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レーザ干渉計を用いた衝撃加速度校正技術

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Academic year: 2021

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国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター

1 NMIJ研究トピックス No. 12 (2019/07/01)

レーザ干渉計を用いた衝撃加速度校正技術

パルス的な高加速度計測の信頼性を確保するため、レーザ干渉計を用いた衝撃加速度の 測定技術および加速度センサの高精度な校正技術を開発した。高感度なヘテロダイン式 レーザ干渉計を導入し、独自のデジタル信号処理技術を用いた加速度の算出や低周波ド リフトの補正により、トレーサブルな加速度センサ単体の評価方法を確立した。これら 技術の開発により、電子部品の耐衝撃性評価や自動車衝突実験における安全性評価など、

安全性を担保するさまざまな衝撃試験への適用が期待される。

はじめに

衝撃とは、瞬間的に大きな力を物体に与 えることである。電気・電子機器の製品へ の衝撃試験方法[1]や自動車の衝突実験に おける計測機器のトレーサビリティ確保 [2]および人体への安全性評価[3]などがあ り、それら衝撃計測では加速度センサが用 いられている。近年の動向として、国際自 動車産業特別委員会(IATF)では ISO/TS 16949:2009をIATF 16949:2016として改 定・発行し、品質マネジメントにおいて試 験所の要求事項の準拠を必須としている。

そのため、試験所はISO/IEC 17025に準拠 することが必須となり、その結果、国家標 準もしくはそれを供給する公的機関によ る評価の重要性が高まるようになった。そ のような背景を受けて、低衝撃加速度の国 際基幹比較CCAUV.V-K4が実施中であり、

その国際同等性にかかる最終報告書が今 年中に発行予定となっている。

当研究グループでは、ISO 16063-13に準 拠して、衝撃加速度を用いて加速度センサ を評価するために、表1に示す仕様の通り、

低衝撃加速度測定装置(図1)と高衝撃加 速度測定装置の2種類を保有している。低 衝撃加速度ではエアベアリングで保持さ れた2つの金属を剛体衝突させることで ミリ秒オーダの半端正弦波を発生させ、高 衝撃加速度では長い剛体中に一次元弾性 波を伝ぱさせて、固定端での反射時に数十 マイクロ秒オーダでダブルポールの高加 速度を得る。加速度センサの受感面を直接 計測することはできないため、その近傍の 変位をレーザ干渉計で高確度に計測して、

加速度センサに印加される入力加速度と 出力値を比較することで加速度センサは 校正される。本稿では、主に低衝撃加速度 に関する開発内容について紹介する。

表1低衝撃加速度と高衝撃加速度の仕様 上限加速度 不確かさ 低衝撃 -10,000 m/s2 0.2 % 高衝撃 -300,000 m/s2 評価中

加速度センサと信号変換器

加速度センサは、ばねと錘で構成され ており、個々のセンサの電気的出力は設 計値と完全に一致しないため、感度(入力 加速度当たりのセンサ出力)とその不確 かさを評価する必要がある。ばねの部分 には、金属箔やコンデンサなどが用いら れることもあるが、一般的には安定性の 高い圧電素子が使用される。圧電素子は 衝撃を受けた際に、錘の慣性力に追従し て歪むので、その際に電荷を出力する。衝 撃加速度を計測する加速度センサは、数 十kHz以上に共振周波数をもたせる必要 があるため、小型であることが多いので、

高周波側に計測上の問題を有することが 一般的である。(図2を参照)

信号変換器には、圧電型加速度センサ から出力された電荷を電圧に変換する場 合、チャージアンプを選択する。チャージ アンプは、通常バンドパス特性を有する。

高周波側では、チャージアンプの電気回 路の限界は数百kHzにあるので、加速度 センサ側の特性の方が問題になるが、低 周波側のハイパス特性により、電圧のゼ ロ点にドリフトが生じる。(図3を参照)

レーザ干渉計を用いた測定系

加速度は長さと時間の組立量であり、

He-Neレーザの波長(632.8 nm)を長さ の基準として、加速度センサの変位の時 間変化を測定することで算出される。

2010年初頭までは高感度なレーザ干渉計 がなく、変形マイケルソンタイプのホモ ダイン式レーザ干渉計で加速度センサの 変位計測を行っていた。ホモダイン式で は、干渉信号の強度が安定でなければな らないことから、加速度センサに反射ミ ラーを取り付けていた。従って、ホモダイ ン式では加速度センサに付加質量を与え るだけでなく、衝撃時における反射ミラ ーの弾性変形を考慮せざるをえなかった。

野里 英明 のざと ひであき [email protected] 産業技術総合研究所 計量標準総合センター 工学計測標準研究部門 強度振動標準研究グループ 主任研究員

2004年東京大学大学院新領域 創成科学研究科終了.博士(科 学).大阪大学大学院工学研究 科特任研究員を経て,2005年 産業技術総合研究所入所.

入所後は、高周波振動計測と 衝撃計測に関する計測技術の 研究開発に従事。

共同研究者

臼田孝(産総研)、大田明博(産 総研)、穀山渉(産総研)

本研究は、ISO/TC108/WG34 国内委員会、および国内自動 車業界の協力を受けて実施し たものです。

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国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター

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しかし、近年は高感度なヘテロダイン式レーザ干渉計を ホモダイン式レーザ干渉計と置き換えることで、反射ミラ ーを取り付けることなく、加速度センサ単体で評価可能に した。ヘテロダイン式レーザ干渉計では周波数差をもつ2 つのレーザ光を用いており、その参照周波数(周波数差に 相当)と変位に関係するドップラ信号との位相差から加速 度を測定している。また、ヘテロダイン式は周波数計測で あることから、高精度なタイムベースをデジタル信号の集 録装置へ確保することで、その精度を飛躍的に向上させて いる。

図1 低衝撃加速度測定装置の概観

図2 加速度センサとチャージアンプの周波数応答

図3 入力加速度に対して、加速度センサおよびチャージ アンプ、加速度センサとチャージアンプの組み合わせから 出力される波形例

デジタル信号処理

衝撃加速度では、剛体衝突や弾性波伝ぱなど機械的な加 振を行うので、共振など所望する周波数領域以外の信号は ノイズとして取り扱われる。そのため、必要な周波数帯を 見極めたデジタルフィルタの設計が必要となる。変位から 加速度を算出する際、差分による微分処理では高周波ノイ ズが線形増加するので、適切なカットオフ周波数をもつロ ーパスフィルタが求められる。他方、計算時間を気にしな いのであれば、移動型多項式近似による微分処理も有効で あるので、多項式の次数と近似に要する点数を設計に基づ いて適切に設定する。

難度を要するのは、加速度センサ単体の出力を評価する 場合である。通常、加速度センサはチャージアンプと組み 合わせて使用され、入力加速度は下記の流れで測定される。

入力加速度→加速度センサ→チャージアンプ→出力値 図3はやや誇張しているがそこに表示する通り、加速度セ ンサはピーク値を上昇させるが、チャージアンプは出力の ゼロ点の変動によりピーク値を低下させる。そのため、加 速度センサの感度を正確に評価したい場合は、チャージア ンプの周波数応答を補正しなくてはならない。しかしなが ら、低周波領域のハイパス特性に対して、単純に逆フーリ エ変換を行うことはできないので、チャージアンプのデコ ンボリューションフィルタを設計して、ゼロ点の変動を時 間領域で補正する。

ISO 16063-17の策定へ貢献

我が国の自動車業界においては、自動車衝突実験の計測 にはひずみゲージ式加速度センサが用いられており、それ らの校正方法として遠心加速度校正が国内デファクトス タンダードになっている。前述した通り、近年自動車業界 の世界的な動向として、特に欧州への海外輸出の際には

ISO/IEC 17025を満足した衝突実験の型式認証が求められ

ており、その背景から遠心加速度を用いた校正方法の国際 標準化が必要とされる。一方、世界的には低衝撃加速度を 用いて、ひずみゲージ式加速度センサは校正されているこ とから、両者の同等性を確保しなければならなかった。そ のため、産総研を中心に自動車業界と連携して、低衝撃加 速度と遠心加速度を用いた校正値の同等性を示すことで

[4]、ISO 16063-17の策定を行い、国内自動車業界の円滑

な海外展開を支援した。

衝撃加速度に代表される動的測定を伴う校正方法は今 後より一層求められていくと思われるので、今回ご紹介し た衝撃加速度の測定技術が産業界の皆様へご活用頂けれ ば幸いである。

参考文献

[1] C 60068-2-27: 2011 (IEC 60068-2-27: 2008) 環境試験方法- 電気・電子- 第2-27部: 衝撃試験方法

[2] ISO 6487: 2015 “Road vehicles ‒ Measurement techniques in impact tests ‒ Instrumentation”

[3] National Highway Traffic Safety Administration, Document 49 CER Ch. V(10-1-04 Edition)P520.

[4] 野里英明 他、” 衝撃校正と遠心校正における衝突試験用ひず みゲージ式加速度計のラウンドロビンテスト”、自動車技術会論文 集 46巻2号p461-466 (2015).

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参照

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