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タチバナの種子・じょうのう膜・果皮の

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(1)

タチバナの種子・じょうのう膜・果皮の 成分分析及び機能性に関する研究

平成 30 年度

三重大学大学院 地域イノベーション学研究科 博士前期課程 地域イノベーション学専攻

山田由佳

(2)

目次

緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

1

章 タチバナの廃棄率測定及び成分分析

1.

目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

2.

材料と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

2.1

試料

2.2

タチバナの部位別重量測定

2.3

一般栄養成分分析

2.3.1

粗タンパク質

2.3.2

粗脂質

2.3.3

灰分

2.3.4

水分

2.3.5

炭水化物

2.4

脂肪酸分析

2.5

フラボノイド分析

3.

結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

3.1

タチバナの部位別重量測定

3.2

一般栄養成分分析

3.3

脂肪酸分析

3.4

フラボノイド分析

4.

考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23

2

章 ゼブラフィッシュ成魚へ及ぼす生理活性作用

(3)

1

目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

2

材料と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

2.1

ゼブラフィッシュ及びアルテミア

2.2

タチバナ試験餌

2.3

摂食試験方法

3

結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

3.1

身長・体重測定結果

3.2

アルテミア摂食量測定

4.

考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35

3

章 ゼブラフィッシュ稚魚の摂食量測定

1

目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37

2

材料と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38

2.1

ゼブラフィッシュ

2.2

タチバナ抽出

2.3

摂食試験方法

3

結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41

3.1

生存率測定

3.2

摂食量測定

4.

考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50

総合考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51

要約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55

謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57

参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58

(4)

Investigation of nutrition and functionality of seed, peel and segment wall of Tachibana (Citrus tachibana)

Yuka Yamada 617M012 1. Introduction

In Japan, the average life expectancy expands quickly, and the aging society comes. From the viewpoint of enhancing the quality of life and alleviating the social security contributions, shortening of the difference between the average life expectancy and the healthy life expectancy is an important subject.

Citrus has various functions that contribute to improving the quality of life, such as antioxidant activity, suppressing blood glucose level, exhibiting anti-obesity and carcinogenesis prevention have been reported. [1, 2, 3] Since its functionality differs from species, the study of the citrus functionality of more species is important. In this study, Tachibana (Citrus tachibana) native to Toba City, Mie Prefecture was focused on. We analyzed nutrition, and zebrafish (Danio rerio) was used to screen the physiological activity.

2. Results and discussion

In fatty acid composition analysis of Tachibana seed oil, the total of oleic acid, linoleic acid and linolenic acid was 73.3 g / 100 g, indicating that many unsaturated fatty acids are contained.α-linolenic acid is an essential fatty acid, which is expected to be used as an edible oil, it can also be used as a cosmetic product combined with the scent of Tachibana.

On flavonoid analysis, it was shown that hesperidin, nobiletin and tangeretin are contained in the peel and segment wall. Flavonoids show some physiological activity.

Peel and segment wall of Tachibana were regarded as waste part so far. But they may contribute to the improvement of the quality of life.

Physiologically active effect of Tachibana was also investigated using zebrafish. Oral administration the Tachibana peel and segment membrane to the adult zebrafish increased the food intake of zebrafish and confirmed the appetite enhancing effect. Hesperidin, a type of flavonoid, is reported to cause appetite increase due to ghrelin secretion in the stomach via serotonin receptor antagonism. Therefore, it was suggested that Hesperidin from Tachibana suggested that zebrafish ingestion was enhanced.

3. Conclusions

In the whole fruit of Tachibana, 24.1 % of the peel, 23.3 % of the segment wall and 10.7 % of the seed are occupied, and these are not currently used. In the future, as Tachibana production increases, these waste parts amounts cannot be ignored. Fatty acid composition and flavonoid analysis showed that these parts could contribute to health.

In the zebrafish test, the oral administration of Tachibana peel and segment wall showed an appetite stimulative effect.

Low malnutrition is a symptom that is cause of decreased appetite and decreased intake of meal. The malnutrition at the elderly age is related to the increase mortality rate and chronic diseases, the extension of the hospital stay period, the decrease in physical fitness. It is the factor of shortening the healthy life expectancy. From the results of this study, it is expected that Tachibana will improve reducing appetite and dietary intake.

Acknowledgment

Author is gratefully acknowledged for Toba Chamber of Commerce and Industry for the kindly providing of Tachibana fruits as sample.

References

[1] A. Garg, S. Garg, L. J. D. Zaneveld, A. K. Singla, Chemistry and pharmacology of the Citrus bioflavonoid hesperidin, Phytother Res., 15(8), 655-669 (2001).

[2] Junji Terao, Akihiko Nagao, Absorption, Metabolism and Physiological Functions of Carotenoids, Journal of Japan Oil Chemists' Society, 48 (10), 115-125 (1999).

[3] Dandriyal J., Singla R., Kumar M., Jaitak V., Recent developments of C-4 substituted coumarin derivatives as anticancer agents, European Journal of Medicinal Chemistry, 119 (25), 141-168 (2016).

[4] Suzuki H, Asakawa A, Kawamura N, Yagi T, Inui A., Hesperidin potentiates ghrelin signaling., Recent Patents on Food, Nutrition & Agriculture, 6, 60-63 (2014).

[5] Jinhee K., Takao S., Hunkyung K., Hideo Y., Shu K., Yuko Y., Taketo F., Miho S., Health status and physical fitness of undernourished community-dwelling elderly people, Japanese journal of physical fitness and sports medicine, 54, 99-106 (2005)

(5)

1

1. 緒言

日本社会では平均寿命の延伸と少子化に伴い, 高齢化が進んでいる。日 本人の

2017

年に算出された平均寿命は, 男女ともに過去最高を更新して

いる

[1, 2]

。健康に関する総合指標として

,

これまでは平均寿命が用いら

れてきたが, 平均寿命がめざましく延伸し, 高齢化社会が到来する中で, 単に寿命が長いだけではなく, 健康で長生きであることを示す指標を見る 必要があると考えられるようになった [3]。

厚生労働省の「健康日本

21

」や, 農林水産省の「第

3

次食育推進基本計 画」などの国の施策により, 消費者の食に対する健康志向が高まっている。

日本政策金融公庫農林水産事業が平成 28 年7月に実施した「平成 28 年 度上半期消費者動向調査」によると

,

消費者の食の志向について

,

「健康志 向」は 41.6 %で, 平成 22 年 12 月の調査以降, 最多回答となった [4]。

増加傾向にある生活習慣病に対して特に食生活の面で関心が持たれ, 一次 予防として食生活に対する意識の高まりがある。食物中に含まれる成分の うち

,

炭水化物・タンパク質・脂質

,

ビタミン

,

ミネラルの総称が五大栄養 素であり, 食物繊維もしくは水が加わると六大栄養素となる。近年, これら の栄養素に加え, 健康の維持・増進や疾病予防に役割を果たす機能性成分 が注目されている。

機能性を表示することができる食品は, これまで国が個別に許可した特

定保健用食品

(

トクホ

)

と国の規格基準に適合した栄養機能食品に限られ

ていた。しかし

,

機能性を分かりやすく表示した商品の選択肢を増やし

,

消費者が商品の正しい情報を得て選択できるよう, 平成

27

4

月に, 新し

(6)

2

く「機能性表示食品」制度が施行された。機能性表示制度により, 柑橘類 の機能性を表示した加工食品や農林水産物が開発されている。モノグリコ シルヘスペリジンの末梢血流を改善する効果を利用したサプリメントや

,

βクリプトキサンチンの骨代謝の働きを助ける作用をアピールしたウンシ ュウミカン, ミカンパウダー, ミカンジュースが販売されている。

柑橘類の機能性はその他にも数多く報告されている。フラボノイドは疾 病予防機能が注目されており, 抗動脈硬化, 発がん予防, 脳機能保護など の機能が報告されている [5]。カロテノイドは, プロビタミン

A

としての 役割や, 抗酸化作用, 一重酸素消去活性が報告されている[6]。クマリンは ラクトンの一種で

,

血糖値抑制作用

,

肥満抑制効果が報告されている

[7, 8,

9]。リモノイドは, 脂肪生成抑制効果,

腫瘍形成抑制作用が報告されてい

る [10, 11, 12]。成分組成は種によって異なるため, より多くの種の成分分 析や生理活性作用を調べるのは価値がある。本研究で

,

我々はタチバナ

(Citrus tachibana)

に着目した。

タチバナ (Citrus tachibana)は, 三重県に自生する柑橘類の一種である

[13]

。柑橘類の分類を

Fig. 1

に示した。ヤマトタチバナ

,

ニホンタチバナ

とも呼ばれる。樹高

3~4 m

ほどの常緑小高木で, 枝に棘を持つ。花期は

5

月頃で, 直径

2 cm

前後の白い

5

弁の花を枝先につける。果実は秋に黄熟

,

果皮が薄く

,

果実は扁球形で直径

2~3 cm,

重量は約

10 g

で種子を多く

有する [14]。酸味が強いため, 生食には適さない。日本の各地に自生して

いたとされているが, 環境省のレッドリストには準絶滅危惧種に指定され

ている

[15]

。タチバナは

,

静岡

,

愛知

,

三重

,

和歌山

,

高知

,

愛媛

,

宮崎県

に分布している。多くの木は

,

庭や神社の境内に植栽されたものであるが

,

(7)

3

アイソザイム分析の結果, 静岡県伊豆・戸田地区, 三重県紀伊長島町・熊 野市, 高知県室戸市, 宮崎県串間市に野生のタチバナが確認された [16]。

前述のように, 柑橘類は多くの機能性成分を有し, 既に機能性食品とし

て開発が進んでいる。また, 成分組成は種によって異なるため, 他の柑橘

を用いた商品との差別化のために成分分析は有効である。そこで

,

我々は

三重県鳥羽市で収穫されたタチバナ各部位の成分分析をするとともに, ゼ

ブラフィッシュを用いてタチバナ投与が及ぼす生理活性作用について調べ

た。

(8)

4

Fig. 1

柑橘類の生物学的分類 文献

13

を引用した。

(9)

5

(10)

6

第 1 章 タチバナの廃棄率測定及び成分分析

1 目的

タチバナの各部位の重量を測定することで, 廃棄されている種子, じょ うのう膜, 果皮の割合を算出した。また, 各部位の一般栄養成分 (水分, タンパク質

,

脂質

,

灰分

,

炭水化物

)

の含量を明らかにした。

タチバナに含まれる機能性成分として, 種子油の不飽和脂肪酸に着目し た。柑橘類の種子油の利用例として, ユズ種子油が挙げられる。ユズ種子 は, 食品を加工する工程で廃棄されていたが, 不飽和脂肪酸を豊富に含む ことが報告され

,

商品開発が行われるようになった。不飽和脂肪酸の活用 が水分保持力の低い皮膚の改善に有効であるという考えから, オレイン酸, リノール酸, リノレン酸が香粧品に使用される例があり [16], このことか ら保湿効果を期待してユズ種子油が活用されている。ユズ種子油は必須脂 肪酸であるリノール酸を豊富に含むことから, 食用油としても利用されて いる。タチバナ種子油もユズ種子油と同様に不飽和脂肪酸を豊富に含むこ とが期待される。また, 日本古来から評価されてきたタチバナの精油と組 み合わせることで

,

香りを楽しめる商品開発も期待される。我々は

,

タチ バナ種子から搾油し, ガスクロマトグラフィー (GC) により, 脂肪酸組成 分析を行い, タチバナ種子油の有用性を評価した。

次に

,

タチバナ各部位のフラボノイドに着目した。代表的なフラボノ

イドに, ヘスペリジンとナリンギンが挙げられる。柑橘類の機能性を表示

した加工食品に, モノグリコシルヘスペリジンの末梢血流を改善する効果

を利用したサプリメントがある。そのほかにもフラボノイドの効能とし

,

抗酸化作用や抗アレルギー作用などが報告されていることから

,

今後

(11)

7

フラボノイドの効果を利用した機能性食品の増加が予想される。柑橘類の

種類や収穫時期によってフラボノイドの組成が異なるため, 鳥羽市で収穫

されたタチバナのフラボノイド組成は検討する価値がある。そこで

,

我々

は, ヘスペリジン, ナリンギン, ノビレチン, タンゲレチンを標品とし, タ

チバナ各部位のフラボノイド分析を行った。

(12)

8

2 材料と方法

2.1

試料

2017

10

月下旬に三重県鳥羽市で収穫されたタチバナ成熟果を, 鳥羽 商工会議所から提供を受けた。果実は収穫後, 分析まで-30 ℃保存した。

果皮・種子を除き

,

搾汁した後の残渣は

,

電気乾燥庫で再度乾燥

(60

,

15 h)し,

小型機流粉砕機にて体積平均径が

38.543 µm

になるまで粉砕した

ものをミナミ産業株式会社より提供を受けた。

2.2

タチバナの部位別重量測定

5

個のタチバナ果実を解凍後, 手作業で果皮, じょうのう膜, 種子, 砂じ ょうに分解した。ここでは, 外果皮 (フラベド) と内果皮 (アルベド) を 合わせて果皮とし

,

じょうのう膜には維管束を含むものとする。全体の重 量から果皮, じょうのう膜, 種子を差し引いたものを砂じょうの重量とし た。種子数も計測した。比較対象として, 2017 年

1

月に購入した三重県産 ウンシュウミカン

3

つも同様に果皮, じょうのう膜, 砂じょうに分解し, 重量を測定した。

2.3

一般栄養成分

タチバナの各部位

(

果皮

,

じょうのう膜

,

種子

)

の一般栄養成分として

,

水分, 粗タンパク質, 粗脂質, 炭水化物及び灰分の測定を行った。各測定 方法は以下に示す。

2.3.1

粗タンパク質

(13)

9

粗タンパク質分析はケルダール法により行った。タチバナ各部位約

0.1 g

をケルダール窒素分析装置用試料管に取った。硫酸カリウムと硫酸銅

(II) 5

水和物を

9

1

の比で混合したものを分解促進剤とし

,

これを

10 g

え, さらに濃硫酸

15 mL

を添加した。ケルダール分解器 (K-435, BÜCHI) で混合物の色がエメラルドグリーンになるまで高温で加熱した。分解した サンプルを

33

NaOH

及び

2

%ホウ酸

60mL

を用いて蒸留装置

(K-315,

BÜCHI)

で蒸留した。メチルレッドを指示薬として, 蒸留した試料を

0.05

M

硫酸で滴定した。タンパク質含量は以下の式で算出した。

タンパク質含量 (%) =

0.0014 × (𝑇 − 𝑇0) × 𝐹 ×

変換係数

試料採取量

(𝑔) × 100

T

:試料滴定に要した

0.05 M

硫酸

(mL), T0

:ブランク滴定に要した

0.05 M

硫酸 (mL), F:0.05 M 硫酸標準溶液のファクター, 変換係数:6.25

2.3.2

粗脂質

粗脂質はソックスレー抽出法により分析した。タチバナ各部位約

1 g

セルロース製の円筒ろ紙に移し, 乾燥させ (105 ℃, 1 h), 試料を覆うよう

に脱脂綿を入れた。ウォーターバス (BS600, yamato) を用いてジエチルエ

ーテルで

8

時間抽出した。抽出後

,

ジエチルエーテルを完全に蒸発させ

た。恒温乾燥機で乾燥させ (105 ℃, 30 min), デシケーターで放冷後, 脂質

含量を抽出用フラスコの恒量から差し引いて算出した。抽出用フラスコの

恒量は恒温乾燥機で乾燥させ

(105

, 30 min),

デシケーターで放冷後に

測定した。

(14)

10 2.3.3

灰分

灰分は乾式灰化法により分析した。タチバナ各部位約

1 g

をるつぼに取 り, ホットプレートで予備灰化 (300 ℃, 4 h) した。その後, 白色になるま で電気マッフル炉

(ROP-001, AS ONE) 550 ℃

で灰化した。電気マッフル炉 からるつぼを取り出し, デシケーターで放冷後, 重量測定した。るつぼの 恒量を差し引いて灰分を算出した。るつぼの恒量は, 電気マッフル炉

550 ℃で1

時間加熱後, デシケーターで放冷し, 重量測定した。

2.3.4

水分

水分は常圧加熱乾燥法により分析した。タチバナ各部位約

2 g

をアルミ ニウムトレイ上に秤量した。赤外線水分計

(Moisture determination balance

FD-600, Kett)

により安定値が得られるまで加熱し, 水分含量を測定した。

2.3.5

炭水化物

炭水化物は

,

粗タンパク質

,

粗脂質

,

灰分および水分含量を差し引いて 算出した (差し引き法) 。

2.4

脂肪酸分析

タチバナの種子から抽出した油の脂肪酸分析を行った。種子油は家庭用

搾油機 (OP-05B, 石野製作所) によって圧搾した。種子油約

4 mg

を用い

た。脂肪酸抽出キット

(nacalai tesque)

を用いて脂肪酸抽出及びメタノリ

シスを行い

,

以下の条件で

GC

分析を行った。脂肪酸の同定には

,

スペル

(15)

11

コ 37 種 FAME ミックス (SIGMA-ALDRISH) , 内部標品にはマルガリン 酸 (C17:0, nacalai tesque) を用いた。

ガスクロマト装置:島津

GC-2025

カラム:ULBON HR-SS-10 (0.32 mm×30 m) カラム温度:

150-220

(3

/ min)

キャリア―ガス:ヘリウム

検出器:FID

2.5

フラボノイド分析

既存の方法 [18]を参考に分析を行った。残渣パウダー0.1 g, 果皮パウダ ー0.1 g を秤量し, 抽出溶媒 (MeOH : DMSO=1 : 1) を

5 mL

加え, 5 min 超 音波処理し

, 1 h

静置した。遠心分離

(3,000 rpm, 5 min)

,

上清を

200 mL

ビーカーに移した。沈殿に抽出溶媒を

1 mL

加え, 遠心分離し, 上清を

200 mL

ビーカーにとった。これをもう一度繰り返した。抽出液に溶媒濃度が

10 %になるように蒸留水を加えたものを試験溶液とした。

試験溶液をコンディショニング(メタノール

15 mL

,次いで

10 %

メタ

ノール

15 mL

を通液)後の Sep-pak plus C18 cartridge に, 抽出液全量を通

過させ, 10 %メタノール

15 mL

で洗浄した後, 抽出溶媒溶液

5 mL

で溶出

した。これを抽出溶媒で

5 mL

に定容した。

HPLC

分析をするまで

-30

で保存した。以下の条件で

HPLC

分析を行った。ナリンギン (Alfe Aesar),

ヘスペリジン (Wako), ノビレチン (Wako), タンゲレチン (Wako)を標品と

した。

(16)

12

使用カラム:COSMOSIL Packed Column 5C18-AR-Ⅱ(ナカライテスク)

移動相

A

液(アセトニトリル:10 mM リン酸=20:80 , v/v)

B

液(アセトニトリル

:10 mM

リン酸

=70

30 , v/v

) 流速:0.6 mL / min

注入量:10 µL カラム温度:

40 ℃

検出器:紫外可視検出器 検出波長:285 nm

グラジエント条件:0 分から

5

分:A 液

85 % , 5

分から

15

分:15 分の時点

B

50 %

になるように直線的に増加

, 15

分から

30

分:A 液

50 %, 30

分から

35

分:35 分の時点で

B

液が

100 %になるように直線的に増加, 35

分から

45

分:B

100 %, 45

分から

50

分:

50

分の時点で

A

83 %

なるように

B

液の割合を直線的に減少, 50 分から

60

分:A 液

83 % (Fig. 2)

(17)

13

Fig. 2

フラボノイド分析のグラジエントプログラム

(flow rate:0.6 mL / min)

0 20 40 60 80 100

0 10 20 30 40 50 60

Acetonitrile conc. (%)

time (min)

(18)

14

3 結果

3.1

タチバナの部位別重量測定

タチバナの部位別重量測定を

Table 1

に示した。タチバナの平均直径は

2.9±0.2 cm,

2.2±0.0 cm

であった。タチバナの果皮, 種子, じょうのう

膜の合計割合が

58.1 %

を占めていた。また

,

平均種子数は

7.8±2.0

であっ た。果実が小さく, 種子を多く有することから, 未利用部分である種子, 果皮, じょうのう膜の重量割合が高いことがわかった。考察では, ウンシ ュウミカンの廃棄率と比較した。

3.2

一般栄養成分分析

タチバナ各部位の一般栄養成分測定結果を

Table 2

に示した。果皮, じ ょうのう膜の主成分は水分であるが, 粗タンパク質, 粗脂質, 灰分を微量 に含むことがわかった。種子の粗脂質含量は

2.1 g / 100 g

であり, 溶剤抽 出した際の種子油の収率が示された。

3.3

脂肪酸分析

タチバナ種子油の脂肪酸分析結果を

Table 3

に示した。オレイン酸は

29.5 g / 100 g,

リノール酸は

29.5 g / 100 g,

リノレン酸は

36.1 g / 100 g

あった。不飽和脂肪酸であるオレイン酸

,

リノール酸

,

リノレン酸の合計

は, 73.3 g / 100 g であった。考察では, ユズ種子油, グレープシードオイ

ルの脂肪酸組成と比較した。

(19)

15 3.4

フラボノイド分析

ナリンギン

,

ヘスペリジン

,

ノビレチン

,

タンゲレチンの標品のクロマ

トグラムを

Fig. 3

に示した。また, 果皮, じょうのう膜のフラボノイド分

析のクロマトグラムを

Fig.4, 5

に示した。ナリンギン, ヘスペリジン, ノ

ビレチン

,

タンゲレチンの各構造式を

Fig. 6

に示した。各標品の保持時間

は, ナリンギン:6.6 min, ヘスペリジン:7.8 min, ノビレチン:19.5 min,

タンゲレチン:22.1 min であった。標品のヘスペリジン分析から検量線を

作成し (Fig. 7-10), じょうのう膜, 果皮のピーク

area

からフラボノイド含

量を算出した

(Table 4)

。全ての部位においてナリンギンは検出されなか

った。考察では, タチバナの近縁種であるシークワーサーのフラボノイド

組成と比較した。

(20)

16

Table 1

ヤマトタチバナ各部位の重量測定結果

全体 果皮 種子 じょうのう膜 砂じょう 重量 (g)

11.3±1.4 2.7±0.7 1.2±0.2 2.6±0.2 4.8±0.9

割合 (%) 100

24.1±4.5 10.7±2.9 23.3±2.3 41.9±3.0

n=5

(21)

17

Table 2タチバナ各部位の一般栄養成分分析結果 (g / 100 g)

水分 粗たんぱく質 粗脂質 灰分 炭水化物

果皮 73.9±6.4 2.1±0.1 1.4±0.1 1.4±0.2 21.2

じょうのう膜 81.3±0.9 1.1±0.1 0.8±0.0 0.6±0.0 16.2

種子 12.0±1.1 15.9±0.4 2.1±0.5 5.5±0.9 64.5

n=3, 種子は数日間天日干しさせたものを分析に用いた

(22)

18

Table 3

タチバナ種子油の脂肪酸組成

脂肪酸 パルミチン酸 ステアリン酸 オレイン酸 リノール酸 リノレン酸

脂肪酸 (g / 100 g) 20.5 3.6 29.5 36.1 7.7

(23)

19

Fig. 3

ナリンギン (6.6 min), ヘスペリジン (7.8 min), ノビレチン (19.5

min),

タンゲレチン (22.1 min)の

HPLC

クロマトグラム

Fig. 4

タチバナ果皮の

HPLC

クロマトグラム

(24)

20

Fig. 5

タチバナじょうのう膜の

HPLC

クロマトグラム

Fig. 6

分析したフラボノイドの構造式

(25)

21

Fig. 7

ナリンギン (6.6 min) の検量線

Fig. 8

ヘスペリジン

(7.8 min)

の検量線

y = 4E-08x - 0.0029 R² = 1

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 5000000 10000000 15000000 20000000 25000000 30000000

conc. (mg / mL)

area

y = 4E-08x - 0.0032 R² = 1

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 5000000 10000000 15000000 20000000 25000000 30000000

conc. (mg / mL)

area

(26)

22

Fig. 9

ノビレチン

(19.5 min)

の検量線

Fig. 10

タンゲレチン

(22.1 min)

の検量線

y = 4E-08x - 0.0042 R² = 0.9999

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 5000000 10000000 15000000 20000000 25000000 30000000

comc. (mg / mL)

area

y = 3E-08x - 0.0003 R² = 1

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 10000000 20000000 30000000 40000000

conc. (mg / mL)

area

(27)

23

Table 4

タチバナ各部位のフラボノイド分析結果

ナリンギン ヘスペリジン ノビレチン タンゲレチン

segment N.D. 2721.4 Tr Tr

peel N.D. 4951.5 1056.0 687.9

mg / 100 g dry weight

(28)

24

4 考察

タチバナの部位別重量測定の比較対象として

,

日本で一般に食されてい るウンシュウミカンの部位別重量測定も行い, Table 5, Fig. 11 に示した。ウ ンシュウミカンの果皮, じょうのう膜の合計割合が

32.1 %であり,

タチバ ナの果皮

,

種子

,

じょうのう膜の合計割合である

58.1 %

が大きく上回るこ とがわかった。

ユズ種子油の脂肪酸組成 [19] , グレープシードオイルの脂肪酸組成

[20]をTable 6

に示した。タチバナ種子油とユズ種子油を比較すると, オレ

イン酸

,

リノール酸においては

,

タチバナ種子油よりユズ種子油の方が若

干多かった。リノレン酸においては, タチバナ種子油の方がユズ種子油よ

りも多かった。グレープシードオイルと比較すると, オレイン酸, リノレ

ン酸はタチバナ種子油の方が多く

,

リノール酸はグレープシードオイルの

方が多かった。不飽和脂肪酸であるオレイン酸, リノール酸, リノレン酸

の合計は, タチバナ種子油が

73.3 g / 100 g,

ユズ種子油が

73.4 g / 100 g,

レープシードオイルは

87.3 g / 100 g

であり, タチバナ種子油とユズ種子油

,

ほぼ同量であった。天然の植物油のほとんどは

,

1つのグリセリンに

3つの脂肪酸が結合したトリアシルグリセロールからできている。脂肪酸

は, 炭素・水素・酸素の原子の結合の仕方により, 油脂を特徴づけてい

る。

n3

系脂肪酸の代表的なものに

,

α

-

リノレン酸が挙げられる。α

-

リノ

レン酸は, 必須脂肪酸であり, 動物体内で合成できないため, 我々は食品

から摂取する必要がある。この脂肪酸を出発物質としてイコサペンタエン

(EPA)

や ドコサヘキサエン酸

(DHA)

が生合成される

[21]

n3

系多

価不飽和脂肪酸は

,

抗動脈硬化作用

,

抗血栓作用

,

免疫機能改善などを介

(29)

25

して, 様々な疾病の予防効果を有することが報告されている [22]。n6 系 脂肪酸の代表的なものに, リノール酸が挙げられる。α-リノレン酸と同 様に必須脂肪酸である。古くから知られている必須脂肪酸欠乏症は成長の 遅れ, 不妊, 皮膚の病変がある [23]。n9 系脂肪酸の代表的なものに, オレ イン酸が挙げられる。オレイン酸は, HDL コレステロールの低下を伴わな ない血中脂質低下作用がある

[24]

。タチバナ種子油は不飽和脂肪酸を多 く有することがわかり, ユズ種子油と同様に化粧品, 食用油としての活用 が期待される。2016 年の三重県におけるタチバナの収穫量は

584 kg

であ り, Table 1 のように全果中, 種子が

10.7 %を占めるものとすると,

全収穫

量のうち

62.5 kg

が種子の重量である。また

, Table 2

のように

,

種子の

2.1 %が脂質であるため,

溶剤抽出では

62.5 kg

の種子から

1.3 kg

の脂質が

抽出される。今後, タチバナの生産量が拡大し, 現在未利用部分である種 子の収量が増えると

,

種子油の化粧品や食用油への活用が期待される。

果皮, じょうのう膜のフラボノイド組成について, タチバナの近縁種で

あり, ポリメトキシフラボンのノビレチン, タンゲレチンが他の柑橘類よ

り多いとされる [25]シークワーサーと比較した (Table 7)。じょうのう膜

については

,

シークワーサーの方がヘスペリジンを豊富に含むことがわか

った。ノビレチン, タンゲレチンの含量はほとんど変わりがなかった。果

皮については, タチバナの方がヘスペリジン, ノビレチン, タンゲレチン

を豊富に含むことがわかった。ヘスペリジンは

,

毛細血管の強化

,

抗酸化

作用, 抗アレルギー作用, 血圧降下作用, 血清脂質改善作用が報告されて

いる [32]。また, 代表的なポリメトキシフラボンである, ノビレチン, タ

ンゲレチンには

,

がん細胞の浸潤・転移を抑制する作用や

,

がん細胞のア

ポトーシスを誘導する作用が報告されている

[27]

。フラボノイド分析の

(30)

26

結果から, タチバナのじょうのう膜及び果皮には, 多くの機能性を有する ヘスペリジン, ノビレチン, タンゲレチンが含まれることがわかった。

Table 5

ウンシュウミカン各部位の重量測定結果

全体 果皮 種子 じょうのう膜 砂じょう 重量

(g) 87.3

±

7.2 23.0

±

0.0

4.0

±

0.8 59.4

±

7.1

割合

(%) 100 26.6

±

2.2

5.5

±

0.8 67.9

±

2.5

n=3

(a)

タチバナ

(b)ウンシュウミカン Fig. 11

タチバナ (a) およびウンシュウミカン (b) の

各部位重量割合の比較

(31)

27

Table 6

タチバナ種子, ユズ種子油, グレープシードオイルの脂肪酸組成

g / 100 g 脂肪酸 ユズ種子油は文献19 ,グレープシードオイルは文献20を引

用した

Table 7

シークワーサーのじょうのう膜・果皮のフラボノイド組成

ヘスペリジン ノビレチン タンゲレチン タチバナ segment

2721.4 Tr Tr

タチバナ peel

4951.5 1056.0 687.9

シークワーサー segment

3512.7 0 0

シークワーサー peel

2213.7 367.8 231.5 mg / 100 g dry weight

文献

25

を引用した

脂肪酸 パルミチン酸 ステアリン酸 オレイン酸 リノール酸 リノレン酸 タチバナ種子 20.5 3.6 29.5 36.1 7.7

ユズ種子 20.5 2.7 32.1 39.3 2.0 グレープシード 7.1 4.1 18.4 68.4 0.5

(32)

28

第 2 章 ゼブラフィッシュ成魚へ及ぼす生理活性作用

1 目的

柑橘類の

in vivo

試験では, 肥満抑制効果が報告されている。スダチ果皮

抽出物を高脂肪食に混ぜてマウスに経口投与した試験で, 体重増加を抑制 した報告がある

[28]

。これは

,

スダチに含まれるフラボノイドがミトコン ドリアの機能を向上させたことが要因であると考察されている。ユズの果 皮抽出物を高脂肪食に混ぜてマウスに経口投与した実験でも, 体重増加抑 制効果が示されている [29]。また, 食事誘導肥満ラットの食餌にペクチン を混ぜて与えたところ

,

摂食量・体重の減少が報告された

[30]

。タチバナ もフラボノイドを豊富に有する柑橘であるため, スダチやユズと同様の効 果が期待される。また, 柑橘類のじょうのう膜は水溶性食物繊維であるペ クチンを多量に含むため

,

タチバナのじょうのう膜に摂食量・体重減少効 果が得られる可能性がある。そこで我々は, ゼブラフィッシュの成魚にタ チバナの経口投与試験を行い, 肥満抑制作用の有無を検証した。

ゼブラフィッシュは, 省スペースで飼育が可能, 高い繁殖力, 世代交代 が短いという利点を持つ。ヒトと多くの構造的および機能的類似性を有 し, 肥満の遺伝モデルを含む様々なヒト疾患をモデル化するために使用さ れてきた [31]。肥満改善に関係する食欲において, 哺乳類の主要な食欲調 節経路がゼブラフィッシュにおいて保存されていることが報告されている

[32]。また,

多量の脂肪を有するアルテミアをゼブラフィッシュに給餌す

ることで, 食事性肥満モデルが構築され [33], 肥満治療のための化学物質 のスクリーニングが行われてきた。

我々は

,

タチバナによる肥満改善が成り立つという仮説のもと

,

タチバ

(33)

29

ナ全果, じょうのう膜, 果皮を

5

ヵ月齢の食餌性肥満ゼブラフィッシュに

投与した。試験前後の体重変化を測定し, 各群で比較した。

(34)

30

2 材料と方法

2.1

ゼブラフィッシュおよびアルテミア

14 : 10

の明暗サイクル, 28 ℃の施設内で飼育した

5

ヵ月齢, AB 系統雌

のゼブラフィッシュを用いた。試験前には, ヒカリクレストキャット (キ ョーリン

)

を与えた。アルテミア

(Artemia nauplii)

耐久卵は塩水中で

1

日 かけて孵化させた。

2.2

タチバナ試験餌

タチバナの全果

119 g,

果皮

43 g

を凍結乾燥させ

,

全果

32 g,

果皮

8 g

を 得た。これらをミルサーで粉末状にした。粉末状の全果と果皮, あらかじ め粉末状にしたじょうのう膜 (水分含量

8.7 %)

0.4 g,

グルテン (Wako)

3.2 g,

ヒカリクレストキャット

0.4 g

を乳鉢ですり潰しながら混ぜ

,

4

mL

を加えた。-80 ℃で一晩保存し, 凍結乾燥 (DC-400, Yamato Scientific) した。乳鉢で粉砕して顆粒した後, 700 μm メッシュの篩を通過させ, 成体 ゼブラフィッシュによる摂取に適した大きさにした。摂食試験まで

4

℃ で保存した。

2.3

摂食試験方法

25

匹の雌のゼブラフィッシュを無作為に

2 L

タンクあたり

5

匹に分け

,

最初の

2

週間は

1

75 mg

のタチバナ試験餌を

1

3

回摂食させた。この

試験餌に対するタチバナ各部位の割合は

10 %であり,

試験前のゼブラフ

ィッシュの体重は約

0.2 g

であったため

,

タチバナ

22.5 mg / g / day

投与し

たことになる。 その後

1

週間

,

孵化乾燥アルテミア

60 mg

とタチバナ試

(35)

31

験餌

75 mg (タチバナ7.5 mg / g / day)

投与した。ゼブラフィッシュの身

長・体重は試験開始前, 投与

2

週間後, 投与

3

週間後に測定した。ゼブラ フィッシュの表面の水滴をティッシュペーパーで軽くふき取り

,

測定し た。

アルテミア摂食量は試験最終日のみ, 以下のように測定した。ゼブラフ

ィッシュの入っていない水槽をブランクとした。ブランクと試験中の各水

槽にアルテミアを加え, 1 時間水の流れを止めて摂食させた。各水槽

2 mL, 3

スポット採取し, ゼブラフィッシュに摂食されなかったアルテミアを実

体顕微鏡でカウントした。ブランクの水槽でカウントされたものから差し

引き

,

各群のアルテミア摂食数を決定した。

(36)

32

Fig. 12

ゼブラフィッシュ成魚の試験スキーム

(37)

33

3 結果

3.1

身長・体重測定

2

週間, ゼブラフィッシュにタチバナ試験餌を投与した結果を

Fig. 13

に示した。試験前は

1

日に

2

度給餌したが, 試験中は

1

日に

3

度餌を給餌 したため

,

コントロール群は約

1.5

倍体重が増加した。全果

,

じょうのう 膜群の体重増加はコントロール群と同等であったが, 果皮群ではコントロ ール群より体重増加が大きい傾向が見られた。

3.2

アルテミア摂食量測定

3

週間の試験後のアルテミア摂食量測定結果を

Table 8

および

Fig. 14

に 示した。ブランクで測定した量を投与したアルテミア全量とし, グラフ縦 軸の

1

とした。

1

水槽に投与したアルテミア数は約

16200

匹であった。コ ントロール群ではゼブラフィッシュ

1

匹あたりアルテミア約

1620

匹摂食 し, 摂食率は約

50 %であった。全果群では,

ゼブラフィッシュ

1

匹あたり アルテミア約

2070

匹摂食し, 摂食率は約

64 %であった。じょうのう膜群

では

,

ゼブラフィッシュ

1

匹あたりアルテミア約

2950

匹摂食し

,

摂食率は

91 %であった。果皮群では,

ゼブラフィッシュ

1

匹あたりアルテミア

3050

匹摂食し, 摂食率は約

94 %であった。特にじょうのう膜,

果皮群

においてアルテミア摂食量が多い傾向が見られた。

(38)

34

Fig. 13

タチバナ試験餌

2

週間給餌後のゼブラフィッシュ体重増加率

(全果:Whole,

じょうのう膜:Segment, 果皮:Peel)

n=5,

エラーバーは標準誤差を表す

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2

Control Whole Segment Peel

body weight increase

(39)

35

Table 8

ゼブラフィッシュ

1

匹のアルテミア摂食数および摂食率

Control Whole Segment Peel アルテミア摂食数 1620 2070 2950 3050 アルテミア摂食率 (%) 50 64 91 94

Fig. 14

タチバナ試験餌

3

週間給餌後のアルテミア摂食率

(

全果:

Whole,

じょうのう膜:

Segment,

果皮:

Peel)

縦軸の

1

は, 水槽へのアルテミア全投与数約

16200

匹を表す

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

Control Whole Segment Peel

Artemiaintake

(40)

36

4 考察

我々は

,

タチバナによる肥満改善が成り立つという仮説のもと

,

タチバ ナ全果, じょうのう膜, 果皮を

5

ヵ月齢の食餌性肥満ゼブラフィッシュに 投与した。結果として, タチバナ果皮の投与によるゼブラフィッシュの体 重増加傾向と

,

果皮・じょうのう膜による食欲増進効果が確認された。

六君子湯には, 柑橘類の生薬である陳皮が含まれており, 古くから漢方 製剤として利用されている。その効能の一つに食欲不振が挙げられる

[34, 35]。この食欲不振の改善メカニズムに関して,

柑橘類に含まれるフラ

ボノイド骨格を持つポリフェノールの一種であるへスぺリジンが関与して いると報告された [36]。六君子湯によるグレリン分泌の作用機序を

Fig.

15

に示した。六君子湯に含まれるヘスペリジンは, セロトニン受容体 (5-

HT2C, 5-HT2C receptor)

拮抗作用を介して胃のグレリン分泌に潜在的な役

割を果たし, グレリン分泌が食欲増進を引き起こすと推察されている

[37]。Table 6

にある通り, タチバナのじょうのう膜, 果皮にはヘスペリジ

ンが豊富に含まれる。以上により, タチバナに含まれるヘスペリジンがゼ

ブラフィッシュの食欲増進を促した可能性が推察された。

(41)

37

Fig. 15

六君子湯の食欲に対する作用機序 文献

37

より引用

(42)

38

第 3 章 ゼブラフィッシュ稚魚の摂食量測定

1 目的

前章で成魚のゼブラフィッシュにおいて, 摂食量の増大が見られたタチ

バナじょうのう膜および果皮の抽出を行った。抽出溶媒に水, エタノール,

アセトンを用いた。抽出物を稚魚のゼブラフィッシュに曝露させた後

,

料を与え, 摂食量を確認した。ゼブラフィッシュは, 受精後

2

日 (2 dpf)

に孵化し, 受精後

3

日 (3 dpf)に開口する [38]。雑食性であり, 動物性プラ

ンクトン, 植物性プランクトン, 昆虫を摂食するが, 稚魚の食餌は成長と

生存率に大きく影響を与える。ゾウリムシはゼブラフィッシュ孵化後の摂

食に適しているが, 継代培養をし続ける必要があり, 繰り返し濾過と殺菌

工程を要する [39]。ワムシは, 輪形動物門 (Rotifera) に属する動物プラン

クトンの総称である

[40]

。ワムシは

,

乾燥状態になると無代謝状態で活動

を休止し, 水を得ると再び活動する。飼育が容易であり, 稚魚のゼブラフ

ィッシュの成長と生存率を向上させることから, ゾウリムシに代わる飼料

になりつつある [41]。我々は, 受精後

4

日のゼブラフィッシュにタチバナ

抽出物を曝露し

,

受精後

7

日に蛍光色素で染色したヒルガタワムシを摂食

させ, 蛍光顕微鏡で観察することで摂食量を評価した。

(43)

39

2 材料と方法

2.1

ゼブラフィッシュ

ゼブラフィッシュの飼育方法は前述の通りである。自然交配によって得

た胚を

0.3×Danieau’s solution

に移し, 28 ℃のインキュベーター内で飼育

した。

2.2

タチバナ抽出

投与試験で摂食量の増大が確認されたじょうのう膜および果皮の抽出を 行った。粉末状のじょうのう膜

50 g

,

凍結乾燥しミルサーで粉砕した 果皮

50 g

1 L

三角フラスコに入れた。水, エタノール, アセトン各

500 mL

を加え, 150 / min で

30 min

振とうさせた後, 3 日間静置した。水抽出は

3

,

エタノールとアセトン抽出は室温で行った。吸引ろ過後

,

エバポレ ーターで乾固させた。収率を

Table 9, 10

に示した。抽出物はジメチルスル ホキシド (DMSO)で溶解し, 100 mg / mL の濃度に調製した。

2.3

摂食試験方法

ゼブラフィッシュ稚魚への摂食試験スキームを

Fig. 16

に示した。受精 後

4

日目 (4 dpf) ゼブラフィッシュを

6

ウェルプレート内の

4 mL

0.3×

Danieau’s solution

に移した。これに

100 mg / mL

のじょうのう膜および果

皮抽出物を加えて

100~500 µg / mL

溶液とし, 3 日間暴露させた。曝露後,

生存率を算出した。休眠状態のヒルガタワムシ (ひかりヒルガタワムシ,

キョーリン

)

500 µg / mL

ナイルレッドアセトン溶液で染色した。アセト

ンの揮発後

, 0.3

×

Danieau’s solution

28

, 1 h

で活動を再開させ

,

これを

(44)

40

ゼブラフィッシュの生存率に合わせて投与した (28 ℃, 1 h)。蛍光顕微鏡

で撮影する前に, プレートを氷に漬けて摂食を止め, さらにトリカインで

麻酔をした。蛍光顕微鏡の撮影条件は

, 4

倍率

,

露光時間

1 / 3 s

とした。画

像解析ソフト

Fiji imageJ (アメリカ国立衛生研究所)

によってゼブラフィ

ッシュの腹腔部位の蛍光強度を数値化することで, ワムシ摂食量を評価し

た。

(45)

41

Fig. 16

ゼブラフィッシュ稚魚の摂食試験スキーム

Table 9

タチバナじょうのう膜の収率

溶媒 抽出前重量(g) 抽出後重量(g)

H₂O 49.8 9.3

EtOH 50.2 9.2

Acetone 50.8 3.2

Table 10

タチバナ果皮の収率

溶媒 抽出前重量(g) 抽出後重量(g)

H₂O 12.5 8.4

EtOH 13.2 1.7

Acetone 15 0.7

(46)

42

3 結果

3.1

生存率測定

タチバナ抽出物曝露後のゼブラフィッシュ生存率測定結果を

Table 11-

14, Fig. 17

に示した。じょうのう膜水抽出物を暴露させたゼブラフィッシ

ュの生存率は

500 µg / mL

まで

100 %

であった。じょうのう膜エタノール 抽出物の場合は, 300 µg / mL まで

100 %で, 400 µg / mL

では

66.7 %であっ

た。果皮エタノール抽出物の場合は, 10 µg / mL では

100 %で, 20 µg / mL

以上の濃度では

0 %であった。果皮アセトン抽出物の場合は, 10 µg / mL

以上の濃度では

0 %

であった。

3.2

摂食量測定

タチバナ抽出物曝露後

,

染色したワムシを摂食したゼブラフィッシュの 蛍光強度を

Fig. 18-20

に示した。また, それぞれを蛍光顕微鏡で撮影した

写真を

Fig. 21-24

に示した。じょうのう膜のエタノール, アセトン抽出物

で曝露したゼブラフィッシュの摂食量はコントロール群と同等またはそれ

より低い結果であった。しかし

,

水抽出物で曝露したゼブラフィッシュの

摂食量はコントロール群より高い傾向が見られた。

(47)

43

Table 11

じょうのう膜水抽出物を

曝露させたゼブラフィッシュの生存率

Segment H₂O extract

Concentration (µg/mL) 100 200 300 400 500 Survival rate (%) 100 100 100 100 100 n=9

Table 12

じょうのう膜エタノール抽出物を

曝露させたゼブラフィッシュの生存率

Segment EtOH extract

Concentration (µg/mL) 100 200 300 400 500 Survival rate (%) 100 100 100 66.7 0 n=9

(48)

44

Table 13

果皮エタノール抽出物を

曝露させたゼブラフィッシュの生存率

Peel EtOH extract

Concentration (µg/mL) 10 20 30 40 50 Survival rate (%) 100 0 0 0 0 n=9

Table 14

果皮アセトン抽出物を

曝露させたゼブラフィッシュの生存率

Peel Acetone extract

Concentration (µg/mL) 10 20 30 40 50 Survival rate (%) 0 0 0 0 0

n=9

(49)

45

Fig. 17

ゼブラフィッシュの生存率が

100 %を示した

タチバナ抽出物の暴露上限濃度

Segment H₂O:じょうのう膜水抽出

Segment EtOH:じょうのう膜エタノール抽出 Peel EtOH:果皮エタノール抽出

Peel Acetone

:果皮アセトン抽出

曝露試験は

10~500 µg / mL

で試験を行った

果皮アセトン抽出物は

10 µg / mL

曝露で生存率が

0 %であった

0 100 200 300 400 500

Segment H₂O Segment EtOH Peel EtOH Peel Acetone

タチバナ抽出物濃度g / mL)

N.D.

(50)

46

Fig. 18

じょうのう膜水抽出物

(H

O)

を暴露させた

ゼブラフィッシュの蛍光強度

n=9,

エラーバーは標準誤差を表す

カッコ内は曝露した濃度

(µg / mL)

を示す

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6

Control H₂O (100) H₂O (200) H₂O (300) H₂O (400) H₂O (500)

Nile red intensity ratio to control

(51)

47

Fig. 19

じょうのう膜エタノール抽出物

(EtOH)

を暴露させた

ゼブラフィッシュの蛍光強度

n=9,

エラーバーは標準誤差を表す カッコ内は曝露した濃度 (µg / mL)を示す

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

Control EtOH (100) EtOH (200) EtOH (300) EtOH (400)

Nile red intensity ratio to control

(52)

48

Fig. 20

果皮エタノール抽出物

(Peel EtOH)

を暴露させた

ゼブラフィッシュの蛍光強度

n=9,

エラーバーは標準誤差を表す

カッコ内は曝露した濃度

(µg / mL)

を示す

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

Control Peel EtOH (10)

Nile red intensity ratio to control

Fig. 1  柑橘類の生物学的分類  文献 13 を引用した。
Fig. 2  フラボノイド分析のグラジエントプログラム
Table 3  タチバナ種子油の脂肪酸組成
Fig. 4  タチバナ果皮の HPLC クロマトグラム
+7

参照

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