平 成
29
年 度日 本 大 学 学 位 論 文
長 期 の 運 動 負 荷 に 対 す る 免 疫 応 答 お よ び 神 経 内 分 泌 反 応
日 本 大 学 大 学 院 文 学 研 究 科 教 育 学 専 攻 博 士 後 期 課 程
髙 階 曜 衣
研 究 概 要
本 研 究 は ,
25
日 間 の ト レ ー ニ ン グ 合 宿 を 長 期 の 運 動 負 荷 の 一 例 と し , 長 期 の 運 動 負 荷 に 対 す る 免 疫 応 答 お よ び 神 経 内 分 泌 反 応 を 検 討 し ,以 下 の こ と を 明 ら か に し た .1)
長 期 の 運 動 負 荷 は , 液 性 免 疫 能 を 変 化 さ せ な い .2)
長 期 の 運 動 負 荷 は , 細 胞 性 免 疫 能 を 低 下 さ せ る .3)
長 期 の 運 動 負 荷 は , 内 分 泌 系 を 変 化 さ せ な い .4)
長 期 の 運 動 負 荷 は , 交 感 神 経 系 の 緊 張 を 持 続 さ せ る .運 動 は ,健 康 の 維 持 ・ 増 進 の た め に 推 奨 さ れ て い る が ,ス ポ ー ツ 選 手 で は ,高 強 度 ト レ ー ニ ン グ や 競 技 後 に 上 気 道 感 染 症 の 罹 患 率 が 上 昇 す る と 報 告 さ れ て い る .本 研 究 は ,ヒ ト を 対 象 に 長 期 の 運 動 負 荷 が 免 疫 応 答 お よ び 神 経 内 分 泌 系 に 与 え る 影 響 を 検 討 し た 結 果 ,細 胞 性 免 疫 能 が 低 下 し ,交 感 神 経 系 の 緊 張 が 持 続 す る こ と を 明 ら か に し た .細 胞 性 免 疫 能 の 低 下 に よ る 体 調 不 良 を 防 ぐ た め に は ,交 感 神 経 系 の 緊 張 が 生 じ て い る か 否 か を 把 握 す る 必 要 が あ る .交 感 神 経 系 の 緊 張 を 非 侵 襲 的 か つ 簡 易 的 に 推 し 量 る こ と の で き る 指 標 に 起 床 時 心 拍 数 が あ る .指 導 者 は 起 床 時 心 拍 数 の 上 昇 が 認 め ら れ た 選 手 に 対 し ,休 養 を 促 し ,運 動 強 度 の 低 い ト レ ー ニ ン グ や ト レ ー ニ ン グ 内 容 の 変 更 を 指 示 す る 必 要 が あ る . 起 床 時 心 拍 数 の 測 定 意 義 を 認 識 し , 選 手 の 健 康 状 態 を も と に 運 動 時 間 ,運 動 強 度 を 設 定 す る こ と が 重 要 と な る .
本 研 究 で 得 ら れ た 知 見 は ,長 期 の 運 動 負 荷 を 実 施 す る ス ポ ー ツ 選 手 自 身 が 体 調 管 理 を 行 う 上 で 重 要 で あ る こ と は 当 然 の こ と な が ら ,指 導 者 の 選 手 管 理 , ト レ ー ニ ン グ 計 画 の 立 案 に 寄 与 す る も の と 考 え ら れ る .
目 次
第
1
章 序 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1
第1
節 緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2
第2
節 運 動 と 上 気 道 感 染 症 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・4
第3
節 運 動 に 対 す る 免 疫 応 答 お よ び 神 経 内 分 泌 反 応 ・ ・ ・ ・7
第4
節 本 研 究 の 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・12
第
2
章 長 期 の 運 動 負 荷 に 対 す る 体 組 成 の 変 化 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・13
第1
節 緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・14
第2
節 対 象 と 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・15
第3
節 統 計 分 析 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・17
第4
節 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・18
第5
節 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・20
第6
節 結 語 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・21
第2
章 の ま と め ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・22
第
3
章 長 期 の 運 動 負 荷 に 対 す る 液 性 免 疫 能 の 変 化 ・ ・ ・ ・ ・ ・23
第1
節 緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・24
第2
節 対 象 と 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・26
第3
節 統 計 分 析 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・29
第4
節 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・30
第5
節 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・39
第6
節 結 語 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・43
第3
章 の ま と め ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・44
第
4
章 長 期 の 運 動 負 荷 に 対 す る 細 胞 性 免 疫 能 の 変 化 ・ ・ ・ ・ ・45
第1
節 緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・46
第2
節 対 象 と 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・48
第3
節 統 計 分 析 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・51
第4
節 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・52
第5
節 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・63
第6
節 結 語 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・66
第4
章 の ま と め ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・67
第
5
章 長 期 の 運 動 負 荷 に 対 す る 神 経 内 分 泌 反 応 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・68
第1
節 緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・69
第2
節 対 象 と 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・71
第3
節 統 計 分 析 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・74
第4
節 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・75
第5
節 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・85
第6
節 結 語 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・88
第5
章 の ま と め ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・89
第
6
章 総 合 的 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・90
第1
節 本 研 究 で 得 ら れ た 知 見 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・91
第2
節 ス ポ ー ツ ・ 体 育 教 育 現 場 で の 応 用 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・92
第3
節 今 後 の 研 究 課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・94
参 考 ・ 引 用 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・95
1
第 1 章 序 論第
1
節 緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2
第
2
節 運 動 と 上 気 道 感 染 症 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・4
第3
節 運 動 に 対 す る 免 疫 応 答 お よ び 神 経 内 分 泌 反 応 ・ ・ ・ ・7
第4
節 本 研 究 の 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・12
2
第
1
節 緒 言現 在 , ス ポ ー ツ は 記 録 の 向 上 , レ ク リ エ ー シ ョ ン , 健 康 維 持 な ど 様 々 な 目 的 で 多 く の 人 に 親 し ま れ て い る . 日 本 で 一 般 的 に 用 い ら れ て い る
“
ス ポ ー ツ”
は“s port ”
と い う 英 語 を 日 本 語 に 当 て は め た も の で ,“s port”
と い う 英 語 が 用 い ら れ る よ う に な っ た の は ,16 – 17
世 紀 に 入 っ て か ら と い わ れ て い る .“ s port”
と い う 語 は , ラ テ ン 語 の“deport ar e”
に 由 来 し , 元 来 , 娯 楽 や 気 分 転 換 , 休 養 を 意 味 す る も の で あ っ た . そ の 後 , 時 代 の 変 遷 と と も に そ の 言 葉 の 捉 え 方 も 変 化 し ,今 日 の 競 技 ス ポ ー ツ が 確 立 し 始 め た の は ,19
世 紀 後 半 と い わ れ て い る . ピ エ ー ル ・ ド ・ ク ー ベ ル タ ン 男 爵( Pie rre de Fré dy, bar on de Coubert i n)
に よ っ て 提 唱 さ れ た“ Citi us ,
Alt ius , Fort ius”
『 よ り 速 く , よ り 高 く , よ り 強 く 』 と い う 近 代 オ リ ン ピ ッ ク の 標 語 が 象 徴 し て い る よ う に , 統 一 さ れ た ル ー ル の も と , 優 秀 な 成 績 を 残 し た 人 の 方 が 偉 い と い う 価 値 判 断 が な さ れ る よ う に な っ た(
関 根 ,2016 1 ) )
.レ ク リ エ ー シ ョ ン を 目 的 と し た 生 涯 ス ポ ー ツ と は 異 な り , 勝 敗 を 競 う こ と が 重 視 さ れ る 競 技 ス ポ ー ツ に お い て は ,限 り な く 高 い 技 能 を 獲 得 す る 必 要 が あ る た め ,ス ポ ー ツ 選 手 は 日 々 ト レ ー ニ ン グ に 励 ん で い る .記 録 を 求 め ら れ る 競 技 種 目 に 言 及 す れ ば ,1980
年 以 前 の 世 界 記 録 は 塗 り 替 え ら れ ,破 ら れ る こ と の な い 記 録 は 存 在 し な い と い わ れ て い る . 戦 前 の オ リ ン ピ ッ ク の 男 子100m
走 で は ,10
秒 を 切 る こ と は 実 現 不 可 能 に 思 わ れ て い た が , 現 在 で は 世 界 記 録 は 塗 り 替 え ら れ , 予 選 の 段 階 で10
秒 を 切 る タ イ ム が 出 る の は 稀 で は な い(
大 森 ら ,2002 2 ) )
. こ の よ う に , 現 在 の 競 技 ス ポ ー ツ が 驚 異 的 な 進 歩 を 遂 げ た 背 景 に は , ス ポ ー ツ 医 科 学 の 発 展 が あ る .世 界 で は ,1950
年 頃 か ら ,日 本 に お い て は 東 京 オ リ ン ピ ッ ク の 開 催 を 契 機 に ,ス ポ ー ツ に 関 連 す る 事 象 に つ い て ,医 学 的 , 生 理 学 的 , 力 学 的 , 心 理 学 的 な 研 究 が 行 わ れ 始 め た . こ れ ら の 領 域 に お け る 研 究 成 果 の 蓄 積 は , ス ポ ー ツ 選 手 の 競 技 力 向 上 に 貢 献 し て き た .3
競 技 ス ポ ー ツ に 寄 与 す る 研 究 と 並 行 し , 運 動 に よ る 疾 病 予 防 ・ 改 善 と い う 観 点 か ら も 研 究 が 行 わ れ ,運 動 処 方 と し て の ス ポ ー ツ の 価 値 も 見 出 さ れ て き た .実 際 に ,健 康・体 力 の 改 善 と 維 持 の 目 的 で ,
A me ric an Colle ge of Sports M edi ci ne
が 運 動 処 方 の 指 針 を 作 成 し て い る .指 針 で は ,最 大 酸 素 摂 取 予 備 能( ma xi ma l oxygen upt a ke re ser ve
, 以 下 「V O 2 R
」 と い う) 40 – 60 % (
中 等 度)
の 運 動 を1
日30
分 以 上 , 週5
日 以 上 , あ る い は ,V O 2 R 60 %
以 上(
高 強 度)
の 運 動 を1
日20 – 25
分 以 上 , 週3
日 以 上 , も し く は , 中 等 度 と 高 強 度 の 組 み 合 わ せ を1
日20 – 30
分 以 上 , 週3 – 5
日 の 運 動 が 推 奨 さ れ て い る( Ame ric an Colle ge of Sport s Me dic ine
編 ,2011 3 ) )
. 無 論 , 日 本 に お い て も , 厚 生 労 働 省 に よ っ て 国 民 の 健 康 保 持 ・ 増 進 を 図 る た め の ひ と つ と し て ,適 度 な 運 動 を 習 慣 化 さ せ る こ と が 推 奨 さ れ て い る .し か し , 試 合 で の 勝 利 , 競 技 会 で の 自 己 記 録 更 新 を 最 終 目 標 と し て い る ス ポ ー ツ 選 手 は , 競 技 力 の 維 持 ・ 向 上 を 目 指 し , 高 強 度 の ト レ ー ニ ン グ を 継 続 す る こ と が 求 め ら れ る . 健 康 保 持 ・ 増 進 を 目 的 に 推 奨 さ れ て い る 適 度 な 運 動 と 比 較 し , 運 動 強 度 や 運 動 実 施 時 間 が 高 ま る た め , ス ポ ー ツ 選 手 に と っ て は 運 動 が 必 ず し も 健 康 に 良 い と は 限 ら な い . 実 際 に , こ れ ま で , 運 動 処 方 と し て 推 奨 さ れ て い る よ う な 中 等 度 の 運 動 に よ り , 上 気 道 感 染 症 の 罹 患 リ ス ク が 低 減 す る こ と が 報 告 さ れ て い る が
(Matt he ws et al .
,2002 4 ) )
, 他 方 , 高 強 度 運 動 や 長 時 間 運 動 に よ っ て , 上 気 道 感 染 症 の 罹 患 率 が 高 ま る こ と が 指 摘 さ れ て い る( Keast et a l .
,1988 5 )
;Ni e ma n
,1994 6 ) )
. し た が っ て , ス ポ ー ツ 選 手 は , 高 強 度 の ト レ ー ニ ン グ を 長 期 に わ た り 行 う こ と で , 競 技 力 の 向 上 が 図 ら れ る 一 方 , 免 疫 能 が 低 下 す る と い う 不 利 益 を 被 っ て い る .そ こ で , 運 動 に よ る 免 疫 能 の 低 下 に つ い て 詳 細 に 検 討 す べ く , 本 章 で は ,「 運 動 と 上 気 道 感 染 症 」,「 運 動 に よ る 免 疫 能 の 変 化 」 に つ い て , こ れ ま で の 知 見 を 報 告 す る .
4
第
2
節 運 動 と 上 気 道 感 染 症こ れ ま で ,運 動 と 上 気 道 感 染 症 と の 関 連 に つ い て 検 討 し た 報 告 は 数 多 く 存 在 す る . 前 節 で 述 べ た よ う に , 中 等 度 の 運 動 に よ り , 上 気 道 感 染 症 の 罹 患 率 が 低 く な る と 報 告 さ れ て い る .
Ni e ma n (1994) 6 )
は ,レ ク リ エ ー シ ョ ン を 目 的 と し た 生 涯 ス ポ ー ツ を 行 う 人 は ,運 動 を 行 わ な い 人 と 比 べ 上 気 道 感 染 症 の 発 症 頻 度 が 低 く ,逆 に 過 度 な ト レ ー ニ ン グ を 行 う ス ポ ー ツ 選 手 は , そ の 発 症 頻 度 が 高 い こ と を 明 ら か に し て お り , そ の よ う な 現 象 を“J
カ ー ブ 現 象”
と し て 提 唱 し て い る(
図1)
.Ni e ma n et al . ( 1990) 7 )
は ,15
週 間 に わ た っ て , 予 備 心 拍 数(hea rt rat e rese r ve
;HRR) 60%
で45
分 間 の ウ ォ ー キ ン グ を 週5
回 実 施 し た 群 と 実 施 し な か っ た 群 で は ,実 施 群 が 上 気 道 感 染 症 の 有 症 期 間 が 短 い こ と を 報 告 し て い る . さ ら に ,12
週 間 に わ た り ,18
歳 か ら85
歳 を 対 象 に 調 査 し た と こ ろ ,身 体 活 動 量 の 高 い 人 や1
週 間 当 た り の 運 動 実 施 回 数 が 多 い 人 ほ ど , 上 気 道 感 染 症 の 発 症 頻 度 が 低 い こ と を 明 ら か に し た( Nie ma n et al .
,2011 8 ) )
. す な わ ち , 中 等 度 の 運 動 を 行 っ て い る 人 は , 運 動 を 行 わ な い 人 と 比 べ , 上 気 道 感 染 症 の 罹 患 リ ス ク が 低 い こ と か ら , 適 度 な 運 動 は 免 疫 能 を 高 め る こ と が 示 唆 さ れ る .一 方 , 過 度 な 運 動 で は , 上 気 道 感 染 症 の 罹 患 率 が 高 ま る こ と が 報 告 さ れ て い る .
Pete rs and Bat e ma n ( 1983) 9 )
は ,56km
の ウ ル ト ラ マ ラ ソ ン 参 加 者 の 中 で , 上 気 道 感 染 症 の 症 状 を 訴 え た 人 の 割 合 は , レ ー ス2
週 間 後 で33.3%
で あ り ,非 参 加 者 と 比 べ 高 い 値 を 示 し た と 述 べ て い る .1987
年 の ロ サ ン ゼ ル ス マ ラ ソ ン 出 場 者 を 対 象 に 検 討 し た 報 告 で は ,マ ラ ソ ン 出 場 者 は , 非 出 場 者 と 比 較 し , 上 気 道 感 染 症 の 罹 患 率 が 約6
倍 高 か っ た こ と が 明 ら か に な っ て い る( Ni e ma n et al .
,1990 1 0 ) )
. さ ら に , 出 場 者 の ト レ ー ニ ン グ 走 行 距 離 別 に 上 気 道 感 染 症 の 罹 患 率 を 比 較 し た 報 告 で は , 最 も 走 行 距 離 が 長 い 群 は , 最 も 短 い 群 と 比 べ , 罹 患 率 が 約2
倍 高 い こ と5
を 明 ら か に し て い る
( Nie ma n et al .
,1990 1 0 ) )
. 同 様 に ,He ath et a l.
(1991) 1 1 )
は ,年 間 の 走 行 距 離 が 長 い 人 ほ ど 上 気 道 感 染 症 の 罹 患 率 が 高 い こ と を 明 ら か に し て い る .フ ッ ト ボ ー ル プ レ イ ヤ ー を 対 象 に 行 っ た1
年 間 の 縦 断 的 研 究 で は ,高 強 度 ト レ ー ニ ン グ 期 間 に お い て 上 気 道 感 染 症 の 発 症 率 が 増 加 す る こ と( Fa hl ma n a nd Engel s
,2005 1 2 ) )
や , 水 泳 選 手 を 対 象 に 検 討 し た 場 合 に お い て も , ト レ ー ニ ン グ 負 荷 が 増 え た 際 に , 上 気 道 感 染 症 の 罹 患 リ ス ク が 増 加 す る こ と が 報 告 さ れ て い る( He llar d et al .
,2015 1 3 ) )
. し た が っ て , 長 時 間 の 運 動 や ト レ ー ニ ン グ 量 の 多 い 人 ほ ど 上気 道 感 染 症 の 罹 患 率 が 増 加 す る こ と が ,こ れ ま で に 明 ら か に さ れ て き て い る
( Ni e ma n
,1994 6 ) )
.以 上 の よ う に ,レ ク リ エ ー シ ョ ン を 目 的 に 運 動 を 行 っ て い る 人 や 普 段 運 動 を 行 わ な い 人 で は ,身 体 活 動 の 増 加 が 上 気 道 感 染 症 の 罹 患 リ ス ク を 低 下 さ せ る . 一 方 , ス ポ ー ツ 選 手 で は , 高 強 度 ト レ ー ニ ン グ や 競 技 後 に 上 気 道 感 染 症 に 罹 る 危 険 性 が 高 ま る こ と が 報 告 さ れ て い る
(M orei ra et
al.
,2009 1 4 )
;Gle es on and Wal sh
,2012 1 5 ) )
. こ れ ら の 事 実 は , 高 強 度 運動 や 長 時 間 運 動 の 実 施 は , 免 疫 能 を 低 下 さ せ る こ と を 示 唆 し て い る . 上 気 道 感 染 症 は ,ス ポ ー ツ 選 手 の 競 技 パ フ ォ ー マ ン ス に も 影 響 を 及 ぼ す こ と が 報 告 さ れ て お り , 水 泳 選 手 で は , 試 合
6
週 間 前 に , 上 気 道 感 染 症 を は じ め と す る 体 調 不 良 を 訴 え た 人 は ,競 技 パ フ ォ ー マ ン ス が 低 下 す る こ と が 明 ら か に さ れ て い る( Pyne et al .
,2005 1 6 ) )
. さ ら に , ク ロ ス カ ン ト リ ー 選 手 や バ イ ア ス ロ ン 選 手 ,長 距 離 選 手 と い っ た 持 久 系 ス ポ ー ツ 選 手 に お い て は , 体 調 不 良 日 が 多 い 年 ほ ど , 年 間 の ト レ ー ニ ン グ 時 間 が 短 い と 報 告 さ れ て い る( Mart ens son et al.
,2014 1 7 ) )
. し た が っ て , ス ポ ー ツ 選 手 は , 上 気 道 感 染 症 を は じ め と す る 体 調 不 良 を 予 防 す る 必 要 が あ る . 次 節 で は ,運 動 に 対 す る 免 疫 能 の 変 化 に つ い て こ れ ま で の 知 見 を 報 告 す る .6
図
1
. 運 動 強 度 , 頻 度 と 上 気 道 感 染 症 の 発 症 頻 度(J
カ ー ブ 現 象)
(Ni e ma n, D.C. ( 1994) Exer cis e, upper r es pira tor y t rac t i nfe cti on, a nd the
i mmune s yste m
.Me d Sc i Sport s Exer c 26
:128 -139
.)
7
第
3
節 運 動 に 対 す る 免 疫 応 答 お よ び 神 経 内 分 泌 反 応ヒ ト は 身 体 の 恒 常 性 を 保 つ た め に ,ウ ィ ル ス や 細 菌 な ど の 病 原 体 に 対 抗 す る た め の 免 疫 能 を 備 え て い る . 免 疫 は , 自 己 と 非 自 己 を 見 分 け て , 非 自 己 を 排 除 す る 生 体 反 応 で あ る . 免 疫 能 は , 液 性 免 疫 能 と 細 胞 性 免 疫 能 の
2
つ に 大 別 さ れ る .液 性 免 疫 能 は ,B c ell (
以 下「B
細 胞 」と い う)
が 形 質 細 胞 に 分 化 す る こ と で 抗 体 を 産 生 し , そ の 抗 体 に よ り , 病 原 体 の 排 除 を 補 助 す る 役 割 を 担 っ て い る . 一 方 , 細 胞 性 免 疫 能 は ,Natural kille r cell (
以 下 「NK
細 胞 」 と い う)
とT c ell (
以 下 「T
細 胞 」 と い う)
が 主 体 と な り ,複 数 の 免 疫 細 胞 が 連 携 し て が ん 細 胞 や ウ ィ ル ス を 排 除 す る 役 割 を 担 っ て い る . さ ら に ,B
細 胞 やN K
細 胞 の 活 性 を 調 節 す る も の は ,T
細 胞 の う ちT he lper c ell (
以 下 「Th
細 胞 」 と い う)
で あ る こ と が 知 ら れ て い る . し た が っ て , 運 動 と 免 疫 能 を 検 討 す る 際 ,Th
細 胞 の 変 化 に 着 目 し た 報 告 が 散 見 さ れ る .一 過 性 の 運 動 に 対 す る
Th
細 胞 の 変 化 を 検 討 し た 報 告 で は ,60
分 間 の エ ル ゴ メ ー タ ー を 最 大 酸 素 摂 取 量( maxi ma l oxyge n upta ke
,以 下「V O 2 m a x
」 と い う) 60 %
で 実 施 し た 場 合 ,12
分 間 の ト レ ッ ド ミ ル 負 荷 試 験 を 実 施 し た 場 合 の い ず れ も ,T h
細 胞 が 運 動 後 , 有 意 に 低 下 す る こ と を 明 ら か に し て い る(
森 ,1995 1 8 )
;Shi nkai et a l.
,1996 1 9 ) )
. 長 期 の 運 動 負 荷 に 対 す る 変 化 を 検 討 し た 報 告 で は ,Ka wa da et al. ( 1992) 2 0 )
が , 週5
日8km
の ラ ン ニ ン グ ト レ ー ニ ン グ を40
週 間 継 続 さ せ た 結 果 ,Th
細 胞 は 開 始 前 と 比 較 し て 有 意 に 低 下 す る こ と を 明 ら か に し て い る . さ ら に ,Mal m e t al .
(2004) 2 1 )
は ,5
日 間 に お よ ぶ サ ッ カ ー の ト レ ー ニ ン グ 合 宿 前 後 でT h
細 胞 が 有 意 に 低 下 す る こ と を 報 告 し て い る . こ の よ う に ,T h
細 胞 は 強 度 の 高 い 運 動 や 長 期 間 に お よ ぶ 運 動 に よ っ て 低 下 す る こ と が 明 ら か に な っ て い る .し か し ,Th
細 胞 は ,産 生 す る サ イ ト カ イ ン の 種 類 に よ っ て ,T hel pe r 1 cel l (
以 下 「T h1
細 胞 」 と い う)
とT hel per 2 ce ll (
以 下 「Th2
8
細 胞 」 と い う
)
に 分 類 す る こ と が で き る た め , よ り 詳 細 に 検 討 す る 必 要 が あ る .未 分 化 の
Th
細 胞 で あ るNa i ve T ce ll (
以 下 「T h0
細 胞 」 と い う)
は , 抗 原 提 示 細 胞 か ら 外 来 抗 原 の 提 示 を 受 け る と ,細 胞 性 免 疫 の 活 性 を 調 節 す るTh1
細 胞 と 液 性 免 疫 の 活 性 を 調 節 す るT h2
細 胞 に 分 化 さ れ る .T h1
細 胞 は ,Int erl euki n (
以 下「IL
」と い う) -2
お よ びInt erfe ron- γ (
以 下「IFN- γ
」 と い う)
な ど の サ イ ト カ イ ン を 産 生 し ,NK
細 胞 の 活 性 を 高 め , 細 胞 性 免 疫 能 を 亢 進 さ せ る .さ ら に ,前 駆 細 胞 か らTh1
細 胞 へ の 分 化 を 促 進 し , 一 方 でT h2
細 胞 へ の 分 化 を 抑 制 す る 作 用 を 有 し て い る . こ れ に 対 し ,Th2
細 胞 は ,IL -4
お よ びIL -10
な ど の サ イ ト カ イ ン 産 生 に よ り ,B
細 胞 の 活 性 を 高 め , 液 性 免 疫 能 を 亢 進 さ せ る .T h2
細 胞 産 生 の サ イ ト カ イ ン も ま た ,前 駆 細 胞 か らTh2
細 胞 へ の 分 化 を 促 進 し ,反 対 にTh1
細 胞 へ の 分 化 を 抑 制 す る 作 用 を 有 し て い る( El enkov
,2008 2 2 )
; 中 山 ,2013 2 3 ) )
. し た が っ て ,Th1
細 胞 とTh2
細 胞 は 互 い を 抑 制 し 均 衡 を 保 つ こ と で , 細 胞 性 免 疫 と 液 性 免 疫 の 機 能 を 維 持 し て お り ,両 者 の バ ラ ン ス が 一 定 で あ る こ と が 免 疫 能 を 維 持 す る 上 で 重 要 と 考 え ら れ て い る( Kidd
,2003 2 4 ) )
.細 胞 性 免 疫 能 を 賦 活 す る
T h1
細 胞 お よ び 液 性 免 疫 能 を 賦 活 す るT h2
細 胞 に 着 目 し , 運 動 が 免 疫 能 に 与 え る 影 響 を 検 討 し た 報 告 も 散 見 さ れ る(La nc ast er e t al .
,2005 2 5 )
;Ibf elt e t al .
,2002 2 6 ) )
.La nc ast er e t al . ( 2005)
2 5 )
は , ヒ ト を 対 象 に 短 時 間 運 動 に よ る 変 化 を 検 討 し ,2.5
時 間 の 走 運 動を
V O 2 m a x 75%
で 実 施 す る と , 運 動 終 了 か ら2
時 間 後 にT h1
細 胞 数 が 有意 に 低 下 し ,
Th2
細 胞 数 は 変 化 し な い こ と を 明 ら か に し て い る .さ ら に ,Ibfe lt et a l. (2002) 2 6 )
は , 傾 斜 角5%
の 下 り 坂 で1.5
時 間 の 走 運 動 をVO 2 m a x 75%
で 実 施 し た 結 果 , 運 動 終 了 か ら2
時 間 後 にTh1
細 胞 数 お よび
Th1/Th2
比 が 有 意 に 低 下 し ,Th2
細 胞 数 は 有 意 に 変 化 し な い こ と を 報 告 し て い る . 一 方 , ラ ッ ト を 対 象 に 長 期 の 運 動 負 荷 に よ る 変 化 を 検 討 し た も の で は ,9
週 間 の 運 動 負 荷 終 了 か ら7
日 後 にTh1
細 胞 数 お よ び9
Th1/Th2
比 が 有 意 に 低 下 し ,T h2
細 胞 数 は 有 意 に 増 加 す る と 報 告 さ れ て い る( Ru and Peij i e
,2009 2 7 ) )
. し か し , ヒ ト を 対 象 に 長 期 の 運 動 負 荷 に よ る 変 化 を 検 討 し た も の は 調 査 し た 限 り 見 当 た ら な い .長 期 の 運 動 負 荷 に よ っ て , 免 疫 能 が 低 下 す る と 考 え ら れ て い る が , 細 胞 性 免 疫 能 と 液 性 免 疫 能 の ど ち ら が 低 下 す る か は 定 か で は な い .一 般 に , 免 疫 能 に 影 響 を 及 ぼ す も の と し て , 内 分 泌 系 お よ び 交 感 神 経 系 が 知 ら れ て い る . 生 体 は ス ト レ ス 刺 激 を 受 け る と , 内 分 泌 系 を 介 し た ス ト レ ス 反 応 と 交 感 神 経 系 を 介 し た ス ト レ ス 反 応 を 示 す
(
図2)
. 運 動 に よ る ス ト レ ス に よ り , 視 床 下 部 - 脳 下 垂 体 - 副 腎 皮 質(Hypot hal a mic -Pi tui t ar y-Adr enoc orti cal
;HPA)
系 が 賦 活 さ れ , 視 床 下 部 は 神 経 伝 達 物 質 と し て 副 腎 皮 質 刺 激 ホ ル モ ン 放 出 ホ ル モ ン(Corti cot ropi n-r ele as ing hor mone
, 以 下 「CRH
」 と い う)
を 放 出 し ,CRH
の 刺 激 に よ っ て 脳 下 垂 体 は 副 腎 皮 質 刺 激 ホ ル モ ン( Adr enoc orti cot ropic hor mone
, 以 下 「ACTH
」 と い う)
を 分 泌 す る . そ の 結 果 ,ACTH
の 刺 激 に よ り , 副 腎 皮 質 か ら コ ル チ ゾ ー ル( Cortis ol)
が 産 生 さ れ る . 一 方 , ス ト レ ス は 視 床 下 部 と と も に 中 脳 や 延 髄 に 存 在 す る 自 律 神 経 中 枢 を 刺 激 し , 交 感 神 経 系 の 活 動 を 亢 進 さ せ る . 交 感 神 経 系 が 活 性 化 す る と , 副 腎 髄 質 よ り ア ド レ ナ リ ン( Adre nali ne )
, ノ ル ア ド レ ナ リ ン(Nora dr enali ne)
が 分 泌 さ れ る と と も に ,交 感 神 経 終 末 か ら ノ ル ア ド レ ナ リ ン が 分 泌 さ れ る( Webst er et al .
,2002 2 8 )
;Gla ser a nd K ie colt -Gla ser
,2005 2 9 ) )
.内 分 泌 系 お よ び 交 感 神 経 系 の 反 応 に よ っ て 産 生 さ れ る ホ ル モ ン は ,ス ト レ ス ホ ル モ ン と 呼 ば れ て い る . 実 際 に , マ ウ ス に お い て は 長 期 的 な ス ト レ ス 刺 激 に よ っ て , コ ル チ コ ス テ ロ ン
( Corti cos ter one)
が 上 昇 し , そ れ に 伴 い ,T h1
サ イ ト カ イ ン やT h2
サ イ ト カ イ ン の 分 泌 が 抑 制 さ れ る こ と が 明 ら か に な っ て い る( Vi ver os -Pa r ede s et a l.
,2006 3 0 ) )
. さ ら に , ヒ ト に お い て も , ス ト レ ス 刺 激 に よ っ て , グ ル コ コ ル チ コ イ ド10
(Gl uc oc ort icoid)
や ア ド レ ナ リ ン , ノ ル ア ド レ ナ リ ン が 分 泌 さ れ る と ,Th1
細 胞 の サ イ ト カ イ ン 産 生 を 抑 制 し ,T h2
細 胞 の サ イ ト カ イ ン 産 生 を 促 進 さ せ る た め ,T h1
細 胞 と 比 較 し ,Th2
細 胞 が 優 位 に な る と 報 告 さ れ て い る( El enkov and Chrous os
,2002 3 1 ) )
.運 動 は 恒 常 性 を 崩 す 身 体 的 ス ト レ ス に 相 当 す る と い わ れ て い る こ と か ら も
(M ast or a kos et al .
,2005 3 2 ) )
, 当 然 , 運 動 に よ り 神 経 内 分 泌 系 の 活 動 が 亢 進 し , ス ト レ ス ホ ル モ ン 分 泌 が 亢 進 す る と 考 え ら れ る . し た が っ て , 長 期 の 運 動 負 荷 に 対 す る 免 疫 応 答 を 検 討 す る 際 , 神 経 内 分 泌 系 の 反 応 も 含 め て 検 討 す る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る . そ こ で , 本 研 究 は , 長 期 の 運 動 負 荷 に よ り ,細 胞 性 免 疫 能 と 液 性 免 疫 能 の ど ち ら が 低 下 す る の か , 神 経 内 分 泌 反 応 も 併 せ て 検 討 す る こ と を 目 的 と し た .11
図
2
ス ト レ ス に 対 す る 内 分 泌 系 反 応 と 交 感 神 経 系 反 応( Gla ser and Ki ec olt -Gl ase r
,20 05
よ り 一 部 改 変 し , 引 用)
Hypothalamus
(Co r tico tr op in -r e lea s ing CRH ho r mo n e)
Pituitary gland
(Ad r en oc o r tic o tro p ic ACTH
ho r mo n e)
Adrenal gland
Cortex
Medulla
Sympathetic nerve ending
Cortisol Adrenaline Noradrenaline
Noradrenaline
Th1
Th2
NK cell
B cell
Stress (Exercise)
12
第
4
節 本 研 究 の 目 的Wa ls h et al . ( 2011) 3 3 )
は ,1
日 数 時 間 持 続 す る ス ト レ ス を 急 性 , 短 期 ス ト レ ス ,1
日 数 時 間 持 続 す る ス ト レ ス が 数 週 間 あ る い は 数 ヶ 月 に わ た る 場 合 を 慢 性 , 長 期 ス ト レ ス と 定 義 し て い る .本 研 究 は ,長 期 ス ト レ ス に 対 す る 免 疫 応 答 お よ び 神 経 内 分 泌 反 応 を 明 ら か に す べ く , 長 期 の 運 動 負 荷 の 一 例 と し て , 夏 期 に 行 わ れ た ラ グ ビ ー フ ッ ト ボ ー ル 部 の ト レ ー ニ ン グ 合 宿 に 着 目 し ,以 下 の 項 目 に つ い て 検 討 し た .
1)
液 性 免 疫 能 の 変 化2)
細 胞 性 免 疫 能 の 変 化3)
神 経 内 分 泌 系 の 変 化(
短 期 間 運 動 と 比 較 し て)
こ れ ら の 反 応 を 明 ら か に す る こ と で ,ス ポ ー ツ や 体 育 教 育 現 場 に お い て , 長 期 の 運 動 負 荷 を 実 施 す る 際 , 生 理 学 的 変 化 と し て 起 こ り 得 る 現 象 を ,指 導 者 や 運 動 実 施 者 が 把 握 す る た め の 資 料 に す る こ と が 可 能 で あ る .
13
第
2
章 長 期 の 運 動 負 荷 に 対 す る 体 組 成 の 変 化第
1
節 緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・14
第2
節 対 象 と 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・15
第3
節 統 計 分 析 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・17
第4
節 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・18
第5
節 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・20
第6
節 結 語 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・21
第2
章 の ま と め ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・22
14
第1
節 緒 言近 年 , ス ポ ー ツ 選 手 を 対 象 に 体 重 や 体 組 成 の 測 定 が 実 施 さ れ て い る
(Wil more
,1983 3 4 )
;Herge nroeder a nd Kli s h
,1990 3 5 )
;Gart he e t al.
,2013 3 6 ) )
. 実 際 に , 様 々 な 競 技 の 選 手 を 対 象 に 体 組 成 の 研 究 が 行 わ れ て き た( Ol ds et al .
,1985 3 7 )
;Ost oj ic et al .
,2006 3 8 )
;Al ej andro et al.
,2015 3 9 ) )
.Ol ds et al . (1985) 3 7 )
は , 自 転 車 競 技 者 を 対 象 に 検 討 し た と こ ろ , 体 脂 肪 量 が2kg
増 加 す る と ,4000m
個 人 追 い 抜 き の 記 録 が 約1.5
秒 遅 く な る こ と を 明 ら か に し て い る . バ ス ケ ッ ト ボ ー ル 選 手 を 対 象 に し た 報 告 で は , 体 脂 肪 の 多 い 選 手 は , 最 大 酸 素 摂 取 量 の 推 定 値 が 低 い こ と を 指 摘 し て い る(Ostoj ic et a l.
,2006 3 8 ) )
.Alej a ndr o et a l. (2015) 3 9 )
は , 競 技 レ ベ ル で 比 較 し た と こ ろ , 競 技 レ ベ ル の 高 い 選 手 の 方 が , 体 脂 肪 率 が 低 い こ と を 明 ら か に し て い る . さ ら に , 体 組 成 の 測 定 は , エ リ ー ト 選 手 育 成 の 選 考 過 程 で 重 要 な 役 割 を 果 た す と 述 べ て い る( Alej a ndr o et al.
,2015 3 9 ) )
.一 方 , 水 泳 競 技 に お い て は ,浮 力 や 推 進 力 を 得 る た め の 要 因 と し て 体 脂 肪 が 必 要 で あ る と い わ れ て い る(
水 藤 ,2014 4 0 ) )
. 体 脂 肪 率 が 低 い 者 は , 水 に 浮 き に く い た め ,浮 力 を 補 う た め の エ ネ ル ギ ー 消 費 が 必 要 に な る こ と が 指 摘 さ れ て お り(
藤 原 ら ,2002 4 1 ) )
, 水 泳 選 手 に お い て は 体 脂 肪 が 少 な い ほ ど ,競 技 パ フ ォ ー マ ン ス が 向 上 す る と い う わ け で は な い と 考 え ら れ る .当 然 の こ と な が ら , 競 技 特 性 に よ り 適 切 な 体 組 成 は 異 な る . 上 述 の 如 く , 体 組 成 と 競 技 パ フ ォ ー マ ン ス の 関 連 に つ い て 報 告 さ れ て お り , ス ポ ー ツ 選 手 が 自 身 の 体 組 成 を 把 握 す る こ と は 重 要 で あ る . そ こ で , 本 研 究 は ,長 期 の 運 動 負 荷 に 対 す る 免 疫 応 答 お よ び 神 経 内 分 泌 反 応 を 検 討 す る 前 に ,長 期 の 運 動 負 荷 に 対 す る ス ポ ー ツ 選 手 の 体 組 成 の 変 化 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た .
15
第
2
節 対 象 と 方 法1
. 対 象被 験 者 は ,
A
大 学 保 健 体 育 審 議 会 ラ グ ビ ー フ ッ ト ボ ー ル 部 に 所 属 す る 男 子 学 生15
名(
年 齢19.2 ± 0.2
歳 ,身 長172.6 ± 2.0 c m
,B M I (Body ma ss index) 29.1 ± 0.8 kg/ m²)
を 対 象 と し た .2
. 実 験 手 順被 験 者 は , 夏 期 に 行 わ れ た ト レ ー ニ ン グ 合 宿 に 参 加 し た . 合 宿 は 平 成
27
年8
月7
日 か ら 平 成27
年8
月31
日 ま で 実 施 さ れ ,休 養 日3
日 間 を 含 め た 全25
日 間 で 行 わ れ た . 合 宿 中 は1
日 に7
時 間 か ら8
時 間 の ト レ ー ニ ン グ を 行 っ て お り , 前 半 の11
日 間 は , 持 久 的 ト レ ー ニ ン グ や ウ エ イ ト ト レ ー ニ ン グ な ど の ハ ー ド ワ ー ク を 中 心 に 行 い , 後 半 の11
日 間 は , 試 合 中 心 に フ ォ ー メ ー シ ョ ン 確 認 や 戦 術 確 認 を 行 っ た . そ の た め , 後 半 の11
日 間 は , 前 半 と 比 較 し , 身 体 的 負 荷 が 低 い 内 容 で あ っ た .3
. 測 定 項 目 及 び 方 法合 宿 前
( pre )
と 合 宿 に お け る 最 後 の 運 動 終 了 か ら24
時 間 後(
合 宿 後 ,post)
に , 体 重 お よ び 体 組 成(
体 脂 肪 量 , 体 脂 肪 率 , 骨 格 筋 量 , 骨 格 筋 率 , 体 水 分 量)
を 測 定 し た . 測 定 に は ,Inbody 570 Body Compositi on Anal yze r (B IOSPACE Co., Ltd
.,Korea )
を 用 い ,8
ヶ 所 か ら 体 内 に 微 弱 な 電 流 を 流 し ,そ の 抵 抗 値 に よ り 分 析 を 行 う 生 体 電 気 イ ン ピ ー ダ ン ス 法 に て 測 定 し た . 測 定 を す る 際 , 測 定 お よ び 手 の ひ ら の 汗 の ふ き 取 り を 行 っ た . 測 定 時 間 は , 午 後1
時 で あ っ た .な お , 衣 類 に よ る 誤 差 を 少 な く す る た め , 測 定 時 は 下 着 の み の 着 用 で あ っ た .
16 4
. 倫 理 的 配 慮本 研 究 は , ヘ ル シ ン キ 宣 言 に 則 り 実 施 さ れ , 被 験 者 に は 以 下 の 倫 理 的 配 慮 が な さ れ た .
1)
研 究 の 内 容 と 危 険 性 の 事 前 説 明2)
研 究 へ の 参 加 を 辞 退 す る こ と が 被 験 者 に と っ て 不 利 益 に は な ら ない
3)
い つ で も 途 中 辞 退 が で き る4)
個 人 デ ー タ は 個 人 が 特 定 で き な い よ う に 管 理 す るな お , 本 研 究 は 日 本 大 学 文 理 学 部 倫 理 委 員 会 に よ っ て 承 認 さ れ た
(
承 認 番 号 :27
-9)
.17
第
3
節 統 計 分 析測 定 結 果 は 平 均
±
標 準 誤 差( me an ± S.E.)
で 示 し た . 運 動 前 後 の 比 較 に は , 対 応 の あ るt
検 定 を 用 い た . い ず れ も 有 意 水 準 は5%
未 満 と し た . 分 析 に は ,S PSS st ati stic s 21.0 ( IBM
,USA)
を 用 い た .18
第4
節 結 果1
. 体 重(
表1)
体 重 は 合 宿 前 と 比 較 し て 合 宿 後 ,有 意 に 低 下 し た
( pr e
:86.9 ± 3.3 kg
,post
:82.8 ± 3.3 kg
,t (9)
=8.361
,p < 0.01)
.2
. 体 組 成(
表1)
体 脂 肪 量
( pr e
:18.1 ± 2.1 kg
,post
:14.9 ± 1.8 kg
,t (9)
=4.754
,p < 0.01)
,体 脂 肪 率(pre
:20.4 ± 1.7 kg
,post
:17.7 ± 1.6 kg
,t (9)
=4.717
,p < 0.01)
, 体 水 分 量( pr e
:50.2 ± 1.4 L
,post
:49.4 ± 1.6 L
,t (9)
=2.283
,p < 0.05)
は い ず れ も , 合 宿 前 と 比 較 し て 合 宿 後 , 有 意 に 低 下 し た . 骨 格 筋 量 は 合 宿 前 後 で 有 意 な 変 化 を 示 さ な か っ た( pr e
:39.6 ± 1.1 kg
,pos t
:39.2 ± 1.3 kg
,t ( 9)
=1.057
,n.s .)
. 骨 格 筋 率 は 合 宿 前 と 比 較 し て 合 宿 後 ,有 意 の 増 加 し た( pre
:45.7 ± 1.1 kg
,post
:47.6 ± 1.0 kg
,t (9)
=4.905
,p < 0.01)
.19
表1
被 験 者 の 身 体 的 特 徴pre pos t p
体 重( kg)
86.9 ± 3.3 82.8 ± 3.3
p < 0.01
体 脂 肪 量
( kg)
18.1 ± 2.1 14.9 ± 1.8 p < 0.01
体 脂 肪 率(% ) 20.4 ± 1.7 17.7 ± 1.6 p < 0.01
体 水 分 量( L)
50.2 ± 1.4 49.4 ± 1.6 p < 0.05
骨 格 筋 量
( kg) 39.6 ± 1.1 39.2 ± 1.3 n.s .
骨 格 筋 率(% ) 45.7 ± 1.1 47.6 ± 1.0 p < 0.01 me an ± S.E.
n.s. : not si gnific ant
20
第5
節 考 察元 来 , ラ グ ビ ー フ ッ ト ボ ー ル に 限 ら ず , ア メ リ カ ン フ ッ ト ボ ー ル や 相 撲 な ど の コ ン タ ク ト ス ポ ー ツ は ,体 重 の 重 い 選 手 が よ り 有 利 で あ る と さ れ て い る
( Quar rie and Hopki ns
,2007 4 2 )
; 角 谷 ら ,2013 4 3 ) )
. ゆ え に , コ ン タ ク ト ス ポ ー ツ で は 体 重 の 獲 得 が 重 要 な 要 素 と 考 え ら れ て き た .し か し , 緒 言 で 指 摘 し た 如 く , 体 組 成 が ス ポ ー ツ 選 手 の 競 技 パ フ ォ ー マ ン ス に 影 響 す る た め , 体 重 の み な ら ず , 体 組 成 に 着 目 す る 必 要 が あ る .Wil more ( 1983) 3 4 )
やWithers et al . ( 1987) 4 4 )
は , 体 脂 肪 率 の 増 加 に よ り 有 酸 素 能 力 や 走 速 度 が 低 下 す る と 指 摘 し て い る .Me i r et a l. ( 2001) 4 5 )
は , 体 脂 肪 の 蓄 積 は , 体 温 調 節 機 能 の 低 下 や エ ネ ル ギ ー 消 費 の 増 大 , 走 速 度 の 低 下 を 引 き 起 こ す と 報 告 し て い る . さ ら に , 体 脂 肪 率 や 骨 格 筋 率 が , 運 動 に よ る 生 理 的 変 化 に 影 響 を 及 ぼ す こ と が 指 摘 さ れ て い る(
高 階ら ,
2016 4 6 )
; 高 階 ら ,2017 4 7 ) )
. 柔 道 選 手 を 対 象 に 検 討 し た 報 告 で は ,骨 格 筋 率 の 低 い 選 手 は , 高 い 選 手 と 比 較 し て , 試 合 後 の 血 中 乳 酸 濃 度 が 高 値 を 示 す こ と が 明 ら か に さ れ て い る
(
高 階 ら ,2016 4 6 ) )
. さ ら に , 体 脂 肪 率 の 高 い 選 手 は , 低 い 選 手 と 比 べ , 運 動 後 に 皮 膚 温 高 値 が 持 続 す る21
こ と が 報 告 さ れ て い る
(
高 階 ら ,2017 4 7 ) )
. し た が っ て , ス ポ ー ツ 選 手 は , 体 脂 肪 率 や 骨 格 筋 率 な ど の 体 組 成 に 着 目 し , ト レ ー ニ ン グ を 実 施 す る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る .本 研 究 の 結 果 , 長 期 の 運 動 負 荷 後 に 骨 格 筋 率 の 増 加 が 認 め ら れ た . こ の 原 因 は , 骨 格 筋 量 の 増 加 に 伴 う も の で は な く , 体 脂 肪 量 や 体 水 分 量 の 低 下 に よ る も の で あ る . 上 述 し た 如 く , 体 脂 肪 の 蓄 積 は , 競 技 パ フ ォ ー マ ン ス に 悪 影 響 を 及 ぼ す こ と が 報 告 さ れ て い る
( Wil more
,1983 3 4 )
;Wit her s et al .
,1987 4 4 )
;M eir e t al .
,2001 4 5 ) )
. し た が っ て , 本 研 究 に お け る 体 脂 肪 量 や 体 水 分 量 の 低 下 に 伴 う 骨 格 筋 率 の 増 加 は ,選 手 の 競 技 パ フ ォ ー マ ン ス の 向 上 に 寄 与 す る 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ る .第
6
節 結 語長 期 の 運 動 負 荷 に よ る 体 組 成 の 変 化 を 検 討 し た .そ の 結 果 は 以 下 に 示 す 通 り で あ る .
1)
長 期 の 運 動 負 荷 後 , 体 重 , 体 脂 肪 量 , 体 脂 肪 率 , 体 水 分 量 は 有 意 に 低 下 し た .2)
長 期 の 運 動 負 荷 後 , 骨 格 筋 量 に 有 意 な 変 化 は な か っ た が , 骨 格 筋 率 は 有 意 に 増 加 し た .本 研 究 で 実 施 し た 長 期 の 運 動 負 荷 は ,体 組 成 に 影 響 を 与 え る こ と を 明 ら か に し た .
22
第
2
章 の ま と め第
2
章 で は , 長 期 の 運 動 負 荷 に 対 す る 体 組 成 の 変 化 を 検 討 し た . そ の 結 果 ,体 重 お よ び 体 脂 肪 量 ,体 水 分 量 は 運 動 後 ,有 意 に 低 下 し た .一 方 , 骨 格 筋 量 は 変 化 し な か っ た が , 骨 格 筋 率 が 運 動 後 , 有 意 に 増 加 し た .長 期 の 運 動 負 荷 に よ り 免 疫 能 が 低 下 す る と 考 え ら れ る が ,ヒ ト に お い て 液 性 免 疫 能 と 細 胞 性 免 疫 能 の ど ち ら が 低 下 す る の か 明 ら か に な っ て い な い . 次 章 で は , 長 期 の 運 動 負 荷 に よ る 液 性 免 疫 能 の 変 化 を 検 討 す る こ と と す る .
23
第
3
章 長 期 の 運 動 負 荷 に 対 す る 液 性 免 疫 能 の 変 化第
1
節 緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・24
第
2
節 対 象 と 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・26
第3
節 統 計 分 析 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・29
第4
節 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・30
第5
節 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・39
第6
節 結 語 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・43
第3
章 の ま と め ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・44
24
第1
節 緒 言液 性 免 疫 能 は ,
B ce ll (
以 下 「B
細 胞 」 と い う)
が 産 生 す る 抗 体 に よ り 病 原 体 の 排 除 を 補 助 す る も の で あ る .抗 体 は 細 菌 に 結 合 し 複 合 体 を 形 成 す る こ と で , 好 中 球 や マ ク ロ フ ァ ー ジ(Ma cropha ge)
の 貪 食 を 促 進 し , ウ ィ ル ス 感 染 細 胞 に 結 合 す る こ と でNa tur al kil ler c ell (
以 下 「NK
細 胞 」 と い う)
の 細 胞 傷 害 性 を 高 め る(
鍔 田 ,2013 4 8 ) )
. 抗 体 は 免 疫 グ ロ ブ リ ン( Immunogl obuli n
, 以 下 「Ig
」 と い う)
と 呼 ば れ ,IgG
,IgA
,IgM
な ど に 分 類 さ れ る .IgA
は 粘 膜 組 織 や 唾 液 中 に 存 在 し , 一 次 的 な 感 染 防 御 を 担 い ,IgG
やIgM
は 主 に 血 漿 中 で 病 原 体 排 除 の 一 端 を 担 っ て い る .こ れ ま で , 運 動 に よ る 液 性 免 疫 能 の 変 化 を 検 討 す る 際 , 非 侵 襲 的 か つ 容 易 で あ る と い う 理 由 か ら ,唾 液 中 の
IgA
を 測 定 す る 方 法 が 用 い ら れ て き た .Toma si et al . (1982) 4 9 )
は ク ロ ス カ ン ト リ ー の レ ー ス に 参 加 し た 男 性(50km)
と 女 性( 20km)
は ,い ず れ も レ ー ス 後 に 唾 液IgA
濃 度 が 有 意 に 低 下 し た と 報 告 し て い る .M c Dowe l l e t al . (1992) 5 0 )
は ,ト レ ッ ド ミ ル を 用 い ,1
時 間 の 漸 増 負 荷 試 験 を 実 施 し た 結 果 , 唾 液IgA
濃 度 が 有 意 に 低 下 し た と 述 べ て い る . し た が っ て , 一 過 性 の 疲 労 困 憊 運 動 に よ り 唾 液25
IgA
濃 度 は 低 下 す る と 考 え ら れ て い る . さ ら に ,Fahl man a nd Engel s (2005) 1 2 )
は 長 期 の 運 動 負 荷 が 唾 液IgA
濃 度 に 与 え る 影 響 を 次 の よ う に 報 告 し て い る . フ ッ ト ボ ー ル 選 手 を 対 象 に ,1
年 間 の 縦 断 的 研 究 を 実 施 し た 報 告 で は ,高 強 度 の ト レ ー ニ ン グ 期 に 唾 液IgA
濃 度 が 有 意 に 低 下 し , 上 気 道 感 染 症 の 罹 患 率 が 上 昇 す る こ と を 明 ら か に し て い る( Fahl ma n and Enge ls
,2005 1 2 ) )
. ゆ え に , 唾 液IgA
濃 度 の 減 少 が 免 疫 力 低 下 を 惹 起 す る 一 因 と 考 え ら れ る .し か し ,
IgA
は 主 に 粘 膜 組 織 で 作 用 す る 抗 体 で あ り , 一 次 的 な 感 染 防 御 と し て 機 能 す る も の で あ る . そ こ で , 血 漿 中 で 感 染 拡 大 を 阻 止 す る た め 機 能 す るIgG
お よ びIgM
に も 着 目 す る 必 要 が あ る .E lia ki m et a l.
(1997) 5 1 )
は ,心 拍 数 が180
拍/
分 に 達 す る 走 運 動 を20
分 間 実 施 し た 結 果 , 血 中 のIgG
濃 度 お よ びIgM
濃 度 に 有 意 な 変 化 は な か っ た と 述 べ て い る . 長 時 間 運 動 に よ る 免 疫 グ ロ ブ リ ン の 変 化 を 検 討 し た 報 告 で は ,Hanns e t al. ( 2002) 5 2 )
が マ ラ ソ ン レ ー ス 後 に 血 中IgG
濃 度 お よ びIgM
濃 度 に 有 意 な 変 化 は な か っ た と 報 告 し , 一 方 ,M cKune e t al . (2005) 5 3 )
は ,90km
の ウ ル ト ラ マ ラ ソ ン 後 に 血 中IgG
濃 度 が 有 意 に 上 昇 し た と 述 べ て い る .さ ら に ,長 期 の 運 動 負 荷 に よ る 血 中IgG
濃 度 お よ びIgM
濃 度 の 変 化 は 以 下 の よ う に 報 告 さ れ て い る .Ima nipour et a l. (2009) 5 4 )
は14
週 間 の ラ ン ニ ン グ ト レ ー ニ ン グ 後 , 血 中IgG
濃 度 に 有 意 な 変 化 は 認 め ら れ ず ,IgM
濃 度 の み 有 意 に 低 下 し た と 報 告 し て い る .一 方 ,Tarti bia n e t a l. ( 2009) 5 5 )
は , 柔 道 選 手 を 対 象 に8
週 間 の ト レ ー ニ ン グ を 実 施 し た 結 果 ,血 中IgG
濃 度 は 有 意 に 上 昇 し ,IgM
濃 度 は 有 意 に 低 下 し た と 述 べ て い る . 以 上 の よ う に ,血 中 のIgG
濃 度 お よ びIgM
濃 度 の 変 化 を 検 討 し た も の は 散 見 さ れ る が ,運 動 持 続 時 間 や ト レ ー ニ ン グ 期 間 に よ っ て 一 定 の 知 見 が 得 ら れ て い な い .第