ハイゼントラ
20%皮下注 1 g/5 mL
ハイゼントラ
20%皮下注 2 g/10 mL
ハイゼントラ
20%皮下注 4 g/20 mL
2.6 非臨床試験の概要文及び概要表
2.6.6 毒性試験の概要文
CSL ベーリング株式会社
目次
2.6.6 毒性試験の概要文 ... 6 2.6.6.1 まとめ ... 6 2.6.6.1.1 単回及び反復投与毒性試験 ... 8 2.6.6.1.2 遺伝毒性試験 ... 8 2.6.6.1.3 がん原性試験 ... 9 2.6.6.1.4 生殖発生毒性試験 ... 9 2.6.6.1.5 局所刺激性試験 ... 9 2.6.6.1.6 幼若動物を用いた試験 ... 9 2.6.6.1.7 L-プロリンの試験 ... 10 2.6.6.1.7.1 L-プロリンの単回及び反復投与毒性試験 ... 10 2.6.6.1.7.2 遺伝毒性試験 ... 12 2.6.6.1.7.3 生殖発生毒性試験 ... 12 2.6.6.2 単回投与毒性試験 ... 12 2.6.6.3 反復投与毒性試験(トキシコキネティクスの評価を含む) ... 12 2.6.6.3.1 用量設定試験 ... 12 2.6.6.3.1.1 IgPro20 反復投与後のラット血清中抗ヒト IgG 抗体の検出(PSR 09/08) ... 12 2.6.6.3.2 SD ラットを用いた 26 週間反復皮下投与毒性試験 ... 15 2.6.6.3.2.1 急性毒性の評価 ... 15 2.6.6.3.2.2 蓄積毒性の評価 ... 16 2.6.6.4 遺伝毒性試験 ... 19 2.6.6.5 がん原性試験 ... 19 2.6.6.6 生殖発生毒性試験 ... 20 2.6.6.7 局所刺激性 ... 20 2.6.6.7.1 ウサギを用いた調整済みのタンパク質溶液の局所刺激性試験(皮下投与後 96 時 間観察)(143.143.552) ... 20 2.6.6.7.2 ウサギを用いた IgPro20 及び生理食塩液の局所刺激性試験(143.140.883) ... 22 2.6.6.8 その他の毒性試験 ... 23 2.6.6.8.1 不純物に関する試験 ... 23 2.6.6.8.2 幼若動物を用いた試験 ... 23 2.6.6.8.3 添加物に関する試験 ... 23 2.6.6.8.3.1 単回投与毒性試験 ... 23 2.6.6.8.3.2 反復投与毒性試験 ... 26 2.6.6.8.3.3 遺伝毒性試験 ... 44 2.6.6.8.3.4 生殖発生毒性試験(用量設定試験及びトキシコキネティクス評価を含む) ... 482.6.6.8.3.5 L-プロリン: 公表論文 ... 50 2.6.6.9 考察及び結論 ... 52 2.6.6.10 図表 ... 55
表目次
表 2.6.6-1 IgPro20 の毒性試験 ... 6 表 2.6.6-2 L-プロリンの毒性試験 ... 7 表 2.6.6-3 L-プロリンの遺伝毒性試験 ... 8 表 2.6.6-4 L-プロリン及びグリシン皮下投与後の血漿中濃度の経時変化(PSR 03/07) ... 25 表 2.6.6-5 投与群 (PSR 01/07)... 34 表 2.6.6-6 急性神経毒性に関する一般状態の変化(投与直後に判定)(PSR 01/07) ... 36 表 2.6.6-7 試験群 (ZLB06_006) ... 39 表 2.6.6-8 妊娠 SD 系ラットに毎日 7 時間静脈内持続投与後の L-プロリン及びグリシン の影響(AA30034) ... 49図目次
図 2.6.6-1 IgPro20 の 200 mg/kg を皮下投与した各ラットでの IgG/IgM 抗体の産生 (PSR 09/08) ... 13 図 2.6.6-2 IgPro20 の 800 mg/kg を皮下投与した各ラットでの IgG/IgM 抗体の産生 (PSR 09/08) ... 14 図 2.6.6-3 試験スケジュール (PSR 01/07) ... 35 図 2.6.6-4 試験計画の詳細 (ZLB06_006) ... 38 図 2.6.6-5 行動試験の詳細 (ZLB06_006) ... 40略号・略称の一覧表 略号・略称 内容 APTT 活性化部分トロンボプラスチン時間 CAT カタラーゼ CHO チャイニーズハムスター卵巣細胞 CRO 開発業務受託機関
CSLB 年夏以前は現在はCSL Behring AG, Bern であり、2007 年以前は ZLB Behring AG と称し、2004 ZLB Bioplasma AG と称した
DNA デオキシリボ核酸 ELISA 固相酵素免疫測定法 EU ヨーロッパ連合 exCrea 尿クレアチニン排泄 F 雌 GLM 分離一般線形モデル GLP 医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準 GSH グルタチオン GSH-Px グルタチオンペルオキシダーゼ H 時間 Hb ヘモグロビン濃度 HDW ヘモグロビン濃度分布幅 i.a. 動脈内投与 ICH 日米EU 医薬品規制調和国際会議 IgG 免疫グロブリンG IgM 免疫グロブリンM ITP 特発性血小板減少性紫斑病 i.v. 静脈内投与 L リットル M 雄 MCV 平均赤血球容積 mmol ミリモル N 例数 NE 北東 NOAEL 無毒性量 NOEL 無作用量 NW 北西 NZW ニュージーランドホワイト PCE 多染性赤芽球 PCV ヘマトクリット値 PID 原発性免疫不全症 p.v. 静脈周囲投与 QAU 品質保証部門 RBC 赤血球数 RDW 血球粒度分布幅 SCIG 皮下投与用免疫グロブリンG SD Sprague-Dawley SD 標準偏差 SE 南東 SOD スーパーオキシドジスムターゼ SOP 標準操作手順書 SW 南西 S9 肝ミクロソーム分画 TRAP 抗酸化パラメーター UCl 尿中塩素 UCr 尿中クレアチニン UK 尿中カリウム UNa 尿中ナトリウム
略号・略称 内容
μg マイクログラム
μmol マイクロモル
混合添加物(添加物8) ニコチンアミド mmol/L、L-イソロイシン mmol/L 及び L-プロリン 120
2.6.6 毒性試験の概要文 2.6.6.1 まとめ ヒト免疫グロブリンは生体に存在するタンパク質で、安全性及び忍容性は確立している。 人免疫グロブリン製剤は免疫学的活性を有し、外来物反応性抗体を含むため(McMorrow ら 1997;Tomlinson ら 1997;Watier ら 1996)、ヒトに外挿できない作用が動物で誘発される可 能性があることから、人免疫グロブリン製剤を動物モデルに用いて試験することには限界が ある。すなわち、長期の動物試験では抗ヒトIgG 抗体が産生される。このことは、200 及び 800 mg/kg の IgPro20 をラットに 28 日間反復投与した試験で、全動物にヒト IgG に対する IgG/IgM 抗体が産生されたことで確認された。また、200 及び 1000 mg/kg をラットに 26 週間 反復皮下投与した試験でも抗ヒトIgG 抗体が産生された。このように非臨床試験の実施意義 が限定的であることは、「バイオテクノロジー応用医薬品の非臨床における安全性評価」に関 するガイドライン[ ICH S6 (R1) ]でも認識されており、血漿由来製剤でも同様である。このガ イドラインでは、臨床的に広く使用されている医薬品と構造的及び薬理学的に同等であるバ イオ医薬品の場合、毒性試験を簡略化してもよいことがあると明記されている。 IgPro20 は海外で市販されている皮下注射用人免疫グロブリン製剤よりも、高タンパク質濃 度(20%)でわずかに低い pH (pH 4.8)を有しているため、IgPro20 の毒性評価に当たって は皮下投与による局所刺激性試験を含めた(表 2.6.6-1)。 表 2.6.6-1 IgPro20 の毒性試験 毒性試験 試験番号 動物種 試験期間 投与方法 被験物質 投与用量 GLP 用量設定試験 4.2.3.2 PSR 09/08 ラット 28 日 皮下投与、 1 回/日、隔日 IgPro20 200、800 mg/kg 非適用 反復投与試験 4.2.3.2 AA79918 ラット 26 週 皮下投与、 1 回/日、隔日 IgPro20 200、1000 mg/kg 適用 局所刺激性 4.2.3.6 143.143.552 ウサギ 5 日 単回皮下投与、 単回皮下、 皮下持続投与 IgPro20,添加 剤溶液(250 mmol/L L-プ ロリン, pH 4.8) 最大2.5 mL/kg (ヒトIgG : 500 mg /kg、 L-プロリン: 72 mg /kg) 適用 局所刺激性 4.2.3.6 143.140.883 ウサギ 8 日 初日に単回投与、 静脈内、静脈周囲 及び動脈内投与 IgPro20 ヒトIgG:100 mg L-プロリン: 14.3 mg 適用 IgPro20 には安定化剤として L-プロリンが 250 mmol/L の濃度で含まれている。L-プロリン は第十六改正日本薬局方に収載されており、輸液成分や医薬品添加物として使用されている。 L-プロリンは、高齢患者を含むヒトで静脈内投与として 1 日当たり最大 8 g までの使用前例 はあるものの(アミノレバン点滴静注、大塚製薬)、皮下投与としては、IgPro20 の申請用量 である1 日最大皮下投与量 1.74 g の使用前例はない。そこで、安全性情報提供のために L-プロリンの皮下投与による毒性試験も添付した(表 2.6.6-2)。
表 2.6.6-2 L-プロリンの毒性試験 毒性試験 試験番号 動物種 投与期間 投与方法 被験物質 投与用量 GLP 安全性薬理試験 及び薬物動態探索試験 4.2.3.7.7 PSR 08/06 ラット 単回 (急速投与) 皮下投与 腹腔内投与 L-プロリン 皮下:2.0 g/kg 腹腔内:最大4 g/kg 非適用 反復投与試験 4.2.3.7.7 AA89493 ラット 28 日 皮下連日投与 L-プロリン 290 mg /kg 適用 反復投与試験 4.2.3.7.7 925/035 ラット 28 日 7 時間静脈内持続投与/日 L-プロリン グリシン L-プロリン:最高 1449 mg /kg グリシン:最高945 mg/kg 適用 反復投与試験 4.2.3.7.7 668321 イヌ 28 日 7 時間静脈内 持続投与/日 L-プロリン 最高 4350 mg/kg 適用 生殖発生毒性試験(胚・ 胎児発生毒性試験) 4.2.3.7.7 AA30034 ラット 妊娠 6 日–17 日 7 時間 静脈内持続投 与/日 L-プロリン グリシン L-プロリン: 1449 mg/kg グリシン: 945 mg/kg 適用 幼若動物を用いた薬物 動態試験 4.2.3.7.7 PSR03/07 ラット 単回 皮下投与 L-プロリン グリシン L-プロリン:1.9 g/kg グリシン:1.2 g/kg 非適用 幼若動物を用いた安全 性薬理試験(Irwin 試験) 4.2.3.7.7 PSR01/07 ラット 5 日 (生後9–13 日) 及び3 日 (生後9, 16, 23 日) 皮下投与、 2 回/日 L-プロリン グリシン L-プロリン: 最高2×2.0 g/kg/ グリシン: 最高2×1.3 g/kg 非適用 幼若動物を用いた毒性 試験(水迷路試験) 4.2.3.7.7 PSR01/07 及びZLB06_006 ラット 5 日 (生後9–13 日) 及び3 日 (生後9, 16, 23 日) 皮下投与、 2 回/日 L-プロリン グリシン L-プロリン: 最高:2×2.0 g/kg グリシン: 最高2×1.3 g/kg 非適用 また、Sandoglobulin Liquid の開発中に、L-プロリン、ほかのアミノ酸及びニコチンアミド を含むpH の混合添加剤(以下、添加物8 と略す)の毒性試験を追加実施した。この開発 中に実施されたL-プロリンの一連の遺伝毒性試験を表 2.6.6-3に示した。
表 2.6.6-3 L-プロリンの遺伝毒性試験 毒性試験 試験番号 動物種/試験 試験期間 投与経路 投与用量 GLP 遺伝毒性試験 4.2.3.7.7 22196 復帰突然変異試験 -- -- L-プロリン:最高 69 μg /plate 適用 4.2.3.7.7 49196 復帰突然変異試験 -- -- L-プロリン:最高 6970 μg /plate 適用 4.2.3.7.7 CLE1554/3-D5140 チャイニーズ ハ ムスター卵巣細胞 (CHO)を用いた染 色体異常試験 -- -- L-プロリン:最高 15 mmol 適用 4.2.3.7.7 CLE1554/4-D5140 マウス骨髄を用い た小核試験 5 日 単回静脈内投 与 L-プロリン:最高 276 mg /kg 適用 注釈: L-プロリンは、ニコチンアミド、L-イソロイシン及び L-プロリンを含む混合液(添加物 8: mmol/L ニコチンアミド、 mmol/L L-イソロイシン、120 mmol/L L-プロリン pH )の構成成分として評価し た。 L-プロリンの遺伝毒性データは、構成成分として L-プロリンを含有する混合添加剤(添加 物 8)を使用して評価した。これら 3 種の添加剤間の相互作用が低く代謝が既知であること を考慮すると、これらの試験でL-プロリンを単一の添加物として評価したことは妥当と考え られた。 2.6.6.1.1 単回及び反復投与毒性試験 一般的に、単回投与毒性試験は医薬品開発の初期で、用量反応性に関する有用な情報を提 供するが、皮下注射用免疫グロブリン(SCIG)にとってはそのような情報は広く得られてい ると考えた。したがって、単回投与毒性試験は実施しなかった。 ラットの用量設定試験では、IgPro20 の 200 及び 800 mg/kg を 28 日間、隔日皮下投与した。 その結果、全動物ともIgPro20 の皮下投与による毒性変化及び一般状態の変化は認められず、 忍容性は良好であった。一部の動物では6 日目に抗ヒト IgG 抗体が産生された。さらに、全 動物で14 日目及び投与終了の 28 日目まで抗ヒト IgG 抗体産生が認められたにもかかわらず、 動物の血液中からヒトIgG は完全に除去されなかった。 ラットの26 週間皮下投与毒性試験及び 4 週間回復試験では、3 回及び 15 回投与後に剖検 し、急性毒性及び蓄積毒性を検討した。IgPro20 200 及び 1000 mg/kg をラットに 26 週間、隔 日皮下投与した結果、忍容性は良好であった。急性期毒性は26 週間投与試験の中で 3 回投与 の成績に基づいて評価した。 2.6.6.1.2 遺伝毒性試験 ヒトIgG のような免疫グロブリンは細胞内のデオキシリボ核酸(DNA)及び染色体に直接 影響を及ぼさないため、そのような高分子に対する遺伝毒性試験を実施することは適切では ないと考えられた。
2.6.6.1.3 がん原性試験 IgG 分子は内因性物質であり、ヒト IgG の反復投与は異種動物で免疫反応を引き起こすと 考えられるため、IgPro20 に含まれる IgG 分子のがん原性試験を実施することは適切ではな い。さらに、IgPro20 に含まれる IgG のような臨床経験がある内因性アミノ酸、ペプチド及 びタンパク質ではがん原性試験が要求されない(ICH ガイドライン S1A)。 2.6.6.1.4 生殖発生毒性試験 サングロポール62.5、125 及び 250 mg/kg をラットに妊娠前及び妊娠初期、器官形成期並 びに周産期及び授乳期に、また、サングロポール 62.5、125 及び 250 mg/kg をウサギの器官 形成期に静脈内投与しても、妊娠率、分娩、胎児及び新生児に対する影響は見られなかった。 サングロポールの試験結果より、ヒトIgG は生殖発生毒性に影響を及ぼさないと推察され た。また、動物試験の実施に際し、IgPro20 の外来物反応性抗体及び免疫原性の影響を考慮す べきある。これらのことから、IgPro20 の生殖発生毒性試験は実施しなかった。 2.6.6.1.5 局所刺激性試験 ウサギを用いた局所刺激性試験では、体重換算で投与部位当たりのヒトへの最大投与容量
の7 倍までIgPro20 を皮下投与した。IgPro20 投与後、紅斑の程度は比較対照製剤のBeriglobin P
及び*IgG製剤Zと同程度であった。IgPro20 で試験した2 用量間で差は認められなかった。浮 腫形成の頻度と程度は被験物質(異なるタンパク質濃度のIgG 製剤を使用した)の用量増加 に伴い増加した。試験に使用した製剤間で疼痛反応に差は見られず、病理組織学的検査でも 注目すべき変化は認められなかった。試験に使用した高濃度タンパク質2 製剤(*IgG製剤Z 及び IgPro20)は比較製剤(Beriglobin P)と比較して忍容性は同程度であった。したがって、IgPro20 製剤のわずかな酸性のpH 及び高タンパク質濃度は局所忍容性に影響を及ぼさないと判断さ れた。 加えて、IgPro20 の静脈内、静脈周囲及び動脈内投与による局所刺激性を評価するため、ウ サギを用いた局所刺激性試験を実施した。その結果、IgPro20 は静脈内及び動脈内投与後では 良好な忍容性を示し、静脈周囲投与でも容認できるものであった。 2.6.6.1.6 幼若動物を用いた試験 IgPro20 に含まれる IgG は、市販の静脈内注射用人免疫グロブリン製剤で長年にわたり小 児に適用されてきた。さらに、CSLB が実施した IgPro20 の臨床試験では、臨床適応に組み入 れられた小児患者に対する安全性への懸念は認められなかった。したがって、小児に対する IgPro20 の安全性について懸念はないと考えられたことから、幼若動物を用いた非臨床試験を 実施しなかった。
2.6.6.1.7 L-プロリンの試験 IgPro20 の国内臨床試験では、週 1 回投与による IgG の最高用量は 200 mg/kg を超えず、こ の用量はL-プロリンの用量として 29 mg/kg に相当する。海外の最高臨床用量は 400 mg/kg で、 これはL-プロリンとして 58 mg/kg となる用量であった。IgPro20 の推奨される用法・用量で はL-プロリンのヒト曝露に関する多くの情報があり、L-プロリンのすべての毒性試験を実施 する必要性はないと考えた。しかし、L-プロリンの半減期が短いことや患者に IgPro20 を週 1 回皮下投与することを考慮し、一部の毒性試験でL-プロリンの安全性を評価した。非臨床試 験として、静脈内及び皮下投与による反復投与毒性試験、静脈内投与による生殖発生毒性試 験及び幼若動物を用いた試験を実施し、いずれもL-プロリンの高用量での影響を評価した。 2.6.6.1.7.1 L-プロリンの単回及び反復投与毒性試験 L-プロリンの単回投与による 2 試験を実施した。 L-プロリン 2.0 g/kg を CD 系雌ラット 6 例に単回皮下投与しても、一般状態の変化は見ら れず、死亡動物も見られなかった。この試験で皮下投与したL-プロリンの用量では良好な忍 容性が認められ、概略の致死量は2.0 g/kg より大と推察された。2.0 g/kg の L-プロリン皮下投 与では、速やかに血漿中濃度が上昇し、その平均血漿中濃度は約12 mmol/L であった。L-プ ロリンは投与後15 分で最高血漿中濃度に到達し、終末相半減期は 1.5 時間であった。 幼若雄ラットにL-プロリン 1.9 g/kg を単回皮下投与した場合の血漿中濃度は、投与後 15 分で15 mmol/L であった。さらに、投与後 4 時間でこの濃度の約 16%に低下した。このよう に、成熟雌ラットと幼若雄ラットの間で最高血漿中濃度に差は認められなかったが、血漿中 からの消失速度は、幼若動物の方がわずかに遅かった。 L-プロリンの反復投与毒性試験は動物種 2 種(ラット及びイヌ)を用いて実施した。 ラットを用いた28 日間反復皮下投与毒性試験では、290 mg/kg の L-プロリンを 1 日 1 回、 4 週間投与した。その結果、体重、摂餌量及び一般状態に L-プロリンを投与した影響は認め られなかった。投与部位で観察された所見の頻度及び程度はいずれも低く、無毒性量は 290 mg/kg と推定された。 ラットを用いた28 日間反復投与毒性試験では、L-プロリン 120 及び 300 mmol/L を 7 時間 静脈内持続投与した。L-プロリンの最高用量は 1449 mg/kg であった。この用量は L-プロリン 溶液の42 mL /kg に相当し、動物に静脈内持続投与が可能な最高用量(投与容量)である。 この用量では途中死亡例は見られず、投与に関連した一般状態の変化も認められなかった。 28 日間投与した高用量群の雄ラットでは、軽度の体重増加抑制及び摂餌量減少が認められた (統計学的有意差なし)。血液学的検査では投与に関連した変化は認められなかった。血液生 化学的検査で認められた投与群間の差は偶発的なものと考えられ(用量相関性なし)、すべて
の個別データは背景データの範囲内であった。器官重量に変化は見られず、観察した組織(脳 組織を含む)に投与に関連した肉眼的変化及び病理組織学的変化は認められなかった。L-プ ロリンの無毒性量は最高用量である1449 mg/kg と推察された。 イヌを用いた28 日間反復投与毒性試験では L-プロリンを最高用量 4350 mg/kg で、7 時間 静脈内持続投与した結果、眼科学的検査、心電図検査、血液学的検査及び血液生化学的検査 には投与に関連した変化は見られず、L-プロリンに関連する剖検所見及び病理組織学的所見 も観察されなかった。尿検査値に対してもL-プロリン投与に直接関連する変化は見られず、 観察された変化のほとんどは、輸液の大量投与による生理的電解質の不均衡に起因するもの と考えられた。 28 日間投与試験では、最高用量を投与した動物数例で嘔吐を含む一般状態の変化が観察さ れた。体重変動は試験を通じて通常に認められるものと考えられた。摂餌量の減少は最高用 量(4350 mg/kg)で認められた。 結論として、L-プロリンの 28 日間連日で 7 時間静脈内持続投与試験では、2170 及び 4350 mg/kg(投与速度はそれぞれ 9 及び 18 mL/kg/H)の用量で、ビーグル犬の忍容性は良好であ った。本試験での無毒性量は4350 mg/kg と推定された。 幼若ラットを用いた試験 IgPro20 は小児適用が予定されていること、また、新生児ラットの高プロリン血症モデルで 神経毒性及び神経化学的変化を示唆する徴候が見られることを示す公表論文が数報あること から、高用量のL-プロリンを幼若ラットに投与し急性神経毒性の臨床徴候(Irwin 試験)、ま
たMorris 水迷路課題試験に対する影響を検討した。Bavaresco ら(Bavaresco ら 2005)の方
法に従って、臨床での静脈内注射用人免疫グロブリン製剤の適応に基づき、L-プロリンを新 生児ラットに生後9 日から 13 日まで 1 日 1 回、又は生後 9、16 及び 23 日に間歇的に皮下投 与した結果、急性神経毒性徴候は観察されなかった。また、同様にL-プロリンを投与したラ ットに対して、生後54日から71日にMorris水迷路課題試験により空間学習検査を実施した。 その結果、L-プロリンを投与した全動物では参照記憶の獲得に成功し、参照記憶及び作業記 憶の検査で良好な成績を示した。前述2 種の L-プロリン投与はどちらも参照記憶の獲得、参 照記憶及び作業記憶に対して負の影響を及ぼさなかった。 したがって、生後3 及び 5 日の幼若動物に L-プロリン 1.5~2.0 g/kg を 1 日 2 回曝露しても、 ラットの神経発達に対して影響しなかった。 幼若ラットにL-プロリン 1.9 g/kg を単回皮下投与した結果、血漿中濃度は投与後 15 分で 15 mmol/L となり、投与後 4 時間には 16%低下した。したがって、雌の成熟ラットと雄の幼 若ラットを比較すると、最高血漿中濃度に差は見られなかった。しかし、血漿からのL-プロ リンの消失は幼若動物でわずかに遅いと考えられた。
2.6.6.1.7.2 遺伝毒性試験 復帰突然変異試験、in vitro 染色体異常試験及びマウス骨髄を用いた小核試験では、ニコチ ンアミド及びL-イソロイシンと共に L-プロリンは遺伝毒性を示さなかった。 2.6.6.1.7.3 生殖発生毒性試験 L-プロリンがヒトの生体内に存在し、臨床製剤として広く利用されていることから、受胎 能及び着床までの初期胚発生に関する試験並びに出生前、出生後の発生及び母体の機能に関 する試験は実施しなかった。さらに、ラット及びイヌを用いた28 日間反復投与毒性試験でも、 28 日目に安楽死させた高投与量群の動物の生殖器に病理組織学的変化は観察されなかった。 ラットにL-プロリン 1449 mg/kg を妊娠 6 日~17 日まで 1 日 7 時間静脈内持続投与する胚・ 胎児発生に関する試験を実施した。この用量は、ラットにL-プロリンを連日静脈内持続投与 可能な最大投与容量42 mL/kg であり、最高投与量に相当する。その結果、母動物及び胚に対 する毒性は認められず、この用量は無作用量と考えられた。 2.6.6.2 単回投与毒性試験 IgPro20 を用いた単回投与毒性試験は実施しなかったが、ラットの 26 週間反復皮下投与毒 性試験により急性毒性を評価し、その結果を2.6.6.3に記載した。 2.6.6.3 反復投与毒性試験(トキシコキネティクスの評価を含む) 2.6.6.3.1 用量設定試験 2.6.6.3.1.1 IgPro20 反復投与後のラット血清中抗ヒト IgG 抗体の検出(PSR 09/08) 表2.6.7-5;4.2.3.2 の試験報告書、用量設定試験(PSR09/08) 新製剤の開発に当たり、動物でヒト(異種の)IgG に対する抗体産生及び臨床的影響の可 能性を検討する必要があるとしたICH S6 (R1)ガイドラインに準じ、動物を用いた反復投与毒 性試験の必要性を検討するため、ラットの用量設定試験を実施した。試験の主要目的はヒト IgG に対する IgG/IgM 抗体の濃度測定であり、副次的目的はラット血清中に含まれるヒト IgG
濃度測定であった。この詳細は、2.6.4(薬物動態試験の概要文)の2.6.4.3.2で議論し記載し た。 本試験はGLP 非適用試験として実施した。 被験物質:IgPro20(ロット番号 ) 1 群雌 5 例で 2 群を使用した。 第1 群: IgPro20 200 mg/kg/日(1.0 mL/kg)皮下投与 第2 群: IgPro20 800 mg/kg/日(4.0 mL/kg)皮下投与
IgPro20 を全動物に 1 日 1 回、隔日皮下投与し、開始日を day 0、終了日を day 28 とした。
ラットの抗ヒトIgG/IgM 抗体の測定及び血清中ヒト IgG 濃度測定のため、day 0、6、14、21
及び28 それぞれの IgPro20 投与前血液を採取した。採取した血液サンプルから血清を分離し
て、分析まで- 70℃で保管した。
ヒトIgG、並びにヒト IgG に対するラット IgG/IgM 抗体は ELISA 法により測定し(2.6.4.2.1
及び2.6.4.2.2)し、データを解析した。 結果
抗ヒトIgG 抗体は day 0 には検出されなかった。抗ヒト IgG 抗体は試験開始後の初回測定
日に当たるday 6 に数例の動物で検出された。day14 から day 28 まで全動物で抗ヒト IgG 抗
体の産生が認められた。800 mg/kg 投与群では 200 mg/kg 投与群と比較してより抗体の反応性
が高いことが観察され、用量依存性が認められた(図 2.6.6-1及び図 2.6.6-2)。
図 2.6.6-1 IgPro20 の 200 mg/kg を皮下投与した各ラットでのIgG/IgM抗体の産生
(PSR 09/08)
PSR0908 rat IgG/M anti human IgG
0 20 40 60 80 100 120 140 Basel ine d 6 d 14 d 21 d 28
ra
t Ig
G/M
a
nt
i h
um
an
Ig
G A
U
/m
l
200 mg s.c. animal 1 200 mg s.c. animal 2 200 mg s.c. animal 3 200 mg s.c. animal 4 200 mg s.c. animal 5図 2.6.6-2 IgPro20 の 800 mg/kg を皮下投与した各ラットでのIgG/IgM抗体の産生 (PSR 09/08) IgPro20 を反復皮下投与しても、全動物に毒性及び一般状態の変化も認められず、忍容性は 良好であった。 両投与群では血漿中ヒトIgG 濃度が day21 まで増加した。投与最終週には、200 mg/kg 投 与群では血漿中ヒトIgG 濃度が約 7 g/L、800 mg/kg 投与群では約 14 g/L の定常状態に到達し た。(2.6.4.3.2)。 結論 day 14 までに全動物で抗ヒト IgG 抗体の産生が認められ、抗体は試験終了まで検出された。 さらに、抗体産生に用量依存性も認められた。抗体産生にも関わらず、ヒトIgG は動物の血 清中に検出され、ヒトIgG の血清中濃度は約 7 g/L(低用量群)及び 14 g/L(高用量群)の定 常状態に到達した。ヒトIgG に対する抗体産生は認められたが、ヒト IgG は動物血液から完 全に除去されなかった。抗体によるヒトIgG の除去が部分的に生じたか否かについては本試 験成績からは判断できなかった。IgPro20 を反復皮下投与しても、全動物の忍容性は良好であ り、毒性変化や特記すべき一般状態の変化は観察されなかった。IgPro20 の反復投与試験で見 られたラット体内での抗体産生による影響は、IgPro20 のヒト適用に外挿できないと考えられ た。
PSR0908 rat IgG/M anti human IgG
0 50 100 150 200 250 Basel ine d 6 d 14 d 21 d 28
ra
t Ig
G/M
a
nt
i h
um
an
Ig
G A
U
/m
l
800 mg s.c. animal 1 800 mg s.c. animal 2 800 mg s.c. animal 3 800 mg s.c. animal 4 800 mg s.c. animal 52.6.6.3.2 SD ラットを用いた 26 週間反復皮下投与毒性試験 表2.6.7-6; 4.2.3.2の試験報告書、反復投与試験[AA79918; Sprague-Dawley 系ラットを用い た26 週間反復皮下投与毒性試験(3 回目及び 15 回目投与後の途中剖検を含む)及び 4 週間 回復性試験] 本試験では、IgPro20 200 及び 1000 mg/kg を Sprague-Dawley 系ラットに 26 週間、隔日皮下 投与した。対照群には滅菌生理食塩液(0.9% NaCl)を投与した。 本試験はGLP 適用試験として実施した。 被験物質: IgPro20(ロット番号 ) 1 群当たり雌雄各 25 例を 3 群設けた。 第1 群: 生理食塩液(0.9%NaCl)5.0 mL/kg 皮下投与 第2 群: IgPro20 200 mg/kg/日(1.0 mL/kg)皮下投与 第3 群: IgPro20 1000 mg/kg/日(5.0 mL/kg)皮下投与 2.6.6.3.2.1 急性毒性の評価 26 週間反復投与毒性試験では、IgPro20 200 及び 1000 mg/kg を 1 群雌雄各 5 例に 5 日間隔 日皮下投与し、day 5 に安楽死させた。評価項目として、生死、一般状態、眼科学的検査、体 重、摂餌量、血液学的検査、血液生化学的検査及び病理学的検査(剖検、器官重量及び病理 組織学的検査)を行った。 結果 IgPro20 の 200 及び 1000 mg/kg では一般状態の変化は認められなかった。1000 mg/kg 投与 群の雌1 例は day 5 の採血中に死亡した。この動物の死因は IgPro20 の投与に起因するもので はなく、採血操作によるものと考えられた。投与期間中、この動物の体重及び摂餌量にIgPro20 投与に関連する変化は認められなかった。day 5 に実施した臨床病理検査(血液学的検査、血 清生化学的検査、血液凝固系検査、尿検査)及び病理学的検査ではIgPro20 投与に関連する 以下のような変化が認められた。 1. 1000 mg/kg 投与群の雌で、ヘモグロビン濃度(Hb)及びヘマトクリット値(PCV)の減 少が認められた。 2. 1000 mg/kg 投与群の雌雄で好中球数の絶対値及び相対値が増加し、それに関連して、リ ンパ球数の相対値が減少した。 3. 200 及び 1000 mg/kg 投与群の雌雄で γ-グロブリン濃度が用量依存的に増加した。
4. 200 及び 1000 mg/kg 投与群の雄で尿量が減少し、尿比重は増加した。 5. 200 及び 1000 mg/kg 投与群の雌で肝臓の実(絶対)重量及び相対重量が増加した。この 肝臓重量の増加は、1000 mg/kg 群の雌で観察された有糸分裂像の増加と関連する可能性 が考えられた。 6. 投与部位の病理組織学的検査では、皮下組織に多くの線維芽細胞を含む亜急性の炎症性 細胞浸潤が観察され、炎症細胞の大部分は単核細胞であり、わずかに顆粒球も認められ た。 7. 上記 6 の所見は、IgPro20 投与群の動物でのみ好酸性から両染性の細胞質内顆粒で満た されたマクロファージが存在し、出現頻度の比較的低い軽微から軽度のびまん性皮下浮 腫を伴っていた。 8. 皮下組織のびまん性浮腫は、コラーゲン線維を分割する多数の小さな空胞を伴う好酸性 蒼白色液を特徴とした。 day 4 には血清中に抗ヒト IgG 抗体が検出され、免疫反応が認められた。炎症性変化は投与 部位の皮下組織に観察され、好酸性から両染性の細胞質内顆粒を伴ったマクロファージに特 徴付けられており、その変化は異種動物のタンパク質を投与した場合に共通して観察される 所見である。このような局所反応はIII 型過敏反応、あるいはそれに関連する機序によるもの と推測される。全身に抗ヒトIgG 抗体が存在する状況下で、抗原性物質が局所で過剰に存在 すると、III 型過敏反応が誘導されて免疫複合体の形成及び局所炎症反応が誘発される。投与 に関連した血液中の好中球数増加は、このような免疫反応と一致した。 加えて、ヘモグロビン濃度及びヘマトクリットの低値は溶血を示唆し、ラットの赤血球と 結合した外来物反応性抗体による影響と推察された。IgPro20 投与動物に見られた用量依存的 なγ-グロブリン濃度の上昇は、投与されたヒト IgG の特性と最も関連すると考えられた。 結論 本試験で認められたIgPro20 に関連するすべての所見は、ラットに対して免疫原性を有す るヒトタンパク質の投与によるものと考えられた。本試験から推定されるIgPro20 の概略の 致死量は1000 mg/kg より大と推察された。 2.6.6.3.2.2 蓄積毒性の評価 IgPro20 の蓄積毒性を検討するため、26 週間反復皮下投与毒性試験及び 4 週間回復試験で 以下のような観察及び検査を実施した。 動物の瀕死状態又は生死の確認は1 日に少なくとも 2 回、一般状態の観察は 1 日 1 回行っ た。臨床検査は週1 回以上実施した。眼科学的検査は、投与前、day 27(途中剖検前)及び day 177(投与期間終了日)に実施した。体重測定は投与期間中に週 2 回及び回復期間中に週
1 回測定した。摂餌量は個別ケージごとに、投与期間中に週 2 回、回復期間中に週 1 回測定
した。臨床病理検査は途中剖検(day 29)、投与終了日及び回復期間終了日(day 181 及び day
209)に実施した。
全群に対して雌雄各3 例のサテライト動物を設定し、ヒト IgG 及び抗ヒト IgG 抗体の血清
中濃度測定用として、day 0、4、28、62、96 及び 180 の投与前及び day 208 に採血した。
すべての生存動物はday 29、day 181、又は回復期間終了の day 209 に安楽死させ、剖検を
行った。 選択した器官重量を測定し、全動物の器官/組織を剖検時にホルマリン固定して保存した。 各投与期間終了時剖検例については、選択した器官/組織は病理組織学的検査に供した。対照 群で瀕死状態のために剖検した雄1 例及び 1000 mg/kg 投与群の死亡した雌 1 例については、 投与終了時の動物と同一器官の検査を実施した。 結果 投与期間中及び休薬期間中に被験物質投与に関連した死亡は見られなかった。 投与部位の硬結が1000 mg/kg 投与群の雌雄で時々観察され、概して、22 週目から投与期 間終了まで認められた。眼科学的検査ではIgPro20 投与に関連した変化は認められなかった。 投与期間中及び休薬期間中の体重及び摂餌量に特記すべき変化は認められなかった。 200 及び 1000 mg/kg 投与群の雄で、day 29 に平均ヘモグロビン濃度及びヘマトクリット値 が対照群と比較して低値を示した。これらの所見は、1000 mg/kg 投与群の雄で見られた平均 網赤血球数(主として、比較的未成熟の網赤血球)の高値と関連が認められた。投与終了時 (day 181)には赤血球数(RBC)、ヘモグロビン濃度及びヘマトクリット値(雄のみ)の低 値が1000 mg/kg 投与群の雌雄で認められた。これに関連して、200 及び 1000 mg/kg 投与群 の雄でヘモグロビン濃度分布幅(HDW)及び赤血球粒度分布幅(RDW)の低値、並びに 1000 mg/kg 投与群の雄で網赤血球数及び平均赤血球容積(MCV)の高値が認められた。1000 mg/kg 投与群の雌でも赤血球数及びヘモグロビン濃度の軽度な低値が認められた。これらのIgPro20 投与に関連した所見は、1000 mg/kg 投与群の雄で見られた HDW 及び RDW の変化を除き、 回復期間終了時(day 209)には完全に消失した。なお、これらの HDW 及び RDW の変化は 部分的な回復が認められた。day 29 及び day 181 には、1000 mg/kg 投与群の雄で血清中総ビ リルビンの平均濃度に統計学的に有意な増加が認められた。day 29 に 1000 mg/kg 投与群の雌 雄で、平均好中球数の絶対値及び相対値がともに増加し、リンパ球数の相対値減少と比例し ていた。これらのIgPro20 投与に関連した所見は、投与終了時(day 181)には変化が認めら れなかった。 day 29には、200及び1000 mg/kg投与群の雄で活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT) が対照群の平均値と比較して統計学的に有意に延長した。day 29 及び day 181 には、200 及び 1000 mg/kg 投与群の雌雄で γ-グロブリン濃度及びタンパク質濃度(day 29 及び day 181 のみ)
が統計学的に有意に増加した。これらの所見は、day 29 に IgPro20 投与群の雌雄で認められ た平均アルブミン濃度及びアルブミン/グロブリン比の減少及びグロブリン分画の変化と関 連していた。タンパク質濃度と個々の分画に見られたこれらの変化は投与期間中(day 29 か らday 181 まで)に部分的な回復が見られ、投与したヒト IgG の特性に最も関連するものと 考えられた。 day 29 には、1000 mg/kg 投与群の雌雄で尿量減少及び尿比重の増加が認められた。すべて の値は背景となる対照群が示した値の範囲内であった。これらの変化はIgPro20 投与と関連 しているものの、関連する腎障害が認められないことから、IgPro20 の毒性を示唆するもので はないと考えられた。 IgPro20 を投与した動物の血清中にヒト IgG 濃度の用量相関的な増加が認められた。雌動
物では雄動物よりも血清中ヒトIgG 濃度で高値を示した。ヒト IgG の血清中濃度は、IgPro20
の両投与群ともにday 28 よりも day 4 の方が低値を示した。ヒト IgG 血清中濃度は day 28 及
びday 62 に最高値に達し、その後、day 96 まで一定の値を示した。投与期間後半には軽度な
減少が見られ、その後の休薬期間にはIgG 血清中濃度は急速に低下した。大部分の動物で抗
ヒトIgG 抗体は day 4 に検出された。day 28 及びそれ以降の day 208 を含むポイントについて、
抗ヒトIgG 抗体はすべての IgPro20 投与動物で検出され、抗体濃度は day 4 よりも高値を示し
た。投与したヒトIgG の用量と血清中の抗ヒト IgG 抗体濃度との間には用量相関性は認めら れなかった。 投与に関連した変化は投与部位の皮下組織、脾臓、骨髄及び肝臓に認められた。day 29 に 剖検したラットで、IgPro20 投与に関連した亜急性炎症性変化が見られ、さらに、皮下組織の 血管周囲に慢性の炎症性細胞浸潤が認められた。この慢性所見は投与部位の右側(最後の8 回投与に使用)よりも左側(最初の7 回投与に使用)の方が出現頻度は低く、程度も軽度で あったため、部分的な回復が示唆された。day 181 に剖検したラットには IgPro20 投与に関連 した亜急性及び慢性所見の類似性が見られたが、皮下組織の線維化及び浮腫も観察された。 亜急性から慢性の炎症性細胞浸潤及び皮下組織の浮腫の出現頻度及び程度は直前に投与され た部位でより強く認められた(このサブグループでは代替投与部位に投与した)。慢性炎症性 細胞の血管周囲への集簇及び皮下組織の線維化の出現頻度及び程度は両投与部位で類似して いた。4 週間の回復期間終了後(day 209)、急性炎症所見については完全な回復性が見られた が、慢性炎症変化に関する回復は不完全であった。
day 29 には IgPro20 投与群の雌雄、並びに day 181 の 200 及び 1000 mg/kg 投与群の雄及び 1000 mg/kg 群の雌で、脾臓重量の増加及び脾臓の髄外造血が認められた。これらの変化は 4 週間の休薬期間終了後には消失しており、投与部位に認められた変化に関連した二次的変化 と考えられた。
day 181 には 1000 mg/kg 群の雄で骨髄の顆粒球系細胞の軽微な増加が認められた。これは
投与部位に対するIgPro20 投与に関連した二次的な影響と考えられた。この骨髄所見の回復
性については評価しなかった。
day 29 には肝臓重量の明らかな増加が雌雄ともに認められた。day 181 にも IgPro20 投与群
の雌雄で肝臓重量がわずかに増加したが、day 29 に見られた変化よりも軽減されていた。肝 臓重量のIgPro20 投与による変化の差異は 4 週間の休薬により部分的に消失していた。day 29 及びday 181 に認められた肝臓の病理組織学的所見に関連した変化は認められず、器官重量 の増加は適応性変化と推察された。 結論 IgPro20 200 及び 1000 mg/kg を SD 系ラットに 26 週間隔日投与した結果、体重、摂餌量及 び動物の行動に毒性変化は見られず、忍容性は良好だった。本試験で認められたすべての変 化は、ラットに免疫原性を有するヒトタンパク質の投与、又はラット赤血球と結合する IgPro20 中の外来物反応性抗体の投与による影響と考えられた。そのような変化は以下のとお りである。 - 投与部位の皮下組織における亜急性及び慢性炎症性変化 - 血液中好中球数の一過性増加、赤血球パラメーターの減少、血清ビリルビン濃度の増加、 脾臓で誘発された髄外造血、骨髄で誘発された顆粒球系細胞の軽微な増加 上述の所見は低用量よりも高用量で著明であった。 したがって、本試験では外来物反応性抗体を含むヒトIgG(免疫原性)の投与による影響 のため、無作用量は推定できなかったが、無毒性量は最高用量の1000 mg/kg と考えられた。 2.6.6.4 遺伝毒性試験 ヒトIgG のような免疫グロブリンは健康人の細胞内の DNA 及び染色体に直接作用する可 能性はない。そのため、遺伝毒性試験を実施することは適切でないと考えられた。 2.6.6.5 がん原性試験
IgPro20 に含まれる IgG は生体に存在し、ヒト IgG を異種動物に 28 日間及び 26 週間反復
投与した試験で免疫反応が示されたことから、このようなIgG 分子のがん原性試験を実施す
ることは適切ではないと考えられた。IgPro20 に含まれる IgG のような臨床経験がある内因
性アミノ酸、ペプチド及びタンパク質ではがん原性試験が要求されない(ICH ガイドライン
2.6.6.6 生殖発生毒性試験 サングロポール 62.5、125 及び 250 mg/kg をラットの妊娠前及び妊娠初期、器官形成期並 びに周産期及び授乳期に静脈内投与し、さらに、投与量62.5、125 及び 250 mg/kg をウサギ に器官形成期に静脈内投与し、生殖発生毒性試験を実施した。これらの生殖発生毒性試験で は、妊娠率、分娩、胎児及び新生児に対して影響は認められなかった。 試験結果から、ヒトIgG は生殖発生に悪影響を及ぼさないと推察された。一方、動物試験 の実施に際しては、IgPro20 の外来物反応性及び免疫原性による影響を考慮すべきである。こ れらの観点から、IgPro20 の生殖発生毒性試験は実施しなかった。 2.6.6.7 局所刺激性 IgPro20 は高濃度タンパク質(20%)を有し、わずかに酸性の pH (pH 4.8)で製剤化され ている。高濃度タンパク質と低いpH を有する IgPro20 が皮下投与により局所刺激性に影響 を及ぼすか否かを評価する目的で、ウサギを用いた局所刺激性試験を実施した。タンパク質 を含まない添加物溶液(250 mmol/L L-プロリン、pH 4.8)についても評価し、低タンパク質 濃度及び/又は高 pH 製剤を比較対照製剤として評価した。 ウサギを用いた第二の局所刺激性試験では、IgPro20 の静脈内、静脈周囲及び動脈内投与に よる局所刺激性を評価した。 2.6.6.7.1 ウサギを用いた調整済みのタンパク質溶液の局所刺激性試験(皮下投与後 96 時 間観察)(143.143.552) 表 2.6.7-7; 4.2.3.6 での局所刺激性試験の報告書(143.143.552; ウサギを用いた調整済みの タンパク質溶液の局所刺激性試験)
本試験ではNew Zealand White ウサギにIgPro20 の2 用量を皮下投与した。Beriglobin P(16%
タンパク質、pH 6.6)を比較対照薬として評価し、加えて、タンパク質濃度以外はIgPro20
と同一に調製した3 製剤、*IgG製剤X( %タンパク質)、*IgG製剤Y( %タンパク質)及び*IgG製Z
( %タンパク質)と比較した。
本試験はGLP 適用試験として実施した。
試験には被験製剤及び比較対照製剤として次のロットを使用した: *IgG製剤X( )、
IgPro20( )、**IgG製剤Z ( )、*IgG製剤Y( )、Beriglobin P( )
雌雄各18 例の NZW ウサギを 1 群雌雄各 3 例の 6 群に割り当てた。投与初日(day 0)に投 与に伴う疼痛の程度を確認するため、被験物質の0.5 mL を動物の片側に皮下ボーラス投与し た(低用量)。引き続き、同一動物の反対側に生理食塩液(陰性対照)の0.5 mL を同様に皮 下ボーラス投与した。day 0 の第二段階として、皮下ボーラス投与後、直ちに投与容量 2.5 mL/kg を 5 mL/kg/H の速度で皮下持続投与した(高用量)。翌日(day 1)の 2 回目投与では 被験物質後約24 時間後に、生理食塩液を同様に投与した。皮下ボーラス投与は動物の背部に、 肩甲骨から尾側へ向けて行った。皮下持続投与は保定した動物にインフュ-ジョンポンプを 用いて実施した。 皮下持続投与した際の投与容量2.5 mL/kg は、体重換算で投与部位当たりのヒトへの最大 投与容量の約7 倍に相当する。 試験期間中、動物の死亡の有無を1 日 1 回、記録した。一般状態観察は投与日(day 0)よ り投与後の96 時間(day 4)まで 1 日 2 回行った。疼痛の強さ、紅斑及び浮腫の程度は 0 か ら4 まで段階的評価方法により確認した。体重は投与日に 1 回測定した。剖検は day 4 に実 施した。肉眼的所見及び病理組織学的検査は、投与部位皮下持続投与部位並びに特記すべき 所見が認められた場合にはその周囲組織について段階的評価方法により行った。 結果 紅斑形成:*IgG製剤Z 及び IgPro20 製剤に起因した紅斑(中等度の変化として評価)が、皮下 持続投与後に認められた。その紅斑の程度は比較対照製剤Beriglobin P と同等であった。 *IgG製剤X 、*IgG製剤Y 及び添加物溶液に含有するL-プロリンは生理食塩液と比較して紅斑形成に 差異は認められず、比較対照製剤Beriglobin P と比較してより良好な忍容性が認められた。 皮下ボーラス投与と皮下持続投与を比較したが、両者に特記すべき差異は認められなかった。 浮腫形成: 浮腫の程度と発現頻度は被験物質の用量増加(被験物質のタンパク質濃度の違 い)に伴い増加し、用量依存的な影響が示唆された。 疼痛反応: 被験物質と生理食塩液の間に大きな差異はなかった。 肉眼所見: 主な肉眼所見として、皮下組織に様々な程度の血腫及び変色部位が認められた。 それらの程度及び発現頻度は被験物質投与群(IgPro20 投与群及び*IgG製剤X 投与群)、生理食 塩液投与群及び両性で同等に認められた。 病理組織学的検査ではIgPro20 の皮下持続投与で異常所見は認められなかった。IgPro20 投 与群及び*IgG製剤X 投与群、比較対照製剤投与群(Beriglobin P 投与群)及び生理食塩液投与群 とでは、病理組織学的検査で認められた出血が同様の強度及び出現頻度で観察された。病理
組織学的検査で認められた炎症はIgPro20 投与群及び*IgG製剤X 投与群、Beriglobin P 投与群及 び生理食塩液投与群のいずれも同程度の強度(軽微から軽度)であった。それらの出現頻度 は生理食塩液投与群よりも被験製剤投与群の方がより高かった。投与群間では炎症の出現頻 度及び程度は類似していた。
結論
試験に使用したIgPro20 を含むすべての IgPro 製剤は、Beriglobin P の同一容量と比較する
と、同程度の局所刺激性又は良好な忍容性を示した。試験に使用した製剤投与群間で認めら れたわずかな違いは、主として同一容量の製剤を投与した際のタンパク質含有量の違いに起 因するものと考えられたが、20%タンパク質濃度を有する IgPro20 は Beriglobin P と同様な局 所刺激性を示した。また、変化に雌雄間での違いは認められなかった。 2.6.6.7.2 ウサギを用いた IgPro20 及び生理食塩液の局所刺激性試験(143.140.883) 表2.6.7-8、4.2.3.6 での局所刺激性試験の報告書(143.140.883; ウサギを用いた IgPro20 と 生理食塩液の局所刺激性試験) 本試験の目的はNZW ウサギ雌雄を用いて、IgPro20(ヒト IgG(総タンパク質 192.6 g/L)、 250 mmol/L L-プロリン、pH 4.8)の局所刺激性を生理食塩液と比較検討することであった。 本試験はGLP 適用試験として実施した。 試験に用いた被験物質:IgPro20(ロット番号: No. )及び生理食塩液(ロット 番号: )を用いた。 各群3 例(雄 2 例、雌 1 例)、3 群のウサギを試験に使用した。それらの動物の右側耳介に 被験物質(投与容量0.5 mL)を単回静脈内(i.v.)、静脈周囲(p.v.)及び動脈内(i.a.)に投 与した。同様に左側耳介には対照として生理食塩液を投与した。投与局所の所見と体重は定 期的に記録した。8 日間の観察後、すべての動物を安楽死させ剖検した。病理組織学的検査 は投与部位周辺の組織を採取し実施した。 結果 計画された観察期間中に死亡例は見られなかった。被験物質と生理食塩液投与により形成 された紅斑及び浮腫は軽度であり、静脈内及び動脈内投与後の発現頻度及び程度も同様であ った。IgPro20 の静脈周囲投与後 3 時間以降に明らかな紅斑が認められた。その後、2 例に投 与後3 日までに、1 例に day 4 までに紅班の消失が見られた。IgPro20 の静脈周囲投与後 6 時 間で中等度から重度の浮腫が認められ、投与後1~1.5 日には消失した。静脈内、動脈内及び
静脈周囲投与後、肉眼病理検査及び病理組織学的検査に被験物質投与に起因する変化は認め られなかった。 結論 IgPro20 の単回静脈内及び動脈内投与では局所忍容性は良好であった。IgPro20 が皮下投与 で用いられることを考慮すれば、IgPro20 の静脈周囲投与による結果は容認できるものであっ た。 2.6.6.8 その他の毒性試験 2.6.6.8.1 不純物に関する試験 カプリル酸は、IgPro20 の製造工程の初期に実施される沈殿段階で、免疫グロブリンを精製 するために使用される。その後の工程でカプリル酸は製剤から除去され、最終製剤では検出 限界未満であった( mmol/L 未満、3.2.P.5.5)。 また、エタノールはヒト血漿を分画するために使用される。IgPro20 の製造工程でエタノー ルはIgG 溶液から除去され、最終製剤中では、残留溶媒に関する ICH ガイドライン Q3C(R3) におけるクラス3 物質(低毒性溶媒)として位置づけられた濃度(1 日許容摂取量:50 mg/day) をはるかに下回る残留溶媒濃度となっている。 2.6.6.8.2 幼若動物を用いた試験 IgPro20 に含まれる IgG は、市販されている静脈注射用人免疫グロブリンとして長年にわ たり小児適用されている。さらに、CSLB がこれまで実施した IgPro20 の臨床試験では、適応 対照に含まれる小児患者に対する安全性の問題はなかった。そのため、小児への適用に関し て安全性への懸念はないと考えている。したがって、幼若動物を用いた非臨床試験を実施し なかった。 2.6.6.8.3 添加物に関する試験 L-プロリンは、第十六改正日本薬局方に収載されており、輸液成分として使用されている。 L-プロリンは、高齢患者を含め、1 日当たり最大 8 g までの用量で医薬品としての使用前例(静 脈内投与)はあるものの(アミノレバン点滴静注、大塚製薬)、添加物としては国内臨床試験 の1 日最大用量である 1.74 g(IgPro20 を 1 日最大用量 200 mg/kg、体重 60 kg 換算)の使用 前例はない。そのため、皮下投与を含むL-プロリンの毒性試験成績を添付することとした。 2.6.6.8.3.1 単回投与毒性試験 L-プロリンをラットに単回で皮下及び腹腔内投与した場合の薬物動態試験(PSR 08/06) 表2.6.7-9; 4.2.3.7.7 の試験報告書、単回投与後の吸収試験(PSR 08/06; ラットを用いた L-プロリンの単回皮下及び腹腔内投与による薬物動態試験)
CD 系雌ラット(体重 約 250 g)を用い、L-プロリンの皮下及び腹腔内投与経路による、 急性神経毒性及び単回投与薬物動態試験を実施した。急性神経毒性では一般状態を観察し、 数値化して評価した。本試験はL-プロリンが血漿中に高濃度存在する場合の急性神経毒性を 評価することを目的とした。本試験は盲検及び非無作為下に管理された試験であった。 試験はGLP 非適用試験として実施した。 被験物質: L-プロリン(低用量): 2.0 mol/L(ロット番号 、2100 mOsm/L) L-プロリン(高用量): 4.0 mol/L(ロット番号 、4240 mOsm/L) 塩化ナトリウム溶液(対照): 2.2 mol/L 塩化ナトリウム(ロット番号 、4240 mOsm/L) 1 群 6 例の雌動物を 5 群で使用した: L-プロリン低用量の皮下投与群、L-プロリン低及び高 用量の腹腔内投与群、対照群として塩化ナトリウム溶液の皮下投与群及び腹腔内投与群 投与容量は全群で8.7 mL/kg とした。低用量群及び高用量群に対する投与量は、それぞれ 2 及び4 g/kg に相当する。 神経毒性評価及び採血のため、各群を3 例ずつの 2 サブグループに分けた。神経毒性を含 む一般状態の評価及び血液標本採取は交互に実施され、一方のサブグループでは投与前(ベ ースライン)、投与後15 分、1 時間、4 時間及び 24 時間に、他方のグループでは投与前(ベ ースライン)、投与後30 分、2 時間及び 8 時間に行った。一般状態は発作及びけいれんのよ うな急性神経毒性症状に関して特記した。 結果 試験期間中に途中死亡は見られなかった。 L-プロリンの皮下投与: 急性神経毒性症状を含め、L-プロリン投与に起因する一般状態の変化は認められなかった。 対照群(塩化ナトリウム溶液)の動物に認められた主な一般状態の変化は、ほとんどの動 物で投与時に観察された発声と左後肢の一過性の筋緊張及び投与後4~8 時間に見られた投 与部位の脱毛であった。 L-プロリンの皮下投与後のトキシコキネティクス: L-プロリン溶液の投与後 15 分に平均最高濃度は 11990 μmol/L となり、L-プロリンの平均 血漿中濃度である170 μmol/L に比して 70 倍まで増加した。血漿中 L-プロリンの消失速度は 速く(半減期:1.5 時間)、L-プロリン投与後 8 時間で投与前の濃度に達した。対照群の塩化 ナトリウム水溶液の投与では、L-プロリンの血漿中濃度に特に変化は認められなかった。
結論 発作のような急性神経毒性を示唆する一般状態の変化は認められず、L-プロリン 2.0 g/kg の皮下投与後に一般状態は変化しなかった。 幼若ラットにL-プロリン及びグリシンを単回皮下投与した場合の薬物動態試験(PSR 03/07) 表2.6.7-10;4.2.3.7.7 単回投与後の吸収(PSR 03/07) PSR 01/07(2.6.6.8.3.2)では急性神経毒性を評価するための水迷路試験の投与期間中での 影響を検討したが、その試験計画に従い、L-プロリンの単回皮下投与後の薬物動態に関する 情報を得るため、若齢ラットを用いた薬物動態試験を実施した。 本試験はGLP 適用試験として実施しなかったが、GLP に準じる SOP に則して実施した。 被験物質: L-プロリン:2 mol/L(ロット番号 ) グリシン:2 mol/L(グリシンロット番号 ) 26 日齢の雄ラット 24 例を 1 群当たり 8 例の 3 群に割り当てた。体重当たり等モル用量(16.4 mmol/kg)の L-プロリン(1.9 g/kg)、グリシン(1.2 g/kg)、又は対照群として生理食塩液を単 回皮下投与した。成熟ラットより得られたデータと直接比較する目的で、投与前(基準値、2 例/群)、投与後 15 分(3 例/群)及び 4 時間(3 例/群)に、L-プロリン及びグリシンの血漿中 濃度を測定するために眼窩叢より採血した(動物1 例当たり 1 サンプル)。動物は採血後直ち に安楽死させた。血液サンプルは血漿分離後、測定まで-20℃で保存した。 L-プロリン及びグリシン投与群の血漿中濃度は、投与前では対照群と同一レベルであった が皮下投与後に急速に上昇し、15 分で L-プロリンは約 15 mmol/L、グリシンは約 15 mmol/L のレベルに到達した(表 2.6.6-4)。投与後4 時間では、血漿中濃度は L-プロリン投与群で約 16%に低下し、グリシン投与群で約 4%に低下した。 表 2.6.6-4 L-プロリン及びグリシン皮下投与後の血漿中濃度の経時変化(PSR 03/07) L-プロリン濃度(mmol/L) グリシン濃度(mmol/L) 採血ポイント(分) 生理食塩液 L-プロリン 生理食塩液 グリシン 投与前(ベースライン) 0.25±0.004 a) 0.27±0.04 0.14±0.006 0.17±0.001 15 0.28±0.04 14.6±1.4 0.13±0.008 14.7±2.9 240 0.24±0.006 2.6±0.16 0.14±0.01 0.8±0.03 a) mean±SD、各採血ポイント当たり n=2~3
成熟雌ラットにL-プロリンを投与した試験(PSR 08/06)で観察されたように、投与に伴い 血漿中濃度の急増が認められた。L-プロリン及びグリシンの両群ともに、皮下投与後、15 分 で最高血漿中濃度に達した。アミノ酸のクリアランスはわずかに異なり、L-プロリンでは投 与4 時間後の血漿中濃度が約 16%、グリシンでは約 4%に減少していた。 L-プロリンの最高血漿中濃度は、本試験では若齢雄ラットで 15 mmol/L であり、成熟雌ラ ットで12 mmol/L であったことから、両者に差は認められなかった。L-プロリンの血漿から の消失は若齢ラットでわずかに遅かった。投与後15 分における最高血漿中濃度の比較では、 本質的に同程度であるが、成熟ラットで9%、若齢ラットで 16%に減少した。 本試験結果は、成熟に伴いL-プロリンの代謝及び排出が増加するという Moreira らの報告 を裏付けるものである(Moreira ら 1989)。 等モル用量のL-プロリン及びグリシンを若齢ラットに単回皮下投与した試験では、最高血 漿中濃度は同程度とみなすことができた。クリアランスは、両アミノ酸に有効であると考え られたため、反復投与での実質的な蓄積性は、PSR 01/07で実施した少なくとも8 時間間隔 では見られなかった。 2.6.6.8.3.2 反復投与毒性試験 L-プロリン-Sprague-Dawley 系ラットを用いた 4 週間皮下投与毒性試験(AA89493) 表2.6.7-11; 4.2.3.7.7 反復投与毒性の試験報告書(AA89493; L-プロリン―Sprague-Dawley 系 ラットを用いた4 週間皮下投与毒性試験) Sprague-Dawley 系ラット(6 週齢)に L-プロリンを毎日、1 日 1 回皮下投与し、28 日間連 続投与による毒性試験を実施した。 本試験はGLP 適用試験として実施され、試験施設の QAU が実施調査を行った。 被験物質はL-プロリン(ロット番号: )であり、投与用量は290 mg/kg とした。 対照物質として滅菌生理食塩液(0.9 % NaCl)を用いた。 1 群当たり 20 例(雌雄各 10 例)の動物を対照群(生理食塩液)及び L-プロリン投与群の 2 群を設定した。全動物に被験物質溶液又は生理食塩液 5 mL/kg を投与した。 少なくとも1 日 2 回、動物の瀕死状態又は生死の確認を行った。一般状態の観察は毎日実 施した(投与部位の局所刺激性の観察を含む)。詳細な一般状態の観察は週1 回実施した。個 体別の体重及び摂餌量は少なくとも週2 回測定した。投与終了時に全動物を安楽死させ剖検
した。全動物について剖検時に投与部位の組織を固定・保存後、病理組織学的検査を実施し た。 結果 試験期間中、死亡は見られず、被験物質投与に関連した一般状態の変化も認められなかっ た。試験期間中、投与部位の局所刺激性に関連する所見も認められなかった。試験期間中、 体重及び摂餌量に関する変化は認められなかった。 剖検では、少数の被験物質投与動物で黒色病変が両側の投与部位の内側面に観察された。 この所見は病理組織学的検査でみられた皮下出血との関連が認められる場合があった。対照 群と被験物質投与群の大部分の動物で、投与部位の病理組織学的変化が観察された(ほとん どは軽微~軽度であり、それらの多くは投与手技に起因すると考えられた)。しかし、皮下組 織の壊死は、被験物質投与動物でのみ発現したもので、出現頻度は低いものであった。リン パ球浸潤及び出血は高頻度に観察され、時として重症度の高い動物も見られた。これらの所 見のすべては通常、軽微~軽度であった。被験物質は皮下壊死、リンパ球浸潤及び出血頻度 を増加させたが、おそらく、些細な変化で、局所作用と考えられ、これらの変化は毒性とは 考えられなかった。 結論 今回の試験条件下で、290 mg/kg の L-プロリンを Sprague-Dawley 系ラットに 28 日間連日皮 下投与しても、体重、摂餌量及び一般状態の変化に関して、忍容性は良好だった。投与部位 にみられた剖検時の肉眼所見として黒色病変、しばしば病理組織学的に、少数の動物で軽微 の皮下壊死と同様に、軽微~軽度の皮下出血、リンパ球浸潤が見られた。これらの所見は対 照群よりも被験物質投与群でより顕著であったが、その違いは被験物質溶液の高浸透圧によ る可能性が考えられた。 これらの試験成績に基づき、所見の発現頻度及びその重篤度の低さを考慮し、本試験の無 毒性量は290 mg/kg と推察された。 L-プロリン及びグリシンのラットを用いた 28 日間連日 7 時間静脈内持続投与毒性試験及 び2 週間回復性試験(925/035) 表2.6.7-12; 4.2.3.7.7 反復投与毒性の試験報告書(925/035; L-プロリン及びグリシンのラッ トを用いた4 週間連日 7 時間静脈内持続投与毒性試験及び 2 週間回復性試験、20 ) 28 日間毒性試験は Crl-SD (SD)IGS BR 系ラット(9 週齢)を用いて毎日 7 時間、被験物質 のL-プロリン及びグリシンを静脈内持続投与して毒性を評価し、加えて、2 週間休薬して毒
性症状の回復性についても評価した。さらに、L-プロリン及びグリシンの血清中濃度評価も 実施した。 本試験はGLP 適用試験として実施され、試験施設の QAU が実施調査を行った。 被験物質: L-プロリン(ロット番号: ) グリシン(ロット番号: ) 1 群 20 例(雌雄各 10 例)を 5 群に配し、対照群(生理食塩液)、L-プロリン及びグリシン それぞれの低及び高用量群を設定した。対照群及び高用量群に追加動物として1 群 10 例(雌 雄各5 例)を毒性症状の回復性を評価するために 28 日間静脈内持続投与後、2 週間の休薬を 行った。全動物に被験物質溶液又は生理食塩液を42 mL/kg の容量で静脈内持続投与した。低 及び高用量群の静脈内持続投与に用いる被験物質溶液のアミノ酸濃度はそれぞれ120 及び 300 mmol/L に設定した。 低用量での被験物質溶液は生理食塩液と等浸透圧に調整した。一方、高用量での被験物質 溶液は調整しなくとも等浸透圧であった。 被験物質の用量は以下のとおり設定した。 L-プロリン低用量:579 mg/kg、L-プロリン高用量:1449 mg/kg グリシン低用量: 378 mg/kg 、グリシン高用量:945 mg/kg 被験物質を28 日間連日で 7 時間静脈内持続投与した。毎日、7 時間の投与終了後、インフ ュージョンチューブの詰まりを防止するため、動物には残りの1 日 17 時間に標準低容量(0.4 mL/hour)で生理食塩液の静脈内持続投与を継続した。 血液採取は剖検前のday 29 及び day 43(回復性試験動物)に実施し、トキシコキネティク ス測定用の血液はサテライト動物(3 例/性/群)から頻回に採血した。採尿は投与終了時の剖 検動物から行い、静脈内持続最終投与日のday 28 から剖検日の day 29 までの 24 時間にわた り採取した。 少なくとも1 日 2 回、動物の瀕死状態又は生死の確認、及び一般状態の観察を行った。休 薬期間中の一般状態観察は1 日 1 回行った。詳細な一般状態観察は投与期間中に毎日、休薬 期間中は週1 回実施した。眼付属器、中間透光体及び眼底の眼科学的検査は間接検眼法によ り、投与前及び投与4 週に実施した。体重は全動物について、投与開始前、並びに投与期間