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中原中也研究

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Academic year: 2021

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中原中也研究

教 科 ・ 領 域 教 育 専 攻 言語系コース(国語)

瀬 口 雅 博

1 . 研 究 の 目 的 と 方 法

中 原 中 也 の 詩 に は 率 直 な 心 情 の 「 告 白Jがあ り、それが中原詩の魅力のー要因となっているの こ の 、 個 人 的 な 「 告 白 」 が 白 閉 せ ず に 普 遍 的 な 感 動 を 読 者 に 与 え 得 る の は な ぜ だ ろ う か 。 こ の 普 遍 の 源 泉 を 、 中 原 中 也 の 詩 人 像 を 描 く こ と を 通 し て 探 る こ と が 本 研 究 の 目 的 で あ る う そ の た めには、まず、虚心に中原の作品と向かい合い、

そ の 結 果 、 中 原 文 学 の 底 か ら 浮 び 上 る 論 点 を 取 り上げることとしたの

2.論 文 の 構 成

a 章 中原中也の生涯 第ー節

0 J

第二節 京 都 第三節 上京

第四節 ~ IlJ羊の歌』

第二章 詩 の 出 発

弟一節 ダダイズム

第二節 富永太郎

第二節 「秋の愁嘆j

第四節 「朝の歌Jと「サーカスj

第三章 中原中也の時代意識

第一節 日記・書簡等から

第二節 「朝鮮女」と「蛙声j

第四章 梶井基次郎・小林秀雄・

中原中也

結章 研 究 の ま と め と 今 後 の 課 題

指 導 教 官 田辺健二

3 .論文の内容

第 一 章 「 中 原 中 也 の 生 涯 」 で は 、 作 品 か ら 詩 人 像 を 描 く 際 の 補 助 線 を 得 る た め に 、 中 原 中 也 の三十年の生涯を概観した。

第 二 章 「 詩 の 出 発 」 で は 、 中 原 が 彼 固 有 の 詩 を確立してゆく過程を考察した。

第 一 節 「 ダ ダ イ ズ ムJで は 、 中 原 と ダ ダ イ ズ ム ( 具 体 的 に は 、 高 橋 新 吉 の 詩 集 『 ダ ダ イ ス ト

新吉の詩~)との出会いを取り上げ、中原が高

橋 の ダ ダ 詩 に 衝 撃 を 受 け た の は 、 既 成 の 価 値 を 転 倒 さ せ 、 新 た な 世 界 観 を 自 ら の 手 で 構 築 す る 高橋の言葉の用い方ではなかったか、と考えたっ

第 二 節 「 寓 永 太 郎j で は 、 富 永 太 郎 の 詩 を 考 察 し た の 富 永 の 詩 は 硬 質 な 詩 語 を 用 い て 書 か れ た 作 品 で あ る が 、 そ の 根 底 に は 、 「 心 の 支 へj

を 喪 失 す る こ と に よ っ て 詩 人 の 受 け た 傷 が あ っ た 門 作 品 で は 、 詩 人 が 一 方 的 に 働 き か け る こ と のできる(よって、対象からの働きかけのない) 人 工 的 な も の 、 無 機 質 な も の へ の 傾 倒 が み ら れ た 口 そ れ は 、 富 永 が 詩 の な か で 外 界 と の 関 係 を 模 索 し 、 「 私 自 身 を 救 助 」 す る た め に と っ た 牛A

の方法であったと考えられるの

第 三 節 「 秋 の 愁 嘆 」 で は 、 中 原 の 未 刊 詩 篇 か ら「或る心の一季節一一散文詩Jと「秋の愁嘆j

を 取 り 上 げ た っ い ず れ も 中 原 が 富 永 の 詩 に 刺 激 を 受 け て 書 か れ た 詩 で あ る の こ の う ち 、 「 秋 の 愁 嘆 」 に お い て は 、 富 永 の 「 秋 の 悲 歎jの 模 倣 で は な く 、 富 永 詩 の 向 こ う を 張 っ た 中 原 固 有 の

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詩の萌芽をみることができた。

第四節 í~ 朝の歌』と『サーカス ~J では、ま ず 、 中 原 の 初 期 詩 篇 を 代 表 す る 作 品 で あ る 「 朝 の歌Jと「サーカスjそれぞれの解釈を行い、

中 原 の 詩 が 多 様 な か た ち で 出 発 し て い る こ と を 確 認 し た 。 そ し て 、 中 原 の 詩 論 を 中 心 に 考 察 を 進め、中原が詩の形式や詩の言‑葉をイデオロギ ー や 伝 統 等 の 固 定 観 念 に と ら わ れ ず に 、 そ れ ぞ れ の 詩 に ふ さ わ し い も の を 自 由 に か つ 主 体 的 に 選 択 し て い る こ と を み たO ま た 、 中 原 は 詩 論 の な か で 「 大 衆 と の 合 作Jや 「 大 衆 の 通 念 」 と い っ た 観 点 を 持 ち 出 し て お り 、 こ こ に 中 原 の 詩 が 概 し て 平 明 な 言 葉 で う た わ れ る こ と の 鍵 が あ る

のではないかと考えた。

第 三 章 「 中 原 中 也 の 時 代 意 識 」 で は 、 中 原 が 彼 の 生 き た 時 代 を ど の よ う に と ら え て い た の か

を考察した。

第 一 節 「 日 記 ・ 書 簡 等 か らjで は 、 中 原 の 遺 さ れ た 日 記 や 書 簡 な ど を も と に 、 彼 の 同 時 代 へ の視線を探ったD

第二節 í~ 朝鮮女』と『蛙声 ~J では、作品「朝 鮮 女 」 と 「 蛙 声 」 そ れ ぞ れ の 解 釈 を 行 っ た 。 ま ず、「朝鮮女Jについては、(当時の朝鮮人女性 へ の ) 差 別 の 構 図 に 対 す る 自 覚 の 有 無 が 、 た と え ば 中 野 重 治 の 詩 「 雨 の 降 る 品 川 駅jや 高 見 順 の小説『し、ゃな感じ』などと、中原の詩「朝鮮 友 」 と が 決 定 的 に 異 な る 点 で あ る こ と を 指 摘 し た 。 ま た 、 詩 「 蛙 声 」 に つ い て は 、 中 原 は 必 ず し も 詩 に よ っ て 「 同 胞 へ の 忠 告 」 は 意 図 し な か っ た が 、 う た わ れ た 詩 が 、 当 時 の 社 会 を 反 映 し ていることは言い得るととらえた。

第四章「梶井基次郎・小林秀雄・中原中也」

で は 、 梶 井 、 小 林 、 中 原 の 文 学 的 出 発 が い ず れ も 大 正 末 年 で あ る こ と に 着 目 し 、 そ れ ぞ れ の 相 違 に つ い て 考 察 し た 。 特 に 中 原 に つ い て は そ の

後 の 詩 の 展 開 を 取 り 上 げ たO 大 正 末 年 、 梶 井 や 小 林 は 行 き 場 を 失 っ た 自 意 識 を 主 題 と し て 描 い て い る が 、 彼 等 に 共 通 し て み ら れ る の は 、 「 一 種 の ウ ル ト ラ ・ エ ゴ イ ス ト 」 で あ る 志 賀 直 哉 に 惹 か れ な が ら 、 ボ ー ド レ ー ル を は じ め と す る 西 欧 近 代 の デ カ ダ ン ス に も 魅 せ ら れ て い る と い う 構 図 で あ っ た 。 こ の 裂 け 目 が 当 時 の 彼 等 の 問 題 で あ っ た と 考 え ら れ る 口 中 原 も 大 正 末 年 に 、 詩 の 出 発 を 果 た す 。 中 原 が 梶 井 や 小 林 と 比 べ て 特 徴 的 な の は 、 外 に 向 け ら れ る 視 線 が 希 薄 な こ と で あ り 、 内 向 に 徹 し た 視 線 を 持 っ て い る こ で あ る と と ら え たD 中 原 の 内 向 の 視 線 は 、 自 ら が 詩 人 で あ る こ と は 宿 命 で あ る と い う 詩 人 と し て の 自 負 が 背 景 に あ り 、 内 向 に 徹 す る こ と で 、 中 原 は芸術家の(天使状態〉を得ようとしていた。

こ の 天 使 状 態 と は 、 中 原 が 「 詩 論 」 で 説 く 「 名 辞以前の世界」に浸ることのできる状態であるO

詩 集 『 在 り し 日 の 歌 』 で 多 く う た わ れ る 子 ど も は 中 原 に と っ て は 「 名 辞 以 前 の 世 界 」 に 棲 む 存 在 で あ り 、 ま た 〈 在 り し 13) の 中 原 も そ こ に は 重 ね ら れ て い た 。 詩 で う た わ れ る 子 ど も た ち が 不 吉 な 影 を 苧 み 、 あ る い は 死 児 で あ る の は 、 失 わ れ で は な ら な い も の が 失 わ れ る と い う 自 ら の 危 機 意 識 の 表 れ で あ り 、 そ れ と と も に 中 原 自 身 の 〈 在 り し 日 〉 の 喪 失 を も そ こ で は う た わ れ て いたO し か し 、 中 原 が 〈 在 り し 日 〉 と し て う た うのは自らの無垢性の喪失にとどまらなかった。

「骨Ji一つのメルヘンJi言葉なき歌Ji蛙声J と進む晩年の作品では中原の生の希薄がみられ、

詩 人 中 原 の 詩 は 、 中 原 中 也 の 生 の 一 歩 先 を 絶 え ず歩んでいた、ととらえることができた。

結 章 で は 、 各 章 の 考 察 の ま と め を 行 っ た 。 続 け て 、 研 究 全 体 を 通 し て 得 ら れ た 中 原 中 也 の 詩 人 像 を 記 し 、 中 原 の 言 葉 が 心 に 即 し て い る が 故 に彼の詩は自閉しないこと述べた。

参照

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