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リーマンショック以降の経済成長率とインフレ率の推移 ( 前年比 %) 16 低迷期好況期低迷期 実質 GDP 成長率 10 平均 8.8% 8 6 CPIインフレ率 4 平均 2.7% Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1

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(1)

Connecting Markets East & West

(2)

-4 -2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 2008 2009 2010 2011 2012 2013 (年、四半期) 7.8% (前年比、%) 低迷期 好況期 平均8.8% 平均2.7% ↓実質GDP成長率 CPIインフレ率↓ 2.8% 低迷期

リーマンショック以降の経済成長率とインフレ率の推移

1 (出所)CEICデータベースより野村資本市場研究所作成

(3)

前回 (2008年第4四半期~2009年第2四半期) 今回 (2012年第1四半期~2013年第3四半期) 成長率 7.5% 7.7% インフレ率 0.1% 2.6% 住宅価格 下落 急騰 求人倍率 一時0.85に低下 一貫して1を上回る 景気対策 4兆元の内需拡大策と超金融緩和を実施 大規模の景気対策は実施されていない 景気回復のペース V字型回復 極めて遅い

前回と今回の低迷期の比較

(出所)野村資本市場研究所作成

(4)

-5 0 5 10 15 20 25 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 2009 2010 2011 2012 2013 (年、月) (前年比、%) 70大中都市 北京→ 上海→ 低迷期 好況期 低迷期 08

新築住宅販売価格の推移

3 (注)2010年12月までは新築住宅販売価格指数。2011年1月からは新築商品住宅販売価格指数、 70大中都市は各都市の単純平均。 (出所)CEICデータベースより野村資本市場研究所作成

(5)

経済成長率が低下しても高水準を維持する都市部の求人倍率

0.80 0.85 0.90 0.95 1.00 1.05 1.10 1.15 6 7 8 9 10 11 12 13 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 (倍) (前年比、%) 都市部の求人倍率(右軸)↓ 実質GDP成長率↑ 低迷期 好況期 低迷期 平均1.01倍 平均8.8%

(6)

不動産市場を含む

実体経済

(住宅バブル)

シャドーバンキングを含む

金融システム

(過剰流動性)

融資プラットフォーム会社を含む

地方政府

(債務の急増)

懸念される「中国リスク」の構図

5 (注)→は資金の流れ (出所)野村資本市場研究所作成

(7)

バブルの様相を呈した住宅価格 – 標準住宅(70平方メートル)の販売価格は、家計の平均年収と比べて、北京が22.3倍、上海が15.9倍 (2011年) – マイホーム実現の夢がますます遠のいてしまう庶民の間で不満が高まっている – 住宅バブルが一層膨張すれば、それが崩壊する時に銀行部門やマクロ経済が大きな打撃を受けることも 懸念されている 2010年以降、中国政府は一連の対策を発表・実施 – 需要抑制政策(融資規制、購入制限、不動産関連税制の強化) – 供給拡大策(保障性住宅の建設の加速)

警戒すべき住宅バブル

(8)

7 地方政府が土地の供給を独占して、土地市場と土地価格をコントロールしている – 農民は、請け負った土地を自由にデベロッパーに売ることが禁じられており、「収用」という形で政府に低い 価格で売るしかない – 政府は農民から購入した土地をデベロッパーに高い値段で売ることができ、その差額は地方政府の財源と なる 食糧自給率を維持するために、18億ムー(1.2億ヘクタール)の耕地を維持する方針 – 農地の他の用途への転換がなかなか進まず、都市化のために必要である土地の供給が制約されている

不動産バブルを助長した土地政策

(9)

土地譲渡金に大きく依存する中国における財政収入状況

(2012年)

(出所)財政部「2012年財政収支情況」より野村資本市場研究所作成 (単位:億元) 中央政府 地方政府 全国 公共財政収入[a] 56,133 61,077 117,210 (中央から地方への移転)[b] (-45,383) (45,383) -政府性基金収入[c] 3,313 34,204 37,517 (中央から地方への移転)[d] (-1,180) (1,180) -土地譲渡金 - 28,517 28,517 一次収入計[a+c] 59,446 95,281 154,727 (移転計)[b+d] (-46,563) (46,563) -合計(中央から地方への移転の調整後) 12,883 141,844 154,727

(10)

金融システム (シャドーバンキングを含む) 地 方 政 府 融 資 プ ラッ ト フォ ー ム 会 社     運   営   会   社     受   益   者     地   方   政   府     中   央   政   府 返済 融資 営業収入 公共施設  使用料 不動産開発 会社・住民 土地売却益 返済 資金 出資 (債務保証) 分税制 財政均衡の原則で 銀行・債券市場からの 資金調達が禁止 財政資金 (注2) (注1)

地方政府融資プラットフォーム会社を中心とする

地方政府の資金調達の仕組み

9 (注1)地方政府融資プラットフォーム会社とは地方政府およびその機関が、財政資金や土地、株式などを以て出 資して設立した、政府の投資プロジェクトの資金調達機能を担う、独立した法人格を持つ経済主体のことである。 (注2)地方政府融資プラットフォーム会社は運営会社と一体化する場合がある。 (出所)各種資料より野村資本市場研究所作成

(11)

審計署によると、2010年末における全国の地方政府債務残高は10.72兆元(GDPの26.7%)に上り、その約 6割は2008年以降に形成されたものである。 借入の主体別でみると、融資プラットフォーム会社は4.97兆元(債務残高の46.4%)と、地方政府部門・機関 の2.50兆元(同23.3%)を上回っている。 それ以降、同統計が当局によってアップデートされていないが、2013年4月のボアオ・アジア・フォーラムでの 項懐誠・元財政部長の発言によれば、2012年末の地方政府債務はすでに20兆元を超えた可能性がある。 経済が低迷している中で、融資プラットフォーム会社の債務を中心に、不履行のリスクに対する懸念が高まっ ている。

地方政府性債務の規模

(12)

11 中国人民銀行による定義 – 正規の銀行システムの外で、流動性と信用変換機能を持っている、システミック・リスクや規制回避を引き 起こす可能性のある機関や業務によって構成された信用仲介システムである。 発生の背景 – 市場競争が激しさを増す中で、銀行は規制を回避するために、従来の貸出に代わる融資の手法として、 シャドーバンキングを活用するようになった − 預金金利の上限規制(基準金利×1.1倍) − 法定預金準備率(大手銀行の場合20%) − 預貸比率規制(融資額は預金残高の75%を超えてはならない) と窓口規制

中国におけるシャドーバンキング

(13)

統計上の制約もあり、中国におけるシャドーバンキングの全体の規模に関しては、公式の発表がされておら ず、エコノミストの間でも、コンセンサスがとれていない。 中国社会科学院は銀行の「理財商品」と信托会社の「信託商品」のみを対象とする「狭い定義」を提示してい る。それに従えば、中国におけるシャドーバンキングの規模は、2013年3月末には、16.9兆元(GDPの36% に相当)に達していると推計される。 格付け機関であるS&Pは、各項目に含まれる一部の二重計算を調整した上で、委託融資(金融機関を仲介 として、一般企業が他の企業に余剰資金を融資すること)や民間融資などを含むより広い定義で、中国にお けるシャドーバンキングの規模は2012年末には22.9兆元と試算している。

中国におけるシャドーバンキング規模

(14)

13 理財商品 – 商業銀行が販売する資産運用商品 – 一般的に、最低投資額は5万元 – 期間は1ヶ月から1年 – 予想収益率は年率4%~6.5% – 投資対象は国債など金利型商品が中心 信託商品 – 信託会社が販売する資産運用商品 – 最低投資額は通常100万元 – 期間は1年以上 – 予想収益率は年率9%前後 – 投資対象は政府主導の基礎産業、工商企業、不動産業などが中心 銀行と信託会社は、その殆どが国有で、中国人民銀行と銀行業監督管理委員会(CBRC)の管轄下に置か れ、「理財商品」と「信託商品」もCBRCの監督管理の対象となっている

コアとなる「理財商品」と「信託商品」

(15)

シャドーバンキングの規模の拡大は、米国で起きたサブプライム・ローン問題とは異なり、システミック・リスク の顕在化を通じて金融危機を招く可能性は必ずしも大きくないと見られる – シャドーバンキングの規模は拡大しているとは言え、従来の銀行の貸出と比べてまだ小さい上、レバレッジ 比率が低いため、デレバレッジによる市場の混乱は避けられそう – 各種のシャドーバンキングのスキームは破綻する確率がそれほど大きくなく、仮に破綻しても、原則として、 銀行は顧客に対して損失を補填する義務を負っていない – 銀行の財務状況が良好で、シャドーバンキング関連業務から損失が発生しても、自己資本や、貸倒引当金 で対応できる – 大半の銀行は国有となっており、いざという時に政府に支援してもらえる可能性が高い – 資本移動が制限されており、人民元は投機の対象になりにくい一方で、危機が起きても海外に直接波及し にくい

シャドーバンキングは中国に金融危機を招くか

(16)

15

中国の商業銀行の不良債権と貸倒引当金カバー率の推移

不良債権残高

(億元)

不良債権比率

(%)

貸倒引当金カバー率

(%)

2006

12,549

7.09

34.3

2007

12,684

6.17

41.4

2008

5,682

2.45

116.6

2009

4,973

1.58

153.2

2010

4,336

1.10

217.7

2011

4,282

0.96

278.1

2012

4,929

0.95

295.5

(注)年末値 (出所)中国銀行業監督管理委員会「中国銀行業監督管理委員会2012年報」より野村資本市場研究所作成

(17)

工業とサービス業を中心とする 現代的市場経済 (非国有企業) 成長率の低下と社会不安 中所得の罠 体制移行の罠 余剰労働力の解消 (ルイス転換点の到来) 後発の優位性の低下 (イノベーション能力の欠如) 体 制 移 行( 市 場 化) 経 済 発 展( 工 業 化) 所得格差の拡大 環境問題の深刻化 官僚の腐敗 政府の役割転換の遅れ 国有企業改革の遅れ

中国が直面する「二つの罠」

(18)

農村から都市部への 人口移動 1980年代初にとった 一人っ子政策 生産年齢人口↓ (人口のボーナスが 人口のオーナスへ) 発展過程における 完全雇用の達成 (ルイス転換点の到来) 労働力過剰から不足へ 少子高齢化 農業部門における 過剰労働力の解消

労働力過剰から不足へ

17 (出所)野村資本市場研究所作成

(19)

中国における年齢別人口の推移

-日本との比較-

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 19 50 19 55 19 60 19 65 19 70 19 75 19 80 19 85 19 90 19 95 20 00 20 05 20 10 20 15 20 20 20 25 20 30 20 35 20 40 20 45 20 50 (億人) (年) 予測 生産年齢人口 (15-59歳) 老齢人口 (60歳以上) 年少人口 (0-14歳) 中国 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 19 50 19 55 19 60 19 65 19 70 19 75 19 80 19 85 19 90 19 95 20 00 20 05 20 10 20 15 20 20 20 25 20 30 20 35 20 40 20 45 20 50 (億人) (年) 予測 生産年齢人口 (15-59歳) 老齢人口 (60歳以上) 年少人口 (0-14歳) 日本

(20)

全要素生産性 (TFP)の上昇3.7%)(注1) 資本投入量 の拡大 (5.3%) ←労働投入量の拡大 投入量の拡大 労働生産性の上昇 (寄与度) 潜在成長率 (9.9%)0.7%)

潜在成長率の要因分解(1995-2011)

19 (注1)全要素生産性の上昇には人的資本の向上を含む。 (注2)各寄与度の合計が潜在成長率と一致していないのは四捨五入によるものである。 (出所)Kuijs, Louis, “China’s Economic Growth Pattern and Strategy,” Paper prepared for the Nomura Foundation Macro Research Conference on “China’s Transition and the Global Economy,” November 13, 2012, Tokyoより野村資本市場研究所作成

(21)

GDPと雇用に占める第一次産業のシェアの推移

0

10

20

30

40

50

60

70

80

雇用

GDP

33.6%

10.1%

(シェア、 %)

(22)

産業高度化のイメージ

21 産業全体に 占める シェア 繊維 家電 鉄鋼 自動車 高付加価値製品 低付加価値製品 (出所)野村資本市場研究所作成

(23)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

(シェア、%)

↑全企業

を対象

↑一定規模以上企業

のみを対象

重工業化 脱重工業化 再重工業化

中国における重工業比率の推移

(24)

0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 (万台) (年) メキシコ カナダ カナダ スペイン 韓国 フランス フランス ドイツ ドイツ 米国 米国 日本 米国 (1927万台) 中国の自動車 生産台数 日本 日本 中国の順位 ⑧ ⑤ ④ ④ ④ ③ ③ ② ① ① ① ①

自動車生産台数の国際比較と中国の世界ランキングの推移

23 (出所)『中国汽車工業年鑑』などより野村資本市場研究所作成

(25)

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

(万トン)

中国

日本

米国

日米中の粗鋼生産量の推移

(26)

社会主義から資本主義へ

-中国における漸進的改革による体制移行-

25 公(国)有制 私有制 計画 市場 資本主義 社会主義市場経済 社会主義 1978年までの中国 1992年の第14回党大会 (出所)野村資本市場研究所作成

(27)

中国は、1970年代末に改革開放に転換してから、計画経済から市場経済への移行を目指しているが、未だ 政府は介入すべきでないところまで介入している一方で、本来果たさなければならない役割を十分に果たし ていない。 政府機能の「越位」(政府が介入すべきでないところまで介入していること) – 土地等の重要な資源のコントロールと基幹産業の国有企業による独占 – 権限を持つ官僚による自由裁量の余地が大きく、企業の経済活動に頻繁に干渉 – 審判員であるべき政府が選手も兼ねてしまうため、公平な試合はできない 政府機能の「缺位」(本来果たさなければならない役割を十分に果たしていないこと) – 環境保護や、社会保障、医療、教育といった公共サービスの不足 – 経済関係の法律がまだ十分整備されておらず、その運用も不透明

求められる政府機能の転換

(28)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 1 9 7 8 1 9 8 1 1 9 8 4 1 9 8 7 1 9 9 0 1 9 9 3 1 9 9 6 1 9 9 9 2 0 0 2 2 0 0 5 2 0 0 8 2 0 1 1 (シェア、%) (年) (注)

低下する工業生産に占める国有企業のシェア

27 (注)統計の対象は、1997年まではすべての工業企業、1998年~2006年は国有企業及び年間主営業務収入 500万元以上の非国有工業企業、2007年~2010年は年間主営業務収入500万元以上の工業企業、2011年 以降は年間主営業務収入2000万元以上の工業企業。 (出所)CEICデータベースおよび『中国統計摘要2013』より野村資本市場研究所作成

(29)

大型国有企業は、独占の利益を維持するために、行政当局に圧力をかけ、市場参入の壁を高くしがちであ る。また、銀行融資が国有企業に集中しており、民営企業にはなかなか回らない。 増え続ける国有企業の利潤は、その大半が国に納められず内部に留保されるために、労働分配率の低下に より消費が抑えられる一方で、無駄な投資も助長されている。 独占企業は容易に利益を上げられるがゆえに、効率を向上させるインセンティブが働かず、国際市場におい て競争力が欠如したままである。

成長性を抑える「国進民退」

(30)

29 国有企業の独占または寡占状態にある業種では設備過剰が発生しない – 参入障壁が高く、国有企業は生産を控えることで高い価格を維持できることから、投資を通じてシェアを拡 大するという誘因が働かない 競争的分野でも設備過剰は発生しない – 効率の悪い企業が倒産するという形で退場する 設備過剰の状態にある業種では、国有企業による独占体制が崩れつつあり、民営企業が積極的に参入しよ うとするという特徴が見られる – 鉄鋼、電解アルミ、セメント、造船はその典型例である – 民営企業が高い利潤を狙って、新しい設備に投資し、シェアの拡大を目指している中、市場競争が激しくな り、効率の低い国有企業は売り上げが落ち込み、これまで抱えていた古い設備が過剰になってしまう – 一部の国有企業がシェアを維持しようとし、国有銀行からの融資を含む政府による支援を受けながら、投 資の拡大で巻き返しを図ることも、設備過剰に拍車をかけている 政府が採るべき政策は、高いハードルを設けて民営企業の参入を阻止するのではなく、民営化などを通じ て、効率の悪い国有企業を退場させることであろう

設備過剰を抱える業種の特徴

(31)

中国の投資効率:高度成長期の日・韓・台との比較

投資比率

(対GDP比、%)

a

経済成長率(%)

b

限界資本係数

a/b

中国 (1991-2012年)

40.8

10.3

4.0

(09-12年)

47.9

9.2

5.2

日本

(1961-1970年)

32.6

10.2

3.2

韓国

(1981-1990年)

29.6

9.2

3.2

(32)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 19 95 19 96 19 97 19 98 19 99 20 00 20 01 20 02 20 03 20 04 20 05 20 06 20 07 20 08 20 09 20 10 20 11 20 12 (年) (シェア、%) その他 外資系企業 国有企業

輸出の所有制別構成

31 (出所)CEICデータベースより野村資本市場研究所作成

(33)

1999年9月の中国共産党第15期四中全会において、「国有経済の戦略的再編」という方針がすでに決めら れていた。国有企業が主導する産業を、①国家の安全にかかわる産業、②自然独占および寡占産業、③重 要な公共財を提供する産業、④基幹産業とハイテク産業における中核企業に限定し、それ以外の分野では、 民営化を進める。 利益集団の反対に遭い、大型国有企業の民営化は挫折した。

求められる国有企業の民営化の加速

(34)

33  体制移行の罠によって、露呈した五つの病状 – 既得権益集団は短期間に利益を上げるために、資源の大量な浪費も辞さずに、高成長を追求している。 – 政府の役割転換と国有企業改革の遅れにより体制改革は停滞し、移行期の体制がそのまま定着してしまっている。 – 社会的流動性が低く、社会構造は固定化されつつある。 – 「社会の安定維持」のために多くの資源が投入され、その大義名分の下で、改革が先伸ばしされている。 – 一部の地方では官僚の腐敗と政府による権力の濫用が目立ち、所得分配が歪められており、貧富格差が拡大している。  克服策 – 市場経済、民主政治、法治社会といった普遍的価値を基礎とする世界文明の主流に乗らなければならない。なぜならば、 世界文明の主流を拒絶することは、中国が「体制移行の罠」に陥った主因であると同時に、現在の利益構造を維持する口 実になっているからである。 – 政治体制改革を加速させなければならない。権力の腐敗は、政府の権威と政策実行能力を弱めている。政治体制改革 は、政府の透明性の向上など、権力を制約するメカニズムの形成から始めなければならない。 – 改革に関する意思決定を、これまでのように各地方政府や各政府部門に委ねるのではなく、中央政府の上層部によるグラ ンド・デザイン(中国語で「頂層設計」)の下で進めるように改めなければならない。改革を推進するに当たり、国民の支持を 得るため、彼らの意見に耳を傾けると同時に、公平と正義を基本価値としなければならない。

清華大学研究グループ(主査:孫立平教授)が提唱する

「体制移行の罠」論

(35)

安定成長の維持 – マクロ・コントロールの主要目的は、経済の大きな上下変動を回避することにより、経済成長率を一定の水準(7.5%)以上 に、またインフレ率を一定の水準(3.5%)以下に維持すること。 – 金融改革と財政改革を通じて、資金の利用効率を高め、経済危機を未然に防ぎ、シャドーバンキングによる融資と地方政 府債務の膨脹や、住宅価格の上昇を抑えること  構造調整:経済発展パターンの転換 – 需要の面では「投資から消費」へ – 産業の面では「工業からサービス業」へ – 生産様式の面では企業のイノベーション能力の向上と産業の高度化を通じて「労働力や資本といった生産要素の投入量 の拡大から生産性の上昇」へ  改革の推進:政府と市場の役割分担を見直す – 市場と民間企業の活力を活かすために、規制緩和や多くの分野における国有企業の独占体制の打破を通じて、公平・公

リコノミクスの三本の柱

(36)

35  市場に資源配分における決定的(従来は「基礎的」)役割を担わせる。 価格改革 – 価格形成をできるだけ市場に委ね、政府の介入を必要最低限にとどめる – 水、石油、天然ガス、電力、交通、通信などの分野の価格改革を進める。 – 人民元レートの市場化と金利の自由化を推進する。  財産権の保護の強化 – 公有制経済の財産権は不可侵であるのと同じように、非公有制経済の財産権も不可侵である。 – 農民の土地の占有、収益、譲渡、相続に対する権利や、企業の知的財産権も保護の対象になる。  企業の市場参入に対する規制の緩和 – 統一的な市場参入制度を確立し、ネガティブリストを作成した上で、各市場主体が法に基づきリスト外の分野に平等に参入できるようにする。 – ―国有資本の投資プロジェクトへの非国有資本の資本参加と、民間資本が中小型銀行などの金融機関の設立を認める。  国有企業改革 – 民営化への言及がなかったものの、国有企業の独占を打破し、民営企業が参入しやすい環境を作る。 – 国有企業の国庫納付を2020年までに利益の30%に拡大し、国有資本の一部を社会保障基金に移転するなど、所得分配の改善にも配慮して いる。

三中全会の注目点 ①市場化改革

(37)

財政・税制改革 – 地方政府の恒常的な赤字や急増する債務を解決するために、中央主導の支出拡大策によって発生した地方の財源不足を、中央からの財政 移転で補填する。 – 地方債の発行を緩和する。 – 税制の簡素化を行う。  都市化政策 – 中小型都市の戸籍取得の条件を緩和する。 – 出稼ぎ農民が都市部の住宅優遇制度や社会保障制度の恩恵を受けられるようにする。  対外開放 – すでに上海で設置されたような自由貿易試験区を、他の地域にも拡大する – 金融、教育、文化、医療などサービス分野への外資参入を推進する。  社会保障 – 農村部のほとんどが保障の対象になっていなかった養老・医療保険制度を見直し、都市と農村の格差を是正する。

三中全会の注目点 ②市場化以外の改革

(38)

37 ワシントン・コンセンサスの10ヵ条 ①財産権に対する保護 ②企業の参入と退出に対する規制緩和 ③国有企業の民営化 ④直接投資の自由化 ⑤貿易の自由化 ⑥金利の自由化 ⑦競争力のある為替レートの維持 ⑧規律的な財政運営 ⑨純粋な所得再分配支出の抑制と公共サービス支出の増加 ⑩タックスベースの拡大

「ワシントン・コンセンサス」を思わせる改革案

(39)

これまで、立派な改革案が策定されても、実施の段階になって、既得権益集団の抵抗に遭い、途中で挫折し てしまうケースがしばしば見られた。国有企業改革の停滞がその好例である。 「体制移行の罠」を乗り越えるためには強いリーダーシップが求められるが、上層部によるグランド・デザイン を貫くための組織として「改革全面深化指導グループ」の設置が決められており、それに大きな期待が寄せら れている。

三中全会の「決定」はそのまま実施されるか

(40)

略歴

関志雄(かんしゆう)

野村資本市場研究所 シニアフェロー

学歴・職歴 1957 香港生まれ 1979 香港中文大学経済学科卒 1986 東京大学大学院経済学研究科博士課程修了、東京大学経済学博士(1996年) 1986 香港上海銀行(Hong Kong & Shanghai Bank)入社、本社経済調査部エコノミスト 1987 野村総合研究所入社、経済調査部主任研究員、経済調査部アジア調査室室長など (1999.9~2000.6 ブルッキングス研究所北東アジア政策研究センター客員研究員) 2001 独立行政法人 経済産業研究所 上席研究員 2004 野村資本市場研究所 シニアフェロー 日本政府委員 経済審議会21世紀世界経済委員会委員(1996-97年) 財務省関税・外国為替等審議会専門委員(1997-99年、2003年-2010年) 内閣府「日本21世紀ビジョン」に関する専門調査会 グローバル化WG委員(2004年 ) 主な著書・論文 『円圏の経済学』、日本経済新聞社、1995年(アジア・太平洋賞特別賞受賞) 『日本人のための中国経済再入門』、東洋経済新報社、2002年 『中国 未完の経済改革』、樊綱著・関志雄訳、岩波書店、2003年(アジア・太平洋賞特別賞受賞) 『人民元切り上げ論争』、編著、東洋経済新報社、2004年 『共存共栄の日中経済』、東洋経済新報社、2005年 『中国経済革命最終章』、日本経済新聞社、2005年 『中国経済のジレンマ』、筑摩書房、2005年 『中国を動かす経済学者たち』、東洋経済新報社、2007年(第三回樫山純三賞受賞) 『チャイナ・アズ・ナンバーワン』、東洋経済新報社、2009年 『中国 二つの罠』、日本経済新聞出版社、2013年 その他 NHK「ラジオあさいちばん」内「ビジネス展望」コーナーにレギュラー出演 ホームページ 「中国経済新論」(http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/index.htm)というホームページを主宰し、 日本の読者向けに発信している。 39

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