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Ralstonia sp. NT80

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Academic year: 2021

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永倉 茉莉,Page1

Ralstonia sp. NT80

における膜タンパク質のプロテオーム解析

Proteome analysis of membrane proteins in Ralstonia sp. NT80

応用化学専攻 永倉 茉莉

NAGAKURA Mari

1.

背景と目的

細胞膜に存在し、全タンパク質のおよそ 30%を占め る膜タンパク質の機能解明は、生命活動を理解するた めの中心課題の1つとして考えられている1)Ralstonia sp. NT80 (NT80)は、polyoxyethylene (POE) 20 oleyl ether stearyl alcohol (StOH)などを誘導剤として用いること で、リパーゼを多量に分泌することがこれまでに分か っている2)。その誘導効率は一般的な誘導剤であるオリ ーブ油と比較すると、8~17倍にも及ぶ。しかしながら、

その詳細な分子機構は不明である。TEM解析を含むこ れまでの結果から、培地へのStOHの添加によって細胞 に大きな変化が起きていることが分かった。そこで本 研究では、二次元電気泳動とPeptide mass fingerprinting

(PMF)によりNT80の膜タンパク質を網羅的に解析し、

誘導剤の添加によって量的・質的変動を示すタンパク 質を探索することにより、NT80StOHに対する細胞 の応答機構を明らかにすることを目的とした。

2.

実験方法

2-1 膜タンパク質画分のプロテオーム解析

ポリペプトン培地で30℃, 72 h培養したNT80野生株 NT80 eliA (effector protein of lipase induction)3)の細胞 を解析対象とし、誘導剤はStOH1%添加した。回収 した細胞を超音波破砕し、未破砕細胞を取り除いた上 清から、150,000 ×g, 1 h の遠心によって沈殿物として膜 タンパク質フラクションを得た。核酸や脂質除去の後、

Rehydration buffer [7 M urea, 2 M thiourea, 1% (w/v) ASB-14 detergent, 40 mM Tris pH 11, 0.001 % Bromophenol Blue, 200 mM TBP]に溶解し4)2D Quant-kit によりタンパク質濃度を測定した。

二次元電気泳動には600 g相当のタンパク質を用い た。サンプルには両性担体溶液 IPG (Immobilized pH gradient) bufferと、チオール(SH)基の保護試薬である DestreakTM Reagentを加えた。一次元目の等電点電気泳 動に用いるドライストリップゲル(pHレンジはpH3-10、

6-11、4-7)を8 h膨潤し、等電点電気泳動を500-3000 V, 16h行い、二次元目のSDS-PAGE20-40 mAで泳動し た。

二次元電気泳動により分離したタンパク質スポット を切り出し、ゲル内消化して得られたペプチド断片を マトリックス溶液(-CHCA)と混合し結晶化させ、

MALDI-TOF/MS による質量分析を行った。得られた

ペプチドの質量データを、Mascot (Matrix Science) 用いてNT-80のゲノムORFデータベースと照合させる ことでタンパク質を同定した。

2-2転写量解析

NT80野生株をStOH存在下、非存在下で培養し、12

hごとに集菌した。RNAを抽出し、電気泳動によりRNA

が分解されていないことを確認したのち、cDNA に逆 転写し、quantitative PCR (qPCR) 法により、プロテオー ム解析でStOH 添加時に特異的に観察されたタンパク 質をコードする遺伝子[No.44 ompW No.49 putative lipoprotein (ragC )]の転写量を測定した。

3.

結果及び考察

3-1膜タンパク質画分のプロテオーム解析

pH3-10、6-11、4-7の範囲で、膜タンパク質の二次元 電気泳動に成功した。pH3-10で二次元電気泳動を行っ た結果をFig. 1に示す。

Fig. 1より、NT80の膜タンパク質は塩基性タンパク

質が多く含まれていることが分った。Fig. 1で番号を付 けたスポットのうち、53種のタンパク質の同定に成功 した。局在をPSORTb programにて予測した結果、外膜 タンパク質が22種、内膜タンパク質が3種、細胞質タ ンパク質が19種、ペリプラズムタンパク質1種、分泌 タンパク質1種、局在不明7種であった。膜タンパク 質以外のタンパク質、特に細胞質タンパク質が多く観 察された理由として、超遠心分離法では完全には分離 できず膜画分に残ったと考えられる。

同定できたタンパク質のうち、11種がStOH誘導時 に特異的に観察されたものだった (Table 1)。

以下に、StOH添加時特異的に同定されたタンパク質 から、StOHに対する細胞の応答機構について考察する。

Fig. 1 二次元電気泳動像 (pH3-10) wt without induction wt 1% StOH

(2)

永倉 茉莉Page2

Fig. 2転写量

①ストレス応答

No. 20は機能未知だが、ストレス応答に関係するタ

ンパク質 UspA との結合部位を持つタンパク質と相同 性があった。UspAは富栄養培地で定常期に達した時や、

グルコースやリン酸飢餓状態によって誘発されると言 われており、StOH添加によって生育環境が著しく変わ ったことでストレス応答が起きたと考えられる。また、

No. 20No. 53の遺伝子は隣接していることから、こ

れらの遺伝子を含むオペロンがStOH によって発現誘 導されると考えられる。

②StOHの取り込み・代謝・貯蓄

No. 48はグルタミン酸/アスパラギン酸輸送システム

ATP結合タンパク質と相同性が高かった。StOHの代謝 により炭素源が増加し、TCA回路の働きが活発になっ たと思われる。

No. 52はプロピオニルCoA とオキサロ酢酸から2- メチルクエン酸を合成する酵素である。イソロイシン、

メチオニン、バリンのアミノ酸代謝分解によりプロピ オニルCoAを生じる。バリンの代謝中間体がStOH 異的に誘導されるという結果も得られていることから

7)、代謝産物としてプロピオニルCoA が蓄積したと考 えられる。また、低い特異性であるが、アセチルCoA とオキサロ酢酸の凝縮を触媒していると考えられる。

No. 45は生分解性プラスチックPHBの合成に関係す

る タンパク質PhaPと高い相同性を示す。生分解性プラ スチックは、炭素源が豊富な環境下において産生され 5)。このタンパク質は野生株で発現してeliAでは発 現していないことから、EliAの働きによってStOH 菌体内への取り込みが促進され、StOH由来の炭素源蓄 積によって発現したと考えられる。実際、StOH添加時 には、生分解性プラスチックであるPHBの生産も観察 されている。

③バイオフィルム形成・感染

No. 44は、浸透圧や酸化ストレスなどの機能がある

が、最近では宿主への感染にも関与するとの報告もあ る。

No. 49は、細胞外マトリックスタンパク質RagCと相

同性が高かった。rag遺伝子群はバイオフィルムの形成 に関与していることが知られており、NT80のシークエ ンスでNo. 49の前後の遺伝子も、他のrag遺伝子との 相同性が確認できた。StOHによりバイオフィルム形成 の誘導が観察されていることからも6)、StOHによって 発現誘導されたと考えられる。

3-2 転写量解析

Fig. 2に結果を示した。

StOH添加時には、非添加時と比較してompWragC の顕著な転写誘導が観察された。この結果から、NT80 のバイオフィルムがStOHによって発現誘導されるRag 由来の多糖類によって構成されていることが示唆され た。

4.

まとめ

同定できた53種のタンパク質のうち、StOH誘導時に 特異的に観察されたものは11種であった。NT80は、StOH 添加に対して、ストレス応答や感染に関連する遺伝子群 を転写レベルで誘導していることが明らかになった。

5.

参考文献

1) Sudo Y, 2008 PSSJ Archives, 1, e009.

2) Ushio K, et al., 1996 Biotechnol Tech 10; 267-227.

3) Akanuma G, et al., 2012 FEMS Microbiol Lett 339; 48–56.

4)Jagannadham MV, et al., 2012 J Proteomics 75; 2488-2499.

5) Wahl A, et al., 2012 BMC Microbiology 12; 262-263.

6)吉澤 梨絵 修士論文(2013年度) 7)大塚 学士論文(2013年度)

学会発表

36日本分子生物学会年会 ポスター発表 8 日本ゲノム微生物学会年会 口頭発表&ポス ター発表

Table 1 特異的に観察されたタンパク質

Spot No. Annotation MW pI signal

peptide OuterMembrane

44 ompW family protein 24433 9.42

47 outer membrane efflux protein 45955 9.74

49 putative lipoprotein 19835 9.16

CytoplasmicMembrane

48 ABC transporter-like protein 27217 8.22

Cytoplasmic

20 hypothetical protein 30855 5.54

50 small HEAT shock protein 15676 5.64

52 methylcitrate synthase 42777 6.77

53 hypothetical protein 23497 5.51

Unknown

45 phasin family protein 20143 6.92

51 hypothetical protein 15736 5.72

Extracellular

42 lipoprotein 46276 5.55

参照

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