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玉木長良 (京都大学医学部放射線核医学科)

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Academic year: 2021

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特別講演I

心筋の糖・脂肪酸代謝イメージング

玉木長良

(京都大学医学部放射線核医学科)

ジトロン標識化合物であり、生体構成元素の同位 体が利用できるため、脂肪酸や糖,アミノ酸など 種々の化合物が紹介されている。一方、一般の核 医学施設でも利用できるように、シングルフォト ン標識化合物も脂肪酸を中心に開発が進められて いる。以下は糖代謝と脂肪酸代謝を中心に述べる。

I.はじめに

心臓核医学は201Tlの登場および電算機の進歩 により、1970年後半より急速に発展し、いまや広 く_般臨床に応用されるに至った。この心臓核医 学では心筋血流と心機能の評価が主に行なわれて いる。この2つは密接な関係をもつが、虚血の回 復期や心筋症などにおいては両者の所見の不一致 のみられることがあり、これらの解釈の上で心筋 組織内の代謝異常を把握する必要がある。すなわ ち心筋代謝は、従来より心臓核医学を支えてきた 心筋血流と心機能との橋渡しをする役割をもって おり、心臓核医学の新しい活路を開くものと考え

られる。

Ⅳ、糖代謝の映像法

糖代謝の映像に最もよく用いられるのが、l8F fluorodeoxyglucose(FDG)である。通常FDGを 2-10mCi静注約60分後にポジトロンCTにて糖 代謝像を得る。

(1)虚血心筋への応用

心筋虚血領域では糖代謝が冗進しており、血流 低下に対してFDOの集積増加したmismatchを 示すことが知られ、血流も糖代謝も共に低下した 心筋壊死領域と区別することが可能である2)。図 2に前壁梗塞例の血流および糖代謝像を示すが、

運動負荷により血流低下を示す領域にFDGの集 積増加があり、両者より代謝の残存した虚血心筋 が含まれていることが示唆される3)。著者らの心 筋梗塞例の検討では、血流低下や壁運動異常の軽 度な領域、運動負荷により虚血を生じる領域によ

り高頻度にFDGの集積がみられ4)、他の臨床指 標と対比しても、FDGの集積が心筋のviability

を反映しているものと考えられる。

Tillischら5)は術前の血流.糖代謝イメージン グにより、冠動脈バイパスで局所心機能の改善を 示す領域を予測することができるとの報告をして いる。これはFDCを用いた心筋ポジトロンCT 検査の臨床的有用'性を初めて証明したものとして 注目される。図3に下壁梗塞例の冠動脈バイパス 術前後の血流と糖代謝像を示す。術前血流低下と 糖代謝冗進のみられた側壁では術後著明に血流が 改善していることがわかる。ただし同部の糖代謝 は術後も冗進しており、血流改善と代謝改善とに は差がみられた例である。このようにFDCは代 謝の面から心筋viabilityの評価が可能であり、

積極的治療の適用の判定に優れているといえる。

従来より心筋viabilityの評価には201Tlの再分 布が用いられてきたbしかしながら再分布のない

Ⅱ.心筋のエネルギー代謝

心筋エネルギー代謝の経路を図lに示す。心筋 はエネルギー源として主に脂肪酸とブドウ糖を利 用している。酸素供給のよい健常心筋では、空腹 時にエネルギー源の約80%は脂肪酸のβ酸化が用 いられる。食後血糖値やインスリン値が上昇する と、ブドウ糖からピルビン酸を介してクエン酸(TCA)

回路にはいる好気性糖代謝(aerobicglycolysis)が 主となる。また血流が低下し酸素の供給が不足す ると、同様に脂肪酸から解糖系にスイッチされる が、とりわけ酸素の不要な嫌気性糖代謝(anaerobic glycolysis)の占める割合が増加する。この状態が 長時間続くと、乳酸が組織内に蓄積しpHが低下 するため、細胞膜は破壊きれてもはやエネルギー 代謝の営まれない心筋壊死の状態に至る')。従っ てエネルギー代謝の基質の利用をみることにより、

虚血の程度を詳細に検討することが可能である。

Ⅲ心筋代謝の評価法

従来より心筋代謝の評価には冠動静脈のエネル ギー基質や乳酸などの代謝産物の濃度差の計測が 行なわれてきた。近年種々の放射性医薬品の開発 により、これら一連の心筋のエネルギー代謝の映 像化が可能となり、これにより心筋局所のエネル ギー代謝を非侵襲的に計測することが可能となっ

た。

表1に代表的な標識化合物を挙げる。大半はポ

(2)

BLOOD CYTOSOL Phospholipids

MlTOCIIONDRIA

ポジトロン製バリ シンクルフォトン製バリ

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11W代,洲’肘F11fi肪触1】CmC

代,AllIC

にKII‐ベンジルグルコース9 フルオロデオーキシグルコーヌ

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グルコース パルミチン酸 βメチルllHlIノi砿 FFA-FFA-.FFA-CoA-

GLYCOl

oLUCos、稲Lルー。,

ハTPil5IjCoLVSI:PYRUVATE-

LACTATE<--LACTATE

ll

M3I-llDA 123LlPPA IlJ31JlMIPI) β-OXIDATION

KREBS

CYCLE アミノ樅lIC-グルタミン餓 代1NlllC-アラニン

】IC_メ,チオニン その他’50-鮫紫

llC-ピルビン酸 llC-iW;砿

】IC乳酸

一Acetyl

ll CO2

△図1心筋エネルギー代謝の主な経路。脂肪酸(FFA)表]心筋代謝イメージングに用いる放射性医薬品

とブドウ糖(GLUCOSE)が主なエネルギー基質となる。

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▲図2前壁梗塞例の宏静時(左上)・述動負荷時(イ「

上)13N-アンモニア」ill流分布像とI8FDGによる糀代,訓|

像(下)。安静時にみられる前壁「'''1,Wのiliif度のlm流低下 は述動負荷により杵lリjとなる。何部には杵IⅢな糖代謝の

尤進がみられる、

▲図3下壁梗塞例のACバイパス術前(上段)術後

(下段)の'3Nアンモニア血流分イ|「像(左)と’8FDC による糖代謝像(イ「)。術前には側雌のlIl流低下とlWi代 謝の兀進がみられたが、術後血流は改韓している。しか

し糀代謝の六;進は残イドしている、

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▲図4述動負荷Tl・SPECT像(a)とポジトロンCT像(b)。

ポジトロンcTは安静時(左上)、連動負荷時(イ「上)」m流 分布像とjMli代謝像(下)を示す。迎動負荷にてi1llj検在法とも 心尖部から前雌中隔にかけてのⅢl流低下がみられるが、TI では秤分布がみられないのに対し、ポジトロンCTでは負荷 時のjHL流低下の1牌強と共にjWi代謝の兀進が認められる。

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(3)

物実験や臨床例で証明されており11)、脂肪酸代 謝異常を反映するものと考えられる。 ̄方BMIpp については、虚血性心疾患において血流分布とは 異なる分布を示すことが知られている(図7)12)。

とりわけBMIppのように心筋の摂取から代謝を 評価する場合、その摂取がはたして脂肪酸代謝の どの過程を反映しているのかを検討する必要があ る。現在のところBMIppの摂取は脂肪酸のβ酸 化よりはむしろ脂質プールを反映している傾向が みられている'3)。

]231標識脂肪酸については、鳥塚先生を中心 とした「ヨード脂肪酸ミーティング」により動物 実験を主体とした共同研究が進められ'4)、我が 国での臨床応用も間近になっている。

欠損領域にもFDG集積増加を示す場合があり

(図4)6.7)、このような領域は術後機能回復す ることも知られており8)、そのviabilityの評価 は慎重でなくてはならない。

(2)心筋症への応用

心筋代謝の評価は虚血`性心疾`患での検討だけで なく、各種心筋症の細胞内の生化学的情報の検討 により、その病態生理の解明に利用することも可 能である。図5に拡張型心筋症(DCM)の血流像 と糖代謝像を示す。血流分布はかなり不均等であ り、それとは無関係の領域(とりわけ側壁)に糖 代謝の冗進がみられる。一方心拡大を伴った重症 虚血`性心疾患(ICM)では大きな血流欠損があり、

その領域に一致して糖代謝の冗進を示すmismatch のパターンを示し(図6)、DCMとICMの両者 を容易に鑑別することができる。さらには肥大型 心筋症や高血圧心,糖尿病性心筋症など種々の心 疾患で、心筋'性状の評価がなされてゆくものと期 待される。

Ⅵ.まとめ

心筋代謝の映像法について述べた。ポジトロン CTを中心に進められてきた心筋代謝の評価は、

近年放謝性医薬品の開発により通常のγ線放出核 種でも可能になりつつある。一方ではポジトロン CTは酸素代謝,TCA回路の活性などさらに新 しい代謝情報を提供しつつあり,今後虚血心筋や 心筋症の病態生理の把握に役立てられるものと期 待される。

V,脂肪酸代謝の映像法

脂肪酸代謝の映像に最もよく用いられているの は炭素が16個の直鎖のパルミチン酸である。llC- palmitateを投与後、心筋からのトレーサの洗い 出しは2相性となる。早期の洗い出しは脂肪酸の β酸化を、後期の排泄は脂質プールへの移行を反 映するといわれる9)。一方心筋からの洗い出しの 評価とは異なり、FDGと同様に心筋への摂取そ のものから脂肪酸代謝の評価を試みる流れもある。

脂肪酸のβ位にメチル基をもった側鎖の脂肪酸の 'IC‐βmethylheptadecanoicacid(BMHDA)は、

静注後高い心筋への摂取率を示し、その分布は長 時間変化しない'0)。

一方ポジトロンCTによる代謝映像法が進歩す るにつれて、通常のガンマカメラで映像化できる 種々の放射性医薬品も開発された。種々の1231 標識脂肪酸がそれである。最初は脂肪酸の⑪位に '231を標識したl231-heptadecanoicacid(IHA)が 臨床利用きれたが、脱ヨード化が問題となり、

1231標識の安定化のためフエニル基を介した '231-iodophenylpentadecanoicacid(IPPA)や'231-

βmethyliodophenylpentadecanoicacid(BMIPP)

などが開発された。前者は'1Cpalmitateと同様 初期の取り込みから血流を、その洗い出しからβ 酸化を評価しようとするものであり、後者は BMHDAと同様高い心筋への摂取率を示し、そ の摂取から脂肪酸代謝の評価を試みたものである。

IPPAの虚血心筋における洗い出しの遅延は動

文献

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14.米倉義11背:脂肪酸代謝イメージング。第11回

-1-タウンカンファレンス1987年2月。

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▲図5拡張型心筋症の血流分布像(上段)と糖代謝像

(下段)。心拡大が薪U]で左室内lm流分布は不均一であ るが、大きな血流欠恨はみられないのに対し、側壁にlu(

)hjした糖代謝の冗進がみられる。

▲図6重症の虚IIL性心疾患の血流分布像(上段)と糖 代謝像(下段)。左室拡大が著明で、心尖部から側壁に かけて大きなlIl流欠批がみられるが側壁に糖代謝の六;進 がみられる、

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虚lIL性心疾患の安静Ⅱ寺201Tl像

▲図7虚lIL性心疾忠の安静時zuITl像(_上段)とl231 BMIPP投与10分後のillli像(下段)。下壁と心室中陥の血 流低下がみられるが、BMIPPの中隔へのupLekeはむし ろ贈力Ⅱしており、両者の分布は異なる。

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参照

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