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初級 日本語 コースにおける異文化教育導入案

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(1)

長崎大学留学生センター紀要 第

5

号 研究ノー ト

1 9 9 7

初級 日本語 コースにおける異文化教育導入案

‑カルチ ャーギ ャップに焦点 をあてて 一

松 本 久美子

7 7

日本語教育においては異文化教育について初級 レベルか らの導入の可能性 を示唆 した も の もあるが、実践報告は時期が早い もので も初級後半か らの もの しか見られない。しかし、

日本語 をコミュニケーシ ョン手段 として獲得するためには初級 レベルから異文化教育を導 入することが必要である。また 日本での日常生活における異文化接触場面を教室活動に取 り入れることで効果的な運用練習を行なうことがで きる。そこで、カルチャーギャップに 焦点をあてた初級 コース始めか らの系統的な異文化教育の導入案を提示 しインターアクショ ン中心の活動例 をあげることで、実際の初級 日本語 コースにどう組み込んでい くかを考察 する。

キーワー ド :初級 日本語、異文化教育、カルチャーギャップ、インターアクシ ョン

1.

日本語教育初級 コースにおける異文化教育のI必要性

1. 1

異文化教育 と 「コミュニケーション重視の日本語教育

これまでの日本語教育においては、主にことばその ものの構造や規則、つまり 「言語的 能力が中心に扱われてきた。いわゆるオーディオ ・リンガル法の文型中心主義に代表 さ れるものである。 しか し、現在、日本語教育はその反省から 「伝達的能力

の重要性 に着 目し、学習者主体、コミュニケーシ ョン重視の教授法を目指 して試行錯誤 を続けている。

それにともない、「文化的 (社会的)能力の重要性 も着 目されつつある。

日本語 を日本において現実の場面でコミュニケーションの手段 として使用 しようとする 場合、学習 した項 目を使って話せるだけでは不十分である。相手に的確 に自分の伝達 した い内容 を伝 えた り、また相手からの情報 を誤 りな く判断するためには、学習者は日本語使 用の背景にある日本の習慣や価値観などを理解 していなければならない。異 なる文化 に属 する人々と相互交流 をはかろうとするとき、その文化に対する知識なしに、効果的なコミュ ニケーシ ョンは望めない。伝達的能力のみを重視 し、「文化的 (社会的)能力」 を軽視す ると逆に誤解等による異文化摩擦 を生 じさせる結果になりかねない。外国語の学習それ自 体が異文化 との出会いであ り、異文化 とのインターアクシ ョンは、真のコミュニケ‑シ ヨ

(2)

初級 日本語 コースにおける異文化教育導入案

ン能力養成の成否を左右する大 きな要因である。特に学習者が 日本で日本語の学習を始め る場合、初級 レベルか らの異文化教育導入は是非 とも必要であると考える。

よって本稿では、 日本語初級 コースにおける目標 を、「日常生活 において 日本人 と日本 語でコミュニケーシ ョンできるようになること」 とする場合、その 目標 を達成するための 必須項 目として異文化教育をあげる。

そこで問題 となるのは、具体的に日本文化の何 を、いかに効果的に、どうやって実際の 初級のクラスに持ち込むかであるが、まず 「日本文化の何 を

について以下で考察する

1.2

コミュニケーション能力養成のための学習活動

コミュニケーシ ョン重視の日本語教育における学習活動は、学習者がことばの形 よりも 内容 を優先できるようなものが求められるつまり、教師は学習者に可能なかぎり "今 こ の表現 を練習 している"と認識 させないようにするため、できるかぎり現実の言語活動 に 近い場面を提供するよう工夫することが必要である。そのためには、学習者が現実に日本 で生活 をする上での必要や、興味に結びつ くような活動を考えなければなならないであろ

う。1)では、 日本における日本語学習者の生活上の必要、興味 とは何であろうか。

筆者は筆者 自身のこれまでの 日本語教育の経験から、日常生活における異文化接触場面 で生 じる疑問は学習者同士でよく取 り上げられる話題であり、また同時に日本人とのコミュ ニケーシ ョン上の障害はカルチャー ・ギャップに起因するものが多いことに注 目してきた。

そこで 日本語のコミュニケーシ ョン能力を向上 させるための学習活動 として異文化接触場 面 を取 り上げることは非常に有効だと考え、初級クラスでの運用練習の際に、意識的にカ ルチャー ・ギャップに焦点を当てた場面提示 をし、日本語運用練習 と異文化教育の統合練 習を行 なってきた。具体的な活動内容はあとであげるが、その際学習者に積極的な発話の 姿勢 と他の学習者の発言に対 しても興味を持って耳を傾ける姿勢が見 られ、 もっとこのよ うな練習を増や して欲 しいという意見 もしばしばであった。筆者はコース上の制約か ら、

まとまった数のアンケー ト調査 を実施することができなかったが、自身の経験 を裏付けす るひとつの資料 として、次の二つのアンケー ト調査 をあげる。

一つは大橋

( 1 9 9

1)による京都大学で在 日留学生のニーズの実態 を把撞することを目的 として行なわれたアンケー ト調査である留学生が回答 した重要度ランキング上位1

0

位の 中に 「日本人の友人がいること

「日本人のものの見方 ・考え方を理解すること

「日本の 風俗 ・習慣 を理解すること」の

3

点が入っている注 目すべ きは、上位1

0

位のうち、特に その

3

点について重要度 と満足度 との間のギャップが大 きいという結果がでていることで ある。 もう一つは、京都大学教養部が留学生 と研究者を対象に行なった 「外国人の日本語 ・

日本事情のニーズに関する研究」で、回答 した留学生 と研究者の中で、日本人の ものの考 え方や価値観、風俗や習慣 といった対人関係にまつわる文化的環境について、あらかじめ、

(3)

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7 9

つまり来 日前に知識を持っていたほうが良かったとするものが非常におおいという報告が されている。このことは留学生の日本文化にたいする強い関心 とそれを理解することの必 要性 を示 してお り、日本語教育における早い時期からの積極的な異文化教育導入の必要性

を示唆 していると考える。

岡崎

( 1 9 9 1: p. 6 ‑ 7 )

、9 0

年代の日本語教育は、学習者 をめ ぐる次の

3

点、

a.

学習者が持つ学習 「内容」への関心 (学習する存在 としての学習者)

b.

学習者が持つ 「社会性」(社会的存在 としての学習者)

C.

学習者が持つ 「異文化性」(文化の担い手 としての学習者)

への注 目を軸 として取 り組むことができると考えられるとし、日本語学習者の持つ異文 化性 をより意識的にとりだ し、日本語教育の中核部分 を構成する要素へ と高めてい く方向 を追及することを提唱 している

確かに

9 0

年代、日本語教育において 「日本事情

に代表 される異文化教育は各教育期間でその内容が検討 され、実施 されてきたが、何れ も中級及 び上級 レベルにおけるものがほとんどであ り、異文化教育を初級 レベルから意識的に、ま た初級 コース全体 を通 して系統的に導入するということはまだあまり行なわれていないよ うである。

そこで、初級 日本語コースへの異文化教育導入試案を捷示する前に、ここでは、まず教 師の意識に焦点をあて、現実の授業に異文化教育を導入する際の問題点と課題を考えたい。

2.

異文化教育導入における困難点

2. 1

教師の意識における問題 と課蓮

日本における日本語初級 コースに異文化教育を導入する際の困難点 として、ここでは、

教師の意識における問題に焦点を当てる

問題点 としては、次のようなものが指摘される。

a.

コース外の環境 に対する期待 と依存

b.

文化の何 を教 えればいいのか

C.

言語は専門ですが、文化はちょっと・・(一方通行授業)

d.a' ' l anguage‑ f i r s t ,c ul t ur e ‑ 1 at e r ' 'appr oac h 2)

a.コース外の環境に対する期待 と依存

日本で 日本語を学習 している場合、教師はコース外で学習者が文化的な情報 をうること がで きるであろうと期待する傾向にある

。3)

しか し、お気づ きの方 も多い と思 うが、実際 には、地域社会の中で、また大学内においても、孤立 している留学生が以外 に多い。国際 交流の名の もとに、さまざまな活動が行われているが、その場1回限りのものであったり、

表面的なお客様扱いの交流に終って しまっている場合がおうおうにして見受けられる。ま た生活習慣 に関するものは、日常生活の中で何 とな く不可解に感 じてもそれを確かめる機

(4)

80 初級日本語コースにおける異文化教育導入案

会 もな く、通 り過 ごして しまいやすい ものが多いと思われる。言語 と文化の不可分性 につ いては前々か ら言われて きたことであるが

4

)、そのために特に日常生活習慣 に関す る もの は日本 に長 く滞在 していて も、必ず しもわかるようになるとは限 らない ものである。 日本 語 コース と日本語 コース外 とを連関させて異文化教育が行 なえるのであれば理想的である が、 日本語 コース外の環境のみに期待するのには無理がある。

b.文化の何 を教 えればいいのか

一口に文化 と言って もその範囲はあまりにも広 く、一体何 をいつ、どういうふ うに教 え た らいいのか と戸惑 うのは、ごく自然な反応であろう。月刊 日本語

( 1 9 9 3.5

)の 日本事 情特集の中で も、いま求め られているのは日本事情でいったい何 を教 えた らいいのか、 と い う非常 に具体的な問題 になってお り、 日本事情 を教 えるためのガイ ドラインの必要性が 議論 されている

C.

言語 は専門ですが、文化 はちょっと‑・(一方通行授業)

文化 をコースの中に取 り込むといっても、言語については専門だが、文化 については十 分知 らない、教 えるだけの知識がないと感 じている教師が案外多いのではないだろうか。

これは、言い換 えるならば、文化 についての知識 を一方的に与えることが考えられている か らにはかならない。知識 を与 えるだけであるならば、 日本語教育の中で行 なわず とも、

参考文献 を与えるだけで済むということになって しまう極端なことを言えば、教師より も図書館の レファレンス係の方が適切な情報 を与えられるということにな りかね ない。

また、一人の教師が持っている知識は限られてお り、文化 を見る視点 も限 られる. 教師か ら知識 (情報)を与えるだけの一方通行授業である場合、学習者 に文化 を多角的な視点か ら見 る機会 を与えることは難 しい と言える つまり与えられる文化的情報 を、自文化のみ で判断 した り、一定の情報のみを基準 にして判断 していると、逆にステ レオタイプ化が進 み、異文化接触の場面において生 じる誤解や摩擦が増える結果 とな りかねない

。5)

d.a"language‑first,culture‑later"approach

日本語 コース内においては、時間的な制限か らおのず と効率性が追及 される。その中で

4

技能を並行 して伸ばすために様々な工夫がなされているものの、文化 に関することまで 授業 に取 り入れる余裕がないと感 じている教師が多いか もしれない。特 に初級 コースにお いては、いわゆる初級項 目の消化だけで手一杯であるというのが現状であろう。また、教 師の意識 として、初級 においては基本的な文法項 目をしっか り理解 させることが重要で、

文化 については中級のコースで教 えられるだろう、 もしくは、中級 に入ってか らの方が適 当であ り、また効率的であると考える傾向がある

(5)

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g J

2.2

間蓮に対する課最 と方策

以上4つの問題のうちはじめの問題に対処するための一つの方策 として、

a

‑ 日本語学習者 にとって、日常生活の中で、どのようなことが、どのような場面で実 際に問題 となるのかを明確 にしてい く必要があるが、この点については後で具体例

をあげる

2つめの問題については、学習者のニーズを把握 したうえで、初級 レベルで何 を扱 うの がいいのかを検討 しな くてはならない。

b

‑従来、日本語教育における日本文化 というと、いわゆる伝統文化 (芸能、絵画、工 芸品、茶道、華道)か、 もしくは歴史、文学、思想 (社会体制)などが とりあげら れる傾向にあった。またそれらの教授方法 としては、教師か ら学習者 に知識 として 教 えるという形が取 られるのが一般的であった。 しか し、実際のコミュニケーシ ョ

ン上、文化の違いによって問題がお きるのは、日常的な生活 レベルの文化 において である。大橋 も前述の研究の結果か ら、留学生にとって日本文化 と行っても 「ハ レ

の レベルの文化ではな く、「ケ」(日常)のレベルの文化 における認知的及び情緒的 行動の面での適応上のニーズが高いと結論 している。また、同様 に京都大学教養部 が行なった研究で も、日本文化 について関心のあるものは、第

1

位が人間関係、第 2位が価値観や ものの見方 ・考え方、第 3位が社会構造 となってお り、いわゆる伝 統文化である芸能、絵画、工芸品、茶道、華道については低いという結果が出てい る。これを

Br ooks( 1 9 7 1 )

の分類 にあてはめて整理するとわか りやすいだろう。

Br ooks

は、文化 を

" c ul t ur eMLA"( t hegr e atmus i c, l i t e r at ur e, andar toft he c ount r y)

̀ ̀ c ul t ur eBBV' '( be l i e f s ,be hav i or,andv al ue s)

2

つ に分類 して いる。

" c ul t ur eBBV' '( be l i e f s ,be hav i or,andv al ue s)

に分類 される内容が、学 習者に求め られている文化 に相当する

3

つめの問題については、実際の授業での活動方法 を手順 と共に具体化する必要がある。

C‑異文化理解 を進めるためには、異文化教育が学習者 に日本の文化の知識、情報 を与 えるための 「一方通行

の教育であることを止め、お互いに学びあい、対等 な立場 で対話をするプロセスを重視することが必要であると考える

。6)

学習者 はそのプロ セスを通 して其のコミュニケーション手段 としての日本語を獲得 していくであろう。

実際の教室活動においては、教室内の学生 という人材 を振 るに活用するとともに、

学生同士、教師と学生、と教室外の 日本人 との相互交流 (インターアクシ ョン)を 促進 し、できうるかぎり学習者主導 を心掛けることを原則 とする。コミュニケーショ ン重視の学習活動において、学習者主導は言い古 されたことであるが、通常の初級 のクラス活動において、学習者主体の授業を行なうべ きだという考えの教師におい ても、異文化教育 を行なう際には、教師主導に傾 きがちである。つまり、使 える時

(6)

82 初級日本語コースにおける異文化教育導入案

問は限られてお り、 しか も初級であるから、学生の日本語は拙いことは言 うまで も な く、そうであれば、 もっと教師主導の練習をしたほうが、結局学生の力を伸ばす のに役立つ し、効率的ではないかという考えに傾いていって しまうのである

しか し、教師の 日から見て、まだもどか しく、何 を言いたいのかといらいらするような 状態であっても、学生 自身が考え、伝えたいという意志 を持ち、その伝えたい内容 に集中し、 しか もそれを伝えるべ き手段が 日本語であるとき、初めて学生にとって 意味のある練習ができているように思 う

どんなに拙 くとも、そこに本当のコミュ ニケーシ ョンが成立 しているからにはかならない。

4

つめの問題については、導入項 目をリス トアップし、初級クラスにそれをどのように すれば能率的に、また効果的に導入できるかということを示 さなければならか 、が、まず、

d‑現実に導入可能な方法 と、それらの導入方法の効果的なか ノキュラム上への位置づ けをい くつか具体的に示 し、さらにそれぞれのコースの時間的な余裕 に応 じてその 中から選択できるようにすることが求められる。

以上のような問題 とそれに対する課題に取 り組むためには、異文化接触場面での学 習者の感受性及び理解力を養成するための新 しい教授法 とそれをより効果的に活用 できる教材の開発が望まれるそこで、日本語初級クラスにおいて、具体的に 「ど うやって異文化接触場面での学習者の感受性及び理解力を養成 しなが ら、コミュ ニケーシ ョン能力を高めるための異文化接触場面を用いた活動を行なうのかを以下 に述べる。

3.

初級 日本語 コースにおける異文化教育導入案

3. 1

導入案

既に述べたように異文化教育の具体的な提案や実践例は、中、上級 レベルにおけるもの が主で、初級 レベルにおけるものはごくわずかであるが、報告はされていなくても、実際 にはさまざまな活動が行なわれているはずであるしか し、それらの活動は教師によって 意識的に行なわれ、系統的に組織 されていないかぎり、実際の効果はあまり期待できない。

そこで、これまで筆者 自身が様々な初級 コースの中で行なってきた活動を分類 し、統合 し て、ある一つのコースに系統的に導入する方法を一つの試案 として提示する。

a.

コースの最後にある程度 まとまった時間を使ってプロジェク トワーク的な形で行な うもの7)

b.

トピックを決め、コースの途中に定期的に組み込んでい くもの

C.

教科書の課の場面を利用 もしくは応用するもの

まず、上記3つの内容について概略を示 し、その後で、具体的な活動例 をあげる。上記

a

b

の活動はある特定の学習項 目を練習するために用いるのではな く、それまでに学習

(7)

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8 3

したすべての知識 を稔動点 し、既習項 目を組み合 わせ、足 りない部分 は補いなが ら、 自分 の言いたいこと、伝 えたいことを表現するための もの としてコースの中に位置づける

れに対 して Cの活動 は、その課で学習する項 目を中心 として扱 う。

a.

例 えば、 日本人宅でのホームステイ、家庭訪問等、ある程度 まとまった時間を必要 とす る体験学習的な ものを中心 にして、そこか ら発展 させてい くものである。

b.

例 えば週 に一度

、4 5

1

コマない しは

2

コマの時間をカリキュラムを組 む際 にあ ら か じめ設定 し、その時間はそれまでに導入 した項 目の復習 も兼ねて、あるひ とつの異文化 接触場面 を取 り上げてい くようにする。

実際のカリキュラムに異文化教育 を導入する場合、導入すべ き項 目が具体化 されていな ければな らない。項 目 (トピック)としては以下の ようなものが考え られる

ここでは 日 常生活 における異文化接触場面のなかで初級 レベルで取 り上げるに適当であると思われる

もので、具体的に項 目化 した ものの一部 を参考 としてあげる。

(1)挨拶

・例 えば ̀こんにちは'は同 じ日に2回 日以降に会 った ときも使 えるか (挨拶 の使 用 範囲)

・同 じアパー トに住 んでいる人、道ですれちが う通 りすが りの人に挨拶するか

・キャンパスや通 りで知 らない人 と目があった らどうするか (2) 自己紹介

・初対面 における話題 において、何が プライバシーに属す るか、 どんな話題が好 まれ るか、また避け られるか (例 えば、家族 について質問 して もいいか)

(3) レス トランな どで勘定 を払 う

・勘定は誘った人が払 うのか、割勘か、回 り持ちか (4) 自宅への招待/パーティー等

・自宅 によく招待するか/ されるか

・招待 された場合、そのことばどお りに受け取 って もいいか (例 えば、いつで も遊び にい らっ しゃって ください)

・はっきり行 けるか どうかわか らない場合、あいまいな返事です ませておいて もいい

・事前 に断 らず に友人を連れていって もいいか

・時間 どお りに行 くのがいいのか

・何か手みやげを持 ってい くか、 どんなものを持ってい くか

・飲み物 は何がいいか聞かれた ら、 自分の好みをい うか、何で も (どち らで も)いい と答 えるか

(5)何かに誘 う、何かを勧 める/何かに誘われる、何かを勧 め られる

(8)

8 4

初級 日本語 コースにおける異文化教育導入案

・相手が断っても、もう一度誘 うか、勧めるか

・何かに誘われた り何かを勧められたとき、す ぐにその申し出を受けるか (例 えば、

お腹が空いているで しょう。何か召 し上が りませんか。

と聞かれた時、どう答え るか)

(6)お礼

・その場でお礼 を言って、次に会ったとき/電話で話す ときにも、 もう一度お礼 をい うか

(7)推薦状

・推薦状 を書いてもらったら、後でその結果を報告するか (8) プレゼント

・プレゼントはいつ、だれに、どんなものを、どうやってあげるか

・プレゼン トをもらったら、その場で開けて中身を見るか (9)おみやげ

・旅行や出張に行った場合、おみやげを買 うか、だれにどんなものを買 うか

C.

教科書の中にも、具体的に日常生活における日本文化に焦点をあて、場面設定が行 なわれているもの もあるが、カルチャーギャップそのものに焦点が当てられているものは 少ない。 しか し、初級教科書の会話場面の多 くは日常生活におけるものであるか ら、教師 がその中に含 まれる日本文化に焦点を当てることでコースを通 して異文化教育を少 しずつ 導入 してい くことが可能である

本導入案では、上記

a.b.

Cすべてを、平行 して系統的に導入することを提案する。

a.

b.

Cのなかで、一番導入 しやすいのは

a

であると考えられる.ある程度 日本の生活 に慣 れ、実際の観察 を通 して得た意見、疑問点があ り、かつ初級項 目を一応学習 し終えている ので、それを日本語で表現できる時期に、このコースを行なうのは比較的容易であ り意義 があるという教師間のコンセンサスが得 られやすいということ、また、まとまった期間そ れだけに集中できるので、カリキュラムに組み入れやすいということがその理由としてあ げられる

しか し、短い期間で扱える トピックは限られる日常生活習慣 について、

b

C

で、すこしづつ盛 り込んでい くというように、初級 コース全体のなかに組み込み、最後 にそれらを総合 した形で

a

のプロジェク トワークを行なうという方法がベス トであると考 えるが、それぞれのコースの状況にあわせて、

a.b.

Cのどれかを選択する方法 も考えら れる。

(9)

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8 5

3.2

教室活動における基準 とその進め方

初級 コースへの異文化教育導入の方法 として上記に示 した

3

つの案を、実際のクラスで 行なう際の基準 と具体的な進め方を以下に示す。

<目標 >

日本での日常生活における異文化接触場面を取 り上げ、学生相互及び教師 と学生、学生 と日本人間でのインターアクションを進めることで、お互いの文化の相互理解 をはかる。

またその活動 を通 して、真のコミュニケーション手段 としての日本語運用能力を高める

<ポイン ト

1>

教師の立場の明確化

教師は教授者 としてこのコースに参加するのではなく、学生 と同 じ情報提供者 として参 加 し、自国と他国を比較 しなが ら、お互いに情報を交換 し学び合いたいこと、そのために ディスカッシ ョン (意見交換)中心に授業を進めたい旨を学生に伝 える

<ポイン ト

2>

具体的な場面設定

実際にクラスで行なう活動 としては、

a

‑学生の自国の生活習慣、例えば色々な場面での自国における挨拶の仕方などを実際に 動作 とともにやってみて もらうことで、それに対する質疑応答が 自然に生 まれるような状 況設定を図る。

b

‑ 日常生活に見 られるカルチャーギャップに焦点を当てた絵教材 もしくはビデオを使用 して、具体的な場面を提示する。本箱では絵教材の例 をあげる。

C1使用 しているテキス トの場面を利用する。

<ポイン ト

3>

学生 自身の文化的背景 (知識)の活性化及び、

<ポイン ト

4>

カルチャーギャップによる効果の利用

上記に示 したような学習者が自身の文化的背景にす ぐ照 らし合わせて考え、判断するこ とができるような場面を設定することで、学習者 自身が持っている知識を活性化 させる。

異文化 に対する感受性 を養 うためには、日常生活における異文化接触の場面において、そ れを一歩距離をおいて違 う角度か ら見直 してみることのできるカが要求されるしか し、

そのためには前段階 として、異文化接触場面において、まず、それまでに得た情報や自文 化の社会的な常識から判断 して自分なりに解釈 をすることも必要なプロセスであると考え る。つまり、上記の例で示 したように、最初のステップとしては、自文化の社会的な常識 か ら判断 して、自分な りの予測/解釈 を出す。次に、それを授業において、情報 として提 出する。そ してその提出された情報について話 し合 う過程において、学習者は自分 自身の

(10)

8 6

初級 日本語 コースにおける異文化教育導入案

解釈 を客観的に眺めることが可能になると同時に、他の文化か らの視点を共有で きるこ とか ら、異文化 に対する感受性 を深めてい くことができると考える

<ポイン ト

5>

ペアワーク/グループワークによる作業か らクラス全体へ

一人一人に意見 を求めてい くよりもペアワーク/グループワークによる方が意見が出や すい し、教師 と学習者の問のQ&Aよりもグループ内で意見交換するほうが より現実の会 話 に近い形態 となるまた、学習者問の会話力のギャップも埋めやすい。

以上

5

つのポイン トを押 さえなが ら、具体例 を見てい く。

<具体例 >

ホームステイをしているアメリカ入学生ジ ョンが、クラスメイ トをホス トフアミリイの 家 に招待 した。そこで、ホス トフアミリイのお母 さんが、「みなさん、 日本語が上手です ね。家のジ ョンはなかなか上手にな りません

。 」

というようなことを言 った とす るジ ョ ンは非常 に傷つ き、クラスメイ トもジ ョンは一生懸命勉強 しているし、 日本語 も上手なの になんてひどいお母 さんなんだろうと思 う。その 日か ら、ジ ョンとお母 さんとの間は何 と な くギクシヤクしてうまくいかな くな り、それが 日本語の勉強にも影響 して来た。

日本語の授業でこれを トピックとしてとりあげるとする。

第一段階 として、まず、状況設定 をする必要がある。ビデオや絵教材がない場合、ジ ョ ンとホス トフアミリイのお母 さん、ジ ョンのクラスメイ トのロールを決めるクラスメイ トがジ ョンの家 に来て、一緒に食事 をしている。そこでお母 さんがその場面でジ ョンの 日 本語の勉強についてコメン トするということにする。学習者はそれぞれその場面でお母 さ んがジ ョンについて何 というか考えるここでは、教師はなにも言わず、学習者か ら意見 が出るのを待つ。クラスの人数にもよるが、教師は学習者 を二人か三人のグループに分け てお き、まずペアまたは小 さいグループで意見が出やすいように配慮 してお く。十分それ ぞれの意見が出たところで、グループ毎にどんな意見が出たか発表 して もらい、その後、

教師がお母 さんのジ ョンについてのコメン トとして 「みなさん、日本語が上手ですね。家 のジ ョンはなかなか上手にな りません。/家のジ ョンは日本語が下手です

。 」

と発言する (第一段階 と第二段階の間にカルチャーギャップが起 きるように場面設定 をす ることが こ の活動の鍵 となる。)

次 に第二段階に移 る。学習者はそれぞれホス トフアミリイのお母 さんの発言の意味を自 分の持つ文化的背景 (知識)を用いて解釈する。また、同 じような経験があれば、その時

どう感 じたか、また、 どう解釈 したかについて も述べる。

第三段階では、自分の国ではこの場面で どうするか ということを自分の経験 に照 らし合 わせて具体的に考える教師 も学習者 と同様に、自分だった らどうするか、それはどうし

(11)

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てかを述べる。この間、学生 と学生、教師と学生の間で自由に質疑応答が繰 り返 される。

その過程でホス トファミリーのお母 さんの 「みなさん、日本語が上手ですね。家のジ ョン はなかなか上手になりません

。 」

という発言の意味が理解 される。ジ ョンはこの内 と外 の 考え方、外 に対するとき、内のメンバーを下げるというや り方は、やは り納得で きない し 変だという気持ちはぬ ぐいきれないか もしれない。素直に文化による 「違いではすまさ れないというのがこの段階での自然な心理状態であるといえる。 しか し、少な くとも、自 分がホス トファミリーの家族にとってもう外の人間ではなく、内の人間として考えられて いること、つまり、家族の一月 として扱われていることに気づ くことができるOそ して、

もしジ ョンが、ホス トファミリーに自分の国では同 じ場面でどうするか。だか ら、お母 さ んの発言を聞いた時、どんな気持ちだったかを説明できれば、ホス トファミリー (日本人) にとって も異文化 に対する目を開 くひとつの貴重なきっかけとな り、そこにまた別のイン ターアクシ ョンが生 まれることが期待 される。

異文化 に対する感受性を伸ばすためには、他の人の行動だけでな く、自分の行動につい て もそれを分析 し、理解する力が必要である。この例にも示 されているように、特に異文 化接触の経験が少ない場合、相手が自分 と同 じ前提に立って、同 じや り方で交流 している と思い込み期待するところから、誤解が生 じて しまう。 しか し上記のようにクラスで異文 化接触場面をとりあげ、インターアクション中心の活動 を行なうことによって異文化 に対 する感受性 を伸ばすことができる。それによって、様々な誤解 を未然に防いだ り、誤解 に 気づ くことができるようにもなる。また誤解の原因を客観的に理解することで、自分が ど う感 じたか、どう解釈 したか説明することができ、相手の理解 を得ることがで きるか どう かは別だが、少な くとも誤解 を解 くことはできるようになるだろう。その誤解 を解 く過程 において も、本当の意味での 「コミュニケーションが生まれる 以上のような教室活動 を継続的に行なうことによって、真のコミュニケーシ ョン能力が徐々に養われてい くと考 える。

3,3

活動具体例

ここでは異文化教育を初級 コース始めから全体を通 して行ってい くための、導入案 とし てあげた

3

つのうち、導入案

b

とCについての具体例 をあげる

導入案

b.

項 目を立て、コースに定期的に組み込んでい くもの

いろいろな方法が考えられるが、ここでは、実際のクラスで実践 して、学生か らの評価 が高かったものとして、ある一つの異文化接触場面における 「カルチャーギャップにフォー カスが当てられている絵 を用いた活動 を紹介する

(12)

β β

初級日本語コースにおける異文化教育導入案

教材 . 「絵で学ぶ コミュニケーシ ョン

」8)

<使用上のポイン ト>

ポイン ト

1

.カルチ ャーギャップか ら生 じる学習者の疑問を利用する 袷 :家族の出迎 え (フォーカス :日本人の感情表現)

絵 は23枚で一組 となってお り、この絵で扱 っている ドラマの内容 は、 日本で生活 し ている外 国人がふだん遭遇するような日常的なもので、 日本人によく見 られる行動であ り、

その中で も特 に学習者が普段疑問に思っていること、知 らないがために誤解 し不快 に思 っ ていると予想 されることが選ばれている

例 えば、上記の絵 は空港への家族の出迎 えの絵であるが、一枚 目と二枚 目の異文化 によ るギャップとはなんであろうか。 日本人の場合、(最近の若い世代 で は変 わって きてい る ようだが)家族間における愛情表現 として、抱 き合 った り、キスをした りとい うことはほ とん ど行 なわれない。フランス人の学生だったが、お世話 になっている日本人家族の娘 さ んがアメリカか ら久 しぶ りに帰国するということで、一緒 に空港 に迎えに行 った。たまた まその時 フランスか ら遊びに来ていて彼女の母親 も一緒 に行 くことになった。そこで、フ ランス人の学生 とその母親 は2枚 日の絵の状況 を見て仰天 したのである。信 じられない。

なんて愛情の薄い家族 なんだろう。

この ような絵 を提示すれば、学習者 は絵の内容 に興味を引 きつけ られて、 自然 に話 した い とい う欲求 に基づいて話 しは じめる。カルチ ャーギャップか ら生 じる疑問は外 国人同士 で よく取 り上げ られる話題であるか ら、これをクラスで扱 えば、互いの疑問や経験 を聞 き 合 うとい う形で、クラスメー トの発言 にも耳 を傾 けるようになる。学習者の協力的態度が 学習効果 をあげることは言 うまで もないだろう。テーマによっては未経験、未知の ものあ るか もしれないが、その場合 は、 ドラマの展開を予測 しなが ら疑問を疑似体験することで、

やは り同様の効果 をあげ られると考える。

ポイン ト

2.

学習者の 自由な発想 (解釈)を活かす

1枚 目の絵 を見て登場人物やその場の状況 について考え、意見 を出 し合 う。1枚 目の説 明か ら

2

枚 目に移 る前 に

2

枚 目での状況が どのように展開するかを予測する注意すべ き

(13)

長崎大学留学生セ ンター紀要

5

号 研究ノー ト

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8 9

点は、ここで教師が正解 に誘導 しないことであるこの絵教材は予測 と実際の間にいわば 異文化ゆえに予測のギャップが生 じ、より印象に残 りやすいような場面を選んであるので、

学習者 にさまざまな予測 を出させ、学習者の自由な発想 を妨げないことが重要である。つ まり、学習者が自分が持ってVさる社会的常識を使用 して出 した解釈 を大切 にしなければな らない

。9)

次に、上記の作業を行なった後の活動 として、ディスカッシ ョン、ロールプレイ、イン タビューおよびアンケー トが考えられる。

<ディスカッシ ョン>

自分の体験や自分の国との比較などを踏まえてお互いの情報 を交換 した り、話 し合 った り するもので

、( A)

学習者 自身の経験 に基づ くもの

、( B)

登場人物の立場になって考えるもの、

(

C)絵のテーマに関連する別な資料 をよんでそれにもとづいて議論するものの 3つのタイプ があるが、(C)に関 しては、初級 よりも中級 に入ってから行なうほうが、適当であると考え

る。

<ロールプレイ>

絵 :残業

一組の絵 を見せ、全体の状況を把握 したうえで、登場人物のロールを演 じる絵がある ので、教師が口頭で状況説明をしてロールプレイをするよりわか りやすいOまた、絵の説 明の段階で、各登場人物の気持ち、考えていることなどについては、自由に意見 を出 し合 うことで把握できてお り、ロールプレイに入る前に既に必要な表現や語嚢が準備 されてい るので、初級であっても、スムーズにロールプレイに移 ることがで きる

例えば、上記の残業の絵の場合、電話をしている男女の会話を考えさせる。

<インタビューおよびアンケー ト>

この活動は絵 を使った授業の後、そこから引 き出 してきた問題をもとに、教室の外で調 査 をし、それをクラスに持ち帰って発表するものである

特に初級前半の場合、教室か ら

(14)

90 初級 日本語 コースにおける異文化教育導入案

外 に出る前に、教室内で学習者同士がインタビューし合 うことが必要である。

<授業全体の流れ>

絵 (1枚目)の提示

状 況 の 説 明

2枚 目の予測 1

2

枚 目の提 示 .予測 した こ との確 認 ー

1 Aまたは

クループワー ク

ロー ルプ レー

サマ リー を言 う

イ ンタ ビュー (グループ内)

ディスカッション/ディベー ト

この 中 よ り適 宜 選択 米 グループワー クの後

クラスで発表

90 (45×2

導入案

C.

教科書の課の場面 を利用もしくは応用するもの

今 回は、教科書 として 『文化初級 日本語

I J I

O)と

『 S I TUATONALFUNCTI ONAL J APANES E ,γ o l . 1 腔

を用いた具体例 を示す。

教材. 『文化初級 日本語

Ⅰ』

6

課 青田さんの一 日 ・佐藤 さんの一 日

( p. 4 0 ‑ 4 9 )

学習項 目 :

t i me

(に)

pl ac e

で ‑を/へ Ⅴます/ません

‑は ‑が す き/ きらいです

的 :日本人の日常生活 (朝、何時に起 きるか、 シャワーは朝浴 びるか、朝食/昼 食/夕食にどんなものを食べるか、食事にどの ぐらい時間をかけるか/ どこで 食べるか、何で食べるか、学校/会社は何時から何時までか、授業/仕事のあ

(15)

長崎大学留学生セ ンター紀要

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号 研究ノー ト

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9 1

とで何 をす るか、テ レビを見 るか、お酒 をのむか、何 時頃寝 るか、ベ ッ ドに寝 るか、床 に渡 るか等 ) と、 自国お よびクラスメイ トの国 とを比較す ることで、

共通点 と相違点 をみつけ、 自国お よび他 国の生活習慣 に対す る認識 を深 め る。

学習活動 :イ ンタビューお よびデ ィスカ ッシ ョン12)

イ ンタビュー1 教 師 に一 日の生活 についてイ ンタビューす る。

2

学習者 同士 で 日本での生活 について、青 田 さんの一 日 (大学生 ) ・佐藤 さん (会社貞 )の一 日をベ ースに してイ ンタビュー しあ う。

3 学習者 同士 で 自分 の国での生活 について、イ ンタビュー しあ う。

4

教室の外 に出て、 日本人 に本人の一 日についてイ ンタビューす る。

5

授業 に 日本人ゲス トを招 いて、お互 いにイ ンタビュー しあ う

イ ンタビューの結果 を報告 し、それ を もとにデ ィス カ ッシ ョンす る。

教材.

『 SI TUATONALFUNCTONALJAPANESE,v ol . 1:NOTES&DRI LL別

3

レス トランで (

NOTES:p. 5 1 ‑ 7 4

DRI LLS:p. 6 3‑ 6 6)

学習項 目 :一に します、一にな ります

‑ま しょう、‑ませ んか

的 :食事 やお茶 を一緒 に した場合 、その支払方法 は、割勘か、御馳走す る/御馳走 されるのか、お互 いに持 ち回 りにす るのか とい うような問題 は、個人の持つ文 化 的背景 によって違 うとい うことに気づかせ る。 また、御馳走 になった場合 は、

日本 ではその次 に会 った ときに、お礼 を言 う習慣 がある とい うことに も気 づか せ る。その ことによって、習慣 の違いに気づか ない (気づか なか った)ため に 起 こる誤解 や摩擦 を防 ぎ (解消 し)、そのほか に も生活 習慣 の違 い に よる誤 解 がある (あった)か もしれない こと、つ ま り、「自文化 に多 大 な影響 を受 け て いる 自己に対す る認識」13)が持 てる ようにす る。

学習活動 :ロールプ レイ

( Howt opayatt hec as hi e r)

お よびデ ィス カ ッシ ョン 上記 の 目的 を達成す るために、 まず教科書 で示 されてい る活動 の うち、上記項

目に関係 のある もの を選 び、異文化理解 の観点か らそれ を補 強 し、応用 した活 動 を提示す る。

NOTES( p. 7 4)

a.Payi ngt hebi l

lで、

Whe nt woormor epe opl ehav ehadame alt oge t he r,t hec as hi e rmayas ki fyou wi s ht opayt oge t he rors e par at e l y.

と食事代 を支払 う場面が解説 され、

DRI LLS( P, 6 3‑ 6 4)

" Payi ngatt hec as hi e r "

の場面で、

a. Payi ngt oge t he r( p. 6 3)

C.Payi ngs e par at e l y( p. 6 4)

の例 が示 され

(16)

9 2

初級 日本語 コースにおける異文化教育導入案

ている。 また、

Rol epl ay( p. 6 6)

として

5

つの タスクが課 されているが、 ここで は、異 文化理解 の観点か ら、相互交流のある

2.3.

2

つについてのみ検討す る。

a.Payl ngt oge t he r

Li s t e nf ort hepr l C e,t he npayasi nt hee xampl e.

A :

B :

会計

( ac as hr e gi s t e r) A :

お願い します。

B :

はい、 ごいっ しょですか。

A :

はい。

B:1 8 0 0

円にな ります。

A :

はい

。( payi ngmone y)

C.Payl ngS e par at e l y A :

お願い します。

B :

はい、 ごいっ しょですか。

A :

いえ、べつべつに して ください。

私/ ぼ く は、 ビーフカレー とコーヒー

B:

ええと、ち ょうど

1 0 0 0

円にな ります。

A :

はい

。( payi ngmone y)

C:

私/ぼ くは、天ぷ ら定食 とコーヒー。

B:1 1 5 0

円いただ きます。

C:

はい

。( pays)

B :

はい

。2 0 0 0

円おあずか りします

。( t ake st hemone y) 8 5 0

円のおつ りです

。( gi v e st hec hange)

あ りが とうございました。

A・ C :

どうも。

Rol epl ay( p. 6 6)

2.Got oar e s t aut antwi t haf r i e ndandor de rf oodf orbot hofyou.Pays e pa ‑

r at e l y.

3.Takeaf r i e ndwhodoe s n' ts pe akJapane s et oar e s t aur antandor de rf orbot h ofyou.Payf oryourf r i e nd.

日本人同士で食事 に行 った場合 にも、割勘か、 どちら (誰 )が払 うのかは、その二人 も

(17)

長崎大学留学生センター紀要 第

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号 研究ノー ト

1 9 9 7

9 3

しくはグループの人間関係およびどんな場面かによっても変わるが、どちらが最初 に誘っ たのか、つまり、最初 に 「コーヒーを飲みに行 きませんか。」 とか、「昼御飯 を食べ ません か。」 と言ったのはどちらかということも重要である。 しか し、会話例 に も、

Rol epl ay

の指示の中にも、そのことについては触れられていない.また、一緒に払 う場合、単にま

とめて払 うのか、御馳走するのかということは、上記の会話か らは読み取れない。支払方 法は、少な くとも二種類あることがわか り、その場面で何 と言えばいいかはわかる。韓国 のように割勘 ということばがない国 もあることを考えれば、これだけで も有効であるが、

どんな時に割勘にして、どんな時におごった りおごられた りするのかということはわか ら ない。

<学習活動案

1>

はじめから食事の支払方法について情報を与えるということはせず、学生には自国では 同 じ場面で どうするかということを念頭において振る舞 うよう指示 しておいて、誘 う場面 からロールプレイを行なわせるという方法をとる。これによって、それぞれ異なる文化的 背景 を持つ学習者の間に異文化接触がおこり、現実の場面で も起 こりうるであろう誤解や 対立、摩擦 を経験 させることになる。次にどうしてそのような摩擦や対立が起 こったのか ということを考えさせ、自文化ではどうであるかということを話 し合わせる。教師 も情報 提供者 として参加する

また、この学習過程で必要 とされる語嚢 (割勘、御馳走する/お

ごる、払 う等)は、学習者が必要 とした段階で提示する。

<学習活動案

2>

<学習活動案

1>

で御馳走にな り、次の日に御馳走 して くれた相手に会ったという設定 で、ロールプレイを行なわせる。はじめに前 日のお礼 を言わな くてはいけないが、そのこ

とは学習者には知 らせない。以下の手順は<学習活動案

1>

と同様である。

3. 4

学生の反応

筆者がこれまで以上のような活動をクラスで行なった際の学生の反応は、取 り上げる ト ピック (異文化接触場面)によって差が見 られる場合 もあったが、だいだいにおいて、 ど の学生においても、興味をもって積極的に取 り組む姿勢が見 られ、お互いに助け合いなが

ら、それぞれの力に応 じてディスカッションに参加 していた。特 に、通常のクラスにおい て、力不足のためにあまり積極性が見 られなかった学生が、なんとか自分の意見を最後 ま で諦めずに述べ ようとする姿勢を示 したことは評価 に億する。これは、学生が教師側か ら のインプッ トをただ待つのではな く、学生同士の間でそれぞれの国についての情報交換、

質疑応答 を行 なったこと

また、教師 も教授者 としてではなく、その話題に興味を持って

(18)

9 4

初級日本語コースにおける異文化教育導入案

いる仲 間 としてその情報交換の輪のなかに参加 したこと。そのことにより、 リラックス し た雰囲気 の中、 自由な意見交換が行 なわれ、学生が 自国 と他国の相違点及び類似点 を認識

し、自分が既 に持 っている背景知識 を活性化で きたことなどによると思われる

ディスカッ シ ョンのなかで必要 とする語嚢、表現等の獲得、使用 にもかな りの積極性が見 られた。

まとめ と今後の展望

日本語初級 レベルのクラスにおける異文化教育導入 を効果的に行 なうためには、クラス 活動 を行 なう際に、教師が正 しい知識 を与 える者 としてではな く、同 じ異文化 を体験 し、

それについて共 に考え話 し合 う仲間 として参加すること活動内容 としては、 日本での 日 常生活 における異文化接触場面 を取 り上げること

場面設定は学習者がはっきりと具体的 な状況が措 けるように、絵や ビデオなどでカルチ ャーギャップが含 まれた ものを使用す る こと。その際、教 師はそこに含 まれているカルチャーギヤプに焦点 をあて、そのために生 じる学習者の疑問を利用すること。またその疑問に対 して教師が一つの正解 を示すのでは な く、学習者 にそれぞれの文化的背景か らで きるか ぎり色 々な意見が出でて くるようにす ること。それ らの活動 はペアワーク、グループワークを多用 しなが ら、学習者 同士、教師 と学習者のインターアクシ ョンを活発化 させ ること等が望 まれる

また、以上の ような活動 を単発的にではな く、カリキュラムの中に系統的に組み込むこ とが必要だ と考える学習者 はこの ような教室活動 を通 して、異文化 に対する感受性 を養 いつつ、 日常生活 における其のコミュニケーシ ョン能力 を獲得 してい くと考 える。一方教 師 もいま手 に している異文化の相場である教室で、学生 とともに自国の文化 を見直 し、他 の文化の考 え方、表現の仕方、や り方 を学び合い、相違点 と共通点 を兄いだ してい くとい うような作業 を通 して、 自己の意識、態度 を学生 と共に変革 してい くことがで きる。

今後の課題 としては、現実のさまざまな場面における学生のコミュニケーシ ョン能力 を 伸 ばすために有効 な異文化接触の項 目をさらに収集、整理 し、教材化 してい くと同時にそ れ らの具体的な導入方法、活動内容 について、普段の教室活動における実践を通 じて検討 ・ 反省 を加 えてい くことが必要である初級 コースにおける異文化教育 を実践 なさっている 多 くの先生方か ら色 々なご意見 をいただければ幸いである。

(19)

長崎大学留学生セ ンター紀要

5

研究ノー ト

1 9 9 7

9 5

1

)バルダン他 (

1 9 8 9)

2)Oma ggi o

" Te a 占 hi n gLan gua gei nCo nt e x t "

のが使 用 して い る用 語 で あ る

. Omaggi o ( 1 9 8 6:p. 3 6

1)参照

3)

周囲が 日本語使用の場であ り、具体的な状況 に囲まれて 日本語学習が進め られる。 日本語の 背景 にある文化的情報 も制限な く得 られる環境である。」上野

( 1 9 8 8:p. 8)

と考 え られが ち である

4)

学習者が言語 について学ぶ とい うことは、文化 について学んでいるとい うことであ り、新 し い言語 を使 うことを学ぶ とい うことは、新 しい文化 に属す る人々 とコミュニケーシ ョンす るこ

とを学ぶ ことである

」 Mi c ha e lBy r a m

(

1 9 8 9:p. 2 2)

5)Oma ggi o

(

1 9 8 6:p. 3 6 1)

は、文化の多様性 を考慮せずに情報のみを与 えるアプローチ はス テ レオタイプをな くす とい うよりは、む しろステレオタイプを作 って しまう可能性があると指摘 している

6

)岡崎

( 1 9 9 1:p. 9)

はこれを次のように述べている

「‑教師 と学習者の間の交流 も人間同士の全人格的交流 となる。教師は従来のような自分が持っ ている日本語の知識 を、それ らを持たない人間に分け与 えるとい う、固定化 した一方向で学習 者 とつながっているのではない。学習者 もまた対等の人間 として、特 に自己が独 自に持 ってい る文化的価値 を教師に提示 し相互交流す るとい う、両方向の関係が成立する

。 」

7

)尾崎 ・ネウス トプニー (

1 9 8 1)

参照

8

)粉本、川越、高岸

( 1 9 9 1 )

参照

9)Robi nC.S. ,Re be c c aL.0.

(

1 9 9 2:p. 1 8 3,1 8 5)

は、彼 らが提 唱す るアプローチ (タペ ス ト リーアプローチ)と伝統的なアプローチの特徴 を比較す る中で次の ように記述 している.

TheTa pe s t r yAp pr oa c h:Thed e f i ni t i ono fc ul t ur ei n c l ud e sb e ha vi o r s ,at t i t ud e s ,i mpl i c i t r l ユ l e s ,andt I l ei n di vi dual ' Spe r c e pt i onsandi nt e r r e t at i o nsof t h e r e .

Tr adi t i onalAppr oa c he s:Thed e f i ni t i onofc ul t ur ei sof t e nf a rmo r er e s t r i c t e danddo e s nota ll o wf o rt hei ndi v i d ual ' SP e r C e P1 0n Sa ndi nt e r pr e t at i on s .

1 0)

文化外 国語専 門学校 日本語科編 (

1 9 8 7)

参照 ll)筑波 ランゲージグループ編

( 1 9 9 1)

参照

1 2)

教室内 (外 )活動のなかで、複数の人間にインタビューするとい う活動 を通 して、学習者が 自 分の経験の範囲だけでステ レオタイプを描 くことの危険を防 ぐことがで きると期待 される

文化接触の場面では同 じ文化圏に属 していて も同 じ質問に対 して、人によって全 く違 った答 え をした り、あることに関 して全 く違った感 じ方 をす るとい う当た り前のことが、忘れ られがち である

1 3)

長谷川

( 1 9 9 4:p. 1 2 8)

参照

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