平成 22 年度 岡山市埋蔵文化財センター講座第 5 回
近世陶磁器のかたち
-飲食器の種類からみる食文化の変遷-
河 田 健 司
【講座の概要】
近世の遺跡を調査すると、これまでの時代に比して莫大な量の陶磁器類が見つかります。これ は、これまでの時代と比べて陶磁器の使用者たる人口が増加したことと、陶磁器が大量に生産さ れ、大量に供給されたことによるものと考えられます。特に今まで輸入に頼ってきた磁器が、国 内の伊万里で生産が始まり、国内向けのの製品を大量生産するようになると、一般の人々も磁器 を使用することができるようになりました
出土する陶磁器はその数量だけでなく、種類もこれまでの時代と比較して大幅に増加し、碗・皿・ 鉢といった従来の器形の他に、全くあたらしい器種が出現します。たとえば土瓶、急須、行平鍋、 土鍋等は近世以前の遺跡には認められませんが、近世の遺跡からは多量に見つかります。これら のあたらしい器種は特に 18 世紀に出現するものが多く、その中には 、 現在我々の生活の中で使 用されている器種がたくさん含まれています。
これは近世において食生活の多様化が進んだ結果と考えられています。現在の食文化はおそら く近世にさかのぼるものなのでしょう。
今回の講座では、岡山市内の近世遺跡から出土した陶磁器のなかの、飲食器に注目して、その 時期別の種類の変化をたどることにより、近世の食文化の変遷の一端をのぞいてみたいと思いま す。
【参考文献】
江戸遺跡研究会編 2001 年『図説江戸考古学研究事典』 柏書房
大橋康二著 1989 年『考古学ライブラリー 55 肥前陶磁』 ニューサイエンス社 大塚初重他 1994 年『八百八町の考古学 シンポジウム江戸を掘る』山川出版 古泉弘 1983 年『江戸を掘る 近世都市考古学への招待』柏書房
図 1 17 世紀初頭~末(岡山城三之外郭 ( 中央中学校 ) 跡 SD320)
図 3 18 世紀後半~ 19 世紀(足守藩武家屋敷 ( 足守小学校 ) 跡)
Ⅰ期(17 世紀前半) 第 9 地点 SK04
Ⅱ期(17 世紀後半~末)
西中ノ町地区 SD3501
Ⅲ期(17 世紀末~ 18 世紀前半) 西中ノ町地区 SK2501
Ⅳ期(18世紀後半)
江戸遺跡出土陶磁器碗量産器種の変遷
(長佐古真也 2000「日常茶飯事のこと」『江戸文化の考古学』江戸遺跡研究会)
急須と土瓶 土鍋と行平
「関口日記」に見る 18 世紀末~ 19 世紀前半期に購入された陶磁器
(森本伊知郎 1995「陶磁器に見る発掘資料と文献資料」『季刊考古学』第 53 号)
井原西鶴『日本永代蔵』(貞享五年 (1688) 刊)に見る