二輪車用ストロングハイブリッドパワーユニット
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.はじめに
ストロングハイブリッドシステムは 普通乗用車の世界では一般的になりつ つあるが,二輪車の世界では複雑で大 きくて実現が難しいと思われている.
また,普通乗用車に比べ,二輪車は 重量や出力当たりの燃費・CO2排出量 がよくないと思われている.
この二つの世間的意識を払拭するク リーンでエコでパワフルな二輪車用パ ワーユニットHV-Xを開発した(図 1).
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.基本構造
HV-X は 4 サイクル 250cm3ガソリ ンエンジン(以下:エンジン)1 個と 300V 三相交流同期モータ 2 個を遊星 歯車式出力分割装置(以下:出力分割 装置)で結合し,一つのケース内にコ ンパクトに収納したストロングハイブ リッド式パワーユニットである.
パワーユニットは出力分割装置と同 軸上に,それを挟むように 2 個のモー タを配置し,その前方にエンジンのク ランク軸を,その後方に後輪への出力 軸を配置する構造となっている.
エンジンのクランク軸左端にはスプ ロケットを設け,出力分割装置のキャ リア軸と一体で回るスプロケットに チェーンとダンパーを介して接続して いる. 第 1 モータは出力分割装置の左側に 配置され,その軸は円筒形を有し,そ の筒内をエンジンとつながるキャリア 軸が貫通し,右端は同装置のサンギア 軸に接続している.
第 2 モータは出力分割装置の右側に 配置され,その軸はダンパを有する カップリングを介して同装置のリング ギア外周に接続している.
リングギアは一体に形成された減速 ギアを持ち,それとかみ合う二段の歯 車式減速機を介して出力軸へとつな がっている.
潤滑系はエンジン潤滑系統にモータ ならびに出力分割装置への潤滑径路を 追加し,出力分割装置の軸芯より潤滑 油を遊星歯車軸摺動面と歯車かみあい 部に供給している.また,第 1・第 2 モータ側面にエンジン潤滑油を噴射 し,第 1・第 2 モータのステータ巻線 を冷却している.
冷却系は通常のエンジン冷却系のほ か,電動ポンプとラジエータを持つハ イブリッド装置冷却系の 2 系統を有す る.後者はケース内に形成された水 ジャケットを通じて第 1・第 2 モータ のステータを冷却している(図 2).
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.基本動作
基本動作はおおむね普通乗用車に採 用されているストロングハイブリッド 式と同じである.発進は減速機と出力 軸を介して直接的に後輪に接続されて いる第 2 モータで行う.その際,エン
ジンを止めておきたい場合は,エンジ ンが回動しないように出力分割装置の 差動原理に添って第 1 モータを回動す る.また,エンジンを始動させたい場 合は,エンジン始動回転数と始動トル クが発生するよう同様の原理に添い第 1 モータを制御する.その後はエンジ ンのスロットル開度ならびに第 1 モー タのトルクと回転数を制御することで エンジンの出力を駆動と発電に必要で 最適な比率で分配する.さらに,第 2 モータのトルクと回転数を制御するこ とによりライダの意図に沿いかつ高効 率な運転が可能となる(図 3).
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.走行性能の向上
ハイブリッド車の走行性能はバッテ リーからの電力を持ち出しながら走行 する「瞬時性能」とバッテリー収支を 平衡させながら走行する「連続性能」
とで表現される.「瞬時性能」として の加速性能は 16.97 秒(0~400m 全開 加速)で,250cm3エンジン搭載車よ り 2.4 秒,400cm3エンジン搭載車より 1.5 秒早い(当社比).
「 連 続 性 能 」 と し て の 最 高 速 は 250cm3エンジン搭載車と同等である
(図 4
,
5)(当社比).5
.燃費の向上
ハイブリッドの燃費はバッテリー電 力の出入りがゼロになる点を想定して 算出する.
そこで,測定したいモードパターンを 走り,燃料消費量とバッテリーに残る 電力の変化分を測定する.これらを複 数回行い,横軸がバッテリーに残る電 力の変化分,縦軸が燃料消費量のグラ フを作り,計測結果をプロットし回帰 直線を求める.この直線が縦軸と交差 する点(Y 切片),すなわち,電力の 出入りがゼロのポイントの値が燃費と なる. HV-X は,ヨーロッパ実用燃費測定 法 で あ る ECE40 ア ー バ ン サ イ ク ル モ ー ド に よ る 測 定 で, 燃 費 45~
50km/L を達成している.これは,当 社の同排気量 250cm3エンジン搭載車 に比べて60%~80%の燃費向上となる.
6
.おわりに
二輪車特有のエンジン・駆動系を一 体に形成する構造や小型化・高剛性設 計により,ストロングハイブリッドシ ステムの二輪車への搭載を可能とし た.その結果,二輪車にとって最大の 魅力である走行性能を損なわず,大幅 に燃費・CO2排出量を改善することが できた.今後は,課題であるパワーユ ニットの重量軽減とコストの作り込み とともに,さらなるレベルアップを目 指し研究開発を進めたい.
(原稿受付 2010 年 9 月 15 日)
〔細井幸治 ヤマハ発動機(株)〕
図1 パワーユニット ガソリンエンジン
第 1 モータ
第 2 モータ チェーン
出力軸 遊星歯車式出力分割装置
図 2 パワーユニット構造図
第 1
モータ 第 2
モータ インバー
タ バッテリー
15kW 電気変速分
駆動直行分 10kW
(最大)
15kW(最大)
10kW
(最大) 15kW
(最大) 15kW
(最大) 22kW
(持出)
(15kW連続) 20kW
ガソリン エンジン 遊星歯車式 出力分割装置 (最大) 減速機 出力軸 後輪
)
図 3 出力フロー図
図 4 加速性能比較図
0 50 100 150 200 250 300 350 400
0 5 10 15 20 25
所要時間 秒
到達距離 m
HVX 瞬時 当社 400cm3 当社 250cm3
図 5 走行性能比較図
00 20 40 60 80 100 120
200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800
駆動力 N
車速 km / h
HVX 連続 HVX 瞬時 当社 400cm3 当社 250cm3 走行抵抗
最高速
日本機械学会誌 2010. 12 Vol. 113 No.1105 977
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