インバータ駆動かご形誘導電動機のトルク解析
山 田 英 二 * ・ 中 村 修 一 * *
A n a l y s i s o f T o r q u e f o r S q u i r r e l ‑ C a g e l n d u c t i o n M o t o r F e d b y l n v e r t e r
by
E i j i YAMADA
(Department o f E
le c t r o n i c s )
S h u i c h i NAKAMURA
( D e p a r t m e n t o f E l e c t r i c a l E n g i n e e r i n g )
R e c e n t l y a t h y r i s t o r i n v e r t e r i s used f o r i n d u c t i o n motor d r i v e b e c a u s e o f i t s c o n t r o l l a b i l i t y and economy. However i t s advent c a u s e s a few p r o b l e m s : r i p p l e s o f t o r q u e , a n g u l a r v e l o c i t y and mechanical r e s o n a n c e due t o harmonics o f i n v e r t e r o u t p u t . Then t o r q u e s a r e a n a l y z e d by means o f t h e s p a c e v e c t o r t h a t i s produced by d‑q component o f s q u i r r e l ‑ c a g e i n d u c t i o n motor f e d by c u r r e n t o r v o l t a g e ‑ t y p e I n v e r t e r . B e s i d e s , P W M p a t t e r n s t h a t have been u s e d o r c o n s i d e r e d a r e c l a s s i f i e d on t h e b a s i s o f t h e s p a c e v e c t o r and t h o s e c h a r a c t e r i s t i c s a r e i n d i c a t e d .
1 .
まえがき近年,誘導電動機駆動用電源として,経済的に安価 で,制御が容易である乙とから,各種のサイリスタイ ンパータが用いられているが,その一方では,インバ ータ出力に発生する高調波により,誘導電動機のトノレ ク脈動,回転むら等の問題が生じている.とのため,
インバータ駆動時の誘導電動機トノレクを評価し,その 脈動低減を検討する必要がある.乙れに関してはすで にいくつかの報告がなされているが1)
2 )
, それらは,インバータの型を限定してトルク式を求めているため,
他のタイプのインバータへ拡張して適用することが困 難であったり,あるいは状態推移法lとより定量的にト ノレク波形とその特性を算出しているため,定性的な検 討が行えないなどの欠点があるように思われる.
そこで本文では,従来,正弦波駆動時のひとつの解 析法
3 )
として行なわれていたように, 誘導電動機の 昭和田年1 0
月1
日受理*電子工学科 料 電 気 工 学 科
d‑q
成分から空間ベクトノレを作り, それを用いて電 圧電流型,両インバータ駆動時のトノレク式とトノレクス ペクトラムとを求めた.また現在トノレク脈動低減のた めいくつかのPWM
パターンが考えられているが4 ) 5
,) 今回はさらにこの空間ベクトノレに基つ。いて, これまで のPWM
パターンを分類した. そして,それぞれの 場合の電圧電流ベクトノレを求め,方形波時と比較して,PWM
への拡張が容易であることを示した.なお,解析に際して以下のことを仮定する.
(1) 漏れインダクタンス分は零である.
(2) 固定子巻線と回転子巻線は互いに密結合してい る
(3) 電圧,電流,回路インピーダンスは三相平衡し ている
また,文中で使用する諸量を以下のように定義する
R , l R 2 ;
固定子及び回転子の抵抗分30 インバータ駆動かご形誘導電動機のトルク解析 11,12;固定子及び回転子のインダクタンス分
L1,五2;d−q変換後の固定子及び回転子のインダ クタンス分
.M;d−q変換後の相互インダクタンス
ρ ;誘導電動機の極対数
ω・ ;電源角速度 ω・ ;機械角速度
S; すべり
ω7=6ω8,ゐ=L、/ハ4=ψL2
β1 = R1/L1,
c = β1+β2,
れ
81(の=Σ
名需1 2ηz
.Rエ= Σ
¢篇1ρ、_警(_1)・一1醒
舌=1π
P=♂/4 T;2π/吻
β=β2=R2/L2 σ一β、(β2一かω・)/c
(一1)乞一1麗( 一τ盛)0≦τ1,τ2㎜≦T
(一1)乞一1θβ・乞θ一加・・盛
2η乙一1
8皿( )=z6( ) 十(θゴ3 −1)Σ(一1)乞一1π( 一τの
乞=1
0<τ1,τ2窩_1≦T
π 2η乙一1
.R五=1+@3−1)Σ(一1)乞一1θβ・惚一ゴP・・%
乞=1 π 2隅一1
9皿=1+(θゴ3−1)Σ(一1)蛋一1θστ乞 ブ=1
2..
望 詩 署 男
8
宅
∂)
自b空間ベクトルによるトルク解析
a
R書
● 21
■ 9
■ C
と,次の電圧方程式が得られる6).
り己s
のαs
O 0
R1十LIP
O
㎜
一ρωrM
0 ㎜
R1十LIP O ρ妨M
㎜
0
㎜
R2+五2Pρω。L2 一ρω。L2R2+L2P
ゴds
ゴαs
ゼdγ
fαγ
(1)
ここで,ρωγ=(1−8)ωs
上の4,g成分より,以下に示すような空間ベクトル を構成する. 0
(2)式の関係式を用いて(1)式を整理すると次式が得られ
る.
評 R1÷LIP
ハ4(P一ゴρω。)
鯉
R2+L2(P一ノρω。)
〔;;:
(3)
㈲式について電圧型の場合にはりp,が,あるいは電流
型の場合には躯が規定されるので,他の要素を求めることによりかご形誘導電動機の駆動特性が得られる.
STATOR
R2
ρ
RO
FOR
L,
勾=の
M!2
jM
M!瘡
1流
@ Re
c) 一M
M
M!3
一JM
嵐
L2 ノ
R2 ! 共b)
Fig.1 Equivalent circuits of squirrel−cage induction motor
a) under three phase theory b) under two axis theory
第1図に示すようなかご形誘導電動機において,固
定子巻線をα一β変換,回転子巻線を4−g変換するFig.2 1nverter output waveforms and their space vector
第2図には,一般的なインバータ出力波形の一一分
を示しているが,この波形から定まる空間ベクトル 物8⑫p8,あるいは嘱)は,いずれの場合も第2図に示すように電源周期の1/6で,π/3ずつステップ状
に回転するベクトルである.ベクトルの絶対値を.Mとし,さらに電源周期の1/6で,π/3ずつステップ変 化する関数をψで置くと,〃2p、は次式で表わせる.
〃2ps(の=1レZ診ゴρ (4)
ゆえに,第2図のいずれの波形を用いても誘導電動
機の駆動特性は変わらな炉.これまでのことから駆動
特性を検討する際に,インバータ出力波形そのものを
用いるよりも,むしろその波形によって作られる空間
ベクトルを用いる方が適切であることがわかる.
以下には,第2図に示された空間ベクトルによって 得られる駆動特性を求めている.
(a)電流型インバータ
(4)式は電流型インバータでは,嘱=琵⑳として適用 できる.ここで1は定数,pはπ/3ずつステップ状 に増加する関数である.いまpが一定である区間
(0,T)において③式をラプラス変換すると,砺(∫)
は
玩(・)一β+(誌餅){た(・一加)÷…
一ゐら・(・一)一砺(・一)} (5)
となり,さらに逆変換すると
砺(の一β睾{七一β・一・・幽・}
∫,、( )・蕩(の一Σ・。・ブ町・ (11)
η=一DQ
そのフーリエ係数は働,㈹式となる.
一ゐ12
o=β+加,. β(1一θゴ窓)(θ一β7θ一ゴ欝7−1)・
・〔伽
6π(ω7)=
T(β+加,)(1一θブ蚕θ一β7ザゴP・・7)
ゐβ12(1一θ」§)(θ一β7θ一一ゴP・・7−1)
〕(12
+{蛎、(0一)+ゴP,(0一)}θ一μθブP・・ (6)
となる,定常時では,初期値を砺α),吻(の,Up・(の
の周期性により,以下のようにできる.
雛三膨1} ㎝
(7)式の関係を⑥式に代入すると初期値が求まる.
娩勉一ブ§
砂(0一)=
1一θ一ゴ1ザβ7θブP・・7
・〔β一幅{三一β …騨}
+・一・§げ・騨〕 (8)
(8)式を再び⑥式に代入すると た1診ゴψ
妙(の=β一加,
・〔加一β(1。一・一ゴ§)。一・,・,・,・ 1一θ一フ3θ『β7θブPωγ7▼〕(9)
となる.トルクτθは次式で求まる.
・,一2躍諏(ら,(の・勝(の) (1① ここでら,α)・勝α)はψが一定な期間で決定されて「
いるが,それはρには依存していない.このことは,
トルク波形が周期丁の周期関数であることを意味す
る.
ところで,トルク脈動の一般的な評価基準が確立さ れていない現状では, トルクスペクトラムを調べる ことによって評価する方が適切と思われる.トルク
の周期性から明らかなように,トルクスペクトラムは直流分と角周波数ω7の高調波分とからなる.いま ら、①・燐(のを次式のフーリエ級数に展開すると
T(β+加・){β+ブ(ρω・+ηω7)} ㈲
・(1一θ壕θ一β7θ一ゴP・・7)
トルクのフーリエ係数は次式より求まる.
6・一 早i・・一・♂) αの 一撃{砺(ωの一・秀(一ω・)} α5)
(b)電圧型インバータ
(4)式は電圧型インバータでは,⑳ps=三三として適
用できる,いまρが一定である期間(0,7りを考え て,(3)式をラプラス変換すると〔型
L1ハ4
ML2
〔
ら8(0一)
ら。(0一)
忽::::〕
(16)
となり,これをち,(3),砺(∫)について整理すると次 式のようになる.
ち、(3)
玩(∫)
1
『4
十
R2+L2(∫一ノρω,)一∫IM 一(∫一ノρω,)ルf R1+∫五1
LIM ML2
ゴP8(0一)
娠(0一)
}
{ 7知、(∫)
0
(1の
∠=(五、Z 、一.M2)∫2+{R、L2+R2L、
一かω・(LIL2−M2)}∫+R、(R2一かω。五2)
固定子巻線と回転子巻線が密結合している場合を考え ると,LIL2−1142=0となるから,㈲式は次式のよう
になる.
ち、(∫)
砺(∫)
一叢鷺;㌦の〕
・〔
碗プρ/(弧)+{たら、(0一)+吻(0一)}
砲P・(0一)+肋(0一)}/た
α81
32
㈹式を逆変換すると
7ゴP8(の
_■
一。
7
勉( )
インバータ駆動かご形誘導電動機のトルク解析
〔一π・蝋β・一加)隔・一)
〔「盲・糾(β・+加・)脚・一)
悔(・一)}〕学一孟1留(勧㊥)(・一り
煽(・一)}〕・一L孟・・伽(・一・一り
一捌ll)(β2一ノφω・・)@§一,吻
⑳式を㈲式に代入すると,嘱(の,ら・(のは
痂(の Pグ.1{・+㈲轟・}学
=砺θゴρ
砺(の {一・+㈲(ll圭濫)
となる.初;期値の決定には,(7拭が適用できる.
蛎、(0一)+ゴP,(0一)
7. θ一・7−1
qg
⑳
」・譜侮(・一・一り
(21)
×鐸論}・一撃(・一〆)
となる.上式のfp・α),勧①をα①式に代入して,ト ルクは求まる.ところで,回転子側磁束鎖底数吻α)
は
留〆の・=五2勉ω+翅Pε( )
ズ
一ゐ(碗ゴρβ2一ノρω・)㈲{叢誌一・}(22
として求まるので,トルクは次式でも求まる.
・,一2ρゐ伽(ゴ。、(の・ρ労,(の) ㈱
電流型の場合と同様に,躯(の・ψp,(のを⑪式に示す フーリエ級数に展開すると,その係数は
・・一
噤i 72
タ2+ノρω・)CM解(砦)〔2β議/C・(2+爵沼)(1一・一・β・β・7ノ・)+(・+爵)T
4(・÷留)(・一・吻
一÷(2+彩)(・一・一・)〕 伽)
碗(ωr)一丁(角+濁)c齪㈲
・〔2β1β、/ぎ準ブ。ω。(2+舞)(・一・一・・)
一二ω。(・+爵)(・一・一)
一(2+卸σ十ノηω7)・判 ⑳
θゴ§一1
ここで∠1=
θブ§一θ一・7
トルクのフーリエ係数は働,㈲式により求まる.
5.PWMの分類
固定子側の空間ベクトル晦、は,(4)式において!風p ともに実時間関数と見れば,(4)式に一般性を持たせる ことができ,PWM時にも取り扱うことができる.
トルクの周期性から,これまでψが一定であった期
間における物、の動作パターンを調べることにより,
PWMの分類が行える.現在検討されているPWM
のどれもが,(0,T)期間では.砿 gともに2値間を交互にスイッチングする関数であるから,以下の3
つの場合に分けられる.i)Mのみが変化する場合
ii)ψのみが変化する場合
iii)M, gともに変化する場合∂』皿コエ皿一π皿丁皿「
わロ[[丁一』エ〕=皿L一顧
eLr−[=㎜=「一』皿コ
Fig.3An example of PWM(i)waveform
M
0 τ 論証?;篭 鰯㌦イ篠τ
Fig.4Switching pattern of M for general
PWM(i)waveformi) この場合の一例として,第3図にインバータ出力
波形を示す.この場合の空間ベクトル彿psのMは,第4図に示すように0,.Mの間をスイッチする関数と
なり,一般的にMは次のように置くことができる.2祝
M=妬Σ(一1)詞πα一τの 侶の 哲=1
㈱式を用いて前節と同様に(0,T)期間で伽α),
勉α)が求まり,さらに㈹式,あるいは圏式よりトル
クが求められる.(a)電流型インバータ
∫P、(オ)=為θブψ・81(の
∫ ( )一β鵠〔加8・(の (2の
β{1一8・(T)ザゴ葺}θ一β θゴ獅右R・〕
2肌一1
ら8(の=Iexp{ノ〜ρo十ゴπ/3・ Σ (一1)乞一1z4α一τの}
=泥ゴ甲。・S豆(の
宙二1
1一θ一ゴ3θ一β7θブρωγ7
(b)電圧型インバータ
網一口 llρエ1右£拳(T)}・イ
β2一ノρω。
σ
%θゴρ 砂( )= Cル1+雛+加ρ1詰£拳(T)
28)
〔{9・+㈲一
{ε・ω一ρ・ザ相
〔{一ρ・()(再加) }・冠
」学{8・( )一ρ・・一眼 卿一た(巧θゴρ
タ2一ノρω・)(爵)・{9エθゴ琶一8、(T θゴ窓一θ一・7)・一畠( )}
a皿[コ皿U㎞エコロ皿
c皿h皿一コ皿rヂ皿工=
Fig.5An example of PWM(ii)waveform
、一ザ、萎,毒筆R・〕
(b) 電圧型インバータ
砺(の一絵〔{9・+㈲弩葦1≒1}・覗
一βlr弊{8五(の一9皿θ一σε}〕
砂(の一號〔{一ρ・
(雛+加)舞『舞}・一・
砺(の一β細細〔加8・( )
β(1一θ一ゴ奮)θ一β θゴ岬
+頁β,一加。
∫ρω。
一 σ
{3・(∫)一ρ・・一疋}〕
卿)一躍餅)㈲{罪1斗一
一3・(の}
(3①
蝿
倒10 Fig.6
一一
勿 姦 有 轟鯵
脇.2福ヅτ
Switching pattern of〜o for generalPWM(ii)waveform
(ii) この場合の一例として,第5図にインバータ出 力波形を示す.(ii)の場合の空間ベクトル物、のψ は,第6図に示すように期間(0,T)でρo,ρo+π/3
の間をスイッチする関数となり,一般的にρは次の ように置くことができる.2㎜一1
¢=ρ。+π/3・Σ(一1)乞一1麗( 一τ乞) ⑳ 乞;1
(a)電流型インバータ
61)
(iii) この場合は最も広く使用されており,その波形
の一例としてキャリアに三角波を,信号に正弦波を用
いて作られるPWM波形があげられる. ゴP、(の,ゴP,(のは㈱式四式を満足する空間ベクトル晦,を用いて,
これまでと同様にして解くことができる。たとえば上 にあげたように,キャリアに振幅E。の三角波,信号
として振幅E、の正弦波を用いて作られるPWM出力波形の一三分初α)は振幅比をα=Es/E。とおく
と,次式で表わされることが知られている7).
煎)/M一・一+愚(4ηπ) /
舩
・報誓)佃一一・}〕一一1
上式においてω,,ω。は信号およびキャリアの角周波 数である.圃式のラプラス変換をM(∫)とし,さら に三相間が対称であるとすると,それによって作られ る空間ベクトル〃躯(ののラプラス変換砺s(∫)は 1十θ一sT8
輪・(∫)=M(∫)1_θ一・7・/3θブ2・/3 (認)
T、;電源周期
となる.これを(1㊦式に代入して電流ベクトルが求まり さらにトルクが得られる.(i),(ii)の一連の式と⑨,⑳式との比較で明らかな
ように,⑨,⑳式の一部の定数を上で定義したスイッ
チング関数81α),8皿α)や,定数RI, R∬および
34 インバータ駆動かご形誘導電動機のトルク解析
ρ1,ρ皿で置き換えるだけでPWMへの適用が可能であることがわかる.
4.あとがき
現在,インバータ駆動時における誘導電動機のトル ク等の解析にはさまざまな手法が適用されているが,
今回は誘導電動機の入出力波形から得られる空間ベク トルを用いて解析を行った.この方法は以下に示す利
点が考えられる.(1}電流・電圧型を問わず,インバータで駆動され る誘導電動機の駆動特性を解析するのに広く適用
でき,PWMへの拡張も容易である.(2)トルク式およびそのスペクトラムは多少複雑な 形ではあるが,収束計算を行なう場合に比べて演
算:時間の短縮が予想され,また定性的な検:討が行 える.(3)トルクは誘導電動機の入力ベクトルによって規 定されているので駆動特性を検討する際に,この
入カベクトルはインバータ出力波形分類上の適切
な基準となり得る.今後は与えられた式に基づいて,トルク脈動低減の ための入力ベクトルのパターン,あるいはインバータ 出力波形を検討する予定である.
参 考 文 献
1)金,富田:電論誌VOL.97−B, NO.12(昭和52
年)2)松井,他:電論誌VOL.99−B, NO.2(昭和54
年)
3) Swarn S. Kalsi:IEEE Trans. on PAS VOL.
92NO.4(1973年)
4)片岡,小玉:電力応用研究会資料(昭和54年)
5) 岡田,伊藤,野中:九大工学集報VOL.45 NO.
4(昭和47年)