プラント﹁設備投資政策﹂
井 上 康 男
わが国において設備投資に関する最近の著作に河野卦弘氏著
﹁設備投資﹂がある︒同著は第阜設備投資の意義第二蟹殻備
投資の計画および決定第三輩設備投資の経済計算罪四章設備資
金の計画と調達第五茸設備投資の基準値の算定の五黄より成り
鮨三尊において設備投資の経済計鈴として甜原価比較法惚利益
比較法闇投蟄利益率法㈲資金回収期間法㈲新MAPJ法㈲理想
鈴式法等が列挙せられている︒
設備投蟄政策の兎蛮性ほ最近に至って認識が高まり各国にお
いて称々の著作が発表されつ1あるが以下においては西独のプ
ラント著1設備投資政策﹂岬九五八年の内容についてその概要を
検討してみることゝしたい︒同畜によれば西ドイ
第二次大戦終了後経済の早急な回復を達成するため紅設備投資
は技術的な見地が藍要祝された︒その後経済取回役が一応速成
され段落ついた近年においてはじめて技術的な見地と共に蟄
太の合理的な使用のために設備投資の経済計静の重要性が唱え
られるようになって来たという︒設備投資が重要な問題である
プラント﹁設備投資政策﹂ 紹 介 ことの理由にほ甜設備投資ほ経営の長期の運命を左右すること 闇固定費の増大により原価構造が破直化し経済状勢の変化に対 し弾力性を失うこと㈲資本が乏しいため経営の投資政策ほ柑に 重要であること等があげられる︒設備投資政策は広義の財務政 策の一部である︒さて設備投資に閲し実務界においてほ投蟄決 定は大体次の様な決定方法において行われている︒すなわち加 計静的な基礎によらないで投資の決定を行う闇技術的な引算に 基いて投資を決定する㈲経済的な計算に基いて投資の決定を行 う︒まづ常山に皿ほ中小企共において経験と如によりて行われ るものであり非科学的な決定方法である︒しかし生産性向⊥の ため紅ほ中小企業においても設備投資の経消計鎗が必要となる ことは論をまたないのである︒大企業においては勿論のことで ある︒㈲ほ投偽計画が主として抜彿的見地に基いて行われるの である︒技術的な方岡のみに向けられた討静はしかしながら投 資政策的決定に対しては植端に危険である︒技術家はしばしほ 投資計画に不適当な尺崖を使用するのである︒彼ほ設備な抜硝 的作用効果にしたがって判断する︒技循的作用効果は成梓叫つ の前提でほあるが必ずしもその朗務経済的合目的性に対する保 証でほな.い︒技術的見地のみを考慮した場合には製造技術的利 点を持った新し小方法が優遇される結果投下農本の利益性およ び利益性の設備能力の操業度への依存性を考慮しないのである ︒披柵的鞍最も進んだ製造でほなく相場に滴合した製造が合目 的な資本資腺の使用であることが考慮されないのである︒また
︵四四七︶ 山〇七
第三十三巻 第三号
・資金面の制約から最も技術的に進んだ設備への投資が出来ない
場合もあるのである︒爛の場合は設備投資の経済計静を行う場
合である︒か1る経済計算の実務には次のような諸方法があ
る︒すなわち山原価比較法闇利益比較法聞役資利益率法㈲回収
期間法である︒そうして以上の実務計穿は通常次の一ケ年の
予想生産販売盤面基いて︑すなわち短期的予想操濃度を基礎数
値として比較討算がなされて行く︒その理由は実務においてほ
将来の予測因経であるからであるという︒㈲の原価比較法の短
所としては次のような点があげられる︒川設備は長期に捗って
凌用せられるものであるのに短期的な次の脚ケ年のみの予想操
・幾度のみを基礎資料として比較計算を行うことほ不適当であ
る︒回設備の長期の使用年数の経過中に生ずる原価の変化を考
慮しない日原価丈を比較することは収益のカは取番えに無関係
.でコンスタントであると仮定されているがか1る仮定が妥当し
ない場合が多い国資本投資額紅対する関係が考慮せられていな
い︒次に必の利益比較法の短所としてほ次のような点があげら
れる︒川短期的操業度を基礎にして比較計算を行っていること︒
回資本投資額に対する関係が考慮せられていない︒櫛の投資利
・益率法は英米の設備投資の経済罰静において最も広く強調され
<いる引算方法である︒それはアメリカではリターン・オン=イ
ンヴュストメソトと呼ばれておりアメリカの投資計算では主と
してこの投資利益率が重視せられている︒各設備の投資利益率
ほ高い方から順々にならべられてその高いカの設備から投資が ︵四四八︶ 劇〇八
選択せられて行く︒また各設備の投資利益率はその会社の過去
の平均的な資本利益率と比較されて投資の適否の判定を受ける
ことゝなるのである︒それほ山般に会社外部の利子率とほ比較
せられない︒投資利益率法にほ次の如き短所が存在する︒
川短期的な次年度又は今年度の操業度を基礎にしている︒画こ
の計算は利益に関してのみならず投下資本に関しても短期的で
ある︒それは投下栗本が毎年等しいという前提に立っ︒しかし投
下資本は年数の経過と共に減少す冴︒それ政利益が等しいとき
は資本利益率ほ耐用年数の経過とともに増大するのである︒H
それは現在の利益と例えば十年彼の同じ額の利益と同じ意義を
有すると仮定している︒しかし経済生活においては利子が重要
な意味な持つから投資計算においてほ時間要素と利了な考慮す
ることが必要である︒最後に㈲の回収期問法は実務においてほ
上記三つの計算方法に対し補助的に使用せられている︒なんと
なれば上記の三つの方法夜半として役蟄の利益性の判定に役立
つのに反し回収期間法は投資の安全性の判定尺度として役立つ
からである︒すなわち回収期問が長引けほ長引くほど設備に関
して危険︵不景気による需要減過等︶の発生する確率が大とな
るからである︒この方法転上れば設備投贋は回収期間の早いも
のから選ばれることになる︒しかしこの方法紅ほ次の様な欠点
がある︒抑短期的な見積りにょるコンスタントな年度利益又ほ
原価節約の仮定に基く計算ほ次年度の操業度を基礎としており
実際の回収期間との誤差を生ぜしめる︒㈲回収期間ほ投肇の利
益椀の表現尺度ではないから蝉独で使用することは出来ない︒ 以上実務庇おける経済計算の方法は共通して短期的資料に基き 長期的観点に立っていない︒又時間的要素と利子の重要性に考 慮な払っていないのである︒以上ほ設備投資の経済計算の実務 について検討したのであるがしからば次に設備投資の経済計算 の純理論としてほ如何なるものが存在しているであろうか︒現 在まで投資の経済計餅の理論が実務に受け入れられなかった理 由は主として次のような根拠に由来していたのであった︒ 伽経済状勢は絶えず変動するから将来の予測が因雉であるため 実務界は正確な計算方法を放棄した︒ 脚投資計算の理論は仙面国民経済学から展朋され国民経済学的 観点からの理論が従来多かった︒それは実務家にとって難解な 用語と数式を用い且つ理論が〟般的で各企業の個々の実態に即 したものではなかったので企其の実務家はそれになじむことが 出来なかった︒すなわちこれほ企業の実務家通が不勉強であっ たがためである︒設備投資の経済計算の理論は山方蔽おいてほ 経営経済学の原価理論紅おいて取り扱われ他のカにおいては 国民経済学の資本理論において取り扱われたのであった︒両者 ほその観察点を異にし前者ほ経営の原価法別から出発し時間要 素と利子思考を考慮せず静的投資理論と呼ばれるに反し後者ほ
時間要素と利子的思考を導入t動的投資理論と呼ばれている︒ すなわち学問としての設備投資理論はしたがって㈲静的投資理 論と似動的投蟄理論の二つに区分されるのである︒
プラント﹁設備投資政策﹂ 闇静的投資理論 原価に影響を与える要因には種々のものがあ るがその主なものをあげると操業度︑経営規模の大きさ︑原価 則の価格︑原価財の品質︑製品種類の構造等がある︒静的投 資理論は他の原価霹響要因腔コンスタントとして操業度の変化 に対応する旧設備および各種の新設備の各々の製品一挙位原価 ︵平均原価︶を計算して連続的な平均原価線を図示し将来の平 均的操業度における平均原価の最も低い設備を殴良のものとし■ て採用するのである︒
静的投資理論の原価比較ほ経済実務の原価比較と次の点に率
いて異なるのである︒
川静的投資理論ほ山期間における平均単位原価から出発する笹
反し実務は二期間における総原価を考察する︒
㈲静的投資理論は操業度の変化に対応する各設備の平均原価の
変化を研究するが実務における原価比較法は山定操業度︵次年
度の︶の原価を比較するのである︒
H静的投資理論は合理化投資および拡張投資ぬ使用されるが緯
営実務は原価比較法を一般に唯合理化投資に対してのみ使用す
る︒
さて右の静的投資理論は原価の節約を判定基準として使用す
るのである︒与れは操業度との関連における設備の有利件の判
断を与えてくれるという利点を有するがしかし平均原価曲線︵
またはその数値︶の把握が非常に儲雉なため実務的ではないの
である︒更に投資の利益性に影響を与える他の要素を考慮しな
︵四四九︶一〇九
第三十三巻 第三号
いで原価と採光度の関係のみを考慮することは不適当である︒
静的投資理論の短所をあげれば次の如きものがあげられるであ
ろう︒
川旧設備の残存価額の建研が考慮されていない︒
㈲時間的要諦と利子が考辟されていない︒
H操幾度および産産偶力︵経営規模︶と共に原価に影響を与え
る他の要因が考臆されていない︒ 国技真の英行に原因する収益の変化が考慮されでいない︒ 以上の如く静的投腎細論は実務の問題に対しては不十分な点が
多いのである︒
似動的投資慧m 動的投資讐㈹は国民経済学の資本理論から発
展せしめられたものである︒動的投資理論には大体聖一﹇コつて①
資本価値計算法④内部利子率計静法︑⑨年金計算法の三つがあ
る︒ ①資本価値計静法
♪ニ七軒h㌔\:bゴ・:単鼎㊦鮮轟管伊恥ヰか野望翫︵酵素8養
専添醤輝け湖欝堂小声相違市晒>﹁抒ぐノ︶ ㌻堂≠澱
n⁝群議要望遍鼎浮 ㌻・酵素洋舞諒 下⁚堂鍬8囲討論
︵敏割譲諒︶ り:壁璽思貰芸轟 ▲誓道義
か+計十鈷て⁝十計+轟甘 肯
く−〜を求めてこの大なる設備から投資して行く方法が資本
価値計算法である︒毎年の利益の封鮮紅おいて減価償却を費 ︵四五〇︶ ○
用に入れないのほ∫を差引くことによって減価償却に代用す
るからであり又利子を費用に静入しないのは毎年の利益を割
引くことによって考慮されているからである︒
⑧内部利子率法 七︸−∽ ♪l▲ ︑−︑︑∵㍉−− 二︑: 二
となるような∬を求める︒これを内部利子率と竃いこれの大
なる設備から投資順位を決定し又内部利子率を苗場利子率と
比較する︒
⑨年金計静法
各設備について
を求めこの年金の大なる設備から投資をして行く︒
以上において動的投資計算の概略を説明したが動的投資理論に
は次のような長所がある︒
川投資計算の結果は減価償却法の選択紅よる影響を受けない︒
㈲将来の収益および臆価︵操業度︶を考慮する︒
Hこの計算は実際の利子率と内部利子率の比較を可能ならしめ
てくれる︒
動的投資理論ほ他の全ゆる方法よりも理論的に優れた方法であ
る︒
さでこの動的投資計算を正しく行うためにほ次のような個々の 二千−〇 ズー+ユヨ
︵−+叫︶記√l−問題を解決しておく必要がある︒
州投頁理論は設備の収入と支出を計算するが実務は収益と廉価
を考察する︒
回動的投資計算は異なる耐用年数の設備の適正な比較が出来な
︒
日動的投鷺計算は異なる投下資本の設備の適正な比較が出来な
︒
国動的投資計鈴の三つの計甜方法は設備の有利性の決定紅対し
唯一定の前提の下においてのみ結論値が等しい︒
囲動的投資計算は合理化投蛍の特殊性に注意していない︒
さて次に合理化投資に対する動的投資理論の計算例を掲げてみ
る︒
利子率ほ一〇%と仮定する︒
醇轟沼藤色聖廟扇 翰聾
鐘副群豪⁚
茄 轟 轟 澄
謝 塾 轟 査
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