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米倉義晴 (京都大学放射線核医学科)

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Academic year: 2021

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特別講演I

心臓核医学におけるPETの利用

米倉義晴

(京都大学放射線核医学科)

が疾患の診断の病態把握の両面から重要と考えら れていることによる。

1.心臓核医学の発展とPET

放射性同位元素をtracerとして体内に投与し、

その時間的・空間的挙動を追跡するinvivo核医 学の歴史をふり返ってみると、その循環器系への 応用はそれぞれの時代における先駆的な役割を果 たしてきたように思われる。例えば、probe型検 出器を用いた中心循環系におけるtracerの動態 追跡により、心放射図(radiocardiogram;RCG)と 呼ばれるユニークな検査法が確立されている')。

その優れた時間分解能を利用して、流量と容量に 関する解析法が生み出され⑳、その後の核医学検 査で用いられることになる多くの解析法の出発点 となった。ガンマカメラの登場は、これに空間情 報を加え、画像診断法としての発展の基礎を作り

上げてきた。

PETは、その優れた時間的・空間的解像力に より、probe型検出器を用いた第1期心臓核医学 と、イメージングを中心とした第Ⅱ期心臓核医学 の両者を更に発展させる立場にあると言えるだろ う。つまり、時間的・空間的解像力という物理的 特徴に加えて、陽電子放出核種を用いた多くの標 識化合物の利用によって代謝情報という化学的特 徴を得て、トレーサー法はその能力を最大限に生

かすこととなった。

1)局所心筋血流の測定

PETによる局所心筋血流測定の意義には、血 流の情報そのものによる診断と、代謝イメージン グのreferenceとしての血流測定がある。PETの 特徴を考慮すると、心筋内血流分布の詳細なマッ ピングと定量的心筋血流の測定という2つの方向 が考えられる。

現在PETによる心筋血流測定法としては、’3N アンモニアによる相対的血流分布、150水によ る心筋血流の絶対値測定、及び82Rbによる心筋 血流測定がある。13Nアンモニアは高い画質の PET像が得られ、もっぱら相対的な血流分布像 として用いられており、H2'50は逆に画質では 劣るものの絶対値が得られる利点が強調されてい

る。

脳とは違って心筋のエネルギー需要は刻々と変 化し、運動時には安静時の数倍に達する。血流量 もまたこの変化に応じて変動するので、常にこの ような需要と供給のバランスの問題として把握す る必要がある。虚血,性心疾患の診断において各種 の負荷試験が用いられるのはこのためであり、

PETによる心筋血流の評価に関しても重要な点 である。13Nアンモニアは、この点で運動負荷 検査の応用が容易で、心筋虚血病変の検出に優れ た検査法である4)。

2.PETによる機能測定

PETは、従来の核医学イメージングと比較し て、①解像力の高い断層像が得られること、②定 量性に優れ、投与した化合物の局所における濃度 を測定できること、③各種の標識化合物の利用に より生化学的な代謝情報が得られるといった特徴 がある3)。これらの利点から、心筋の血流とエネ ルギー代謝のイメージングが行なわれ、また神経 伝達物質の受容体測定が試みられるなど幅広い分 野での機能測定に期待が寄せられている。

その中で、心臓核医学におけるPETの当面の 課題は、心筋血流とエネルギー代謝の評価であろ う。これは、従来の心臓核医学検査が虚血心筋に おけるviabilityの評価に必ずしも十分ではない ことから、PETによるエネルギー代謝の情報に 期待が寄せられていること、また代謝異常の検出

2)心筋エネルギー代謝の評価

心筋は、通常の好気的条件下ではそのエネルギ ー需要の大部分を脂肪酸のβ酸化により賄ってい る。局所心筋への酸素供給が障害されると、この β酸化が抑制されて嫌気的糖代謝が冗進すること が知られている5)。PETは、このようなエネル ギー代謝の変化を画像として描出できるようにな り、虚血性心疾`患を中心としてその臨床的意義が 注目されている。

PETによる心筋エネルギー代謝の測定法とし ては、表,に示すように、糖代謝,脂肪酸代謝,

TCAサイクルなどが評価の対象となっている。

(2)

機能 標織化合物

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糖代謝

脂)リブ酸代謝

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(3)

筋SPECTで血流低下が見られた領域で、201Tl のいわゆる再分布現象が存在するかどうかが心筋 viabilityの指標となると考えられてきた。とこ ろが、近年バイパス手術の普及につれて、再分布 現象の見られない領域でもしばしば機能の改善が 認められることが確認されている。この原因の一 つは、SPECTの物理的制約により、実際には運 動負荷により誘発される虚血部であるのに、あた かも梗塞部のように判定される例が存在すること がPETを用いて明らかにされている(図7)'2)。

このような領域では多くの場合に糖代謝の冗進が 見られ、viableな組織の残存する例が多いこと がうかがわれる。今後、PETによるデータを参 考にしながら、従来のSPECTを再評価する作業 が必要になると考えられる。

これらの検査法は、それぞれ特徴があり、目的に }応じた利用が要求される。例えば、虚血心筋では β酸化の抑制,糖代謝の冗進,TCAサイクルの 低下が観察されるが、“虚血病変の早期検出には どの測定法が優れているのか?”、“viabilityの 評価には何を測定すれば良いのか?”といった問 いに答えることによって、PETの臨床的意義が 確立される。

3.PETの臨床 1)糖代謝評価の意義

心筋にとってブドウ糖はエネルギー代謝の主要 な基質物質ではないにもかかわらず、心筋のPET 検査では重要な位置を占めている。これは、脳を 中心として現在のPETが動いている状況のもと で、トレーサー(FDG)を手に入れやすいという 事情もあるが、補捉的な役割を果たしている糖代 謝の変化を鋭敏に把握できるという利点も大きい。

心筋の糖代謝の分布がIm流と一致しない現象は、

虚血心筋を始めとしてしばしば見られる(図1~

5)。その多くは、心筋血流の低下した領域や血 流に変化の見られない心筋で糖代謝の兀進が認め られる6)。血流低下に対応した糖代謝の冗進は嫌 気的解糖系によるものと考えられる7)が、血流が 正常で糖代謝の冗進している領域は心筋の代謝系 の変化を示唆するものであろう8)。

Marshallらは、血流の低下した領域で糖代謝 の冗進している場合はviableな心筋の残存を意味

し、梗塞心筋との鑑別が可能であるとしている7)。

確かにこういった領域は、バイパス手術やPTCA などの積極的な治療によって皿流や機能の回復 が見られることが多く9」o)、心筋のviabilityに 関する重要な情報を提供するものと考えられる

(図6)。しかし、発症後2~3カ月の比較的新 しい心筋梗塞でも糖代謝の冗進を認めることが多 い6.11)。このような領域では、糖代謝を行なう 組織が存在するからといっても必ずしもその予後

は良くなく'1)、梗塞部に散在する残存心筋によ る糖代謝の冗進を反映しているのではないかと考 えられる6)。こういった点で、虚血心筋における 糖代謝の冗進は、代謝に変化を来たした心筋細胞 の存在を示すものだが、心筋のviabilityをこれ のみで判定できるかどうかは疑問も残されている。

4.まとめ

現在心臓核医学の抱えている問題を中心に、

PETの臨床的役割について述べた。PETは、そ のcostから考えて臨床核医学検査への普及は困 難だが、その優れた特質を利用して日常の心臓核 医学検査に多大の影響を与えるものと期待される。

文献

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3)米倉義晴:PositronECTによる代謝の定量 化映像情報MEDICAL18:51-57,1986 4)YonekuraY,etal:Detectionofcoronaryarte

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6)米倉義晴,他:虚血心筋におけるフルオロデ オキシグルコースの集積(第1報)-安静 時および運動負荷時心筋血流との比較一.

核医学23:1361-1367,1986 2)SPECTとの関連

20'Tlによる心筋SPECTは、虚血病変の検出 とともに心筋viabilityの評価についてもある程 度の役割を果たしてきた。すなわち、運動負荷心

(4)

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る、

7)MarshallRC,Gtal:Identificationanddifferel]‐

tiationo〔rcsLingmyocardialiSchemiaandin‐

farctioninnlanwithpositronc()nlputcdtomog

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参照

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