強震を受ける鋼構造ラーメン骨組の梁に生じる最大曲げモーメント
MAXIMUM BENDING MOMENTS OF BEAMS IN STEEL FRAMES SUBJECTED TO STRONG GRAND MOTIONS
小川厚治*1,永元亮太*2
KojiOGAWAandRyotaNAGAMOTOIhispaperpresentsthe唾sultsofanalyticalstudiesmordertoevaluateflegEuralstrengthdemandfbrbeam-to七olumnconnectionsin earthquake証℃sistantdesign・Iheautho田havedevelopedacomputerprogrambasedontheone-dimensionalHniteelementmethod mWhichageneralizedconstitutiverelationshiPconsideringisotropichardeningandkinematichardening遁incozporated.NUmeIical analysisofsteelwide-flangebeamslscamedoutundervariousloadingsequencessimilartoseismicresponsenleresultsare sumエnanzedasamethodtop配dictthemaxunumbendingmomentsofbeams,takingintoaccountthemaxlmumstolydエiftangles.
K2〕ⅢDC瓦Zs:sejsmMes4g7Z,sezsmzc71eSpo'zse,steeZmomelWテロmas蛇eZm比ノテmlgB6ea刀吻C)'cJicノtcmde"、g
●●耐震設計,地震応答,鋼構造ラーメン,H形鋼梁,繰り返し硬化
しかし,地震時の梁端の変形履歴は,塑性化に伴う層間変位応答 の片寄りや,梁上の静的鉛直荷重の影響を受けて,定変位振幅や漸 増変位振幅で行われている実験とはかなり異なるので8,9),実験結果 から梁端の最大曲げモーメントを直接評価することは困難である.
また,梁端の最大曲げモーメントは鋼材の繰り返し硬化の影響を受 けるので'0),単調載荷時の塑性回転角一曲げモーメント関係に基づ けば最大曲げモーメントを過小に評価する危険性がある.
本研究では,鋼材の移動硬化と繰り返し硬化の影響を考慮するた めに文献11)で提案された応力度一歪度関係履歴モデル(以下,Ⅲ モデルと略す.)を採用し,このモデルを組み込んだ1次元有限要 素法解析による結果に基づいて,塑性変形履歴と梁端の応力上昇率 との関係を検討する.また,最大眉間変位角と梁端の塑性変形との 関係に関する既往の研究結果8,9)を用いることによって,最大層間変 位角と梁端の最大曲げモーメントとの関係を明確にする.本論で は,最大曲げモーメントと全塑性モーメントの比を応力上昇率と定 義しているが,耐震設計上考慮すべき梁端の応力上昇率の合理的評 価法を提示することが本研究の目的である.
1.序
1994年のNorthridge地震,および,1995年の兵庫県南部地震に おいて,鋼構造骨組の多くに梁端破断が認められたことは,現在の 鋼構造骨組に関する重大な問題点の提起となった.その反省から,
柱梁接合部の変形性能の評価や改善など,その保有耐震性能を再検 討するための実験的研究が,多くの研究者によって進められてきて
いる.
一方,地震時には梁端にどのような変形が生じるのかという,柱 梁接合部に要求される必要変形性能に関する研究としては,魚骨形 骨組を用いた広範な地震応答解析に基づく中島・澤泉の研究'’2)や,
実在骨組の地震応答解析に基づく前田・増田・田中の研究3)等が挙げ られる.筆者らも,鋼構造ラーメン骨組の梁端に生じる最大塑性回 転角と累積塑性回転角を理論的に予測する方法を提案している4,5).
以上のような研究を総括する形で刊行された「鋼構造接合部設計 指針」6)や「鉄骨梁端溶接接合部の脆性的破断防止ガイドライン」7)
では,梁端接合部の最大耐力と梁の全塑性耐力との比である接合部 係数を一定値以上とすることで,梁端破断を防止する方針が取られ ている.文献6)の接合部係数は,主に実験結果による最大曲げモー メントに基づいて決定されており,文献7)では,単調載荷時の解析 による塑性回転角一曲げモーメント関係に基づいて接合部係数が決 定されている.
2.解析方法の概要
解析方法の主要な部分は,藤本らによって提案された1次元有限 要素法である'2).平面保持の仮定に基づく解析方法で,局部座屈や
*1熊本大学工学部環境システムエ学科教授・工博 掴熊本大学工学部環境システムエ学科学部生
Prof,Dept・ofArchitectuエ℃andCivilEng.,FacultyofEng.,KumamotoUniv.,DrEng、
Student,DeptpfArchitectureandCivilEng.,FacultyofEng,KumamotoUniv.
-35-
横座屈は考慮していない.部材は材軸方向に複数個の要素に分割し ているが,計算時間を短縮するために,部材の剛性マトリックス作 成時に,伝達マトリックス法を用いている13).部材断面は層状に20 に分割し,20の面積集中点に置換している.面積集中点内では応力 度,歪度は一定である.部材のせん断変形は弾性成分だけを考慮し
ている.
素材の応力度一歪度関係には,通常の移動硬化型のBilinearモデ ルの他,等方硬化と移動硬化を考慮した1Kモデル'1)を使用した.
1Kモデルの単調載荷時の応力度一歪度関係はnilinear形で,第2分 枝開始点(比例限)での応力度は降伏応力度の75%,第3分枝開始 点での応力度は降伏応力度である.また,第2分枝の剛性は第3分 枝剛性の10倍とし,第3分枝剛性と初期剛性(ヤング係数)との比 を歪硬化係数と呼んでいる.第2分枝部分は,Bauschinger効果を 考慮するためのものであるが,初期載荷時から考慮しているので,
明確な降伏棚がある鋼材については,初期載荷時の比例限での応力 度を過小に評価する可能性がある.等方硬化と移動硬化の比率は文 献14)にしたがって決定した.
U2
(a)L1
3.実験結果との比較
比較に用いた実験は,文献10)に報告されたH形鋼片持ち梁の繰 り返し載荷実験である.この実験は,応力上昇率の上限的な値を求 めることを目的としたもので,降伏比の小さい鋼材・が用いられ,局 部座屈や横座屈を防止しており,動的載荷が行われている.なお,
本研究では,動的載荷の影響は小さいと考えて無視している.断面 はH-600x200xlO7x16.4xl3とした.板厚は素材試験の実測値であ るが,他は公称値である.村長が3750mmのLシリーズが4体,村 長が2225mmのSシリーズが4体で,試験体は全8体である.
部材の材軸方向の要素分割にはへポナチ数列(αj=αj_,+αj-2)
を用い,片持ち梁を図1に示すように15要素に分割した.図1で灰 色で示した部分は更に5要素に分割している.最も短い要素は部材 長の、596の長さである.断面分割は,各面積集中点の重心軸から の距離と面積とを考慮して決めており,この断面については片側フ
-0 〕6 6
(b)L4
15要素分割
''1,1
H-ol2-l-ol←ト016-ト018ゴー,'0
(c)S1 5要素分割
図1要素分割
。(N/mm2)
0000000000054321
00.020.040.060.080.100.12
図2応力度一歪度関係
(。)S4
図3解析結果と実験結果との比較
-36‐
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-解析 一一実験
蕊 -解析 一実験
ゴー--00000■ 0.Iランジを3つ,フイレット部を1つ,ウェブを12に分割している.
応力度一歪度関係は,1Kモデルを用いている.その材料定数は,
フランジの素材試験結果に基づいて決定し,降伏応力度oyは 299N/mm2,引張強さびuは481N/mm2,歪硬化係数『は0.013 とした.ヤング係数回は205000Mnm2を用いている.図2には,
3体の素材試験結果を細線で示し,解析に用いた応力度一歪度関係
(太線)と比較している.解析用の応力度一歪度関係が素材試験の 応力度一歪度関係に歪硬化域で接するように,歪硬化係数は決定し ている.図2中にも示した引張強さは,単調載荷時の応力度一歪度 関係には影響しないが,素材が等方硬化する限界を表す応力度とし て解析では用いている.
片持ち梁試験体は8体あるが,このうち4体について,実験と解
折の固定端曲げモーメントMと回転角eの関係を図3に示す.ま た,図4には,各半サイクル毎の最大曲げモーメントを示してい る.図4各図の上部には,実験時に設定された回転角の振幅を示し ているが,Oyは全塑性モーメント時の弾性回転角である.図3,4に 示すように,解析結果は,鋼材の繰り返し硬化の影響を含めて,実 験結果を良く近似している.ただし,第1半サイクル(初期載荷 時)の最大曲げモーメントについては,解析値は実験値を下回る傾 向がある.この原因としては,前述したように,単調載荷時の応力 度一歪度関係をTnlinear形で与え,初期載荷時からBauschinger効 果を考慮した状態で解析していることが挙げられる.しかし,その 差は最大5%程度であり,初期載荷時の最大曲げモーメントについて は実験値のばらつきも大きいことから,この差違を無視して,解析 値は実験値を十分な精度で近似できることを前提に検討を始める.
1.6 1.6
4.梁端の応力上昇率
4.1繰り返し硬化を考慮した応力上昇率
筆者らは,文献8,9)において,地震外乱下で梁端に生じる塑性回 転角について次の知見を得ている.
[11最大塑性回転角epmaxは,最大層間変位角Rmaxを使って,次式
によってその上限が近似できる.
’Opmax=min{Ema』K,1.5(Emax-Ry)}(1)
上式で,Ryは,弾性解析においていずれかの梁端の曲げモーメン トが最初に全塑性モーメントに達するときの層間変位角であり,
未知の時には次の近似式が利用できる.
R,薑六/書(2)
上式で,/は梁断面の形状係数,oyは降伏応力度,Fは許容応力
度の基準値である.
[2]各回の塑性回転角増分の最大値40,…は最大塑性回転角0p…
で近似できる.
△,pmax=epmaⅨ (3)
1.4 1.4
1.2 1.2
1.0 1.0
1357913579 (e)S1
螢i莊鍔調;J;I M/Mp
---F戸q引一F2eylゴーャ
10.I01--,-」-LJ-L-L」-」
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託砺=蝋
1.6 1.6
鮒と繊難i J繊li軸Ii
II1IlII11IllIIIlcvcle
什卜i十H-il-i十l-H十卜++十
1.4
1.4 pSCbRd9do6RdqA ID■曰IⅡⅡⅡ1日。□
4-l-l4-l-I4-糾一I-l」‐l-HI坤
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-l-i-卜什汁i'十什什i十+++
’’’’’’’''’1lllllcycle
1.21.2
1.0 1.0
’35791113151719
M/Mp (DS2
’35791113151719
(b)L2
M/llfp
(譲而
1.6 1.6
1.4 1.4
1.2 1.2
1.0 1.0
13579
(9)83 M/Mj。
13
M/Mp
57911
(c)L3 しかし,図5の9回の塑性図5各回の塑性回転角増分
回転角増分の発生順序を特定
するような特別な知見はないので,これらの塑性回転角増分を任意 に並べる組み合わせの内で,最も梁端の応力上昇率が大きくなる並 び方を想定することによって,梁端の応力上昇率の上限を近似する ことにする.
まず,9回の塑性回転角増分を任意に並べるすべての組み合わせ の内で,上記[2M4]の条件を満たし,かつ,すべての塑性変形増分 を活用して梁端の応力上昇が起こるように,すべての塑性変形終了 時の塑性回転角は最大塑性回転角となるものを選定した.この条件 を満たす塑性回転角増分の並べ方は10226種類ある.
1.6
1.6
純一 》》』川 。。一・一一実解 Ⅲ幟Nn-NH行 ‐‐帝91-‐‐》‐‐1-1
1.4 1.4
1.2 1.2
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1.0 1.0  ̄~~r---r- ̄~r ̄ ̄-1 ̄ ̄ ̄ ̄I ̄ ̄-句一一一句一一一 IUIIIOo
Illlllcycle 2345135
(d)L4(h)S4 図4各サイクルの最大曲げモーメント
1 7
-37‐
01IIL
0000J一
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最大回転角Omaxが全塑性モーメント時の弾性回転角06Jの2,4,6
1.6倍となる3つの場合を対象に,上記10226種類の並べ方について,
梁端の応力上昇率Mmax/Mpを算定した.片持ち梁の材長,断面形 状,鋼材の材料特性はすべて前章で参照した実験値(Lシリーズ)と 同じとしたが,ここでの解析では部材のせん断変形は無視してい る.せん断変形を無視すれば,Omax/06yと応力上昇率MmajK/Mp との関係は材長の影響を受けない'5).せん断変形を無視しているの で,全塑性モーメント時の弾性回転角06yは次式で表される.
MpJ (4)
06J=す177
上式で,Zは片持ち梁材長であり,Iは断面2次モーメントである.
最大回転角O…が全塑性モーメント時の弾性回転角e6yの2,4,6 倍とした各場合について,塑性回転角増分の並べ方によって変化す る梁端の応力上昇率Mmax/Mpを累積度数分布の形で図6に示す.
図6によると,最大回転角が大きくなるほど,塑性回転角増分の 発生順序による応力上昇率の変動が大きくなる.最大回転角が
206yのときは,塑性回転角増分の発生1''百序による応力上昇率の変動 はほとんどないが,最大回転角が606yのときは,塑性回転角増分 の発生順序によって応力上昇率は0.1近く変動する.
図6に示した各最大回転角について,応力上昇率が最大となると きの塑性回転角の履歴を図7に示す.履歴A,B,Cはそれぞれ最大回 転角が206J,406y,606Jのときに応力上昇率が最大になる履歴で ある.3種の履歴に共通するのは,まず,最大塑性回転角付近に到 達し,その後塑性回転角は最小値(逆方向曲げの最大値)をとり,
1.4
1.2
1.0
0.8
2468
図8各履歴による応力上昇率 0
101.
1.
1.
1.
0 gh
0図9定振幅繰り返し載荷との比較 最終的に最大塑性回転角に至っていることである.
表1には,3種の履歴について,3種の最大回転角に関する解析 における応力上昇率を示している.履歴B,Cによる応力上昇率は,
ここで行った3種の最大回転角に関する解析の何れに対しても最大 応力上昇率近傍の値をとっており,その差違は計算機の丸め誤差程 度と認められる.一方,最大回転角が206yのときに最大の応力上 昇率を与える履歴Aでは,最大回転角が大きいときの応力上昇率は 他の履歴に比べて小さな値となっている.これら3種の履歴の何れ かが常に応力上昇率の最大値を取るという保証はないが,履歴B,C のどちらも3種の最大回転角に関する解析のすべてについて応力上 昇率の最大値近傍の値を取ることから,これら3種の履歴による最 大値によって任意の履歴を取るときの応力上昇率の最大値を近似す
ることにした.
3種の履歴について,最大塑性回転角と応力上昇率の関係を図8に 示す.ただし,1次元有限要素法では,塑性ヒンジ回転角に相当する 計算値はないので,最大塑性回転角ePmaxは次式で算定している.
.…雲,…一等,町 (5)
図8によると,履歴B,Cの結果はほぼ一致しているが,履歴Aは最 大回転角が大きくなると他の履歴より応力上昇率が小さい.
図9には,3種の履歴の最大値を実線で示し,両振り定振幅で 行った繰り返し載荷の解析結果と比較している.定振幅の解析は弾 性限回転角06yの整数倍で行っており,1/2cycleと記した◇印は初 期載荷時,2/2Cycleと記した○印は最初の負方向載荷時,maxlmum と記した□印は5cycleの間の最大値である.本研究で応力上昇率の 上限の近似値とする3種の履歴の最大値は,〃2サイクルと2/2サイ クルの応力上昇率の中間程度の値となっている.
4.2応力上昇率の評価法
図10は図9と同様の比較を実験値に対して行ったものであり,3 分布
08642
●00●●10000
0,万 1.11.2h1.3 図6応力上昇率の累積度数分布
●●●●●
『□0{(皿叩》(叩叩)〈叩u)〈叩叩)
08642024●00●●●●1000000』P
●●●●●
『ロロ((皿叩》(、Ⅲ〉《困叩u》(叩叩》
●●(皿叩〉》〈四m一)
』』●●(叩叩〉(曲叩)
』。(a)履歴A,206y (b)履歴B,48by に)履歴C,606y 図7応力上昇率が最大となる塑性履歴
表1各履歴による応力上昇率
206の解析40bの解析686の解析 履歴A102510311367501240324
歴B102507311710461286716 履歴C102507311710451286720
-38‐
6
4
20
帝 24681
麺
2
鯉
4 24
,〆
206y
仏
「I
一一一一一一』』』
ソM壜;巖,M。
20byの解析 40
byの解析 686yの解析
履歴A LO25103 1.136750 1.240324 履歴B 1.025073 1ユ71046
豆
1.286716 履歴C 1.025073 1.171045 1286720
〃
maX/〃
p/
>>参 盃
/
多二
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---...-}・---.
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PG■■
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履歴A 履歴B 履歴C
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wUUI-Il0千000
一l0lIIjll0「00|Ⅱ一一■■■IJIIITII0-0JIIITII0一一 ’000」000横’000-』一一表2断面形状
1.
1.
890299152318115
912302183418114
388402151522111498432457022121
1.1.
1.6
0.
9t
0図10実験結果との比較 1.4
1.2
1.0
0.8 0246810
図12応力上昇率に及ぼす断面形状の影響
適当ではないが,形状係数、フランジとウェブの断面積比・フラン ジ厚と断面せいの比などが極端な値をとる例として用いている.
4種の断面について,前節の方法で求めた応力上昇率を図12に示 す.なお,材料特性は,すべて実験値と同じ値を用いている.図12 からわかるように,断面形状が応力上昇率に及ぼす影響は小さい.
4.4応力上昇率の評価式
ここまでの解析では,材料特性は文献10)の実験値に基づいた値を 用いているが,この鋼材は降伏比、が小さく,大きな歪硬化特性 をもっている.材料特性が,応力上昇率に及ぼす影響を検討するた めに,降伏比YHを0.6,07,0.8の3種,歪硬化係数丁を0013,0.01, 0.007,0004の4種の計12種について,ここまで述べてきた方法で 応力上昇率を求めた結果を図13に示す.ただし,断面形状は3章の 試験体と同じである.
梁端の応力上昇率は図13の2本の曲線の大きい方の値を取ること によって得られるが,降伏比rR,歪硬化係数Tによって応力上昇 率はかなり変化する.図13の結果を利用しやすくするために,2本 の曲線を包絡する直線の近似式として次式を導いた.
5 104UL 10
図UBilinearモデルを用いた解析結果と実験結果との比較 種の履歴の最大値を太線で示し,3章で述べた実験結果と比較して いる.1Kモデルを用いた応力上昇率の解析値は,最大回転角を
40y,60yとした実験の1/2cycleと2/2cycleの応力上昇率の間に ある.一方,最大回転角がMyの実験値は1Kモデルを用いた応力
上昇率の解析値よりすべて大きくなっている.
図11は,応力度一歪度関係に移動硬化型のBinnearモデルを用い た解析結果で,Lシリーズの初期載荷時の実験結果と比較してい る.ただし,解析に用いた降伏応力度,歪硬化係数は1Kモデルを用 いた際と同じとした.図11に示すように,初期載荷時の実験値は,
Bilinearモデルを用いた解析結果によって精度良〈近似できる.
図10中の細線は,Bilinear形応力度一歪度関係を用いた単調載荷
時の解析結果である.最大回転角が20yのときの実験値は1/2cycle と皿Cycleの応力上昇率に大きな差違はなく,いずれもBilinear形 の応力度一歪度関係を用いた解析値と近い値を取っている.
梁端の曲げモーメントが繰り返し硬化の影響を受けて上昇すると きには,Bauschinger効果も当然現れるので,1Kモデルの使用が適 当であるが,1Kモデルを使うと,最初の変形によって最大曲げモー メントに到達するときには応力上昇率を過小に評価する.したがっ て,図10に示した2本の曲線の大きい方の値,すなわち,単純な移 動硬化型のBilinear形応力度一歪度関係を用いた単調載荷時の解析 結果と,繰り返し硬化を考慮するために1Kモデルを用いた解析結果 の大きい方の値で,応力上昇率の上限を近似することが適当と判断
した.
4.3断面形状の影響
以上の解析では,梁の断面形状はすべて文献10)の試験体の寸法を 用いてきた.ここでは,断面形状の影響について検討する.ここで 利用した断面形状は肌表2に示す4種である.断面3,4は梁として
坐-105緤擶仙売)帯 Mp (6)
(6)式の直線は,図13中に鎖線で示している.図13によると,(6)
式は最大塑性回転角が大きいときや,零近傍で,ここまでの解析か ら求めた2本の曲線を大きく上回るものとなっているが,この点に ついては以下のように考えている.
(i)最大層間変位角が弾性限層間変位角Ry程度であっても,動的な荷
重分布の変動から梁端には比較的大きな塑性変形が生じる場合が
あり,(1)式による最大塑性回転角epmaxの予測値が零であって
も,1.05程度の梁端の応力上昇率は想定する必要がある7).
(ii)図13(a),(e),(i)の例のように,(6)式が応力上昇率を過度に大き く評価するような大きな最大塑性回転角は,適切に耐震設計され た鋼構造骨組では想定し難い.また,応力上昇率が降伏比の逆数 1/YIFを超える領域も考察の対象外と考えている‘
-39‐
6
4
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■●●●●●01110000 0
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30●0
… 20●010
●0
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形状寸法(m、)
,
B 21 オ2 ’勺形状係数
/ 断面1
890299
15 23 18 1ユ5断面
2 912 302 18 34 18 1.14断 一
3388
402 15 15 22 1.11断面4
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70 221.21
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、
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〆鍾宮二 =ノ =ど鷺 彦彦=
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5.地震応答解析結果との比較 5.1応答解析の概要
解析骨組および入力地震動は文献8,9)でも使用した15の骨組,
40の強震記録である.骨組の層数は2~12で,柱梁耐力比が概ね 1.5程度以上の骨組である.各層の梁端のうちで最も応力上昇率が大 きくなる梁端だけに対象を限定したので,15の骨組の90の層の40 波の地震に対する計3600の梁端の応答が考察対象となる.
部材の要素分割は,前章まででは片持ち梁を15の要素に分割して 解析していたが,ここでの解析では演算時間を考慮して梁半分を図1 の5要素に分割して解析した.柱は,要素長の比が1:2:4:2:1に なる5要素に分割している.なお,梁中間には節点を設けて,鉛直 荷重を作用させている.
片持ち梁を5要素に分割したときの解析結果と15要素分割による 解析結果を図14に比較する.解析条件は図3(a)のL1試験体と同じ である.15要素分割の方が曲げモーメントが若干大きくなる傾向が あるが,その差違は図14では判別できない程度である.
地震応答解析では,部材の弾性せん断変形も考慮し,接合部パネ ルは弾塑性のせん断変形を生じるとして解析している16).
表3鋼材の機械的性質
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4章で述べたように,梁端の応力上昇率は,1Kモデルを用いた解 析結果とBilinearモデルを用いた解析結果の大きい方の値として評 価するのが適当であるので,ここでも1KモデルとBiUnearモデルの 両方について解析した.
建築用鋼材の材料定数については,表3に示す統計資料が文献17)
に報告されている.解析では,引張強さは統計資料の平均値を用 い,降伏比の影響を検討するために降伏応力度は平均値±標準偏差 の2種類を用いた.解析骨組の一部の柱に利用されているBCP材に ついては統計資料がないが,SN材と同じとして解析した.歪硬化係 数も0013と0.007の2種類としたので,計4種の材料定数につい て解析している.
52解析結果
1Kモデルを用いた応答解析結果を図15に,Bilmearモデルを用い た応答解析結果を図16に◇印で示す.これらの応答値を図示する際
に用いた最大塑性回転角Opmaxは,最大層間変位角Rmaxを使って (1)式で求めた推定値である.最大塑性回転角Opmaxの無次元化に用 いた弾性限回転角06yは,反曲点が梁中央であると仮定して算定し
た値であり,スパン長Lと梁せいりの比から算定できる.
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また,図15,16中には,本論で提案した応力上昇率の上限値(6)式 を鎖線で示している.なお,図のサブタイトルに示した降伏比XR はSN400Bに関する値である.
1Kモデルを用いた応答解析結果を示した図15には,さらに4.1節 の方法で求めた応力上昇率の予測値を太線で示している.ただし,
梁にはSN490Bも多用しているが,鎖線で示した(6)式による予測値 を含め予測値の算定には,SN400Bの降伏比を用いている.
最大塑性回転角Opmaxの算定に用いた弾性限層間変位角Rjは,
弾性解析において梁端の曲げモーメントが全塑性モーメントMpに
達するときの値であり,1Kモデルを用いた解析では,これよりかな り小さな変形で降伏が始まる.したがって,図15では,最大塑性回
転角OpmmKが零近傍で応答値は太線の予測値を超えるものが多い
が,鎖線で示した(6)式の予測値を超えるものはごく少数である.
Bilinearモデルを用いた応答解析結果を示した図16には,
Bilinearモデルを用いた単調解析による応力上昇率を太線で示して いる.応答値の大部分は,大線の直下に集中しており,太線より大 きな値を取る鎖線を超えるものはごく少数である.
骨組中の梁の曲げモーメント分布は,梁中間荷重の影響で反曲点 は部材中央にない.しかし,図15,16に示すように,反曲点が梁中 央であると仮定して求めた弾性限回転角06yを用いても,(6)式によ
る応力上昇率の予測値は,1KモデルとBilinearモデルを用いたいず れの解析結果に対しても,応力上昇率の上限を近似する値となって
いる.
えている.なお,本論では歪速度が降伏応力度などに及ぼす影響は 無視しているので,本論の結果は歪速度依存性が高い鋼材には利用 しがたい.また,本解析は,局部座屈や横座屈などの不安定現象を 無視したものであり,これらの不安定現象を生じる梁材では,応力 上昇率はここで述べたより小さくなる可能性がある.
謝辞
本研究は,科学研究費補助金(基盤研究C)の助成を受けて行い ましたまた,本研究を進めるにあたっては,京都大学防災研究所 助教授吹田啓一郎先生から貴重な実験データを頂きました.
参考文献
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2)澤泉紳一・中島正愛:鉄骨骨組の地震応答に及ぼす柱梁耐力比の影響(その 2:柱の塑性化を許す鉄骨骨組の地震応答),日本鋼構造協会鋼構造論文 集,VOL6,N0.23,pp、133-148,1999.9
3)前田患太郎・増田浩志・田中淳夫:実在中低層骨組の耐震性能に関する研 究,日本建築学会構造系論文集,第558号,pp205-210,2002.8 4)小川厚治・井上-朗・中島正愛・澤泉紳一:梁降伏型鋼構造ラーメン部材の
必要塑性変形性能に関する研究,日本建築学会構造系論文集,第537号,
pp、121-128,2000.11
5)小川厚治・横山則幸:鋼構造ラーメン骨組の梁の必要塑性変形性能に関する 研究,日本建築学会構造系論文集,第547号,pp、177-184,2001.9 6)日本建築学会:鋼構造接合部設計指針,2001.11
7)日本建築センター:鉄骨梁端溶接接合部の脆性的破断防止ガイドライン・同 解説,2003.9
8)小川厚治・中原寛章:強震を受ける鋼構造ラーメン骨組の梁に生じる塑性変 形(その1:最大変形),日本鋼構造協会鋼構造論文集,Vol10,N0.39, pp、89-104,2003.9
9)小川厚治・中原寛章:強震を受ける鋼構造ラーメン骨組の梁に生じる塑性変 形〈その2:履歴挙動),日本鋼構造協会鋼構造論文集,Vol、10,N0.39, pplO5-120,2003.9
10)吹田啓一郎:鋼構造ラーメン骨組の耐震設計における梁端接合部の耐力要 求値,日本建築学会構造系論文集,第567号,pp、165-171,2003.5 11)山田稔・辻文三:鋼材の応カー歪関係に閲する研究(I:等方十移動硬化
モデル),日本建築学会論文報告集,第270号,pp、17-22,1978.8 12)藤本盛久・和田章・白方和彦・小杉立:筋違付鉄骨ラーメンの弾塑性解析
に関する研究,日本建築学会論文報告集,第209号,pp41-51,1973.7 13)R・Tanabashi,T、NakamuraandSIshida:GravityEffectonthe
CatastrophicDynamicResponseofStrain-HardeningMulti-SoryFrames,
Proc・of5thWCEE,1978.6
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15)立山英二・斎藤俊樹・吹田啓一郎:溶接柱梁接合部の履歴挙動と梁長さの 影響,日本建築学会大会学術講演梗概集,C-1繊造、l,pp、809-812,
2001.9
16)小川厚治・多田元英:柱・梁接合部パネルの変形を考慮した静的・動的応 答解析プログラムの開発,日本建築学会第17回情報システム利用技術シン ポジウム論文集,pp79-84,1994.12
17)志村保美・高田啓一・作本好文・塩飽豊明・藤沢一善:SN鋼の機械的性 質に関する統計調査,日本建築学会大会学術講演梗概集,c-1構造、,
pp、535-536,2003.9 6.結論
本論では,骨組設計の初期段階で地震時の最大層間変位角が指定 されることを前提として,、最大層間変位角から梁端の応力上昇率を 評価する方法を解析的に検討した.その結果,梁端の応力上昇率 は,(6)式によってその上限が近似できることを示した.この結果を 用いることによって,梁端接合部の合理的な設計が可能になると考
-42‐
_輕至も