第2章 湿式ガスメータの原理・構造と 基本特性の解明
2-1 緒言
2-2 湿式ガスメータの一般特性と使用・用途 2-2-1 はじめに
2-2-2 仕様 2-2-3 用途 2-2-4 性能・精度
2-3 湿式ガスメータの原理・構造と計量ドラム 2-3-1 原理・構造
2-3-2 計量ドラムの種類と大きさ
2-3-3 液面変化と計量体積について
(単式ドラム)
2-3-4 流量と圧力損失について
2-3-5 計量ドラムの体積計算
2-3-6 計量体積誤差の変動の要因について
2-4 主要構成部品の機能と役割 2-4-1 ドラム
2-4-2 ケース 2-4-3 封液 2-4-4 液面調整器 2-4-5 水準器
2-4-6 指示機構(カウンター)
2-4-7 温度・圧力計(センサー)
2-4-8 その他
2-5 ガス体積(流量)の求め方 2-5-1 はじめに
2-5-2 計量法を基準とした計量方法(比較法)
2-5-3 質量を基準とした計算方法(絶対値法)
2-6 計量体積と誤差要因の考察
2-6-1 ドラム構造による液面調整
2-6-2 液面の低下
2-6-3 水準器の精度と設置姿勢誤差
2-6-4 流速の変化 2-6-5 指示機構の変化
2-6-6 ドラムデッドポイントと液面変動
2-7 計量誤差
2-7-1 水準器による湿式ガスメータの誤差
(器差)の影響
2-8 誤差要因解析(不確かさ)
2-8-1 誤差要因 2-8-2 誤差要因の考察
2-9 まとめ 参考文献
第2章 湿式ガスメータの原理・構造と 基本特性の解明
2-1 緒言
筆者が調査した限りでは、湿式メータは広く長い間使用されているものの、論文・参考文献が 少ない。
本章では第3章以降議論を展開するために、一般論として湿式ガスメータについて過去の知見 を整理するとともに、基本特性について解明をすることを目的とする。
はじめに、従来品の一般特性について述べ、次に湿式メータの原理・構造を述べ、それが性能 にどう関係するか、また、計量ドラムの基本的な計量体積の算出の方法を通し、性能にどう影響 するか、そしてガスメータを構成する主要部品の役割と機能の解説、精度等について、従来の知 見を述べ、さらに新たな視点から考察し、精度・誤差・性能に関して解析し、湿式メータの基本 特性を解明する。
以下について述べる。
2-2では、湿式ガスメータの仕様と用途、一般性能について、2-3では、湿式ガスメータの原理・
構造と基本特性について、2-4では、主要構成部品の機能と役割について、2-5では、ガス体積(流 量)の求め方について、2-6 では、計量体積と誤差要因について、2-7 では、誤差について、2-8 では、誤差要因について、そして2-9では、第2章のまとめをする。
2-2 湿式ガスメータの一般特性と仕様・用途
2-2-1 はじめに
本節では、現在生産・販売されている湿式ガスメータの一般的仕様・用途・性能について述べ る。湿式ガスメータは、計量法における湿式基準または各種流量計の校正用標準器とに分類出来 る。この大きな違いは、最大流量時の回転数が基準器タイプは一般湿式ガスメータの約 1/2 回転 である。また、湿式基準器は計量法の特定計量器、すなわち家庭用ガスメータ等を検定に使用す るためのものであり、国家の検定を受けなければならない。
2-2-2 仕様
(株)シナガワで生産販売している湿式ガスメータの主要な仕様を、湿式基準器Referenceと 一般湿式Experimentalガスメータに分類し、Table 2-1、2-2に示す。 1)
Table 2-1 湿式基準器 標準仕様 Specification of Reference Wet Gas Meter 検査流量(m3/h)
ドラム 容 量 (L/rev)
測定範囲 (L/h)
指 針 一回転
(L)
最小目盛 (L)
発信器
(L/P) 20L/rev以下は他に 2点以内
接続管 内 径 2 4〜800 2 0.005 0.01 0.1 0.2 0.3 − 15A 5 10〜1500 5 0.01 0.1 0.1 0.2 0.3 − 20A 10 20〜3000 10 0.02 0.1 0.1 0.3 0.6 1.0 25A 20 50〜6000 20 0.1 1 1.0 1.2 2.0 3.0 32A 25 100〜7500 50 0.2 1 流量範囲内の任意の5点 40A 50 150〜15000 50 0.2 10 流量範囲内の任意の5点 50A 100 300〜30000 100 0.5 1.10 流量範囲内の任意の5点 65A
注1.標準使用圧力 5kPa 注4.封 液 オイルまたは水
注2.最高使用圧力 10kPa 注5.付属部品 マノメータ、温度計、発信器
注3.使用温度 50℃以下
Table 2-2 一般湿式ガスメータ 標準仕様 Specification of Experimental Wet Gas Meter 外径寸法(mm)
ドラム 容 量 (L/rev)
測定範囲 (L/h)
指 針 一回転 (L)
最小目盛 (mL)
発信器
(mL/P) W・D・H
接続管 内 径 (φmm) 0.5 1〜300 0.5 1 10 W288 D198 H435 角 9.5 1.0 2〜600 1 1 10 W318 D218 H484 角 9.5 2.0 4〜1200 2 5 10 W360 D262 H510 角 13 2.5 5〜1500 5 20 10 W360 D262 H510 角 13 5 10〜3000 5 10 100 W448 D305 H590 角 19 10 20〜6000 10 20 100 W537 D372 H678 角 25 20 50〜10000 20 100 100 W576 D561 H695 丸 1 1/4B 25 100〜10000 50 100 100 W576 D611 H695 丸 1 1/2B 50 150〜23000 50 200 100 W720 D712 H871 丸 2B 100 100〜10000 100 500 100 W908 D895 H1099 丸 2 1/2B
*WS-1 1〜600 1 5 10 W260 D204 H253 角 9.5
注1.標準使用圧力 5kPa 注4.封 液 オイルまたは水
注2.最高使用圧力 10kPa 注5.付属部品 マノメータ、温度計
注3.使用温度 50℃以下
2-2-3 用途
湿式ガスメータを用途別に、以下のように分類できる。
(1)基準器(標準器)
①家庭用、工業用、膜式ガスメータの検定用基準器 ②各種流量計の校正用標準器
(2)一般流量計
①化学・物理の流量実験、ガス発生量の計測
②ブローバイガスの計測(自動車エンジンシリンダーからのリークガス計測)
③環境計測
④ガス機器の検査(ガス流量からガス消費熱量の計測)
2-2-4 性能・精度
湿式ガスメータは、構造・原理的に計量ドラムの回転と置換封液で通過するガスを計量し、少 しのガスも漏らすことなく完全に計測する。すなわち、ガス流量をゼロから計量できる。また、
ガスの比重・粘度・密度が変わっても正確に計量できる。取扱い方法を間違わなければ、高い精 度のガス流量計測が出来るなどの特性を有する。
圧力損失は約20Pa から、最大流量でも 200Pa以下と比較的低エネルギー損失で計測できる。
また、体積・流量を測定する精度(計量法では器差といい、ISO、JISでは誤差という)は、最大 流量の約半分の流量近くまでは若干右肩下がりを示し、最大流量近くでは−1.5〜−3.0%を示す。
基準器仕様タイプでは、−0.5〜−1.5%である。Fig. 2-1は、基準器の特性を示す。
-2 -1 0 1 2
流量(m3/h)
誤 差
0 50 100 150
圧 力 損 失
誤差 圧力損失
(%) (Pa)
ドラム回転数 300rph
0
Fig. 2-1 Performance Curve of Reference Wet Gas Meter
2-3 湿式ガスメータの原理・構造と計量ドラム
2-3-1 原理・構造 2)
作動原理は、Fig. 2-3に示すように回転軸を有する円筒形のドラムがFig. 2-2のように立方体 のケースの中に取りつけられている。このドラムの中へU字型の送気管が前室から挿入されてい る。ケースに液体(水または油、これを封液という)を半分以上入れ、送気管の口を液面上に出 しておく。計量ガスが入口から送り込まれ、前室に入り、送気管を通ってドラムの前室に導かれ、
送気管を通ってA室に入る。このときB室のガスは入口が液面上に出ているため、出口圧に等し い圧力を有する。よってガスの圧力差により、ドラムは矢印の方向へ回転する。
こうしてガスはA・B・Cの部屋に順次仕切られながら排出される。一つの部屋の体積をVと すると、ドラム一回転で 3Vのガスが出ていく。通過したガスの体積は、ドラムの回転数で求め られる。このように回転計量ドラム(ます)により、液体と置換をしてガスを計量するので、僅 かのガスをリークすることなく、微小流量から大流量に至るまで幅広い流量域を正確に計量でき るが、液面管理と計量ドラムの製作精度が湿式メータの精度の決め手となる。
ドラム室に入れられた封液は、ガス が計量されないで素通りするのを防ぐ ためと、ドラムが回転したときに部屋 に閉じ込められたガスを出口側に押し 出す役目をする。そのため、機械的な 抵抗のほかに、回転速度によって封液 の流体抵抗を受ける。これらの抵抗に 打ち勝って回すために外部からエネル ギーを供給しなければならない。その 始動圧力は 10〜30Pa、最大流量で約
200Pa程度の小さいエネルギーによっ
て計量される。
Fig. 2-2 Principle and Structure of Wet Gas Meter
dr ro
Outlet
Gas charging Sight glass
Drum axis Water
Gas discharging
A
B C
Water
Drum Direction of drum
um tation
Fig. 2-3 Principle of Rotating Drum
2-3-2 計量ドラムの種類と大きさ (1)単式ドラム 2)
h
液 面
このドラムは約180年前に開発され、現在に至る まで改良・改善されてきた。今日のドラムの大部分 を占めている。比較的製作が容易であり、回転抵抗 も小さく、計量能力が大である。本論文では、単式 ドラムについて議論する。
Fig. 2-4 Single Drum (2)複式ドラム 2)
このドラムは、20 世紀初頭、欧州で開発されたも のであり、ワーナーコーワン式複式ドラムと呼ばれて いる。単式ドラム内に逆捻りの小型単式ドラムを搭載 することにより液面変動による誤差を少なくしたも ので、製作が面倒なのが欠点であり、日本では実用化 されなかった。今は使用されていない。
Fig. 2-5 Two Type Drum (3)二重式ドラム
このドラムは1950年代に、旧工業技術院計量研究 所の岡田氏の発明によるもので、単式ドラム内に二つ の内筒を設けたことにより、液面変動の影響は、単式 ドラムの約4分の1になった。日本では、基準器用と して約30年余にわたり製作され、今日でも一部使用 されているが、複雑な形状をしているため、やや製作 が困難であるのと、ドラム構造上、封液による回転抵
抗が大きいために、最大回転数は150rev/hの制限が Fig. 2-6 Double Drum あったこと及び液面計の改善により液位誤差が小さく
なったことから、今日では生産していない。
(4)大きさ
計量体積の大きさについては、一回転の計量体積をLで表している。現在実験用としては0.5L、
1L、2L、2.5L、(3L)、5L、10L、20L、25L、(33L)、50L、100L、200L型がある。昔はガ ス会社のガス発生量を計測するために、500L、1000Lなどの大型のものもあった。また、小型の ものでは、0.2Lを開発した経緯はあるが、現在は使用されていない。
基準器用のものとしては、2L、5L、10L、20L、25L、50L、100L、200L型がある。一般的に 最大回転数は一般用(実験用)で 600 rev/h が限界である。また、精度を要求する基準器用は 実験用のほぼ1/2の300 rev/h が限界とされている。
2-3-3 液面変化と計量体積について(単式ドラム)
本項では、単式ドラムの液面変化と計量体積の関係について、穂坂光司氏の「容積」を引用し て述べる。 2)
いま、1つの計量室の入口がちょうど液面に触れて計量室へのガス流入が止まった瞬間におい て、
V1:1つの計量室の体積、 Δh:液面の変化 A1:ドラムのガス入口がまさに水面下に没するときの計量室の液面積
A :メータの入口圧のかかる液面積 B:メータの出口圧のかかる液面積 a1:入口側の液面の低下 b:出口側液面の上昇
H:(=a+b)ガスの圧力損失 E:体積率(器差または器差)
とすると、Fig. 2-7の(a)の1計量室の体積V1は(b)の量だけ変化するが、近似的にはΔhA2だけ変 化する。
水 面 ( 水 面 積A2)
( a ) ( b )
Δh
Fig. 2-7
いま、計量室の体積をV1として指示機が作られてあれば、体積Eは次のように表わす。
E=ΔhA2/V1 ・・・・・・・・・・・(2-1)
だけの誤差を生ずる。上式より、
E/Δh=A2/V1 ・・・・・・・・・・・(2-2)
よって、単位液面変化による器差の変化量は計量室の体積が大きいほど小さい。
従来使用されている単式ドラムにおいては、今日までの実験値より、液面1mmの変化に対して、
体積誤差の変化量は、約1L型で0.7%、10L型で0.4%、50L型で0.2%であるといわれている。
詳しくは、第3章でこの点について解析を試みる。
2-3-4 流量と圧力損失について
次にドラムを回転すると回転抵抗が打ち勝つために圧力損失Hが発生する。すなわち、入口側 の液面は下がり、出口側の液面は上昇する。
いま、液面の上昇、下降の量が小で、それぞれの液面積が変化しないものとすると、
Aa=Bb
Aa=b(H−a)(∵a+b=H)
∴ a=(B+H)/(A+B) となる。
すなわち、aだけの入口側の液面の下降に対し、1計量室の体積変化は、
aA2=(BH/(A+B))A2
となる。すなわち、このために
E=aA2/V1 =A2BH/V1(A+B) ・・・・(2-3)
だけ体積変化を生ずる。
一般に湿式ガスメータの圧力損失は、
H=m+nR2 ・・・・・・・・・・(2-4)
ここにm・n:メータにより定まった定数、V:流量で表わされるから、これを用いると、
E=A2B/V1(A+B) ・・・・・・・・・・・(2-5)
1つのメータについてA2、V1、B、m、nなどは変化しないとすれば、
E=F+GR2 ・・・・・・・・・・・・・・(2-6)
ここに、F、G:定数となる。
すなわち、湿式ガスメータ体積誤差曲線はFig.
(+) 圧
力 損 失 流量 器差 圧力損失
誤 差 e
(−)
2-8,2-9のような2次曲線となる。
一般に、流量が増せば誤差は(−)の方向、す なわち計量体積は増大する。したがって、ドラム は液面の調整を間違えると誤差を生じ、また、流 量と圧力損失の関係が変わると校正された値(器 差)変化が生じることになる。
Fig. 2-8 Performance Curve of Wet Gas
-3 -2 -1 0 1 2
流量(m3/h)
誤 差
0 50 100 150 200 250
圧 力 損 失
誤差 圧力損失
(%) (Pa)
Fig. 2-9 Performance Curve of Wet Gas Meter
2-3-5 計量ドラムの体積計算 (1)単式ドラム
2-3-3項で述べたとおり、ドラムの計量体積は入口羽根が液面に没する瞬間に決定する。ここで
はドラムの計量体積の算出方法について述べる。
D =外筒の径 v =1計量室の液の置換量(hのとき)
d =基本液位(内筒の径) K =定数 h =液位 W =羽根の幅 2h=d S =内筒の断面積 L =ドラムの仕切り部長さ g =内筒の断面積の重心 I =入口羽根長さ n =計量室の数(羽根枚数)
O =出口羽根長さ r =gの半径 A =1計量室の面積
L I O
D h
液 面
Fig. 2-10 Cross Section View of Measuring Drum
1)一般的計算方法
一周期の計量体積Vは、以下の式で表わす。
V=(πD2/4−πd2/4)(L+((I+O)/2))k) ・・・・(2-7)
kは通常、4室ドラムの場合:約0.25
また、ひとつの計量体積V 、計量室の数をnとすると、以下の式で表す。
V=V'×n ・・・・・・・・・・・・・・・(2-8)
計量室のそれぞれの体積がA、B、C、Dとすると、Vは
V=∑(A+B+C+D) ・・・・・・・・・・・・・・・(2-9)
2-3-6 計量体積誤差の変動の要因について
(1)変動要因
湿式ガスメータは 2-3 節で述べたように、ドラムのガス入口がまさに液面に没せんとするとき
の液面の高さによってその部屋の体積が決まる。
したがって、液面の高さに影響を与えるものはすべて体積誤差を変化させることになる。すな わち、(a)回転抵抗の変化、(b)液面の調整による誤差、(c)液面の低下、上昇、(d)メータの水準器 の精度と設置姿勢誤差、(e)流速の変化、(f)連結されたメータのあおり(脈流)、(g)指示機構によ るばらつきなどは誤差に影響を与えるものである、そして(h)封液の変化(蒸発、溶解、体積変化、
粘度変化)が誤差の要因となる。
(2)回転抵抗の変化
メータの回転抵抗は機械的な摩擦と、流体摩擦との2つよりなり、機械的な場合は、軸および 軸受部の摩擦や、ドラムの回転軸から指示機構に伝わる部分のスタフィングボックスの摩擦の変 化などが抵抗を変えるものと考えられる。したがって、封液を変えた場合は流体摩擦抵抗が変わ るので、体積誤差(器差)は変化する。特に粘度の高いものに変えた場合は、大流量域ドラムの 回転抵抗が増し、計量ドラムの前室液面の低下のため、(2-4)式より、誤差は(−)遅れになる。
また、回転抵抗の変化はメータの入口の通常圧力損失で管理することができる。
(3)液面変動
湿式メータは、計量ドラムと封液によりガスを置換して計量する原理により、液面設定の誤差 を始め、水封式の場合は水の気化による液面低下や気化熱による温度低下の影響を受ける。
2-4 主要構成部品の機能と役割
ここでは、湿式ガスメータの主要な部品について、その機能と役割および精度に関する影響に ついて述べる。
2-4-1 ドラム
通常、円筒形にて変形スパイラル状の4つの羽根で仕切られ、ステンレス鋼板板金加工された ものを半田付にて組立されている。ガスを封液と置換して量るため、湿式ガスメータにおいては 最も大事な部分である。
4つの隔室の容積バランス、静的重量バランスおよびドラム筒の偏芯量が精度を左右する。
2-4-2 ケース
ケースはドラムを支え、また封液を保持し、湿式ガスメー タのすべての構成部品が装置されるので、強固でなければな らない。通常、小型のものは近年では円形から角形に板金加 工でできている。
大型のものは、鉄板を溶接した円筒形となっている。一般 的構造では、前室と後室の2つの部屋で構成され、前室は流 入してきた脈流のバッファタンクの役割を、ドラムのある計 量液位の高さのバランスを持ち、流量が増大しても誤差のマ
Fig. 2-11 Structure of Casing (Single Casing Type)
イナスが大きくならないよう制御している。(Fib2-2 参照)また、前室レスの構造を有するものも 一部生産されている。これは、Fig. 2-11に示すように、通常品と比べると出入口が逆になってい る。前室のない分、小型である。
2-4-3 封液
湿式ガスメータの封液は、計量ドラムと置換をしてガスを量るもので、通常、水が多く使われ ている。
水の場合は、水蒸気圧が発生し、計量中に体積膨張するので、水蒸気圧補正の必要がある。ま た、長時間の計測では水が気化し、水位の低下による誤差のマイナス移動や、気化熱による水温 低下が計量誤差への影響として顕れる。
一方、水に代わって蒸気圧の非常に小さい石油系オイルが一般に用いられている。この場合は、
水蒸気圧の影響を受けないので、水封式より一般に精度が良い。しかし、オイルは温度に対する 体積膨張率が大きいため、測定温度環境の悪いところでの使用は精度の低下に繋がる場合がある。
2-4-4 液面調整器
液面計は、現在水(液)の表面張力の影響を受けることのないゲージボックス方式、または、
ピンポイント反射式のものが大半であり、液面計自体による液位の誤差は小さいものと考えてよ い。通常、湿式メータを取り扱っている人では、液面設定誤差は0.1mm以下である。また、1mm の変化に対して1回転1L型では、約0.7%、10L型のものでは、約0.4%の誤差への影響となる。
1)
液 位 高 い 同 調 ( O K ) 液 位 低 い 鏡 板
Fig. 2-12 Water Level of Pointer
2-4-5 水準器
湿式ガスメータの液位を決定する重要な 役割をするものである。通常は、高感度の 気泡管式水準器が用いられているが、この 感度により設置姿勢から液位の誤差が生じ、
それが体積誤差への要因となる。 Fig. 2-13 Water level of bubble type 湿式基準器にあっては、計量法で水盛式
水準器といわれ、メータ本体3ヶ所に水準線を入れ、水位により姿勢を決める方式がとられてい
る。しかし、取扱いが大変なことから、構成時のみ水盛式を使い、通常、たとえばガスメータの 検定現場では気泡管式水準器が用いられているのが実態である。
なお、気泡管式水準器を破損した場合には、水準器の取替だけではだめであり、取替後、再度 校正が必要である。現在の気泡管式水準器の感度は、基準器用で 0.145〜0.485mm/m(30″〜
100″)、一般用で0.25〜1.7mm/m(50″〜360″)である(JIS B 7510)。詳しくは、第3章
で述べる。(メーカや製品の製作時期によっては更に低感度のものもある)
2-4-6 指示機構(カウンター)
カウンターは、回転円筒形積算計と回転の状況のわかるアナログ指針からから出来ている。ア ナログ指針では、回転状況より正常であるか否かを判断したりするので重要な役割をしている。
当然、ガスの計量にも用いられるが、今日では計量ドラム軸にエンコーダーなどを取りつけ、パ ルスを発生させて自動計測することが多い。
2-4-7 温度・圧力計(センサー)
(1)温度計
通常、液温とガス温(入口側)が計測出来るようになっている。棒状のアルコール温度計を一 般的に使用しているが、基準器や高精度を求める場合は、水銀式を使用している。なお、基準器 には温度変化量を%で表示した温差補正計が用いられている。ガス体積は、温度によるシャルル の法則に則り、もっとも大きく影響することから、温度計の精度が問われる。
また、近年では自動計測化と精度の向上のため、白金測温抵抗(Pt)温度計も多く用いられる ようになってきている。
(2)圧力計
一般には、水柱マノメータが用いられている。大気圧近傍で計量する場合は、ボイルの法則に より誤差への影響は温度に比べ非常に小さい。むしろ、このマノメータで同一流量のときにメー タの抵抗の変動がないかをチェックするためのものとして、重要な役割である。温度センサー同 様、近年では自動計測のために微圧力センサーを用いる場合がある。
(3)大気圧計
ガスをある基準に換算(例えば、0℃1気圧の標準状態)する場合は、大気圧計による圧力補正 が必要である。湿式ガスメータのような実量式同士の比較校正では不用である。今日では、ほと んど使用されていない。しかし、前者のような場合は高精度の大気圧計が必要である。
2-4-8 その他 (1)液面調整器
封液がオイルの場合には、液面調整をするための機構を付加している。一般には、基準器タイ プに装備している。
(2)軸受機構
通常、ドラム軸を支え回転をスムーズに伝達するためにドラム軸の前後はボールベアリングが
用いられている。微小流量計測用では、ベアリングの負荷トルクが精度に影響するために、ボー ルレスの樹脂軸受(ルーロン)が使用されている。
(3)スタフィングBOX
一般には、締付力の小さいオイルシールにより封液の流出を防止している。封液にオイルを使 用する場合は、オイルシールの劣化によりオイル漏れが生じる懸念があることから、マグネット カップリングを使用する場合もある。但し、マグネットカップリングは磁力の低下により、回転 伝達が不規則(ギクシャク)になる場合がある。
(4)水平度調整ねじ
メータ本体を3本の調整ネジで支え、そのネジを調整してメータの水平を出すためのものであ る。
(5)送気管(吹込管)
ケース前室に入ったガスを計量ドラムに送るための、U 字型のパイプをいう。このパイプ内に 水か貯まるとガスが流れなくなり、いわゆる不通の状態になる。この水を抜くのが送気管(吹込 管)水抜きプラグである。
2-5 ガス体積(流量)の求め方
2-5-1 はじめに
本研究で扱うガス体の範疇は、圧力は大気圧近傍、温度は常温(-20〜+40℃)近く、ガス体は 空気・窒素等の不活性ガスを主に考えていることから、気体の分子力に分子間ポテンシャルの存 在しない状態で、理想気体の状態方程式PV=RT(Rは気体定数)が成立するものと仮定する。
したがって、ファン・デル・ワールスの状態方程式を必要とするような気体は除外して議論を進 める。 3) 4)
2-5-2 計量法を中心とした計量方法(比較法) 5) 6)
Fig. 2-14 Wet Gas Meter to Wet Gas Meter for Calibration Layout
誤差(器差)の計算は、ガスメータの指示量を受検器の状態量に換算して行う。
E :受検器の誤差(器差)(%)
I :受験器の指示量(L)
Q :ガスメータの指示量(L)
Es:ガスメータの誤差(器差)(%)
TI:受検器を通過する空気の温度(℃)
TQ:ガスメータを通過する空気の温度(℃)
tI:受検器を通過する空気の温差補正計の読み(%)
tQ:ガスメータを通過する空気の温差補正計の読み(%)
PI:受検器を通過する空気の圧力(Pa〔abs〕) PQ:ガスメータを通過する空気の圧力(Pa〔abs〕)
pI:受検器を通過する空気の圧力(Pa〔abs〕)を100Paを0.1%として 換算した値(%)
pQ:ガスメータを通過する空気の圧力(Pa〔abs〕)を100Paを0.1%として 換算した値(%)
PSI:受検器を通過する空気中の水蒸気の分圧(Pa〔abs〕) PSQ:ガスメータを通過する空気中の水蒸気の分圧(Pa〔abs〕)
pSI:受検器を通過する空気中の水蒸気の分圧(Pa〔abs〕)を100を0.1%として 換算した値(%)
pSQ:ガスメータを通過する空気中の水蒸気の分圧(Pa〔abs〕)を100を0.1%として 換算した値(%)
受検器の誤差(器差)は、ガスメータの器差を補正して
E= ×100
I− 1+ ΔT
(
273 ΔP(
PI
ΔPS
PI ・ 1− 100
ES
− +
( (
Q
ΔT
(
273 ΔP(
PI
ΔPS
PI ・ 1− 100
ES
− +
( (
1+ Q
・・・(2-10)
これを展開すると、
E
{
= I −1{
×100
≒ Q I−Q
×100+ES− ΔT
273 ×100+ ΔP
PI ×100− ΔPS PI ×100 ΔT
(
273 ΔP(
PI
ΔPS
PI ・ 1− 100 ES
− +
( (
1+ Q
・・・(2-11)
のごとく、簡単な加算式で求められる。
さらに、第3項は温差補正計を使用することにより
×100=TTQ−TI Q−TI 273
とすることができ、さらにPI≒100kPaとして、ΔP、ΔPSをそれぞれ100Pa=0.1%とするこ とにより
×100=PPI−PQ I−PQ , ×100=PPSQ−PSI SQ−PSI ・・・・・・(2-12)
PI PI
とすることができ、最終的に器差計算式は簡略化して
E= ×100+EI−Q S+(tQ−tI)+(pI−pQ)+(PSQ−PSI) ・・・・・・(2-13)
Q となる。
2-5-3 質量を基準とした計算方法(絶対値法)
Fig. 2-15 Non Volume Meter for Calibration by Wet Gas Meter's Layout
E= ×100 I−Q ・・・・・・・・・・(2-13)
Q
Qn= × 1− Qf ・・・・(2-14)
飽和水蒸気圧の取得
飽和水蒸気圧(Ps)は温度情報から計算で求める。
温度(t℃)と飽和水蒸気圧(Ps)との関係式は、水蒸気圧表より求める。
Antonieの式 logPs=[7.203−{1735.74/(t+234)}] 水蒸気圧補正量yは
y=Ps×k=10[7.203−{1735.74/(t+234)}]×k(%) ・・・・・・・(2-15)
ノルマル、水蒸気圧補正の演算式
演算式 Qn= × Qf ・・・(2-16)
Pa+Pm−(Pst−Ps)
Pabs
Pa+Pm−(Pst−Ps)
273.15+Ts
E 1 Tabs+Ts
Tabs+Tf
273.15+Tf 101325
Ts :Ts℃、1気圧の流量に換算して出力を補正するための基準温度 Tf :測定温度
Pa :大気圧
Pm:湿式メータ入り口圧力
Ps :Ts℃、1気圧のときの飽和水蒸気(蒸気圧補正なしの場合、0を代入する)
Pst:t℃、1気圧のときの飽和水蒸気圧(Tfより算出蒸気圧補正なしの場合、0を 代入する)
Qf :湿式メータの流量出力(補正入力)
Qn:Ts℃、1気圧の補正出力
2-6 計量体積と誤差要因の考察
2-6-1 ドラム構造による液面調整
ドラムの1計量室のガスの入口が液面に接して、ガスの流入が停止してから出口が液面上に出 てガスが排出されるまでは、ガスは計量室内に閉じ込められている。このとき、ドラムの液面上 の体積が増加したり、減少したりする。
すなわち、計量中のガスは強制膨張、または強制圧縮を受けることがある。したがって、計量 室内の液面は上昇したり、または下降したりする。(2-2-3項参照)
もし、ちょうどこのガスが閉じ込められた位置でドラムを停止し、液面調整を行うと、入口、
出口側は大気に通じて等液位になっても、この計量室内の液面はほかと同じにならない。
そのため、入口、出口側の大気に通じている部分の液面は、計量室内にガスが閉じ込められな い位置でドラムが停止したときの液面と異なった位置になる。
これを避ける方法のひとつとしては、ドラムと目盛板の指針との回転比を正しく整数比とし、
ある指針の位置に対し、ドラムの位置が一定するようにして、ガスを計量室内に閉じ込めないド ラムの位置を指針の位置によって決めている。
しかし、実用面においては、一定指針位置で止めないで使用している場合が多く見られるので、
実液面と見かけの液面に差異が生じ、計量誤差となる。
2-6-2 液面の低下
封液に水を用いて使用しているとき、いつのまにか水面が下がっていることを発見することが ある。これは、水の蒸発によるものであり、水位の低下による誤差はマイナス方向(体積大)に 移動する。さらに水位が極端に低下し、ドラムの貫通水位をこえた場合は、ガスを計量しないで 出口に逃げるので、誤差は大幅にマイナス方向に移動する。このことを通り抜け現象という。
(1)封液にオイルを使用しているときは、水と比べ温度による膨張係数が大きいので、温度が上
がると液面が上昇、誤差はプラス(体積小)移動する。したがって、封液にオイルを用いる場合
は、恒温室での計測が望ましい。
それに比べて、水を用いた場合は、温度による体積膨張率は小さいので、温度変化による水面 の変動は少ないが、前述のとおり、蒸発および水蒸気圧の体積変化による誤差が生じる。
これらのことから、現在精度を要求する湿式基準器、特に膜式ガスメータの検定用基準器には 封液はオイルを用る。この封液については、詳しくは第7章で議論することにする。
(2)計量法では、このような水位による誤差を防止するため湿式基準器の水準器はメータのケー
ス本体3ヶ所に水準線マークを入れ、運搬途上の破損および経時変化の影響を受けないようにな っている。いわゆる水盛り式水準器である。この水準器については、誤差の再現性に大きく影響 するので、別途詳しく述べることにする。(Fig. 2-18参照)
2-6-3 水準器の精度と設置姿勢誤差
ガスメータの水準器には、一般的に気泡管式を用いているものが多く、これらは経時変化と固 有の感度特性を有している。したがって、水準器が故障した場合は水準器のみを取替、修理して もメータ本体の水平の復元はできない。したがって、水準器取替後、校正を必ずしなければなら ない。(Fig. 2-13参照)
2-6-4 流速の変化
流速変化に対する抵抗の変化の大きいものや、乾式ガスメータのあおり(脈流)を受けて封液 が変化すれば、計量体積が変化する。
以上に述べたように、ドラムのガスの入口がまさに閉じようとするときの液面の高さの変化は 計量体積に大きな影響を与えるので、液面の位置の影響の少ない形状のドラムを用いることが良 い。(具体的には、死点の回転角が小さいこと)
2-6-5 指示機構の影響
また、メータの液面を変えないのに計量体積がばらつくメータがあるが、これらは指示機構に よるものとドラム自体による場合がある。その要因として、以下の4点が挙げられる。
(1)目盛板と指示軸との偏心
(2)指示機構における駆動軸と被駆動軸との偏心
(3)歯車のかみ合わせ不良
(4)歯車のピッチ誤差
指示機構による原因は非常に多い。指示機構による計量体積のバラツキは少ない。
しかし、湿式基準器の場合は、発信機構を内装して自動計測が原則である。他にパルス発信取 出し、特に細かいパルスを取出している場合は発信パルス数の確認を行うことが大切である。ま た、計測チェックを時々実施しなければならない。
2-6-6 ドラムデッドポイントと液面変動 8),9)
ここでは、湿式ガスメータが基準器(標準器)として使用するための精度の向上に関する新た な解析を試みる。
2-3-3項で、液面の変動量がガスの計量体積に即影響を及ぼすことを述べた。
入口羽根が液面に没し始めたときから、次に出口羽根が液面から出始める間、ガスは1つの計 量室に完全に閉じ込められている。しかもその間は、他から入ってくることも、出て行くことも ない。この状態を死点(デッドポイント)という。
普通、4室(4枚羽根)の計量ドラムにおいては、デッドポイントが4ヶ所ある。ここでガス を完全にシールすることが湿式ガスメータの特徴である。一回転に4ヶ所、すなわち90度ごとに 発生する。Fig.2-16 は、湿式ガスメータの一つの計量室を分かり易くするために、擬似的に羽根 の回転を上下運動として表わしている。また、入口側の液面は説明上、基準液面に固定している ものとする。P1は入口圧、P2は出口圧、Δhは基準液面との差を示す。
A A A A
基準液面 液面
(b)
吸気完了
(c)
排気寸前
(d)
排 気 (a)
吸 気
Fig. 2-16 Dead Point of Measuring Drum
(a)は、入口羽根が開いていてA計量室への吸気が完了しようとしているところである。(吸気)
(b)は、入口羽根が液面に没し始めた瞬間で、出口羽根はまだ液面に没している。(吸気完了)
(c)は、入口羽根がさらに液面に没している。出口羽根は液面から出始める瞬間にある。
(吸気完了)したがって、(b)〜(c)間をデッドポイントという。
(d)は、入口羽根はさらに液面に没している。出口羽根は液面より出始めたところで、A計量室
から排気が始まったところである。(排気)
このとき、液面差Δh は最大となっているため、A 計量室内に一気に封液が流れ込み、液面の 揺動が発生する。
通常、入口側液面hinと出口側液面houtとの差とは、(2-4)式より低流量では小さく、大流量 になるにつれて2次曲線的に増大してくる。この差が計量体積の減少に繋がり、誤差(器差)曲 線は流量の増加に伴いマイナスになる。いわゆる、誤差(器差)の右下がり現象が生じるのが一 般的特性である。
しかるに、(b)、(c)のデッドポイント間では、計量室Aのガスは液面の変動により、強制圧縮ま たは強制膨張を受けることがある。したがって、計量室 A 内の液面は上下に揺動する。しかも、
Δh は大流量になるにつれて増大するので、液面の揺動は激しく、精度の低下に繋がる。また、
大流量のときは、回転速度が速いので次の計量室Bが直ちにデッドポイント位置に来るので、液 面が揺動したままの状態で次の計量室Bを決定する。順次これを繰り返すので、計量精度は低下 する。このことから、湿式メータの精度を向上させるためには、低流量から大流量に至るまで平 均出入口液面差Δh を小さく、かつ液面の揺動が小さくなるような工夫が必要となる。デッドポ イントの間、回転モーメントは低下し、液面の(この間最小値)計量体積は増大する(この間最 大値)。(回転分析より)一般的に、駆動トルクが小さいと、液面変動が激しい。
圧 縮
P
1A
P
2 見かけの液面Δh 最大となる 基準液面
貫通液面
排気のとき圧縮ガスが急に 拡大する(爆発)
Fig. 2-17 Gas Condence in Dead Point of Drum
したがって、Δhが常に小さく、液面の揺動の少ないメータ構造、ドラム構造が好ましい。
また、湿式ガスメータの液面調整のときにドラムの停止位置(指針)および停止スピードはΔh が最小となる位置とスピードが好ましい。すなわち、液面計の液位が低下した状態でスピードは 遅い方が良いといえる。
2-7 計量誤差
2-7-1 水準器による湿式ガスメータの誤差(器差)の影響
(1)はじめに
湿式メータ(基準器)の計量体積精度、特に体積誤差の再現性の要因として大きく分類すると、
計量ドラム本体によるもの、そして計量ドラムを取り巻く周辺によるものが考えられる。後者は さらに、①液面の変動によるもの、そして、②測定環境(水蒸気圧発生なども含む)によるもの に分類できる。特にここでは、①の液面の変動、中でも液面計による誤差を主に湿式メータの設 置姿勢(据付)、移動による再現性について考察を試みる。
(2)封液の液面管理と誤差について
1)液面管理と設置姿勢誤差の現況
①湿式メータは今まで述べたとおり、液体(水、またはオイル)と置換してガスを正確に計量 できことが主たる特徴である。したがって、現在計量法において湿式基準器が認められている。
しかし、今日湿式基準器の誤差の再現性、中でも基準器間の差が問題視されている現状下にある。
本項では、設置移動と液面計、水準器の感度と関係にについて解析を試みる。
1993年新計量法移行時の各ガスメータメーカー調査報告では、同一標準(ベルプルーバー)
とトレサビリティされた10L型基準器の誤差(器差)のバラツキは、0.8〜1.2%生じていること が大きな問題とされている。(同一工場内)
②湿式メータの誤差を小さくするためには、置換液の液面を正確に設定できる構造の液面計で なくてはならない。通常、単式計量ドラムを用いた10L型では、液面(液位)が 1mm 変動す ることによる誤差(器差)の変動は、過去の実績より約0.4%程度である。これは、先の2-3-5項 で述べたとおり、計量ドラムの大きさ(ボリューム)により異なり、小型になるにつれて、同一 液面変動では、誤差変動は増大する傾向にある。
2)液面計による固有の誤差について
①現在、湿式基準器に採用されている液面計は、前述Fig.2-12のとおりピンポイント方式が主 流である。この方式は、現在の液面計では最も精度が良く、個人差にる液位の設定誤差は比較的 少ない。液面計による設定個人差によって生じる液面変動は、仮に大きく見積もっても0.5mm以 内と思われる。また、専任の取扱い者が行う場合は、さらに0.1mm以内に設定可能である。した がって、10L型において専任者で最大でも0.4%×0.1=0.04%以内の液面計による誤差(器差)の 再現性が生じることになる。液面計自体による液面調整誤差は、実用上非常に小さく、専任者が 行う場合は問題がないといえる。
(3)気泡管式水準器による誤差発生について 10)
a. 前述の液面計固有の誤差と水準器の精度による設置姿勢誤差の二つの要因により、液面精度 が決定し、移動による誤差(器差)の再現性が決まる。湿式ガスメータの設置再現性でこの2点
が特に重要である。
b. 現在主に用いられている水準器は、①気泡管式水準器がある。この水準器は、建築用の低感 度のものから、高感度のものに至るまで幅広く一般には使用されている。湿式メータで使用され ているその感度は、1.745(360 秒)、0.864(180 秒)、0.484mm/m(100 秒)程度の比較的高 感度のものである。この水準器の感度とは、気泡を1目盛(2mm)偏位(δ)させるのに必要な 角度をいう。この傾斜は底辺1mに対する高さ、または角度秒で表わす。(JIS-B-7510)
7)
偏位δは次式で表わす。
δ=tanθ″×1000 ・・・・・・・・・・・(2-17)
したがって、例えば、現在の10L型(角型)湿式基準器の液面計の装置している位置が、水準器 に対してほぼ200mm離れて付いている。(2-17式より)
(1)感度1.745(360 )の場合は、 1.745 ×200/1000=0.349mm (2)感度0.4848(100 )の場合は、0.4848×200/1000=0.097mm
それぞれ変化をもたらすことになる。しかも、左右方向だけでなく、前後方向にも同様の変化が 相乗される。すなわち、10L型の場合、水位変化は1mmで0.4%あるから、
(1)の場合は、0.349×2=0.698mm・・・・・・ 約±0.3%
(2)の場合は、0.097×2=0.194mm・・・・・・ 約±0.1%
(1)の場合、液面それ自体のバラツキ誤差0.1mmとすると、姿勢誤差は(2-18)式を得る。
(0.32+0.12)0.5=±0.316%→×2・・・・・・・・・(2-18)
=0.63%
感度1.745(360 )のものでは、±0.3%、0.4848(100 )のものでは約0.1%の設置誤差が生じ
ることになる。その上、液面計自体の誤差を含めると、
(2)の場合の姿勢誤差は
(0.12+0.12)0.5=±0.141%→×2 =0.28%
したがって、設置における最大誤差はその他要因も含めると、以下の数値がバラツキ範囲とし て考えられる。
(1)1.745(360 )のものでは0.6〜0.9%、(2)0.4848(100 )のものでは0.3〜0.5%の誤差が生じ ることになる。
湿式基準器の機械的寿命期限がなく、30〜50 年間使用されているものも現状としてあり得る。
30年前のことを考えると、その頃は湿式基準器のメーカも数社あったことからして、感度1.745
(360 )、すなわち1分のものもあり得たことである。
これより考察すると、気泡管式の水準器は高感度のものを使用しなければならないといえる。
詳しくは、第3章で解析するものとする。
(4)その他の原因による液面変動
1)オイル(封液)が計量ドラムに付着することによる。ドラムの回転が止まり、液面計測時間 との関連。
2)計量ドラムを止めたとき、ドラム内に圧力が貯まり、ドラム内の液面を一部押し下げている
場合。(スタフィングボックスがオイルシールなど回転負荷トルクが大きいとなり易い。)
3)計量ドラムを止めた位置が、出入口羽根と仕切羽根の狭い間隔のところに封液の表面張力で
停止時に部分的に液位が上がる。(小型ドラムに多く顕れる。)
(5)水盛り線方式の水準器
現計量法では、基準器の水準器は水盛り線方式が義務付けられている。ケース本体の3ヶ所に 水盛り線マークを取付け、水盛りによる基準器のレベルを出す方法のものであり、原理的には安 定かつ高精度であるが、取扱い上大変難しく、メータのセッティング時間もかかる。(Fig. 2-18 参照)
6)
実使用上は、目盛り線マークの貼付方法も含めて、誤差は大きいと思われる。なお、基準器を 検査ラインに設置した場合は、現実として、水盛りマークは使用できない場合が多く、別に参考 として装着してある気泡管式水準器で水平を出しているのが実態である。しかも、気泡管式水準 器は経年変化も見られる。
以上のことから、湿式メータの液面管理は、水準器と液面計が設置移動、すなわち同一工場内 での基準器間誤差の主要因である。
Fig. 2-18 Leveling of Gauge Glass
(6)封液(水、オイル)について
1)水の場合
通常の実験用湿式ガスメータとしては、大半は封液として水を用いている。しかし、水の場合 は取り扱いは便利であるが、水蒸気分圧が発生し、計量法では湿式メータを通した空気は湿度が 95%に決められているが、実際は流量、湿式メータの回転数、導入する空気の湿度により変わる ことが考えられる。また、長時間使用していると水が蒸発し、水面が低下するための誤差が生じ
たりすることから、途中で注水したり水蒸気圧補正の必要がある。(水蒸気圧補正に付いては第8 章で述べる)
2)オイルの場合 11)
水の代わりに流動パラフィンや炭化水素系オイルなどを用いる場合がある。特に、乾式ガスメ ータを検定する湿式基準器の封液には、水蒸気圧の影響を受けないオイルを封液として、現在使 用している。
①オイル
日本計量機器工業会では、下記の内容を推奨している。 5) Table 2-3 湿式メータの封液基準
動粘度:10.5〜13.0 mm2/S(37.8℃)
比 :0.848〜0.858(15℃/4℃) 重
蒸気圧:0.6mmHg以下(37.8℃) 11.0mmHg以下(150℃)
88.0mmHg以下(200℃)
流動点:−4℃以下 引火点:155℃以上
②オイルの条件としては a. 酸化しにくいこと
(酸化しやすい場合は、計量ドラムに酸化膜が付着し、計量体積をわずかではあるが、経時的 に減少する。)
b. 長時間粘度が変化しないこと
粘度が変化すると、流体抵抗が変化し圧力損失が変わる。そのことにより、メータの経時誤差 変化に繋がる。
c. 蒸気圧が低く、かつ粘度が小さいこと。蒸気圧は通常5.5Pa/20℃以下を使用している。
d. 温度による体積変化が小さいこと、オイルは水に比べると温度体積変化は大きい。通常恒温 室にて基準器は使用しているが、生産工場の恒温室は現実には時間や人の出入により温度変化が 生じるので、温度による体積変化などの小さいことが望ましい。
e. 無臭
通常これ等の条件からシェル石油のフーサスオイルAを使用しているが、ただし、このオイル は微香が発生する欠点がある。一方、無臭の条件として、出光石油のダフニカットオイル2.5Hは 無臭でかつ酸化することもなく蒸気圧も比較的低く粘度も低く好ましいが、長時間使用している と微小の液の減少(蒸発)が見られる。
f. これらの石油系オイルは、第3石油類に該当し、消防法により保管量を届け出なければなら ない。
g. シェルフーサスオイルも多く使用されている事実はあるが、既に石油メーカで生産を中止し ている。湿式メータの適正オイルの選定については、第7章で議論する。
2-8 誤差要因解析(不確かさ)
2-8-1 誤差要因
湿式ガスメータの誤差要因についてまとめてみると、Fig. 2-19に示す通り、大きくは7通りに 分けられる。以下、従来の実績を基にそれぞれの現状誤差を推定してみる。
10)
(1)設 :0.01〜1.0% 置 (2)液 :0.05〜0.6% 面 管 理 (3)環 :0.02〜1.0% 境 (4)計 :0.05〜0.3% 測 (5)計 量 ド ラ :0.02〜0.5% ム
(6)封 :水の場合は液 0.15〜3%、オイルの場合は0.01〜0.3%
(7)カウンター・ケース:0〜0.2%(但し、発信器の異常の場合は数%に及ぶ可能性もある。)
最小誤差を算出すると、封液が水の場合は0.17%、オイルの場合は0.06%。最大誤差はそれぞれ 3.42%、2.5%となった。従って、水による誤差が最も大きい。これは、水蒸気分圧によるガスの 液化および気化による体積変化や、水蒸気圧補正を実施していないことによるものである。
Fig. 2-19 Error Caused Analysis of Wet Gas Meter 2-8-2 誤差要因の考察
取扱いとメータ自体、そして環境取扱いに分類すると、以下の通りとなる。
(1)メータ本体の誤差
計量ドラムによる誤差の再現性が主で、通常のメンテナンスが実施されていれば、誤差は0.1%
程度で小さい値である。2-8-1項の(5)、(6)、(7)より誤差を算出すると、0.02〜0.61%である。
(2)取扱いの誤差
液面管理、メータの設置誤差が主で、温度計、圧力計および手動計測の場合の指針読み誤差が ある。特に、これらから湿式ガスメータの取扱い者による誤差が大きい。中でも水封式の場合は、
水蒸気圧補正の有無や、取り扱い方法による誤差も大きい。2-8-1項の(1)、(2)、(4)より、0.12〜
1.20%がある。従って、湿式ガスメータで計測する場合は、取扱い者の教育が大事となる。
(3)環境誤差
ガスの体積変化は、シャルルの法則に則り、最も温度環境の影響を大きく受ける。そして、封 液が水の場合は特に湿潤ガスが露点現象を生じないように注意する必要がある。さらに、長時間 の計測にあっては、水位の低下による誤差を知らなければならない。油封式(オイル)の場合は、
水に比べて温度によりオイルの体積膨張・収縮が大きいので、温度変化に対応した液面管理が必 要である。2-8-1項の誤差の(3)項より、0.02〜1.0%の誤差がある。
2-9 まとめ
本節では、湿式ガスメータの原理・構造、主用部品の役割、および誤差特性や性能について明 確となった。また、誤差算出方法についても、比較法、絶対値法の基本について確認することが できた。誤差の主たる要因は、液面計と水準器の感度による誤差が設置移動による誤差の要因と なることが明確となった。そして、計量ドラムのデッドポイントと液面調整誤差の要因も解明し た。
誤差(不確かさ)の要因を大別すると、湿式メータ自体では 0.1%、取扱いによる誤差は 0.12
〜1.2%の幅があり、取扱い者の教育が大事であること、そして、環境による誤差は 0.02〜1.0%
であり、特に水蒸気圧補正の影響力が大きいので、水封式湿式ガスメータを使用する場合は、正 確な水蒸気圧補正が必要であることがわかった。湿式ガスメータの推定最高精度(不確かさ)は、
油封式で0.06%、水封式で0.17%である。
参考文献
1) (株)シナガワ:湿式ガスメータカタログ,2001.1
2) 穂坂光司:「容積」,計量協会編,78/79,コロナ社,1966 3) 谷崎義衛:気体の話,培風館,1988年3月
4) 西川勝,気体分子運動論,共立出版株式会社,1987年10月
5) (社)計工連:009気体用流量計器差試験方法,計工連,解1/解9,1995.4 6) 通商産業省計量行政室:新版 計量関係法令規集,2001.9
7) 森野安信:水準・地形・応用測量(改訂版),11/5,市ヶ谷出版社, 1992.12 8) 森田泰司:流体の応用とその応用機械,1/70,東京電気大学,1986.1
9) 川田,小室,山崎:流量計測ハンドブック,169/218,日刊工業新聞社,S54.7(1979)
10) 栗村、板倉:輸送における湿式ガスメータの器差変化,29-4,6/69,計量研究所,1980 11) (社)日本計量機器連合会:流量計測のA to Z,1995年9月