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龍谷大學論集 479 - 012窪田和美「真宗寺院における寺院規模と門徒の護持意識 : 第9回宗勢基本調査の分析を通して」

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真宗寺院における寺院規模と門徒の護持意識

一一第

9

回宗勢基本調査の分析を通して一一

窪 田 和 美

目次 はじめに 第 l章 第 9回宗勢基本調査の概要 第 1節 寺院の周辺環境と寺院に関わる人びと 第 2節守院規模をはかる桁標 第3節墓地・納骨堂の所有傾向 第 2章 寺院の護持意識に関する指標 第 1節 門徒総代の選出方法と会合の運営方法 第 2節 過去の宗勢調査にみる門徒の護持意識 第

3

-

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:

俗的意味としての門徒の寺院護持志識 第3章 地域社会と真宗寺院-滋賀県湖東地域の事例ー 第l節 III雇学校活動の継続と坊守の役劃 第 2節護持意識を醸成する地域の寺院活動 おわりに

は じ め に

浄土真宗本願寺派では

1

9

5

9

(昭和

3

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)

年から,ほぽ

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年ごとに「宗勢基本調 査」が実施されている。その目的は,全国で約

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余ヶ寺を擁する教団にあ って,「宗門全体の動勢を捉え,宗門の実態を宗務に反映させるとともに,各 寺院の現況と社会の状況を統計的に調査・分析して.宗門の抱える諸課題の対 応解決を図るため基礎資料を収集する」ことにある。 第

l

同の調責が開始されて,

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年となる

2

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(平成

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)

年に第

9

1

可宗勢基本 調査(以下,今回調査という)が実施された。この半世紀,日本社会の状況は 大きく変貌した。それは社会全体が産業化・都市化に向かつて躍進していた時 期でもあり,同時に,潜在的にはいくつかの課題を抱えていた。 その実態は,地方の若年層が就学や就労のため,都市へ移動する人口流出が 142 - 龍谷大学論集

(2)

地方の過疎化をうながし,逆に都市はこれらの人口を受け入れ過密を呈するこ ととなった。このようと主過疎と過密は,急速な都市化現象から生じた社会の表 と裏であり,いわば地域社会の貧困を表していると言えるのではないか。した がって,地域社会を基盤とする寺院運営や寺院活動にもさまざまな影特をうえ たに違いない。 さて,今回調賓では2

0

年後の寺院の将来が危慎されるとすれば,その大きな 要因は,「門徒の寺院護持な識の低下」であると住職・幼 守・門徒が同様にと らえていることが判明した。これに次ぐ将来の危棋は,「門 徒の減少Jであっ た(図表1)。兵宗寺院の将来像を描こうとするとき,「門徒の寺院誕.持意識」 がとりわけ重要であるにも関わらず,この結果には危機感を持たざるを紺ない。 そこで,門 徒の護持意識とは,いったい何なのか。具体的信数値や笑在とし て顕在化できるのか,数値化できないとすれば向をもって, 門徒の誕持意識会 推測すればいいのか。真宗寺院における門徒の寺院護 持意識をとらえようとい うのが,筆 者の問 題意識である。 その前提として,まず今向調資で明らかになった護持意識に関連する調査結 図表1 20~引去の寺院の護持・運営をさまたげるもの 後継者の不在 経済的に厳しい 兼業が困磁 門徒の減少 門徒の寺院議持意識が低下 真宗の教えが伝わらない 寺院に人が集まらない わからない 。% 10% 20 % 30 % 40 % SO % .住職 .幼守 .門徒 i詰 伎町役・坊守の質問]には、「わからなしりという選択肢を設けていない 第 9 白宗釣JJ;本 ~tfi('" 間報~';-)をもとに作成 J'.t~;~-s:院における守・院規模と門徒のぷ持fS~(を室町) 1~3

(3)

果を概観する。そして過去の宗勢基本調査結果から,門徒の寺院護持意識に関 わる設問とその結果を取り出し検証する。さらに,これまで筆者が把握してい るいくつかの事例を紹介したい。統計数値の上からは,確かに護持意識の低下 が寺院の将来に影響するとの結果が提示されたが,地域社会において真宗寺院 が地域の拠り所として機能している事例をとりあげる。 今回調査は,全国の一般寺院を対象にした質問紙調査であり,分析手法はす べて統計的処哩に依っている口したがってその結果は,あくまでも全体的な傾 向に過ぎないことを断っておきたい。実際には,全国各地で地域の特性を活か しながら,さまざまな寺院活動が展開されている。本稿では,統計的分析だけ でなく,聞き取り調査をもとに真宗寺院における門徒の寺院護持意識について もみていくことにする口

1

章 第

9

回宗勢基本調査の概要

第 1節 寺院の周辺環境と寺院に関わる人びと 今回調査は, 2009(平成21)年9月1

1

-

1

を基準日として,宗門のすべての一 般寺院および教会を対象とした悉皆調査である。調査対象者は住職・坊守・門 徒(代表者l名)として,調査京を配布した。調査票の回収率は59.6%であっ た(第9回報告書P.5)。 まず,寺院の所在分布は,市街地・住宅地・農山漁村に分けると,おおよそ 2対 3対 5の割合となった。過去の調査結果と比較してもほぼ同様の川合であ り、全寺院の半数程度が農山漁村地域に立地している。これが真宗寺院の特徴 である。そこで,過去20年間の寺院周辺の人口変化を上記の寺院所在地別にみる と, とりわけ良山漁村地域で人口減少が顕著であった(第 9jtil報告書 P.135)口 昭和

4

0

年代(高度経済成長期)を境にして,それ以前から居住している住民 を川住民とよび,それ以降に転入してきた住民を新住民とよんで,寺院周辺の 新・│日住民の割合をたずねた口

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1

1

住民の方が多いという寺院は,全体の74.3% となっている(第

9

1

叶報告書 P.16)。 次に所属寺院の門徒の居住分布をみていこう。│叶徒の居住地をたずねて寺院 の所在に対応させると,図表2の通りである。寺院所在地と寺院に所属する門 徒の居住地は,ほぽ対応していると言える。しかし住宅地,市街地に移るほど 門徒の居住地域(門徒分布)も拡大し広範聞となっていることがわかる口 今回調査では,過去20年間の門徒戸数の増減について質問しているが,全寺 院の約半数 (49.6%)で門徒戸数が減少している(図表3)日さらに,門徒の 144 龍谷大学論集

(4)

図 表2 寺院の立地と門徒居住地の分布 門徒J,rt住地の分布 市街地主体 住宅地主体 出山漁村主体 全ミテI~t 12.7% 30.9% 56.4% 市街地の寺院 52.8% 33.6% 13.6% 住宅地の寺院 8.9% 76.3% 14.7% 盛山漁村の寺院 2.0% 6.0% 92.0% 出典 r第9副祭勿基本調査報告書JP.68 図 表3 門徒居住地分布と門徒戸数の増減

r

,徒はi首加した .あまり変化がない .門徒は減少した 全寺院 市街地主体 住宅地主体 農山漁村主体 。% 20% 40% 60% 80% 100% 第 91til宗勢誌本,;I,~:ð:

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間報告)をもとに作成 居住分布が農山前l村主体の寺院では,約6削 (59.4%) で門徒戸数が減少して いる。 寺院の所在別分布のようすと周辺住民は

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住民が多いこと,さらに寺院の所 在地とい]徒の居住分布がほぽ対応しているとの灸件から,真宗寺院の大半は, 伝統的な村落共同体のなかにある“村の寺"で内められていることがわかる。 本調授の門徒回答者の li,~性をみると, 平均年齢は 71. 7歳, 住In~や坊守より平 均年齢が高いのは,門徒代表あるいは門徒総代という寺院を代表する門徒であ ると推察される(第9回報告書P.51)。したがって,所属寺院の門徒となった 時期を居住分布でみると,図表4の通り,

I

2

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山漁村地域に居住している門徒は, 「祖父母の代以前」から門徒である割合が~'5 t,)ことが判明した。 次に,寺院の方に目を転じてみると,寺院屑住人数の平均値は,宗勢基本調 u宗寺院における寺院規快と門徒の護持意識m Hl:Jー 145一

(5)

図表4 所属寺院の門徒になった時期 .ej分の代目父宙のf-t口組父尽の代 ・III父

a

の代以前 回その{血 I 全国 E:耐.':.且... 脳宣阻 16.7% T.宵'1:~, 11.1% 市街地 問

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'色 住宅地 i B:t1 2 緬 ' 5 温厚溢8 哩%畠 ~ 17.096 ~

1.2% IR山漁村 ""11酒 16.096 ;YJ(,L 11.296 。% 2096 4096 60% 80% 10096 出典 r第91"!;i<会事基本調査報告j'1JP.53 査のたびに小規模となっていて3.8人である。しかも居住している人がいない 寺院は,

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山漁村に多くみられる(第9回報告哲P.135)。 回 答 者 で あ る 住 職 の平均年齢は60.3成,幼守は59.4歳である(第9回報告書P.38)。 寺院の仕事は,W

I

侶がおこなう法務,つまり法要・儀式を執行する例制本来 の職務と法務以外の寺務,悦言すれば法務にもとづく寺院の事務が存在する。 住職以外の法務従事者をみると,全寺院の約半数が住職とあと i人が法務を担 っている。このことは住臓の家族のみで法務を担当していることをあらわして いる。寺院を経営体ととらえると,ほぽ家紋経営という規模であることがわか る(第9回報告書P.61)。 そこで,現在の住職の兼業状況を年齢階閉別にみていくと,60歳までの住職 は専業と兼業が半々碍J立であるが,60歳 を 過ぎると専業の割合が刑えている

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表5)。しかし艮-寿社会 が進行して高齢住臓が増加しているので,それに

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って住職の専業率が上昇しているのであり,住職の専業率が

6

jl:-IJだからとい って,専業可能寺院が

6

割であるとは言い難い。 ヒ記のことから,次のような事柄が判明した。真宗寺院は,周知の通り

I

註山 総l村に立地する割合が高く,所属する門徒もjJおむね寺院所在地を主体に居住 している場合が多し、。もちろん住宅地や市街地にも真宗寺院は存在するが,そ れら寺院におけるjllJ徒の居住地は, 寺院の周辺とは限らずかなり広純凶になっ ている。そして出山漁村寺院の門徒の大半は,祖父母の代より以前から,当該 守・院を所属寺院としてきた。そのような良山漁村寺院では,門徒数は減少して いるものの,彼ら門徒は代々その土地に生まれてその土地で生祈を営んできた 人が多いようである。他方,寺院の方は,居住人数が減少して小規模家族にな 146一 地 谷 大 学 論 集

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図表5 住職の年齢別兼業状況 ・兼業あり 口兼業なし 30歳未満 30歳以上"'40歳未満 40歳以上"'50歳来満 50~電以上"'60議未満 60議以上"'65歳来満 65歳以上"'70歳末満 00歳以上~'O~歳来満 85歳以上 。% 20% 40~ 60% 80% 100% 出典l'第9 @宗勢基本調査報ヂ;Ol'}JP.49 っている口したがって寺院の法務に関しても住職以外の仕:rpj.)It:は,ほぽ一人分 という寺院が多く,寺院の運営を経付体としてみるならば、ほぽ家族経常であ ると言える口 第2節 寺 院 規 模 を は か る 指 標 それでは寺院の規模についてみていくことにしよう。顕在的には,敷地面積 や本堂・庫裏等の境内の諸施設から推察することはできょうu しかし真宗寺院 にとっての寺院規棟とは,一般的には経済的規模を合意するという。すなわち 所属門徒の刺:数,言い換えれば門徒戸数が寺院の規模を決めるとされている。 したがって,

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2

山漁村において人口流出により所属の門徒戸数が減少すると, 寺院運営や寺院活動に影響を及ぽすのは,自明の理である。 門徒とは,真宗寺院特有の呼称で,一般的に他宗派寺院では檀家に相当する。 江戸期の寺詣証文の発行や寺檀制度以来,わが国では家と所属寺院との関係性 が,幕府により厳命とされた口一般庶民は,家という集

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に所属しその家は

1

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1i 有の寺院に帰属することから,家ごとに所属寺院が特定される。しかも一般的 真宗寺院における寺院規模と門徒の護持;G識(窪田) -147

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には,宗派と所属寺院が家ごとに決まることになる。したがって樹家や門徒を 数量化する際には,概ね家が単位とされている。だから門徒戸数という際の単 位は,家あるいは位帯とされているようである。 寺院の経済状況を把医するため門徒戸数は重要な指標となっても,門徒戸数 だけで寺院の経済規模を判断することはできない。そこで今回調査では,当該 地域における寺院維持に必要な門徒戸数を質問したうえで,実際の門徒戸数が それより多いか少ないかをたずねるという手法を採った。 その結果,住職の回答による寺院護持の必要門徒戸数の全国平均伯は269軒, 門徒の回答では253軒であった。全国平均では300軒弱となろうが,地域差はか なりあるように思われる白寺院維持の必要門徒戸数は,近畿地方では少なく, 東日本や中凶・四国・九州では多く,中部地方はその中間となる(第 9凶報告 書

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)

。 寺院維持に必要な門徒戸数に比べて,実際の門徒戸数が多いのか少ないのか をたずねた結果は,全寺院の74.3%が「少なしりと回答しているけ寺院収入別 にみると,年収が多くなるにつれ「少なしりの割合は減っているが、年収が 600万円を超えてもまだ,「少なしりが多数派で司年収が800万円を超えてよう やく,「少なしりが半数程度になる。「多しり「少なしりが均衡するのは1,000万 円を超えてからとなる(第

9

回報告書

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.

8

6

)

。 各寺院にとっての必要門徒戸数には,かなりの地域差がみられる。既述のよ うに,東日本や中国・四国・九州、│では多く,近畿地方では少ない,中部地方は その

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l1りである。必要門徒戸数をたずねてはいるが,実際上,回特:者は現実の 門徒戸数から判断して記入 図表6 寺院の年間総収入(寺院活動のみを対象) していることは,想像に難 実数 100万円未満 1,052 100万円以上300万円未満 1.440 300万円以上600万円未満 1,097 600万円以上800万円未満 609 800万[11以上l()OO万円未満 567 1000万jI

J

以t.2000万円未満 671 2000万11

J

以上 342 合計 5,778 出典:r第 9同宗勢基本調査報告書JP.80 -148- 龍谷大学論集 % 18.2 19.0 10.5 11.6 : 1.9 100.0 くない。とすればこの数字 による傾向は,あながち信 憲性を欠いているわけでは ないと考える。 次に,寺院活動から得ら れる年間総収入にもとづく 寺院規模を考えてみたし L ここでは, 7つの選択肢を 大きく 3区分して,分析指 標とした。

(8)

図 表7 所在地別にみた寺院収 入

3∞万円未満 .300万円以上6∞万円未滋 .6∞万円以上 会寺院 市街地 住宅地 H長山漁村 0% 20% 40% 60% 80% 100% 第9阿宗勢謀本調祈(中間報告)をもとに作成 図表6によると,100万円未満の寺院が18.2%もある反面,1.000h円以上の 寺院もそれと同程度(17.5%)あり,寺院の年間収入にはかなりの棉差がある ことがわかる。そこで年収600万円以上を「高J,300万 円 以 上600万円未満を 「中J,300万円未満を「低」の3区分とした。高収入寺院は全寺院の37.8%を 占めるが,中収入寺院は全寺院の19.0%,低収入寺院は全寺院の43.1%を占め ている。大ざっぱにいえば,高中低の割合は,4対 2対 4となり,向寸1低の3 区分は,「専業可能な寺院Jr専業がきびしい寺院Jr専業が不可能な寺院」と 解釈することができる (第9回報告書P.80)。したがって専業可能な寺院は全 体の4¥'IIJしかないという結果になり,先に兼業なしの住 職 (住l臓の専業率)が

6

剖を,

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めるとの数字は,実質的な専業可能をあらわしているのではなし実 際には兼業を退職して「現在は専業」を示していることがわかる。 このような収入の格差の要因について検討していくと,次のようなことが判 明した。 図表 7は,寺院の所在地別に収入を比較したものである。市街地,住宅地で は高収入の寺院が多く,農山漁村では低収入の寺院が多いことがわかる。市街 地や住宅地では,年収600万円以上の寺院が半数以上を占めるのに対し,良山 漁村においては, 年収600万円未満の寺院カ~80%近くを占め, 半数以上の寺院 が年収300万円未揃の低収入となっている。 教│孟別にみると,近畿地方の教区では年収300万円未満の寺院が6

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JI以上を 真宗寺院における寺院規模と門徒の護持tl:滋(符IfI) ー149

(9)

-占めている。それに対して,北海道,東京,大阪,安芸,北豊,福岡,長崎, 沖縄の各教区では,年収600万円以上の寺院が半数を超えていて,地域的にか なりの格差が生じている。 地域格差は,都市化の程度の差に起因するものと,伝統的な地域性に起凶す るものがある。そこで,~山漁村の寺院だけを取り出して,年収の地域差を比 べてみると,近畿地方では低収入寺院が極めて多いのに対し,東円本やrj[l:ltl・ 凹同ではそれほどではない。九州地方になると,大分教区を除けば低収入寺院 は少数派となる。これは寺院規模の地域性であると思われる。 市街地や住宅地の寺院のみを取り1+

1

して,先の年間収入の:3jg分でみても地 域差があらわれる。例えば,低収入寺院は滋賀教区では

7

割を超えている口そ の結果,市街地や住宅地の寺院であっても小規模であることが想像できる。低 収入寺院が4割を超える教区は,日本海側と近畿地方の滋賀,奈良,和歌山と なっている。したがって,寺院の収入は,寺院規模の地域的伝統に都市化とい う要素が加わって地域格差となっている(第 9回報告書P.82)と言える。 第3節墓地・納骨堂の所有傾向 一般寺院の敷地内には,本堂・庫裏だけでなく墓地・納骨堂・会館・参拝者 駐車場などの諸施設がみられる口本堂や庫裏は,ほとんどの寺院に存在するが, 墓地や納骨堂は,寺院の{同別の事情だけでなく,歴史的,伝統的に敷地内に墓 地や納骨堂を持たないこともあろう。例えば,村落共同体のなかに村の共有地 としての墓地を有しているので,寺院の敷地内に墓地が存在しないのは,地域 の伝統や慣習が優先されたのであろうし,市街地の寺院では,敷地内に墓地や 納付堂を確保する余裕がないということも考えられる。炉│別の事情が存在する ことを承知の上で,今回調査からみえてきた傾向を述べることにしたし」 これまでの宗勢基本調査の結果からみると,真宗寺院では納骨堂より墓地を 所有している訓什が高いりただ,過去の調査では,調査ごとに質問文が異なっ ているので,あくまでも集計された数似だけを比較.するしかなし」図表8によ ると,第

6

回調査までは墓地・納骨堂ともに所有率は増加傾向にあるが,第

7

回調査では墓地・納骨堂ともに減少を示している。第7回と今同調査の結果を 比Ijt交すると,墓地の所有比率は,ほぽ横ばいであるが,納骨堂は若干憎加して いる。 第 6回調査の実施は,今から約20年前1989 (平成元)年であり,経済的には 好景気の時期である口門徒からの墓地や納骨堂を要望する声が高まっていたの 150 龍谷大学論集

(10)

60'16 50'16 40'16 30'16 20'16 10% a

第2回 図表8 墓地と納骨堂の所有率推移 第3図 第4回 第6回 第7図 事自9囚 一←墓地 『・ー納骨堂 出典 r第91"I~j<t5 J,tノド,1,\1干時:H1, IIJ P.32 であろうか,必地 ・納骨堂の所有率はピークを示している。その後過熱気味の 景気が後退した結果であろうか,第

7

回調査の

1

9

9

6

(平成

8

)年には,減少し ている。この時期から高齢社会の進行に併せて,行政 1-.の諸施策が実施となり, 他方出生数の低下傾向から少子高齢化社会に突入することに伝った。そのため 核家族の進行,地域社会の変貌,価値観の多様化,人びとの芯識の変化が表面 化してきた時期でもあった。 今回調査の基地 ・納骨堂の所有率の地滅的な特徴は,次のJ.!.!1りである。まず, 全体では基地を所有している寺院の割合が向く,必地の所有3

8

.

2%

に対して, 納骨堂は

2

9

.

3%

である。特徴としては,北海道と九州地

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では,基地より納'討' 堂の所有割合が高くなっている。東北,

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束,東海,岐阜と和歌山では圧倒的 に墓地が高い割合である。近畿地方では墓地・納什掌ともに寺院の敷地内に所 有している割合は低い(第9回報告書

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.

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,所打だけ

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をみると納'骨堂よ り墓地の方が高い削合となっている。大雑把に言えば,芯地会所有する寺院が 高い割合をポすのは,東北・関東・中部・

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同地}Jと近織では和歌山である。 これに対して納骨堂の所有率が高いのは, 北海道と九州地方である。 II~ 聞に位 置する和歌山を除く近畿は,墓地・納骨堂ともに所有率はきわめて低いことが わかった。 伝統的に基地を持たない慣宵がこのような結果を招いているのか,あるいは 既述したようIこ宗派に関わらず村の共有地として,~μ也が保存するので寺院の,

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宗寺院における守lb己刷肢といJt庄のぷ持Iま識 <alTI) 151

(11)

敷地には墓地がない場合もある。さらに大都市の市街地や住宅地にある寺院で は,門徒が民間の霊園に墓地を求めている例も推測される。したがって,所属 寺院の敷地内における墓地・納骨堂の有無が.門徒の護持意識と直結するわけ ではないが,寺院に行く機会あるいは日常生活の中に寺院という存在をどの程 度認めているかにより,所属寺院との関係性の濃淡をはかることができるよう である。

2

章 寺 院 の 護 持 意 識 に 関 す る 指 標

第1節 門徒総代の選出方法と会合の運営方法 寺院の護持意識をみる手だてとして,寺院と門徒との関係性を2つの指標か らながめてみることにする。 1つは,各寺院における門徒総代の選出方法であ る。これを6つに類型化したうえで検討を加えたl_,) 0 もう一つは,各寺院で開 催されている会合の運営方法である。こちらも 5つの類型をもとに,その意味 を採ることにする。 門徒総代とは,全国の各寺院から選出されて教団が開催する全I

.

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門徒総代会 に参加する寺院所属の門徒の代表である。各寺院に所属している門徒を代表し て教団と各寺院を繋ぐパイプ役であろうか。平易に言えば,門徒総代個人とし てではなく,絶えず所属寺院の門徒の代表として教団との関係性を維持するこ とが想定されている。 護持意識について,本稿では次のように定義する。一般的には,各寺院所属 の門徒が,当該寺院を守り継承するためハード面やソフト面に関わるという主 体性のことをし寸。具体的には,財政的支援や役割遂行をさし,物心両面に渡 って寺院を支えていこうとする気持ちゃこころざしのことである。この意識を 堅持する門徒の存在こそが,真宗寺院の特徴であり,門徒の護持意識に支えら れて寺院が成っていると言っても過言ではない。したがって,寺院の開基の事 情や地域的特徴,あるいは歴史的背景も踏まえながら、門徒総代の選出と会合 の運営を検証する。 最初に門徒総代の選出方法を取り上げる。過去の第

7

[

日│宗勢基本調査(1

9

9

6

年実施)と第

8

回宗勢基本調査

(

2

0

0

3

年実施)においても,門徒総代の選出方 法の設問があり一定の類型化がなされている。今回調査も過去の調査と比較す るため,この類型化を踏襲した設問を用いて回符を集計した。 選出方法の 6つの選択肢は,次のとおりである川「住臓が個人的に選任し, 門徒は人選には関わらなし)J (略称:住職選任型), rまず住職がWi[人的に選任 152 - 龍谷大学論集

(12)

図表9 門徒総代の選出方法 第7同 第8回 第9回 住職選任刑 19.7% 18.9% 21.0% 住職先行型 23.0% 26.0% 24.6% 協議型 27.6% 30.0% 28.1% 門徒先行刑 1O.()% 9.9% 日.9% 門徒選任型 17.4% 12.6% 14.6% その他 2.3% 2.5% 2.2% 出典:r第9[lJi宗勢基本調査報告書JP.73 図表10 寺院所在地と門徒総代の選出方法 寺院所在地 市街地 住宅地 農山漁村 住職選任型 37.2% 28.7% 11.9% 住職先行型 34.9% 21:.7% 20.8% 協議型 18.7% 25.9% 32.1% 門徒先行型 3.5% 7.6% 11.2% 門徒選任l~~ 3.8% 9.9% 20.4% その他 1.8% 2.2% 3.5% 合計 100.0% l()O.O% 100.0% '--出典.r第9同宗勢基本調査報告千九 P.74 型が高くなっている。 し , そ の 後 で 門 徒 に は か るJ (略称:住職先行型), r住職と 門徒が協議して選出するJ(略 称:協議型), rまず,門徒が選 ぴ,住職に具申するJ(略称: 門徒先行型), r門徒が選び,住 職は人選には関わらないJ(略 称 :11I

J

従選任型)。そして「そ の他」である(図表9)。 今回調査では,協議型が最も 高い割合で28.1%であったが, 住職選任型,住職先行型とそれ ほど大きな差はみられなかった。 過去2同の調査結果でも,協議 型の割合がもっとも高くなって いる。そこで、この結果を寺院 の所在地別にみることにした。 すると次のことが明らかとなっ た(図表 10)ロ す な わ ち 市 街 地 では, 1:主職先行型や住職選任型 の割合が高く,農山漁村では, 協議型,門徒先行型,門徒選任 この結果を教区別にみると,東日本では,住職主体(住職選任型・住職先行 型)が主流であるが,近畿を中心とする地域では門徒主体(門徒選任型・門徒 先行型)や協議型が主流となる。近畿より西になると,東日本ほどではないも のの住職主体になる(第91ril報告書P.73)。このような選出方法の違いが,ま さしく所属寺院と1011'1徒の関係性を反映しているのであり,言い換えれば門徒が 寺院をどのように見ているかを示すものとなる。 かつてのように村落共同体の中にあった真宗寺院とその周辺に居住していた 門徒は,自分たちの先祖が代々護持してきた寺院に対してー r(我々の)村の中 にある寺」という思いを堅持してきた口朝に夕に寺院の前を通るたびに,念仏 して手を合わせたであろう。したがって,門徒の日常生活は,寺とともにあっ 真宗寺院における寺院規模と門徒の護持意識(窪田) ー 15

(13)

3-たといっても過言ではない。我々の村の寺であるから護持していくのは,我々 (門徒)であり村として当然である。例えば本堂の屋根の葺き替えや修理にお いても,門徒には自分たちの浄財をもとに護持してきたという自負があった。 したがって門徒総代である自分たちの代表は,日分たちが主体的に選ぶという 態度が至極当然のこととであった。自分たちの先祖が寺の護持に関わってきた ように,その末商である門徒としては,当然のことだというわけである。 このような認識であれば,寺院の住職は,寺に肘住して法務・寺務の執行と いう役割の遂行者である。だから,寺院は住職あるいは住職家族の単なる所有 物ではなく,先祖代々の門徒が護持してきた自分たち門徒のものでもあるとい う意識が強凶に働くことになる。とすれば,門徒総代の選出には,門徒主体の 意志を反映させるべきであるととらえる。それは,類型の中では,門徒先行型 であり門徒選任型となるの近畿を

1

[

1心とする地域では,本来の真宗寺院の形態 が色濃く残っているようにみえる。 これに対して東日本や近畿より西の地域にみられる住職先行型や住職選任型 は,住職が主体となり,何事も住職が決めたことを門徒は追認もしくは,合意 するという形態になる。門徒は決して主体的な態度に出ることなしあくまで も受動的態度となるυ 住職は法務・寺務を担当するのが仕事であるから,寺院 に所属する門徒は住職の仕事を見守り,決められたことに粛々としたがうとい う態度であろうか。比喰的に言えば住職先行型や住職選任型の住職は,中小企 業の経営者か代表者を紡仰とさせるo そうであるなら門徒総代の選任方法は, 住職の提案どおりに遂行されていくのであろう。 加えて近畿よりも西の地域に多くみられる理由としては,寺院の所属門徒戸 数からの影特も充分考慮されよう。門徒戸数が数百単位となれば,住職とすべ ての門徒が顔の見える関係を維持することは,困難である。それ故あらかじめ 門徒の代表と住職が協議するか,あるいは住職主体の選出方法を採用せざるを 得ないというのが現実であろう。 真宗寺院では,門徒が主体的に総代の選出に関わることが長年の特徴であり‘ 伝統とされてきたようであるが,戦後の民主主義や討議を断まえた物事の決定 方法が寺院の門徒総代の選出方法に導入されたとも解釈できょう。それは,今 回調杏において農山漁村であっても協議型の割合が高いことから言えるのであ る口 次に,各寺院で実施されている会合の運営方法をみていこう。会合が実施さ れている割介は,全体の80%以上であるが,注目すべきはその運営方法であるい 154 - 龍谷大学論集

(14)

図表11 会合の運営方法 第7凶 第8回 第9

阿│

会合なし 11.6% 9.3% 12.5%

I

住職不参加剤 2.9% 2.7% 3.7% 総代議長型 46.7% 48.4% 41.9% 住職議長型 37.3% 37.6% 39.7% その{也 1.5% 2.0% 2.2% 出典.r第9[ll]宗勢基本調査報告丹JP.74 図 表12 寺院所在地と会合の運営方法 寺院の立地 市街地 住宅地 農山漁村 会合なし 16.9% 14.7% 9.9% 住職不参加型 1.5% 3.3% 4.6% 総代議長型 ~31. 4% 36.3% 47.9% 住職議長型 47.3% 43.6% 35.6% その他 2.9% 2.0% 2.0% 合計 100.0% 100.0% 100.0% 出典.r第91口│宗勢基本調査報告内JP.76 会合の運営方法も過去

2

回の 調査で実施しているので句そ の比較をするため同様の選択 肢で設問を作成した。選択肢 は次の5つであり,そのまま 類型化した。その内容は, 「門徒総代の会合はない」 (略称:総代会合なし), r門 徒総代だけで議事を行い,住 職はふつう参加しないJ (略 称:住職不参加型)、「門徒総 代から議長や座長が選ばれ, 住職も参加するJ (略称:総 代議長型), r住職が議長もし くは座長となって行うJ (略 称 : 住 職 議 長 型 ), そ し て 「その他」である。今回調査 で 最 も 多 い の は 総 代 議 長 型 (4l. 9%), 次 い で 住 職 議 長 型 (39.7%) であった。 図表11によれば,過去 21訂│の調査と比較してそれぞれの調査H寺点で, もっと も高い割合を示したのは,総代議長型であるが,経年変化をみれば,総代議長 型が減少して住職議長型が用加している。さらに,寺院の所在地別にみると, 市街地や住宅地では,住職議長型が門徒議長型より高い割合を示している(図 表12)

この状況は,先ほどの農山漁村における r(我々の)村の寺」の意識と関連 があると言えそうであるo農山漁村では,寺は自分たち門徒のものとの意識が 強~)ため,会合の運営方法において議長は門徒の代表である総代が執行する o 数字からみても農山漁村の寺院では,その約半数程度は,門徒代表が議長とな っている。これに対して市街地や住宅地にある寺院は,住職が議長となって会 合が実施されている。つまり住職が主体的に会合を遂行していることがわかっ た。 門徒総代の選出方法と同様に,全国の各教区とのクロス集計を試みたが,門 真山寺院における寺院規模と門徒の護持意識(窪田)

(15)

-155-徒総代の選出方法のような地域性は,明らかにはならなかった(第 9回報告書 P.76)。これは各寺院の会合では,真宗寺院の伝統である門徒の主体性が維持 継続されているとは言い難いのではないかと推察できる。寺院の会合の内容は,

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意形成だけでなく寺院の運営に関する経理も含まれているであろう。そのよ うな会合の場に門徒が主体的に関わっていく。このことは代表の選出より寺院 住職との信頼関係が重要視される事柄である。これをもって門徒が所属寺院の ことをどのように把握しているのかをはかることができる。 結論として,次のようにとらえることができょう口門徒代表の選任方法は, 良山漁村-においても門徒主体の選任方法より協議型が高いが,市街地や住宅地 より高い割合を示している。それに対して市街地や住宅地は,協議型と住職主 体の選任方法となっている。市街地や住宅地では,農山漁村の門徒のように, 所属寺院に対して「我々の寺J との認識は堅持しがたいことを意味している。 近畿を中心とする地域では,本来的な真宗寺院と門徒との形態が継続されてい ることも判明した。 しかしながら会合の運営に関しては,地域的なパターン化はできないものの, 門徒主体の会合が展開されていることが判明した。特に,農山漁村の門徒は寺 院との関係性の

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で門徒主体の寺院という意識があるからこそ,代表の選出に も自分たちの意思や態度が表出的となる。門徒が主体的に関わり,あるいは住 職不参加という会合の形態は,全体の約半数程度の寺院で確認することができ た。 真宗寺院は,村落共同体に立地の割合が高く,所属門徒の多くが寺院周辺に 居住して

1

1

常生活の中に寺院との関係性が濃厚であったことは,すでに述べた 通りである。農山漁村が,わが閏の至る所で現出していた近代以前には,地域 社会の中心に宗教施設としての寺院や神社が存在していたのである。今回の調 査結果からも,農山漁村における門徒の護持意識には, r (我々)の村の寺J と しての認識を確認することができた。しかし急速な勢いで村落共同体が,その 形態を失っていくとすれば,村落共同体を構成するメンバーの所属寺院に対す る認識も異なってしユく可能性があろう。 次節では,これまでの調査報告書から門徒の護持意識が,どのように変選し てきたのかを振り返っていきたい口 第

2

節 過去の宗勢訓査にみる門徒の護持意識 今回調査は第9回であるが,教団の機関誌『宗報』に掲載された調査報告や -156- i龍谷大学論集

(16)

図表13 宗勢基本調査実施年と調査対象 調査回 実 施 年 調 査 対 象 第l回 1959(昭和34)年 寺院悉皆調査 第2巨l 1964(昭和39)年 寺院悉皆調査 第3回 1970(昭和45)年 寺院悉皆調査 第4IEII 1976(昭和51)年 寺院悉押調査 第5凶 1983(昭和58)年 抽出調査(寺院:2012司門徒:2012) 第6回 1989(平成元)年 抽出調査(寺院:2072,門徒:10360) 第7回 1996(平成8)年 悉皆調査(住職・坊守・門徒:1ヶ寺あたり男女各1名) 第8回 2003(平成15)年 抽出調査(寺院:2965,門徒:1ヶ寺あたり男女各2名) 第9回 2009(平成21)年 悉皆調査(寺院:10280,門徒:1ヶ寺あたり代表1名) 第 9回宗勢基本調査(中間報行)をもとに作成 刊行されてきた宗勢基本調査報告書によって,門徒の護持意識が確認できるも のを取り出して検討していくことにする。 もう一度門徒という概念について確認しておきたし」門徒とは,同じ宗派に 属し信仰を共にする人びとをさすが,特に浄土真宗の信者のことである。仏教 他宗の檀家にあたるが,門徒宗とは浄土真宗の俗称だとされている。個人単位 か家単位かにつき本調査票では厳密に区別していない。これまでの調査票をみ ると「門信徒Jr門徒」の使い分けがされている場合があるが,その区別の基 準が明記されておらず,恒│答する側も明確に区別されたかどうか暖昧である。 門徒とイ百徒の違いには,所属寺院への関わり方が異なるようであるが,本稿で は,統一的に「門徒」を使うことにする口 図表13は,これまでの宗勢基本調査が実施された年と調査対象を示したもの である。第1回の調査は, 1959 (昭和34)年に実施されているが,この調査に 関する報告書は刊行されていないりまた『宗報』への掲載も見あたらなIt) 0 当 時の教刊では,全国の寺院を把握する調査実施そのものに力点が置かれていた のであろうか。第

2

回の調査後に寄せられた論考によると, r (第

l

回の調査内 容は)寺院や住職に限られていた」とされているo 次に,第2回調査は1964(昭和39)年に実施され,第3回, 4固までは全同 の一般寺院対象の悉皆調査であった口 その後]983(昭和58)年の第5回調査では,寺院だけでなく門徒を加えて, 調査票約2,000余票の抽出(サンプリング)調査を実施している。これまでは 真宗寺院における寺院規模と門徒の護持意識(窪田)

(17)

-157-調査票を配布して,寺院関係者が記入することを前提として,現況を把握する 質問事項が多かった。しかしこの回から抽出調査により,寺院だけでなくIHj従 にも調査裂を配布して心開学的な意識調査がされている。第5回調査で注

1

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さ れたのは,各寺院が教I

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に提出する届け出門徒戸数に関する事項であるo力

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え て,調査の集計や分析にコンビュータが導入され,その操作技法が研究者に普 及しはじめた時期である。

1

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(平成元)年に実施された第

6

同調査も,寺院

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票)と門徒

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票)を対象とした剣山調査であったが,寺院栗の約5倍の門徒票を配布し て集計分析がされている。この調査では,教f

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の機関誌である『宗報』とは別 の独立した冊子『第

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宗勢基本調査報告書一門徒のすがたーその現在と未 来』が発行されているけ第

6

1

竺│調査の特徴は,寺院より門徒を対象とした調査 察を配布・回収して,門徒の現況をとらえようとしたことである。 その第6回以降の調査は,調査の集計から分析に至るまで,コンビュータ活 用が一般的となり,調査裂の設計から集計や回答者の属性を分析指標とした統 計的処理が進行した。もちろん回答の大量処理にも対応できるなど,コンピュ ータソフトの開発とパソコンの普及にともない機器操作技術も飛躍的に向上し たけしかしながら意識訓1脊を合んだ調査票への川答は,被調査者の側からみれ ば, 1ft_!答に時間を要するためか,結果的にはこの時期から調査回収率は,次第 に低下の傾向をたどっている。 第7回調査は, 20~t紀最後の宗勢基本調査であった。 1996 (平成8)年に全 凶の寺院を対象とした悉皆調査が実施され,調査対象は,住職・坊守・門徒男 女各 1名である。寺院に調査票を配布したのち,被調査者は「住職」あるいは 「幼守」というように,回答者の立場(属性)が特定されるようになった。さ らに,当該所属寺院の

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:

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llj徒」を対象にする調査票も作成するなど,調査京そ のものが複数に渡っている。この回では,寺院を取り巻く環境・地域の特徴, 寺院の人的構成,寺院の財政基盤,寺院の住職・坊守および門信徒の宗教・社 会活動,住職・坊守および門徒代表の宗教・社会意識,宗教法人としての寺院 の実態,過去

2

0

年間における宗勢の特徴的変動という

7

つの重点項目が設定さ れた。質問項目から門徒の寺院護持意識に関わるものもみられるので,詳細は 後述する口 そして前回の第

8

1

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1

調査は,

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(平成

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)

年に抽出調査として実施してい るハこの調査も住職・J}j守以外に,門徒は1ヶ寺あたり男女各 2名が前

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夜対象 となっている。調査の目的は,寺院の現況,伝道の展開,現代社会の課題への -158一 龍 谷 大 学 論 集

(18)

図表14 rお寺は,門信徒のものである」についての意見 なんともいえない そうは忠わないー 74.2% そう思う 出典 r第6回宗勢基本 調倉卒~~!;.{ヰJ P.45 取り組みである。その調査内容として,「寺院を諮持する門徒家族の変化を把 握し,寺院護持に関する基礎資料とする」と明記されている。 このようにして宗勢調査の疏れをみていくと,最初は寺院の現況に注目して いたが,回を重ねるにしたがって,寺院周辺の地域状況に関心が広がっている 桜子がわかる。さらに,被調査者も住職だけでなく,坊守,あるいは門徒に範 聞を拡げて意識調査の手法を用いるなど,コンピユ」夕による集計や統計的な 分析手法が容易になったことが功を奏して,次第に復雑で多くの質問事項を設 定したボリュームのある調査が可能となった。 それでは約20年前に笑施された第6回調査に,門徒の護持意識をあらわす指 標と判断できる結果が示されているので。それをみていくことにする。 報告書に記載された当該質問事項と選択肢をみていくと,「お寺は,門信徒 のものである」という意見についてたずねている。「そう思う (74.2 % hrそ うは思わない (9.2%)J,rなんと も言えない(16.6%)Jという結果であった (図表14)。同報告書は「門信徒は寺院をどのように感じているかを示したも のであるが,程度の差こそあれ,心のよりどころのーっと考えられている」 (第

6

回宗勢基本調査報告書

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.4

5

)

と解釈している。実に約

7

割以上の門徒 は,所属寺院は,門徒つまり自分たちのものである,という意見である。これ こそが誰持意識が顕在化した商だととらえることができょう。続けて同報告書 は,「ー....一・そう思うという意見が74.2%もあることに注目される。これは門 信徒あっての寺院であり,宗門であるといった気持ちを率直に示したものと思 われれるJ (前掲報告書P.45) と結論づけている。 この調査対象者である門信徒の属性は,性別の比率では,男性67.3%に対し て女性32.7%である。年齢は20代から80代までと年齢に聞きがあるが,もっと 真宗寺院における寺院規模と門徒の護持意識(銭111) ー159一

(19)

図表15 寺院への出資についての意見 もっと多くてもかまわない もっと少ない方がよい 79.4% いまのままでよい 出典 r第6凶宗主手法本 ilI,~j常事~f';-1 'fJ P.48 図表16浄土真宗以外の宗教に心ひかれること たまにあ めったにない まったくない IJ¥典 r第6凶米勢基本 調査報f'T,,[fJ P .50 も多い│止代が60代 で27.9%となっている。居住地別では,「大都市あるいは大 都市近郊 (10.9%)j,r地方都市あるいは地方都市近郊 (35.8%)j,rl~ ・ 111 ・ 泊村地帯 (53.3%)jであり,この分布は

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込山漁村の割合が半数以上で,大都 市と地方都市を併せて約半数ではあるが,大都市と「地方都市では圧倒的に地 方都市に居住している門徒が多い。このような居住環境は,今回の調査とは異ェ なるが,門徒の居住地分布からみると都市化傾向が進行していることは確実で ある。 今回調査の中で住職や坊守や門徒が抱いた寺院護持意識の低下による危機感 は,約20年間iHこは,ほとんど考慮する必要性がなかったようで,そのことは, この第6回調査の結果から言えることである。さらに,この頃の門徒の寺院護 持意識が濃厚であることを裏付りるこつの意見についても取りよげておきたい。 一つは,図表

]

5

に示すとおり,「寺院への出資についての意見であり,いま のままでいいという答えは全体の約8割に達しているj (前掲報告曹P.48)。 -160一 龍 谷 大 学 論 集

(20)

もう一つは,「浄土真宗以外の宗教に心がひかれることがあるかどうかをたず ねた結果(図表16) である。約 7割近くの門徒は,「まったくない (66.1%) J と否定的態度をとっているo 「ときどき心ひかれるという場合の宗教団体は, 新宗教系,仏教他宗派系,キリスト教系J (前掲報告書P

.

4

8)だと記載されて いる。 回答者の属性が異なるので単純には比較できないが,約

2

0

年前の門徒の護持 意識は,今回調査の結果と大きな訴離をみせている。 第3節 世俗的意味としての門徒の寺院護持意識 すでに述べたように,被調査者の考えや意見をたずねるという意識調査が質 問事項に取り入れられたのは,第5回宗勢調査以降であるが,ここでは宗勢調 査の設問から門徒の護持意識の推移をみていくことにする。というのは,人び との考え方や価伯観は社会的背景により変化していくと考えるからである。 筆者が,門徒の寺院護持意識について何らかの指標でとらえることができな いか、との問題意識を抱いていた頃に出会ったのが,社会学の研究者であり真 宗寺院の住職であった川崎恵埠の論考であった。川11向はー第2回宗勢調査の集 計結果から得られた数値と当時の社会状況から「宗門寺院の現状と課題J とい う論考を1966 (昭和41) 年の『宗報』第36号に寄せていた。これが書カ亙れた時 期は,わが同では戦後最長の好景気,いわゆる「しEざなぎ景気」と称され,隣 国中国では「文化大革命」の時代であった。 その論考の官頭で.川崎は,すでにこの時期に寺院聞に格差が生じていると, 指摘している。「・H ・H ・-・実質的な格差を論ずることは危険であるが,「寺院の廃 統合Jr寺院の再編成」が言われていることを考えあわせれば,実際には格差 が両極化しているのではないか0 ・H ・H ・..それは信仰上の格差ではなく,門徒数 の多寡をめぐる寺院経済の格差を意味している。宗教的意味でなく世俗的意味 において絡差が現実の問題となっている。格差の

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は,本質的には教団全体 の構造に関連を持った歴史的課題であり,単純に解消できないような諸問題を 含んでいるJ ()1111時P.2)というのである。その歴史的背景は,次のように述 べられている。 (浄土真宗本願寺派)教団の原初的形態は,封建社会の底辺にあった 農・漁民を中心とする庶民層の同朋的信仰集団の形態をとっていた。彼ら の信仰の拠点は道場であり,道場を中心として近在の農民が念仏者として 真宗寺院における寺院規模と門徒の護持意識(窪田)

(21)

-161-組織化され,その組織化の過程において寺院が建設されていったと推測さ れる。寺院が同朋念仏者を門徒として寺檀制度の中に組み入れ,檀家とし て氷続的に掌握する態勢が確立したのは,幕滞体制下においてであったけ 真宗寺院が庶民的信仰に支えられていたことは,他の既成仏教寺院に比較 して,その分布が分散して主な集落ごとに散在している点に面影を残して いる。しかし幕藩体制下における寺院は,他の既成仏教と同様に寺檀制度 によって宗教的儀礼を紐帯とする世俗的支配の位置を占めることになった。 極端な言い方をすれば,領主が流民を家産として支配したように,住職は 門徒を世襲的に寺の家産として所有しているものと考え,門徒に対して先 制

1

代々仕えてきた寺院だから護持してゆくべき義務があるという期待を持 つに至った。一方,ドIJ1.百徒にとっても「先制から受け継いだ寺だから諮持 してゆく」という意識が習慣化した伝統となっているo宗旨をかえること はおろか所属寺院をかえることさえ避棄されることになってしまった。こ のようにして一定の地縁社会に根をおろした寺院は寺檀関係の殻を固め, それぞれ独自の封建的集団を形成することになったのである。 川11時は,わが国が経済成長という目標に向かつて蹴勤しているこの時期に, 寺院の間に格差(大坊と小坊)がみられ,そのため寺院の統合や再編の問題が 生じていると述べているo しかも宗教的意味ではなく世俗的意味による経済i格 差であると,寺院関係者としての慣'陀たる思いが推察される。したがって寺院 の再編,統廃合に関する問題は,近年の都市化や高齢化による急激な社会変貌 だけがその要因ではなく,約

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0

年前,あるいはもっと以前から教団がかかえて いた継続的で重要な課題であったことが判明した。 加えて教義的な観点、から胃えば,浄土真宗は tl~l先崇拝を奨励あるいは推進し ているわけではない。あくまでも念仏者として1'1己に向き合う態度を情仰の核 としている。川崎によると,幕務体制下における寺院は寺僧制度によって,宗 教的儀礼を介在して門徒と緊密な関係をもって世俗的支配を維持継続してきた とし=う。 そして,あたかも住職が門徒を世襲的に寺の家産として所有していると考え, 門徒に対して先祖代々仕えてきた寺院だから護持していくことが義務だという 期待感を抱いていたというのである。これに対する門徒の側も,本来の真宗の 教義よりも先祖が代々

1

1:えてきた寺院であるから,宗教的儀礼としての先制崇 作に熱心となり,先制がしてきたとおりに自分の代でも所属寺院との関係性を -162一 龍 谷 大 学 論 集

(22)

維持継続してきたのである。門徒側からみれば,寺院との関係性とは家族・親 族の葬儀や年阿法要を勤め,寺院施設の補修や維持にかかる財政的な支援をす ることで,寺院や教団を経済的に支えてきたとみているであろう。 JIIII時がしEう 世俗的意味合いである。 確かにそのような傾向は,現在も見られる。人びとが生祈する社会的背景, 政治,経済が変貌していくと司そこに暮らす人びとの価値~が大きく掘らぎ, 転換していくことは,周知のことである。したがって具体例を示すならば,今 回の調査からも住職が門徒宅へのお参りする機会をたずねた質問に対して, 「お盆参り」が盛んな地域もあれば,「お盆参り」よりも

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忌参り」が大事 にされている地域もある。だから,家の宗教とは担先崇拝を重要視するものだ という認識に立てば,「先祖から受け継いだ寺だから護持してゆくのが当然だ」 という理由も充分あり得るが.門徒の側が仮に,経済的に困窮状況に陥ってし まうと,先祖より現実の生活困難を理由に寺院との関係性が希薄になる可能性 も出てくる。 ここで門徒と寺院の護持意識を大雑把に振り返ると,次のようなことが言え るのではないだろうか。本来的には,真宗門徒は一人の念仏者として,家の宗 教や宗旨に沿うというよりひとりの人間として教義を内面化して宗教生活を送 ってきたに違いない。それが親鷺を宗祖とする真宗信仰が広範凶に拡がった所 以でもある。当初は,念仏者一人ひとりが自己に向きあう信仰とされたからで ある。それが幕藩体制下に寺檀制度に組み込まれてしまったことで,自己に向 きあうことより祖先崇拝という民族宗教的な色彩が濃くなったのではないか。 あたかも通仏教的な慣習に,真宗の教えが絡め取られていったようにもみえる。 真宗門徒を郷撤する表現に「門徒もの知らず」という言い方がある。世間の一 般的な慣習を知らないとか,ひいては真宗と仏教他宗派との宗教儀礼の違いを さしているとされるが,この他宗派と異なる教義や宗教儀礼にこそ真の意味が 存在すると忠われる。 川崎の論考によれば、約50年前から寺院の中に格差がみられたとし寸。いわ ゆる大坊と小坊である。その寺院を支える門徒に,世俗的意味のもとに寺院と の関係性を維持してきたとの認識が強ければ,多額の経済的支援をもって「お 寺は,門徒のものである」という回答が多い割合となってもあながち的外れと は言い得なv)o1989(平成元)年に実施された第 6回調査における設問は.本 来、所属寺院とは,阿弥陀仏の前で信仰を語る場、多くのことがらを学ぶ道場 のような意味内容のもと,設定された質問事項と考えるが,この頃がパプル崩 真宗寺院における寺院規模と門徒の謹持忠識(律[[J) -

(23)

163-壊という好景気が急変した時期であったため,この質問に対しても宗教的な意 凶より世俗的意味というか現実的にとらえた回答が多かったかも矢1Iれない。 もっと率直に言えば,所属寺院の修理.や維持をはじめとする寺院の護持運営 は,寺院を支える門徒があってはじめて成り立つものである。先祖代々当主が 所属寺院との関係性を継続してきたのは, Illj徒側の財政的基牒が強出│でなけれ ばならないとも胃えるのである。とりわけわが[E[の政策が経済胤理を重視する ことで,豊かな社会が現出するに至ったことを考えあわせれば,このような状 況を呈してきたことは,想像に難くない。

3

地域社会と真宗寺院-滋賀県湖東地域の事例-第 1節 日曜学校活動の継続と坊守の役割 ここからは,宗勢調査のデータ分析から離れて,聞き取り調査と参与観察か ら得られた事柄を述べていくことにする口訪問したA寺院は,典型的な村落 共同体的景観をもっ滋賀県湖東地域に立地している。 滋賀県は全国的にみても寺院数の多い県である。とりわけ真宗寺院が多数立 地している。教団からの数字で胃えば,この寺院が所属する滋賀教区における 寺院数は

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0

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ヶ寺である(宗勢要覧

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.

1

)

。文化庁が発行している『宗教年鑑』 によると,滋賀には近隣の大阪府や京都府とほぼ同数の約

3

.

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0

0

の仏教寺院が 存在している。教団内においても居住人口の割に多数の寺院が存在しているた め,滋賀県全域でー教区を構成している。したがって都市のように人口過密で はないため, 1ヶ寺あたりに所属する門徒戸数は少数にならざるを得ない。つ まり,小規模寺院が村ごとに,しかも多くは一村落に複数の寺院がみられる。 このため滋賀は典型的な村落寺院の観を呈するので,門徒と寺院が顔の見える 関係性を維持していると言える。そのことが,熱心な門徒,つまり篤信者が多 く法義の篤い土地柄だとされている。 A寺院は, JRびわ

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4lJ沿線の住宅地の中にあり,かつて周辺は,農家と田岡 だけだったが,近年,京都や大阪の通勤│空!となったため, ニ"

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住民より新住民が 多く20年前と比較して人口は憎加しているとし寸。人

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増加が,即刻門徒戸数 の増加には繋がらないものの,地域の子どもたちが毎週日曜日にお寺に集まる 日曜学校活動が長年続けられている。 A寺院の坊守は,「継続は力なり」を念頭に活動の中心的役割を担ってきた。 坊守がこの寺院に嫁いできて以来,本格的に始めたので

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年程続いているとい う。今では,始めた頃に日曜学校に通った子どもたちが親の世代となり,彼ら -164- 龍谷大学論集

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が自分の子どもの活動を援助してくれるので,「ちょっと楽になりました」と 坊守の笑顔が印象的であった。 地域の子どもたちは,日曜日の朝9時にお寺に集合する。門徒の子どもだけ でなく,地域の子どももやって来る口お寺に来たら,まず本堂で阿弥陀仏へ手 を合わせて,念仏を唱えることから始まる。住職の法話の後には,合│ll

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の練習, 身体を使ったゲーム遊び,最後には,おやつパーティともなる。日l組学校はー 子どもにとって家族以外の大人と話す機会であり,知らない人とおしゃべりを 楽しむことができる。週1回のたった 1時間あまりと坊守は言われたが,これ が積み重なるととても大きな力となる。昨年の夏休みは,はじめてみんながお 寺に1泊するお盆の集まりがあったばかりだと言う。 お寺へ来れば子どもたちは,さまざまなことを体験的に学んでいくであろう。 日常とはちょっと雰囲気の異なる場所で,余所のおじさんやおばさんと話をし ながら,これまで知らなかったことを教わる。これこそが,本来の地域のお寺 のあり方の一つではなし功=と,その活動を眺めながら確信した。 この A寺院周辺は、兼業農家で多世代家族もあるというが,わが国の人口 統計数値では‘圧倒的に核家族の割合が増加している。一般的に子どもに関わ る大人は,ごく少数に限られ,他者と関わること自体が不得手という子どもも 増加しているが,この地域の子どもたちには,他者に対する物怖じゃ気恥ずか しさは見受けられない。子ども特有ののびのびした中に,礼儀を身につけたメ リハリある態度にちょっと驚いた。 筆者は 10名の大学院生と共に,昨年秋のある日,日曜学校活動を参与観察と いう形で経験した。初めて出会った私たちにきちんと挨拶をしてくれる子ども たちがほとんどである。年長の小学生が小さな幼児の面倒をみているのもほほ えましかった。子どもたちは座布団に座り,それぞれの手提げかぱんから念珠 と輪袈裟と経本を取り出す。他方,そろそろ時間になるのにおしゃべりを続け る子,ふざけあっている子など,それぞれが思い思いの行動を取っていたが, お勤めが始まるとその場の雰囲気が急に静識になった。当日のプログラムが終 わると,保護者の方がお茶とお菓子を準備してみんなに配っていかれる。子ど もを見守り,育んでいくことを通して地域のお寺における日曜学校の存在は, 重要な{支持iJを担っていることがみてとれた。 このように地域の子どもたちの集まり場所となる寺院を持つことができる門 徒は,寺院に対する思い入れが強くなるに違いなし) 0 それは川崎のいう寺院と 門徒の関係が,経済原理からの世俗的意味ではなく,純粋な宗教的,信仰的な 真宗寺院における寺院規模と門徒の護持意識(窪

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寺院の存在を経験的に理解しているからである。視点を変えれば,村落の中心 に寺院の存在があり,ちょうど地域の求心的な役

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を果たしているように,地 域に居住する人たちの生活に仏教信仰が色濃く溶け込んでいると言えるのであ るけ 第2節護持意識を醸成する地域の寺院活動 同じ滋賀県湖東地域に所在する真宗大谷派の日寺院の例をとりあげることに する。

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寺院は,守山市にあり

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琵琶湖線より西(琵琶湖)側に立地してい る。 ]R守山駅からパスで15分程の距離にあるが,日寺院までの景観は,広い 道路に沿って企業の工場や住宅地が拡がり,高度経済成長期以後に開発された のか,大都市の郊外という雰I

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気に満ちている口 当該寺院も典型的な村落共同体の中にある村の寺であり,もとは真宗道場で あったが寺院に発展したと聞かされた。どおりで,本堂の内陣は一般的な寺院 のように金箔の豪華さはないが,木目の天井や壁面には簡素で落ち着きがあり 煤とした空気が漂う。その本堂に添う庫裏はまだ新しく,その向こう側には広 い竹厳があり,境内地も比較的ゆったりしている。この寺院は村の中心にあり ながら,古い門を過ぎると開け放たれた本堂は,村人がいつも立ち寄れる静か な解放感が漂っている。 住職の話から次のことがlりjらかになった。この寺院は30年程前まで,住職が 居住していない寺(しEわゆる無住寺院)であった。近隣寺院の住職が住職代務 を引き受けていた。しかし本堂の阿弥陀仏には,お花とお仏飯が毎日あげられ ていたという。たとえ住職が常住していなくても,門徒はお寺の世話を続けて きたのである。まさしくこの行動は,

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寺院は自分たちの寺である, という思 いの表われであり,またそうせざるを得ない心境が村人に共有されていた。換 下守すれば,お寺の"11日首をするという態度が村人を触発させる。これが寺院を殺 持していくという意識のあらわれである口住職が不在であった数十年間,村人 は決して阿弥陀仏へお花とお仏飯を欠かすことがなかったという口 現住職が当該寺院を受け継いでから重視していることの一つに日曜学校活動 があるというので,筆者は大学院生

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名と共に日曜学校の活動に参加した。住 職の日曜学校活動への思いは,「志は高く,日常は気楽に」だと熱く語られた。

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Il京学校の活動には住職だけでなく坊守も参加されていた。どこの寺院も日

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学校活動は,住職一人では多くの子どもたちへの目配りが難しいこともあり司 住職夫人である坊守が,この活動に積極的に関わっている。 -1(j6一 龍 谷 大 学 論 集

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この地域の門徒は,子どもが誕生すると家族揃ってお寺にお参りするo そし て小学校の入学式,卒業式や成人式会場へ行く前にも,必ずお寺にお参りをし た後に向かうとし寸。毎年,小学校が新入生を迎える時期,お寺の日曜学校で 一年生一人ひとりに子ども用の輪袈裟と念珠と用経本が手渡される。これは, 子どもたちにとっては通過儀礼であり、「今後は小学生として日曜学校の活動 に参加しよう」という決心につながる。このように子どもの頃から人生の節目 節目にお寺に来て,住職や地域の人と顔を合わせて阿弥陀仏に合掌してきたと しEう。 さらに,村に居住する若夫婦は,結婚がきっかけでこの村にやって来た新郎 新婦も家族と一緒にあるいは

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人揃って,お寺へお参りに来る。この地域に嫁 いできた女性は,当時を思い出して「お寺に来て阿弥陀様の前に座って手を合 わせると,白分たち家族を見守ってくださっているような気がします」と語っ てくれたn このように村人は,子どもが生まれたらお寺に,子どもの成長や人 生の節目にはお寺に、という習慣を長年継続してきた。 当該寺院の周辺地域の村人にとってお寺はとても身近な存在であり,子ども が日曜学校活動に通うことは,至極当然のことと認識されている。人生の節目 となる大事な時期をこの地域のようにー周凶の人びと共に迎えられるとは,な んとすばらしいことであろう。このことが子どもたちの将来にも大きな影響を 及ぽしていくであろう。

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寺院が真宗道場として聞かれたことはー既述したが,本堂の建築様式から も真宗道場の様式が縞麗に残されているというので,近年,守山市の教育委員 会から文化財の指定を受けたという。かつて住職が常住していなかった頃でも, 村人が毎日お花とお仏飯をあげていたという。これも寺院が地域において重要 な位置を占めている逸話である。 この寺院では毎月寺報を発行しているが,取材から原稿執筆と編集作業を担 当する住職にとっては,決して容易い仕事ではない。しかし発行の期日に遅れ ると,この寺報を各門徒に配布する門徒役員から,すぐに催促がくると笑顔で 話された。したがって住職は「この村の門徒さん方は,寺は住職のものではな い,自分たち門徒の寺だと思っておられることがひしひしと伝わってくる」と 打ち明けられた口これも門徒による寺院護持意識であるo また,日曜学校活動を卒業した地元の大学生が,その活動をボランティアで 支えているという事実,さらにその在家出身の大学生が得度したと教えられた。 現にその大学生にも話を聞くことができたが,彼女は「お寺にくることが楽し 真宗寺院におけるす2院規模と門徒の護持意識(窪

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167-しりと言う。「都合が悪いときは仕方ないが,何もなければ休みの日に日曜学 校のお手伝いに来ることにしている」とさわやかな笑顔で、話してくれたりこの ことは住職や坊守にとって最大の喜びである。在家の若い人が日曜学校活動を 機縁に得度したことは,その地域の寺院活動がうまく機能していることのあら われと言えよう。 このことを通して地域の寺院活動は,すぐに口に見える成果が上がるという ものではなく,状況もすぐに変化するものではないが,経験が蓄積され,行動 が継続されて数年あるいは数十年経つと,大きな威力を発揮する実例ではない だろうか。 当該寺院を訪れた│ご1,結婚と同時にこの地域に)片住したという数人の若い付 税が,幼児を連れて来ていることに気づいた。彼女らは,学齢前の幼児や乳飲 み子を抱えてお寺の

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幌学校活動をボランティアとして支援しているo 当人た ちにたずねると,「報酬がないからボランティアという言い方をしていますが, 子どもを連れてここへ来ると楽しいことがいっぱしEあるのです」と話し始めた。 ある母親は,「今日は大学から大勢のお客さんがみえるので,住職は竹酸から 青竹を切り出して,子どもたちとお客さんに流しそうめんを出すらしい,とい うのを聞いてお手伝いにと思って,この子(生後3か月)を連れて来ました」 とし寸。もう]人の母親も,幼稚園に通う子どもが先に来ているので「下の子 (生後5か月位)を抱いて来たんですけど,今

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はお客さんがたくさん来られ ると聞いたので,でも流しそうめんとは思っていなかった」と,こちらもお寺 のお手伝いはごく当然という顔つきである。 滋賀ではこのようにお寺の存在と地域の人が顔の見える関係でP繋がっている という場面に出会うことや話に出てくることが頻繁にあるo とりわけ寺院数の 多い真宗寺院を支えているのは,一人ひとりの門徒や地域住民であるというこ とを実感する。 具体的には,住職が教育委員会の役職や円治会・町内会の役員経験者であり, 坊守が民生委員として地域住民に関わり,お参りで円宅を訪問する際に高齢者 の安否確認を兼ねているという話もあった。一般的には,民生委員が座敷まで 上がり込むことはあまりないが,寺院関係者,つまり宗教者として高齢者宅の 枕元まで行って,仏別にお参りをした際,お年寄りの顔を見ることができると いうのである口 既述したように滋賀の寺院は,小規模寺院が多いが150年以上の歴史を持つ 寺院も多数存在している。ただ寺院に所属する門徒数が少数であるため,寺院 168 龍谷大学論集

図 表 2 寺院の立地と門徒居住地の分布 門徒J , rt 住地の分布 市街地主体 住宅地主体 出山漁村主体 全ミテI~t 1 2 . 7 %  30.9%  5 6 . 4 %  市街地の寺院 5 2
図表 4 所属寺院の門徒になった時期 .e j 分の代目父宙の f -t口組父尽の代 ・ I I I 父 a の代以前 回その{血 I  全国 E : 耐 . ': . 且 ..
図表 5 住職の年齢別兼業状況 ・兼業あり 口兼業なし 3 0 歳未満 3 0 歳以上 &#34; ' 4 0 歳未満 40 歳以上 &#34; ' 5 0 歳来満 50~電以上&#34;'60議未満 6 0 議以上 &#34; ' 6 5 歳来満 6 5 歳以上 &#34; ' 7 0 歳末満 00歳以上~'O~歳来満 8 5 歳以上 。 % 20%  40~  60%  80%  100%  出典l'第 9 @ 宗勢基本調査報ヂ; O l ' } J P
図 表 7 所在地別にみた寺 院収 入 ・3 ∞万円未満 .300 万円以上6 ∞万円未滋 .6 ∞万円以上 会寺院 市街地 住宅地 H 長 山漁村 0%  20%  40 %  60%  80 %  100%  第 9 阿宗勢謀本調祈(中間報告)をもとに作成 図表 6 によると , 1 0 0 万円未満の寺院が 1 8
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