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超微小電極による網膜内活動電位(EIRG)に関する研究 : 第2報 ストリキニン法による網膜活動電位(ERG)発生層の検討

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Academic year: 2021

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全文

(1)

〔原

著〕

(東京女医大幣 第25巻 第10号頁430−435 日召和30年1q月)

超微:小電極による網膜内活動電位(EIRG)に関する研究

第2報 ストリキニン法による網膜活動電位(ERG)発生層の検討

東京女子医科大学 生理学教室(主任 富田恒男教授) 鳥 卜IJ 浜. ノ、マ 慶 iシ

Pネ

(受付 昭和30年7月11Eil)

1 緒 言

ス1・リキニンのERGに対する効果に就て

(1) Thermanは,最初にb一波の増強が現われた後抑 ゆう 制が之に続くとV・う。冨田等は毛細管電極の先端 迄細い銀線を挿入した低抵抗毛細管電極を用いて 食用蛙網膜のEIRG及び視神経放電に対するス Fリキニンの影響を検し,EIRG中の陰性電位は 視神経放電と密接な因果関係を示し,ストリキニ ンにより之等が時間的にも時相的にも平行した変 化を示して遂には消:失するに至るに反し,ERG に相当する波形はその後に比較的永く残存するご くおう とを報告している。篠は毛細管電極を用v・てスF リキニンによるEIRGの変化過程の追試を行い, 冨田等と全く同一の結果を得ている。 くり 第1報に於て著者は,超微小電極を用いて限局 並に全面照射による活動電位が,網膜の種々の深 さから如何なる波形を以て現われるかを詳細に研 究した結果を述べ,その成績からERGの主要部 分は両極細胞層に由来することを推論して冨田等 の見解を支持すると共に,視細胞層その発生部位 (o「 ,6)

をとするOttoson及びSvaetichinの見解を反

駁した。只網膜内に挿入した電極により誘導され るものがERGと局在性の陰性活動電位との重畳 した電位であった為に,この陰性活動電位は各網 膜層から誘導されるERGの振幅の測定には寧ろ 妨げとなる存在であった○本報に於ては冨田等の ストリキこン法を用いて局在性陰性活動電位を除 くことにより,残存するERGが網膜内の深さに 応じて如何なる振幅乃至は波形変化を示すかを陰 性電位に妨げられることなしに観察し得,その結 果ERGの発生層に関しても更に詳細な検討を加 え得たので,以下之に関して報告する次第であ る。 丑 実験方法 実験方法は総て第1報の記載に従った。先ず電極を 食用蛙の網膜内に挿入し,第1報に述べた方法で限局 照射の位置を定めた後,0.02%硝酸ストリキニンの1 滴を注射針により電極に漕って網膜上に滴下し,その 後のEIRGを網膜の全層に亘る各深さから時間を追っ て繰返し誘導記録した。衝電極の網膜内に於ける深さ は凡て内境界膜面を基準どして示されていること,及 び以下の実験は総て食用蛙の剥離網膜を用いたことを 附記する。

皿 実験結果

1 電極を網膜の内境界西側より挿入した揚合 第ユ図は剥離網膜を用v・て0.02%の硝酸ス}リ キニン溶液を1滴々下した直後の限局並に全面照 射時の,網膜の各深さより誘導された活動電位の 1連の記録である。この例ではストリキニン滴下 前みられた限局照射による陰性電位が1, 2(x35 μ)の深さで不明瞭となり,微弱ながら却って陽 性の振れを示す電位変化が記録せられた。又この 時期に於ける全面照射時のERGは可成りの増強 を示し,網膜内の1,2(×35μ)の深さからの記 く ラ 録には冨田,船石により記載された如き著明な陽 性刺棘がb一波,d一波に先行して認められ,之は 特にoff−responseに於て著明であった。更に3 (×35μ)の深さでは4(×35μ)に於ける純粋な 陰性の活動電位への移行型と見られる波形が認録 せられてv・る。樹この例で深さ4から7迄の波が 瞥430・一

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第1図 剥離網膜を用いて,電極を内境界膜側より挿入した場 合の,硝酸ストリキニン滴下直後の活動電位波形。 殆んど同一一一であったことぽ第1報の記録例(第1 報第8図参照)と異っているが,この点に就ては 次章で考察を加克る。 第2図はその後約5分を経過した時の同一部位 からの記録で,全面照射時のb一波及びd一波に:先 行する刺棘が薯しくその大きさを減じて来てい る。又限局照射時に1,2(×35μ)の深さで見ら れてV・た陽性の振れを示す波が消えて,1∼4(× 35μ)に於て微弱ながら明瞭な陰牲活動電位が検 出された。この限局照射に伴う陰性活動電位が1 ∼4の深さで最も顕著に現われることは既に第1 報で報告した所であり,従って第2図に示した例 でこの予想される深さから同様な電位変化が得ら れたことは,本記録時の電極位置が網膜内の正し く図の左端に掲げる数値の深さにあったことを証 明するものであり,このことから時間の経過によ る電極位置のすれは殆んど問題とする必要がなV・ ことが分る。そこで再び図の右側の全面照射時の 記録を見ると,電極の深さが増すにつれてERG は次第に小さくなり,4(×35μ)では殆んど消失 し,5以下ではERGの反転像を想わせる波形が 得られた。 第3図は限局照射による陰性電位の潜伏時が次 第に遅れを示し,叉その電位も微弱となって遂に 全く消失した時の限局・全面照射時の記録の反覆 である。全面照射時に各深さから記録された波形 は,局所の陰性活動電位が取除かれた後の,稻々 ヨ 減弱はしているが,純然たるERGの振幅と深さ との関係を示すものと老えられる。図力》ら明かな 如く,電極を2,3,4(×35μ) と進めるにつれ, 一481一

(3)

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第2図 第1図を記録して5分後の同一部位からの同様な記録。 てERGは明瞭に小さくなって行き,4で殆んど 消失,5では僅かな反転像が得られている点等, 殆んど第2図に見られた傾向と一一・Skしている。 2・電極を視細胞側から挿入した揚合 第4図 は視細胞側を上にして置いた剥離網膜 にっき,0.02%の硝酸ストリキニン溶液を1滴々 下して,その直後に限局並に全面照射を与えな渉 ら網膜の各深さから誘導された活動電位の1連の 記録である。(この揚合電極は図の7の側から0 の方へ向って進められたことに注意)先:邦艮局照 射による記録をみると,1∼4(×35μ)に於て著 明な陰性電位が記録されており・この点内境界膜 側から電極を.挿入した時と全く三一である。この ことはこの記録の行われ,た網膜内の電極位置が図 の左端の深さを示す数値と一致しているごとの証 拠である。次にこの時の全面照射時の記録を見る

と,深さ7から3迄は殆んど同一のERGの反転

像が得られ,その後急激な減弱を示している。 第5図はその後の時間経過に於bて限局照射時 の陰性電位が全く消失した後の同様な記録の反覆

である。之を見ると,深さ7から4迄のERG犀

転像は殆んど全く同形同振幅で,振幅の変化は4 がら0の間で最:も著明に現われ,ている。この様に 振幅の変化する深さが0∼4の間に存在すること は:,内境界国側から電極を挿入した時の第3図に 見られる結果と全く同様であった。 IV 考 察 1 本第2報に於bて述べた研究の主目的はス トリキニンにより陰性活動電位を除v・た後のER Gが網膜内の各深さから如何なる振幅で記録され るかを検し,その結果からERG発生層を決定せ んとするにあった。従って電極を内境界膜側から 一 482 一一

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第3図 限局照射による陰性電位が全く消失した時の同様な記録の反覆。 挿入するか視細胞側から挿入するかに論なく,限 局照射による反応の消失した後の記録について, それ等の全面照射時の電極の網膜内位置とERG の振幅との関係につV・ての老察を圭眼とする。即 ち内境界膜側がら電極を挿入、した例にあっては第 3図,叉視細胞側から電極を挿入した例にあって は第5図だけに先ず着目する。その際電極の深さ の変化に伴うERG振幅の変化の最も激しく現わ れる層がERGの発生層であることは当然で,こ の意味からすれば第3図に於いては1∼5(×35 μ),又第5図に於v・ては0∼4(×35μ)に至る網 膜層が之に該当すると考えられる。街この網膜層 に於けるERG振幅の変化をその各成分につv、て 観察するに,1a一波b一波及びd一波の3者共殆んど 平行的な消長を示していることは注目に値する。 只第3図と第、5図とに於いて約35μだけの深さの 少れが認められるが,網膜組織が電極の移動に対 して示す機械的抵抗(第1報参照)を考慮する時 この程度のものは実験誤差として容認せられるべ きものと老えられる。組織学的に検した両極細胞 層が網膜内に於いて1∼4(×35μ)の深さに位置 していることを想う時,ERG中のb一波及びd一一 波のみならすa一波も亦その大部分が両極細胞層に 由来することは確定的と考えられる。この結論は 冨田等の結論に一致する。 2 第1図全面照射の記録を見るに,4以上の 深さで殆んどのERG反転像と思われる波形が記 録せられてV・る。しかも電極が網膜を突き抜けて 反対側へ出たと考えられる7の深さで尚4と殆ん ど同形同大の波形が得られてV、る。この様な記録 は剥離網膜たると非剥離網膜たるとを問わす時々 得られた所のものであり,何か不関電極と網膜と t一 433 一

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第4図 剣離網膜を用いて,電極を視細胞側から挿入した場合 の,硝酸ストリキニン滴下直後の活動電位波形。 の間に介在する抵抗を通してERG電流が流れた ことに由来する受動的な電位変化と考えられる。

先にOttoson及びSvaetichinは冨田等の得た

EIRG中の陰性電位を色素上皮層の高抵抗による

ERG中のト波又はd一波の反転に帰したが,少

・くとも網膜内陰性電位の1部はそのような成因に よ勾説明せられるべきであろう。然しながら陰性 電位の全部をこのような機構に帰せんとする彼等 の主張は,限局照一時に陰性電位だけが記録され る事実から見て明かに誤りであると云わなければ ならなV・。又例えば第1図の深さ3に於ける全面 照射のonの時の波形と第3図の之に相当する波 形とを比較するとs・前者では陰性の振れが認めら れるのに反して後者では小さな陽性の振れが記録 せられている。てのことは明かに前者に於いて樹 存在する局在性陰性電位(第1図限局照射の3参 照)がその深さに於けるERGに:重畳した為に陰 性の振れを生じたものであると.考えざるを得な い。’ 3 限局照射により陰性活動電位の一一#¥よく記 録されるのが1∼4の深さであることについては 既に述べたがその成因に関しては伺不明である。 只深さの点でこの陰性活動電位の発生層がERG のそれと略・一一一91kしていることはERGそのものの 成因に対する何等かの関連を想わせるが,今後の 研究に侯つべぎ重要な課題であると考える。・ V 結 語. 1 超微小電極を用hて,冨田等のストリ』キ≠ ン法により局在性陰性活動電位を:取除V・た後に残 存するE:RGのP.各深さから誘導される振幅から その発生層について検討した。 2 網膜内の電極位置を厳蟹に規定し涜実験結 憎43頻一

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第5区 限局照射による陰性電位が金く消失した時の同様な記録の反覆。 果か錫ERG.の振幅の変化は網膜に於ける.1∼4 (×$5μ)の深さで最も著明であることが明かに.な った。「従ってERG「の主な癸生層はこの深さに該 当する両極細胞層であることを決定的ならしめた 省この結論ぽERG.の発生を視細胞層にだけ求め る・Svaeti6h血等の主張を排すると共に.,.Granit2 冨田等の従来の結論を支持するものである。 欄筆するに当り,御懇篤なる御指導と御校閲を賜つ た恩師冨田恒男教授に深甚の謝意を表する深第であ る。 文 献

1) Therman, P.O.:Granit, R:Sensory mec− hanisms of the retina. New York, Oxford Univ. 、P・e・軽罫i童i・412PP・・(1947)・.・三ted・ . 2)T・mit・・T・・皿d恥・藤i・A・,・St・die$.・n、

.inrtaretinal pctiQn potential.with lgw.resi’s.tanc.e

microelectrode. 」. Netirophysiol., 15 : 75−84 (1 952 ) .. 3)篠 肇.:網膜内活動電圧(EIRG)に及ぼ す数種薬物の効果に就て,慶応医学,29:437−444 (1952). 4)鳥浜慶壽:超微小電極による網膜内活動電位 (EIRG)に関する研究,第1報,眼局照射と金面照 射との比較,:東京女医大更。25:15−27(1955)。

.5) Ottason, b. and Svaetichin, G.:Electro・

physiological investigations of the frog retina. Cold Spring Harbor Symposia on Quant. Biol.,

17 : 165−173 (1952).

6) Ottoson, D. and Syaetichin, G.:Electro− physiological investigations of the origin of the

ERG of the frog retina. Acta physiol. Scand., 29, Suppl. 106 :538−564 (1953).

参照

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