求表出支援とNIRS支援評価に関する検討
著者 渡邉 流理也, 内山 幹雄, 小池 敏英
雑誌名 東京学芸大学紀要. 総合教育科学系
巻 57
ページ 189‑198
発行年 2006‑02
その他の言語のタイ トル
The Support of Requests by Acquisition of Chaining of Figural Symbols and Evaluation of the Support by NIRS in Persons with Profound Retardation
URL http://hdl.handle.net/2309/1472
* 東京学芸大学(184-8501 小金井市貫井北町4–1–1)
** 川崎医療福祉大学(非常勤)(701-0193 倉敷市松島288)
東京学芸大学紀要 総合教育科学系 57 pp.189〜198,2006
1 .はじめに
近年,重症心身障害児(以下,重症児とする)の療 育活動は,「参加」や「自立」といったことに重きが置 かれ始めている。平成11年の学習指導要領の改訂にお いても,重症児へ適切に指導が行えるように,「養護・
訓練」が「自立活動」へ改められ,内容についても見 直しがされた。その内容では「コミュニケーション」
に関する比重が高くなっており,また重症児の教育課 程では自立活動を主とすることからコミュニケーショ ンの指導の必要性が高まっていることが指摘できる。
重症児は,重度の知的障害と運動障害のため,言語 や行動によって応答表出が著しく制限されるため,意 思表出が不明瞭であったり困難になる。それによって,
周囲の介助者の理解が難しく,コミュニケーションが 制限される。しかしながら,継続的な指導の過程で
「舌出し」という特定の行動によって快を表出できるよ うになった事例の報告(高木ら,1998)や,スイッチ 操作の指導により選択することが可能になった事例
(中島ら,1997)など,長い期間にわたって指導を重ね ることによってコミュニケーション能力が改善された という報告もなされている。また,養護学校在籍の重 症児100名におけるコミュニケーションの内容につい て調査し,顔の向きや表情および発声によりYesとNo を表出できる児が28名おり,高いコミュニケーション 能力を有していることが上村ら(1999)によって報告 された。これらの報告は,重症児が表出手段を獲得す ることによって,コミュニケーション範囲が拡大する
可能性を示唆している。この重症児のコミュニケーシ ョン範囲の拡大については,AAC(Augmentative and Alternative Communication)の導入を通して報告がなさ れている。高泉ら(1999)は,上下肢および舌の随意 運動によるポインティングやスイッチ操作が可能な重 症児者を対象としてAACを導入し,対象児者は自分の 意思を自ら決定することが可能になると,自分の意思 決定が受けいれられた安心感から,意欲や自己主張が 向上したことを報告した。またAACによるシンボルや サイン獲得についての指導事例の報告もなされている。
Udwinら(1990)は,イギリスの特殊学校の言語障害
がある脳性まひ児40人を対象として,ブリスシンボル とマカトンサインの2つの補助コミュニケーション指 導を長期にわたって行い,獲得したシンボルまたはサ インについて検討を行った。その結果,ゆっくりでは あるが,全対象児においてシンボルやサインが獲得さ れたことを報告した。土松(2001)は,7年間にわた るシンボル使用のコミュニケーション指導によってシ ンボルの数は増加したが,会話が持続しなかった脳性 まひ児を対象として,語連鎖の指導を行った。その結 果,3語連鎖が可能になり日常生活においても語連鎖 表現が可能となったことを報告した。この点について,
重症児が意思表出を促進するためには語連鎖による表 出が有効であることが指摘できる。
重症児のコミュニケーション能力を評価するについ ては,生理的指標を使用した報告がなされている(北 島ら,2000;渡邉ら,2004)。さらに近年では,近赤 外光を用いた脳機能計測法であるNIRS法による重症児
重症心身障害児における図形シンボル連鎖による 要求表出支援と NIRS 支援評価に関する検討
渡邉 流理也 * ・内山 幹雄 ** ・小池 敏英 * 東京学芸大学特別支援科学 * ・川崎医療福祉大学 **
(2005年9月30日受理)
キーワード:重症児,図形シンボル連鎖,NIRS
の評価もなされている(小池,2005;加藤,2005)。
NIRS法は,計測による制限が比較的少ないため重症児 での有効性が高い。また,コミュニケーション能力を 評価する上で,言語理解・表出に伴う言語野を含んだ 脳活動を直接計測できるという他の計測法にはない長 所をもつ。重症児におけるコミュニケーション指導の 効果について脳機能計測を用いた検討は十分なされて いない。指導によって重症児のコミュニケーションが 促進した時に,言語野周辺の脳機能の活動性の変化が 明らかになった場合には,指導が重症児の言語に関連 した能力に有効的に働いたことが推測され,言語理 解・表出といった重症児の意思表出に関する支援方法 について検討できると考えられる。
以上より,本研究では,重症児 1名を対象として,
AACによる語連鎖指導経過における言語理解・表出の 変容について検討した。その際に,指導を始める前と 全指導が終了した後の2回にわたってNIRS法の計測を 行い,指導による言語野の活動性の変化を検討した。
これらに基づき,重症児の意思表出に関する支援方法 を考察することを目的とした。
2 .方法
2 .1 対象
肢体不自由養護学校中学部に在籍する女児1名を対 象とした。主障害は脳性麻痺(痙直型四肢まひ)で,
ミオクロニー発作をもっていた。上肢には不随意運動 があり可動範囲も限られていた。指導開始時点でのCA は12歳9ヶ月であった。
明瞭な発語によるコミュニケーションはみられなか った。言語理解はあり,発声や独自のサインを利用し て他者とのコミュニケーションをとっていた。Yes/No の自発的選択は獲得できており,Yesは「はーい」や
「うん」などの発声で表し,Noの場合は舌を出すとい うサインで行っていた。その他にも,「ママ」と「セン セ(先生)」などの数個の単語を発声することが可能で,
発声やサインにより表現できる言葉は約30語であっ た。しかし,発声できる音に制限があることや,サイ ンが微細な動きで表されていることなどから,他者が 対象児の要求を正確に理解することは難しかった。対 象児は,「食べる」を「パクパク」,「飲む」を「チュパ チュパ」という口の動きで表出できた。
指導を開始するにあたってスイッチ操作に対する対 象児の動きを知るために,複数の事物から一つの事物 を対象児が選択する課題を実施した。はじめ事物の選 択は右手でスイッチを押して,決定は左手でスイッチ
を押すように設定したところ,意識的に片手を動かそ うとすると両腕が動いてしまい,右手と左手の動きを 分化させることが困難であった。このことから,右手 のみを選択するためのスイッチ押しに使用し,また発 声と舌出しによるYes/Noの反応が安定していることか ら,決定する際には発声を行うことで事物の選択を行 うこととした。研究の遂行と発表にあたっては,保護 者に説明を行い文書で承諾を得た。
2 .2 指導内容
指導は2週間に1度,2期にわたって計8ヶ月半の 間実施した。第1期は,第1回から第11回の11回の指 導から構成された。大人Aから音声で要求(例として,
「お煎餅を食べさせてもらってね」)を対象児に伝え,
対象児は大人Bに目的語のみをスイッチによって選択 し伝える指導であった。第4回から目的語を「食べる」
と「飲む」の2つのカテゴリー化した。指導者は,「食 べる」か「飲む」か口の動きで表すよう指導した。支 援プログラムは,一つの画面にシンボルが 3×3のマ トリックス上に配置され,それを左上から右下にかけ て選択マークが移動していくものを使用した。第 4回 から第11回では,対象児の口の動きで「食べる」か
「飲む」のどちらかを選択した後,3×3のマトリック ス上のシンボルをスイッチにより選択した。
第2期は,第12回から第17回の6回の指導から構成 された。大人Aから音声によって伝達された要求(例 として,「お煎餅を用意してね」)に基づき,対象児は 図形シンボルを選択し,大人Bに伝える指導であった。
使用した支援プログラムは,図1に示した。対象児は,
伝達された要求について,はじめに,4つの動作語か ら1つを選択した。次に,選択された動作語に関連し た9つの目的語を選択して伝達する文章を作成した。
指導は1試行3場面からなる課題で構成した(図2)。 課題は,毎回の指導において 6〜8試行実施した。場 面qでは,大人Aが用意してほしい事物を,対象児に 伝えた。場面wでは,介助者である大人Bに対して図 形シンボル連鎖をコンピュータで作成・表示し,対象 児がその事物を欲しているという要求表出をおこなっ た。場面eでは,大人Aが再登場し,対象児が用意し た事物を受け取ったのちに,対象児に対して謝意を表 した。この課題は,大人Aの依頼に対して対象児が独 力で対応し,大人Aから謝意を受けるという課題であ るため,対象児にとって強い達成感を伴う課題であっ た。指導中,対象児は意欲的な表情を示し,謝意に対 して笑顔を示した。
指導では,自作の支援ソフトをスイッチ(図3)で
操作し,図形シンボル連鎖で大人Bに要求を伝えた。
指導に先立ち,無強化で課題を実施した(Pre評価)。
毎回の指導について,大人Aからの要求を正確に大人 Bに伝えることができた試行を正答とし,正答数を課 題の試行数で割って正答率を算出した。
2 .3 NIRS の計測手続き 2 .3 .1 計測方法と記録
ヘモグロビン(Hbと記す)濃度変化の計測は,NIRS 装置(ETG-100)を使用し,左半球の前頭葉から側頭 葉にわたって測定部位の間隔が水平上の1bとなるよ うプローブを装着し,8チャンネル測定した。ブロー カ野に相当する左下前頭回を含む領域に,前方から数 えて,7チャンネルと 8チャンネルの中間にくるよう
に外耳道の上方5bでプローブを装着した。測定装置 とパソコンを同期させるために,刺激の呈示はすべて パソコンで行い,パソコンからパルスを発生させて,
測定装置に入力した。
2 .3 .2 計測課題
パソコンから3語文を聴覚呈示し,その文が意味的 に正しい文であるかどうかの判断を対象児に求める課 題を設定した。課題では,聴覚刺激がパソコンから呈 示され,呈示の終了から 5秒後に判断を求めた。聴覚 刺激は,「お母さんがご飯を食べました」などの正文
(意味的に正しい文)と「お母さんがご飯を歌いました」
などの非文(意味的に正しくない文)を使用した。計 測は,聴覚刺激を正文と非文で 5試行ずつランダムに 聴覚呈示し,全10試行実施した。1試行の間隔は60秒 渡邉・内山・小池:重症心身障害児における図形シンボル連鎖による要求表出支援とNIRS支援評価に関する検討
図 1 指示要求課題の指導場面及び手続き
指導場面の設定・手続きを場面①から場面③について示した。
とした。
2 .3 .3 分析
アーチファクトの混入試行を除いて,各Hb濃度変化 について,聴覚刺激の呈示時点を基準として,呈示さ れた聴覚刺激が正文の場合と非文の場合に分けて,加
算平均を行った。加算平均後,酸化Hb濃度変化と脱酸 化Hb濃度変化の差分値(O_D値と記す)を算出し,
隣り合うチャンネルを補間し,時空間マップを作成し た。健常成人が単語を聞いて反唱した直後に,脱酸化 Hb濃度変化が2〜6チャンネルで増加した(図4)。 図 2 指導に使用した支援ソフト
選択スイッチ(図 3 )を押すことで順次,選択マーク(赤枠)が移動し,図形シンボルに対応した音声が出力され た。決定スイッチ(図 3 )を押すことで図形シンボル連鎖が完成し,2 語文ないしは,3 語文が音声出力された。選 択画面 1(①)で,動作語( 4 種の図形シンボル)を選択・決定すると,自動的に選択画面 2(②)に切り替わり,
目的語( 9 種)を選択・決定できる。目的語のリストは③〜⑤に示した。
3 .結果
3 .1 指導の経過の様子
各指導の正答率を図 5に示した。また各指導期にお ける対象児の行動特徴を表 1に示した。指導前のPre
評価では,正答率は0%であった。2語文の指導であ る第 1期では,第1回と第2回の正答率はそれぞれ,
80%,25%であったが,第 3回の指導で100%に達し た。第4回からは,カテゴリー化した目的語を選択す る指導に変更したため,正答率は0%であったが,第 渡邉・内山・小池:重症心身障害児における図形シンボル連鎖による要求表出支援とNIRS支援評価に関する検討
図 3 言語指導に使用したスイッチ
マウス・ボタンの左と右を改良し,それぞれ空圧スイッチ(選択用)とボタンスイッチ(決定用)に対応させた。
図 4 健常成人における言語課題時の O_D 値の時空間マップ
単語反唱時の脳血流動態の変化を時空間マップに示した。縦軸は,各チャンネル( 1 〜 15 チャンネル)を示し,横 軸は時間経過を示した。左段の上段に酸化 Hb 濃度変化を,下段に脱酸化 Hb 濃度変化の時空間マップを示した。また 右段は酸化 Hb 濃度変化と脱酸化 Hb 濃度変化の差分したものを時空間マップに表したものを示した。マップに示した 色は,濃くなるほど変化量が大きい事を示している。0 秒で音声刺激が呈示され,反唱した。
5回の指導では33%で,第6回から5回連続で正答率 100%を示したので,第 2期の指導に移行した。第 1 期の終了時点で,大人から 1度に 2つの要求を行うこ
とを試みたが,2つの要求を伝達することは難しく,1 つの要求のみを伝達することは困難であった。3 語文 の指導である第2期では,第11回と第12回の指導では 図 5 2 語文・ 3 語文の指導経過
指導課題の正答率の変化を示した。縦軸は正答率を示し,横軸は指導回数を示した。Pre 評価では,課題実施時に 強化を行わなかった。第 1 期(第 1 回から第 3 回まで)は目的語を選択させる指導,第 2 期(第 4 回と第 7 回)は 大人 A から対象児へ要求伝達時にコミュニケーションボード(CB)を使用し,目的語と動詞を選択させる指導,第 3 期(第 8 回から第 11 回まで)は,大人 A の要求伝達を音声のみで行い,目的語と動詞を選択させる指導であった。
表 1 各指導期における対象児の表出行動の特徴 健常成人における言語課題遂行時の脳血流動態の変化を時空間マップに示した。
75%,50%であったが,次の第13回の指導で100%を 示した。しかしながら,第14回では正答率が75%であ った。その後の第15回からは,3回連続で正答率が 100%を示したので指導を終了した。
3 .2 指導前と指導後の脳血流動態の変化
指導を開始する前とすべての指導が終了した 8ヶ月 後に計測した脳血流動態の変化を図6に示した。指導 前の測定(左段)において,正文を聞かせた場合(上 段)には,聴覚刺激を呈示後に5〜7チャンネル付近
で脱酸化Hbの著しい増加を示した。非文を聞かせた場
合(下段)には,1チャンネルでのみ脱酸化Hbの微か な増加が認められた。8ヶ月の指導後の測定(右段)
では,正文を聞かせた場合には7チャンネルでのみ脱 酸化Hbの増加が認められ,1〜6チャンネルの広範囲
で酸化Hbの増加を示した。一方,非文を聞かせた場合 では,脱酸化Hbが増加した部位は認められず,全チャ ンネルにわたって酸化Hbの増加を示した。
4 .考察
重症児は,重度の運動障害と知的障害を併せ持つた めに意思伝達行動の獲得が極めて困難である。そのよ うな児童・生徒のコミュニケーションに関して,AAC を利用した指導について行動特徴の変化を中心として 指導効果が検討されてきたが,指導経過の行動特徴の 変化と生理学的変化とをあわせて検討した報告はほと んどなされていない。本研究では,AACを利用した語 連鎖による言語理解・表出の変容について,行動上の 変化と脳機能の活動性の変化について,重症児 1名を 渡邉・内山・小池:重症心身障害児における図形シンボル連鎖による要求表出支援とNIRS支援評価に関する検討
図 6 指導前と後での脳血流動態の変化の相違
指導前と指導後について,課題遂行時の脳血流動態の平均加算波形の O − D 値の時空間マップを示した。縦軸に,
測定部位( 1 〜 8 チャンネル)を示し,横軸に時間(刺激前 5 秒から刺激後 15 秒)を示した。聴覚刺激の呈示期間 を で示した。左段に指導前,右段に指導後を示し,それぞれ上段が正文を聞かせた場合の応答を示し,下 段が非文を聞かせた場合の応答を示した。マップに示した色は,濃くなるほど変化量が大きい事を示している。
対象として縦断的に検討した。
対象児は,指導開始前では,正答率が0%であった が,第1期の指導に入り3回目で正答率が100%に達 した。4回目からは,選択事物をカテゴリー化して指 導を行ったが,2回の指導ですぐに100%に達した。ま た第 2 期の指導においても,4 回の指導で正答率は 100%に達した。本児は,学校・家庭など生活での場 面では指導課題のようなことはほとんど行っていなか った。このことより指導課題が対象児に対して比較的 適していたことが支持される。土松(2001)は,音声 表出が困難である脳性まひ児を対象として,パソコン を使って語連鎖表現を高めることを目的としたコミュ ニケーション指導を行った。指導は,パソコン画面上 に呈示される動画の意味内容を,2語(「動作主+動作」
または「対象+動作」)または3語(「動作主+対象+
動作」)の語連鎖で表現するものであった。その結果,
語連鎖を利用した表出が可能となったことを報告した。
この指導は,対象児は呈示された動画の意味内容を表 現することが課題で,対象児と他者とのやり取りは含 まれていない。また高泉(1997)は,音声言語表出が 未獲得な重症児1名を対象として,音声や身振りの理 解を中心とした指導を行い,その結果Yesを表す身振 りの表出が活発化したが,絵カードを日常場面で言葉 や状況に合わせて選択することやカードにより要求表 出するのは困難であったことを報告した。これらの報 告は,意思表出の相手が存在しない状況では,相手に 伝達することの必要性を理解することが難しいことを 示している。また,意思表出した結果による周囲の変 化を理解することが困難であることが指摘できる。つ まり,他者とのやりとりがない場合には,メッセージ の発信者と受手の関係を理解することが困難となるこ とが考えられる。この点について,本研究では,他者 とのやりとりを必要とした状況で,語連鎖による意思 表出を行う課題を設定した。これにより,対象児が他 者から要求を受け,意思伝達の受け手になり,その要 求をさらに別の他者に伝えるということで,意思伝達 の送り手になり,メッセージ発信者と受手の理解が可 能になると考えた。また,要求がかなうことにより,
対象児は自らの意思表出が周囲の状況に変化を与える ことが理解できると考えた。指導は,日常生活ではほ とんど経験がないような場面の設定であったが,数回 の指導で正答率が100%になったのは,他者とのやり とりの中で語連鎖表出を行ったことが有効であったこ とが指摘できる。
指導前後のNIRS法による脳機能の応答性の変化につ いては,指導前では正文において後方部位の広範囲に
わたって脱酸化Hb濃度の増加が観察されたが,指導後 では 7チャンネルにのみ脱酸化Hb濃度の増加が見ら れ,応答性が限局した。また非文については,指導前 では1チャンネルで脱酸化Hbの増加がわずかに見られ たが,指導後では脱酸化Hb濃度の変化が見られなくな った。指導後に脳活動の応答性が限局した部位で認め られたことから,指導に伴い言語理解・表出が改善し,
活動部位が限局した可能性が指摘できる。したがって,
対象児の行動的変化は指導経過で観察されたが,生理 的変化も生じたことが示され,行動面と生理面の評価 から指導が効果的であったことが確認できた。
本研究では,指導の設定が比較的対象児に適してお り,またそれにより指導前後での脳活動の応答性の変 化を検出できた。しかしながら,重症児の障害様相が 様々であることから指導課題の設定は難しく,また重 症児は応答が微弱であることから,行動表出のみによ って言語指導の方向性を示すだけではなく,認知や言 語理解の評価とあわせて検討することが重要であるこ とが考えられる。この点については,生理的指標を利 用した言語理解・表出に関する評価と行動上での評価 との対応について研究が必要であり,今後の課題であ ろう。
5 .文献
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渡邉流理也,小池敏英,加藤俊徳,鈴木康之(2004):視覚障 害を伴う重症心身障害児における期待心拍反応の生起と 脳形態所見との関係.日本重症心身障害学会誌 29,231_
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渡邉・内山・小池:重症心身障害児における図形シンボル連鎖による要求表出支援とNIRS支援評価に関する検討
*
Tokyo Gakugei University (4-1-1 Nukui-kita-machi, Koganei-shi, Tokyo, 184-8501, Japan)**
Kawasaki University of Medical Welfare (288 Matsushima, kurashiki-shi, Okayama, 701-0193 Japan)The present study aimed to examine the change of language comprehension in a person with profound retardation after the training of expression of request by chaining of figural symbols. Language comprehension of the subject was evaluated by measuring the brain oxygen consumption using near infrared spectroscopy (NIRS) at two times, before and after the training. The subject had limited receptive language ability. The subject was trained at two weeks intervals, over a total period of 8.5 months. In each training session, trainer A asked his request to the subject who transmitted a message of trainer A to trainer B. At first, the subject made a sentence of two words by figural symbols, after 6 months passage, she made a sentence of three words by figural symbols. Result and discussion were as follows:
(1) At the commencement of the training, the subject conveyed no correct message to trainer B, but the subject communicated trainer B correctly after two sessions of training. This indicated that the subject had ability to comprehend relationship between rolls of a sender and a receiver at the beginning of training and recognized the importance of expressing intension.
(2) Compared results before the training with those after the training, the change of the brain oxygen consumption tended to localize at the region around the Broca’s area. It was suggested that progress of localization of brain’s response might reflect subject’s language comprehension by the training.
The Support of Requests by Acquisition of Chaining of Figural Symbols and Evaluation of the Support by NIRS in Persons with Profound Retardation
Ruriya WATANABE*, Mikio UCHIYAMA**, Toshihide KOIKE*
Tokyo Gakugei University, Department of Education for Children with Handicap * Kawasaki University of Medical Welfare **
Key words : a person with profound retardation, figural symbols, near infrared spectroscopy