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わが国の高血圧の治療率とコントロール率の実態と考察

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Academic year: 2021

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厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業) 

(分担)研究報告書 

 

わが国の高血圧の治療率とコントロール率の実態と考察   

研究分担者      三浦克之(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門)

研究協力者      瀬川裕佳(滋賀医科大学アジア疫学研究センター)

 

研究要旨 

従来、わが国において、高血圧発見後の薬物治療開始(治療率)、および、薬物治療開始後の血圧の 良好なコントロール実施(コントロール率)は必ずしも十分ではない。そこで 1980 年から 2016 年 までの 36 年間の循環器疾患基礎調査および国民健康・栄養調査のデータを用いて、わが国におけ る高血圧治療率および高血圧コントロール率の推移と現状を検討した。高血圧治療率は上昇を続け ており、70 歳代男女で 60%以上であったが、年齢が若いほど治療率が低い傾向が強かった。高血 圧管理率も上昇したものの、男性では約 40%前後、女性では約 45%前後にとどまった。一般国民に おいて、医師を受診し必要な投薬がされていない高血圧者、服薬していても血圧コントロール不良 の高血圧者が依然多く、糖尿病者でも同様の傾向と考えられるため、保健・医療の多様な面からの 対策の強化が必要と考えられた。

 

A. 研究目的 

糖尿病性腎症予防において血圧コントロー ルは最重要の課題の一つである。しかし従来、

わが国において、高血圧発見後の薬物治療開始

(治療率)、および、薬物治療開始後の血圧の良 好なコントロール実施(コントロール率)は必 ずしも十分ではない。本報告では、1980 年から 2016 年までの 36 年間の循環器疾患基礎調査お よび国民健康・栄養調査のデータを用いて、わ が国における高血圧治療率および高血圧コン トロール率の推移と現状を明らかにし、今後の 高血圧対策について考察する。 

 

B.研究方法 

対象は 1980 年(NIPPON  DATA80)・1990 年

(NIPPON  DATA80)・2000 年のそれぞれ第 3 次、

第 4 次、第 5 次循環器疾患基礎調査、及び 2010 年・2016 年の国民健康・栄養調査の対象者とし

た。2016 年国民健康・栄養調査は拡大調査年で ある。本研究ではこのうち、血圧の情報がない 者を除外し、解析対象者はそれぞれ、30‑79 歳 男女で、1980 年:10,546 人、1990 年:8,270 人、

2000 年:5,570 人、2010 年:4,119 人、2016 年:

12,122 人であった。 

高血圧有病は収縮期血圧≥140mmHg または拡 張期血圧≥90mmHg または降圧薬の使用のいずれ かに該当する者とした。なお、2000 年・2010 年・

2016 年の血圧は、血圧を 1 回しか測定していな い 1980 年および 1990 年の結果と比較するため、

2 回測定の 1 回目の値を使用した。 

解析は、高血圧の有病率、治療率(高血圧者 において降圧薬を使用している者の割合)、管 理率(コントロール率)(降圧薬を使用している 者において収縮期血圧<140mmHg かつ拡張期血 圧<90mmHg に管理されている者の割合)を、30 歳代から 70 歳代まで、性・10 歳年齢階級別に

(2)

それぞれ算出した。なお、本データにおける 30 歳代および 40 歳代の高血圧者が少ないため、

治療率および管理率は 50 歳代から 70 歳代での み算出した。 

 

C.研究結果 

1980年から2016年までの36年間における 高血圧の有病率の推移においては、女性では全 ての年齢階級で減少傾向が見られるものの、50 歳以上の男性は横ばいあるいは微増となって いる。また、50 歳以上の男性、60 歳以上の女 性では依然として 50%を超える高い有病率が 続いている。

高血圧治療率の推移においては(図1)、過去 36 年間で上昇を続けており,60 歳代男女で

50%以上、70歳代男女で60%以上となった。

しかし、年齢による差が大きく、年齢が若いほ ど治療率が低い傾向が強かった。

高血圧管理率は過去 36 年間に上昇したもの の、男性では約40%前後、女性では約45%前後 にとどまっている(図2)。男女ともに年齢階級 による差は見られず、また、全ての年齢階級に おいて同様に上昇傾向にあった。

D.考察 

高血圧治療率については、薬物治療が 100%

である必要はないため、特に 70%に近づいてい る高齢者では良好と考えられるが、年齢が若い ほど必要な人が治療を受けていない傾向が強 い。健診後の医療機関受診率向上など、必要な 患者を治療に結びつける対策が、特に若い年齢 層を中心に強化する必要がある。 

一方、高血圧管理率は年齢階級による差がな く、上昇傾向が続いているが、いずれの年齢層 においても 40‑45%程度であり、不十分と考えら れる。降圧薬服用者においては血圧を 140/90  mmHg 未満にコントロールする必要があり、医師 の高血圧診療の質の向上、患者のコンプライア

ンスの改善などの対策の強化が必要である。 

 

E.結論 

糖尿病性腎症の促進要因となる高血圧につ いて、国民代表データで確認した。一般国民全 体で見ても、医師を受診し必要な投薬がされて いない高血圧者は若い年代ほど多く、また、服 薬していても半数以上が血圧コントロール不 良と考えられた。糖尿病者でも同様の傾向と考 えられ、保健・医療の多様な面からの対策の強 化が必要である。 

 

F.健康危険情報     

G.研究発表  1.著書 

三浦克之.日本の高血圧疫学.日本臨牀 76 巻月 刊号 8 別刷「特集:高血圧の最新診断・治療―

ガイドラインから個別予見医療へ―」、2018. 

 

2.学会発表 

1. Katsuyuki Miura. Epidemiology of

Cardiovascular Risk Factors in the World, Asia, and Japan. シンポジウム. 国際心血管薬 物療法学会. 2018年5月(京都)

2. 三浦克之. 高血圧の認知・治療・コント ロールの現状と国際比較. シンポジウム.

日本高血圧学会総会. 2018年9月(旭川)

3. Katsuyuki Miura. The Improvement of CVD Prediction for Japanese Population. シンポ ジウム. 62nd Annual Scientific Meeting of the Korean Society of Cardiology. 2018年 10月(ソウル) 

   

H.知的財産権の出願・登録状況  1.特許取得 

なし 

2.実用新案登録  なし 

3.その他  なし 

(3)

   

18.3

27.1 33.2

42.2 42.4 31.4 35.1 42.2

51.8 55.4 38.2 44.1

53.5

64.3 66.9

0 20 40 60 80

1980年1990年2000年2010 年2016年

26.1 33.1 34.3 32.5 38.6 36.7

44.8 45.3 51.6 53.0 44.5

51.8

62 67.5 69.8

0 20 40 60 80

1980年1990年2000年2010 年2016年

図 1 .高血圧治療率 * の年次推移( 1980 年〜 2016 年)

(第3次循環器疾患基礎調査(NIPPON DATA80)、第4次循環器疾患基礎調査(NIPPON DATA90)、第5次循環器疾患 基礎調査、平成22年国民健康栄養調査、平成28年国民健康栄養調査

50 歳代 60 歳代 70 歳代

男性 女性

(%) (%)

* 高血圧者のなかで降圧薬を服用している者の割合。血圧値は1回目測定値を使用

図 2 .高血圧コントロール率 * の年次推移( 1980 年〜 2016 年)

(第3次循環器疾患基礎調査(NIPPON DATA80)、第4次循環器疾患基礎調査(NIPPON DATA90)、第5次循環器疾患 基礎調査、平成22年国民健康栄養調査、平成28年国民健康栄養調査)

50 歳代 60 歳代 70 歳代

9.0

22.5 19.8 34.3

33.3

9.7 14.7

23.4 29.4

40.6

10.5 16.9 15.2 31.5

44.2

0 10 20 30 40 50 60

1980年1990年2000年2010 年2016年

14.1 21.5 27.8

40.0 45.1

13.4

19.5 25.1

38.9 48.0

12.7 19.2

21.6 41.4

43.4

0 10 20 30 40 50 60

1980年1990年2000年2010 年2016年

男性 女性

(%) (%)

* 降圧薬を服用している者のなかで収縮期血圧140 mmHg未満かつ拡張期血圧90 mmHg未満の者の割合。血圧値は 1回目測定値を使用

参照

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