72 学術情報 〔東女医大誌 第59巻 第3号頁 232∼234平成元年3月〕
第5回 東京女子医科大学神経懇話会
日 時:昭和63年11月25日(金)午後5時より場所:東京女子医大中央校舎1階会議室
開会の辞 福山 幸夫(小児科) 司会 原 美智子(小児科) 1.カルバマゼピンによって,てんかん発作が増悪したと考えられた症例の検討 ○林 北見・宮本晶恵・岡田典子・須加原信子・福山幸夫(小児科) 2.MRIにおける側頭葉の解剖について ○柿木良夫・小野由子・小林直紀(神経放射線科) 3.側頭葉てんかんの外科治療 ○河村三七(脳神経外科) 4.てんかんを伴う家族性振戦症の兄弟例 ○山本健詞・大澤美貴雄・柴田興一・小林逸郎・:丸山勝一(神経内科) 〔特別講演〕 司会 福山 幸夫(小児科) てんかん症候群分類の意義 国立療養所静岡東病院(てんかんセンター) 院長 清野 昌一先生 閉会の辞 :丸山 勝一(神経内科) 1.カルバマゼピンによって,てんかん発作が増悪 したと考えられた症例の検討 (小児科)林北見・宮本晶恵・岡田典子・
須加原信子・福山 幸夫 てんかん治療中に,カルパマゼピン(CBZ)を与薬 することによって,既存の発作が増悪し,脳波上も悪 化傾向を示した症例を経験した.その臨床的特徴,脳 波所見について,文献的考察をまじえて報告する. 症例は0歳10ヵ月から5歳までの5症例であり,分 類上は乳児重症ミオクロニーてんかん3例,特発性局 在関連性てんかん1例,症候性未決定てんかん1例で あった.発作型はいずれも複雑部分発作であり,脳波 上も局在性要素を示していた.CBZの併用,増量に 伴って発作回数の増加,発作強度の増悪を認め,脳波 上も突発性異常波の増悪,特に三二波複合の出現,広 範化が認められた,4例はCBZの減量によって症状改善し,うち2例はVPAによって,また1例はESM
によってさらに改善傾向を示した.他の1例はMCT 食により改善した. 薬剤選択にあたって,臨床発作型だけでなく,脳波 所見,基礎病態にも留意する必要があるだろう. 2.MRIによる側頭葉の解剖について (神経放射線科) 柿木 良夫・小野 由子・小林 直紀MRIはその特長に骨によるartifactがなく
sagittal, coronal, axial像が得られるという野面の自
由性がある.特にT、強調SE像はCSFとbrain tissue のcontrastの良好性より脳の解剖学的構築を正確に 描出できる利点がある.MRIは特に後頭蓋窩や側頭葉 の正確な画像診断に非常に有用である. 今回,我々はてんかんを主訴としてMRIを施行し た症例について,特にT1強調SE像を用いて側頭葉の 解剖を検討した.側頭葉の詳細な解剖を提示し,また X線CTと比較して症例を供覧する. 3.側頭葉てんかんの外科治療 (脳神経外科)河村 弘庸 CT,脳血管撮影などの検索では器質的な病変の認め られなかった側頭葉てんかん22症例に対してanterior temporal lobectomyを行ない下記の事項について検 一232一
73 討した.①primaryおよびsecondary focusの頭皮上 分布,伝播について,②術後長期follow up(5∼10年 間)でprimaryおよびsecondary focusの変化と予後 について 結果:①全例において二次焦点,二次全汎化は認め られなかった.②術後のてんかん源性発射はprimary focusより発生するもののみで頭皮上伝播の様式から 6型に分類,③側頭下誘導にのみspike dischargeの みられた1群および側頭葉前部外側に伝播が限局する II群では術後2年で脳波は正常化し,臨床上にも発作 は認められなくなった.5年follow upでは5%,10 年follow upでは80%がseizure freeとなった.④外 科治療の適応は二次焦点や二次全汎化の認められない 症例で発症より5∼7年以内(この期間中適切な抗て んかん剤服用にもかかわらず発作が抑制できない,い
わゆるuncontrollable, intractable epilepsy群)が望
ましい. 4.てんかんを伴う家族性振戦症の兄弟例 (神経内科) 山本 二二・大澤美貴雄・柴田 興一・ 小林 逸郎・丸山 勝一 てんかんを伴う家族性振戦症は稀な疾患であるが, 本症の兄弟例2例について頭部CT, MRI,脳血管撮
影,脳波,表面筋電図,SEP, VEP, C・reHex等を記 録し,その病態について検討した.その結果,放射線 学的には異常を認めず,脳波では著しい光過敏性と共 に突破波が出現し,表面筋電図では上肢に9∼10Hz の姿勢振戦を認めた.SEPおよびVEPではそれぞれ P25−N33, P100−N145成分の増大を認め,正中神経 手根部を電気刺激して母指球から記録する方法を用い たC−re且exは安静時にも誘発された,β遮断剤と共に バルプロ酸が治療薬として有用であった. 以上より本症においては大脳皮質感覚領や視覚領の 求心性刺激に対する易興奮性と共に,皮質経由反射の 充進状態が推測された.このことは症候学的に明らか に区別されるミオクローヌスてんかんと本症との間に 病態生理学的な類似性が存在することを示唆し,本症 例では,てんかんと振戦の必ずしも偶発的ではない合 併を考え合わせると興味深い. 特別講演 てんかん症候群分類の意義 国立療養所静岡東病院(てんかんセンター) 院長 清野 昌一 一233 付図 てんかんならびにてんかん症候群の国際分類案 (1985) 1,局在関連性(焦点性,局所性,部分性)てんかん および症候群 !.1特発性(年齢に関連して発病する) 現在つぎの2症候群が確認されている.しかし,将 来,これ以外の症候群が加わる可能性がある. ・中心一側頭部に三門をもつ良性小児てんかん ・後頭部に突発波をもつ小児てんかん 1.2症候群 このカテゴリーの中には,症例により異なる症候群 が含まれるが,この多様性は主に解剖学的局在,臨床 像,発作型および病因(もし既知であれぽ)に基づく ものである1>. 2.全般〔性〕てんかんおよび症候群 2.1特発性(年齢に関連して発病する,年齢順に記 載) ・良性家族性新生児痙李 ・良性薪生児痙牽 ・乳児良性ミオクロニーてんかん2) ・小児二神てんかん(ピクノレプシー) ・若年〔性〕四神てんかん ・若年〔性〕ミオクロニーてんかん(衝撃性小発作)3) ・覚醒二大発作〔を伴う〕てんかん 以上の症候群のいずれにも帰属せず,特発性,全般 性の性質をもつてんかんは,特発性全般てんかんとし て一括分類されうる。 2.2特発性およびもしくは症候性(出現年齢順に記 載) ・West症候群(乳児けい縮発作.電撃 点頭一礼拝 二三) ・Lennox−Gastaut症候群 ・ミオクロニー失立発作〔を伴う〕てんかん4) ・ミオクロニー欠神〔を伴う〕てんかん 2.3症候群 2.3.1非特異的病因 ・早期ミオクロニー脳症 2,3.2特異的症候群 ・疾病状態を合併する可能性があるてんかん発作 この中には発作がみられるか,またはそれを顕著な 特徴とする疾患が含まれる. 3.焦点性か全般性か決定できないてんかんおよび 症候群