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(5) 指導細案 1 第 1 限 モンゴルの征服と拡大 教師の指示 発問 説明 教授 学習活動 資料 生徒に期待する認識 知識 導 モンゴル ジンギスカン という言葉 T. 質問する 入 から連想することがらを発表させる P. 発表する 1. チンギス=ハンの征服活動 チンギス=ハンによる征服活動は

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ネッ トワ ーク 論に もと づく 高等 学校 世 界史 の授 業

∼小単元「モンゴル民族の発展」の場合∼ 熊本県立熊本高等学校 平井英徳

1 . は じ め に

小 田 中 直 樹 氏 に よ れ ば 、 高 校 生 が 世 界 史 の 授 業 に 求 め る 要 素 と し て 、 エ ピ ソ ー ド と ス ト ー リ ー 性 が あ げ ら れ る( 1 )。 こ の 調 査 に も と づ き 、 ネ ッ ト ワ ー ク 論 に も と づ く ス ト ー リ ー を 構 成 し 、 こ の 中 で 様 々 な エ ピ ソ ー ド を 提 示 す る 授 業 を 構 想 し た 。 ネ ッ ト ワ ー ク と は 人 と 人 、 集 団 と 集 団 、 人 と 集 団 の 間 の 結 び つ き の こ と で あ り 、 こ う し た 諸 集 団 の 結 び つ き は 都 市 を 介 し て 行 わ れ る 、 と い う 考 え 方 が ネ ッ ト ワ ー ク 論 で あ る 。 ネ ッ ト ワ ー ク を 重 視 す る 姿 勢 は 現 行 の 学 習 指 導 要 領 で も 「 諸 地 域 世 界 の 交 流 と 再 編 」 と い う 項 目 で 強 調 さ れ て い る と こ ろ で あ る が( 2 ) そ の 理 由 と し て は 、 こ れ ま で の 世 界 史 が 個 々 の 文 化 圏 の 学 習 で あ っ た こ と か ら 、 世 界 史 を 地 域 史 の 寄 せ 集 め と 考 え る 傾 向 が 生 ま れ た こ と に よ る 。し か し グ ロ ー バ ル 化 が 進 ん だ 今 日 、 あ る 地 域 で 起 こ っ た こ と が 別 の 地 域 に 影 響 を 与 え 、 大 き な 変 動 を も た ら す こ と は 歴 史 上 頻 繁 に 起 こ る こ と で あ り 、 し た が っ て 現 代 社 会 形 成 の プ ロ セ ス を 考 え る 場 合 に 諸 地 域 相 互 結 び つ き を 軽 視 す る こ と は 出 来 な い 。 ネ ッ ト ワ ー ク 論 の 導 入 に よ っ て 、 歴 史 の ダ イ ナ ミ ッ ク な 動 き を 捉 え る こ と が 可 能 と な る 。 一 方 で 、 と り わ け 前 近 代 に お け る ネ ッ ト ワ ー ク を 等 閑 視 す れ ば 、 諸 地 域 の 交 流 は ヨ ー ロ ッ パ が 覇 権 を 握 る 大 航 海 時 代 に 始 ま る と い う 認 識 を 生 み 、 結 果 的 に ヨ ー ロ ッ パ 史 を 大 き く 取 り 扱 う こ と に つ な が る こ と が 危 惧 さ れ る 。 以 上 の よ う な 理 由 か ら 、 今 回 題 材 と し て 取 り 上 げ た の は 、ネ ッ ト ワ ー ク 論 に も と づ く「 モ ン ゴ ル 帝 国 の 発 展 」 で あ る 。 大 航 海 時 代 よ り 以 前 に 、 ユ ー ラ シ ア の 東 西 が モ ン ゴ ル の 西 進 に よ っ て 結 ば れ た と い う 考 え 方 は 既 に 定 説 と な っ て お り( 3 )、 こ の 考 え 方 に も と づ く 授 業 構 成 も 数 多 く 発 表 さ れ て い る( 4 )。 し か し そ の 多 く は モ ン ゴ ル 民 族 が 果 た し た 歴 史 的 意 義 を 強 調 し た 実 践 で あ り 、 モ ン ゴ ル 民 族 が 東 西 交 流 に 果 た し た 役 割 を 強 調 す る に と ど ま っ て い る よ う に 思 わ れ る 。 杉 山 正 明 氏 の 一 連 の 著 作 か ら 感 じ ら れ る 「 中 華 の 立 場 で 成 立 し た 野 蛮 な モ ン ゴ ル と い う 従 来 の イ メ ー ジ の 否 定 」 と い う ス タ ン ス が 、 世 界 史 教 育 の 現 場 に も 大 き な 影 響 を 与 え て い る こ と の 表 れ で あ る と 思 わ れ る が 、 こ れ ら の 実 践 で は ネ ッ ト ワ ー ク に よ る 結 び つ き の あ り 方 は 示 さ れ て い る が 、 結 び つ き が で き あ が る プ ロ セ ス は あ ま り 重 視 さ れ て い な い 。 結 果 と し て 「 モ ン ゴ ル 民 族 に よ っ て 東 西 の 交 流 が 活 発 化 し 、 13 世 紀 は 大 航 海 時 代 の 前 提 と な っ た モ ン ゴ ル の 時 代 で あ る 」 こ と を 強 調 す る に と ど ま っ て い る 。 モ ン ゴ ル ネ ッ ト ワ ー ク 経 営 者 説 の み を 示 す だ け で は 、 遊 牧 民 族 モ ン ゴ ル を 賛 美 す る だ け の 授 業 に な っ て し ま う よ う な 気 が す る 。 元 朝 の 国 家 シ ス テ ム が 極 め て 機 能 的 で 、 そ の 支 配 が 軍 事 力 を 背 景 と し な い も の で あ っ た に せ よ 、 モ ン ゴ ル 帝 国 は 征 服 活 動 の 結 果 成 立 し た も の で あ る 。 し た が っ て 、 モ ン ゴ ル 民 族 が 世 界 史 上 で 果 た し た 役 割 を 扱 う な ら ば 、 征 服 活 動 に も 同 じ ウ ェ イ ト を 置 い て 、 単 元 の 中 に 位 置 づ け る べ き で あ る 。 そ こ で 本 実 践 で は 、 高 校 現 場 の 実 情 も 勘 案 し て モ ン ゴ ル 民 族 の 拡 大 す な わ ち 征 服 の 実 情 に も 重 き を 置 く こ と を 通 じ て 、 モ ン ゴ ル 民 族 に よ る 侵 略 ・ 征 服 の プ ロ セ ス と ネ ッ ト ワ ー ク 形 成 の プ ロ セ ス を と も に 見 て い く こ と を め ざ し た 。

2 . 授 業 の 実 際

( 1 ) 科 目 名 世 界 史 B ( 2 ) 単 元 名 「 モ ン ゴ ル 民 族 の 発 展 」 ( 3 ) 単 元 の 到 達 目 標 ① 知 識 面 以 下 の 知 識 内 容 を 理 解 す る 。 ○ 「 モ ン ゴ ル 民 族 に よ っ て 建 設 さ れ た 国 家 は 、 民 族 の 枠 組 み を 越 え た 存 在 で あ っ た 。」 ○ 「 モ ン ゴ ル 民 族 の 征 服 活 動 に よ り 、 東 西 ユ ー ラ シ ア を 結 ぶ 広 域 ネ ッ ト ワ ー ク が 形 成 さ れ た 。」 ○ 「 元 寇 は 、 モ ン ゴ ル に よ る 海 の ネ ッ ト ワ ー ク 支 配 確 立 の 過 程 で 発 生 し た 出 来 事 で あ っ た 。」 ○ 「 モ ン ゴ ル が 陸 海 の ネ ッ ト ワ ー ク を 支 配 下 に 治 め た こ と で 、 ユ ー ラ シ ア の 交 流 が 秩 序 あ る も の と な り 、 東 西 文 化 の 交 流 が 促 進 さ れ た 。」 ② 情 意 面 ○ 歴 史 事 象 に 対 す る 異 な っ た 評 価 ・ 学 説 を 検 討 す る こ と で 、 一 つ の 見 方 に と ら わ れ な い 批 判 的 な も の の 見 方 ・ 考 え 方 が で き る よ う に な る 。 (4)単元の構成(4時間構成) 単元の4時間は、以下のような要素で結びついている。 ①第1限「モンゴルの征服と拡大」 ↓〈征服の一環としての中国支配〉 ②第2限「元の成立と中国支配 〈陸上ネットワークの形成〉 ↓〈中国支配と元寇との関わり〉 ③第3限「世界史の中の元寇」 〈海港都市の発達と結びつき〉 ↓〈モンゴルによる海上ネットワークの形成〉 ④第4限「陸と海の帝国の成立」

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(5)指導細案 ①第1限「モンゴルの征服と拡大」 教師の指示・発問・説明 教授・学習活動 資料 生徒に期待する認識・知識 導 「モンゴル」「ジンギスカン」という言葉 T.質問 する 入 から連想することがらを発表させる。 P.発 表す る 1.チンギス=ハンの征服活動 「チンギス=ハンによる征服活動は、どのよ T.発問 する 1 うな特徴があったのだろうか。」 ①「チンギス=ハンの生い立ち」を読ませる。 T.指示 する ①遊牧民族は君主の称号として、柔然が 源義経伝説や、第二次大戦後のモンゴルに P.読 む 用いた可汗に起源をもつハンを用いる。 おけるチンギス=ハンの位置づけの移り変 ハンの選出など重要事項は各部族の代 展 わりを紹介し、またチンギス=ハンを描い 表による合議体クリルタイで決定され たモンゴルの紙幣や切手を見せ生徒の関心 た。 開 を高める。 ②モンゴルという呼称は人間集団を意味 ②モンゴル帝国(イェケ=モンゴル=ウルス) T.説明 する するもので、帝国の拡大にともない非 Ⅰ のウルスとは「人間の集団」の意味であり、 P.説 明を 聞く 遊牧民もモンゴルに取り込んでいった。 モンゴル帝国は地域を示す言葉ではなく、 このことがモンゴルの急速な拡大を可 人間の集団を示す言葉であったことを説明 能にした。 し、モンゴルの名の下に統合された人々の ③モンゴル高原を統一したチンギス=ハン 中には、遊牧民以外の人々も多かった点を は、ナイマン、ホラズム、西夏を征服 指摘する。千戸制にはここで触れておく。 し、内陸アジア全体をほぼ制圧した。 ③チンギス=ハンが滅ぼした王朝を調べ、地 T.発問 する 図上で場所を確認させる。 P.答 える 2.モンゴル帝国の拡大 展 「チンギス=ハンの死後、モンゴル帝国の拡 T.発問 する 大はどのような形で継続したのだろうか。」 2 開 ①モンゴル帝室の系図を完成させる。 T.指示 する ①チンギス=ハンの死後、征服活動は子 P.記 入す る 孫に受け継がれた。 Ⅱ ②チンギス=ハン以後、オゴタイからモンケ T.指示 する ② 1234 年に金を滅ぼし、以後バトゥやフ の時代にかけての征服活動を、年表を見て P.ま とめ る ラグ、フビライによってユーラシアの まとめさせる。ここでワールシュタットの 東西にわたる地域がモンゴルの支配下 戦いについて、あまり過大評価すべきでは にはいった。 ないという意見を紹介する。 3.モンゴル帝国拡大の理由 「モンゴル帝国が史上最大規模にまで拡大し T.発問 する モンゴル帝国では、モンゴル部族を中 たのはなぜだろうか。」 心とした遊牧民の部族連合体組織とオア ①騎馬民族の高い戦闘力について、資料を読 T.指示 する 3 シス定住民が相互補完的な共生関係を築 ませる。 P.読 む いていた。このことがモンゴルに経済的 ②抵抗せず降伏する者は税の支払いを条件に T.説明 する 繁栄をもたらし、モンゴルを大帝国に発 終 助命し、自治を許すという原則に立ち、そ P.説 明を 聞く 展させた要因であった。モンゴルの中に れを征服予定地に触回ることで帰順を促し さまざまな民族が取り込まれていった背 結 たことを説明する。 景には、モンゴルに服従する限り、在地 ③遊牧民とオアシス通商民と共生関係を説明 T.説明 する の文化や宗教にほとんど干渉しなかった する。(ウイグル文字が使用された理由に P.説 明を 聞く という点がある。 触れる) ④ガザン=ハンやラシード=ウッディーンの T.発問 する 4 活動を読み、モンゴルの支配特色を説明さ P.答 える 5 せる。(在地の宗教や文化などに対して非 常に寛容なものであったことを指摘し、ま た耶律楚材に対する二つの相異なる評価を 紹介する。) ②第2限「元の成立と中国支配」 教師の指示・発問・説明 教授・学習活動 資料 生徒に期待する認識・知識 0.導入 モンゴルでは大ハンの後継者もクリル 導 モンゴルでは後継者争いが多くかったことを T.説明 する タイで決定された。それゆに大ハンの後 入 説明し、ハイドゥの乱に触れる。 P.説 明を 聞く 継者争いも起こりやすく、フビライの即 位に対してはハイドゥが長期に渡り反乱 を起こした。

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1.元の成立 展 「資料集の年表を見て、即位から南宋征服ま T.指示 する フビライは、都を大都(現在の北京) 開 でのフビライの対中国政策をまとめよ。」 P.答 える に遷し、また国号を元とするなど、中国 Ⅰ 的な傾向を強めた。さらに 1279 年には南 宋を滅ぼし、中国全土を支配することと なった。 2.元の中国支配 「異民族モンゴルによる元の中国支配は、ど T.発問 する のようなものであったのだろうか。」 ①元は中国風の官僚制度を採用し、行政機関 T.説明 する ①元では中国風の官僚制度が整えられて 展 の名称も中国風にしたことを指摘する。 P.説 明を 聞く いた。 ②モンゴル人第一主義について説明し、北魏 T.発問 する ②元は同じく異民族王朝の北魏が漢化政 開 の政策と比較させ、違いの理由を考えさせ P.答 える 策をとったのに対して、モンゴル人第 る。(モンゴル人第一主義について、それ 一主義をとり、中国文化にあこがれを Ⅱ ほど厳しいものではなかったとする見方も もたなかった。 紹介する。) ③「教科書を読み、元朝治下で中国社会はど T.発問 する ③モンゴル人は少数派であり、支配地の う変化したのか説明せよ。」(戯曲『漢宮秋』 P.説 明を 聞く 文化や社会には無関心であったから、 を紹介する。) 社会体制は大きく変化せず、漢民族は 庶民文化を発達させることができた。 ただ、中には異民族による支配をここ ろよく思わなかった人々もいたようだ。 3.『東方見聞録』に見る元の繁栄 「元朝治下の中国は、どの程度繁栄したのだ T.発問 する ろうか。」 ①『東方見聞録』について説明したうえで、 ①ヴェネツィアの商人マルコ=ポーロは、 彼が中国に行ってない、あるいは存在自体 13 世 紀 に中 国を 訪れ 、フ ビラ イ に仕 え 展 に対する疑問があることを紹介する。また、 T.説明する 6 た。かれの体験は『東方見聞録』とし マルコ=ポーロを描いたイタリアの紙幣を P.説 明を 聞く て知られる。 開 見せ、生徒の興味を高める。 ②「資料集の『元代の輸送路』をみて、都市 T.発問 する ②元の時代は、経済的に大繁栄を呈して Ⅱ どうしを結びつけていたものは何か説明せ P.答 える 7 おり、泉州や杭州など、海港都市も繁 よ。」 栄していた。これらの都市は海運や運 ③紙幣の流通に触れている箇所を読ませる。 T.指示 する 河を通じて結びついていた。 また、交鈔の図に見える「偽造者処死」に P.資 料を 読む 8 ③元では交鈔とよばれる紙幣が通貨とし 注目させて興味を持たせ、交鈔と塩・銀の て採用された。銅銭が主流であったそ 関係に触れ、元は商業を重視していたこと れまでと大きく異なる。 に気づかせる。 5.元の滅亡 元ではチベット仏教が信仰され、僧パ 「教科書を読み、元が滅亡した理由をまとめ、 T.発問 する スパがつくった文字が国字として採用さ 終 説明せよ。」 P.答 える れたほどだった。しかしチベット仏教の 信仰は財政を圧迫し、交鈔の濫発につな 結 がった。このため経済混乱から起こった 白蓮教徒による紅巾の乱は、元をモンゴ ル高原へと後退させた。 ③第3限「世界史の中の元寇」 教師の指示・発問・説明 教授・学習活動 資料 生徒に期待する認識・知識 0.導入 導 フビ ライが日 本に送っ てきた国 書につい T.発問 する 9 フビライの国書については、様々な解 入 て、恫喝であるという説とそれを否定する説 P.答 える 釈が存在する。 を紹介し、どちらをとるか考えさせる。 1.元寇 「元寇はなぜ行われたのだろうか。」 T.発問 する 文永の役は南宋攻略の一環として行わ ①文永の役 れ、高麗の人々が操船や造船を担った。 ○マルコ=ポーロによる、財宝を狙った説な T.説明 する また弘安の役は、社会不安の要因となる どを紹介したうえで、南宋攻略の一環であ P.説 明を 聞く 可能性がある旧南宋軍を解体して海外へ ったとみる説が強いことを紹介する。 移民することが目的であった。元寇は日 ○遊牧民であり船を操ったり造船の技術を持 T.発問 する 本と元だけではなく、高麗や南宋との関 展 たないモンゴルが、どうやって海をわたっ P.答 える 係まで含めて、東アジア全体の中で考察

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てきたか、予想させ、高麗の存在に気づか しなければならない。 開 せる。 ②弘安の役 Ⅰ ○「弘安の役を文永の役と比較し、違ってい T.発問 する る点を説明せよ。」(文永の役とルートや規 P.答 える 模を較べさせ、規模は4倍に増えており、 なかでも江南軍という軍団の数が多いこと に気づかせる。) ○「文永の役と弘安の役との間には、どのよ T.発問 する うな出来事が起きているか。」(文永の役と P.答 える 弘安の役との間に南宋が滅亡しており、弘 安の役では旧南宋の兵士が多く参加したこ とに気づかせる。また「蒙古襲来絵詞」を 見せ、元軍が使用している弓矢には2種類 あることを指摘する。) 2.日本以外への遠征 元は日本をはじめミャンマーのパガン 展 元が遠征軍を派遣した地域のうち、ミャン T.発問 する 朝、ジャワ島、ヴェトナムの陳朝などへ 開 マー以外では失敗に終わっていることを指摘 P.答 える 遠征しているが、騎馬軍団の威力が発揮 Ⅱ し、その理由を考えさせる。 できない地域では、失敗が多かった。 3.海上帝国への道 「フビライ時代と、それ以前との遠征を比較 T.発問 する 南宋を滅ぼした元は海上への進出を志 し、フビライ時代の遠征の特徴を答えよ。」 P.答 える 向するようになった。日本やヴェトナム、 終 ①フビライの時代の対外遠征は、その多くが インドネシアへの遠征は、モンゴルが陸 海上ルートを使った遠征であり、騎馬の機 上から海上へと発展したことの表れであ 結 動力を生かしたフビライ以前の遠征と違う る。 ことに気づかせる。 ②海上ルートを使った遠征の多くは失敗した が、海上輸送路の確保という点で大きな意 味を持ったことを説明する。 (元寇後、日本と元とは交流を活発化させ、 僧や貿易船の往来はたいへん盛んとなってい ることを指摘する。) ④第4限「陸と海の帝国の成立」 教師の指示・発問・説明 教授・学習活動 資料 生徒に期待する認識・知識 0.導入 ネットワークとは、政治・経済の中心 導 ネットワークについて説明し、モンゴルが T.説明 する (簡単に言うと都市)同士が、網の目の 果たした役割として、ユーラシアの東西を結 P.説 明を 聞く ように結びついて、人・カネ・モノ・情 入 ぶネッ トワーク を成立さ せたこと を指摘す 報があらゆる地域へ伝播する、その働き る。 やあり方を言う。 1.陸の帝国の成立 「モンゴルによって陸上のネットワークはど T.発問 する ①グユクの時代には、教皇の使節として のように成立したのだろうか。」 カルピニ、モンケの時代にはフランス ①「カルピニやルブルックがモンゴルをおと T.発問 する 10 王ルイ9世の使節としてルブルックが ずれた際、彼らはどのようなルートを使用 P.答 える 訪れた。この2人は「草原の道」を通 しているか。」(二人の旅行記を紹介し、ヨ って、元成立以前のモンゴルを訪れた。 ーロッパ人のモンゴルに対する先入観を理 十字軍を起こしていた西ヨーロッパは、 解させる。) 対イスラーム共同作戦の可能性を探る 展 ために、2人を派遣した。ただし、こ の2人にはモンゴル人に対する偏見が 開 あったようだ。 ②「マルコ=ポーロの『東方見聞録』から読 ②モンゴル帝国ではジャムチとよばれる Ⅰ みとれる駅伝制(ジャムチ)について説明 T.発問 する 11 駅伝制度が整備され、牌符を持つ者は、 せよ。」 P.答 える 誰でも安全な通行が保障された。 ③「モンゴル帝国の初期から元代に至るまで T.発問 する ③モンゴルは交易の利益を得るために、 陸路の整備が行われた理由を考えて見よ。」 P.答 える 帝国内の東西を結ぶ交通路の整備・安 全確保を重視した。 ④陸上ネットワークの形成 ④駅伝制の整備や、モンゴルによる交易 ○「モンゴルによって東西ユーラシアが陸上 T.発問 する 重視の政策により、13 世紀にはユーラ のネットワークで結ばれたことは、アジア P.答 える シアの東西を結ぶ陸のネットワークが

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起源のある病気が 14 世紀にヨーロッパで 形成された。アジアに起源をもつペス 大流行したことからも分かる。その病気と トが同世紀中にヨーロッパにまで広が は何だろう。」(ただし、ペスト説を否定す ったことからも、それがうかがえる。 る考えもあることに触れる。) 侵略と征服が続いた時代に終止符を打 ○「モンゴルの平和(パックス=タタリカ)」 ち、フビライの時代には相対的な平和 という言葉を紹介する。 がもたらされた。 2.海の帝国への展開 ①「元成立以後に訪れたモンテ=コルヴィノ T.発問 する ①陸上のネットワークを完成したフビラ やイブン=バットゥータは、カルピニやル P.答 える イは、南宋を滅ぼして中国全土を支配 ブルックらとは異なるルートを使って中国 下におさめたことを契機に、海上ルー を訪れている。その違いを説明せよ。」マ トの確保にも成功した。マルコ=ポーロ 展 ルコ=ポーロも帰国する際往路とは異なる の復路や、モンテ=コルヴィノ、イブン= ルートを使っていることを指摘し、元代に バットゥータらが海路を使って元を訪 開 おける海路の発達を理解させる。 れたことは、そのことをよく示してい る。 Ⅱ ②「なぜ元代には海上交通も発達したのだろ T.発問 する ②南宋の征服により、モンゴルは「海の うか。」 P.答 える 道」を介した海上ネットワークも支配 下におさめた。 ③フビライが建設した大都は、陸のネットワ T.説明 する ③陸上ネットワークと海上ネットワーク ークと海のネットワークとを結びつけるタ P.説 明を 聞く は、大都によって結ばれていた。この ーミナルとして設計され機能したことを説 結果、ユーラシアの東西を結ぶ陸海の 明し、イスラム商人の活躍を指摘する。(授 大ネットワークが形成されるに至った。 時暦やイブン=バットゥータに触れる。)。 このネットワークで活躍したのはイス ラム教徒であった。 3.まとめ 強大な軍事力をもつ騎馬遊牧民は、隊 「モンゴル帝国が東西の交流に果たした役割 T.発問 する 商民と共生関係を結ぶことで、東西文化 終 を説明せよ。」 P.答 える の交流や伝播に大きな役割を果たした。 その代表例がモンゴル民族であり、広大 結 な地域を征服し、馬による陸上ネットワ ークを形成した。フビライの時代に至り、 征服よりもネットワーク経営に熱心とな り、ユーラシアの東西を陸海で結ぶ大ネ ットワークが完成した。 【使用資料】 1:内藤陽介「切手で見る中国人物列伝:チンギス汗(下)」『しにか』14-2(2003 年)102 ∼ 103 頁。 2:赤坂恒明「モンゴルに敗れし者たち②」『しにか』12-11(2001 年)42 ∼ 43 頁。 3:杉山正明『遊牧民から見た世界史(文庫版)』(日本経済新聞社,2003 年)30 ∼ 31 頁。 4:1993 年度世界史Bセンター試験(本試)第2問Bのリード文(イブン=タイミーヤの文章)。 5:陳舜臣『耶律楚材・上』(集英社,1994 年)。 杉山正明『モンゴル帝国の興亡(上)』(講談社現代新書,1996 年)69 ∼ 70 頁。 6:F.ウッド『マルコ=ポーロは本当に中国へ行ったのか』(草思社,1997 年)。 杉山正明、前掲書、16 ∼ 18 頁。 7:マルコ=ポーロ(愛宕松男訳)『東方見聞録 2』(平凡社,2000 年)94 ∼ 95 頁(杭州)、165 頁(泉州)。 8:マルコ=ポーロ(愛宕松男訳)『東方見聞録 1』(平凡社,2000 年)337 ∼ 339 頁。 9:杉山正明『モンゴル帝国の興亡(下)』(講談社現代新書,1996 年)120 ∼ 123 頁。 黒田俊男『日本の歴史8・蒙古襲来(文庫版)』(中央公論社,1974 年)60 ∼ 61 頁。 10:カル ピニ/ルブ ルク(護雅 夫訳)『中 央ア ジア・ 蒙古旅 行記』(光風 社出 版,1989 年)49 ∼ 50 頁、242 頁 。 11:マル コ=ポ ーロ (愛 宕松男 訳)『東 方見聞 録 1』(平凡社,2000 年)45 頁。

3 . お わ り に

本 実 践 は ネ ッ ト ワ ー ク 論 に 基 づ い て 構 成 し た も の で あ る が 、 も ち ろ ん ネ ッ ト ワ ー ク 論 だ け で 世 界 史 の 授 業 が 事 足 り る わ け で は な い 。 ネ ッ ト ワ ー ク 論 は 人 ・ 物 ・ 情 報 の 流 れ を 説 明 す る こ と で 歴 史 の 大 き な 見 方 を 提 供 し う る が 、 個 人 の 活 動 は あ ま り 重 視 さ れ な い 。 歴 史 を 動 か す よ う な 偉 人 の 活 動 を 知 る こ と も 、 歴 史 を 学 ぶ 楽 し み の 一 つ で あ る 。 ネ ッ ト ワ ー ク 論 の 中 に 、 歴 史 上 の 偉 人 の 活 動 を い か に 位 置 づ け て い く か は 今 後 の 課 題 の 一 つ で あ る 。 最 後 に 、 本 実 践 を 通 し て 気 づ い た こ と を 一 つ 述 べ て お き た い 。 本 校 の 生 徒 の 場 合 、「 野 蛮 な モ ン ゴ ル 民 族 」 と い う イ メ ー ジ を 持 っ て い る 生 徒 は ほ と ん ど い な か っ た 。 多 く の 生 徒 は 遊 牧 や モ ン ゴ ル に 対 し て 、「 の ど か で お お ら か 」 な 、 あ る 種 ロ マ ン テ ィ ッ ク な 感 情 を 抱 い て い る 。 こ の 理 由 と し て 、 遊 牧 の 「 遊 」 と い う 字 が も た ら す イ メ ー ジ や 、 小 学 生 の こ ろ に 国 語 の 教 材 と し て 取 り 上 げ ら れ た 「 ス ー ホ の 白 い 馬 」 の イ メ ー ジ な ど が 強 く 残 っ て い る

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も の と 推 測 さ れ る 。 同 じ く 、 チ ン ギ ス = ハ ー ン に 対 し て も 、 野 蛮 な 大 征 服 者 と い う イ メ ー ジ を 持 つ 生 徒 も ほ と ん ど い な か っ た 。 こ の こ と は 、 高 校 生 が 遊 牧 民 に 対 し て 持 っ て い る イ メ ー ジ が 、 我 々 の 予 想 と は 乖 離 し た も の で あ り 、 彼 ら が 明 確 な 予 備 知 識 を ほ と ん ど 持 っ て い な い こ と を 示 し て い る 。 近 年 の モ ン ゴ ル 関 係 の 実 践 の 多 く は 、「 野 蛮 な モ ン ゴ ル 民 族 と い う か つ て の イ メ ー ジ を 打 ち 砕 き 、 彼 ら が 世 界 史 上 に 果 た し た 役 割 を 高 く 評 価 し た い 」 と い う 立 場 に 立 っ て お り 、 生 徒 が 「 野 蛮 な モ ン ゴ ル 」 と い う イ メ ー ジ を 持 っ て い る こ と を 前 提 と し た う え で 、 征 服 の 側 面 を 意 識 的 に 取 り 上 げ ず に 構 想 さ れ て い る よ う に 感 じ ら れ る 。 し か し こ う し た 実 態 が あ る 以 上 、 単 に モ ン ゴ ル が 果 た し た 役 割 の み を 強 調 す る だ け で は 、 逆 に 東 洋 史 中 心 史 観 に 陥 ら な い と も 限 ら な い 。 ネ ッ ト ワ ー ク の あ り 方 だ け で は な く 、形 成 の 過 程 で 様 々 な 文 明 が 接 触 ・ 交 流 し 、 中 国 や モ ン ゴ ル 、 ヨ ー ロ ッ パ は も と よ り 、 そ れ ら 以 外 の 文 明 相 互 の 影 響 を 示 す こ と で 、 文 化 の 多 様 性 、 さ ら に は 現 代 へ と つ な が る 諸 文 化 形 成 に 対 す る 理 解 も 深 ま る と 考 え る 。 そ の 際 、 我 が 国 の 歴 史 と 関 連 づ け る こ と は( 5)、 今 回 「 元 寇 」 の 授 業 に 対 し て 生 徒 が 強 い 関 心 と 意 欲 を 示 し た こ と か ら 、 極 め て 有 効 で あ る と 感 じ た 。 【 註 】 (1 ) 小 田 中 直 樹 氏 は 、 授 業 が 優 れ て い る と い う 評 価 を 下 し う る の は 授 業 の 需 用 者 あ る い は 消 費 者 で あ る 生 徒 で あ る と い う 立 場 か ら 、 大 学 生 に 対 す る ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 っ た 。 そ の 分 析 結 果 か ら 、 生 徒 が 世 界 史 の 授 業 に 求 め て い る の は 、 内 容 面 で は 「 エ ピ ソ ー ド 」 と 「 ス ト ー リ ー 性 」、 方 法 面 で は 授 業 に 対 す る 生 徒 の 参 加 を 認 め る よ う な「 双 方 向 性 の 保 証 」 だ と 指 摘 し て い る 。 小 田 中 直 樹 「 高 校 世 界 史 の 教 室 か ら − 中 間 報 告 」『 九 州 歴 史 科 学 』 第 33 号,( 2005 年 )。 (2 ) 文 部 省 『 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 ・ 地 理 歴 史 科 編 』( 実 教 出 版 , 1999 年 ) 54 ∼ 59 頁 。 ( 3) J.L. ア ブ ー =ル ゴ ド ( 佐 藤 次 高 他 訳 )『 ヨ ー ロ ッ パ 覇 権 以 前 ( 上 )』( 岩 波 書 店 , 2001 年 ) や 、 宮 崎 正 勝 『 文 明 ネ ッ ト ワ ー ク の 世 界 史 』( 原 書 房 , 2003 年 ) な ど 。 ( 4 ) 小 林 徳 子 「 マ ル コ =ポ ー ロ の み た 世 界 」 千 葉 県 歴 史 教 育 者 協 議 会 世 界 史 部 会 編 『 新 し い 世 界 史 の 授 業 』( 山 川 出 版 社 , 1992 年 )、 大 塚 雅 信 「 13 世 紀 に ユ ー ラ シ ア の 一 体 化 は 始 ま っ た か − モ ン ゴ ル 人 の 活 動 」 千 葉 県 歴 史 教 育 者 協 議 会 世 界 史 部 会 編 『 世 界 史 の 授 業 100 時 間 ・ 上 』( 国 土 社 , 1994 年 )、 小 松 信 「 モ ン ゴ ル 円 環 ネ ッ ト ワ ー ク 」 『 世 界 史 の し お り 』 1998 年 5 月 号 ( 帝 国 書 院 )、 二 井 正 浩 「 中 央 ユ ー ラ シ ア 史 の 教 育 内 容 開 発 − 遊 牧 国 家 の 構 造 と 機 能 に 着 目 し て −」『 史 学 研 究 』 234 号 ( 2001 年 ) な ど 。 ( 5) 学 習 指 導 要 領 に お い て も 、 我 が 国 の 歴 史 と 関 連 づ け て 世 界 史 の 大 き な 枠 組 み と 流 れ を 理 解 さ せ る こ と が 示 さ れ て い る 。 文 部 省 『 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 ・ 地 理 歴 史 科 編 』( 実 教 出 版 , 1999 年 ) 45 ∼ 46 頁 。 【 参 考 文 献 】 ・ 愛 宕 松 男 『 ア ジ ア の 征 服 王 朝 』( 河 出 書 房 新 社 , 1989 年 ) ・「 甦 る チ ン ギ ス ・ ハ ー ン 」 読 売 新 聞 編 集 局 編 『 20 世 紀 の ド ラ マ Ⅱ 』( 東 京 書 籍 , 1992 年 ) ・ 岡 田 英 弘 『 モ ン ゴ ル 帝 国 の 興 亡 』( ち く ま 新 書 , 2001 年 ) ・ 司 馬 遼 太 郎『 街 道 を ゆ く 5 ・ モ ン ゴ ル 紀 行 』 ( 朝 日 文 庫 , 1978 年 ) ・ 杉 山 正 明 「 モ ン ゴ ル 時 代 の ア フ ロ ・ ユ ー ラ シ ア と 日 本 」 近 藤 成 一 編 『 日 本 の 時 代 史 9 ・ モ ン ゴ ル の 襲 来 』( 吉 川 弘 文 館 , 2003 年 ) ・「 入 れ 墨 を 彫 っ た 兵 士 た ち 」 千 葉 県 歴 史 教 育 者 協 議 会 世 界 史 部 会 編 『 世 界 史 100 話 ( 上 ) 』( あ ゆ み 出 版 , 1988 年 ) ・ 旗 田 巍 『 元 寇 』( 中 公 新 書 , 1965 年 )。 ・ 吉 田 悟 郎 『 世 界 史 の 小 径 』( 実 教 出 版 , 1977 年 ) ・ 鈴 木 亮 「 ユ ー ラ フ ロ ア ジ ア の 13 世 紀 ① ∼ ③ 」『 歴 史 地 理 教 育 』 371・ 372・ 374 ( 1984 年 ) ・ 鈴 木 亮 『 ち か ら を 伸 ば す 世 界 史 の 授 業 』 ( 日 本 書 籍 、 1987 年 ) ・ 五 味 文 彦 『 大 系 日 本 の 歴 史 5 ・ 鎌 倉 と 京 』 ( 小 学 館 , 1988 年 )

参照

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2011