日本小児循環器学会雑誌 13巻5号 723〜727頁(1997年)
学校心臓検診
二次検診対象者抽出のガイドライン 一一 次検診の4誘導心電図所見から一
日本小児循環器学会心電図委員会
委員長 大 国 真 彦
小児心音・心電図自動解析研究小委員会馬場 國藏 原田 研介 本田 恵 北田 実男 浅井 利夫 長嶋 正実 山内 邦昭
学校保健法施行規則が改訂され,平成7年度から小 学校,中学校,高等学校の各1年生全員に心電図検査 が義務づけられた.そこで,平成8年,日本小児循環 器学会では,12誘導心電図所見からの二次検診対象者
抽出のガイドライン1)を発表した.しかし,一次検診では,4誘導心電図を採用している地域も多いので,今 回,4誘導心電図所見からの二次検診対象者抽出のガ
イドラインを作成した.本ガイドラインは,平成3年に公表した4誘導心電
図コード2}を,心電図所見別に整理し,小学校・中学校・高等学校の各1年生を主たる対象とし,かつ,性別を 考慮して,12誘導心電図所見からの抽出法と同様に,
①二次以降の検診に抽出すべき所見(A群),②その所 見単独では必ずしも抽出しなくてもよい所見(B群),
③学校心臓検診ではとりあげなくてもよい所見(C群)
の3群に大別した.なお,R・S波の項については,点 数制による小児心電図心室肥大判定基準3)を用いるこ
ととした.但し,〔註〕に述べたことは勿論,それ以外のB群やC群に属する所見であっても,その内容に よっては,他の心電図所見との組み合わせや,心電図
以外の所見に注意すべきである.また,ここにいうA,B, Cの区分はあくまで二次検 診対象者抽出のための重みづけであって,管理の要否 やその程度を決定するためのランクづけではない.対 象者をどう診断し,どのように管理すべきかは,二次
以降の検診による.文 献
1)日本小児循環器学会心電図委員会:学校心臓検
診,二次検診対象者抽出のガイドライン.一一次検 診の心電図所見から一.日小循誌 1996;12二725 −730.2)同上二委員会:「小児用標準12誘導心電図のコード」
の作成ならびに「児童・生徒集検用省略4誘導心電 図コード」の改訂.日小循誌 1991;7:456−461.
3)同上委員会:小児心電図心室肥大判定基準の改
言丁. 日小循誌 1986;2:248−249.
別刷請求先:(〒173)板橋区大谷口上町30−1 日本大学医学部小児科 原田 研介
724 (106) llノ」\TIIFil:とi l3(5), 1997
A群: 一群次以降の検、診に抽出すべき所見
B群 その所見単独では必・ずしも抽出しなくてもよい所見 C群:学校心臓検G /..−yではとりあげなくてもよい所見
1.Q波
1.幅広いQ波区 分
コードNO
同〒 見 1人1 容1−1.1 IQ川Rンr3でかっQ〜o.噺州またはv6) 1 A
1−−1 2一Q≧0.04手少(1.VI.V6のい『ヂれカ・)
1−1 5
QaVF≧(LO5秒B
1−2 2
o.04秒>Q≧o.03秒(1またはV6)1−2 ・5 0.{}5手少>QaVF≧0.04[少
1−2 −1 1 1Q1/R≧1/3でかつo.{〕3秒1・Q≧o.〔[2秒(1またはV6)
c
1−3−1
1/3/IQ1「「R≧れ5かつo.03秒>Q≧([.{〕2秒(1またはv6)1−3−5
0.0.拝少>QaVF≧0.n3ト少 2.QS/s ターン1−1−8
QSバターン(V6)A 1−2−3
QSバターン(1)1−3−6
QSノ\ターン(aVF)B
1−3 −2 QS/wターン(V1):ハ. i桀し、(]波
B 1 4 1
Qv61
≧0.5mV 1『 2 一 6 (〜aVF ≧(1,5mv4.その他のQ波所見
A 1−5 1
(IR(S)パターン(Vl)II. QRS〜琶…〈〔車由
ハー
C
2 1 1}
2−4 1 2−1−1 2−2−1 2 2 2 2 3 0
2 5 〔}
30から一90末満
9{}カ・ら 180ノトこ?越i
〔[から 3〔[末満
↑135から一180まで
寸
・121)カ・ら←135末テ崎 ト90カ・ら ト120末71埼 イく五三i剛1(ll∬客貞lrli{こ90)
川.R・S波
心室肥大:点数制による小児心電図心室ll巴人判定基準による.
IV. ST接合部およびST区間
(文献3参照)
4−1−1
ST・J降ド≧1).2111VでST区間が水 ド圭たはドり坂(L aVF, Vl. V6のいずれか)A 4−1−2
o.2mV>ST・J降卜≧0.lmVでST区間が水 ドまたはドり坂(1, aVF、 Vl,V6のいずれか)4−2−1
o.ll1コー、ST・J降ド≧o.05mVでST区間が水平またはドり坂(L aVF. Vl.V6θ)いずれか)B 4−3・−1
ST−J降ド<〔〕.051nVでありST I)〈間が.ドり坂でST区間またはT波の最低部が基線より{}.{}5mV以ド低1¶
またはV6)
4−4−1
ST・J降ド,〉{}.2mVでST区間がヒり坂またはU型(L aVF. Vl. V6のいずれか)c
4−4−−2 ST−J降ド〉{}.lmVでST区間がヒり坂またはU型(L VI、 V6ひ)いずれか)V.T波
5−1−1
T陰性または二相性で,陰性部≧o.5mV(1、 aVF[QRSが1:としてヒ向き], V6のいずれか)A 5−2−1
T陰性またはこ相性で,0.5mV>陰性部≧0.lmV(1, aVF{QRSが1:として1:向き], V6のいずれか)(但し,aVFθ)みではB群)
B
5−3−1
T {Z低(0),またはT陰性か二相性(一+型)で,陰性部く(1,lmV(ST区間が水 1 1またはドり坂)(1または1 6)(但し,中・高校生女子ではC群)
5−6−1
TV1陽性で, RVI≧lSVI i(但し,小学生のみ,中・高校生ではC群)C
5−4−1
T陽性で,1/20>T/RかつR≧1.{〕mV(1またはV6)iLhk 91ゼ1{りJl川
、 1. } ∫ 1ζf/t・i 9.
1.ノ己フミ〃」弓く『ノV・ソク
725−.(IO7)
︑
6 1 {) 3度(プ己全)房室プロツク
2. 21f{)ノ∫破こ『ノ t1ック
6 2 1 2度房室プロツ ク(Nlobitz II理》)
A
6 2 2 2度房室プロツ ク(2 : 1}ノ」宝{フ ロッ ク)6 2 3 2度房室プロツク(、Vellckebach.,『ID
:i. PR(P(〕)[1.//ilil r A
6−3 1 PR時間>o.24秒 6.−3−2 PR時間≧0.22秒 6−3・.3 PR時間≧0.20秒 C 6 −.5−1 PRl時「絹く(1.{}8手少
6−5−−2 PR時間くo.lo秒
6−5−3
PRl}与問]<{〕.12手少 4. 、VP、VJ正fレミ君¥・6..4 −1 WPW型:PR時Rl]<0.12秒かつQRS幅≧0.12秒かつVAT>{}.06秒(1またはV6)
A
6−−4 2 WPW型:PR時間<n.lo秒かつQRS幅≧n.lo秒かつVAT>{}.05秒(1またはV6)(但し,小学生レ)み,中・高 校生ではB群)6−4 3
WPW型(間欠性)5.変化伝導
ハー
6−.6 0 変行伝導
〔う. ノ\llノ\一ス、メーカ
︑
▲ 6−8 {} 人工べ一スメーカ
、 ll. ノ已・三{{1吋fzl)尊
1.つヒ全ノ1コ田1』ゾuック
7− l l 完全左脚ブロック:QRS幅≧0.12秒,かつVAT≧O.1)6秒(1またはV6)
A
7 1 2 完全左脚ブロック:QRS幅≧([.10秒,かつVAT≧0.05秒(1またはV6)(但し,小学生のみ. IP・高校生ではB群)
7 1 3 間欠性完全左脚プロツク
2.ノttl iitイi脚1フ !Jツク
一
7 2 1 完全右脚ブuック:QRS幅≧O.12秒, かっR∵RでVAT〜0.{16秒(VD
A
7 2 2 完全右脚1ブロック :QRS幅ぞ0.10秒,B群)
かつRパRでVA1ぞ0.(15秒(VD(但し, 小学生のみ, 中・rゴ 汗交ノじで1よ 7 2 3 間欠性完全右脚ゾl」ック
3.イくプ〔三全イfESIIブロック
7 3.−1 イくラヒ全イd脚ソ ロック : 7 3 {}カミあり, カ・つR Vl≧ lsVl 1
A
7−3 3 不完全右1脚ブロック:7 3−2があり,かつR Vl≧lSVll7 3 0
イミ完全右}田1ブロック:QRS輪<、0.12秒, かつR >R(Vl)B
7 .3−2 イく完全右脚ブロック:QRS幅<([.m秒,かつR >R(Vl)
7−5 0
QRS幅くo.12秒,かつR−R 型でR ≦R(Vl)C 7・.5 1 QRS幅く(1.10秒,かつR・R 型でR ≦R(Vl)
7 −5 2 7−5−0または7−5−1があり,かつR Vl≧0.5mVでRV】≧ISVI l
7 4一 0 心室内伝導障害:QRS幅≧0.12秒
A
7一
.4 1 疋、・う、rへlf云導防㍗¥:QRS巾吊≧0.lOf少({旦し, 小学生のみ, 中・高校生ではC群)
7−6−0
不完全左脚ブロック:0.12秒>QRS幅≧0.1{}秒,かっRR 型でR ≧R(V6)A
7・−6 1 不完全左脚ゾロック:QRS幅くn.10秒,かっRR 型でR ≧R(V6)(但し,小学生レ)み,中・高校生ではB群)セー
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41
6
7.−7 0 左脚前枝ブロック:QRS幅く〔1.12秒,かつQI≧0.025mVでQI幅く0.03秒と 45以ヒの左軸偏位
A
7−7−−1 左脚前枝ブロック:QRS幅く0.10秒,かっQI≧0.{〕25mVでQI幅く{1.03秒と 3{〕以ヒの左軸偏位(但し,小学 生のみ,中・高校生ではC群)726 (108) 日本小児循環器学会雑誌 第13巻 第5号
7.一二枝ブロック
A 7−8−0 7−8−1
二枝プロソク 7−2−1と一45以ヒの左軸偏付
二枝プロソク 7−2−2と一30以ヒの左軸偏付(但し,小学生0)み,中・高校iiてはC群)
Vlll.調律
1.ヒ室(性)期外収縮
A B
8−1−4 8−1−1
多形(源)性ヒ室(性)期外収縮
単形(源)性卜室(性)期外収縮(但し,散発の場合はC群)
2.心室(性)期外収縮
8−1−2
単形(源)性心室(性)期外収縮8−1−3 8−1−1と8−1−2の合併 8−1−5
多形(源)性心室(性)期外収縮A 8−1−6
二連発の心室(性)期外収縮8−1−7
RonT型の心室(性)期外収縮8−1−8
後続心拍のT波異常を伴う心室(性)期外収縮 3.心室(性)頻拍A
8−2−1 心室(性)頻拍 4.固有心室調律A 8−2−2
固有・〔♪室調律 5.心房細動A 8−3−1 心房細動
6.心房粗動A 8−3−2
〔ひ房米ll重力 7.心房粗・細動A 8−3−3
〔♪元元∫*H.糸田重力8.ヒ室(性)頻拍
A
8−4−1 ヒ室(性)頻拍 9.洞停止または洞房ブロックA
8・5−1 洞停止または洞房ブロック lO.接合部調律B
8−6−1
接合芒¶≦言周律ll.房室解離
B
8−6−2 房室解離
12.補充収縮または補充調律B
8−6−3 補充収縮または補充調律13.洞(性)頻脈
8 7−1
心拍数(≧200/分)A 8−7−2
心拍数(≧180/分)8−7−3
心拍数(≧15〔}/分)B
8−7−4
心拍数(≧140/分)(但し,中・高校生のみ,小学生ではC群)8−7−5
心拍数(≧130/分)C
8−7−6
心拍数(≧100/分)14.洞(性)徐脈
8−8−1
心拍数(〈40/分)B
8−8−2
心拍数(〈45/分)(但し,小学生のみ,中・高校生ではC群)8−8−3
心拍数(<50/分)C
8−8−4
心拍数(<6〔}/分)15.その他の不整脈
A
C
8−9−9 8−9−1
鑑別不能の不整脈 洞(性)不整脈
・ピ成9年lO月1日 727−(109)
lX.その他 1.低電位差
B
9−1−0 低電位差:QRS〈0.5mV(1およびaVF),またはQRS<1.OmV(V1およびV6)2.心房負荷
9−3−1
P≧0.30mV(aVFまたはV1)B
9−3−3
P幅≧0」2秒(1)9−3−4
P幅≧0.10秒(1)(但し,小学生のみ,中・高校生ではC群)9−3−5
9−3−3または9−3−4があり,P二相性で陽性部く陰性部(V1)C 9−3−2
P≧0.25mV(aVFまたはVl)3.右胸心
A 9−6−1 右胸心 4.QT延長
A
9−7−l QTc≧0.45(但し,心拍数≧75は, QTc≧0.50とし,0.50>QTc≧0.45ではB群)5.とりなおし
A
9−8−0 基線の動揺,交流障害,筋電図の混入または他の技術的欠陥のために解析不能なもの 6.陰性U波B 9−9−1 陰性U波
7.その他
B 9−2−2
ST区間上昇≧0.3mV(V1)(6−4,7−1,7−2があればとりあげない)
9−2−1
ST区間上昇≧O.2mV(aVFまたはV6)(6−4,7−1,7−2があればとりあげない)
9−5−1
T>1.2mV(aVFまたはV6)(6−4,7−1,7−2があればとりあげない)
C 9−7−2
VATV6≧0.06秒(6−4,7−1があればとりあげない)9−7−3
VATV6≧0.05秒(6−4,7−1があればとりあげない)9−7−4
VATV1≧0.035秒(6−4,7−2,7−3があればとりあげない)〔註〕
①1−2,1−3,1−5の所見があるときは4および5のコードに注意し,両者が併存するときは心筋虚血,心筋疾患の除外を 十分におこなうことが必要である.
②PR(PQ)時間の短縮傾向がみられるときは,調査票での頻拍発作などに注意する.
③7−3,7−5のコードがあるときは心音(図)所見に注意する.
④頻脈または徐脈傾向がある場合は調律異常に留意する.
⑤高度なQRS電気軸偏位の場合は,他の所見に注意する.
⑥心電図所見によっては,早急な対応がのぞましいことがある.