磁気軸受における高剛性化の研究
著者 原 外満
雑誌名 博士学位論文要旨 論文内容の要旨および論文審査
結果の要旨/金沢大学大学院自然科学研究科
巻 平成10年6月
ページ 63‑67
発行年 1998‑06‑01
URL http://hdl.handle.net/2297/16118
原外満 氏名
生年月日 本籍 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件
富山県 博士(工学)
博甲第229号 平成9年9月30曰
課程博士(学位規則第4条第1項)
磁気軸受における高剛性化の研究 学位授与の題目
(主査)松村文夫
(副査)佐藤秀紀,岩田佳雄,山田外史,藤田政之 論文審査委員
学位論文要旨
TbimproveStiffnessonActiveMagneticBearings[A、MB],themoreimportantltemsareasfbllow・
LQuickresponseoftheElectro-MagnetAtructiveForce 2.SensorStagestabilitylorvibrationshield
aTheParfectSurfaceoftheSensortarget,otherwize,
roughnesscancellerandroundnesscancellerisnecessary
Atthelstitem,thereasonofslowresponseisthegenerationofeddycurrentinthecorematerial、
Tbavoidthisproblem,twomethodsareexaminediExchangetheCoreMaterial,andAdaptingflux localfbedback・Theseshowgoodresponserespectivelyabout4-5times・
The2nditemisduetothecouplingbetweenpositionsensorandelectro-magnet,Thereactionofthe
atructivefbrceproductsalittledisplacementofthecasing・Thenittransmittothesensorstageand excitetheresonancevibration、Thesystembecomesunstablebytwoparameters:reactioncoeflicient andvibrationdecayratioTbshutdownthetransmissionofthereaction,thepositionsensormustbesetontheheavyplatten,
andrubbersheetisefYectiveOfcourse,thisisnotperfect,though,thesystembecomesstableenough
togethighgainfeedbackThe3rditemiSimportantfbrhighstiffilessspindle・Because,therotorstartsrotation,itgenerates
bigsoundaccordingtotherotationspeedThesensortargetroughnessorroundnessisgreaterthan0.3
〃m、Generallyspeaking,precisionspindle,srunoutislessthan0.1“mp-pSo,thistypeofcancelleris
necessary・The3-pointmethodisadaptedonthisapparatus・Thiscancalculate256thorderharmonicsoftheshapeThesettinganglesamongthreesensorsareverynarrowtogethighordercompornent
exactly、Thesenewtechnologyoperategood,andhighstifInesscanbegottonhigherthanlOkgf/似、,and
widecontrolablefrequencyrange,DC-1kHz.
磁気軸受は、従来の軸受には無い優れた特徴により特殊な用途に幅広く使用されている。近
年、工作機械の回転軸に適用され始めているが、適用例はまだ少数である。
工作機械の回転軸には、高速回転、高剛性、高い回転精度が要求される。工具で主に鉄を主体
-63-
にした材料を加工するには、数kgf〃mの岡I性が要求されるが、現在の磁気軸受はこの剛性を
必ずしも満足していない。剛性を上げるということは、制御系の負帰還利得を増大させることである。負帰還利得を増 大させると、系は不安定になり易く、ある程度以上の高い利得設定はできない。この原因を中 規模スピンドルの試作機(回転軸長さ300mm、質量10kg程度)で明らかにすることを試みる。
従来機の安定制御領域は約DO200Hz、動剛性最小値0.3kgfノリmである。このテスト機の特徴は タッチダウンベアリングを使用せず、空気軸受で軸を浮上させている。このために、電磁石は浮 上力を発生する必要がなく、コイル電流の非線形性に煩わされることがない。さらに、空気さえ 供給すればいつでも0.1匹、以下の繰り返し精度で同じ位置に浮上するために、制御器の利得
を非常に高くすることができる。
不安定になる第一の理由は、電磁石の応答性が十分高くないことである。特に吸引力の応答
性は、コイル電流の応答性に比較して数分の1である。この差は、コア内に発生する渦電流で
ある。したがって、コイルの巻き数を減らすという対処は十分な効果を発揮できない。従来、回 転軸に嵌め込む磁性材料は十分な検討がなされ、機械的にも電気的・磁気的にも最良の材料が
使用されてきた。しかし、電磁石固定側(コイルを巻いて磁力を発生する部分)では、製作上の困難性もあり、比較的厚みのある薄板鉄板が用いられる6鉄損では、回転側に比べて固定側は非 常に小さい。しかし、制御性という点から見るとコイル電流に対する力の遅れは、本質的に望
ましくない。この解決策の一つとして、電磁石コアの材質をフェライトに変更した。スラスト固定側、スラ スト回転側、ラジアル固定側、ラジアル回転側をすべてフェライトに改造した。ただし、全く同 一の寸法にはできない。これらの電磁石で磁気軸受を構成し、性能、特に剛性を測定し、単純
な制御則が、今までは不安定で適用不可能であった10kHz付近でも正常に成り立っていることを確認した。しかしフェライトコアの短所は、最大磁束密度が鉄材に比較して1/3であること、
割れやすいことがあげられる。
次に電磁石の力の応答を速める第二の手段として、局所的磁束密度負帰還を試みた。薄板鉄 板であっても、磁束密度負帰還は良い効果を発揮し、吸引力の応答性は数倍向上した。渦電流は 磁束の変化を緩慢にするが、それ以上の急勾配電流変化を局所負帰還が作り出していることに
なる。したがって高い周波数の連続運転は渦電流損失を増加させる。
次の図に、電磁石空隙内の磁束密度の周波数応答を示す6コイルにバイアス電流を適度に流し
ておけば、吸引力と磁束密度は比例すると見なせる。左側はフェライトコア、右側は珪素鋼板コ
アに磁束密度負帰還を施したものである。右図実線は、従来のもの、破線は磁束密度負帰還の 場合である。いずれも10kHz以上の応答が得られている。2-3kHzまで、進み位相を実現できる。00024-ps-q己ゴ》一一・三く 一二勺へロで。【.oで。三QBく
IUIIUIIDIUUUUIuuUuuUuI IUuIIuuUⅡⅡIUnUIuIIuUuI UIUIIIIIUUUIⅡIHIIUDUU
---L---』--』-」-JL」‐----十---トーl+-1トH1lIlllllIⅡⅡIIIUU
-ゴ計Flu工De塵utyr℃edbBck1111’’’1ⅡUIHIIUIUIIIUIIIUUIUUU lUIUIUIIUIIIIIIIUUIUUI IIUUUUUIIUUIIIIUUUUIIU
lklOk
Erequency[HzI look
100 100 lklOk
EY巴quency[Hzl look FbrriteCore Si-FbCorewithFluxfeedbaLk
Fig lTheF1uxResponse
-64-
U ■、、■■、■
IOOIIOOO
Ii~ ̄ iiT
・・゛OUUDUI
CoilCur定ntEbedbackl
-0000000100
UUUUUU 000000 000000 00BBDO 00000
00000 00000
2QO●Q ri~|~l-LLi 00000000UOOOOOOOOOn■■ロ■■
DB 008DB 00000
F1uxI
0IOOI OOlOO OOOOU
===二二-し 0---L-L
00 0000
~7-1~「?。
)e塵ityF℃edback
0000000 8000010 0001000
000000 010000 000000
TI、.'、Lii
8IIOIl OOOOOI
●PG●0ロ
0IIIOO OIIIOI
IIIIIlO IIIIIOI
---HInnnol 01IIII
IIIOOI IlIIII
0IIIII IIIOIO
IIIOIO ~i<MII
UUUBOO IOIIII 100101
UUUUUU IOOIII
OIIIII
||榊
,1NIIIIIOII OIIOII8I OB■ロQQnB
IIOIIIII IIOIIO1I DDDOHBO、
ロ マ□▽ローく
む や
11IlIIII IOOOIIII nDODロ■、ロ
系が不安定になる第二の理由は、機械構造の共振にあることは、よく知られている。振動モ ードによって、腹と節の位置が変化するため、センサ・電磁石の効果的な位置が固定できない。
低次のモードならば、制御系の応答性を高めることで、安定で負帰還利得の高い制御系を実現
できるとされている。しかし、センサの支持の仕方によって、制御力の反作用が伝播してくる場合は、低次の振動モ ードであっても系が不安定になり易いことが判った。二つのパラメータ:反作用の伝播係数αと
、センサ支持台の振動減衰率入とによって安定性を判定することができる。この二つが決まれ
ば、系がスピルオーバしない負帰還利得の最大値が決められる。センサが制御力の反作用を受 ける限り、負帰還利得を増大させていくといつかは系は不安定になる。もし、完全に宇宙空間 に固定されたセンサがあれば、アクチュエータの応答周波数まで、系の安定性を確保しながら、剛性を上げることができる。本研究において、センサ支持台の質量を極めて重くし、振動遮断 材を挟むことによって、系は非常に安定にすることができた。これにともなって、制御器の利得
を十分増大させ、剛性向上を図る゜
この二つの対処によって、従来はラジアル方向においては、0.3kgf〃m以上の剛性では不安 定になった系が、13kgf/“mの剛性でも安定な浮上を実現している。制御可能周波数範囲も、従 来のDC-200Hzから、本方式のDC-1kHzと広くなっている。系の仕様的短所はダイナミックレン ジが狭くなったことである。これには、制御器を最初から設計し直さなければならない。
次に、このように剛性が上がってくると、センサターゲットの形状が問題になる。磁気軸受は
、センサターゲットの表面位置を基準にして位置制御を施す系である。つまり、系は回転軸を表 面形状になぞらせるために、形状が完全な円で無い場合は反って回転精度を悪くする。
この不都合を回避するには、一旦センサターゲットの形状を測定し、そのデータをセンサ信号 から差し引く必要がある。そのために、3点法による真円度測定器の機能を取り付ける。3点 法は、回転軸の回転中心が変位しながら回転する場合でも正確にセンサターゲットの形状を求
めることができる。
従来の3点法の適用例では、12次高調波成分までのデータ取得が多い。本研究においては、
表面の小さな凹凸までも問題になるため、256次の高調波成分まで求めている。(外周1周に付
き〃×27Tの正弦波を、山成分と表現する)。このような高次成分を算出するには、12次のデータ
を取得する場合と同じセッティングでは、計算が発散し適当ではない。高次成分計算に適したセ ンサ設定角は、非常に範囲が狭いことを示すbこの範囲を守ることによって次の図に示すように 矩形状の波形が算出できる。次の図は、市販の真円度測定器と、本3点法による真円度測定を 示したものである。市販品の方は6rpmのテーブル回転速度である。当試験機の方は2000rpmでの測定である。
鼠I凧弧馴..、….一…..旨〃〃〃“
○7.0日。
。。.●P こ280DECEL9P '9.3-
庵西成、●XOOO0 4戸
6.9LL、
lOo ll・』LL。,6
(a)タリーーセンタ
RTH (c)本試験機(3点法)
Fig2MeasurementoftheRoundness
-65-
計算時間は数年前の計算機では数分を要したが、現在は0.05秒以下である。またA/D変換器 の変換時間は5“ecであり、2048スリットエンコーダで4000rpmまでデータ取得が可能である。
以上の3種の対策を施すことにより、大変剛性を上げることができた。寸法、その他はほぼ同 一条件として、従来の対策以前のシステム性能は、0.3kgf/“mであった。これ以上の負帰還利
得増加は系を不安定にする。現在のシステムは,13kgf/似mである。約40倍の向上が得られた。これ以上はやはり不安定に
なるが、その理由は、電磁石の応答性もさる事ながら、センサの周波数応答も(特にノイズを 減らす必要上、L.P.F(ローパスフイルタ、低域通過フィルタ)を入れざるを得ず、その周波数が 10kHzとなっている)問題になってくる。現段階ではこのように電子回路特性に起因する原因で 剛性アップのネックになっている。懸念される制御反作用遮断機能は、センサ支持台の質量を寿 十分大きくとれば問題は少ないと考えられる。次の図はフェライトコアの電磁石においてセン サ支持台の振動遮断を十分施した場合の剛性の周波数特性である。1kHzまで、回転軸を位置制
御することができる。0.1
O1
zhつ一x-遺巳揮臣一一切
mO
R FrGquenw[HzI
Fig、3ThestifTilesscurve
3点法の真円度測定部分は、大変実用上重要な働きを発揮している。このキャンセル回路によ り、スピンドルは非常に静かに回転する。この回路をはずした状態では、この剛性では非常に大
きな音を発生し、制御器の動作範囲を逸脱する。空気軸受支持の効果により、逸脱しても浮上は 継続し危険には至らない。(もちろん、空気軸受負荷能力よりも、磁気軸受の最大吸引力は小さく設計されている。)
次の図にこのスピンドルの回転精度を示すb左の図は多孔質空気軸受の回転精度であり、右図 は磁気軸受による位置負帰還を施した場合である。両方ともセンサターゲットの形状データを 差し引いてある。剛性は13kgf/“mである。20nmppの回転誤差がl0nmp-p以下に縮小されて いる。回転誤差の主な周波数は800-1kHzに存在し、この誤差を縮小するためにこのような高剛
性と帯域幅の広い制御が必要とされる。
l
’' ̄mi111uwl
R-Q5■P、■照■■■
Fig.4Therotationrunout
-66-
UUD
2000r・p。、 lNO 1M > SM
■
POD●」シ』
ロー
頤二
E’
Z』
弓F・‐,‐
■■■■■■■■■■■■■■
-12.
袴→I
5,m/d
ll
●
1V.
R- q51 ’Fロ単 、 5V ,A =5mhDJqP-、 Y
UUD
2000r.p・mouO INO9M > SM
●、
グョOp
●●
Ⅱ・9、⑤二
℃~
一日一冒 凶、●
、
0霧。$▽勺
宴
巨可円UU□
12.5nm/divDII
Rcp Q5I ’F。■ C 5V A =5mDJ、、 Y
学位論文審査結果の要旨
平成9年7月23曰に第1回学位論文審査委員会を開催し,提出された学位論文および関係資料につい て検討を加え,同8月11曰の口頭発表後,第2回学位論文審査委員会において協議の結果,以下の通
り判定した。
回転体を支持する軸受には,従来からの転がり軸受,空気軸受に加え,近年,磁気軸受も研究開発 され,一部の分野で実用化が進みつつある。本論文では,機械加工用高速回転機に磁気軸受を使用す る場合,当面急がねばならない重要な技術的事項は,(1)転がり軸受並みの強い剛性を得ること,(2)回 転精度の正しい評価をすること,であるとして研究に取り組んでいる。
電磁石に流れるうず電流に起因する磁束の遅れの問題,回転子側電磁石の強度の問題,センサター ゲットの真円度の問題,センサ支持台の振動の問題等が高剛性,高精度を得る場合に特に影響がある と指摘し,解析・検討を行ない,それらの問題の解決法を提案している。
最後に,それらの方法に基づき高精度スピンドルを設計・製作し,性能試験を行い,有効性を確認
している。
本研究の成果は,今後,磁気軸受を高精度超高速機械加工の分野に使用して行く場合に,極めて有
益なものである。
以上の内容を総合して本論文は博士(工学)の学位を受けるに値するものと判定する。
-67-