奈良教育大学学術リポジトリNEAR
学部数学教育におけるコンピューター・グラフィッ クスの利用
著者 神保 敏弥, 坂口 杲一
雑誌名 奈良教育大学教育工学センター研究報告
巻 10
ページ 13‑26
発行年 1987‑03‑16
その他のタイトル Utilization of computer graphics in mathematical education of a university.
URL http://hdl.handle.net/10105/4575
学部数学教育におけるコンピューター・
グラフィックス̲の利用
神 保 敏 弥 ・ 坂 口 栄 一
(数学教室) (奈良産業大学)
Utilization of computer graphics in mathematical
education of a university.
Toshiya JIMBO (Department of Mathematics) Koichi SAKAGUCHI (Nara University of Industry)
Al旭tract
ln mathematical education there are many parts in which we can increase the effect of instruction by using computer graphics. The authors have researched such parts including programs for graphics, and are making use of the results in their practical instructions.
In this note the authors report some examples of their researches and practices.
Key words : mathematical education, computer graphics.
は じ め に
数学教育では、描かれた図形を見て、或は図形が描かれて行く過程を見て、事実や理論の理解 に役立てるという方法は、従来からも随所で採られて来た。この場合、作図が生徒や学生自身の 手によってなされるならば学習の効果は一層期待されるわけである。現在はパーソナルコンピュ ーターの普及によって、手書きではとても作業の煩雑さに堪えられない作図、或は手書きではとて もそこまで詳細かつ正確には描けない作図を、割合手軽に機械に実行させて、それを利用すると いうことができるようになった。
学部の数学教育で取り上げられる内容の中には、曲線の追跡,包絡線、空間図形、微分方程式、
等角写像など、コンビュ‑タ‑ ・グラフィックスを活用できそうな分野が割合多い。
筆者らは最近これらの分野の具体的な問題の中からコンビュ‑夕‑ ・グラフィックスが効果的 に使えそうなものを取り上げ、どのような図を、どのように描かせたらよいかを研究し、その結 果を授業に使うことを試みて来た。
このノートでは学生が興味を持ち、授業に使って有効であると判断されるいくつかの例につい
神保敏弥・坂口某‑
て報告する.使用したノヾ‑ソナルコンピューターはFM‑9450HとMZ‑80Bである。
なお、他人の作ったプログラムを判読することは、概してかなり苦痛である。それよりもむ しろ新薫別こ自分で作る方が楽であり、興味も持てる、という場合が少くない。このような理由 から本報告では。プログラミングの要点については述べるが、プログラム自体は割愛する。
1.包絡線
偏微分の中で、包絡線の学習は形成される美しい図形を観賞しながら、理論が視覚によって 如実に確かめられるという点で興味の持たれるもゐである。ここに取り上げた3っの例は、初 等幾何学的な仕方で放物線、楕円、双曲線が包絡線として形成される一連の問題として有名で ある。
[例1‑1]
定点と定直線上の点とを結ぶ線分の垂直二等分線の族によって出来る包路線を作図するもの で、画面(座標平面)の範囲は‑160≦x≦160、 ‑50≦y≦190にとった。但し座標軸をか
くことは省略する。
定点をA(0, 16)、定直線をI ¥ y‑一16にとるo l上の点P (t,‑16)とAを結んで、
APの垂直二等分線∫を引く。 Pが再由の左にあると きは、 Sと直線∬‑‑100との交点をSとする。又P がy軸の右にあるときは、 Sと直線 =100との交点 をTとする。 APの中点QとS又はTと結んで得られ る線分をディスプレイ上に表示させ、その族によって 形成される包路線を観察する。なお簡単な計算で分か るように、 ∫の方程式は
y‑ tx/32‑r/64 で、包絡線の方程式は
y‑*764 (放物線) である。
[例1‑2]
定円内の定点とその円周上の点とを結ぶ線分の垂直二等分線の族による包絡線。画面の範囲 は、 ‑200≦x≦200、一150≦y≦150。
定円をC:x2十/‑r¥定点をA (.‑r/2, 0)と2 する。 C上の点P (rcosd rsin6 )とAを結ぶ 線分の垂直二等分線が円の周と交る点をQ、 Rとし、
線分QRをディスプレイ上に表示して、その族によっ て包路線を作る。
QRの方程式は
(1+2cosO)x+Zsinfl*^‑3^/4 で、包絡線の方程式は、
(x十γ/4)2/(r/2) +y/(y/3"γ/4) ‑1(楕円) である。なおこの図ではr‑140にとった.
学部数学教育におけるコンピュータ‑・グラフィックスの利用
[例1‑3]
定円外の定点とその円周上の点とを結ぶ線分の垂直二等分線の族による包絡線。画面の範囲 紘‑110≦x≦290、‑150≦y≦150c
定点を0(0,0)、定円をC:(x「/官J222 r)+y‑rとする。0を通る直線が円周と交る
点をP.‑Q(但し0に近い方をP)とし、∠PC0‑0(Cは円Cの中心)とおけば、‑tt/4≦0
≦w/4であって、P、Qの座標はそれぞれ
P((yT‑coso)r, rsintf); Q鵠r
となり、 OP及びOQの垂直二等分線はそれぞれ 2(γ乍‑coso)x+2sinO・y‑ (3‑21/2cosd)r 2(一月仁coso)x+2sinO・y‑r
となる。我々は直線族①、 ④の包絡線を求める。
OPが接線になったとき、 ①と⑧は一致し、包絡線 の漸近線になる.この漸近線はy‑‑x+r/I//す及び
〜 .1 ′1 '・‑い・・・,L. I ' ::'・蝣・‑...::‑・・蝣‑:│m‑,‑v
と交る点の座標を求め、それらを結ぶ線分を画面上に 表示し、その族によって包絡線を作る。但しこの図で はγ‑120にとっている。
なお簡単な計算で包路線の方程式は
(x‑rl/育)V(γ/2)2‑ //(r/2)2‑ 1 (双曲線) であることが分かる。
efln玩
3 ‑ 21/Tcos 6
2.空間図形と投影図
ここでは空間図形の例として2次線紙面を取り上げる。線織面は理論的にも興味のあるもの だが、適当な説明図や模型を使わないと、異体的な姿が摘みにくいOそこでコンピューター・
グラフィックスを用いて、直線が織りなす曲面の姿を的確に表現しようと試みた。
その方法としては、空間における座標変換を利用して、色々な方向から眺めた投彰図を描き、
それらを総合して図形の全容をとらえるという仕方をとった。
[例2‑1]
平面2‑120上の、点(0 , 0 , 120)を中心とする半径100の円周上の点P (lOOcos (0+w/2), lOOsin (0 +*/2), 120)と、平面2‑‑120上の、点(0, 0, ‑120)を中心とする半径100の 円周上の点Q (100cosβ lOOsinβ, ‑120)を結び、 βを変化させて得られるPQの族に よって形成される曲面(所謂線綴面)をグラフ化する。
直線PQの方程式からβを消去すると、
72(∬蝣+ y2) ‑25(」2+ 14400)
となる。これがここに措かれる線紙面(一葉双曲面)の方程式である。我々は線分PQの投影 図の族によって曲面の投影図を描くことになる。その際変換
ゥ
(
神保敏弥・坂口晃一
X ‑XcOsofCOsβ ‑ysinft+ 2sinotcosft y ‑xcos&sinp +ycosft+ zsinccsinft
Z ‑‑*sinα zcoso!
を用いて図形を回転し、しかる後x事由の方向から眺めた、 y z平面上‑の投影図を書かせる。
変換③は、点(AT 2)を、初めにy軸のまわりにZ軸からx軸の方向にaだけ回転し、
次にZ軸のまわりにx軸から再由の方向にPだけ回転した時の位置を(x', y' つ とし たときの両者の関係を表している。
それ故α、 βに与える数値によって、様々な方向から眺めた投影図が得られる。下図の左2 つはそれぞれ(cc‑0, 8‑0)、 (a‑1.5708‑*. 0‑0)の場合で、立面図と平面 図の関係にある。右の2つはそれぞれ(a‑0.3, 0‑0)、 {a‑1.8708‑0.3+w/2, P‑
0)の場合で、やはり立面図と平面図の関係にある。なおβに0以外の値を与えても本質的に は異った投影図が得られないので、どれも0にした。画面の範囲は‑200≦γ≦200、 ‑150≦
Z≦150である。
I蝣
蝣
m m w r 'ism xmm m m
蝣Hmim図2‑1(1)
図2‑1 [例 2]
・ivh.ii ニ‑ V〕 ∫:
図2‑1(3)
図 1 (4)
学部数学教育におけるコンピューター・グラフィックスの利用
は、直線(+・告‑2kz
\ ー ′
‑I‑tS
≡″肯
^
●
の族によって作られる。乙の直線はパラメーター才を用いて
x‑akt y‑b(土+kt) 打・t1
のように書ける。
我々は曲面④を3つの平面y ‑士60、 z ‑‑50で切って出来る立体の投影図を使って表現す ることを考える。
④と平面y ‑‑60との交線は放物線
(2 z‑‑x2/a+3600/b , y‑‑60) であるが、これと直線㊥との交点Pは、
t‑‑60/6k‑I/*2
に応じる点⑤である。同様に④と平面>‑60との交線と、直線⑤との交点Qは t‑60/b k‑¥/k'
に応じる点⑤である。このことを使って線分PQの投影図の族を求める。ただし線分PQの一 部が平面z ‑‑50の下に出る場合は、この平面で切ってしまわなければならない。
図2‑2(1)
図2‑2(2)
図2‑2(3)
図 2 (4)
神保敏弥・坂口呆‑
この作図に際しても、前の例で用いた変換③によって、同じ要領で様々な方向から眺めた投 影図が得られる。下図の左2つはそれぞれ0‑0, p‑0)、 (a‑1.5708‑罪/2, β‑0) の場合で、立面図と平面図の関係にある。右の上は(of‑0, fi‑1.5708‑^/2)の場合で、
左の図の側面図に当っている。右の下は(α‑0.3, β‑0.3)の場合で、所謂一般的な角度 から眺めた投影図になっている。画面の範囲は‑80≦y≦80、 ‑70≦Z≦50にとった。
3.微分方程式
微分方程式の解曲線を観察したり作図したりすることは、微分方程式の意味や解の性質を理 解する上に役立つものである。勿論解曲線を求めることは、微分方程式の一つの解法として、
それ自身意味を持っている。
ここではこの種の学習教材として1階同次型の微分方程式
dy ex+ay
dx ax+ by {ad‑beア‑o)
を取り上げた。この形の微分方程式は変数分離型に直して積分できるが、我々はこれを
dx dt
rndy
(IX J bv
c∬ + dy
のように書き直し、点(*O , y<s)から出発して、 dtに適当な微小量を与えて、
‑*n十(ax。+ byo)dt yt ‑yo+(cxo+ dyo)dt
によって次の点(*i, yi)を求め、点(*O, ^o)と結ぶ。次は点(*i, yi)から同様 にして次の点(x2, y?J を求めて、点(*i, yi)と結ぶo このようにして逐次解曲線上の 点を求めて、それらを結んで行けば、解の近似曲線が得られる。
この方法はオイラーの方法と呼ばれる最もシンプルなものだが、教育上はルンゲ・クック法 を使うまでもなく、これで十分であるように思われるOあとの例で見られるように、 dtに適 当に小さな値を与えれば、かなり正碓な解曲線が得られる。
なおdtに負の値を与えると、正の値を与えた場合とは反対の方向に、解曲線は延びる。作 図にはこのことも利用する。
なお、⑥又は⑦でA‑ 芸)とおくo [例3‑1]
‑:;告‥.V .'v・∫<・
AのB]有値は士√riで純虚数。この場合解曲線は ぐるぐる廻り、かつ周期的である。
dt‑士0.01とし、正のX軸上の点からスタ‑トし て解曲線を求めた。解の方程式は、 ∬72 +y‑c
(楕円)である。 図3‑1
学部数学教育におけるコンピューター・グラフィックスの利用
[例3‑2]
dy 3v+4v dx 4y
Aの固有値は4, 4で垂根(同符号の実根).この 場合解曲線は原点に流れ込む。
dt‑士0.01とし、正及び負のx軸上の点からスタ ートして解曲線を求めた。解の方程式は、
y‑x(÷log‑∫ +C)である.
[例3‑3]
dy ∬+2y
dx 2x A‑(¥
Aの固有値は1 , 3で同符号の2実根。上の場合と 様子が違うが、解曲線はやはり原点に流れ込む。
dt‑±0.01とし、再由及びy軸上の点からスタ ートして解曲線を求めた。解の方程式は
(x‑y) ‑C (x+y)c
[例3‑4]
dy x ‑ y
ix 蝣>.v一一二・Vl,L'.v‑ 2v
: ・ ‑
,>
2 1
Aの固有値は(1士Ir¥l)/ 2で異符号の2実根。こ の場合解曲線は原点を通らず、かつ漸近線に沿って 遠ざかる。
dt‑Q.Olとし、 x軸及び再由上の点からスタ‑ト して解曲線を求めた。解の方程式は
t牢x‑y
‑Cである。
4.等角写像
ヽ/T手L 1
牢x+y 図 3 l 4
複素関数論において、等角写像論は重要な位置をしめている。等角写像は微分して0になら ない正則関数の幾何学的な特徴づけであるので、コンピューター・グラフィックスを用いてこ の題材の学習効果を高めるような例を考えてみた。
[例4‑1]
一次変換
w ‑ az + b
cz +d (adキbc)
は、等角写像の性質を持つことは勿論であるが、円又は直線を、円又は直線に写すというきわ だった性質を持つ関数である。
この円々対応(という)をパソコンの画面で実現するプログラムを作ってみた。
神保敏弥・坂口某‑
まず、一次変換を
W‑ K+ I V ‑ )(x+ty)+(b
(c,+ic2)(x+iy)+(dl+ id,)
とおき、 uとVをォi, a2, ‑・, di , d2,で表わす。次に画面の左側に2‑平面の座標軸を、
右側にuJ一平面の座標軸を入れる0円の中心と半径の入力によってI ‑平面の円とW‑平面の 像を描かせるようにする。同様に線分の端点の入力からその線分と像を画面に描かせるように する。円を写すか直線を写すかの選択枝を入れる。 x軸の正の部分とu軸の正の部分の長さを 適当に変えられるようにする。
プログラムで工夫した点は、 Z一平面で大きな円が画面からはみ出した場合に、画面の中央 上部の小座標に、はみ出した点に対応して円の一部が描かれるようにしたことである。 W‑辛 面の像の同じことは、画面中央下の小座標が受け持つ。この時は軸の長さを変えればよいわけ
である。
プログラムが出来て早速学生に利用してもらった。任意の一次変換で円又は直線が点の動き によって円(まれに直線に)に写るのには、皆驚いていた。この後に一次変換の授業を行えば、
単に授業に入るより学習意欲を高めるであろう。
この例が示すように授業の導入部にコンピューター・グラフィックスを用いると効果が期待 される題材は結構あると思うo こちらが意図していたことであるが、円々対応という性質を鮮 明に印象づけることとなった。
このように、グラフィックスの利用法には、数学の法則や性質を直観的に捕えさせるという 効用がある。
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図4‑1(1)
4 ‑ 1(1)の図はいろいろな円と線分を、一次変換
w ‑ 2‑ 0.5 1 ‑0.52
によって写した図である。.I ‑平面の最大の円の半径は2で、その像はW一平面での左側の縦 の直線で、その直線が図(画面)からはみ出したことを小座標が示している。
学部数学教育におけるコンピューター・グラフィックスの利用
図4‑1(2)
■ 図4‑1(3)
4 ‑ 1(2)の図は上と同じ一次変換によって、半径2までの同心円と線分の像を右側に描いて みたもので
4 ‑ 1(3)の図は一辺が4の正方形の中の網目の像を右側に、同じ変換で措せてみた。どちら かの図を画面で描かせ、さらに他の一次変換によっても同様の図を描かせるならば、写像の等 角性(ここでは直交性)や一対一対応の性質を予想できるだろう。これらの予想から学生自身 が証明を考えることに至るのはまれであるにしても、一次変換について学ぶときに親しみを覚 えることは間違いないことと思う。
このプログラムを学生に作ってもらえば、さらに良かったはずである。何故ならば、必要と なる数学の知識は円と直線のパラメター表示、複素数の四則演算などで難しくなく、プログラ ムの練習にもなり、自分で作ったプログラムによって円々対応を発見すれば、まえにもまして 感歎してくれたと思うからである。
[例4‑2] sin2による写像
複素関数の写像の様子は、教科書に載っている図以外にはなかなか調べる気になれないもの である。しかしコンピューター・グラフィックスの課題とするとそうではなくなるから不思議 である。式の計算など肝心な所は同じであるにもかかわらず、面倒なことを、即ちグラフを描
く作業のわずらわしさを、考えなくて済むからであろうか。
神保敏弥・坂口菜‑
このようにコンピューター・グラフィックスの課題として扱うとより生き生きとして来る教 材があることに気づく。その例として三角関数のsinzを取り上げてみた。
ey+ e'ブ . ey+ e‑y sinz ‑
なので、直線y‑Cは楕円
ォ7 el‑+ e
sin xトl
.<‑ ‑ p‑c
に写り、直線x‑Cは双曲線
a2/(sinc) ‑ ォ>/(cosc) ‑1
に写る。焦点は共通で±1である。
4‑2(1)図は、 w‑smzによる長方形領域
仁子< )‑音符≦Rez≦号方(くそ),
cos x (z‑x+iy)
n s !
‑戯 i〇〇〇〇 ws&xam
S4fsaai5lr.tt.afEk* 車'fial mmf!ssa eちfM
M*M l
a
‑ 1.4≦Im I ≦1.4の像を措いているO
直交する線分の像は又直交していることがよく分かる。
L 4 *
ォ ▲ Ⅰ
I
. l■ ▲
この領域が
になると、次の4‑2(2)図のようになる。
4 ‑ 2(1)図の楕円の欠落部がここでは完全に捕わ れている。これで分かるように縦の帯状領域
一号< Re* <‑f
は境界の‑酎‑一子,y≧0・とx‑ ,y≦0 を付け足すと、 sin2によって全平面に写像される ことがわかる。
よく観察すれば、等角写像であること、周期、非 有界などを知ることとなる。
図4‑2(1)
tfi
.I *
■
‑.◆▲
i " " " 漢サ…K 9S」舞温i l着J‑淵 椅■" ○○
""i "寡℡望s ss ss 車■
■■隅 祈.* 」:
図4‑2(2)
学部数学教育におけるコンピューター・グラフィックスの利用
[例4‑33 tanzによる写像
コンピューター・グラフィックスガ威力を発揮する例をあげよう.図はttanzによる
腐 o≦γ≦1・54ォ÷)
の像である。即ち原点を中心とする同心円の族と、原点から出る放射線の族をtan2で写し、
それを号だけ回転したものであるo
e?+ e‑y
蝣1
ey + e y
蝣1
ey >. ‑>
C ‑
d=‑
2
e*+ e'
sin ‑i
Cos*
cos∬ I
sin x
とおけば、
・tanz‑i岩音(z‑x+iy)
ad‑be ‑ ac+bd c2+d2十I c2+ d2
であるので、これを用いてグラフ化したものである。
図が椅麗にかけるように、プログラムでは若干工夫し てある。直交する曲線が直交する曲線に写されている ことはよくわかるが、正接関数の性質によって特有の 興味ある図形が得られる。原点を中心とする同心円は 右のような曲線族に写る。
図4‑3の椅麗な模様を見ると、このような図を作 る事をグラフィックスの利用目標にしても、十分に意 味のあることであるのがわかる。
5.偏角の原理
偏角の原理は、大まかに言えば領域の有理型関数の零点の個数と極の個数の差が、境界の像 の原点を回わる回数で表わされるものであり、コンピューター・グラフィックスの教材として 格好のものと思われる。
神保敏弥・坂口果‑
【例5‑1]
有理関数/U)‑z2+ iによる写像を使って偏角の 原理を視覚的に確認する。 /(2)‑0の根は円 * ‑
路の上に単根で3つある。 fてz)‑0の根は円Iz巨=
1上に単板で3つある。なお原点はflz)の1位の極で ある。
この図の中には4つの同心円 2│‑0.55, ¥z‑1 z¥‑〟2 ,1*1‑1.4の像が描かれている。グラフは措 かれた結果だけを見るのではなく、描かれる順序や向
きもよく観察する必要がある。 図5 ‑ 1
(7)円回‑0.55の像は一番外側の曲線であるが、これは負の方向に原点を1回取りまいて 描かれる。この円の内部には/(z)の零点はなく、極が1つ存在するから、偏角の原理が成り 立つわけである
(イ)円回‑1の像も負の方向に原点を1回取りまいて描かれる(偏角の原理)が、原像が f(z)の零点を通るので、そこにおいて尖点が生じる。
(ウ) [引zI‑汀はf(z)の3つの零点を通る。又f(z)の3つの零点を内部に含む。それ故こ の円の像は原点を3回通過する三葉形になるが、月Z)の各零点の像を正の方向に1回ずつ取り 巻く。なぜならば、 1は/(ォ)の1位の零点であるので、関数f(Zト/(I)の2位の零点になっ ているo又原点はf(z) ‑ /(I)の1位の極である。従って偏角の原更別こより、 f(z)によるこの 円の像は′(1)を正の方向に1回取りまくことになる。というわけでやはり偏角の原理が確認 できる。
(x) p3 z‑1.4は内部に/U)の1位の零点を3つと1位の極を1つもっているO又f(z) の1位の零点を3つ持っている。よってこの円の像は原点を正の方向に2回取りまき、そして 又/(*)の各零点のf(Z白こよる像を正の方向に1回ずつ取りまく。このように偏角の原理杏 含めて、像曲線の諸性質が確認できる。
[例5‑2]
関数/(*)‑ォ 号による、 4つの酎可‑0.55, Iz‑1回‑1㌢訂言2│‑1.43の像を描き、例5‑1 と同様のことを観察しょうとするものである。
さて両図ともに曲線の中に尖点の現われる場合があ る。これなどはグラフを描かないならば見過されてし まうであろう。
この偏角の原理の取り扱いはコンピューター・グラ フィックスによって、学生に予期しない現象まで発見 させ、なお数学的な説明や証明を考えさせられる教材
の例となっている。 図5‑2
6.像のリーマン面
学部の4回生のゼミでBlochの定理の意味を理解するのに、像のリーマン面の様子を知るこ
学部数学教育におけるコンピューター・グラフィックスの利用
とが必要であった。パソコンで簡単な関数を使って円の像を調べることをすすめると同心円の 像の点の動きから、それらの関数の像のリーマン面を知り定理の意味を理解することが出来た。
さらに像のリーマン面に円板をのせる問題、未解決のBloch定数に興味をもった。そして特別 な形の多項式の族について、この定数に対応するものを調べてみようということに発展していっ た。像のリーマン面の中にパソコンで円を計算して描かせ、それによる推測から半径の計算を し、少しずつ一般の形へと興味を増していった。このことから、コンピューター・グラフィッ クスの利用には、新たな問題を誘起するという効用を知ることが出来た。
その時に像のリーマン面を理解するために作った図をあげておこう。
\
一一一一一.
hf, \〜 喝
\蝉 .g
6‑1の図は、W‑ Z十Z4の同心円とその像のグラ フである。これによって像のリーマン面が良く理解さ れる。半径rは大きい方から1, 0.9, 0.8,1/打≒
0.63となっている。
6‑2の図はその内部である (r‑0.63, 0.55,
0.45)
6 ‑3の図がその像のリーマン面である。
神保敏弥・坂口呆‑
おわりに
コンピューター・グラフィックスを援用して、数学教育の学習効果を高められるような例を いくつかあげてきた。それはグラフィックスの視覚的効果を利用して、興味を題材に引きつけ るものである。数少ない実践例からもその効果が十分にあるとの手応を得た。
教師が作ったグラフィックスを活用すると効果のあるもの、学生自身が取り組むとより効果 を期待できるものと、数学教育‑のグラフィックスの応用が多岐にわたり有益であることを知
ることが出来た。
今後の課題としては、学生自身がこれを活用する場合、初歩的なものから順々に高度のもの へと興味を持ちながら進められる豊富な教材の準備が必要であろう。
もう一つ重要で難しい問題は、実践を行った場合とそうでない場合の評価である。将来は授 業分析的な手法などから、その実践例の正しい評価をする必要があるであろう。