005 プ オ { ノ レ ア ワ ト 中 の ス ト ロ ン チ ワ ム ‑90
お よ び セ シ ワ ム ‑ 1 3 7
1
緒 言1961年秋にソ連が核実験を再開し,翌62年にわたっ て米ソ両国は落大な量の核爆発実験を行った。その結 果相当量の核分裂生成物が降下している。われわれは 従来より環境の放射能調査の一環としてとのような放 射性降下物の測定を続けているが,放射性降下物の全 戸放射能とともに一ヶ月間の降水及落下塵挨中の90Sr
および、137CSの定量を1961年12月より 1963年12月まで の期間について行ったのでその結果を報告する。
2 .
測定材料および方法2 . 1
試 料大阪府布施市の近畿大学屋上に設置した気象庁所定 の面積5000
c m
の大型水盤に落下した一ヶ月間の雨水 と落下塵を採取し試料とした。一ヶ月間の降雨量およ び試料残澄量はTable1, Fig.1 Iζ示す。2
・2
分析試料の作成分析試料の作成ならびに分析法は文部省総合研究,
天然水中における人工放射性物質の迅速定量法1)2)
(班長三宅泰雄,代表執筆者坪田博行)を参考lとして 行ったがその大要を Fig.21と示す。
2・3分 析 法
得られた分析試料からSrおよびCsを分離するわけ であるが,ここに用いた方法はEDTAでFe,Alな どを隠蔽し, Ca, Sr, Baをシュウ酸塩として洗澱分 離し, この沈澱につきイオン交換法を適用してSrを 純粋に分離するものである。またCsは他のアルカリ 金属およびFeやAlのEDTA化合物とともに溶液中 にあるが, 乙の溶液から Csをリンモリブデン酸アン モニウム・セシウムとして沈澱分離する。その大要を Fig.3, Fig.4, Fig.5 Iζ示す。
なおイオン交換分離法に用いたカラムおよび溶離液
西 脇 安 牢 河 合 広
古 賀 妙 子 森 嶋 弥 重本 田 嘉 秀
木村雄一郎
Table 1. Rainfall and residual deposit Year Month I Rainfall (棚) Resid ue(g/ m:)
1961 12 40.5 25.60 1962 2 26.4 26.60 3 38.2 22.20 4 108.5 17. 76 5 114.0 30.48 6 305.0 31. 52 7 233.0 14.80 8 35.0 90.24 9
10 68.0 10.99 11 66.9 20.52 12 45.6 15.90 1963 l 27.4 20.46 2 24.1 26.24 3 51. 0 18.98 4 118.6 21. 66 5 290. 1 15. 72 6 146.0 17. 18 7 53. 7 13.02 8 94.4 13.56 9 79.3 12.82 10
11
12 56.5 13.56
は次の通りである。
カラム:Amberlite CG‑120, 100"‑'200mesh, ゆ1.8 x 14. Ocm NH4+型
溶離液:1・10gの酢酸アンモニウムをメタノーノレ :アンモニア水(1:1):水二60:15: 25 の混液にとかし 100mlとする。
n
.15gの酢酸アンモニウムをアンモニア 水(1:1) :水=1:4の溶液にとかし100 mlとする。*
東京工業大学原子炉工学研究所,近畿大学原子力 研究所主任研究員‑ 4 3 一
2 ・ 4
放射能の測 定法 (1) ストロンチウムー90の測 定
Fig.41と示すよ うに放射平衡に達 した90Sr̲90yから
Rainfall (mm)
300
200
100
@一一‑‑0 Rainfall
。ー・・・・‑0Residue
Residue (g/m2)
100
80
60
40
20 90yをFe(OH)aと
共沈させる。沈澱 を分離型ガラスフ ィノレターで炉別し,
アンモニア水(1:
1961 1962 1963 100)で洗糠後,さ
らにアセトンで洗
12 10 11 12 12 Fig. 1 Rainfal1 and residual deposit
って乾燥し,沈澱
の上を薄いマイラーでおおって測定試料台にのせ,そ れを普通のステンレス製試料皿に入れて,ローパック グラウンドカウンター(神戸工業製, LBC‑2型)で 放射能を測定した。 そして溶液から水酸化鉄 (90):の キアリアーとしての鉄)を分離したとき(時刻t;l) の 放射能 (dpm)を求め,乙の値を90Srの放射能値 (d pm)とした。 Fig.6に90Sr‑90yおよびとれからミノレ キングした90yの放射能の減衰を示す。
なお,放射能測定の標準試料として,電気試験所検 定の90Sr̲90yを用い, 90yミルキングを行い 90Srお よび90yを測定して計数効率を求めた。 (Table2)
試料(一ヶ月間の落下麗および降水) 試料水1t1と対して6N‑HC12mlを加え る。 蒸発乾固後秤量し全放射能値を計 測する。 乾固物を5000C電気炉で6'‑"'"
7時間灰化。 灰化物を6N‑HCI100ml 3回抽出した後遠心分離。
日Cl抽出液 残澄
蒸発乾固, HNOa処理(有機物分解〉
数回蒸発乾固 HClを加え蒸発乾田 HC15ml,水で100ml にする
P
液 沈 澱 (Si02)l
蒸 発 乾 固 秤 量 分析試料Fig. 2 Preparation of sample
(2) セシウムー137の測定
Fig.5 1と示す方法で得られた測定試料をウエル型 NaI (Tl)を検出器としたマルチチャンネル波高分析器
3"
(RCL社 製512チャンネノレ, 1一 x2"クリスタノレ〉あ 4
るいはシングノレチャンネル波高分析器(神戸工業製,
分析試料
3N‑HCl 3'‑""'4mlでとかし,水で100
m11とする。 20~ち酢酸ソーダ熔液を 液が赤色になるまで加える。
EDTA‑2Na塩3g加え煮沸 6~ち (NH4)2C204溶液50ml , 2N-HCl でP.H4.0とし, 4時間以上放置。
沈澱(アルカリ土類
i P
液 ( ア ム リ 金 属類, EDTA‑Al灰化 およびCs)
日Cl(1: 1)に溶解,水で50mllとする Feキアリアー5mg
NH40HでP.H6.0としFe,Al希土類 などを除去 分離型フィノレターで
P
過P
液 沈 澱流入液 1:カラム 〔流出イオン〕
溶離液
I
ータ
Ca, Sr, Ba,希土類
→
Ca 溶離液n
I Sr, Ba,希土類→
Sr frac. 6 N‑HCl I Ba,希土類』一一一一一一一一
→
Ba,希土類 Fig. 3 Analytical procedl,lre7"""
H
...,イオン交換分離法で得られたSr溶 液 砂血上で加熱,溶離剤を分解気化 少量の希塩酸を加えとかし, Srキアリア
ー10mg Feキアリアー5mgを加え,
2週間以上放置
900C 1ζ加熱, CO2 freeのアンモニヤ水 (1:1)を加えてPH6.0にする。
分離型フィノレターで
P
過P
液 沈 澱(Fe(OH)a,90Y) 炭酸ナトリウム飽和溶液を入れ
PH9.0 にする。
分離型フイノレターで炉過
P
液 沈離(炭酸ストロンチウム) ωSr,
89Sr Fig. 4 Determina tion of Sr 3"x3"グリスタJ,レ SA‑230型1000進計数装置)を用 いて 137CSのフォトピークの総計数値より放射能値を 求めた。 Fig.71乙得られた137CSのガンマ線スペクト ルを示す。なお放射能測定の標準試料として,電気試 験所検定の 137CSを用い,試料と同様に処理,測定し て計数効率を求めた。 (Tablei)ιpm
Standard "Sr+"Y 1963.5.釦Sr+"'Y
、、、
¥、気、 1962.3吋rザY俗
︑︑︑︑︑︑︑︑︑
︑町 民
︑︒
︑¥ ︑︑
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︑︑
10
︑︑︑︑︑︑︑︑
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︑ ︑︑︑︑ ︑︑︑︑︑︑
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︑︑台︑︑
令
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h︑
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︑︑骨︑︑︑⑤ ︑ ︑︑︑@ ︑ ︑︑ ︑︑ ︑︑@ 町 ︑︑. ︑ ︑︑ ︑︑︑︑ ︑︑ ︑︑︑
10 12 14
lime (days)
Fig. 6 Decay Curves of 90y
‑ 45‑
Csを含む溶液
Csキアリアー 20mgを加え,蒸発乾固,
HNOa処理数回,蒸発乾固,3N‑HNOa 10m!
水で50m!にする
O.lMリン酸L5mlを加え50"‑'600C加温,
10~ぢモリブデン酸アンモニウム溶液 20m!
を加えよく撹梓し,沈澱生成を促し1晩放置 分離型フィノレターでP過
沈 澱 炉液
(リンモリブデン酸アンモニウムセシウム) 6N‑NH40 H溶液に溶解
ポリカプセルに入れる
Fig. 5 Determination of Cs
Table 2 実効計数効率
90Sr 1 1. 14 12530. 81 540. 01 21. 3 I 11 1 2,32 15148. 611084. 61 21. 1 1 y線シンチレーシ 137CS 1 2, 32 1
問中似
6i21. 1I
ョ ン 計 数 装 置3 .
測定結果および考察3
・1
分離精度ならびに回牧率について 試料中の90Srおよび137Csを分離すると同じ操 作で検定された標準溶液を処理しそれからの分離 精度とともに回収率を検討した。その結果90Srに ついてはFig.61ζ示すように90yの分離は良好で あり,それから得られた放射能の回収率は90俗で あった。 137CSについてもリンモリブデン酸アン モニウム・セシウムを分離した残液にはFig.7に 示すように 137CSのフォトピークはなく良く分離 されていてその放射能の回収率は95%であった。3・2フオールアウト中のストロンチウム
‑ 9 0
,セシウム‑ 1 3 7
の測定値 (1) 降下量一ヶ月間の降雨および落下塵について1961年12 月より1963年12月までの約二年聞について測定し た結果をTeb!e3およびFig.81乙示す。これに よると,フォーノレアウトのいわゆる springma‑
ximumが顕著に現われている。即ち137CSにつ いては1962年5月;1963年6月に90Srについては 1962年5月, 1963年4月"'‑'6月にそれぞれ放射能
Oounts/60 min.
2000
1000
10 20
‑ ‑ ー ー ‑ ー ・
OS‑137 S landardb一一一一...Residual Sample
。---・・・・・・~05‑137 fr. 1963.5.
50 60
Standard Oounls
IODOD
5000
Fig. 7 Gamma‑ray spectra of Cs‑fraction
Table 3 Radiochemical analysis of monthly fallout deposits Year Monthl│gros(smβ Ci/krn2) 90CS (μCi/km2) 137CS(μCi/km2) 137Cs/90Sr
1961 12 27.451 65.34士'2.05 65.52:1: 18.40 1. 00 1962 2 41. 993 56.45土2.31 42.05土20.35 O. 75 3 165.426 329.01土 5.03 468.73土21.67 1. 43 4 79.453 295.26土4.35 351. 25土24.27 1. 19 5 60. 766 585.44土7.54 953.26士31.03 1. 63 6 59.904 382.38土6.31 829.87土32.64 2.17 7 40.902 384.26土7.58 564.34土31.94 1. 47 8 23.008 112.80土5.70 104.87土24.79 0.93
9
一 一 一 一
10 25.398 94.08土 3.41 184.10土25.46 1. 96 11 124.832 166.56土3.80
一 一
12 86.340 634.93土11.02 410.97土31.17 1. 09 1963 1 65.570 191. 34土4.40 195.25土25.33 0.99 2 58.767 199.48士4.89 189.04土21.0
。
0.953 101. 902 900. 7I:I: 14. 66 310.04土20.96 0.34 4 75,957 1092. 71土16.25 532.93土21.80 0.49 5 78.211 1105.11土18.34 1533.19土28.62 1. 39 6 132.068 1209. 11土18.34 5256.92土87.23 5. 15 7 10.770 708.32土14.02 1557.40土31.47 2.20 8 22.261 610.94士9.37 728.90:1:25.59 1. 19 9 19.782 532.82土12.77 191.32土21.56 0.36
10
一
11
一
12 7.744 252.04土8.83 622.81土21.86 2.47 Total 9753.00 15092.78 1. 55
‑ 46ー
R
I I
J 入 ‑AJ 〔へメ;
1 ~)b 1 1 ~Jö2 1 963
12 2 3 4 5 U 7 ~ 9 IU 11 1♀i♀a斗 5 O 7 凶 且 IU 11 12 mCil!lm' f:nonth
‑一一一‑‑‑e~'Sr
Cドー司開・ R 目。 l~~Cs 5.0
4.0
2,0
1.0 3.0
905r and 137CS in monthly deposits
のピークが認められた。 1961年秋にソ連が核実験を再 開し,翌62年にわたって米ソ両国は大量の核実験を行 った。その全爆発量は1961年以前に米英ソの三国が行 った量の約2倍に達する。3)(Table 4)
Tabie 3, Fig.8 Iζ示した 905r,137CSの月間降下 量を見ても1961年末, 1962年1月の値に比べその後増 加し, 1963年6月には905rについては1.2mcjkm2, 過去の大気圏内核実験
(米国連邦放射線協議会報告〉
│全爆発量 (Mt)I核分裂量 (Mt) 174 92
25 Fig. 8
120 Table 4
度 1945"‑'1958
1961 年
76 217
1962
ー一一一一‑・ "Sr mCi/km'
︒︐
a hF ︐ e v ︐ ︐ ︐ ︐
JP
十 ︐ ︐ ︐
︐ ︐ ︐ ︐
i!l ' '
争・ー・・・・・4 卸Cs
20
10
苦 言
1
制 ご !
斗ー
Cummulative deposition
Fig. 10, Fig. 11 に示すような結果を得た。
Fig. 9
137CS については 5.26mCijkm2という最高値を示し
ている。そしてこれらの降下積算量を Fig.9I乙示す。 セシウムー137とストロンチウムー90の放射能 の比
(3) ストロンチウム‑90,セシウムー137の放射能
と全戸放射能との相関
905r, 137CSの放射能と全戸放射能との相関をみると
司 '
d且官
(2)
刷Sr Aotivity (mOi/km')
1.0
0.5
.
・
50 1∞ 150
〈コ
Fig.10
The Correlation of gross β‑activity with 90Sr‑activity
Gross β‑activity (mCi/km2)
Fig.ll
The Correla tion of gross戸‑activitywith 137Cs‑acti vi ty
"'Cs/"'Sr
@
@
@
@
1ト @
@
1001 1962
じ〉
@
@ I.'TCS
Activity (mOi/k出宮)
4
2
1ト
@
自 由 一 @
' 1963
@
自
@ 自
@
.
50 ∞ 150
Gross β‑activity (mCi/km2)
@
申 自
〈コ
Fig.12
137CS/90Sr ratio in monthly deposits
12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11.12
‑ 48ー
1961年12月より1963年12月迄の降下物中の137CSと 90Srの総放射能の比は Table3に示すように1.55と いう値を得たがこの二つの核種の毎月の降下レベソレか ら計算された比はTable3; Fig. 12に示すように非 常に変動している。もし235Uの核分裂に由来する Sr とCsがいわゆる fractiona tionをうけなかったもの とすれば理論的に核分裂収率より推定される 137CSと 90Srの放射能の比は 1.8である。到しかしながら実際 にはいろいろな fractionationが行われる乙とが考 えられるので,時と場所によってこの比が可成り変動 するととが報告5)6) 7) 8) 9) 10)されている。またこれら の核種の核分裂収率も核分裂物質の如何によってさら に変化するものと思われるがわれわれが今日調査して 得られた137CSと90Srの総放射能の比は1.55で理論推 定値1.8に近かった。
4 .
む す び大阪府布施市近畿大学構内で採取した一ヶ月間の降 雨および落下塵中の90Srおよび137CSの定量を1963年 12月までの約2年聞について行った。その結果1962年 4,.......,6月, 1963年6月に90Srならびに137CSの月間降
下量のピークが認められた。そして1963年12月までの 約2年間の全積量は 90Srについては 9.8 rnCi/krn勺 137CS については15.1rnCi/krn2であった。また137CS と90Srの比についてみると,月間降下量から計算し た値は可成り変動しているが約2年間の総放射能から 計算した値は1.55であった。
一 一 参 考 文 献 一 一 1 )坪田博行:分析化学. 9, 783 (1955) 2)坪田博行:ib., 9, 905 (1955)
3 )田島英三,市川龍資:自然, 19, 106 (1964) 4) Langharn, W. H. and E. C. Anderson : Heー
alth Phys.
,
2,
30 (1959)5) Crooks, R. N. et al. : A. E. R. E. R 3094 (1959) 6) Crooks, R. N. et aL : A. E. R. E. R 3349 (1960) 7) Lockhart, Jr. et al. : NRL‑5390 (1960) 8) Lockhart, Jr. et al. :
J .
Geophys. Research65, 711 (1960)
9) Lockhart, Jr. et al. : ib., 65, 3987 (1960) 10) M.lzawa, H. Tsubota, T. Nagai :
J .
Rad.Research, 2, 29 (1961)
‑ 49‑