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自然教育園に生息する樹上営巣性のアリについて

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Academic year: 2021

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(1)

自然教育園報告(Rept. Inst. Nat. Stu. ) 第47号:115−117, 2016.

①  自然教育園に生息する 樹上営巣性のアリについて

佐藤俊幸・小山哲史・酒居千尋

Arboreal ants found in the Institute for Nature Study, Tokyo Toshiyuki Satoh

, Satoshi Koyama

, Chihiro Sakai

は じ め に

 自然教育園に生息するアリ類については,2007 年に発行された「自然教育園動物目録」において 報告がある。また,「自然教育園で観察された生物の種名データベース」にも登録されている。今回,

園内の樹上営巣性アリ類の生息状況を調査する機会があり,隠蔽種だったものが後に新種記載され,

種名の変更が 1 件あったので,それを中心に報告する。

調 査 方 法

 2015 年 4 月 1 日および 2016 年 2 月 21 日に園内の照葉樹林内においてシイ・カシ・アオキなどの 枯れ枝を割り,カミキリムシなどの食材性甲虫類の幼虫が空けた坑道内に営巣している樹上営巣性ア リ類の生息状況を調査した(写真 1)。

*東京農工大学,Tokyo University of Agriculture and Technology 写真 1 樹上性アリが営巣していた枯れ枝の坑道

(2)

結 果 と 考 察

 ヤマヨツボシオオアリ Camponotus yamaokai,ウメマツオオアリ C. vitiosus,ヨツボシオオアリ  C. quadrinotatus,ヒラズオオアリ C. nipponicus,4 種の樹上営巣性オオアリの生息が確認された。

上記のうち,ヤマヨツボシオオアリが今回初記録となる。「自然教育園動物目録」および「自然教育 園で観察された生物の種名データベース」にはナワヨツボシオオアリ C. nawaiが登録されている が,従来ナワヨツボシオオアリとされてきた種には,多女王制の隠蔽種が含まれていたことが明らか となり,新種として記載されたのがヤマヨツボシオオアリである(Satoh, 1989;Terayama & Satoh,  1990)。今回,自然教育園に生息するのはナワヨツボシオオアリではなく,近縁種のヤマヨツボシオ オアリであることが確認された(写真 2)。したがって,リストからナワヨツボシオオアリを除外し,

代わりにヤマヨツボシオオアリを登録することになる。

 年最低気温の平均値が− 3.5℃の本州南岸線を境に,北方にヤマヨツボシオオアリ,南方にナワヨ ツボシオオアリが分布しているが(Satoh,1989),自然教育園は本州南岸線よりも北方に位置し,ヤ マヨツボシオオアリの分布域にあると考えられる。

 ヤマヨツボシオオアリは,他の樹上営巣性オオアリと異なり,夏に結婚飛行をせず,羽アリが巣 内で越冬し,翌春巣内で交配し,多女王化・多巣化し,時にスーパー・コロニーを形成する(Satoh,

1991)。さらなる調査が必要だが,自然教育園内のヤマヨツボシオオアリは,園内に存在するすべて の巣どうし敵対性を持たないスーパー・コロニーを形成している可能性が高い。

 ヤマヨツボシオオアリは結婚飛行をせず巣分かれ繁殖するため,伐採された後に照葉樹が植えられ た二次林には生息せず,伐採が抑えられてきた寺社林等で優占する(Satoh,1991)。自然教育園の林 が昔から自然のまま残されていたことにより,都心に孤立した緑地であっても存続してこられたと思 われる。園内の自然が保全される限り,この種は園内の照葉樹林に永続的に生息できると思われる。

写真 2 ヤマヨツボシオオアリ(中央が女王,両隣に大型ワーカー,その周辺に小型ワーカー)

自然教育園報告 第47号,2016

─ 116 ─

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引 用 文 献

国立科学博物館附属自然教育園編.2007.自然教育園動物目録.105pp.

自然教育園で観察された生物の種名データベース http://www.ins.kahaku.go.jp/database/insdb/

index.php

Satoh  T.  1989.  Comparisons  between  two  apparently  distinct  forms  of Camponotus nawai  Ito

(Hymenoptera: Formicidae).Insectes Sociaux,36:277-292.

Satoh T. 1991. Ecological studies on the ants, 

Camponotus nawai complex with special reference to 

the polygyny.博士論文,筑波大学 No.838.

Terayama  M.  &  Satoh  T.  1990.  A  new  species  of  the  genus 

Camponotus  from  Japan,  with  notes 

on  two  forms  of  the  subgenus 

Myrmamblys(Hymenoptera,  Formicidae).Japanese  Journal  of 

Entomology,58:405-414.

佐藤ほか : 自然教育園のアリ ─ 117 ─

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