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―県内 12 コースの実地調査および効果検証の試み―

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Ⅰ.緒 言

 少子高齢化社会といわれる日本において、観光は 消費の増加や雇用の創出による地域の活性化につな がることから大きな注目を集めている。観光庁によ ると、平成 20 年度の国内宿泊旅行消費額は 15.6 兆 円、国内日帰り旅行消費額は 4.9 兆円と推計されて おり1)、さらに税収や雇用などを含めるとその経済 波及効果は極めて大きいことから、近年では旅行・

観光産業に産学官が連携して取り組むことが多く なってきた。特に、観光庁では国内旅行需要の拡大 や地域活性化につながる新しいタイプの旅行形態と して、①エコツーリズム、②グリーンツーリズム、

③ヘルスツーリズム、④ロングステイ、⑤文化観光、

⑥産業観光、の 6 分野からなる『ニューツーリズム 創出・流通促進事業』を観光行政施策として展開し、

旅行者ニーズの把握や旅行商品の流通に向けたノウ ハウの蓄積を進めている2)

 これらニューツーリズムの中でも、昨今の健康 ブームやメタボリックシンドロームの減少を目標と した特定健診・特定保健指導などの影響により、新 たな旅行形態としてヘルスツーリズムに注目が集 まっている。ヘルスツーリズムの定義は必ずしも明 確ではないが3)、『自然豊かな地域を訪れ、そこに ある自然、温泉や身体に優しい料理を味わい、心身 ともに癒され、健康を回復・増進・保持する新しい 観光形態であり、医療に近いものからレジャーに近 いものまで様々なものが含まれる(観光立国推進基 本計画:平成 19 年 6 月 29 日 閣議決定)』とされ、

広義では『健康増進にかかわる観光・旅行』と捉え ることができる。したがって、日本やヨーロッパで 古くから存在している温泉や海浜などでの保養も含 まれると考えられることから、ヘルスツーリズムと

は「今まで存在していなかった全く新しい旅行形態」

というよりもむしろ自治体や旅行会社が健康に関連 した商品価値として気付き、「商品企画の対象とし てあらためて認識されるようになった旅行形態」と いえるだろう3)

 このように、今日再注目されるようになってきた ヘルスツーリズムであるが、その科学的根拠につい ては明らかになっていない点も多い。そこで最近で は様々な地域において、その特色を活かしたヘルス ツーリズムの健康増進効果が検討されるようになっ

てきた4 − 6)。その一例として、和歌山県では、世界

遺産・熊野古道を中心とした精神性の高い文化と自 然が一体となった熊野地域を心身の健康づくりの フィールドとして活用し、いわゆる施設型では得ら れないプログラム開発に取り組むとともに7)、1 回 の熊野古道のウォーキング効果として、免疫能の向 上、ストレス軽減および気分の改善、前頭連合野の 機能向上がみられたこと、また、2ヶ月間の古道 ウォークトレーニングによって、内臓脂肪の減少と 心肺機能の増加、大腿部筋断面積の増加などが認め られたことを報告している4,5)

 一方、山梨県では 2009 年 4 月に『社団法人やま なし観光推進機構』を発足させ、ホームページ8)

による観光情報の紹介やキャンペーンの実施など、

観光事業に大きく力を入れつつある。山梨県は温泉 や観光名所も多く自然豊かであり、年間の降雨量が 少なく日照時間が長いことからハイキングやウォー キングに適した地域が数多く存在する。また、首都 圏整備法施行令によると山梨は首都圏に分類されて おり東京や横浜など都心からのアクセスも比較的よ いといえることから、自然や観光名所と温泉を組み 合わせた健康増進に効果的なウォーキングコースを

山梨県におけるヘルスツーリズムとしてのフィットネス・ウォーキングコースの検討

―県内 12 コースの実地調査および効果検証の試み―

1,2 川田 裕樹  3 林田 はるみ  4 佐藤 文昭  5 田草川 憲男

Yuki KAWATA

1,2

 Harumi HAYASHIDA

3

 Fumiaki SATO

4

 Norio TAKUSAGAWA

5

1

帝京科学大学総合教育センター 

2

帝京科学大学地域連携推進センター 

3

健康科学大学健康科学部、

4

特定非営利活動法人大学コンソーシアムやまなし 

5

山梨学院短期大学食物栄養科

(平成 22 年 11 月 30 日受理)

Key words:着地型観光 ヘルスツーリズム ウォーキング 身体活動量 歩数

(2)

提示できれば、山梨県のヘルスツーリズムとして県 内外に PR し、着地型観光商品として観光振興に大 きく活用できるものと考えられる。

 そこで本調査では、山梨県の豊かな自然と豊富な 観光資源を組み合わせ、かつ、健康づくりに期待で きるウォーキングコースを考案し、各コースを実際 に歩行した際の歩数やエネルギー消費量を把握する こと(検討 1)、ならびに、2 ヶ月間定期的にフィッ トネス・ウォーキングを行った際の形態・体組成、

体力値の変化を検証すること(検討 2)により、観 光誘致のための基礎資料を得ることを目的とした。

Ⅱ.方 法 A.対象者

 本調査は特定非営利活動法人『大学コンソーシア ムやまなし』が山梨県庁より「緊急雇用創出事業」

として委託され実施するものであるため、採用時現 在離職し、休職中である者を調査員として公共職業 安定所等から公募した。そして、調査員として山梨 県内に居住する平均年齢 45 ± 4 歳の女性 3 名を採 用し、本調査の対象者とした(表 1)。なお、本調 査の目的、方法、危険性、データの公表については 十分に説明を行い、書面にて同意を得た。

B.ウォーキングコースの選定

 山梨県内の大学教員、大学コンソーシアムやま なし事務局および調査員によって『フィットネス・

ウォーキング研究会(以下、研究会)』を構成し、

定期的な意見交換を行いながら調査の計画や資料の 作成を進めた。また、研究会では、今回の調査にお いて、ヘルスツーリズムに寄与できるような自然や 温泉を組み合わせた歩行を『フィットネス・ウォー キング』と定義し、歩行の際の姿勢や速度について は、いわゆる「大きなフォームでやや速い速度の歩 行」のみではなく、「姿勢や速度について特に意識 しない通常通りの歩行(自然体での歩行)」も含め ることとした。

表 1 対象者の身体的特性

 研究会では、山梨県庁から提案のあった 17 の観 光コース案の中から、本調査の目的に適ったフィッ トネス・ウォーキングとしての魅力を検討し、おお よそ以下の 7 点について考慮しながら今回のウォー キングコースの選定を行った。

(1)着地型観光を目指すため、文化的・歴史的特色 があるなど、地域資源を活かしたコースである こと。

(2)ウォーキングコースの近辺に日帰り温泉を組み 込めること。

(3)最寄駅からのアクセスが良いこと。

(4)コースの距離、勾配などから、ウォーキングに よる健康増進効果が期待できるだけの負荷や時 間を得られそうなコースであること。

(5)距離が長すぎたり勾配が急すぎたりせず、中 高齢者が日帰りでも気軽に訪れることができる ウォーキングコースであること。

(6)地野菜など、訪れたウォーキングコースで購入 可能な特産物があること。

(7)コースが山梨県内の一部分に集中せず、地域的 バランスがとれていること。

 その結果、上記の項目を多く満たしたコースであ るという理由から、最終的に①甲府市、②大月市、

③富士吉田市、④北杜市 ( 清里 )、⑤笛吹市、⑥都 留市、⑦富士河口湖町、⑧身延町、⑨甲州市、⑩北 杜市 ( 小淵沢 )、⑪増穂町、⑫韮崎市、の 12 箇所を 今回のフィットネス・ウォーキングコースの調査対 象として選定した。

C.測定・調査項目 1. 測定・調査概要

 まず、調査員らは「予備調査」として、選定され た 12 箇所のウォーキングコースをおよそ 2 ~ 4 日 に一度、実際に歩きながら交通量や休憩場所の有無、

コースの特徴などを随時記録するとともに、観光地 として PR できる場所の写真撮影などを行った。そ の後、研究会にて各コースの詳細なルートを決定 し、引き続きおよそ 2 ~ 4 日に一度のペースで、コー スの所要時間や歩数、エネルギー消費量などを測定 するための「本調査」を実施した(検討 1)。また、

予備調査および本調査に費やした約 2 カ月の調査期 間におけるフィットネス・ウォーキングコースの歩 行(およそ 2 ~ 4 日に一度のウォーキング)による 効果を検証するため、調査員に対し形態・体組成測 定、体力測定を調査期間前後に実施した(検討 2)。

なお、この 2 ヶ月間の調査期間は普段通りの生活を 行うよう調査員には伝え、食事制限や調査以外の運

(3)

動についての指示は特に行わなかった。

2. 形態・体組成測定

 検討 1、2 とも形態については、身長、腹囲(立 位臍高位)、大腿囲(右膝蓋骨上 10cm)、上腕囲

(右肘伸展位)を測定した。また、体重、骨格筋 量、体脂肪量、体脂肪率を高精度体成分分析装置

(InBody720,BIOSPACE) に て 測 定 し た。 な お、

これらの測定は熟練した同一の検者が実施した。

3. 歩数および身体活動量の測定

 検討 1、2 とも調査員の腰部に原則として毎日、

起床時から就寝時までの間、加速度センサー内蔵歩 数計(Lifecorder PLUS,スズケン;以下ライフコー ダ)を装着させた。また、ライフコーダによる活動 記録と実際の生活との整合性を把握するため、調査 員に対し起床・就寝時間およびライフコーダの脱着 時間を毎日記録するよう指示を行った。

4. 調査員によるウォーキングコースの記述式調査  検討 1 において調査員は、まず予備調査の中で景 色の良い場所、休憩場所、交通量、トイレの有無な どの有用な情報を随時記録し、観光や休憩・食事に 適した場所を各コースのポイントとして設定した

(以下、設定ポイント)。そして本調査では各コース の調査開始・終了時および、設定ポイントにおいて、

歩数、時間を記録するとともに、昼食や休憩の時間 等も詳細に記録した。

5. 体力測定

 検討 2 において、筋力の指標として握力および 30 秒椅子立ち上がりテストを、筋持久力の指標と して上体起こしを、柔軟性の指標として立位体前屈 の測定を実施した9 − 13)。また、全身持久力の指標 として PWC150(Physical Working Capacity 150)を、

自転車エルゴメータを用いた運動負荷試験により測 定した。PWC150は調査員を 5 分間安静にさせた後、

15watt/min のランプ負荷で心拍数がおよそ 160 ~ 170bpm になるまで自転車を漕がせ、1 分間ごとの 心拍数を記録した。そして得られた心拍数と自転車 エルゴメータの負荷値(watts)との回帰直線から 心拍数 150bpm 時の作業強度(PWC150)を算出し た14)

6. ライフコーダによって得られた歩数・身体活動 量の解析

 得られたライフコーダの測定結果は 2 分間ごとの 活動強度が加速度によりおおよそ 0(安静)、0.5(微 小運動)、1 ~ 9(歩行~ジョギングレベル)の 11 段階に分類され、CSV(Comma Separated Value)

形式で表示される。そこで検討 1 において、調査員 の記述によって得られた記録を元にフィットネス・

ウォーキングコースの本調査が行われていた時間を 割り出し、休憩時と昼食時を削除した値を各コー スにおける活動強度として採用した。そして、今 回の調査と同類の一軸加速度計の活動強度から代 謝当量(metabolic equivalents;METs)を求めた Kumahara et al. の推定式15)

 METs = 0.043x2+ 0.379x + 1.361

; x= ライフコーダの活動強度 より、ウォーキング調査時における 2 分間ごとの METs および運動量(kcal)を算出した。

 運動量(kcal)=活動時代謝量−安静時代謝量        =(METs ×体重(kg)×時間(h)×1.05)

        −(体重(kg)×時間(h)× 1.05)

 なお、このライフコーダは 1 日あたりの歩数は CSV 形式で表示されるが時間ごとの歩数は表示さ れないため、フィットネス・ウォーキンコース調査 時における歩数の値は、調査員がウォーキング開始 時、ウォーキング中の各設定ポイント、およびウォー キング終了時に適宜記録した値を採用した。

 調査 2 において、ライフコーダより得られた CSV 形式のデータと調査員の記述によって得られ た起床・就寝時間、ライフコーダの脱着時間を照ら し合わせ、装着忘れの日や起床後すぐにライフコー ダを装着できていないデータを解析から除外した。

そして、今回のフィットネス・ウォーキング予備調 査開始前の 2 週間のうち土日祝日を除いたものを日 常生活のデータ、本調査を実施した 12 日間のデー タをウォーキング実施日のデータとし、平均した値 をそれぞれのエネルギー消費量として採用した。

Ⅲ.結果・考察

A.フィットネス・ウォーキングコースとして考案 された 12 コースの身体活動量(検討 1)

 今回の調査により考案された、①甲府市、②大月 市、③富士吉田市、④北杜市(清里)、⑤笛吹市、

⑥都留市、⑦富士河口湖町、⑧身延町、⑨甲州市、

⑩北杜市(小淵沢)、⑪増穂町、⑫韮崎市、におけ る 12 の地域について、予備調査によりおおよその 距離や所要時間を把握するとともに、コースの詳細 なルートを決定した(表 2)。これら 12 箇所の歩数、

METs 値、消費エネルギー(kcal)などを表 3に示す。

 各ウォーキングコース歩行時の METs 値はコー スによる違いは若干あるものの 2.8 ~ 3.3 程度であ り、運動量は調査員の体重によって大きく異なる が、おおよそ 450 ~ 750kcal であった。厚生労働省 健康づくりのための運動基準 2006(以下、運動基 準)16)では、活動強度である MET に時間を乗じ

(4)

表 2 12 箇所のフィットネス・ウォーキングコースの概要

表 3 フィットネス・ウォーキングコースにおける調査員の身体活動量

たもの(メッツ・時)を『エクササイズ(Ex)』と 定義するとともに、身体活動(骨格筋の収縮を伴い 安静時よりも多くのエネルギー消費を伴う身体の状

態)を、日常生活における労働、家事、通勤・通学 などの「生活活動」と、体力の維持・向上などを目 的として計画的・意図的に実施する「運動」の 2 つ

(5)

に分類し、健康づくり(特に生活習慣病予防)の 目安として 3METs 以上の身体活動量を 1 週間当 たり 23Ex、このうち「運動」は 4Ex 行うこと、ま た、歩数では毎日 8000 ~ 10000 歩確保することを 推奨している。それに対し、本研究における調査員 A、B、C のウォーキングコース歩行時の METs 値 は、運動指針で推奨される 3.0METs よりも下回っ た箇所も多く見られた。今回の調査では、観光を想 定した歩行運動による所要時間や歩数、身体活動量 などを把握することがねらいであり、このことを念 頭にフィットネス・ウォーキングについて定義した ため、調査員には歩行速度に関する指示はあえて行 わなかった。したがって、場所によっては歩行速度 が遅かった箇所や、調査員自身が行った記述式調査 では書き表せないような短時間の立ち止まりなどが あり、コースによっては 3.0METs よりも下回った ことが推察される。平地での歩行やウォーキング 時におけるおおよその METs 値は、「ゆっくりした 歩行(54m/ 分未満)」が 2.0METs、「ゆっくりした 歩行(54m/ 分)」が 2.5METs、「普通歩行(67m/

分)が 3.0METs、」「歩行(81m/ 分)」が 3.3METs、

「やや速歩(94m/ 分)」が 3.8METs、「速歩(95 ~ 100m/ 分程度)」が 4.0METs、「かなり速歩(107m/

分)」が5.0METsということが示されている 16)。よっ て、フィットネス・ウォーキングコースを活用した 運動プログラムを実施する場合などに運動基準に沿 うよう 3.0METs 以上の運動負荷の確保を目指すの であれば、やや大きめのフォームで速度を少し速め てウォーキングを行うなどの工夫も有効かもしれな い。ただし、運動基準において 3METs 以上の身体 活動が推奨されているのは、3METs 未満の身体活 動は多くの疫学的研究において対象とされていない ため生活習慣病予防に関するエビデンスが低かった からであり、3METs 未満の身体活動が健康の保持 増進に効果がないということではない。よって、こ れら 12 コースのフィットネス・ウォーキングを健 康づくりに活かす際には、その目的に合った歩き方 で行うことが必要であろう。今回の調査により考案 されたコースを歩行した場合の所要時間はどのコー スもおおよそ 4 ~ 6 時間程度であったため、仮に、

平均 3METs の強度で所要時間が 5 時間のコースを 歩行すれば15Exを確保できることになる。したがっ て、今回の調査において設定されたフィットネス・

ウォーキングコースを週に 1 度だけでも歩行すれば 運動基準における 1 週間当たりの身体活動量の目標 値である 23Ex に大きく近づけることができること から、今回調査を行ったフィットネス・ウォーキン

グコースの定期的な歩行は健康の保持増進に寄与で きるのではないかと考えられた。

 なお、ライフコーダなどの一軸加速度計によって 表示される身体活動量は、階段や坂道などでは測定 結果を過小・過大評価してしまうことが先行研究よ り報告されているのに対し17,18)、今回の調査にお ける 12 コースの中には上り坂などの起伏を伴う箇 所も多くあったことから、実際の身体活動量との誤 差が大きい箇所があることが予想される。よって、

起伏を伴うような場所を歩行する際の身体活動量を より厳密に測定するには、歩行時の心拍数を随時モ ニタリングし、Balke 法によるトレッドミル歩行運 動時の心拍数と酸素摂取量の回帰式からエネルギー 消費量を算出する19)など、歩行中の生理的パラメー タについても詳細に把握したうえで推定する必要が あるだろう。今回は山梨県内のできるだけ多くの地 域でのヘルスツーリズムの振興を目指し 12 箇所も のコースについて検討を行ったため、主にライフ コーダと記述による調査にとどまり、詳細な生理的 指標の検討には至らなかった。よって、今回の調査 で得られた METs 値やエネルギー消費量は、あく まで資料づくりのための参考値として使用するのが 妥当であり、今後、さらに詳細な各コースにおける 生理的・心理的な調査が望まれる。

B.定期的なフィットネス・ウォーキングが身体活 動量、形態・体組成、体力値に及ぼす影響(検 討 2)

 ライフコーダで得られた土日祝日を除いた日常生 活およびフィットネス・ウォーキング実施日の歩数、

エネルギー消費量などの各パラメータを表 4に示 す。今回、被検者となった調査員が 3 名のみであっ たため、具体的な統計解析による比較(有意差検 定)は行うことができなかったが、日常生活では調 査員 A、B、C の歩数はそれぞれ 6630 歩、8492 歩、

表 4 日常生活およびフィットネス・ウォーキング 実施日の身体活動量

(6)

表 5 2 ケ月間のフィットネス・ウォーキング歩行前後の形態・体組成、体力測定値の比較

9802 歩であったのに対し、フィットネス・ウォー キング実施日では 3 名全員が 20000 歩を大幅に上 回った。またエネルギー消費量は、歩数の増加にと もない調査員 A、B、C でそれぞれ、日常生活に比 べて 409kcal、372kcal、484kcal の増大が認められた。

 約 2 カ月の調査期間におけるフィットネス・

ウォーキングコースの歩行前後の形態・体組成、体 力測定の結果を表 5に示す。ウォーキング調査前 後で 3 名とも骨格筋量は増大し、体脂肪量、体脂肪 率は減少した。体重、大腿囲、上腕囲については特 に目立った変化は見られず、腹囲に関しては 2 名で 減少したものの 1 名で増加したため詳細は不明であ るが、定期的なフィットネス・ウォーキングにより 骨格筋量を保ったまま体脂肪を選択的に減少できた 可能性が考えられた。また、体力テストの結果では、

握力はほとんど変化が見られず、上体起こしについ ては 2 名とも数値としては増加しているものの、そ の回数はわずかであった。一方、30 秒椅子立ち上 がりテストの回数は 5 ~ 7 回も増加しており、また、

PWC150についても 3 名とも若干ではあるが増加し ていたことから、約 2 ヶ月間のフィットネス・ウォー キングにより、特に下肢筋力と全身持久力が向上し たことが考えられた。Guralnic et al.20)は、高齢者 において下肢機能がその後の身体障害を予測する重 要な因子であることを報告しており、下肢筋力を維 持しておくことは自立した生活を送るうえで重要で あるといえる。また、全身持久力は代謝異常や循環 器系疾患などの生活習慣病罹患や、それらによる死 亡率との関係も深いことから21 − 23)、今回調査を行っ たフィットネス・ウォーキングコースの定期的な歩 行は生活習慣病予防や QOL(Quality of Life)の維

持・向上などの健康増進への有益性が示唆された。

 なお、今回の調査では 2 ヶ月間という短期間の中 でかなりの回数のウォーキングを行ったが、実際に はこれだけ短期間に 12 箇所もの地域をヘルスツー リズムとして頻繁に訪れることは極めて困難であ り、現実的ではない。したがって、今後フィットネ ス・ウォーキングの縦断的な効果を活かした PR 活 動に繋げるのであれば、例えば「週に 1 回のフィッ トネス・ウォーキングに日常生活での定期的な運動 を組み合わせることで 1 週間あたり 23Ex を確保す るような生活を行い、12 週(3 ヶ月)間で今回調査 した 12 コース全てを巡った場合の健康増進効果を 検討する」など、より現実的なモデルを用いた調査 が必要であろうと考えられた。

Ⅳ.今後の課題

 今回のフィットネス・ウォーキング調査では緊急 雇用創出事業という性質上、調査員として 3 名しか 被検者を確保できなかったため、統計解析による詳 細な比較・検討を行うことができなかった。フィッ トネス・ウォーキングの横断的・縦断的な効果につ いて、より科学的な検証を目指すのであれば、被検 者の増員は絶対条件であろう。しかしながら今回、

これまでの多くの報告にみられるような「限定され た箇所について詳細に調査する」という方法ではな く、「科学的な面から詳細とは言いきれなくともで きるだけ多くの箇所について調査する」という手法 を取ったことにより、12 箇所ものコースについて 運動量や歩数などを把握することができ、さらに、

調査員によるコースの感想や有用な情報なども含め た観光誘致のための簡便な基礎資料を作成すること

(7)

ができた(資料 1、2、3)。このことは、自 然豊かで温泉が多い山梨県において、フィッ トネス・ウォーキングコースを観光商品とし て県内外に PR するうえで非常に大きな意義 があったと思われる。特に、今回選定した 12 コースは必ずしも知名度が高い場所ばか りではなく、山梨県内でもあまり知られてい ない箇所も含まれていることから、今回の調 査結果をもとにヘルスツーリズムの視点から 新たな観光商品を発掘することができたので はないかと考えられた。

 米村3)は、ヘルスツーリズムはあくまで ツーリズムであり、主体は観光・余暇である ため、医学的効果への過度なこだわりや、具 体的かつ切実な治療・療養目的の移動や来訪 は馴染まないことから、実際の効果が求めら れるようないわゆる療養とは分けて捉えてい る。この点については、ヘルスツーリズム自 体がどの程度、科学的根拠が求められるのか 議論の分かれるところであるが、健康増進効 果を謳っている以上、何らかの科学的検証は 必須である。健康づくりの視点からは「行動 変容のためのきっかけの場」、観光や余暇の 視点からは「地域それぞれの温泉や自然、景 観など観光商品を再考する場」として、各地 域の特色を活かしたヘルスツーリズムが脚光 を集めることを我々は望んでおり、そのため にも今回の調査を一度きりで終わらせるので はなく、「健康増進のための科学的根拠」と

「魅力的な観光商品の再考・発掘」双方の視 点を両立させながら、今後更にフィットネス・

ウォーキングコース 12 箇所に関する生理的・

心理的効果について詳細な検討をすすめてい くことが今後の課題として考えられた。

 また、今回の調査結果をどのように用いて 観光誘致に活用するかも重要なテーマであ る。和歌山県での熊野古道ウォーキングの調 査結果4,5)はホームページ『熊野で健康 .com』

24)にて、コースマップ、歩数、所要時間、

消費カロリーなどのウォーキングコースの詳 細をはじめ、科学的な健康増進効果や、さら には随時開催されているウォーキングイベン トなどの情報も大々的に公開されている。今 回我々が実施した調査結果を単なる「調査」

で終わらせることなく、これからどのような 形態で情報公開していくのか、また、ウォー キングイベントの開催など、いかにして実際 資料 1 作成した資料の一例(コースの特徴:②大月市)

資料 2 作成した資料の一例(コースのルートと情報:②大月市)

(8)

のヘルスツーリズムに繋げていくのかが今後の検討 課題であると思われた。そして、今回設定したウォー キングコースがどれだけ地域の活性化に活かせるの か、12 箇所の地域に対するインパクト(貢献度など)

についても随時検証が必要だと考えられた。

Ⅴ.まとめ

 山梨県におけるヘルスツーリズムとして、豊か な自然や温泉、豊富な観光資源を組み合わせた健 康づくりに期待できるウォーキングコースを考案 し、観光誘致のための基礎資料を得る目的で、山梨 県内の 12 箇所についてフィットネス・ウォーキン グコースを考案し、実際に歩行した際の歩数や運動 量を横断的に検討するとともに、2 ヶ月間の定期的 なフィットネス・ウォーキングを行った際の形態・

体組成、体力値などの変化について縦断的に検証し た。その結果、横断的な検討において、12 コース の歩数や運動量などを含めたコースの特徴を把握す ることができ、また、縦断的な検討では、今回考案 したコースにおける2~4日に一度のフィットネス・

ウォーキングにより、体脂肪率の減少や下肢筋力お

よび全身持久力の向上がみられた。今回の調査は 3 名のみを対象としたものであったため統計解析によ る詳細な比較・検討を行うことができず、また、多 くのウォーキングコースの基礎資料作成を目指した ため、コース一つひとつについては必ずしも詳細な 調査を行えない部分もあった。よって、各コースの 健康増進効果を強調した PR 活動を進めるのであれ ば、生理的・心理的効果についてさらに詳細な科学 的検証を継続することが必要だと考えられた。

謝 辞

 本調査を行うにあたりフィットネス・ウォーキン グ研究会として多大なるご協力をいただきました都 留文科大学 吉住典子先生、山梨英和大学 井草清志 先生、大月短期大学 佐藤茂幸先生、山梨県立大学 鳥居美佳子先生、ならびに山梨県の特産物を活かし たヘルシーメニューの考案に際して貴重な資料を提 供してくださいました山梨学院短期大学 依田萬代 先生に深謝致します。なお、本調査は山梨県観光部

「フィットネス・ウォーキング実地調査事業」の業 務委託を受けて実施したものである。

資料 3 作成した資料の一例(コースマップ:②大月市)

(9)

参考・引用文献

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24)熊野古道で健康になろう 熊野古道ウォーキン グ 熊 野 健 康 村 .com http://www.kumano-de- kenko.com/index.shtml

表 2 12 箇所のフィットネス・ウォーキングコースの概要 表 3 フィットネス・ウォーキングコースにおける調査員の身体活動量 たもの(メッツ・時)を『エクササイズ(Ex)』と 定義するとともに、身体活動(骨格筋の収縮を伴い 安静時よりも多くのエネルギー消費を伴う身体の状 態)を、日常生活における労働、家事、通勤・通学などの「生活活動」と、体力の維持・向上などを目的として計画的・意図的に実施する「運動」の 2 つ
表 5 2 ケ月間のフィットネス・ウォーキング歩行前後の形態・体組成、体力測定値の比較 9802 歩であったのに対し、フィットネス・ウォー キング実施日では 3 名全員が 20000 歩を大幅に上 回った。またエネルギー消費量は、歩数の増加にと もない調査員 A、B、C でそれぞれ、日常生活に比 べて 409kcal、372kcal、484kcal の増大が認められた。  約 2 カ月の調査期間におけるフィットネス・ ウォーキングコースの歩行前後の形態・体組成、体 力測定の結果を表 5 に示す。ウォーキング

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