円 切 上 げ 問 題 と 対 策
小 川 密 一 目
次 一
︑ わ が 国 の 四 四 年 中 国 際 収 支 と 国 際 貸 借 動 向 二
︑ 円 の 価 値 三
︑ 切 上 げ 賛 成 論 四
︑ 切 上 げ 反 対 論 五
︑ 対
一︑わが国の四四年中国際収支と国際貸借動向 策
円切上げの是非を論ずる前に︑わが国の国際収支と国際貸借の内容を概観することとする︒
4 4 年中国際収支状況
(単位百万ドノレ) 額 │ 前 年 比 削 │ 増 減
付
国 経
営 と 経 済 際 1 収
, 1 3 7 2 , 1 8 5
経 常 収 支 1 .
支 1 , 2 2 3
3 , 7 5 2
支 収
易 貿
2 , 977 1 5 , 7 2 8
出
古川叫
J U 1
1
, 7 5 4 1 1 , 9 7 6
入 愉
7 6 ム
ム 1 , 3 8 2
貿 易 外 収 支
1 0 ム 1 8 5 ム 支 転 収 移
7 4 1 6 5
ム 長期資本収支
2 .
3 0 ム 1 7 9 短期資本収支
3 .
O 8 4
誤 差 脱 漏 4 .
1 , 1 8 1 2 , 2 8 3 1
2 , 2 8 3 1 6 0 5 総 合 収 支
5 .
1 , 1 8 1 金 融 勘 定
6 .
四 ;¥
2 8 1 1 , 内 1 , 4 6 3
(速報ベース) (季刊外国為替 1 9 7 0 年 3 月 p . 20.)
ム 外 貨 準 備 増 減
他 の
そ
四四年中の総合収支は︑黒字二二・八億ドル︑前年比一一・八億ドルの大幅好転となった
D
主たる原因は︑輸出の
上伸と︑外人証券投資の増加である︒
付) 貿易収支 輸出一五七・三億ドル(前年比二三
増)︑輸入一一九・八億ドル(前年比一七 M m
M m 増)で︑収支尻は黒字三七・五
億ドルと︑前年比五割方黒字幅の増加を示した︒
一七・二億ドル) (なお︑上記輸出中︑円借款︑延払信用等長期資本流出となるもの
品目別にみると︑テレビ
( 三
三 %
増 )
︑
(ラジオ(三八%増)︑テープレコーダー(四七%増)︑自動車(三八%
増)を中心とする機械(二六%増)︑鉄鋼(二七%増)︑人造プラスチック(五二
増)の増加が著しい︒ M m
他方輸入は︑鉄鋼原材料(一八%増)︑非鉄金属鉱(二三
増)がかなりの増加を示している︒ M m
ロ 貿易外収支
赤字二一了八億ドルで前年比 0 ・八億ドルの小幅悪化にとどまった︒旅行収支が悪化したものの︑貿易規模の拡大
に伴う付帯経賀および投資収益等の支払増加が比較的小幅であったためである︒
資本収支
十 す 長期資本収支は︑流出超一・七億ドルと五年連統流出超になったが︑前年比では小幅ながら
0 ・七億ドル好転し
た︒外国資本流入超一三・五億ドルで前年比五億ドル増(証券投資の記録的流入超七〆・三億ドルで前年比五億ドル
増︑外債発行の増加二・七億ドルで前年比 0 ・九億ドル増等)︑他方本邦資本流出超一五・二億ドルで前年比四・二
億ドルの増(延払信用の増加︑韓国︑パキスタン向け米穀借款供与︑
IDA
等国際機関への出資等)を示した︒また
短期資本収支は民間貿易信用の流入を中心に一・八億ドルの流入超となった︒
( 司
金融勘定
外貨準備三五億ドル(前年比六・一億ドル増)︑為銀対外短期バランス七億ドルの資産超(前年比一四・九億ドル
増)︑従って両者を合わせた対外短期ポジションは四二億ドルの資産超過となった︒
同 国 際 貸
国際貨借は一国の対外的な信用力を判断する指標とされているが︑わが国においては︑その公表は差控えられてい
るので推計が行われているにすぎない︒日経紙上掲載の貸借表により四四年末の情況をみることとする︒
円切上げ問題と対策
四
九
経 営 と 経 済
五 O 4 4 年 末 国 際 貸 借 表
(単位百万ドル)
l 金 額 l ! 増 減 前 年 比
争山唱
︐伊や巾
I 白
1 , 3 7 2 1 8 3 595 3 4 7 2 4 7 1 , 703 1 , 0 2 2 ( 7 6 6 )
7 6 6 0 5 3 , 0 7 5 1 , 295 6 9 211 3 9 7 676
ム 2 1
ム 3 7
ム 4 8 7
ム 6 4
ム 517
( ム 3 0 2 )
3 8 808 2 , 267 (日経 1 9 7 0 . 1. 4)
6 , 540 1 , 270 3 , 3 7 0 1 , 2 4 0 660 8 , 530 4 , 850 ( 3 , 5 0 0 )
1 8 4 3 , 496 1 5 , 070 6 , 012 720 1 , 000 2 , 800 1 , 1 8 0 60 252 5 , 780 290 4 , 1 0 0 ( 2 , 0 0 0 )
1 , 3 9 0 1 , 1 7 9 2 3 , 278 長 期 資 産
直 接 投 資 輸 出 延 べ 払 い 円 借 款 そ の 他 短 期 資 産
為 銀
(うちユーザンス) そ の 他 外 貨 準 備 高
合 計 長 期 負 債
直 接 投 資
外 債
借 款
証 券 投 資 延 べ 払 い ガ リ オ ア エ ロ ア 短 期 負 債
政 府・日 銀
為 銀
(うちユーザンス) そ の 他
合 計 資 産 わが国の総合的な対外債権・債務バランスは︑四四年中に約二三億ドル改善し︑四四年末で約三三億ドルの資産超
過となった︒対外短期ポジション四二億ドルより短期負債のその他一四億ドルを差引き長期資産超過五億ドルを加算 したものが大体において総合的な対外バランスとみられる訳である︒その対外バランスが二三億ドル改善したのに対 して外貨準備が六億ドル増加したにすぎないということは︑為銀短期バランスが飛躍的に改善したことによるもので
あ り
︑
等三億ドル減に大きく影響を受けている︒わが国の国際貸借は非公表とはいいながら︑外国の通貨当局においても︑ その主たる原因は当局の円シフト政策である︒前記表中の輸出ユーザンス等七・六億ドル増︑輸入ユーザンス
いかにわが当局が外貨準備の人為的削減をはかつても︑
借面よりの若干の外圧が避けられない情勢にある D かなりのところまで推計しておるもののごとく︑ この国際貸
一 一 、
円 の
ね 川 仰
IMF 加盟国は︑共通尺度として︑金または米ドルに対して︑自国通貨の為替平価
( I
M F
平価)を設定すること
が要請されているが︑乙の金または米ドルに対する円の価値について若干触れてみたい︒
付
日本の経済力と円
昭和四四年の日本の
GNP
は名目五九兆九千二二億円で依然西独を上回り︑自由世界で米国に次ぎ第二位とみられ
ている︒もっとも一人当りの国民所得は四四年度で四六万四千四 O 円︑約一千二百八九ドルと四三年度の一九位から
一 五
l 六位になる見込である︒それにしても︑めざましい急成長ぷりで国際的に高く評価されている︒産業の国際競
争力もいちじるしく強化され︑特に重化学工業の中でも加工度の高い造船︑自動車︑電機︑精密機械︑石油化学等付
加価値の高いものの輸出が増加している︒
ところが︑円の国際的地位は︑近年のわが国経済の高度成長にもかかわらず︑最近まで評価さ・れることなく︑逆
に 、
一九六七年末から翌年中頃までは︑円切下げル l マ!で円先物が売り叩かれることさえあった︒これが︑ その後
の外貨準備の急上昇で︑円切上げル l マ l に急転回したのであるから︑日本経済の実勢よりも外貨準備の上昇ム i ド
が為替相場を支配したという感が深い︒銀行間相場(月平均)の推移をみると︑ 一九六八年六月三六一円七七銭︑七
月三六 O 円四七銭︑八月三五九円一二銭︑一二月三五七円八一銭︑以来高原相場を統け︑本年三月三五七円五二銭と
一九六八年又坊を境として︑シーソーがグラリと所を変えたのである︒
な っ
て お
り ︑
円切上げ問題と対策
五
経 営 と 経 済
五 同
円の価値
最近︑円の価値判断のよりどころとして︑国際収支説(叶宮︑
H d
o O
吋 句
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吋 O
円 ︒
仲 間
口 開
討
F g
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H ∞ ω 仏)︑購買力平価説(冨
848
仏 句
︒ 円
︒
‑ m ロ
開
u a
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止 ︒ 円
5E ・ σ
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‑ ‑
H C
M M
)
がよく引用されてい
る︒乙れら古典的為替学説は︑金本位制下より第一次戦後の国際経済不安定時期にいたるそれぞれ異った歴史的背
景を有し︑勿論︑そのまま現代に適用されるものでなく︑その後︑その修正︑批判が行われてきているところであ
カッセルの購買力平価説についていえば︑第一は︑貿易が均衡している場合に存在する為替相場︑すなわち︑均衡 る
為替相場が基準として与えられること︑第二は︑この基準相場に物価水準の比を乗じて新しい正常相場を算定する場
合に通貨量の変化という貨幣的要因以外に何らの経済的変化がないこと︑すなわち実物経済面に変化がないことであ
この購買力平価説に対して次のような批判がある︒第一に︑基準年次における基準相場の決定そのものに困難があ る ︒
ること︒第二に︑購買力平価が実質的意義をもつのは︑価格が国内品部門でも︑輸出品部門でも一斉に比例的に変動
し︑相対的価格が不変である場合のみであること︒第三に︑外国為替需要の目的は︑特定の生産物に対する特定の購
買力を得るためである︒したがって︑為替相場が購買力平価と一致するのは︑輸出入が︑各商品について国民経済全
体の重要性に対応するような割合を示す場合のみである︒第四に︑実物経済面からの作用として︑賠償支払︑労働能
率︑資本移動などの変化から︑為替相場は購買力平価から手離する︒
現行為替平価との比較対象を統計的に明解に算定しうる技術的に可能な方法には違いないが︑小売物価指数による
か︑または卸売物価指数によるか︑また商品の選択により︑出て来る数字は一様でない︒従って物価水準から直ちに
円の価値を計測するのはむつかしい︒
国際収支説は本来︑実際に為替需給になって現われてくる経常収支の動向に重点をおくものであり︑基本的にはこ
れが為替相場に大きな影響を与えるわけであるが︑その他の諸要因として︑金利︑物価︑金準備︑信用等をあげてい
ヲ ︒ ︒
一九六五年より経常収支は改善を示し︑以来︑円は力をつけてきたとも見られる︒ただ︑国際収支説では︑均衡
レートの基本的数字を示すことはむつかしい︒
三 六 O 円という円平価決定の経緯は明らかでないが︑おそらく一九一七年の金本位停止時と一九四九年の平価設定
時 と を 比 較 し ︑ 日米の卸売物価の指数比較によって算出したものと推測される︒しかし︑戦後の日本の闇物価を考慮
すると︑三六 O 円は︑かなりの円の割高相場であったと思われる︒その後︑十数年この傾向は続いたと思われる︒
こ
の平価を堅持しえたのは︑第一に輸出競争力である︒もとより政府の助成策もあったとはいえ︑とくに近年では︑積
極的な設備投資が賃銀やコストの上昇をカバーして生産性を高め競争力を強めた口第二は︑有効強力な金融政策であ
る︒第三は︑強力な為替管理と保護貿易政策である口
各研究機関で︑円の購買力平価あるいは能率賃銀平価など試算が行われているが︑上記のように適確な数字を出す
乙とは至難である︒ただ︑円の価値は上昇傾向にあることは一般に認められるところであり︑ 乙れは結局︑十分な外
貨蓄積を背景として︑今なお輸出増加を中心とする経常収支の改善がすすんでいることによるものと思われる︒今の
段階では︑円価値の上昇は国際収支説によって説明されるといってもよいであろう︒
なお︑五月には外人投資︑ 八千余万ドルの売超し(四月一千余万ドル買超し)もあり︑円の相場は一円程度下落
し︑平価に近付いたが︑ 乙れをみると︑為替相場は︑目先の需給にいかに敏感であるかがわかる︒たとえ︑国際収支
の黒字は定着しているとしても︑為替相場は必しも定着しているとはいえず︑手ぱなしの楽観はゆるされないのであ
円切上げ問題と対策
エ L
経 営 と 経 済
五 四 る ︒
三︑切上げ賛成論
わが国の国際収支黒字基調を正常化する方法としては︑諸外国なみのインフレを容認するか︑平価切上げ策をとる
か二者択一であるとし︑前者のインフレを支持する説は少ないようであり︑したがって︑切上げによるほかはないと
するのが一般の説である︒海外の論説の中に︑日本の金︑外貨準備の急増は基礎的不均衡によるものであり︑国際流
動性を是正するため切上げは必歪であるというのがあるが︑これはむしろ︑わが国に対し自由化を迫る一つのゼスチ
ャーとも受取られる︒切上げのメリットとしてあげられる主なものを要約すると次の通りである︒
(
→
物価上昇抑制
輸入商品およびその加工品の値下がりは︑物価指数に直接抑制効果を与える︒また︑輸入商品の増加によりデフレ
的影響を生ずる︒
同 産 業 構 造 近 代 化
輸出入とも︑限界部門や低生産部門の整理転換を通じ産業構造の近代化を進める︒
国
輸入依存産業に有利
輸入原料を多く使用する産業︑すなわち︑石油︑非鉄金属︑紙パ︑飼料等は当然利益を受ける口また︑輸入代替産
業にしても輸入品中製品の占める割合は他国に比べると低いので︑その受ける打撃は比較的軽い︒
同
海外経費︑旅行滞在費等貿易外支払の負担が軽くなる︒
同
切上げ回避対案が多数だされているが︑決定的なものは少ない︒すなわち︑輸入の自由化にしても︑農業問題
のように政治的制約のあるものは︑各国同様︑当分期待出来ない︒また︑低生産部門の淘汰が行われ︑長期的観点に
立 て
ば ︑
日本全体の生産性を高め再び黒字増加要因となる︒民間ベ l スの企業進出の場合︑資材等の輸出となっては
ね返ってくるものが大分ある︒政府ベ l スの援助にしても︑供与国商品の購入という形で相当部分が戻ってくる︒円
ユ l ロダラ l の放出で外貨準備を削減し︑ウインドウ・ドレッシングをやっているが︑これは単に国際収
シ フ
ト や
︑ 支の金融勘定の振替にすぎず︑いずれ諸外国より実質的黒字の累増を指摘され︑円切上げを強く要請されるであろ
う︒当局の貿易︑為替︑資本の自由化施策はスケールが小さく︑かっ︑テンポが遅いので外貨増加に追付かない等で
あ る
賛成論の見解発表は比較的少ないようであり︑その一部を引用すると次の通り︒ ︒
(
→
野村総合研究所(日経四五︑二︑二
O )
イ ・
社会資本の充実を容易にする D
多すぎる国際収支黒字が︑インフレ圧力を強め︑景気政策的見地から公共投資の増加を押える結果になっている︒
また︑貿易収支の黒字は︑国内の貯蓄を海外に放出し︑その分だけ︑社会資本に回すべき貯蓄を不足させている︒
( ロ )
長期的には将来の国際競争力を強める︒
平価切上げは︑貿易収支の黒字幅を相対的に縮めるので︑国内の投資余力をふやし︑低生産性産業の近代化をうな
が す
仁 j ︒
村野孝氏(日経四四︑
一 一
、.../物価上昇の主大な原因は︑海外諸国のインフレによる輸入品の価格上昇と︑関税︑非関税両面からの輸入制限
で あ
る ︒ ( イ )
円切上げ問題と対策
五
ま
工
経 営 と 経 済
4 L J ¥
ーィ
﹂一 .︐ ノ
( ロ )
円切上げと貿易自由化とは二者択一ではない︒輸入︑為替︑資本の自由化には限度がある︒
日
建元正弘氏(日経四五︑三︑二)
円切上げシミュレーションにより︑経常黒字の縮少︑実質成長の達成︑物価安定が示されている︒
同
新聞陽一氏(東洋経済四五︑五︑
一 ム ハ )
所得分配︑資源配分の問題には財政政策︑経済の安定には金融政策を使いたい︒とすると︑国際収支の調整には為
替相場しか残らない︒
国
佐藤喜一郎氏(束洋経済四五︑五︑二三)
黒字対策の一つとして社会資本の充実ということがいわれているが︑物価高騰が日本経済のガンだといわれている
時に︑さらに︑過熱をあおるような公共投資の増大などやれるはずがない︒
円 可
n v ︑
ト
切上げ反対論
新聞︑経済誌等においては︑ 一般に反対論調が多く見られ︑とくに︑政府筋︑実業界の反対は強い︒その論旨は大
体同様であり︑現実的な取上げ方が多分にある D 反対の主な根拠は次の通り︒
付
輸出産業への打撃
切上げ幅︑輸出の弾力性如何にもよるが︑ 一般に輸出マージンが低いだけに︑被害は大きく︑かなりのショックを
与えることは事実であろう︒輸出の大宗である鉄鋼は︑製造原価に占める原料費の割合は約五
O M
m であり︑とくに︑
主原料の鉄鉱石は九
O M
m 以上︑原料炭も七
O%
以上を輸入に依存している︒その割合だけは原価率が低下する︒さら
花︑インパクト
? l
ンなどの対外債務が約一︑二
OO
億円あり︑切上げの割合に応じて為替差益を生ずる︒もとも
と︑価格競争力も大きいのであまり被害はないといわれる︒そのほか︑価格競争力の高いものとして︑二輪車︑テ
l
プレコーダー︑カラーテレビ︑電卓などがあげられる︒しかし一般的にいえば︑外貨建て価格の引上げをしても︑採 算は赤字となり︑数量も減少する︒同じく︑輸出の大宗である造船はこのところ好況ではあるが︑決済条件が延払い であるため︑対外債権︑および契約残が五
O
億ドルといわれており︑五%切上げられただけで︑九
OO
億円の為替損 を生ずることになる︒プラント類も約二八億ドルの対外債権がある︒輸出とは直接関係はないが︑海運業の場合は︑
造船なみに五
O
億ドルの収入見込であり︑これまた︑大変であり︑それに︑運賃は同盟で定められている関係上︑そ の引上げも困難なため︑収益はいちじるしく減少する乙ととなる︒カメラ︑ラジオ︑ミシン︑その他雑貨は︑プラン ドものは別として︑影響は大きく︑中小企業の中では倒産するものも出てくるであろう︒繊維品は︑とくに︑低開発 国との競争もあり苦境にたたされる︒かくして︑相当数の輸出産業は︑切上げ幅にもよるが︑大打撃を被ることとな
ヲ
h
v o
ω
物価への影響
イ ・
輸 出 面 円 が 切 上 げ ら れ た 場 合
︑ そ の 原 価 に い か な る 波 及 効 果 が あ る か 業 種 別 に 臭 る と 思 う が
︑ 大 し て 期 待 で き な い
︒ 他 方
一時に︑ドル建輸出価格を引上げるわけにもいかず企業の収益が食われるおそれがある︒
( ロ )
輸入面 卸売物価全体の中での輸入品のウエイトは七・三%といわれ︑
一次加工品にもスライドするとしても︑影響力は少 ないと見られる︒更に残存輸入制限︑利潤と賃上げに吸収される可能性を考えると︑
一般物価面への影響はあまり期
待できない︒
円切上げ問題と対策
五 七
経 営 と 経 済
五 J ¥
日
西独マルク切上げの場合との相違
( イ )
物価上昇の原因
西独は︑昨年一 O 月為替平価を九・二九
M m 引
上 げ
た が
︑
これは︑多年にわたる輸出超過の結果生じた輸入インフレ
による物価上昇がかなりの影響力をもっている︒日本の場合は︑消費者物価が主体であり︑輸入インフレは従である
と (ロ)思
わ れ
る
インフレ抑制効果
西独の卸売物価は︑今年一月には前年同月比上昇率は同五・八
M m で︑同月日本州四・四%︑ アメリカ同四・九%に
比すると︑かなり高い︒これは平価の切上げによっても︑物価の安定は得がたいことを示唆している︒黒字の幅︑期
間︑外貨準備等が︑西独と比較にならない程小さい現在において尚更である D
け
輸出競争力
西独の場合︑大半が機械類︑投資材︑化学品で︑半独占的なものが多く︑本年一 l 四月の貿易収支は昨年なみの黒
字である︒わが国の場合︑軽工業品が比較的多く︑ マージンも一般にうすい︒造船にしても︑世界の六 O 労を作って
いるといいながら︑造船業の経理内容はそれほどよくない︒
( ニ )
短資の流入
西独の場合は︑大体自由であるが︑わが国の場合は︑短資の移動は厳重な管理下にあり︑現在のところ︑株式購入
資金が比較的自由に流入可能という状況である︒
( ホ )
西独の貿易や対外債権︑債務は︑自国通貨建のものが多い D 日本の場合︑原則的に外貨建である︒
同
カナダドルの変動相場制
五月コ二日
IMF
は︑カナダが一時的にフローティング・レ i
トに移行したと発表した(従来は︑
一カナダドル
ー九二・五米セントの固定相場制)︒その理由とするところは︑外貨の流入が増加(現在の外貨準備は四二億米ド
ル)︑市場介入が困難となったこと︑国際通貨体制上の混乱を未然に防ぐためとしている︒直接の動機は︑外貨流入
によるインフレ防止にあるが︑カナダの場合は︑米国と隣接し︑商品と資本の移動が比較的自由であり︑かつ激しい
乙と︑季節的外貨増加対策としてとられたこと等︑日本の場合と大分事情が異っている︒
伺
黒字削減対策が先決
従って︑黒字削減対策にいかなる効果が期待されるかが問題となってくる訳である︒
反対論者の見解を一部紹介すると︑次の通り︒
(
→
一 ︑ 二 四 ) 高橋亀吉氏(東洋経済四五︑
M い 物価安定(二者択一のインフレ策)
世界的インフレ傾向により︑国際的物価水準は上昇している︒その中にあって︑わが国だけ上昇しないということ
は不可能に近い D わが国は貿易の依存度高くいわゆる輸入インフレの影響を受け易いので︑ある程度のインフレはや
むを得ない︒世界の水準なみの上昇であれば︑そのために特に切上げに走る理由はない︒
ロ 黒字幅の縮少
切上げによらずとも方法がある︒国内の総需要をもっと拡大し︑景気刺激策をとる︒輸出は減少し︑輸入は増加す
る︒黒字基調の現在乙そその好機であり︑道路︑住宅等公共投資に振向ける︒同時に産業投資も活発に行なうロ
仁 )
津田昇氏(国際金融四︑
五
わが国の外貨準備は本年三月末三六億ドルで︑本年度輸入予想額一七 O
億ドルに比べ二・七ヶ月分である︒西独
円切上げ問題と対策
五
九
経 営 と 経 済
六 O
五 ・
九 ヶ
月 ︑
アメリカ五・二ヶ月︑イタリア六・三ヶ月︑ フランス三・六ヶ月︑ベルギー三・二ヶ月分に比すると多
いとはいえない︒資本︑輸入の自由化により切上げは回避可能︒
国
下村治氏(東洋経済四五︑三︑七)
事業は大規模化︑長期化︑国際化しており︑為替安定が望ましいのは自明の理︒
同
日 経 社 説 ( 四 五 ︑
五
( イ )
多くの企業が急激に対外競争力を弱め︑回復までに長い時日を要す︒
( ロ )
産業構造の激変が不可避になり︑個々の企業に与える打撃効果は大きく︑ 企業経営に混乱を起すおそれもあ
る ︒ 同
三井銀行(日経五︑九)
円 切 上 を 一
O M
と仮定した場合︑貿易収支に与える影響については︑輸出額は四%減少︑輸入額は四・五%の増加 m
(いずれも外貨建)と試算している口物価︑経済成長に与える影響については①卸売物価に対しては︑一・二%程
度の引下げ効果があるが︑消費者物価に対しては︑ 0 ・五%ないし 0 ・六%の引下げ効果にとどまる︒
②
一・五%
(名目)の成長率鈍化をもたらすにすぎず︑名目一七・八%の成長を続けるわが国経済にとっては︑ それほど問題で
﹁ も ハ 1 0 J ' H '
的 v
OECD レ︑不ップ事務総長(日経五︑三)
OECD オクラント執行委員長(日経五︑二
O )
両者とも︑貿易資本の自由化が先決であり︑円の平価変更を必要ないとしている︒ OECD の目的からして︑当然
のことではあるが︒
国 文 オ
策 付)付
最近の黒字削減措置
輸出金利引上げおよび円為替の格上げ
輸出前貸手形割引歩合は年率五・二五
M m に︑輸出前貸手形を担保とする貸付歩合を五・五%に︑また︑外国為替資
金貸付金利は五%へと︑従来より一%引上げとなった︒同時に円建輸出と外貨建輸出との差別を撤廃した︒
( 五
月
五日より実施)︒これは︑貿易収支が構造的な黒字を達成した現在︑特に優遇策を続ける理由がないということと︑
欧米諸国の批判がきわめて強いためである︒なお︑円為替については︑円切上げによる為替差損を回避するために︑
円為替利用の勤きがあるのでこれに対処した︒
( ロ )
輸入金融優遇
日銀の円信用供与の方式は︑ ①日銀が為銀に対して新規輸入ユーザンス供与額の一五%に相当する金額を円で貸
出 す
②貸出金利は一般の公定歩合(国債などを担保とする貸付六・二五%︑並み手形担歩六・七五%)を適用
し︑期間は四ヶ月以内とする︒ ③外貨建期限付輸入手形適格担保(並み手形扱い)として認める︒この貸出は貸出
限度額の対象外とし︑ポジション指導上も配慮する乙とになっている(六月一日より実施)︒日銀はこの措置によ
り︑輸入金融の一部を外銀ユーザンスから邦銀ユーザンスに振替え︑輸入業者の金利コストを引下げると共に︑外貨
の急増防止に役立たせる考えだが︑その規模は四五年度中六億ないし七億ドル︑輸入業者の金利軽減分は年率 0
・ 三
ないし 0 ・四%(約四 O 億円)にとどまる見透しである︒従来の円シフトにかわり︑外貨準備削減に重点をおいた施
策 と
い え
る ︒
円切上げ問題と対策
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経 営 と 経 済
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ヤ サ
輸入担保制度の停止
輸入担保金制度は︑思惑的な輸入の防止を目的として︑二四年から外国為替および貿易管理法︑輸入貿易管理令に
基いて実施されてきた口乙の制度の仕組は︑輸入業者が外国為替銀行に輸入承認書提出と同時に現金︑債券︑定期預
金証書などの担保を提出︑承認後︑輸入金額の八
O M
m 相当額が通関した際に担保を返却することになっている︒昨年
の日米貿易経済合同委員会で︑米国が非関税障壁の一つであると︑その撤廃を強く主張するなど国際的な風当りも強
くなったのと︑思惑輸入がほとんど解消したことから︑国際収支の黒字が定着した今日︑すべての物資について実質
的に停止する乙とにしたものである︒通産省はすでに︑昨年一 O 月︑それまで五%だった担保率を一
M m に引下げてい
た︒制度そのものを廃止しなかったのは︑法律改正に手聞がかかることや︑万一︑国際収支が悪化した場合に︑同制
度を復活できる道をあけてお乙うというものである(五月一八日実施)︒
( ニ )
対外送金の制限緩和
海外渡航者の外貨持出枠を一人一回七 00
ドルよりて
000
ド ル に 引 上 げ た ︒
著作権使用料︑弁護士会計士の報酬︑信用調査費︑展示会見本市費用︑移住本邦人資産︑協会クラブ入会金会費︑
小額送金等の制限が緩和された c また在日外国人の持帰り財産の送金が自由化された︒
( 二
月 二
四 日
) ︒
( O
E C
D の資本自由化規約
の本項についての留保は撤回されることとなる)
( 五
月 一
日 )
︒ 体)
対外直接投資枠拡大
対外直接投資の自動認下限度は︑昨年一 O 刃一日︑三 O 万ドルまで引上げられたが︑近く一
OO
万ドルないし二 O
O 万ドルに再引上げするよう大蔵︑通産当局において検討中のようである︒通産︑良林側には︑
①現地の低賃銀によ
って生産された商品が逆輸入され︑わが国の中小企業を圧迫する︒ ②相手国の国産化によって輸出市場がせばまる
る ︒
②極度の衝撃には輸入制限で対抗する︒
①割安の商品の輸入により︑低生産部門の近代化と︑物価対策に資す
③東南亜各国に対しては恒常的な出超になっている︒④わが国の
等の消極論もあるようであり︑大蔵側は︑
直接投資残高は欧米諸国に比し少ない等積極的であるといわれる口
残存輸入制限撤廃の推進
ト )
四月一日付け輪入公表の一部改正により︑残存輪入制限品目は︑ 一一品目自由化された九八に減り︑自由化率は九
四%になった︒更に︑本年中に一八品目が自由化され︑本年末の輪入制限品目は八 O 品目となる予定である︒残り半
数以上は農産物であるから︑
川商社︑メーカーに対する外貨保有枠の拡大
昨年一二月一九日︑ これからの自由化はかなりの抵抗をうけるであろう︒
メーカーの一部にも適用することになり︑合計一億ドルまで外貨保有が認められることになっ
た 口 同
外貨準備削減措置
付)
円シフト
円シフトが︑現実に発生して問題化したのは昭和四一年で︑同年には︑内外金利がそれまでの伝統を破って︑円金
利が相対的に安い状態に転じ︑かっ︑わが国の企業等の手元流動資産が潤沢であったこともあって︑二 O 億ドルすれ
すれの外貨準備の状況下で円シフトが進行した︒次に四四年四月以降七月までの聞にも︑円金利安の条件があり︑か
つ︑日本銀行の外国為替銀行に対する資金ポジション指導の弾力的運用(対外外貨負債返済充当のため市場からの円
資金取入れによる外部負債の増加に対し)もあって︑ ユーロダラ l の返済︑外銀からの輸入ユーザンス借入の返済が
すすんだ c 九月に入り︑円資金の量が窮迫したため︑新たに︑ 日本銀行の貝オペレーション制により円シフトを促進
円切上げ問題と対策
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経 営 と 経 済
六 四
する乙とにした︒今回の措置の具体的方法は︑
①まず日銀は︑外国為替銀行に対し︑国債︑政府債︑金融債を期
間三ヶ月の売り戻し条件で買取ることにより円資金を供給する︒金利はコ
l
ル レ
l ト(月越無条件もの)による︒
② 外 国 為 替 資 金 特 別 会 計 は
︑ 乙 の 円 を 対 価 に 米 ド ル の 直 売 り
︑ 三 ヶ 月 先 買 い の ス ワ ッ プ 取 引 に よ っ て
︑ 外 国
為替銀行に米ドルを供給する︒スワップレートは差当り直先フラットとする︒
一 方
︑
③銀行はこの外貨をユ
l
ロ ダ
ラ
l 等
の対外負債の返済に充当するというものである(ただし︑本制度は一応本年一月打切り)︒かくて︑昨年中の円シフ
トは九億ドルに達したといわれる︒
国
商社側対策
J ・ 為替リスクの回避
輸出入の外貨建契約が均衡しておれば問題ないが︑現在︑大手商社では一般に外貨買持のポジションにある︒従 来︑鉄鋼売りの輸入為替リスクはメーカーの負担が多いので︑乙れを商社負担に切り替えようとする勤きが見られ
る︒短期ポジションは︑銀行に為替予約を求める乙とによってカバ l 可能であるが︑長期のものは︑自社マリーを計
る以外には今のところ手がない訳である︒五月二九日付日経紙によると︑三井物産が六月末に調印予定のオ l
ス ト
ラ
リア・ロ l ブリ l パ l 鉄鉱石の長期輸入契約に当り︑鉄鋼業界に対し︑為替リスク商社持ちに変更を要請している棋
様であるが︑鉄鋼メーカー側としては︑為替売持ちの形の方が現状好ましい訳であるから︑今後の成行が注目され る ︒
( ロ )
損失準備金等
構造的に輸出債権の多い企業は︑ 一度円切上げがあればお手あげの状態になることは明らかであり︑その対策とし
て︑為替損失準備金制度の創設︑設備等輸出為替損失補償法の復活︑輸出振興税制の存続等を要望している口しか
し︑いずれにせよ︑輸出関係業者は平価切上げに対しては︑現状無防備の立場にあるといえる︒
ヤ サ
円為替利用
為替リスクを回避するために︑輸出を円建で契約し︑円為替を用いて決済する方法がとれれば一番よい訳である
が︑先方との力関係により︑また︑円が基軸通貨でないことから︑現実には多くを期待できないであろう︒特に︑円
切上げのおそれがある時は︑円先物相場は著しく騰貴するであろうし︑たとえ︑円建になったとしても︑為替危険負
担に見合う分の値引要求がある筈である︒
同
今後の対策と問題点
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輸入政策
輸出の記録的な伸展により︑外貨準備の急増をまねき︑その対策として輸入政策が脚光を浴びてきたわけである︒
今までには︑輸入促進策というのはとられてないだけに足が地についていない感じである︒残存輸入制限品目数も既
述のように九八品目となったが︑まだ︑他国に比し多いので︑ この際︑更にその縮減を促進すべきである︒国内産業
保護の点から︑かなりの抵抗があることは予想されるが︑得られる効果の方が遥かに多いので︑制限品目を撤廃する
のみならず︑既存の自由品目についてもその増加を計るべく前向きの姿勢が望まれる次第である︒海外の商品が流入
した場合︑競争力の低い産業には優遇措置を講じ︑近代化効率化を図るよう指導し︑若し競争力がなければ他の産業
に転換するよう資金的援助を与える等事前の策が必要である︒労働力不足の折柄︑他の成長産業に転用する乙とも考
えられ︑また︑いずれ︑先は見えていることであり︑先に延ばせば延ばすほど事態は悪化することになるからであ
輸入を増加すれば当然のことながら相手国の購買力をふやし︑全体的に経済成長を促すことになる 特に︑東南亜 c る ︒
円切上げ問題と対策
六 五
経 営 と 経 済
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諸国とは片貿易の度がひどくなっているので︑是正しなければ非難を買うことになり︑貿易が縮小しないとも限ら
ない︒物価の面から見ても︑輸入の増大はそれだけ国内の需給関係に好影響を与えることであり︑新経済社会発展計
闘においても︑計画期間中に農産物を中心とする輸入制限品目を大幅に減らすことにより︑消費者物価上昇率を年平
均 0
・ 七
M m 引下げるという︒他方低生産部門の効率化にも役立つのである︒
目下︑政府︑日銀において︑徐々に︑輸入優遇策が打出されているが︑まだ︑微温的な感があり︑ それら施策が十
分効果をあげるよう︑更に積極的な態度が望ましい︒また︑残存輸入制限の自由化に関連して関税の問題があるが︑
若し︑自由化の際に︑関係業者の圧力により高関税を課するようでは意味がないので︑あくまで︑物価安定︑国内低
生産部門の効率化ということを念頭において対処すべきである︒
( ロ )
対外援助
政府は︑インド︑不シアで聞かれた東南アジア開発閣僚会議において︑わが国の対外援助を七五年までに
GNP
の 一
%に増額するととを約束している︒政府の発表では四四年度の政府民間を合せた援助額は一二億六千三百万ドルで︑
対前年比二 0
・ 四
% 増
︑
GNP に対しても 0 ・七六%で前年を上回っている︒
政府援助については︑わが国の戦後賠償がほぼ終ったこと︑インド︑不シア︑韓国などある程度経済開発が軌道に乗
ってきたこと等から一段落の形である︒しかし︑巨額の資金を注ぎ込んだにもかかわらず︑経済協力が具体的にどの
ような効果をあげたか不分明であり︑また︑全体的な計画性に欠けていたという点で批判も受けている︒それに低開
発国の累積債務は漸増の一途を辿っており︑前途なお多難︑再検討を要するところである︒
民 間
ベ
l スの対外協力についても︑開発輸入という志図があまりに出すぎていること︑現地資本との提携も︑現地
に根を張ろうとするものより短期間で投下資本を回収しようとする傾向が強い︒わが国の資本進出が︑進出国の技術
向上などに必しも結びついていない等の非難が出ている︒それにもかかわらず︑開発輸入は︑新経済社会発展計画に もあるように︑海外資源の自主開発を中心として資源の低廉かつ安定的な確保を図るため今後とも必要である︒高度 経済成長の下では︑現在のように生産されたものを輸入するだけでは︑不足をきたすことが明らかであるからであ る︒他方︑乙れには︑膨大な資金を要するので︑政府の協力が必要であり︑また現地側に対しては︑相手国の製品輸 入を促進する等先方感情も十分考慮しながら推進の要がある︒
従来の対外援助の方向は︑いわば︑受身であり︑散漫であったように思われるので︑今後は︑長期的なビジョンを 持ち︑可能な限り効果的で︑しかも相手国で評価されるような一元的な施策が望まれる訳である︒
十 サ
投機対策
①
非居住者 株式投資については︑現在一企業に対する外資の持株比率を二O%以内(制限業種は一五%以内)︑
一外国投資家
‑七%以内という制限があるため︑投機活動には大きな制約がある︒外人による株式取得は円の需要を高めたが︑
こ れ は︑欧米の株式市場の停滞と︑日本のそれの好調を背景に︑
日本の成長株を狙ってきたものと解釈できよう︒円為替 そのものへの思惑ではない︒円切上げ気配濃厚になると︑かなりの株式投資があり得るが︑切上げ後の株式下落を考
えると簡単にとびっけないであろう︒
ユーロ円︑あるいは自由円については︑為替銀行の為替資金操作にかなりの制 約を受けているので︑実際問題として大した流入はないものと思われる︒ただし︑在日外銀については︑今のと乙ろ 規制が十分でないようであり︑抜け穴となる恐れがあるので今から対策を詰じておく必要がある︒金融引締の際に も
ユーロダラ l
売りにより調達した円貨を市場に回し︑利喰いしているといわれる︒円切上げにでもなると巨利を 博するであろう
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円切上げ問題と対策
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②
居住者
居住者は対外資本取引について厳しい管理下にあり︑外貨集中制度︑対外支払や対外貸付の管理︑先物予約の実需 ベース等の規制を受けている︒輸出入ユーザンスにもリ l ズアンドラグズをやれる余地は現状少ない︒
③
円為替市場
一九六八年初めごろを中心に︑円切下げ不安により︑かなり円先売り投機があ
ったことは前述した c
その後︑米国の対日株式投資により︑海外円取引が活発化し現在にいたっている口また︑ユー
海外円為替市場の勤きについては︑
ロ円の取引が小額ながら取引が行われている︒
しかし 一旦投機的な勤きが始まると︑到底︑海外市場だけでカバーをとることは不可能に近く︑結局は東京市場
に持込まれることになる︒ところが︑為銀側では︑現在の輸出金融制度が外為資金貸付制度中心になっていることか ら︑外貸手形割引によらず︑円貸方式をとっておるため︑ポジションが巨額の買持になっている︒これまで︑主とし て輸入予約︑外貨売持等によって漸くカバーをとってきているので︑平価切下げならいざ知らず︑切上げル l マ l の あるときに︑更に買増しすることはとても出来ないところである
D
先物には当局の介入は行われていないが︑将来行
われるとしても調整的な動きにとどまるであろう︒
従って︑為替管理のない西独と違って︑大規模な投機攻勢はないものと見てよい︒なお︑六月八日付日経紙による
と︑大蔵当局で円投機対応策をまとめたとあるが︑ その内容はまだ明らかでない︒
( 二j
む す む 1
現実的に︑円切上げは好ましくないということである︒為替の安定を促進することは︑
IMF
加盟国の義務とさ
れ︑まず︑そのための努力が必要であり︑現段階で平価変更を考えるのは尚早である︒また︑純理論的立場より是非
論が展開されているが︑輸出入の価格弾力性︑あるいは︑交易条件よりみた円切上げの効果ピしでも︑投入される数
値いかんにより流動的である︒平価切上げに訴える前に︑まだとる可き手段が多く残されていること︑わが国の成長
の柱である輸出産業に与える影響を考えるとき︑軽々に平価切下げを支持すべきでない︒換言すれば︑切上げたくて
も︑切上げできない立場にあるので回避したいというのである︒その街撃といえば︑常に造船業がとりあげられる
が︑その陰にある多数の中小雑貨等輸出業者のことを忘れてはならない︒たださえマージン率の低いところに︑近年
の賃銀よ昇によるコスト高騰と︑円為替の強調により︑ほとんどその薄口銭を吸いとられている状況である︒加うる
に︑これからの輸出優遇策の後退︑特恵関税の導入︑日米繊維交渉のような輸入制限の動き︑開発途上国の工業化進
展に伴う軽工業品の進出等考えると︑日本の輸出環境は必しも楽ではないのである︒それに︑日本の場合︑欧米諸国
に比べると︑貿易業者は小規模のものが圧倒的に多い︒若し︑ 一度切上げが行われれば︑殆んどの輸出産業が壊滅的
打撃を被るという社会的︑経済的大問題を惹起するのであるが︑まだ︑ 一般には切実な問題として取上げられていな
いようである︒実業界より真剣な反対が少ないが︑これは︑政府当局の施策に全幅の信頼をおいているからであろ
うか︒そこで政府当局の適切な施策が望まれる訳である︒
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いまず︑外貨準備であるが︑ これは︑どの程度が適当であるか議論のあるところである c
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授の有名な衣装ダンス説ではないが︑答えの出るものではない︒ただ︑言える乙とは︑日本の場合外貨の集中度合が
強く︑民間の保有が極めて少ないということである︒ フランスの場合︑外貨準備は三 O 億ドル程度であるが︑民間保
有の金︑外貨はその数倍と推定されている︒この際︑外貨の民間活用を積秘的に推進すべきである︒また︑その前に
なすべき多くのことがある︒例えば︑現在︑多数の企業が海外進出しているが︑通常資金計画より事業計画の方が先
行するので︑送金許可が得られず現地で無理な資金繰りをしている場合が多いことは容易に想像山来る︒商権拡張を
円切上げ問題と対策
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図る際当然おこり得る焦付債権も集計するといか程になろうか︒これらの資金調整だけでも相当の外貨が流出するこ
とは確実である︒このように︑通貨当局が杓子定規を少しゆるめれば︑外貨の自然流出がかなりおこるであろう︒日
本の外貨準備は︑背伸びをしたものであり︑しかも︑他の先進国に比して決して高くはないのである︒現在が自然の
体 (ロ)調 に 民 す 絶 好 の
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現在の為替管理法は原則不自由︑例外自由のネガティブシステムとなっている D
自 由 化 が 推 進 さ れ る と
︑ 益
々︑複雑怪奇なものになろう︒管理法を守るための人数は︑官庁︑ 日銀︑為銀︑商社を含め相当なものである︒欧州
先進諸国には管理法がないか︑あるいは︑非常に簡素化されている︒省力化の時代でもあり全面的に改訂すべき時機
であろう︒また︑為替銀行に委任されている面倒な輸出認証事務も︑輸入承認事務も同時に簡素化が望ましい︒要
は︑民間をもう少し信頼し︑名実ともに︑自由化を推進してほしいということである︒
か す
次に海外援助であるが︑今迄の実績から見ると︑大して成績があがっていないようである︒外貨がたまれば︑
OECD の要請もあり吐き出さねばならない︒ほどほどのつきあいは必要であろうが︑焦付になるくらいなら︑もっ
と使い道はいくらもある筈である︒血の出るような企業努力によって得られた外貨である︒慎重な計画のもとに効果
的な活用が望ましい︒
( ニ )
従来︑輸入促進については︑政策的な配慮が殆んどなく︑現在でも小出しの状態である︒輸入の自由化︑関税
引下げにしても︑ 一部業界の圧力を排し積極的に推進すべきである︒輸入制限品目の大部分は良産品であり︑
一 般
消
費者家計に占めめる農産製品のウエイトは高く︑これらの値上りは顕著である︒バナナは特に政治的色彩の強い農産
物保護政策の一つであるが︑リンゴに対する影響が誇大祝されているきらいがある︒低開発国対策として︑あるい
は︑国内消費の多様化に対応して︑物価安定に少しでも寄与するためにまず第一に取上げられるべきものである︒円収
近報告された通商白書においても︑輸入対策については具体性が欠けているように思われる︒輸入競争産業の転換等
に早急に取組まねばならない時期であるにかかわらず︑鳴物だけに終わろうとする気配が強いのである︒
OECD はわが国に対し︑黒字定着国として︑輸入自由化の促進︑対外直接 国際経済環境は依然きびしく︑近く︑
投資の制限緩和︑援助の増額︑関税の一方的引下げ等要求してくる模様である︒要は︑政府当局の果断にして積極的
姿勢いかんであり︑切上げにせよ︑自由化にせよ︑外圧によって一方的に追い込まれ︑不当な損害を被むらないよ
ぅ︑先手で万全の策を確立する必要がある︒
参 考 資
料
日本経済新聞社
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