小学校学習指導要領の国語科の目標の変遷
著者 大越 和孝
雑誌名 東京家政大学研究紀要 1 人文社会科学
巻 40
ページ 53‑63
発行年 2000
出版者 東京家政大学
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00009041/
〔東京家政大学研究紀要 第40集 (1),p.53〜63,2000〕
小学校学習指導要領の国語科の目標の変遷
大越 和孝
(平成11年9月27日受理)
The Transition of COURSE OF STUDY, Japanese Objective
Kazutaka OGosI
(Received on September 27,1999)
1 『小学校学習指導要領』の性格
『小学校学習指導要領』は,昭和22年の新学制による 教育制度によって初めて登場して以来,50年有余の歴 史をもっている。この間,昭和26年,昭和33年,昭和 43年,昭和52年,平成元年,平成10年と6回の改訂を 行っている.
7回の『小学校学習指導要領』における,国語科の教 科目標(全体目標)を分析,検討することによって,国 語科教育の目標の変遷を概観し,国語科がどのような方 向に進もうとしているのかを考察することが,本小論の ねらいである.
(1)『小学校学習指導要領』の性格
『学校教育法施行規則』Dの「第二章 小学校」の
「第二節 教科」の第二十五条には,「小学校の教科課程,
教科内容及びその取扱いにっいては,学習指導要領の基 準による.」とある.
このことからも明らかなように,学習指導要領は,教 育課程編成の上での国家の規準であり,従わなければな らない性格をもっているということになる.したがって,
その内容を無視した,教育課程の編成や学習指導は,学 校教育においてはできないということになる.
けれども,「学習指導要領」という名称は,米国の教 育使節団が提示した「Course of Study」を訳したもの であるというのは,よく知られているところである.そ の意味するところは,学校教育における教程を表してい て,児童が学習すべき内容や方法を順序よく配列したも のであると,一般的にとらえられている.
このような考え方に立つと,この名称が2),必ずしも
適切ではないという指摘のあることも肯定できる.
② 国語科の目標の背景
国語科の教科目標は,6回の改訂ごとに大きく変わっ たり,部分的に変わったりしているが,根本理念には一 貫性があると見傲すことも可能である.
それは,教科目標の基盤として,『学校教育法』3)の中 の「第二章 小学校」の第十八条に「小学校における教 育にっいては,前条の目的を実現するために,左の各号 に掲げる目標の達成に努めなければならない.」とあり,
「四 日常生活に必要な国語を,正しく理解し,使用す る能力を養うこと.」とあるからである.
理解にのみ「正しく」という修飾語が係るとは考えに くいので,「正しく理解する能力」「正しく使用する能力」
という趣旨ではないかと思われる.そうであるならば,
「正しく,理解し使用する能力」という読点のほうが適 切だと思われるが,いずれにせよ,この目標をふまえて,
国語科の教科目標は作成されてきている.
教科目標の表現の違いは,改訂時の思潮や,「日常生 活に必要な国語」「正しく理解する能力」「使用する能力」
をどのように考えるかが反映していると言えよう.
2 『小学校学習指導要領』の目標の変遷
児童学科 初等教育第1研究室
(1)昭和22年版『学習指導要領』(試案)
昭和22年12月15日に,文部省の著作図書という形で 刊行されている.小中学校が一冊の本となっている.
①教科目標
この指導要領は,26年版よりは分量(文字量)は少な いが,現在のものに比較するとかなりのものである.し たがって,目標についての記述もかなりある.
「第一章 まえがき」の「第二節 国語科学習指導の
目標」として,次のように記述されている.
大越和孝 国語科学習指導の目標は,児童・生徒に対して,聞 くこと,話すこと,読むこと,っつることによって,
あやゆる環境におけることばのっかいかたに熟達させ るような経験を与えることである.
ところが,これまで,国語科学習指導は,せまい教 室内の技術として研究せられることが多く,きゅうく っな読解と,形式にとらわれた作文に終始したきらい がある.今後は,ことばを広い社会的手段として用い るような,要求と能力をやしなうことにっとめなけれ ばならない.それを具体化すると次のようになる.
一 表現意欲を盛んにし,かっぱっな言語活動をす ることによって,社会生活を円滑にしようとする 要求と能力とを発達させること.
二 自分を社会に適応させ,個性を伸ばし,また,
他入を動かす手段として,効果的に,話したり,
書いたりしようとする要求と能力とを発達させる こと.
三 知識を求めるため,娯楽のため,豊かな文学を 味わうためというような,いろいろなばあいに応 ずる読書のしかたを,身にっけようとする能力と を発達させること.
四正しく美しいことばを用いることによって,社 会生活を向上させようとする要求と能力とを発達 させること.
これが総括的な目標と考えられるが,この後に続けて より具体的な下位目標を,五つの観点から35項目あげ
ている.
また,「第二章 小学校一,二,三学年の国語科学習 指導」「第三章 小学校四,五,六学年の国語科学習指 導」でも,「読みかた」「書きかた」などの領域ごとに下 学年,上学年の目標を示すという構造になっている.
②目標の分析と考察
当時,教育界全体がどのような方向を目ざしていたか は,昭和26年7月10日,文部省発行の『学習指導要領 一般編』(試案)から窺い知ることができる.
「1 教育の目標」の「2 教育の一般目標」から,
次のような文言を抜き出すことができる.
「生活に必要な基本的な知識・理解。態度・技能を身 にっけ,社会的に望ましい行為ができることである.特 にこの場合たいせっなことは,不断に真理を探究し,正 義を実現しようとする態度,絶えず生活の改善に必要な 問題を発見して,自主的に,これを解決していこうとす
る態度である.」「児童・生徒が集団生活に処して,生活 上の問題を解決し,処理し,生活を向上させていく上に 必要な資質が求められてくる.集団生活としては,学校 や,家庭生活,近隣や郷土の生活,国家生活,国際生活 などの面がある.」
これらを端的にまとめるならば,問題解決的な学力を 実際的な生活で経験させ,社会生活を営む力を育ててい
こうとしていることになる.
国語科の目標も,当然これらの目標を背景に成立し ていることになる.
教科目標の書き出しの一文を分析するならば,「国語 科学習指導の目標は,経験を与えることである」という,
主述関係になっていることが分かる.そして,どのよう な経験を与えるのかというと,「ことばのっかいかたに 熟達させるような経験」であり,どのような手段による かというと,「聞くこと,話すこと,読むこと,っつる
ことの手段によって」である.
一〜四の箇条書きにも,「言語活動」「社会生活」とい う言葉があることから明らかなように,『一般編』の
「教育の目標」と照応している.言語生活主義,経験主 義に立った教科目標であると言えよう.
石森延男の回想録に,「サゼッションは,半ば指導で あり,相談であり,半ば指示であった」とあるように,ア メリカのC・1・Eやヴァージニア州のコース・オブ・
スタディの影響が大であったことは明白である.
したがって,22年版とその改訂である26年版の試案は,
デューイの経験主義が根底にあると結論づけられよう.
② 昭和26年版『小学校学習指導要領』(試案)
昭和26年12月15日に,文部省の著作図書という形で 刊行された391ページにも及ぶ,最も部厚い小学校の国 語科の学習指導要領である.表紙に改訂版とあるように,
内容的には22年版と同じ考え方に立って作成されたも
のである.
①教科目標
「まえがき」に続いて,目標に関して,次のように項 目が立てられている.
第一章 国語科の目標
第一節 教育の一般目標は何か
第二節 小学校教育の主目標は何か
第三節 国語科学習指導の一般目標は何か
第四節 小学校における国語科学習指導の目標は何
か
小学校学習指導要領の国語科の目標の変遷
目標に関するページだけで,10ページにもなるが,
中核となる部分を抜き出してみよう.
「第三節」では,言葉の役割について,次のように述
べている.ことばはどんな役割をもっているかということにっ いて,大きく分けて,だいたい,次の三っのことをあ げることができる.
1 ことばは,互に意志を通じ合うのに,どうしても なければならないもので,社会生活をしていく上に,
欠くことのできないものである.
2 ことばは,思想や感情と深い関係のあるもので,
考えを進める上に,欠くことのできないものである.
3 ことばは,いっさいの学問や技術を学んでいく上 に,仲だちとなるものであって,文化を受け継いだ り,創造したりしていく上に,欠くことのできない ものである.
この記述の後に総括目標として,次のように述べられ
ている.以上のような役割をもったことばを効果的に使用す るための習慣と態度を養い,技能と能力をみがき,知 識を深め,理解と鑑賞の力とを増し,国語に対する理 想を高めることが,国語学習指導の目標である.
1 自分に必要な知識を求めたり,情報を得ていくた めに,他人の話に耳を傾ける習慣と態度を養い,技 能と能力をみがく.
2 自分の意志を伝えて他人を動かすために,生き生 きとした話をしようとする習慣と態度を養い,技能 と能力をみがく.
3 知識を求めたり,情報を得たりするため,経験を 広めるため,娯楽と鑑賞のために広く読書しようと する習慣と態度を養い,技能と能力をみがく.
4 自分の考えをまとめたり,他人に訴えたりするた めに,はっきりと,正しく,わかりやすく,独創的 に書こうとする習慣と態度を養い,技能と能力をみ
がく.1〜4のそれぞれの目標の後に,3〜7行の解説がし てある.1〜4はそれぞれ,聞くこと,話すこと,読む こと,書くことの国語学習指導の教科目標である.
さらに,「第四節」では,「小学校おける国語学習指導 の目標は,小学校の児童に,ことばを効果的に使用でき る能力を身にっけさせることであって,一口にいえば,
ことばの力を伸ばすことであり.」とあり,聞くこと,
話すこと,読むこと,書くことの四っの言語活動に,そ れぞれ具体的な目標を設定している.
〔聞くこと〕
1 日常の話をすなおに,正しく聞き取ることができ
る.
2 相手の立場を尊重し,作法を守って,常に,相手 が話しやすいような態度で聞くことができる.
3 相手の話を聞くことによって,自分の語いを広1犬 表現力を高め,また,さまざまな知識を求めたり,
情報を得たりすることができる.
〔話すこと〕
4 標準的なことばつかいや,正しいいいまわしで,
礼儀正しく話すことができる.
5 話合い・討論・会議などに参加して,自分の意見 を述べることができる.
6 生活経験・観察・読書などにっいての報告や発表 ができる.
7 やさしい文学的作品の発表や,劇をすることがで
きる.
〔読むこと〕
8 読むことに興味が増し,さまざまな読み物を自主 的に読み抜く態度や習慣を身にっけることができる.
9 知識を求めたり,情報を得たり,楽しんだりする ために,書物・雑誌・児童新聞・辞書・参考書など を活用し,図書館を利用することができる.
10読むことによって,語いを増し,表現力を高め,
また,はっきりとした考え方ができる.
11 日常生活に必要な文字を読むことができる.
〔書くこと〕
12 さまざまな形式の実用的作文や創造的作文をっく ることができる.
13 文集や学級・学校新聞の編集ができる.
14 共通的な筆順で,正しく,読みやすく,効果的に 書くことができる.
15 日常生活に必要な文字を書くことができる.
②目標の分析と考察
「第三節」の言葉の役割は,言語の機能(働き)につい て述べている部分と言えよう.
1〜3はそれぞれ,伝達の機能,思考の機能,認識と
創造の機能にふれ,結論としては,言語の大切さを論じ
ているのである.このように大切な役割をもっのである
から,以下に述べることを達成しなければならないとい
大越 和孝
う文脈となっている.
国語科学習指導では,1〜4とも,どのような目的で,
どのような習慣と態度を養い,技能と能力をみがくとい う構成になっている.
表1 目的と習慣・態度
聞く 話す 読む 書く 目 的
自分に必要な矢[識を求める,情報を得る
自分の意志を伝えて他人を 動かす
知識を求める,情報を得る,
経験を広める,娯楽と鑑賞 自分の考えをまとめる,他 人に訴えよ
習慣・態度 他入の話に耳を傾け
る
生き生きとした話を しようとする 広く読書しようとす
る
はっきり,正しく,
わかりやすく,独創 的に書こうとする
技能と能力については,1〜4ともどのようなことを みがくのかが示されていないが,それは,「第四節」の 15項目に具体的に示していると考えることができる.
26年版は22年版に比べて整理されているという見方 もできるが,15項目の中には,現在の指導要領では,
「内容」の中に示されているものもあり,「目標」と「内 容」とに重複があるとも言えよう.
26年版の目標の中には,「ことばを効果的に使用する ため」「民主社会に適合した人間を形成する」「経験を広 め」などの言葉がキーワードとなっていることから分か るように,基本的な性格は22年版と重なると言えよう.
短くまとめるならば,豊かな言語経験を通して,言語 技術に熟達させ,民主社会の担い手の育成に目標がある
ということになる.
なお,石森延男の回想録によれば,26年版指導要領 も,アメリカの指示を背景に作成されたとあることから も,同じような性格をもっのも当然のことなのである.
22年版,26年版の指導要領では,言語を効果的に使 用できる能力という面が強調されて受け取られたので,
人間形成の面が問題にされるようになっていったのは,
当然の方向なのであろう.
26年版指導要領では,聞くこと,話すこと,読むこ と,書くことの四っの領域にっいての「国語能力表」が 22ページにわたって示されている.これも,領域ごと の学年による具体的な目標ととらえることもできる.
また,それぞれの学年ごとに,「この学年の具体的指 導目標は何か」の項が立てられている.
総括的な目標だけでなく,下位の目標も,かなり詳細 に示されてあるところに特色がある.
(3)昭和33年版『小学校学習指導要領』
昭和33年10月1日に文部省告示という形で,官報に 公示された.「試案」の二文字がなくなり,法的拘束力 をもっようになった.
①教科目標
国語科の教科目標は,「第2章 各教科」の「第1節 国語」の「第1 目標」で,次のように示されている.
1 日常生活に必要な国語の能力を養い,思考力を伸 ばし,心情を豊かにして,言語生活の向上を図る.
2 経験を広め,知識や情報を求め,また,楽しみを 得るために,正しく話を聞き文章を読む態度や技能 を養う.
3 経験したこと,感じたこと,考えたことをまとめ,
また,人に伝えるために,正しくわかりやすく話を し文章に書く態度や技能を養う.
4 聞き話し読み書く能力をいっそう確実にするため に,国語に対する関心や自覚をもっようにする.
上に掲げた国語科の目標1は,国語科において指導 すべき総括的な目標である.目標2および3は,国語 科において具体的に指導すべき聞くこと,読むこと,
話すことおよび書くことの活動について,その目標を 掲げたものであるが,これらの指導にあたっては,常 に目標1の達成を目ざすとともに,目標4との関連を 考慮して行わなければならない.
次に示す各学年の目標は,教科の目標を根底におき,
内容において示した指導すべき事項と合わせ,それぞ れの学年の具体的な指導のねらいとなる.
国語の指導は,国語科だけでなく,学校における教 育活動の全体を通じて行われるものである.したがっ て,国語科の指導においては,他の教科,道徳,特別 教育活動などにおける指導と密接に関連させて,国語 の学習に関する基本的な事項を取り扱い,言語生活の 向上を図るように努めなければならない.
②目標の分析と考察
33年版の学習指導要領から簡潔なものになったため,
それまでの指導要領にあった,理論的背景を解説してい ると考えられる部分がなくなっている.
そのために,どのような理論にもとついた指導要領で
ノ1、学校学習指導要領の国語科の目標の変遷
あるかを読み取りにくくなっているが,この時期から教 育課程審議会の答申が全面的に取り入れられるようにな っている.したがって,答申によって,国語科の改善の 理論的背景を理解することができる.
基礎学力の充実が答申されている.これは,昭和20 年代の後半から,経験主義に立った教育批判の中で,基 礎学力の低下が繰り返して叫ばれ,各種の学力調査の結 果の報告においても,学力低下が指摘されていることに よるととらえられる.
何を基礎学力と考えるかは,論議され続けてきている ことであるが,33年版の指導要領では,国語,算数の時 間数が増加していることが,一っの答えとなるであろう.
また,長谷川栄4)によれば「基礎(的)」「基本(的)」
という用語の使用頻度が最も多いのが,33年版であり,
実に147回も使われている.400ページ弱の26年版試案 が61回であることを考えると,いかに使用頻度が多い かが分かる.
第二に,答申では,教育の能率化を図るために,目標 や内容の精選,指導の重点の明確化を求めている.
国語科においても,目標の精選や,聞く,話す,読む,
書くの四っの言語活動それぞれの系統化に,答申の反映 が見られる.
26年版試案の批判によって,この指導要領では,国語 の学習と人間形成の関係づけを図ることが課題であった.
22年版,26年版の基本的理念であった「ことばの効果 的使用」という表現がなくなり,最初の項目で,「日常 生活に必要な国語の能力を養い」と変わっている.また.
「思考力を伸ばし,心情を豊かにする」という表現から も,課題に答えた形になっていると言えよう.
特筆すべきは,四つの目標の関係を明確にしたことで ある.四っの項目は,並列の関係にあるのではなく,
「1」が総括的な目標であり,「2」「3」の指導は,「4」
との関連を考慮して,常に「1」の達成を目ざすと,そ の構造を解説している.
「1」を基本に置いたところにも,人間形成を目ざす 国語科の姿勢を明確に打ち出したと言えよう.
(4)昭和43年版「小学校学習指導要領』
昭和43年7月11日に文部省告示という形で,官報に 公示された.
①教科目標
国語科の教科目標は,「第2章 各教科」の「第1節 国語」の「第1 目標」で,次のような形で示されてい
る.
生活に必要な国語を正確に理解し表現する能力を養 い,国語を尊重する態度を育てる.
このため,
1 国語で思考し創造する能力と態度を養う.
2 国語による理解と表現を通して,知識を身に っけ,心情を豊かにする。
3 国語による伝達の役割を自覚して,社会生活 を高める能力と態度を養う.
4 国語に対する関心を深め,言語感覚を養い,
国語を愛護する態度を育てる.
②目標の分析と考察
この指導要領の改訂の課題は,「基本的事項の精選と 指導内容の集約化」であった.
この課題には,指導内容の精選,言語活動例の削除,
指導内容の一層の系統化によって答えている.また,表 現力の向上,読み書き能力の向上に力点を置いていると
ころにも特色が見られる.
この時代の教育における課題は,科学的な思考力を育 てることにあったが,算数や理科に比較して,教科の性 格上,直接的な影響は受けていないと言えよう.
目標の構成の特色としては,「生活に必要な国語を正 確に理解し表現する能力を養い」「国語を尊重する態度 を育てる」と総括的な目標を,33年版よりもより明確に 位置づけていることである.また,総括的な目標の中で,
理解と表現という言葉を提示してきていることも,それ までの聞くこと,話すこと,読むこと,書くことという,
活動中心の提示の仕方とは明らかに異なるところである.
総括的な目標の後に「このため」という言葉で続けて,
四つの目標を示し,さらに,具体的なものとして学年ご とに目標を提示するという形になっている.
この四つの目標にっいて,文部省の担当官である藤原 宏は,この指導要領の解説書で,次のように解説してい
る.
「1 国語で思考し創造する能力と態度を養う」と いうのは,国語の力の本質をまず明確にしたものであ り,国語の能力とは言いかえれば,われわれが思考す る能力のことであって,しかもその思考は創造にっな がるような思考であることを明記したのである.「創 造する」ということは,ここでは必ずしも「表現する」
ということと同じことを述べているのではない.創造
活動にっながるような思考活動という意味である.し
大越 和孝
たがって,「国語による理解活動」のなかにも創造を 考えるということである.
国語の教育は,ことばの働きを通して自己を向上さ せ,さらに社会を向上させることができるような,そ のような言語の能力をっけることがねらいである.自 己を向上させることは,具体的には,人間として必要 な知識を獲得し,また豊かな心情を体得することによ って,自己の入間性を向上させ,人格を高めていくこ とにほかならない.国語の能力が人間形成と切り離し て考えることができないのは,国語の能力を伸ばすこ とによって人間としての成長を期待できるからである.
「2 国語による理解と表現を通して,知識を身にっ け,心情を豊かにする」とはこのことを述べたもので ある.また,国語の能力を伸ばすためにも,児童が人 間として成長していくことが必要であるので,人間形 成と国語能力との相互関係を,このような表現で表し たのである.
さらに,国語の能力は社会の一員として成長してい くためにも必要であり,ひいては,言語による伝達を 通して相互に理解を深めながら,社会生活そのものを 向上させるためにも必要である.したがって,社会に 対してそのような役目を果たす国語の力をっけなけれ ばならない.「3 国語による伝達の役割を自覚して,
社会生活を高める能力と態度を養う」とは,このこと を表現したものである.
また,国語科の目標として,われわれが日常使用し ている国語に対して深い関心をもち,また一方におい てことばに対する鋭敏な感覚を養いながら,国語を大 事にして,国語そのものをいっそうよいものにしてい こうとする態度をっちかうことはきわめてたいせっで ある.国語の能力の根底に絶えずこのような態度がな ければならぬ.そのことを「4 国語に対する関心を 深め,言語感覚を養い,国語を愛する態度を育てる」
と言い表したのである.
言語の思考,認識伝達,創造の四つの働きのうち,
国語の能力とは思考の能力であると断定しているところ に目を引かれる.「2」は国語と入間形成,「3」は社会 の成員としての国語力の重要さを力説している.
33年版と44年版は,四項目ずっの目標を並べている 点では同じであるが,その構成や表現されている内容は 全く異なっていると言えよう.
(5)昭和52年版『小学校学習指導要領』
昭和52年7月23日に文部省告示という形で,官報に 公示された.
①教科目標
国語科の全体目標は,「第2章 各教科」の「第1節 国語」の「第1 目標」で,次のような形で示されてい
る.
国語を正確に理解し表現する能力を養うとともに,
国語に対する関心を深め,言語感覚を養い,国語を尊 重する態度を育てる.
②目標の分析と考察
この指導要領では,言語能力を重視する観点から「理 解」と「表現」の二領域となり,言語活動や言語技能重 視から方向を転換したことは,画期的なことである.
教育課程審議会は,国語科改善の基本方針として,次 の4点を答申している.
①小,中,高校を通じて,児童生徒の発達段階に応 じて,内容を基本的事項に精選すること.
②言語の教育としての立場を一層明確にすること.
③表現力を高めるようにすること.
④小,中学校においては,国語力を養うための基礎 となる言語に関する事項が系統的に指導できるよう にすること.
答申の「言語の教育としての立場を一層明確に」は,
目標にも生かされている.
この版の指導要領作成の中心メンバーであった.視学 官の藤原宏は,国語科の目標が簡単な記述になったこと にっいて,次のように説明している.
現行5)の学習指導要領のように,教科の目標をあ らゆる角度から総合的に述べるということは,教科の 目標としてはまことにりっぱで完全な形であるとはい っても,そのことがかえって内容の程度を高くすると いうような傾向に走る基をなしているのではないかと いう意見も一方においてあり,また,教科の目標はで きるだけ小学校段階としての指導のねらいがはっきり しているような示し方はできないのかという意見もあ り,いろいろなことを考慮した結果,このような簡単 な形にしたわけです.
このことによって,現行の学習指導要領では目標が 中核的目標と具体的目標の二っに書き分けられていま したけれども,今回の新しい学習指導要領では,中核 的な目標だけが掲げられることになったのです.
教科目標に関する藤原の考え方を,いくっかの観点か
小学校学習指導要領の国語科の目標の変遷
ら紹介してみよう.
「生活に必要な」という言葉が削除されたことにっい ては,次のように論じている.
………「生活に必要な国語」6)とは,われわれ日本 人としての日常の社会生活をしていくのに必要な言語 であり,同時に人間としての生活の中に生きて働く国 語のことである.日常的実用的なその日その日の生活 を意味する狭義の日常生活ということでなく,日常生 活をも含めて,精神的,物質的,文化的生活や個人的,
社会的生活などのすべてにわたって必要とされる生き た言葉が「生活に必要な国語」である.
昭和43年版学習指導要領での「生活に必要な国語」
は,小学校から高等学校にいたるまで,一貫して以上 のような意味で使用されているのであるが,教育課程 審議会での審議の場やその他いろいろな意見の中でも,
「生活に必要な」という表現の醸し出す印象が「卑近 で手近な日常の生活」の色彩が強いといった批判がか なりあった.一般には「生活に必要な国語」を狭く解 釈されてしまう傾向が強い.
そこで,今回の改訂に際して,「生活に必要な」と いう表現を取り除いたほうがよいのではないかとの意 見を入れて,改訂指導要領に示すような形をとったの
である.以上のような説明をしているが,経験主義の立場から 22年版よりずっと大事にされてきた「生活に必要な」と いう表現が消えたことは,大きな方向転換と言わざるを 得ないであろう.
「国語を正確に表現」という言い方はおかしいのでは ないかと,当時,問題になった「国語を正確に理解し表 現する能力」については,次のように論じている.
「国語を正確に理解し表現する能力」とは,「国語を 正確に理解する能力」と「国語で正確に表現する能力」
とを合わせた述べ方である.
「国語を正確に理解する能力jとは,国語で表され たものに対し,正確にその内容を把握する能力のこと で,「国語による正しい理解力」というのと同じこと を意味する.また,「国語で正しく表現する能力」と は,内容を国語を正確に使用することによって表す能 力のことであり,「国語による正しい表現力」という ことと同様である.
「国語による理解力と表現力」を形成するものは 「正しさ」,「正確さ」だけではないことはいうまでも
ないが,望ましい理解力と表現力の最も基礎的なこと が「正しさ」であり,「正確さ」ということであるの は当然である.
小学校の国語科指導の段階では,「正確さ」に重点 をおいた指導が,まず徹底して行われるようにするこ とが必要である.
以上のように説明をしているが,「国語を正確に表現 する」とは通じない言い方ではないし,「国語を使って 正確に表現する」から,「使って」を省略したと考えれ ば,説明のっかない表現ではないはずである.
⑥ 平成元年版『小学校学習指導要領』
平成元年3月20日に文部省告示という形で,官報に 公示された.
①教科目標
国語科の教科目標は,「第2章 各教科」の「第1節 国語」の「第1 目標」で,次のような形で示されてい
る.
国語を正確に理解し適切に表現する能力を育てると ともに,思考力や想像力及び言語感覚を養い,国語に 対する関心を深め国語を尊重する態度を育てる.
②目標の分析と考察
この指導要領の教科目標は,52年版と似た部分が多い.
52年版と変わった部分を中心に考察してみよう.
昭和62年12月に教育課程審議会は,国語科の内容構 成の基本的な考え方にっいて,次のように答申している.
(1)言語の教育としての立場を一層重視し,国語を正 確に理解し,適切に表現する能力を育成するととも に,国語に対する関心を高め,国語を尊重する態度 を育てるよう内容を構成すること.
(2)音声言語及び文字言語にかかわる表現及び理解並 びに言語事項で内容を構成すること.
(3)社会の変化に対応するために,目的や意図に応じ て適切に表現する能力や相手の立場や考え方を的確 に理解する能力を養うとともに,思考力や想像力及 び言語感覚を育てることを重視して内容を構成する こと. ※(4),⑤にっいては省略 この答申は,目標にも生かされていることがよく理解 できるが52年版と変わった部分を中心に,「指導書』7)
の解説をあげてみよう.
前段では,国語の能力の根幹ともいうべき国語によ
る理解力と表現とを育成することが,国語科の基本的
な目標であるということを明確に述べている。すなわ
大越 和孝
ち,国語を正確に理解する能力を育て,また,国語を 適切に表現する能力を育てていくことが,小学校国語 科の学習指導の主眼である.
もとより,言語は,その意味する内容や事柄ととも に存在するものであるから,「国語を正確に理解する 能力」とは,「言語を正確に理解する能力」と「言語 で表現された内容や事柄をも正確に理解する能力」と 考えられる.その際に,これからの社会に主体的に対 応できるように,目的や意図に応じて適切に表現する 能力と相手の立場や考えを的確に理解する能力を育成 することが必要である.
後段では,「思考力や想像力を養う」ことが述べら れている.これからの社会の変化に主体的に対応する ためには,思考力,判断力,適切な表現力などの育成 が大切である.わけても,自分の発想を生み出すもと になる論理的な思考力や想像力,直観力などを養うこ とは重要である.そして,これらの能力を育成する過 程では,常に言語の能力が介在している.したがって,
思考力や想像力を養うことと国語の能力の育成とは,
密接不離で,相補的な関係にあるといえる.
この解説によれば,「これからの社会に主体的に対応 できるように,目的や意図に応じて適切に表現する能カ
…… K要である.」とある.より柔軟な表現力を求めて いると読み取ることもできる.
前述の藤原が,「小学校の国語科指導の段階では,『正 確さ』に重点をおいた指導が,まず徹底して行われるよ うにすることが必要である.」と力説しているように,
教科目標が端的に示されるようになった33年版より,
「正しく」や「正確に」が表現の目標であった.教科審 の答申に繰り返して使われている,「適切に表現する」
が取り入れられたと考えられる.
また,52年版にはなかった,「思考力や想像力」が養 われるべき能力として加わったのは,教科審の答申にあ る「言語の教育としての立場を一層重視」に答えたと言
えよう.(7)平成10年版『小学校学習指導要領』
平成10年12月14日に文部省告示という形で,官報に 公示された.
①教科目標
国語科の教科目標は,「第2章 各教科」の「第1節 国語」の「第1 目標」で,次のような形で示されてい
る.
国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し,
伝え合う力を高めるとともに,思考力や想像力及び言 語感覚を養い,国語に対する関心を深め国語を尊重す る態度を育てる.
②目標の分析と考察
昭和62年12月の教育課程審議会の答申から,目標に 反映されていると思われる部分も書き出してみよう.国 語科の改善の基本方針に,次のような記述がある.
小学校,中学校及び高等学校を通じて,言語の教育 としての立場を重視し,国語に対する関心を高め国語 を尊重する態度を育てるとともに,豊かな言語感覚を 養い,互いの立場や考えを尊重して言葉で伝え合う能 力を育成することに重点を置いて内容の改善を図る.
特に,文学的な文章の詳細な読解に偏りがちであった 指導の在り方を改め,自分の考えをもち,論理的に意 見を述べる能力,目的や場面などに応じて適切に表現 する能力,目的に応じて的確に読み取る能力や読書に 親しむ態度を育てることを重視する.
今回の指導要領の教科目標の平成元年版との大きな違 いは,「伝え合う力を高める」という表現が挿入された ことと,「理解」と「表現」の順序が入れ換わったこと
である.伝え合う力を加えたことは,改善の基本方針に「言葉 で伝え合う能力を育成」とあることを受け入れているこ とが分かる.文部省は,目標についてどのような説明を しているのかを,『小学校学習指導要領解説』によって 探ってみよう.
その一っは8),国語の能力の根幹となる,国語によ る表現力と理解力とを育成することが,国語の最も基 本的な目標であることを明確に述べている.っまり,
「適切に表現する能力」と「正確に理解する能力」と は,交互に表裏一体的な関係として,連続的かっ同時 的に機能するものであり,今回の改訂では,自分の考 えを自分の言葉で積極的に表現する能力や態度を重視 して,「表現する能力」の育成を最初に位置付けた.
この解説には,納得できないところがある.「……連 続的かっ同時的に機能するものであり,……『表現する 能力』の育成を最初に位置づけた.」という文脈は続か ない.表裏一体であり,連続的かつ同時的に機能するの であれば,敢えて,理解と表現を入れ換える必要はない
はずである.そうであるならば,入れ換えの根拠は,「表現する能
小学校学習指導要領の国語科の目標の変遷
力や態度を重視して」ということになる.だが,小学生 の児童の国語能力として,理解よりも表現を重視すべき なのであろうか.大いに疑問の残る点である.
また,「国語による表現力と理解力とを育成すること が,国語科の最も基本的な目標」であるならば,「内容」
を,「理解」「表現」〔言語事項〕から,「話すこと・聞く こと」「書くこと」「読むこと」〔言語事項〕に改めたこと の説明がっかない.教科審の「現在の領域の構成を見直
して」を尊重したのであれば教科目標もその構成に合っ た提示をすべきであったと思う.
いずれにせよ,教科目標と「内容」がちぐはぐである 感は,免れない.
前述の説明に続いて,次のような記述がある.
また,言語は言語形式とそれによって表される言語 内容を併せもっており,「国語を適切に表現する能力」
とは,「言語を適切に使う能力」と「言語を使って内 容や事柄を適切に表現する能力」との両面の内容を含 んだものとなる.「国語を正確に理解する能力」とは,
「言語の使い方を正確に理解する能力」と「言語で表 現された内容や事柄を正確に理解する能力」との両面 の内容を含んだものとなる.このような言語能力は,
一人一人の児童が言語の主体的な使い手として,相手,
目的や意図,多様な場面や状況などに応じて適切に表 現したり正確に理解したりする,日常生活に生きて働 く力として育成することが大切である.
その二っは,特に,「適切に表現する能力」と「正 確に理解する能力」との育成を基盤に.互いの立場や 考えを尊重しながら言語で伝え合う能力の育成を重視 して,「伝え合う力を高める」ことを位置仕けている.
この「伝え合う力」とは,人間と人間との関係の中で,
互いの立場や考えを尊重しながら,言語を通して適切 に表現したり正確に理解したりする力でもある.これ からの情報化・国際化の社会で生きて働く国語の力で あり,人間形成に資する国語科の重要な内容となるも のである.
「表現」や「理解」を通して育てることが大切だと述 べている,「一人一人の児童が言語の主体的な使い手と して,相手,目的や意図,多様な場面や状況などに応じ て適切に表現したり正確に理解したりする,日常に生き て働く力」と.「伝え合う力」としてあげている,「人間 と人間との関係の中で,互いの立場や考えを尊重しなが ら,言語を通して適切に表現したり正確に理解したりす
る力」は,どのように異なるのであろうか.筆者には同 じような力と思えるが,もし,同じような力であるなら ば,敢えて,目標の中に「伝え合う力」を加えた意味は
なくなる.3 それぞれの指導要領の比較と検討 7回の指導要領の教科目標を,いくっかの観点から比 較検討してみよう.
(1)形式からの比較
。22年版(試案) 「第二節 国語科学習指導の目標」
の後の一文が,総括的な目標であると考えられる.
その後に,4項目の目標,領域別の目標と続くが,
これらは,小中学校共通の目標である.また,上学 年,下学年ごとの領域別の目標もある.小学校とし ての教科目標は,明示しにくい形になっている.
。26年版(試案) 「第三節 国語科学習指導の一般目 標は何か」「第四節 小学校における国語学習指導 の目標は何か」の他に,「国語能力表」もあり,目 標にっいての記述の分量は多い.第四節の最初の一 文を,総括的な目標ととらえてよいであろう.目標 というものを,どのように考えるかの解説的な部分 が多いのが特色である.
。33年版 4項目の目標をあげているが,1が総括的な 目標,2が聞く,読むに関する目標 3が話す,書 くに関する目標,4が国語に対する関心や自覚とい う構成になっている.
。43年版 初めに総括的な目標を書いた一文を置き,そ れに到達するための目標を4項目あげている.
。52年版 一文の総括的な目標のみ.
。平成元年版 一文の総括的な目標のみ.
。平成10年版 一文の総括的な目標のみ.
指導要領の国語編全体が,大綱化,精選の方向をたど ってきたが,その流れの中で,教科目標も簡素化されて きていることが分かる.
(2)用語からの比較
教科目標の中で使用されている用語について,簡潔に 示されるようになった,33年版から比較してみよう.
この表からも分かるように,試案の時期に大切にされ
ていた,「生活」「経験」などの言葉が無くなり,「思考
力」「想像力」「言語感覚」などの能力を重視した言葉が
加えられている.
大越 和孝
表2 教科目標用語からの比較 昭和33年 日常生活 経験 思考力 人に伝える 昭和43年 生活
×思考 伝達の役割
昭和52年
× × × ×平成元年
× ×思考力
×平成10年
× ×思考力 伝え合う力 昭和33年 知識や情報
X × ×昭和43年 知識 創造
×言語感覚 昭和52年
X × X言語感覚
平成元年
× ×想像力 言語感覚 平成10年 x X 想像力 言語感覚
昭和33年
×X 関心や自覚
× ×昭和43年 理解 表現 関心 尊重 愛護 昭和52年 理解 表現 関心 尊重
×平成元年 理解 表現 関心 尊重
×平成10年 理解 表現 関心 尊重
×特に平成10年版で「伝え合う力」が加えられたこと は注目に値するが,経験や活動を大事にした指導要領で あると言いながら,それを表す用語は教科目標の中に新
しく加えられてはいない.
(3)述語からの比較
能力や態度をどのような述語によって受けているかを 比較してみよう.
。話したり,書いたりしようとする要求と能力とを 発達させること. (22年試案)
・他人の話に耳を傾ける……技能と能力をみがく.
〈 (26年試案)
能。日常生活に必要な国語の能力を養い,(33年版)
力。生活に必要な国語を正確に理解し表現する能力を
〉 養い, (43年版)
。国語を正確に理解し表現する能力を養うとともに,
(52年版)
。国語を正確に理解し適切に表現する能力を育てる とともに, (元年版)
。国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し,
(10年版)
。他人の話に耳を傾ける習慣と態度を養い,
(26年試案)
〈 態
度。国語を尊重する態度を育てる.
〉。国語を尊重する態度を育てる.
・国語を尊重する態度を育てる.
・国語を尊重する態度を育てる.
・正しく話を聞き文章を読む態度や技能を養う.
能力は「養う」ものであろうか,「育てる」
ろうか.どちらでも同じであろうか.また,
版で「育成し」に変えたのには,どのような意味がある のであろうか.
態度は,4回の教科目標で「育てる」とあり,安定し た使い方のようであるが,そうは言い切れない.
これまでの指導要領でもそうであったが,平成10年 版でも,教育目標以外の部分には,「能力を育てる」「能 力を養う」「態度の育成」などがあり,一定していない.
使い分けに意味はないと思われるので,使い方の検討を すべきであると考える.言葉を対象にした国語科の指導 要領で,このようは検討がなされてこなかったことは,
望ましいことではないであろう.
言語感覚には「養う」がずっと使用されているが,言 語感覚を豊かにすることにねらいがあれば「養う」が適 切であろう.だが,鋭くすることにあれば「磨く」のほ うが適切であるように思われる.指導書の解説を読むと,
磨くことに重点があるように思われる.
4 おわりに
(33年版)
(43年版)
(52年版)
(元年版)
(10年版)
ものであ 平成10年
学習指導要領が,社会の変化を洞察し,これからの国 語科教育のゆくべき方向を見据えて作成されたものであ って欲しいと願うし,作成協力者委員は,そのように努 力したであろう.
だが,現在の学習指導要領の作成の流れは,中教審,
教課審の答申を受けるという形になっている.中教審,
教課審の委員の中に,小学校の国語科教育に通じている 人が何人いたのだろうか.
現在のシステムでは,答申は絶対であり,指導要領の 委員は枠の中で文言をいじっているのに過ぎないとも言 える.このシステムを見直していく必要性を感じる.
答申の一っに厳選という方向があったが,国語科の指
導要領では,指導事項の数を少なくすることで精選とと
らえるべきではない.今回の指導要領では,厳選が現場
としては絶対に指導しなければならない限界を越えたと
も言えよう.小学校学習指導要領の国語科の目標の変遷
例えば,一年生の「声の大きさに気を付けて話すこと.」
の指導事項が削除されたが,教室の子供たちに聞こえな い声で話しても,特に指導しなくてもよいことになる.
この指導事項が削除されたことは,教科目標で,「表 現」を重視したことや「伝え合う力」を加えたこととも 矛盾する方向である.
指導要領目標等の示し方には,きまりや形はなく,作 成者たちの国語科教育に対する理念が反映されるべきで
ある.