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地球一周の船旅と私(シンポジウム 始まりをつくる 旅、地球を知る旅)

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Academic year: 2021

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地球一周の船旅と私(シンポジウム 始まりをつくる 旅、地球を知る旅)

著者 奈良 恵梨子

雑誌名 和光大学現代人間学部紀要

8

ページ 258‑260

発行年 2015‑03‑13

URL http://id.nii.ac.jp/1073/00003813/

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ピースボートに参加した目的と船について

大学 4 年という大事な時期にピースボートに乗船するという決意をするにあたっては、

さほど時間はかかりませんでした。当時の私はただ時間がなく、毎日が風のように過ぎ去 っていました。将来のことをゆっくり考える時間もなく、ただ時間がほしかったというだ けだったのかもしれません。

和光大学でも初めての試みだったためもちろん不安もありましたが、とにかく今の生活 から抜け出して残り僅かの学生生活、自分自身とじっくり向き合いたいと思い、この企画 のことを聞くとすぐに参加することを決めました。私の場合、アルバイトをかなりしてい たため、乗船のためのお金はそれなりに貯まっていたとも言えます。それでポスター貼り などのポイント蓄積も考えず、事前にピースボート事務局などを積極的に訪ねることもあ りませんでした。ピースボートのこともあまり知らないままに乗船したと言った方がよい かもしれません。

ピースボートの船には、1000 人近くの老若男女が乗船しています。私は実際に乗船する までは大きな学校のようなものを連想していたので驚きました。それはまるで大きな村が 海を旅しているような感覚です。

船に乗っている時間はとても長いのですが、日によって違う船内スケジュールというも のがあって映画鑑賞ができるスペースやバーラウンジ、スポーツができる場所もあるので 退屈せず毎日過ごせました。生活をする部屋には机もあるので私は一日の多くをそこで卒 業論文に取り組んでいました。

私が乗船するにあたって、予め原則として決めていたことが二つありました。一つは、

一人で行動すること、もう一つはできるだけ冒険をすること、というものでした。この原 則に従って行動し、寄港先でも貴重な経験を(後から考えると少し危ないと思われるような経 験も)することができました。

印象に残っている国とエピソード

・エジプト

エジプトは本当に貧富の差を目の当たりにし、一番衝撃を受けた国です。とにかく街が 汚く、川の上流からはロバの死体がいくつも流れてきました。大きなゴミのかたまりが道 に転がっているのは当たり前で空気も乾燥し、とにかく悪臭でした。

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シンポジウム◎始まりをつくる旅、地球を知る旅

地球一周の船旅

奈良恵梨子 現代人間学部身体環境共生学科卒業生

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和光大学現代人間学部紀要 第8号(2015年3月)

エジプトといえばアラブの商人。言葉巧みに英語や日本語を交えて観光客から強引にお 金をとろうとする場面も何度か目撃しました。

三大ピラミッドをゆっくりみた後は、暑さにやられてのんびりルクソールの街を散策し ていました。そこで目にしたのは異様な光景でした。いかにもお金を持っていそうな商人 の隣で今にも死にそうな人たちがたくさん倒れていたのです。寝返りをうつこともなくジ ッと横たわっている、死人同然の人たちのすぐとなりで金持ちが商売をしている景色は本 当に衝撃的でした。

私は何を思ったのか、この死人当然のような人たちと同じ景色を見たいと思い、彼らと 少し距離を置いたところに寝そべってみました。砂の中に手を突っ込んでホッペを地面に 押し付けて初めて気付きました。ひんやりしている砂が肌に吸い付いて気持ちがいいので す。

灼熱のエジプトにこんなに涼しい場所が足元にあったのかと感心しました。中には本当 に死にそうになっている人たちももちろんいるのだろうと思います。しかし私がそこで目 にした、横たわっている男性は気持ちよく眠っているだけでした。

物売りの少年少女たちが親や雇い主と思われる大人に殴られ、ムチのようなもので叩か れているのを何度も目撃しました。歩道のサイドには物乞いをする人たちが並んでいまし た。ピラミッドの周りで観光客に演技をして感情を沸かせ、嘘をつき、財布やデジカメや

iPhoneを盗む。そういう場面も珍しくはありません。痩せ細った老人がもの凄い力でつか

んできたりします。

これが現実なのだ、と容赦なく突きつけられた思いです。知らない世界を知ることがで きたという面では、本当に行ってよかったと思います。しかしそれと同時に、正直なとこ ろ、二度と行きたくないとも思った衝撃的な国でもありました。

・トルコ

トルコでも貴重な体験をしました。トルコのクシャダスというところは観光地でありド ルもユーロも使えました。

トルコの商売の仕方は上手で、日本人の特徴をとてもうまくつかんでいるようでした。

流暢な日本語で「落ちたよ!」なんて言われたらまんまと振り向いてしまう。これが商売 か、と感心しました。

明るくきれいな土地ではあったのですが、一歩裏路地にはいると、ぼったくりバーもた くさんあり、平均 5 ドルのビールが最高 80 ドルまで請求されました。

昼間に海辺でのんびり過ごしていると、若い女性が話しかけてきました。彼女は「レモ ネードのむ?」と聞いてきたのです。暑さもあって私は軽快に「イエス!」と答えると 15 分も歩かされた上にお店ではなく自宅に連れて行かれました。

彼女はやたらボディタッチが多く、私の髪の毛のにおいをかいだり、私に彼女の髪の毛 のにおいをかがせたり何かがおかしかったのです。レモネードもなかなか出てきません。

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シンポジウム◎始まりをつくる旅、地球を知る旅

彼女は服を脱ぎ始め、その異変に気付いた私はひたすら「NO!NO!」と言うと、突然 彼女は不機嫌になり家を追い出されました。

見知らぬ国の見知らぬ土地を迷いながら 30 分ほどかけて元いた海辺に戻って来ることが できました。そんな経験も日本じゃなかなかできなかったとポジティブに考えることにし たのですが、下手したら命がなかったかもしれません。

帰国直後と現在

自然とシャワーの時間が短くなり、一日くらいお風呂にはいらなくても気にしなくなり ました。金銭的なことでも物欲というものがなくなり、自分が見てきた景色や各国の現実 と日本の平和を比べて、そのギャップについていけなくなることもありました。

日本人として生まれ、日本で生きている私には平和な日常がありふれています。その中 で自分がこの目で見て感じ取ったものを私なりに多くの人に伝えています。

私は去年もタイ、ラオス、台湾、NYと旅を重ねています。今しかない時間と体力を決 して無駄にしたくはありません。

ひとりで考えて行動することも素晴らしいと思いますが、さらにそれらを他者に発信し てつなげることで、何かを変えるきっかけにつながっていくと信じています。

みなさんにも今ある時間と行動力で知らない世界を感じ取って未来の自分につなげ、た くさんの人に発信していただきたいです。少しでも世界を知りたいと思っていたら、その 興味を無駄にしないで欲しいです。

私にとってピースボートの旅の思い出は、今でも向上心と冒険心を掻き立ててくれます。

いつまでもピースボートでの経験は私の生き方を支えてくれることでしょう。

参照

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