- 15 - A. 研究目的
2013年 4 月から感染症法に基づく 5 類全数届 出の対象疾患となった IHD について、これまで に蓄積された感染症発生動向調査(NESID)デー タの解析から、経年的な報告数の推移と、年齢群 別の病型分類、都道府県別の報告状況を記述し、
疫学的特徴を考察することを目的としている。
B. 研究方法
感染症法に基づく感染症発生動向調査によっ て2013年14週から2017年52週に NESID に届け出 られた症例を対象に解析を行った。
月毎報告数推移については、2013年14週から 2016年52週までに報告された症例を対象に解析 を行った(2018年 1 月10日現在のデータを利用)。
人口10万人当たりの年齢群別病型分類別の報 告数推移及び都道府県別の報告数については、
2013年14週から2016年52週までに報告された症 例を対象に解析を行った(2017年11月30日現在の データを利用)。
人口10万人当たりの報告数の算出には、総務省 統計局から発表されている年央人口(http://
www.stat.go.jp/data/jinsui/2.htm#annua より各 年10月 1 日人口)の人口データを用いた。
各病型は、以下のように定義した。ここで、菌 の検出とは、病原体もしくは病原体遺伝子が検出 された場合とする。
・ 髄膜炎:髄液から菌が検出された場合、または、
血液から菌が検出され、かつ症状欄に「髄膜炎」
と記載があるもの
・ 菌血症を伴う肺炎:血液から菌が検出され、
かつ症状欄に「肺炎」と記載があるもので、
髄液からの菌検出がなく、症状欄に「髄膜炎」
の記載がないもの
・ 菌血症:血液から菌が検出されたもので、髄 液からの菌検出がなく、かつ症状欄に「髄膜炎」
「肺炎」「中耳炎」「その他の症状」の記載がな いもの
・ その他:上記に該当しないもの
厚生労働科学研究費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)
分担研究報告書
2013-2017年における侵襲性インフルエンザ菌感染症の 感染症発生動向調査の解析
研究分担者: 砂川 富正(国立感染症研究所感染症疫学センター)
研究協力者: 川上 千晶(国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース)
福住 宗久(国立感染症研究所感染症疫学センター)
高橋 琢理(国立感染症研究所感染症疫学センター)
研究要旨 2013年 4 月から2017年52週までに報告された侵襲性インフルエンザ菌感染症(Invasive Haemophilus influenzae Disease, IHD)症例について解析し、全国報告数の推移、人口10万人当た
りの年齢群別病型分類別の年間報告数、および都道府県別の人口10万人当たりの年間報告数を記述 した。報告数は2013年から2017年にかけて経年的に増加傾向であり、過小報告が継続している可能 性があると考えられた。報告例は65歳以上が過半数を占めるが、人口10万人当たりの報告数は、
1 歳未満、65歳以上の年齢群に多く、65歳以上の年齢群では経年的に増加傾向であった。病型は、
5 歳未満の小児と、65歳以上の高齢者で菌血症を伴う肺炎の割合が高く、5 歳以上65歳未満では菌 血症の割合が高かった。IHDは全数届出の対象疾患となってから 5 年目とまだ期間が短く、サーベ イランスデータとして一定の解釈が可能となるまで、まだ時間を要する可能性があり、今後も継続 的にデータの収集と解析を続ける必要性があると考えられた。
- 16 -
(倫理面への配慮)
本研究では感染症法において元より個人情報 を伴わない第 5 類感染症として収集されている IHDの情報を、集団として記述的にまとめている ほか、情報の取り扱いについては細心の注意を 払っており、倫理的な問題は生じない。
C. 研究結果
診断月ごとの報告数を図 1 に示す。2013年14週 から2017年52週までに、1,243例の IHD 症例の報 告があった。報告数は2013年111例、2014年197 例、2015年251例、2016年313例、2017年371例と、
経年的に増加傾向を認めた。月別報告数は夏に少 なくなる傾向がみられた。
2017年の届出症例における致命率は7.0%(死 亡数26)であり、2013年から2016年までの致命率
(5.2 ~ 8.3%)と同様であった。
65歳以上の高齢者が報告数の64%を占め、この 年齢群における報告数は経年的に増加していた。
15歳未満の年齢群では報告数の増加傾向は明ら かではなかった。
人口10万人当たりの年齢群別病型分類別の年 間報告数を図 2 に示す。人口10万人当たりの報告 数は、0 歳児で最も多く、次いで、5 歳未満およ び65歳以上の年齢群からの報告が多かった。
報告された病型の内訳は、菌血症を伴う肺炎
457例(53%)、菌血症253例(29%)、髄膜炎46例
(5 %)、その他 116例(13%)であった。
年齢群別病型分類では、0 歳児では他の年齢群 と比べ、髄膜炎の報告割合が多かった。5 歳未満 および65歳以上の年齢群では菌血症を伴う肺炎 の割合が最も多く、特に65歳以上の高齢者では菌 血症を伴う肺炎が62.8% を占めた。5 歳以上65歳 未満の年齢群では菌血症の割合が最も多かった。
髄液・血液以外の無菌検体からの菌検出により 届出に至った症例は 3 例(胸水 2 例、胸水・腹 水 1 例)のみであった。
人口10万当たりの各都道府県別の年間報告数 を図 3 に示す。各都道府県の報告数はほぼ全国的 に、経年的に増加していた。
D. 考察
2013 ~ 2017年に NESID に報告された IHD 症 例について、症例数の推移、人口10万人当たりの 年齢群別病型分類別と各都道府県別の年間報告 数について記述した。
報告数は経年的に増加傾向であり、医師の届出 率は上昇していることが予想されるが、依然とし て過少報告であり、本結果は過小評価である可能 性があると考えられた。また、2016年11月より届 出基準における診断に用いる検体の種類が追加 され、血液・髄液からの検出に加え、その他の無
図 1. IHD診断月毎の報告数推移(診断年別. 2013年14週 〜2017年52週, n=1,243)
ついては、2013 年 14 週から 2016 年 52 週 までに報告された症例を対象に解析を行っ た(2017 年 11 月 30 日現在のデータを利用)。
人口 10 万人あたりの報告数の算出には、
総務省統計局から発表されている年央人口
( http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2.
htm#annua より各年 10 月 1 日人口)の人 口データを用いた。
各病型は、以下のように定義した。ここ で、菌の検出とは、病原体もしくは病原体 遺伝子が検出された場合とする。
・髄膜炎:髄液から菌が検出された場合、
または、血液から菌が検出され、かつ症状 欄に「髄膜炎」と記載があるもの
・菌血症を伴う肺炎:血液から菌が検出さ れ、かつ症状欄に「肺炎」と記載があるも ので、髄液からの菌検出がなく、症状欄に
「髄膜炎」の記載がないもの
・菌血症:血液から菌が検出されたもので、
髄液からの菌検出がなく、かつ症状欄に「髄
膜炎」 「肺炎」 「中耳炎」 「その他の症状」の 記載がないもの
・その他:上記に該当しないもの
(倫理面への配慮)
本研究では感染症法において元より個人 情報を伴わない第 5 類感染症として収集さ れている IHD の情報を、集団として記述的 にまとめているほか、情報の取り扱いにつ いては細心の注意を払っており、倫理的な 問題は生じない。
C.研究結果
診断月ごとの報告数を図 1 に示す。2013 年 14 週から 2017 年 52 週までに、1,243 例 の IHD 症例の報告があった。報告数は 2013 年 111 例、2014 年 197 例、2015 年 251 例、
2016 年 313 例、2017 年 371 例と、経年的に 増加傾向を認めた。月別報告数は夏に少な くなる傾向がみられた。
図 1.IHD 診断月毎の報告数推移(診断年別. 2013 年 14 週~2017 年 52 週, n=1,243)
- 17 - 菌部位からの検出も含まれるようになった。しか し、血液・髄液以外の無菌検体からの菌検出によ り届出に至った症例は 3 例のみであった。2017年 までにみられた経年的な報告数の増加において、
この届出基準の追加による影響は大きくないと 考えるが、今後周知が進むに連れて経年的な報告 数の評価にはより注意が必要となる。
2016年の人口10万人当たり報告数は 1 歳未満が 最も多く(1.397/10万人口)、次いで65歳以上(0.596 /10万人口)、1 歳以上 5 歳未満(0.353/10万人口)
と続き、2015年と同様の傾向であった。
都道府県ごとの人口10万人当たり報告数は、全 国的に概ね増加傾向であり、明らかな地域差は認 められなかった。
E. 結論
IHDは全数届出の対象疾患となってからの期間 が短く、サーベイランスデータとして一定の解釈 が可能となるまでまだ時間を要する可能性があ り、今後も継続的にデータの収集と監視を続ける ことが重要と考えられた。
図 3. 2013年 〜2016年のIHD都道府県毎人口10万人当たり報告数
D.考察
2013~2017年度にNESIDに報告された IHD症例について、症例数の推移、人口 10 万当たりの年齢群病型分類別と各都道府県 別の年間報告数について記述した。
報告数は経年的に増加傾向であり、医師 の届出率は上昇していることが予想される が、依然として過少報告であり、本結果は 過小評価である可能性があると考えられた。
また、2016 年 11 月より届出基準における 診断に用いる検体の種類が追加され、血 液・髄液からの検出に加え、その他の無菌 部位からの検出も含まれるようになった。
しかし、血液・髄液以外の無菌検体からの 菌検出により届出に至った症例は 3 例のみ であった。2017 年までにみられた経年的な 報告数の増加において、この届出基準の追 加による影響は大きくないと考えるが、今 後周知が進むに連れて経年的な報告数の評 価にはより注意が必要となる。
2016 年の人口 10 万当たり報告数は 1 歳 未満が最も多く(1.397/10 万人口)、次い
で 65 歳以上(0.596/10 万人口)、1 歳以上 5 歳未満(0.353/10 万人口)と続き、2015 年と同様の傾向であった。
都道府県ごとの人口 10 万あたり報告数 は、全国的に概ね増加傾向であり、明らか な地域差は認められなかった。
E.結論
IHD は全数届出の対象疾患となってか らの期間が短く、サーベイランスデータと して一定の解釈が可能となるまでまだ時間 を要する可能性があり、今後も継続的にデ ータの収集と監視を続けることが重要と考 えられた。
F.研究発表
1. 論文発表:なし 2. 学会発表:なし
H.知的財産権の出願・登録状況 1.特許取得:なし
2.実用新案登録:なし 3. その他: なし
図 2. IHD年齢群別・病型別人口10万人当たり報告数(診断年別. 2013年第14週 〜2016年第52週)
していた。15 歳未満の年齢群では報告数の 増加傾向は明らかではなかった。
人口 10 万人当たりの年齢群病型分類別 の年間報告数を図 2 に示す。人口 10 万人あ たりの報告数は、0 歳児で最も多く、次い で、5 歳未満および 65 歳以上の年齢群から の報告が多かった。
報告された病型の内訳は、菌血症を伴う 肺炎 457 例(53%)、菌血症 253 例(29%)、
髄膜炎 46 例(5%)、その他 116 例(13%)
であった。
年齢群別病型分類では、0 歳児では他の
年齢群と比べ、髄膜炎の報告割合が多かっ た。5 歳未満および 65 歳以上の年齢群では 菌血症を伴う肺炎の割合が最も多く、特に 65 歳以上の高齢者では菌血症を伴う肺炎が 62.8%を占めた。5 歳以上 65 歳未満の年齢 群では菌血症の割合が最も多かった。
髄液・血液以外の無菌検体からの菌検出 により届出に至った症例は 3 例(胸水 2 例、
胸水・腹水 1 例)のみであった。
人口 10 万当たりの各都道府県別の年間 報告数を図 3 に示す。各都道府県の報告数 はほぼ全国的に、経年的に増加していた。
図 2.IHD 年齢群別・病型別人口 10 万人あたり報告数(診断年別.2013 年第 14 週~2016 年第 52 週)
図 3.2013 年~2016 年の IHD 都道府県毎人口 10 万人あたり報告数
- 18 - F. 研究発表
1. 論文発表 なし 2. 学会発表
なし
G. 知的財産権の出願・登録状況 1. 特許取得:なし
2. 実用新案登録:なし 3. その他:なし