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一一一扶助操作による下腿部および長靴の形状変化一一 柴 田 員 美 *

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(1)

乗馬服のための人間因子皿

一一一扶助操作による下腿部および長靴の形状変化一一 柴 田 員 美 *

Morphological Human‑factors for Equestrian Costume 

一一一

Deformationsof Leg Region and Equestrian Boots by Aid Actions

一一一

Mami Shibata 

要 旨 人体と乗馬服・馬具との運動機構面での関連を追求する一環として,馬術上の各扶助操作時 の下腿部の動作特徴と,種類の異なる

4

種の馬術用長靴の着用時の変形特徴を,デノレマトグラフ法(写 真撮影)によって調べた。被験者は,馬術の熟練者でかつ標準的体型の日本人成人男女各 l名である。

馬術上の扶助操作として,静止鞍馬モデノレ上で、の馬場馬術姿勢時で、の

5

ポジション,障碍飛越姿勢時で の 4ポジション,軽速歩時での 2ポジション,また日常動作として歩行と走行を加え比較した。観察方 向は側面および後面である。結果として,扶助操作と歩行・走行動作とでは近位と遠位の関節運動連鎖 方式が異なる場合がある事,馬場馬術用長靴では馬体圧迫時の排腹筋部の過変形や足根関節の横方向へ の無用な動きの規制と外観上の端正な品格が,障碍飛越用長靴では足根関節の強い屈曲運動への追従,

下腿部体表の上外方から下内方への回り込み運動への適応が要求され,それらが前報で、の被験者への聞 き取り調査の具体的現象のデ、ノレマトグラフへの反映で、あると確認された。

I 序

前 報

1)

では,馬術用長靴の運動機構上の問題 点を,聞き取り調査および付随的なフィルムリ サーチングによって抽出した。本報では,引き 続き各扶助操作(馬術に於て馬に合図を送るた めのヒトの動作・姿勢)による人体の下腿部お よび長靴表面の形状変化の様子を,デルマトグ ラ フ 法

(DermatographMethod)

に よ っ て 観 察したので、報告する。

E

方 法

被験者は,馬術の熟練者で、かつ標準体型の日 本人成人男女各

l

名 で あ る ( 被 験 者

A:

女性,

42

歳,馬術インストラグター/被験者

B:

男性,

*本学講師服装意匠学

36

歳,オリンピック選手)。

1

に示すように,被験者の下腿部体表の排

骨 頭

(headof fibu1a;  (hfi)) 

, 外 果 ( l

atera1 malleo1us; (

l

m))

,腫骨隆起

(tuberosityof ca1 caneus; (tc))

に相当する部位にランドマーク

をつけ,直立姿勢時で

hfi

1m

とを結んだ(極

力直線に近し、)線を縦方向の,そして

1m

を 通

る水平線を横方向の基準線とし,

20mm

間 隔

の 格 子 状 の デ ル マ ト グ ラ フ (

dermatograph; 

D .  G . ) を 施 し た 。 長 靴 で は , 被 験 者 が 直 立 姿

勢で着装した時の

hfi

1m

, 

tc

各点にランドマー

ク を つ け 裸 足 と 同 様 に , ま た 短 靴 で は 裸 足 の

D.G.

の延長上に

D.G.

(2mm

幅の

IC

テー

プを用い

20mm

間隔で)施した。

hfi

1m

結んだ縦方向の

D.G.

LVO

1

本づっ後方へ

順次,

LV

  , l

LV2

, 

LV3

, 

LVO

よ り 前 方 へ 順

LV‑l

LV‑2

, 

LV‑3

と名付けた。横方向の

D.G.

1m

を 通 る 水 平 線 を

LTO

,上方へ順次

L

T1から

LTI0

1

本下方のものを

LT‑l

と名

95  ) 

(2)

[Position

目 ]

W.: walk

, 

R.: run

, 

D.: dressage

,  J . :  

jumping

, 

R. T.: rising trot 

ws: without stirrups

, 

attn: attention

, 

fh: fullha1t

, 

01:  outer 1eg

,  i l :  

inner 1eg

, 

f:  forward seat

, 

bs: to bascu1ate 

r:  rise

, 

s:  sitting 

st: stand

, 

as: anterior suspension

, 

su: support

, 

ss: strong support

, 

ps: posterior suspension

, 

tg: to the ground 

[Boots and Shoes] 

Fig.l  Dermatograph method markingitesof the left leg  BF: bare feet

, 

S: shoes

, 

LB; 1

therboots

, 

LB. D:  Marking points: head of fibu1a  (h

宣 ) ,

1atera1 malle01us  (1m)

, 

1eather boots for dressage

, 

LB. J: 1eather boots 

tuberosity of calcaneus (tc)  for jumping

, 

RB: rubber boots  Lines: L VO; the line joining the point of hfi and 1m 

LTO; the horizontal1ine through the point of 1m  VO and L TO is  each of  fundamenta1 line  as  vertical  and  horizonta1 directions and

, 

the every lines are 1eft at interva1s of  20 millimerters. 

付けた。

実験動作・姿勢は,日常動作として裸足での 直立

(stand;st)

,  I 歩行

(walk;W.)jにおけ

る,前方空間期

(anteriorsuspension; as)

,支 持

(support;su) , 強 い 支 持 ( 蹴 る 寸 前 ) (strong support; ss) , 後 方 空 間 期 (posterior suspension; ps) 

,緩徐な「走行

(run;R.)j

に おける,着地寸前

(tothe ground; tg) 

,強い 支持

(strongsupport; ss) 

,の

7

位相である。

また,静止鞍馬モデル上で、の馬術上の扶助操作 として,裸足および靴着用での, I 馬場馬術姿 勢

(dressage;D.) jに お け る , 鐙 を は ず す (without stirrups; ws) 

,気を付け

(attention; sttn) 

,全減却

(fullhalt;fh) 

,外方脚

(outer leg; 0

1),内方脚

(innerleg; i

1 ) ,   I 障碍飛越姿 勢 。umping;]

.) jにおける,気を付け (atten tion; attn) ,全減却 (fullhalt;

血),前傾姿勢

(forwaed seat; 

f )   , 飛 越 姿 勢

(tobasculate;  bs)

9ポジション,軽速歩 (risingtrot; R.  T.)

における,鞍に坐った位相

(sitting;s) , 

鐙に立った位相

(rise;r)

2ポジションであ

る。軽速歩は,被験者 A では馬場馬術姿勢と 障碍飛越姿勢の中間の姿勢(鐙の長さを調節) の 1 種類であり,被験者 B では,馬場馬術姿 勢(馬場鞍)と障碍飛越姿勢(障碍鞍)との

2

種類について行なった。(なお,被験者 A で は,障碍飛越姿勢での各種扶助ポーズ時につい ても,使用した鞍は馬場鞍であったが,鐙の長 さを障碍飛越姿勢用に短くした。)

馬術上の扶助操作は,被験者 A では裸足,

日常の歩行用婦人靴,革製長靴(

1

種),ゴム 製長靴着用にて,被験者

B

では裸足(軽速歩 動作のみ),革製長靴(馬場馬術用と障碍飛越 用の

2

種)着用で行なった。

観察方向は,側面と後面であり(但し歩行と 走行は側面のみ),撮影条件は,前報

1)

と同様 である。

分析方法は,撮影した写真上の

D.G.

の変形 の観察(姿勢による

D.G.

見え様,カーブの形 状,各

D.G.

の間隔の変化,

D.G.

の線の質な

ど)および脚勢を比較検討した。

(3)

乗馬服のための人間因子 E

E  結果および考察

I I I ‑ l   歩行・走行と扶助操作との比較(裸 足)

写真

1

は,被験者

A

の歩行・走行の側面視 である。直立時

(st)

に比べ,

as

期では,

LV‑

1

がやや前方へ凸を描くラインへ変化し,

LV2

は側面から見える長さが増す。足根関節 を屈曲させかっ空中に脚を挙上させる動作によ

り,前腔骨筋筋腹の作用による体表の盛上がり と,足部の内側方向への僅かな回旋の反映であ ろう。また,

LTO

LTl

との間隔は聞き(殊 に前方で),足根部前部の輪郭がなだらかに張 り出している。主に前腔骨筋腫の張り出しであ ろう。

su

期では,

LVl

が,上半分が前方に僅 かに凸の,下半分が後方に僅かな凸のカーブと なる。また,アキレス臆が後方に張り出し,ア キレス健部の輪郭が直線状になる。体重を支持 し,床面からの反力に抵抗して足根関節を伸展 させるための ,

M

' I 骨筋群および下腿三頭筋の作 用の反映であろう。

ss

期(歩行での)では,

LV2

が,側面からは見えなくなる。

LV‑l

の下 半分のラインは下腿前面の輪郭線と重なってく

るが,これは足根関節を屈曲させるために前腔 骨臆および長指伸筋が作用してそれらの臆部が 外表したか,あるいは下腿全体がやや内方へ回 旋した可能性が考えられる。また,足根関節の 屈曲に伴い

LTO

LTl

との間隔が後方に向か

97 ) 

うにつれて聞き,

LTO

LT‑l

との間隔は前 方に向かうにつれて狭まる。足根を覆うブーツ では,これらの足根部の運動への追従が必要と なるであろう。

PS

期では,

LV‑l

が前方へ緩 やかな凸を描き,

LV2

が側面から見えず,排 腹筋部後面の輪郭線が直線状となる。これら は,重力によって筋・皮下組織などの軟部組織 が床方向へ引き寄せられた影響が考えられる。

また,足背上面が,他の位相時より多く見え,

そして

LT

群が総体として床方向に緩やかな凸 状のカーブとなっている事から,下腿全体が外 方へ回旋し腫部が内側へ足尖が外側へ向いてい ると判断でき,その事も

LV2

が見えなくなっ た一因であろう。また,床を蹴るとし、う動作 は,足根関節の伸展であると共に,床面に対し て抵抗する力が必要なため,前腔骨筋等が作用 し ,

LV‑l

のカーブが前凸となったのかも知れ ない。(緩徐な)走行での tg 期間では,足尖(足下 指群)が伸展され(=足背方向に反る),長指 伸筋腫の位置に相当する足根前部が前方向へ張 り出している。

LV2

が側面から見えず,また 排腹筋部後面の輪郭線が歩行時の

ss

期よりさ らに直線に近い形状であるが,下腿三頭筋の伸 展が空間期であるために素直に形状に表われた のかも知れない。歩行での着地直後の

as

期で は足根関節の屈曲程度は tg 期と似ているにも 関わらず,排腹筋筋腹の盛り上がりが tg 期よ り強し、。しかし,その理由は不明である。(緩 徐な)走行での

ss

期では,

LV‑l

がゆるやか

Photo 1 The  phases  of  walk and running by sub ject A (the lateral view) 

(4)

な前凸,そして

LVl

の上半は前方向に凸,下 半は後方向に凸のカーブであり,

LV2

の上半 が側面から見える。下腿三頭筋が腫を挙上し,

前腔骨筋等が足根関節を屈曲している反映であ ろう。

LTO

LT‑l

の間隔は,前方へ行くに 従って狭まっている。

被験者

B

による裸足での歩行, (緩徐な)走 行の側面視の観察結果は,以下に述べる三点を 除いて被験者 A の結果と同様の傾向であった。

相違点は,被験者

B

の方が筋腹の外表のメリ ハリがはっきりしている点

(as

期,歩行での

ss

期 ,

ps

期,走行での

ss

期),足根部の

LT

の変化が小さい点

(as

期,歩行での

ss

期の

LVO

LVl

と の 間 隔 変 化 ), 被 験 者

A

LV2

が側面から全く見えなくなる位相で

LV2

の上半が見える点

(ps

tg

期)である。筋の 外表のメリハリの程度の相違は筋の発達および 皮下脂肪の量の性差,

LV2

の見え様の相違は 下腿部の周径の相違(被験者 B の方が身体が 大きい)によると考えられるが,足根関節運動 による

LT

の変形程度の相違の理由は不明であ る。しかし,足根部の動きの柔らかきの性差あ るいは個人差である可能性は推測できる。

次に,馬術上の各扶助操作時の裸足下腿の

D.G.

変化である。写真

2

を見ると,

ws

期で は排腹筋部の前後幡が増し,

LV2

が見えず,

LV‑2

の上半が見えてくる。足根関節は自然に 伸展し,

LTO

LT‑l

との間隔が殊に前方で 聞いている。ヒトの脚は鞍に跨がる,という動

作によって,下腿部は自然に外方へ回旋してし まう傾向があるのかも知れない。馬場馬術姿勢 での

attn

期では,

ws

期には前凹していたアキ レス筋部が後方へ張り出し,また,

LT‑l

のカ ーブ*が前半で、下方へ後半で、上方への凸を描く。

アキレス腫の張り出しは下腿三頭筋の作用によ る 。

LT‑l

のカーブのこの様な形状は,足根関 節の屈曲の程度に関しては同程度の位相がある にも関わらず歩行や走行時には見られないの で,鐙を踏むという馬術的動作では足部に扶助 操作特有の働きが要求されるのかも知れなし、。

白期では,下腿内側部で馬体を圧迫する扶助 のため,側面から見た排腹筋部の前後幅が

ws

期よりも更に増し,

LV‑3

の上半が見えて来る ほど下腿が外方へ回旋し,足背の上半が外方に 向き,

LTO

LT‑l

と の 間 隔 が

LV‑l

か ら

LV‑2

にかけての位置で開いている。また,足 尖(足指群)が背屈している。鐙を踏みながら なおかつ下腿部内側で馬体を圧迫しようとする 操作では腫部が上がりやすい事を示している。

01

期では,脚全体をやや後方に位置させる扶 助操作のため膝関節がやや屈曲され,足根関節 が伸展されているが, f h期と比較して,

LV‑3 

が見えない事や足背上面の見え様が少ない事か

ら,下腿全体の外方への回旋は少ない。

i1

期で は,やや前方へ脚を位置させる扶助操作で、ある。

LV‑3

の上半が見えまた足背上面も多く見えて くるので,下腿全体は血期のように外方へ回 旋しているが,足根関節は血期程には伸展さ

Photo The  phases  of  dressage and jumping aid  positions by subject A with  the bare feet  (the lateral  view) 

(5)

乗馬服のための人間因子 E れていなし、。写真

3

の後面視を見ると,上記の

足根関節の屈伸および足部の外方への聞き具合 がよく判る。馬術では原則的に「腫を下げるよ うに」という脚の姿勢の理想があるが,大腿部 以下の脚全体を後方にしなければならない(=

股関節を外転しつつ伸展する)血扶助に比べ て,股関節の伸展が少なくて良い i l 期の方が,

ヒトの下肢構造にとっては楽である。特に,女 性にとっては股関節運動に対して,鞍の坐面の 人体への当たりも大きく関与する要因と想像さ れる。

障碍飛越姿勢での

attn

期では,

LV‑l

が前 方に凸のカーブとなり,

LVl

の後凸の程度も 馬場馬術姿勢時での

attn

期より強くなる。ま た鐙が短いため足根関節の屈曲が強く,従って

LT1

, 

LTO

, 

LT‑lの間隔が後方に向けて広が

っている。血期では,馬場馬術姿勢時での f h 期と対照的に足根が屈曲され,

LTlとLTO

が 前方で接し,また

LT

群の下半が下腿前部で下 方に凸の下腿後面で上方に凸のカーブへと変化 している。下腿部全体の角度は

attn

期より垂 直に近づいている。鐙が短い事は下腿を外方へ 回旋させずに腫を下げて馬体を圧迫する操作が し易いが,鐙を踏み下げる動作のため下腿自体 の位置はやや前方となる。鐙に体重をかけて鞍 の坐面から腰を浮かす f期と

bs

期では,白期 に比較して排腹筋部の前後幅は狭い。下腿部で 馬体を圧迫するよりは,鐙の上で

2

ポイント姿 勢のバランスを保つ事が主眼となるためで、あろ

99  ) 

う。足根関節の屈曲に関しては

bs

期よりも f 期の方が強い。写真

3

の後面視を見ると,総体 的に馬場馬術姿勢時に比較して障碍飛越姿勢時 の方が

(bs

期を除き)

LVlとLV2

の下半部 で、の内方への回り込みが強い事が判る。側面視 での

LV‑lの前凸カーブの強さ(特にattn

期 で明瞭)と考え合わせると,障碍飛越用長靴で は,馬場馬術用長靴に比較して,足根関節屈曲 の強さへの対応に加え,前腔骨筋の筋腹の盛上 がりやアキレス臆部の内方への回り込みへの適 応が要求されると考えられる。

写真 4 は,軽速歩での様子であるが,裸足で の側面視で鞍に坐った位相

(s

期)は

LV

群の 見え様は馬場馬術姿勢時の

attn

期と似ており,

鐙に立った位相 ( r 期)は障碍飛越姿勢時の f 期や

attn

期と似ている。後面視では,

s

期で は

LV

群の見え様は障碍飛越姿勢時の

attn

期 に,足根関節の屈曲程度は馬場馬術姿勢時の

attn

期に似ている。

r

期では,障碍飛越姿勢時 のf期と似ているが,足根は f期程屈曲せず

s

期と間程度である。軽速歩では,特に脚を様々 な位置に操作して扶助動作を行なわないので,

基本的には鞍に坐った r 期では各扶助動作中の 基本姿勢である

attn

期に似ており,鐙に立っ た姿勢では f期に似てくる。足根関節の屈曲角 度は鐙の長さによる所が大きく,鐙が短いほど 屈曲が強くなる。

写真

5

,写真

6

は被験者

Bの裸足による馬場

馬術姿勢での軽速歩と障碍飛越姿勢時での軽速

Photo 3 The  phases  of  dressage and jumping aid  positions by subject A with  the bare feet (the posterior  view) 

(6)

歩である。かなり鐙が長い馬場馬術姿勢時にお いても足根が伸展してしまって腫部が挙上され るような事が無い。鐙が短い障碍飛越姿勢時で は,足根が強く屈曲されて,鐙が下方へ踏み込 まれている。馬場馬術姿勢時と障碍飛越姿勢時 を比較すると,障碍飛越姿勢時の方が LV‑lの 上半の前凸が強く,前腔骨筋筋腹の収縮を示し ていると考えられる。馬場馬術姿勢時,障碍飛 越姿勢時共に側面から LV‑2はほとんど見えな い。これは,下腿が外方へ回旋しない程馬術姿 勢が身に付いている現われである。また女性よ り軟部組織が固く,被験者 A と比較して,馬 体との圧迫によって下腿部の前後幅が広がる事 が少ない事も一因かもしれない。後面から見る と ,

s

期に比較して

r

期の方が下腿全体が外下 方へ踏み込まれている。鐙上に立ち上がる r 期 の場合でも,腫部が挙上してしまうことが無 く,排腹筋部の内側で、常に馬体に接触あるいは 圧迫の扶助を与えることが出来,ウマを推進す る事が出来る

2)

。被験者

B

では,襟足では軽速 歩のみで,各種扶助操作のデータが無く残念で あるが,被験者 A で見た様に軽速歩での

s

期 が各扶助姿勢(馬場/障碍姿勢)での

attn

期の 反映,そして r 期が障碍飛越姿勢での f期の反 映と見なす事は可能であるかも知れない。

さて,歩行および歩行時と扶助操作時との比 較をする。直立や歩行,歩行にとっても馬術上 の扶助動作にとっても

3)

脚は腰と共に大変重要 な身体部位であるが,普段いくらジョギング等

Photo 4 The phases in ris ing trot by subjest 

with  the bare feet and wearing  the shoes (the 1atera1 and  the posterior view) 

の運動をしていても,久しぶりにウマに(正式 な騎乗姿勢で)乗ると,脚が大変な筋肉痛にな るものである。写真

1

の直立,歩行,走行と写 真

2

の扶助姿勢の各位相のうち,足根関節の屈 曲角度に注目して,まず空中期で足根関節が伸 展している歩行時の

ps

期と馬場馬術姿勢時の

ws

期を比較する。両者共に直立

(st)

期と比 較すると自然に下腿自体がやや外方へ回旋する 点が共通している。足根関節の屈曲角度のみな らば馬場馬術姿勢時の

01

期も

ps

期や

ws

期と 似ているが,下腿部の外方への回旋は少ない。

01

期では,膝関節が

ps

期や

ws

期よりも屈曲 されている事から考えると,膝関節を屈曲させ た方が下腿部を外方へ回旋させる事無く脚を使 える傾向があるのであろう。馬術の初級者では 脚が外方へ回旋してしまい,足部が聞いてしま

う脚勢を注意される事が多いが,ヒトの下肢の 構造から見て自然のままの状態ではそのように なる傾向があるのだとすると,やはり馬上での 正しい姿勢を身に付けるには訓練が必要である 事が納得できる。次に,足根関節の屈曲角度が ほぼ直角である位相として,歩行時の

as

期 , 走行時の

tg

期,馬場馬術姿勢時の

attn

期を比 較する。

as

期と馬場馬術姿勢の

attn

期は,

as 

期の方がやや下腿部が外方に回旋している点

と,脚全体の地面に対する角度が異なるが,下

腿部自体の形状は良く似ている。歩行時の

as

期では股関節は屈曲されているが,馬場馬術姿

勢の

attn

期ではウマに跨がった姿勢で股関節

(7)

乗馬服のための人間因子阻 の屈曲をなるべく少なくした中で、

as

期の様な

脚勢を実現出来るようにならなければならない のかも知れない。走行中の

tg

期は,他に下腿 の形状が似た位相が無いが,空中から地面に向 かつて着地する寸前の位相なので,実馬上のウ マの上下動に伴って鐙を踏む状態(特に正反動 での速歩時)と比較してみたいと思う。下腿部 に力を入れた位相として,歩行時の

su

期 ,

ss 

期,走行時の

ss

期,馬場馬術姿勢時の血期,

障碍飛越姿勢時の血期, f期を比較する。腰 を強く張ると共に脚でも強く馬体を圧迫する扶 助操作である f h扶助でも,馬場馬術姿勢では (鐙が長くしかもおそらく裸足のせいも手伝っ て)腫部が挙上し,障碍飛越姿勢では蹟部が下 方へ踏み込まれている。馬場馬術の血期では,

歩行や走行時の

ss

期と似ているが,

ss

期のよ うに地面を蹴るために腫を挙上する事が目的な のでは無く,下腿内側部で馬体を圧迫しようと

101 ) 

すると膝関節が連動してやや屈曲し,結果とし て腫部が挙上される。馬体圧迫の反作用で排腹 筋筋腹部が前後に幅広く変化している。これに 比べ,障碍飛越姿勢の血期では鐙が短いため,

鐙板に足底を踏ん張る事が出来,ちょうど地面 に足底を踏ん張っている

su

期と

LVl

下半部 の緩やかな前凸(即ち排骨筋群等の作用の反映) が共通している。鞍から腰を上げて鐙上でパラ

ンスを保つ

f

期と

bs

期では確かに

fh

時よりも さらに鐙板に足底で踏ん張っているはずであ り,走行時で地面を強く蹴る寸前の

ss

期と比 較してみると, f期と

bs

期では扶助操作の位 相の中では最も歩行(特に

as

期)や走行(特 に

ss

期)に近いが,それでも足尖部の運動方 向が,足指群が伸展されている歩行・走行時と は逆で,足指群は屈曲されている。扶助動作特 有の脚の操作であるといえる。この事は,被験 者

Bでの軽速歩姿勢(写真5

,6

)

を見ても明

Photo 5 The phases in dres sage rising trot by subjest  B with the bare feet and  wearing  the  dressage  boots  (the lateral and the  posterior view) 

Photo 6 The  phases  in  jumping rising trot by sub jest  B with the bare feet  and wearing the jumping  boots  (the lateral and the  posterior view) 

(8)

瞭であり,鐙が長い馬場馬術姿勢での場合でさ え,足指でしっかりと鐙坂を下方へ踏み込み,

s

期でも

r

期でも腫部が下がっていて,膝関節 は出来るだけ伸展されている。歩行や走行をヒ トが日常動作の中で獲得してきた自然な脚の動 作と考えると,膝関節,足根関節,そして足指 関節(特に中足指節関節)運動の連動が,馬術 で要求される扶助操作では逆である点で,正し い扶助姿勢を獲得するためには相当な訓練が必 要であると確認できる。

I I I ‑ 2   扶助操作における裸足と短靴着用時 との比較

被験者 A において,馬術用では無くしかも 下腿部が覆われていない日常用の短靴作一ヒ ールで、歩き易いもの)であっても,裸足時やサ ンダル着用時に比較して,

w

腫(とくに外側部) や足尖が包み込まれて,扶助動作が安定する』

とし、う被験者自身の感覚が存在したが

1)

,その 点について裸足と短靴着用時の様子を比較す る 。

まず,馬場馬術姿勢時の側面視(写真

2

と写 真

7

とを比較)を見ると,殊に脚の扶助作用を 行なわない

ws

期や

attn

期では違いが認めら れないが, f h期 ,

01

期 ,

i1

期では共に短靴着 用時の方が,排腹筋部の前後幅が増している。

この

3

つの位相を後面からみると(写真

8)

, 

LVl

の上半部の外方への張り出し(=凸状の 深さ)が大きくなっている。靴の内部の足部が 見えないので不確かではあるが,足背部上面が 側面から見える範囲が短靴着用時の方が少ない ように見える。後面視での様子からも,裸足で は足根関節が内反気味であるのに対し短靴着用 時では,裸足時よりも外反方向に変化している 事が,特に血期で明確で、ある。足根の屈伸角

Photo 7 The  phases  of  dressage and jumping aid  positions  by  subject  A  wearing  the  shoes  (the  lateral view) 

Photo 8 The  phases  of  dressage and jumping aid  positions  by  subject  A  wearing  the  shoes  (th

posterior view) 

(9)

乗馬服のための人間因子 E 度自体の相違は,側面視でも後面視で認められ

ないが,足根関節の内反方向のブレを靴によっ て防ぐ事が被験者に『支えがある』感じを抱か せ,かつ足底に踏ん張れる分が,排腹筋内側面 で、馬体を圧迫する扶助への力へと効率的に利用 され,その結果として,排腹筋部の前後幅が (馬体からの反力の大きさに対応して)増大し たのであろう。また,鐙板上で立ち上がる

2

ポ イント姿勢 ( f期 ,

bs

期)や軽速歩の

r

期(写 真

4

)では,外方から内方へ向かう馬体圧迫の 扶助の他,立ち上がるあるいは鐙板を下外方へ 踏み下げる力へと効率的に働き,

~ 2

ポイント や軽速歩では安定(して動作がし易し、)jJとい

う被験者の感想が言葉となって現れたので、あろ う。被験者

B

における軽速歩では裸足でさえ 馬場馬術,障碍飛越両姿勢時で,鞍から腰を上 げる r期に,鐙板を踏み込む方向が下外方向で あり腫部が挙がらなかったが,この運動方向が 理想であるとするならば,靴着用によって足部 が支えられる事による被験者 A の足根関節部 の内反運動の規制は合理的なものであると判断 できる。裸足時で,被験者

A

の方が,足根部 の横方向の D.G.である LTの変形が大きく,

また,裸足では軽速歩時でさえ足根関節が伸展 気味になり易い事実を,足部(足根や足底)の 構造上の硬軟の性差(あるいは個人差)に起因 するものと考えるなら,構造的にいわゆる柔ら かし、足のヒトに対しては,正しい靴の着用は合 理的であるし,よく馬術の姿勢の留意点に「腫

103 ) 

を踏み下げよ,そして爪先をあまり外に聞きす ぎるな。」と言う表現があるが,外見上の形の 実現を急いで,足根関節部を内反させてしまう のは誤りである。そして,本来は股関節の柔軟 さが第ーに要求されるのである。

‑3

各馬術用長靴着用時の比較

[ 皿

31J

被験者

A

による革製長靴とゴム 製長靴との比較(写真

9~13)

現在馬術を始める際には,馬術用ゴム製長靴 を履く事が普通で、ある。革製は高価であるし,

乗手の脚の姿勢がキマラナイうちは逆に革製長 靴の方に過った形の癖がついてしまうという事 もあるようである。乗馬クラブに備えてある貸 し靴もゴム製である。貸し靴では,廉価である 理由の他に,例えばスケート靴と比較して下腿 部まで覆う長靴であるから個人差に適合させる 事が,たとえ素人のレジャー程度の場合でも,

革製では困難なのであろう。また,下腿部のサ イズや形状ばかりでは無く, I 動き癖」がつい てしまって草製は個人で持つもの,という事に なる。それほど,馬術用長靴では扶助操作への 適応の厳しさが必要なのである。

さて,被験者 A について革製長靴とゴム製 長靴を着用した各扶助操作を比較する。まず側 面視では(写真

9. 10)

, 

ws

期で既に,革製で

は足根部に屈曲鍛 (LT-1~LT2 にかけて)が

存在しているがゴム製には無い。しかしこの位 相では下腿全体の外方へのわずかな回旋や足根 関節の屈曲程度の差は生じていない。

attn

Photo 9 The  phases  of  dressage and jumping aid  positions  by  subject  A  wearing the leather boots 

(the lateral view) 

(10)

になると,革製の方が明らかに足根屈曲が強 く,また LTO,LT‑1の前部が接近する事から 側面より見える足部の高さが短い事がわかる。

裸足ではやはりこの部の高さは短い事から,革 製では足背近位と靴とが比較的接近している が,ゴム製では離れていて,これもゴム製が

『不安定で足根がキマラナイ』感想を被験者に 抱かせる要因であろう。馬場馬術姿勢での血,

01

, 

i1

各位相においての LV‑1,LV‑2は,革製 では LT10から LT1まで比較的直線状にキッ パリと存在しているが,ゴム製では LT4あた りの高さ以下ではランダムに乱れている。 LV‑

1,  LV‑2のこの乱れは障碍姿勢時の

fh

, f , 

bs 

の各位相では少なくなるがしかしランダムな乱 れの代わりに,ゆるやかな前凸カーブとなって いる。革製では LV‑1,LV‑2は,逆に僅かに 後方へ凸のカーブを描き,下腿前部の腔骨縁の 固い面へもフィットしているのかも知れない。

ゴム製では逆に長靴前面がやや前凸するので,

これも脚との聞が離れ過ぎ脚がキマラナイ一因 となろう。裸足では,

fh

, 

01

, 

i1

期の様に下腿部 内側で馬体を圧迫する扶助操作を行なうと,排 腹筋部の前後幅が増大し,馬場馬術姿勢時の

fh

期では LV‑3の上半部さえ側面から見えた が,長靴を履くとそのような現象は消失する。

特に革製長靴着用時の方が前後幅が短いので酔 腹筋部の前後幅増大の規制作用が強いのだろ う。しかし,ゴム製長靴は既製品であるため,

もともと被験者の下腿部より太い可能性は差し

Photo 

1 0  

The  phases  of  dressage and jumping aid  positions  by  subject  A  wearing the rubber boots 

(the lateral view) 

引かねばならない。後面から見ると(写真

11. 12) 

,革製の方が足根部での屈曲運動に対応し た

D.G.

群の変化がくっきりしているが,ゴム 製では

D.G.

群のラインが一様で、ぼやけた線質 である(映像としてボヤけているとし、う意味で はなく,線の持つ美的性質をきしている)。

軽速歩時を比較すると(写真 1 3 ),側面視で

は上記の各扶助操作時での観察結果と同様であ

る。そして,後面視では,ゴム製長靴着用時の

方が足底部が鐙の内側寄りに乗り,鐙板を外方

へ押している。前報

1)

では中ヒールブーツ着用

時の例では,騎乗姿勢と全く逆の姿勢に脚を導

くために非常に乗りにくく,足底は鐙板の内側

寄りに位置していた。ゴム製長靴着用の場合は

鐙板を外方へ押していることは,被験者

B

の裸足での軽速歩のデータから良い傾向として

抽出された足根関節の外反的運動と似てはし、る

が,足根関節の屈曲が不十分で躍の位置が高い

ので,外方に押しているだけで,外下方に踏み

下げているのではなし、から,用いた下腿の扶助

操作が馬体への合図として有効に作用するため

には不合理と解釈できる。以上のように,下腿

部前部や内側部,そして足背近位部の適合と動

きのメリハリは,革製長靴の方が良いという被

験者の感覚が,

D.G.

上の変化にも読み取れる

が,臆部に用いるサボーターのようにフィット

しすぎると下腿諸筋の作用に必要な筋腹の収縮

を妨げるし,また着脱の問題も存在している

(履くときに長靴の足根部に人体足部を通過さ

参照

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