 などを最小限に抑 えるとともに
,情
報 システム化 を進めやすい側面 をも有 している。 第八に,会
社派組合 ともいわれ る労使協調 さらには労使運命共同体 を旨とす る企業別組合の存在が大企業ほ ど顕著である日本の特異な労使関係は,欧
米 と は対照的に資本の思惑通 りのME化
の進展 を可能に している(図 23)。 以上にみ る日本型生産 システムの「先進的」側面は,ME技
術 と結合 しやす く,ME化
の先導役 を呆たす と共に,ME化
によってその技術的な基礎 を与 えられ, その「普遍性」 を確立 した といえよう。 しか しなが ら,他
方では,
日本型生産 システムは「人」的要素に大 きく依存 し,そのフレキシビリティを最大限に引き出 し活用す るシステムであるが故に, 図2
各種 コンピュータの 出荷,納入推移 ︵ 万 台 ︶ 6 0 4 0 2 0 0 パ ソ コ ン ︵出 荷 実 績 ︶ ︵ 千 台 ︶ 65 60 55 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 汎 用 ︵ 納 入 実 績 ︶ ︵ 万 台 ︶ 13 12 n ︲0 9 8 7 6 5 4 3 2 1 オ フ コ ン ︵ 出 荷 実 績 ︶ パ ー ンナル コンピュータ オ フ ィス コン ピュータ 汎用 コン ピ ュー タ '70 '75 '80 '85年 注:1.各
種 とも国内実績2.パ
ソコンは約40%前後の輸 出向 を含む 出所:日本情報処理開発協会編『情報化 白書』 1988年版, コンピュー タエー ジ社(同 書の資料 を加工 した。詳細の数字お よ び金額 は,同書 を参照の こ と)数 台 % 〓 〓 数 ♪ 実 < 台 1 1 1 1 1 1 万 図
3
世界の産業用 ロボ ッ ト稼働台数 (マニユアル・ マニ ピュ レータ,固定 シーケ ンス・ ロ ボ ッ トを除 く) 141,000 (67.3) 日本 93,000 (66.2) 29,000 (13.8) 21,032 (15.0) 4,950 (21.1) 1980末1985末
1987末 出所 : F産 業用 ロボ ッ トの現状 と展望』 (社)日本産業用 ロボ ッ トエ業会,1988年 10月 「人」的要素 を不断に コンピュー タに置 き換 えていこうとす る,ME化
の進行 を いわば抑制す る側面 を併せ もっている。ME化
自体,そ
のフレキシビ リティには (採用す るシステムによって)機
能 的に制約があ り,そ
れ を出来 るだけカバー しようとす ると莫大 な投資が必要 と なる。 しか も,新
しい コンピュー タ 。システムによって,人
間のフレキシブル なフィー ドバ ック機能 を代替 しようとすればす るほ ど,そ
れだけ システムは複 雑 にな り,新
しい予測不可能性が発生す ることが避けがたい。 したがって,
日 本型生産 システムにあっては,人
間のフレキシビ リティを比較的容易に活用 で きるために,よ
り複雑 なME化
に設備投資す るよ りも,金
をかけずに人間のフ レキシビ リティを活用 しようとす る志向が強 く働 くのである(注20)。 また,ME技
4,265 (18.0) ア メ リカ術は
,人
間の社会的 自立や全面的な発達 を促 そ うとす るが,
日本型生産 システ ムがは らむ特殊的側面は,む
しろ,そ
れ と矛盾す る性格 を有 している。 それゆ えに,シ
ステムその ものを根幹か ら揺 るがす面 を内在 しているといえよう。 3。 日本 型 生 産 シス テ ムの特 殊 的側 面 とフ レキ シ ビ リテ ィ(1)日
本型生産 システムにみ る曖昧性の構造 ① 職務区分 にみ る曖昧性の構造 職種 区分がおお ぐくりで単純 であることは,個
々の職種 区分が曖味 であるこ とにつなが る。労働分野におけ る職種 区分の曖味性は,企
業間関係におけ る契 約関係の曖味性 と表裏 の関係 にあ り,両
者は 日本型生産 ンステムに特徴的 な曖 味性の基本的な柱 となっている。「曖味性」は,融
通無碍 とあい通ず るもので も あ り,
日本企業のダイナ ミズム を生み出す とともに,他
方では不透明性や閉鎖 性 などの負の側面 を伴 ってお り,
日本型フレキシビ リティの重要 な特徴 となっ ている。 職種 区分の曖味性は,職
務区分 の曖味性に基づ いている。職務区分 の曖味性 は,職
務要素の弱 さを意味す る。そ して,職
務要素の弱 さとは,「人」的要素の 重視 に他 ならなぃ(江21)。 日本型生産 システムの核心は,
まさに「人的役割」にあ る。「習熟させ た人的資源 と人々の積極的な参加意欲 と努力」が,こ
のシステム の成否の鍵 を握 ってお り,「人」的要素への過度 ともいえる深い依存に立脚 して いる(注22)。 この「人」的要素への傾斜は,労
働者の現行の職務能力に とどまらず , 潜在能力や 人格・態度・思想等 をも含む評価につなが りやすい。企業内での立 ち居振 る舞いか ら人品骨董 までが見定め られ ることになるのであるに23)。 本来,職
務 区分 の大 ぐくりと配置の柔軟性 は,社
会的,客
観的な評価 をもつ 職務能力の計画的養成 と結 びつ き,
しか も,個
人の専 門能力や 人権が正 当に評 価 され確保 されてこそ,初
めて人間的で適切 な もの となる。 しか し,企
業の内部 で しか評価 で きな く,企
業の恣意に委ねている現行の職 務能力の形成は,個人の社会的 自立 を妨げ るものにならざるをえなぃ(注24)。 それ は,企
業におけ る人事評価制度や賃金制度の「曖味性」,不
透明性 と深 く結びついている。 日本企業におけ る個々の労働者の賃金の メカニズムは
,
きわめてわか りづ ら い。非常にモヤモヤ した査定昇給 (個人に よってバ ラエティに富む)の
積み上 げであ り,会
社 は査定理由について個々に説明 しない し,労
働者 もそれ を聞 こ うとしなぃに25)。 それ を詳 しく聞 きたい労働者は少 な くない し,同僚 とのほんの わずかな賃金格差に一喜一憂す るのが多 くの労働者の内面であるが,そ
うした 行動に出ることは,企
業や上司に対す る不信 ととられた り,「危険」な思想の持 ち主 とみなされがちである。 したが って,個
々の人間の疑念は彼 らの内部に沈 澱す るのである。労働者は,
自分 自身の賃金について説明で きない し,企
業 も なぜ そ うなるか を説明で きな くなることが少 な 〈ない。 「能力主義」管理 をかかげる日本企業の「能力」評価の基準は,潜
在能力考 課,成
績考課,情
意考課の3つ
に大別 され るが,そ
れぞれの基準については, 科学性,客
観性の根拠が明確 ではない。 しか も,人
格,態
度,思
想 といった「情 意」考課に限 りな く結 びつ きやすぃ(注26)。 その結果,人
間の心や家族 まで も巻 き 込む管理 となる傾向を内包 してお り,人
そのものを管理 してしまう危険性 とそ の危険を冒すことによる「効率性」に依拠するというシステムになっている。 労働者の人権や労働権にまで踏み込み,そ
れを侵害することによって成 り立つ というメカニズム,こ
こに日本型労務管理の「前近代性」,後
進性があるといえ よう。 ② 契約関係 にみ る曖昧性の構造 次に,企
業間の契約関係 については,契
約 内容が明示 されてお らず,責
任範 囲が不明確 であるとい う指摘が少な くない。 これ を「契約関係の曖味性」 と規 定 し,職
種 区分 の曖味性 とも相関の うちに捉 えたのは,清
日向一郎氏の畑眼であ る(注 27)。 清氏は,
自動車産業における企業間の取引関係について,
自動車 メー カー を 中心に して素材 メー カーお よび部品 メー カー との関係,な
らびに部品メー カー と素材 メー カー及び機械 メーカー との関係について,品
質問題の観点か ら実証 的に分析 し,品
質問題 を軸に した 日本型生産方式の解明 を図っている。品質 とコス トと納期 は
,相
互 に規定 しあ いなが ら,
日本 型生産方式の コア を 形成 して い るが,そ
の 中心 に品質 問題 が あ る(滋 28)。 現代 日本 においては,あ らゆ る資材 の納 入 品質 は,JIS規格 を越 え る常 識外 の圧倒 的 に高 い品質管理 水 準が要 求 され,こ
れが最終製 品の高 い品質 に結 びつ いていて,欧
米 との品質 ギャ ップ を生 み 出 して い る。この高 い品質 を もた ら して い る最 重要 な要素 の一 つ に
,素
材や部 品の高 品質 が あ り,そ
れ は品質契約 におけ る企業 間の取 引関係 の 日本 的 な特殊性 に よってい る。 その 日本 的 な特殊 性 とは,設
計 図面 と製造 品質 との ギ ャ ップ であ る。 設計 図 面 に発 注 スペ ックが 必ず しも明示 されてお らず,
しか も設計図面 と実行検査規 格 とのギャップが存在 している 。 これは日本企業の「現物主義・非契約主義」 ともいわれ,欧
米の「図面主義・契約主義」 とは対照 をなすに30)。 図面上の責任 範囲の所在が不明確なうえ,品
質不良の判断基準は,図
面 との整合性にあるの ではな く,現
物において責任があるかいなか,
という点にある。 図4
鋼材の化学成分の含有量のパ ラ付 き (硫黄成分含有華0.05%以下に 対 しての成分バ ラ付 き) 0.05% 100 米国製素材の パ ラ付 き状態 40 日本製素材の パ ラ付 き状態0
0.02% 0.01% 出所:日系現地企業か らの ヒヤ リングに よる。 中央大学経済研究所編 『自動車産業の国際化 と生産 システム』 中央大学出版部 1990年 213ペー ジ 表1
設計・ 製造 と設計変更の プ ロセ ス 設計部 門 製造部 門 品質検査部門 米国 企業 完全図面完成 図面通 りの製造,そのためのラ 設計品質の実現状態に関す る イン設計検査 80%程度の図面 20%は 購買先図 日本 企業 生産 の実情 と製品品質の状態 に応 じて図面,素 材,加工変更 品質要求
,生
産効率 の状 態に よって現場 で図面,材料,加工 方法の変更 出所:米国進 出 日系部 品 メー カーか らの ヒヤ リングか ら作成 中央大学経済研究所編 前掲書 225ペー ジ設計図面にみ る責任範囲の曖味性
,及
び設計図面 とは切 り離 されて独立に機 能す る品質保証は,
日本型生産 システムの出発点 をなす。サプライヤーの各セ クションは,契
約的な枠組みの中では機能 しえな く,企
業総体 としての品質保 証 を要求 される。そのため,品
質保証は,従
業員総体の思想へ と展開す る。「品 質 とコス トの作 り込み」の運動が,企
業総体 としての共同連帯責任に対す る思 想的な保障の役割 を呆たす ようになるのである(注31)。 こうして,カ
スタマーの要求に対す る問題解決のために,共
同連帯責任が常 識化す る。 その遂行 のために,残
業の常態化,高
密度 な労働,精
神 までの総動 員が促 され る。 しか も,そ
うした動 きは,サ
プ ライヤー内部の各セ クシ ョンの 自立性,独
立性,相
互の職務 区分 を曖味化 させ るのである(注32)。 個別の労働契約 におけ る契約 内容 の曖味性 に加 えて,職
務 区分 の曖味性が,そ
うした傾 向の土 壌 となる。 さらに,こ
うした企業間の取引関係の曖味性は,
自動車 メー カー と鉄鋼 メー カーの関係にみ られ るように,日 本型カルテルの温床 となっている。「事実上の 受注生産」に加 えて,「特殊規格の未公表」や数 えきれないほ どの共同開発プ ロ ジェク トの存在などは,
自動車 メー カー と鉄鋼 メー カー との間にインヴィジュ ブルかつ「特殊 な結合関係」すなわちカルテル的関係 を形成せ しめている(注 33)。 個々の労働者や企業に とって,明
確 な契約 に基づ く権利 と義務の存在は,近
代的な市民社会 と市場の成立の基本的前提 である。 ところが,
日本方式に顕著 にみ られ る「契約」的要素の後退 と直接的な力関係の前面化は,労
働者の人権 や企業の責任・ 自立性 をもむ しばむ要 因 となっているのである。 しか しなが ら,他
方において,「現物主義・非契約主義」 とい う日本方式は, 無際限な共同連帯責任や高密度 な長時間労働等の犠牲 を伴 いなが らも,製
造業 者 としての ノウハ ウの蓄積や技術蓄積,熟
練の蓄積 な ど,
日本型フレキシビ リ ティの技術的基礎 を生み出 して きたことも指摘 しておかねばなるまぃ(注34)。(2)日
本型インフォーマル性の構造 ① 企業内における日本型インフオーマル性の構造 日本型生産 システム,と りわけ労務管理にみる特殊性は,日本特有のインフォーマ ル性 (非公 式性
)の
諸形 態 に集 中的 にみ られ る。 日本 の労務 管理 にみ るイン フォーマ ル性 の基本 的特徴 は,次
の点 にあ らわれ てい る。 第一 は,
日本 の大企業 にお いて顕著 にみ られ る経営組織 と労働 組合 の関係 の 不 明確 性,曖
味 性 であ る。 経営組織 と労働組合 は相互 に独 立的,
自主 的 な組織 であ るこ とが 国際的 ・社 会 的 には前提 とされて い るが,
日本 の労働組合 は この点 で大 きな問題 をは らん で い る(注35)。 企 業別 労働組合 が大半 を 占め る 日本 の労働 組合 の主流は,会
社 派組 合 といわれ る労使 協 調 を第一義 にかか げ,近
年 では労使 運 命 共 同体 としての傾 向 を強め るに至 って い る。 組合 の役 員 は,職
制 に よって 固め られ,組
合機 能 と 職 制機 能 の 区別 が曖味化 して,職 制機 能へ と変質 し,組 合機 能 の 空洞化 が起 こっ て い るの であ る。 この組合機能 の空洞化 は,最
近 の企業不祥 事 の続発 とも深 く 関連 してお り,企
業 内 にお け るチ ェ ック機 能 の喪 失 とい う観 点か ら も問題視 さ れ るに いた って い る。 第二 に,労
働 協約や就業規則,さ
らには憲 法や 労働 基準 法 と,職
場 におけ る 日常 の労働 生活 との関係 の不 明確 性,曖
昧性 が あ る(注 36)。 日本 の労働協約 は包括的・抽象的 であ る とい う特徴 を もつが,労
資関係 の重 要事 項 が労働 協 約 に基づ いて運 用 され て い る とは言 いが たい傾 向が 強 まって き て い る。さらには憲法や労働 基準法 を無視 した反人権 的 な労働へ の誘導,強
迫, す なわ ち イ ンフ ォー マ ル な労務 管理 が,日常 不 断 に進 め られ てお り,「工場 の問 前 で憲法死 す 」 と言 われ る状 況 を も広範 に生 み 出す に い た って い る。 第二 に,そ
う した イ ンフ ォー マ ル な労務 管理 が,企
業 の なか では労 資関係 の 度合 いに応 じて,非
公 然 に,あ
るいは公 然 とや られてい る ものの,社
会 的 には 閉 ざされ,隔
離 され て 目の届 か ない仕 方 で進 め られ て い る(注37)。 第 四に,労 資関係 を左右 す る重要 な位 置 を占め る労働 組合 に対す るコン トロー ル にあた っては,い
わゆ る企 業 内の インフォーマ ル組織 が きわめて重要 な役割 を担 って い る。 第五 に,イ
ンフォー マル組織 を軸 に しての企業 に よる労働 組合 の掌握,す
な わ ち会社 派組合 の確 立の うえに,労
使運 命 共 同体 を前提 とす る 日本 型生産 シス テムが展開 されてい る。こうした状況に疑間 をはさむ者や批判的な者は
,異
端者あるいは問題者 とし て種 々の差別や監視 を受け るこ とになる。昇進・昇格面でのスロー ダウンや キャ リア形成の不利,あ
るいは,上
司や組合か らの種々の嫌が らせや村八分的な扱 いなど,に
見舞われ る。 そ うした不当な差別の実施にあたっては,職
制のイン フォーマルな機能が重要 な役割 を呆たす(注38)。 この職制のインフォーマルな機能は,一
つには人事考課 システムのなかに黎 まれてお り,
もう一つは,そ
うした機能の発揮 を規制す る組合機能の空洞化, さらには加担者への変質がある。人事考課にみ る「能力」評価の曖味 さ,
とり わけ,「能力主義」管理におけ る情意考課の存在 と機能のなかに,人
事考課の一 端 を担 う職制の匙加減の度合 い と,そ
れに深 くかかわっての,個
人の思想や私 生活な どへの過度 なコッミトメン ト,人
間支配への傾斜が潜んでいる。 この ようなインフォーマルな労務管理 は,他
面では,労
働者に対す るきめ細 かな個別管理や,「自主性」や「 自発性」をも刺激す る方法 と結びついて展開 さ れてお り,む
しろ,そ
れ故に,前
者の浸透 を可能に した といえよう。 まさに, 日本型 ともいえるインフォーマル性 と「先進性」の結合 したや り方は,
日本型 生産 システムの基本的な特徴 である。 日本に特有 な企業内の インフォーマル構造 をよ り直接的に示す ものに,「イン フォーマル組織」がある。 このインフォーマル組織分析の重要性に着 目し, メ スを入れ ることの必要性 をクロー ズ 。ア ップさせ た数少ない研究のなかで,高
橋佑吉,山
本潔,青
木慧 らの研究が注 目され る(注39)。 組合規約にないインフォー マル組織が会社 (労務 。人事部門)の
肝煎 りで外部機関の支援の下に作 り出さ れ,労働組合 を会社派へ と塗 り替えてい く過程が,日本の労資関係の転換期(1960 年代 ∼70年代)に
次々 と発生 した。 インフォーマル組織には,非
公然の もの と,一
部に公然化 した もの とがある。 この うち,公
然化 した もの としては,会
社製の種々のサー クル・ グループの組 織化がある。 出身地別や出身学校別,趣
味や職性別 などのサー クル・ グループ 活動の きめ細かな展開は,会
社 での仕事 は もちろんのこと,そ
こを離れた私生 活の領域 において も会社 に引 き付けてい くうえで重要 な機能 を担 っている。そ の典型的な事例 として,
トヨタの社 内諸団体がある 。社 内団体 注)1 「参加する方法」の比率 (%) 75.0 職 制 別 グ ル ー プ 出 身 別 グ ル ー プ 95.2 94.1 68.8 75.0 55.9 53.8 49.1 齢 職場 グルー プ 同窓会 県 人会 社内団体名,人員等の原資料は,F甲新聞』(1986年 4月 18日),坪井珍彦「や る 気を伸ばすインフォーマル活動」(中山二郎編「全員参画経営の考え方 と実際』1972 年, 日経連)お よび甲自工『広報資料』(1981年),野原光・藤田栄史編『自動車産 業 と労働者」(1988年
,法
律文化社)257頁 による,時点は 1986年,ただし,拿印 は 1981年 。 「『参加する方』の比率」は,「職業・生活研究会」の「職業・生活調査」(1980 年)結果(問26)で,上
記諸団体に,「あなたは参加す る方ですか,参加 しない方 ですか」という質問への回答である。小山陽一編『巨大企業体制 と労働者」(1985 年,御茶の水書房)268,269,272-275,295,326,665頁 ,『立命館大学人文研究 所紀要』32号,178-183頁 による。 山本 潔,「大企業の労資関係」 東京大学社会科学研究所編 F現代 日本社会 第 5巻 構造』 東京大学出版会 1991年 2 構 成等 構 成員 (1986年) 人数 部長(人
) 課長 係長 工長 組長 班長 920 3,200 8,100 部長会 課長会 係 長会 工長会 組長会 班 長会 大卒 者 高専卒 者 短大卒 者 養 成工・ 学 園卒 者 高卒 者 自衛 隊除隊社 員 臨時工登用社 員 自動車整備 学校卒 00 50 50 00 00 00 00 22 豊進会 豊泉会 豊輝会 豊養会 豊生会 豊栄会 豊隆会 整豊会 女子大卒・短大卒者 女子高卒者 女子中卒者 女子臨時工登用社員 2 グ リー ン クラブ み ど り会 若葉会 若草会 技専 コー ス修 了者2,700*
技専 同窓会 「検査 グループ他」 高校 同窓会 6,200人等 「沖縄健児の会」他 出所)しか しなが ら
,イ
ンフォーマル組織 の よ り本質 的かつ戦後 日本 の労 資関係 に お いて重要 な役割 を果 た して きた もの として,非
公 然 の組織 が注 目され る。 こ の非公然組織 は,戦
後 にお いて戦 闘的 な労働 組合 を解体 す るため に各企 業 にお いて網 の 目の ご と く作 られ た ものであ る。 そ うした インフォー マル活動 の事例 と しては,東
芝 の「緑会 」,
日本鋼 管 の「創友会 」,
日本 ステ ンレスの「 八葉会」, (注 40)(図5) 雪印食品の「DEC」 等があ り,多
くの産業,企
業 にわたってみ られ る 企業による組合の乗 っ取 りのために,
まず,組
合活動家に知 られないように 非公然かつ周到 な計画 と段取 りで もってインフォーマル組織づ くりが進め られ る。 この組織化は,企
業の労務や人事部 門の肝煎 りで始め られ る。 そ して,そ
のインフォーマル組織 を核 に して,組
合機関に何人か を送 り込んで,組
合機関 内の動向をに らみつつ,一
般労働者に対す る工作が組織的に進め られてい く。 会社 の描 く路線に反対す るこ とが査定や昇進・昇給に響 き,
きわめて不利な配 転 などの措置 もあ りうる,
といった脅 しがなされ,切
り崩 しがはか られ る。 こ うした周到 な準備 と工作の もと,あ
る時期 に,一
挙 にインフォーマル組織によ る組合 の乗 っ取 り (多数派支配)が
出現す るにいたる(注41)。 このインフォーマル組織は,
自主的組織 を装 いなが らも,そ
の運営は労務や 人事部 門の コン トロール下にある。 さらに,こ
の企業内のインフォーマル組織 を理論的に も教育面で も支える全国的な教育機関・ネ ッ トワー クがある。「富士 政治大学校」や「 日本政治経済研究所」などがそれである(注 42)。 それ らは,戦
時 中の政治転向者等 を核 に して,財
界などのバ ックア ップによって組織 された も のであ り,反
共のイデオロギー を軸 に して,戦
闘的労働組合や左翼 に対す る敵 視 として対抗 。破壊活動 と思想の注入がはか られている。企業内の インフォー マル組織か ら毎年計画的に多 くの労働者がそこに送 り込 まれる(注43)。 このインフォーマル組織が組合 を乗 っ取 ると,労
資関係の見直 し,再
編成が 企業主導によって一挙に進め られ る。会社派組合が確立す ると,組
合選挙 など 組合規約の改悪が急 ピッチに進行す る。 そ して,戦
闘的な活動家が組合機関か ら完全 に排除 されてい く。 以上 にみ るようなインフォーマル組織は,欧
米の戦場で も自然発生的にみ ら れ る職場のインフォーマル集団 とは異質な ものである。両者の違 いは次の3点
畑 椰 緋 縮 枢 籠 “ 榊 u 楓 畑 へ 。 ヽ 、 ・ ヽ や 網 蕉 叫 畑 豪 ・ ヽ 、 L ヽ O 黙 書 畑 雙 確 枢 や [ 8 ︻ ぐ 堅 ■ 小 К 嵌 R ﹃ 廻 鍵 築 い 駅 ぐ 却 く Ш ゼ パ ﹄ 曙 さ 駅 磨 絣 薫 ぐ 響 朴 К 採 κ ﹁ 送 口 緻 ぶ 0 柵 ぐ К ﹂ . ヽ く 一 ヨ ︵ 嵩 ■ ポ ] 脚 製 ぺ D K ﹁ 一 郎 堅 C 廻 撻 牽 興 ﹁ ぐ 臓 ﹂ ゲ 像 契 o 条 叔 ,や 0 雲 ﹁ 一 畑 択 ^ e 製 C 劇 黒 C 掏 句 縮 枢 ・ ヽ 、 口 ヽ ぃ ざ 熙 0 ﹁ ] ヽ 雲 世 ^ N 同 製 F や ヽ ヾ で ぼ 勲 榊 メ 3 ﹃ 累 熙 ﹄ . ∞ 。 ﹄ 卜 ^ ∞ 卜 ^ N ﹄ .Q ぃ Φ いo Z ^ N O ^ HO ヽ 〇 い .Q .∞ いo た .ΦΦ ^ N .Q .Hい o Z ^ ︻0 .0 ^ い ゛o Z ヽ 〇 ト .トト .Q ^ 0 ∞o Z ぃ N﹄ .Q .いい o Z ^ 〇 ∞ ^ 0卜 .0一 ヽ ∞ ∞o 2 .HH .Q ^ O No Z ^ ゛ Φ .α ^ 崎 No Z ^ 卜 一 ︱︲い N .Q ^ O No Z ^ Φ 卜 .Q ヽ ∞ Ho 2 .Φヾ .0 ぃ ﹄ Ho Z .∞Φ ぃ 0 ∞ .Q 6 ■ 2 .鶏 こ ぶ 官 z ^ 一 Hこ .N 官 z ぃ 〓 d ^ ∞ o た 。 厳 鯵 勲 K ・ 中 C 卜 ヽ せ ﹀ N 。 さ せ 0 ﹁ せ 中 翡 ﹃ ,約 ● 絆 ﹄ 濡 区 選 ﹁ ぐ 眠 ﹂ バ ︵ 刹 回 ︻ 吹 ︶ 曖 ﹄ o 吹 や ︶ ︵ 吹 腰 ﹄ o 吹 や ︶
︷一赫
肥仰
=K
颯
一︵回
H吹
︶
椰 簿 輸 メ 哨 縮 枢 黙 H O O ︵ ミ 橡 Q 週 ン 一 ぐ 躙 題 ・ 縮 針 却 ぐ b “ 黎 督 r ﹂ 繊 .哨 鈴 似 中 一 ″ ^ 哨 ヽ 、 口 ヽ や 、 噸 郡 縮 E 債 や .椰 念 メ ■ ﹂ ︵ 回 ︻ 辞 ︶ ︵ 回 憫 I H せ ︶ ヽ 壽 E 繊 稲 枢 佃 = K S 一 ″ 叫 郎 ヽ 嘔 縮 枢 や 、 L ヽ 、 は ヽ 一 網 ぐ 暉 縮 似 皿 畑 = 畑 雄 メ ■ 畑 ] 円《叫 暉 “ ぐ ・ ヽ 、 口 ヽ 黙 書 rlO-lHN) 11屋巡掏珊●匈│ t■ Ю リ 調編督眠郎肛くK 羹裕輸 凛優埋書縮 ヽ掏メざ喘 墨区瀧喘 椰終 嘔 く0 ポ滞榊ヽ増 曝 《 。駅 に ” 嘔 ¨ ヽ 、 ■ ^ 暉 ヽ 、 ■ ヽ ゛ 無 ︵哨 稲 F﹂ 繊 様 ︶ 怖 I 暉 怖 継 メ ■ 哺 ・﹂ ﹂ 暉 ︲ ︲ ︱ ︱ ︱ ︱ ト 韓終輪 頭優縮 ヽ糎メヾ喘 邸区総職 椰裕嘔 (H傘 ぶホ州黙) 枢 N∞ ヽ 、 口 ヽ ∞ 回 畑 判 躊 相 ぶ 翔 掘 ロ 却 颯 K ホ [優 u 稲 ぐ 嘔 喘 メ ﹁﹃ ヽ 、 ュ ヽ “ 滸 鮮 メ ■ [呵 郎 ] 訃鯛は くK却 翻 ぶ縮 議螺細躙榊椰側 邸区舶 『黎鶏恥』yぶ
撃 ぶ駅くK縄 曝蝶・ 漱嚇 濡最 □ = 緊 S 製 華 理 塵 ﹁“ 爬 ﹂ ぼ 響 n 図にある(注 44)。 第一 に
,欧
米の職場に もみ られ るインフォーマル集団は,資
本の支配に対抗 して 自然発生的,偶
然的に生 まれた職場 レベ ルの集団であるのに対 して,
日本 の企業内インフォーマル組織は,労
働者の間に 自然発生的にあるいは 自主的に でて くる種々な抵抗 を阻止 し,資
本の支配 を貫徹す るために,計
画的・組織的 に資本の意図で もって作 られた ものである。 第二に,職
場の 自然発生的なインフォーマル集団は,「場の共有」を前提 とし て面接可能 な小集団に限定 され るのに対 して,
日本のインフォーマル組織は, 全国的規模 のスケールを持つ もの もあ り,小
集団に とどまらない。 第二に,欧
米の職場 に もみ られ るインフォーマル集団が,資
本に対す る労働 者の 自律性 を確保 しようとす るのに対 して,
日本のインフォーマル組織は,労
働者の 自律性 を破壊 し,労
働協約や就業規則に とどまらずに憲法や労働基準法 をも侵害す る反人権的 な組織,集
団である。 したが って,
日本の インフォーマル組織は,欧
米の職場に もしば しばみ られ るインフォーマル集団 と比較 して,「その形態 としてのインフォーマル性のみ を 受け継 ぎ,内
容的にはまさにその逆の『企業の論理』が貫徹す るものに改鋳 し て しまっている」 とい う「 日本的=転
倒的な性格」が特徴的である(注45)。 ところで,数
々の衝撃的なルポルター ジュによって, 日本の労資関係の暗部 に メスを入れた青木慧氏は, インフォーマル組織が企業のフォーマル機構 と密 接に絡み合 っているこ とか ら,「秘密労務組織」と呼ぶべ きであると述べ てお り, また,そ
うした組織 に支えられている労働組合 は「疑似労組」あるいは「偽装 労組」であると指摘す る。 そ して,
このインフォーマル組織が,企
業の枠 を越 えて,国
家権力や財界 とのインフォーマル・ ネ ッ トワー クによって支えられて いるこ とをえ ぐりだ した(注46)。 この ようなインフォーマル組織が,「タテ」社会 の下で機能す ると, どの よう になるのであろうか。 いわゆる「タテ」社会 は「場の共有」に基づ く「タテ」 系列の情報流通が顕著な社会 である(注 47)。 企業内のインフォーマル組織は,大企 業に特有 な「タテ」系列の種 々の力 をフルに利用 して,そ
れ までの労資関係や 労働組合の機能の解体 。再編成 を進めた。出身別 (学校,地
域別)の
先輩・後輩関係
,企
業 内地位の上下関係,あるいは親企業 と下請企業の関係 といった「タ テ」社会の個々の集団 をも,企
業社会の再編成に多面的に動員 したのである。 そ うした結果,大
企業の労資関係 においてはインフォーマル組織が「フォー マル」機構 を支配 し,労
働組合が経営組織か ら独立 して機能す るこ とが著 しく 困難になるのである。 こうして,企
業内におけ るチェック機能の重要 な一角が 空洞化す ることによ り,憲
法や労働基準法 などが蹂躙 され る等のいわば無法地 帯 もみ られ,市
民社会のルールか ら逸脱 した状態が,企
業内 とい う閉鎖的状況 のなかで広範に出現す るに至 っている。 ところで,こ
の ような経営組織によるインフォーマルな支配の構造は,労
働 関係に とどまらない。経営組織 その ものが 自らをチェックす る機能 を形骸化 さ せ るにいたっている。 日本の企業においては,経
営 トップを決定す るルールがな く,密
室で恣意的 に決め られている。 しか も,
トップが責任 をとるルールす らない。 こうした曖 味 な慣行の うちに,イ ンフォーマルな専制支配が敷かれやすい土壌が出来上がっ ている。本来,代
表取締役 を監査すべ き取締役,取
締役のや ったこ とを監査す べ き監査役,そ
して会計 を監査す ることになっている公認会計士が,い
ずれ も その機能 を果た してお らず(注48),む しろ逆 に コン トロールされ るとい う転倒 し た関係がみ られ る。 こうして,経
営 トップが暴走 しやすい土壌がで きてお り,
まさに曖味性の構 造 を通 して,フ
ルキシブルかつ インフォーマルな専制支配が貫徹す る仕組み と なっているのである。 ② 企業間 および,行
政 と企業の関係 にみ られ る日本型インフォーマル性の 構造 なお,曖
味 な方法によるインフォーマル支配構造は,親
企業 と系列企業 との 関係,お
よび親企業である大企業間の関係の うちに もみ られ る。 一般 には親企業が50%以
上の株式 を所有 している会社 を子会社,20%以
上の 株式 を所有 している会社 を関係会社 と呼んでいるが,日本 では20%や 10%程
度 の少 ない株式比率 で も十分支配が可能で系列化 している。 この安上が りの系列支配方式は
,役
員派遣 とい う「あいまい」な方法 とセ ッ トになってお り,欧
米 に広 くみ られる役員兼任 (とい うよ り確かな支配)の
形式 とは異なる点が注 目 され る。役員派遣は,法
的にはその人が親企業 を退職 しているために,企
業内 の関係 ではない。 しか し,実
際には親企業の コン トロール下にあ り,系
列支配 が貫かれている。 こうした曖味性の構造が,親
企業に とっては きわめて好都合 であ り,安
上が りで リス クの少ないインフォーマルな系列支配 を可能に してい るのである(注49)。 親企業 と系列企業のこの ような関係が,独
占禁止法に抵触す るのみならず, 基本的人権か らみて も問題があることについて,奥
村宏氏の次の指摘が興味深 ぃ(注 50)。 「企業系列についてみ ると,大
企業 と中小企業 との賃金格差,そ
して親会社 による『安上が り』で『あいまい』 な支配,そ
れ を受容す る系列企業の経営者 や従業員,そ
れは公正 な関係 とはいえない。企業間の関係は人間 と人間の関係 に も,影
響 を及ぼ してい くが,そ
こでは,一
方が優越的な地位 にたつ ことは基 本的人権の立場か らみて不平等であ り,不
公正である。」 また,株
式の相互持合 いを基礎 とす る企業集団におけ る,大
企業間の関係 に おいて も,「曖味」な方法 を通 してのインフォーマルな相互支配の構造がみ られ る。個々の大企業は,株
式 としては,相
互に数%の
持株率 で しかないため支配 す ることができないが,グループ全体 では,20%あ
るいは30%以
上になるため, 支配が可能になる。 この点で企業集団におけ る株式の相互持合 いは,そ
の曖味 な性格 をもちなが らも,安
上が りな支配の方法である。 この株式相互持合 いの うえに立脚 して結成 されている社長会は,法
的には何 らの根拠 もない無性格 な 会合 であ り,非
公開であるが,事
実上の大株主会 としての性格 を有す るもの と なっている(注51)。 次に,企
業 と行政の関係にみ る曖味性の構造 とそれ を媒介 とす るインフォー マルな支配のメカニズムをみておこう。 いわゆる官僚 と企業の関係については,従
来,強
調 されて きた「官僚主導」 論 に対 して,奥
村宏氏は「会社本位」主義 を対置 してお り,官
僚が企業本位体 制 を保護・育成す る構造 を指摘 している。企業 と行政 を媒介 とす る 日本的なや り方 として
,行
政指導が有名である。 こ の行政指導は法律上の根拠 をもってお らず,強
制力はないため,現
実に機能 さ せ るには,国
民の 自発的協力 を持つ ことが大前提 になっている。 ところが,行
政指導に従 わない企業や機関に対 しては,許
認可権や補助金の配分,種
々の監 督権 限など,官
僚が行使 で きる権 限の全て を駆使 して側面か ら復讐 を図 る。 こ のため,予
想 され るダメー ジを恐れ,結
局は行政指導に従 わ ざるをえないよう にさせ ている。 内橋克人氏は,行
政指導の本質が「心理的牽制による強制力」 にあ り,「目に見えない権力」の行使 として捉 えているに52)。 まさに,立
法府で もない行政官僚が法律 な どに まつ まで もな く,曖
味 な形で 企業に介入 し,「目に見 えない権 力」をフレキシブルかつ インフォーマルに行使 す ることがで きるのである。 そのインフォーマルな権限行使 は,大
企業本位 の 体制に奉仕すべ くなされてお り,そ
の見返 りとして,官
僚 の天下 りがある。 企業 トップ と官僚 との定期的会合 を通 してなされ る行政指導は,非
公開であ り,記
録す ら残 されない。 そこにみ られ る「曖味 な基準,ア
ウンの呼吸,そ
し て,あ
るのかないのかいっさい 目に見えない暗黙の強制力」が また,責
任の所 在 を曖味に し,責
任 回避 を可能にす るのである(注53)。 こうして,曖
味 な方式 を通 してなされ る「フレキシブル」でインフォーマル な支配の構造が,基
本的人権や労働権 に も抵触す る「人的フレキシビ リティ」 を媒介に して,企
業内に とどまらず企業間や企業 と行政の間などに も貫かれて お り,
日本型フレキシビ リティの コアを担 っているのである。 以上にみて きたように,先
駆的な管理方式や情報技術 に基づ くフレキシビ リ ティの側面 と,イ
ンフォーマルな構造に凝縮 され る前近代的かつ不透明な側面 とが結合 した日本型システムに特徴的な構造 と機能 を,「日本型フレキンビリティ」 と規定す る。4.情
報 化 と フ レキ シ ビ リテ ィ(1)日
本型生産 システムの普遍化 と情報技術 個々の労働者の細部に までわたる情報の時系列的 。長期的把握 とそれに基づく査 定 及 び
,キ
ャ リア形成,昇
進・昇格 の管理 は,ME技
術 に基づ く情報 システ ム に よって体 系的 な実施 が可能 とな り,そ
の管理 の際限 な き細密化 と浸透 を可 能 な ら しめ るに至 った(注54)。個 人情報 の きめ細か な収 集 とそれに基づ く減点主義 管理 は,個
々の労働 者 を企業社 会 の なかへ深 く引 きず り込 ん でい く。 情報 技術 は,
日本経済の二重構造 の下 で高度 に階層化 され組織化 され た分散 型管理 システム,す
なわ ち部 品供給 システムに管理上 の技術 的基礎 を与 え るこ とに な った。1次
下 請, 2次
下 請,
とい った ピラ ミッ ド型の系列支配構 造 は, 有機 的 で フ レキ シブル な システム と して機 能 して い るが,親
企業か らの種 々 な 要 請 に対 す るフレキシブルかつ システ ィマティックな対応 と情報 のフィー ドバ ッ クは,情
報 シス テムに よって技術 的 に も可能 とな ったの で あ る(注 55)。 こ うして,そ
れ までの 日本型生産 ンステムに特徴 的 であ った階層的 な分散性 に基づ く情報の フ ィー ド・バ ック・ システム と合理 的 なモ ノの流れ は,情
報 技 術 を媒介 とす る情報 システムに よって,そ
の技術 的基礎 を確 立す るに至 ったの で あ る。 ここに, ジャス ト・ イン・ タイム な どの 日本 型生産 システムが トヨタ とい った地域的,産
業 的 な限定 を突破 して,各
産 業 に及 び全 国的 な スケー ル で 拡 大す る技術 的基礎 が与 え られたのであ る。 石 油 危機 を契機 に高 まった省 資源 ・省 エネル ギー のニー ズ,需
要 面 にお け る 多様 化 ・高級化 の傾 向,減
量経営 に よる省カ ニー ズ等 は,そ
れ らの実現 の手段 と してのME化
の導入 を促 した。 そ して,工
場 か ら営業 の端 末 に まで,さ
らに は製造業 に とどまらず流通・サー ビス業 に至 るまで,情 報技術 が浸透 す るに至 っ た。 情報 技術 に基づ く生産 システムや 流通 システム な どの再 編 成 は,生
産や 流通 な どの現場 におけ る最新 情報 の収集 と本社・管理部 門へ の フィー ドの速度 と精 度 を飛 躍 的 に高め るこ とに なる。 その結果,管
理 の密度 が飛躍的 に高 ま り,そ
れ が労働 の高密度化 を不 断 に促 し,労
働 者 の神 経 消耗 や 長 時 間労働 を もた ら す(注 56)。 一定 の普 遍性 を持つ に至 った 日本 型生産 システムは,国
内の各産 業・ 各地域 に波及す るに とどまらず,国
際化 へ と進 ん で い く。 生産 と金融の国際化 は,情
報 技術 の 国際的展 開に支 え られ,24時
間 に わ た って順 次,世
界各 地 を駆 けめ ぐる情報へ の対応 を促 して
,長
時 間労働 を常 態化 させ て い く。 日本 企業 に顕著 な 少数精鋭化 の ため,国
際部 門にお いては,極
度 に絞 った昼 間の要 員 が,夜
間 に な って も世 界各地 との対応 に追 われ「正規 の本業」化 して,い
つ までた って も 業務 か ら解放 され ない。 また,海
外 出張 の頻繁 化 は,そ
の間 に積 もった り仕残 した国 内業務 の処理 に,帰
国後,追
われ る とい った状況が生 まれてい るに57)。 職 場 におけ る個 人の プ ライバ シーや 人権,労
働 時間 な どへ の社会 的規制 が実 質 的 に空 洞化 して い る 日本 の職 場 では,情
報化 と国際化 とい う両側 面か らの展 開が,労
働 者 の労働 と生 活 の領 域 に限 りな く浸透 して い き,企
業 の管理 の網 の なか に包摂 され て い く。 まさに,企
業社 会 が個 人の労働 と生 活 の深部 に まで無 際 限 に入 り込 むの で あ る。(2)日
本型過当競争 と情報化・ 国際化 業種,地
域,階
層 を問わずに,企
業社会 に取 り込 まれてい く状況は,
日本社 会の特殊性・異質性 といわねばならない。 この企業社会 に対す る内外のチェ ッ ク機能が効かな くなっているのである。 「系列 ワンセ ッ ト主義」 と呼ばれ る戦後 日本の金融政策は,い
わゆる六大企 業集団に対 して資金 を優先的に供給す るシステム として機能 し,各
産業におい て企業集団ごとに企業 を輩出させ,企
業集団 ぐるみの,企
業間「過 当競争」 を 生み出 した(注 58)。 また,政
府による介入。支援,す
なわち「 日本型産業政策」に おいては, まず成長可能性の高い産業 を戦略産業 として選 びだ し,選
びだされ た産業の中で一定の基準 を満 た した「優等生企業」が政策対象 となったのであ る。主要産業ではそれぞれの「準法律的ルール」に基づ き,他
の産業か らはっ きりと「仕切 られ る」 ことにな り,こ
こに「仕切 られた競争」 としての側面が クロー ズア ップ して くる(注59)。 高度成長期 に作 り出された過 当競争体質は,次
の ような特徴 を生み出 した。 第一に,装
置産業(鉄鋼産業)に おいて典型的にみ られ る,(同
一業界や関連 企業 グループにおけ る)海
外資源の共同購入は,各
企業において同 じような原 料 を加工す るとい う企業行動の同一パ ター ンの基礎 となった(注60)。第二に
,欧
米か ら先進技術 を導入す るとい う日本企業の対応は,海
外か らの 技術導入の窓 口を一本化 して コン トロールす るとい う通産省の指導 もあって, 各産業においては同一の技術に基づ いて同 じような製品を生産す るとい う状況 を生み出 した(注61)。 こぅして,同 一の基礎技術 と製品をめ ぐる企業間競争は,「規 模の経済」 をめ ぐる過 当競争,品
質や納期 をめ ぐる過 当競争 を引 き起 こしてい く。 第二に,同
一業界におけ る企業間協調 を促す政府の政策や,不
況期になると 既存の市場 シェアに基づ いて発動 され る政府の救済策等は,設
備投資 をめ ぐる 企業の リス ク軽減 を可能 ならしめ,産
業の発展期や好況期 におけ る活発 な設備 投資競争 をは じめ として,市
場の シェア をめ ぐる企業間の激 しい競争 を呼び起 こ し,市
場 シェア極大化行動 をビル トインさせ た(注 62)。 第四に,年
功賃金や終身雇用制,労
使協調型企業別組合 などを軸 とす る企業 社会の成立は,企
業間競争 を,企
業共同体 の存廃 をかけての労働者間の全人格 的な競争へ と転化 し,際
限ない過 当競争 を生み出す。 以上にみ られるような企業間の過 当競争は,企業集団間の競争の反映であ り, また政府の政策にみ られ る競争 リスクの一部保障によるところが少 な くない。 さらに,狭
陰 な国内市場 と不利な国内資源条件に加 え,欧
米 との技術 などの種 々のハ ンデ ィキャップを抱 えて,国
際競争場裏 に置かれた 日本の産業・企業は, 品質・コス ト・納期 などをめ ぐる,労
働者の全階層 を巻 きこんでの,
日本型「合 理化」競争が展開 されてい く。 情報技術の導入は,
日本型「合理化」競争の下で作 り出された 日本型生産 ン ステムに技術的基礎 を与えることになった。 さらに,情
報処理,制
御 と一般的 機能・共通技術の普及は,そ
れ を媒介 とす る多様 な異種機能の統合 を可能に し, 各製品・市場間の境界 を不明確 に して,異
業種間の競争 を激化 させ る。 また, 生産の弾力性向上は,製
品品 目の変更 を容易化 し,異
業種間の障壁 を低 くす る。 こうして,
日本型競争は,業
種の壁 を越 えて展開 されてい くのである。 情報化の下での国際化 の進展は,国
境 を越 えて,
日本型生産 システムや 日本 型競争 を浸透 させてい くとともに,そ
の特殊的側面が国際摩擦 を激化 させ る。 日本国内において も,際
限ない長時間の高密度労働 を蔓延 させ てい く。5。