深 淵 ・第0勧 銀 頭 取 達 の 犯 罪
橋 本 光 憲
目 次
は じめ に
1事 件 発 生 とそ の経 過 2検 察 冒頭 陳 述 の 内容 3見 え隠 れ す る様 々 な問 題 4一 勧 首 脳 が は ま った 陥 穽 おわ りに
は じ め に
1997年,日 本 の金 融 界 に は余 りに も多 くの こ とが 起 こ った。 す な わ ち 日産 生 命,三 洋証 券,北 海 道 拓 殖 銀 行,山 一 証 券 等s金 融 機 関 の相 次 ぐ破 綻 。 こ
の余 波 は,12月 の30兆 円 もの公 的資 金 投 入 の決 断,98年 に入 っ て の長 銀 破 綻 が らみ の金 融 安 定化 の法 制 化 へ の動 きへ と及 ん で い る。
一 方,7月 に は野 村 証 券,第̲̲̲.勧 業 銀 行 の総 会 屋 が らみ の 反社 会 的 行 為 の 懲 罰 と して,大 蔵 省 が行 政 処 分 を発 表 した 。 特 に,第 一 勧 銀(略 称 ・一 勧) の場 合,一 連 の 問 題 が 歴 代 頭 取 達 に よ る犯 罪行 為 で あ る こ とが 明 らか に な る に つ れ て,会 社 社 会 の深 淵 を覗 く思 い が して,慎 然 とさせ られ た。
なぜ この よ う な犯 罪 が起 こっ た の か。 そ の遠 因 は何 だ っ た の か。 そ して,
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歴 代 の会 長 や頭 取 が な ぜ この よ うな陥 穽 に は まった のか 。 犯 罪行 為 が 明 らか に な る過 程 で の役 員 達 の あ の 「どた ば た劇 」 は何 だ っ た の か。 公 表 資 料 は無
きに等 しい。 企 業 はた とえ犯 罪 行 為 をお か して も,公 表 は渋 るか らだ 。 大 和 銀 行 ニ ュー ヨー ク事 件 の場 合 は,米 国 当 局 との司 法 取 引 に よっ て,問 題 は うや む や の裡 に視 野 か ら消 え て い る。 一 勧 事 件 は幸 か不 幸 か司 直 の手 に
よ り追 及 が 進 め られ て い る。 これ らの資 料 と幾 つ か の論 評 を参 考 に,究 極 の 内 部 犯 罪 と もい うべ き本 事 件 の 問題 点 を探 って み た い。
1事 件 発 生 とその経 過
まず,朝 日新 聞(97.6 6)が ま とめた事 件 の経 過 を示 そ う。
第一勧 業銀行 事件 の経過
1971年 84年3月
85年 89年2月
12月 90年9月
10月 91年3月
6月
8月
11月
92年3月
第一銀 行 と日本勧 業銀行が合併。
総会屋 グル ープの小池隆一代表 が第一勧銀株1000株 保有。その 後 の買 い増 しも合 わせ,保 有株 は2万 株以上 に。
小池嘉矩 ・不動産会社社長名義 の 口座 開設 。
小甚 ビルデ ィングの口座 開設。 四大証 券株計120万 株 の購 入資 金 として31億 円 を融資。株の運用資金 として10億 円 を融資。
株 の運用資金 としてさ らに10億 円 を融資。
大蔵省検査 を控 え,不 動産会社 に対 す る25億 円の う回融資 で融 資残 を減額,検 査対象 か ら外 す工作 。
大和信用分 と合 わせ,ゴ ル フ場 開発 資金30億 円 を融資。
小池代 表 のマ ンシ ョ ン購 入資 金4億4000万 円 を大 和信 用 が融 資。総務部 が紹介,実 質的 に債務保 証。
野村証 券で一連の不祥事が発覚。田淵義久社長辞任,酒 巻英雄 社長就任。
日銀 考査 で融資案件 を記載 す る調 査表 に小 池社 長 らの取 引 を 記載せ ず,考 査対 象か ら外 す工 作。
ゴル フ場 開発資金 の融資 の うち大和 信用 分 を第一 勧銀 が 肩代 わ り。
小池代 表が株主総会 を前 に野 村証券 に議案提 案権 の行使 通告, 質問状 を送付。
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94年10月 大 蔵 省 検 査 を逃 れ るた め,小 甚 ビル に延 滞 利 息分6億 円 の 追 加 融 資 。
95年1〜6月 野 村 証 券 が4970万 円 を小 池 代 表 に利 益 供 与 。
3月 回収 困 難 とな っ た 小 甚 ビル名 義 の 融 資 の う ち26億 円 を損 失 と して会 計 処 理 。
96年1月 日銀 考 査 で 小 甚 ビル へ の融 資 を報 告。
97年2月 第 一 勧 銀 が 担 保 と して い た 四 大 証 券 株 を系 列 証 券 会 社 に売 却 。 3月 未 回収 金 約46億 円 の うち44億3900万 円 を間i接償 却 。
5月 野 村 証 券 の 常務 ら3人 を商 法 違 反 容 疑 な どで逮 捕 。小 池 兄 弟 を 商 法違 反容 疑 で逮 捕 。
東 京 地 検 が第 一勧 銀本 店 な どを捜 索 。
近 藤 克 彦 頭 取,奥 田正 司 会 長 らが 引 責 辞 任 。 野 村 証 券 の酒 巻 社 長 を商 法 違 反容 疑 な どで逮 捕 。
(出 所)朝 日 新 聞,1997年6月6日 付 。
この表 は,も う一 方 の 当事 者 で あ る野 村 証 券 との 関 わ り合 い の 中 で書 か れ て い るが,一 見 して 分 か る こ とは第 」 勧 銀 事 件 が突 発 的 な事 件 で は な く,長 い年 月 の 中 で温 存 され て きた 問題 で あ る こ とで あ る。 しか も,バ ブル の頂 点 か ら転 げ落 ち る中 で表 面 化 した 経 済 事 件 とい う側 面 を もって い る。月刊 誌 『選 択 』(97年5月 号)が,「 第m銀 の 『秘 事 』 が遂 に露 見 」 と報 じて い る所 以 で もあ ろ う。
第 一勧 銀 事 件 の初 期 の報 道 として は,1997年5月20日 の東 京 地 検 特 捜 部 の 本 店 な どへ の 家 宅 捜 索 が あ る。 日本 経 済 新 聞(日 経 新 聞,日 経)は,連 日次
の よ うな見 出 しで,事 件 の経 過 を報 じて い る。
5.20(夕)(一 面)第 一 勧 銀本 店 な ど捜 索 総 会 屋 融 資 を解 明 野 村 事 件 で東 京 地 検 株 違 法 取 引 の 原 資
第 一 勧 銀 首脳 の進 退 検 討 巨額 融 資 の 責 任 免 れ ず 21
5.21(夕)
"小 池担 当"代 々引 き継 ぎ 審査部 門反対押 し切 り 第」勧 銀の総務部 長,巨 額融資 で
(一面)第 一勧銀会長 ・頭 取辞 任へ 総会屋融 資で引責 野 村事件 宮崎相談役 も
深 淵 ・第 一・勧 銀 頭 取 達 の 犯 罪165
第一勧 銀 と小池代 表側 をめ ぐる資金の流 れ
約75億 円未 返 済
約300億 円 融 資
if+y.
約31億 円
(出 所)日 本 経 済 新 聞,1997年5月20日 付 。
第 一勧 銀 藤 森 氏 ら相 談 役 退 任 首 脳 人 事 で最 終 調 整 融 資 仲 介 の社 長 親 族 結 婚 式 第 一 勧 銀 元 頭 取 ら出 席 また,こ れ らの一連 の報 道 に先 立 って,5.15に 「野 村 利 益供 与 絡 みの 総 会 屋 向 け 第 一 勧 銀,75億 円 回収 不 能 ほ とん ど担保 割 れ 」,5.16に は「金 融 ・ 証 券 界 で影 響 力 誇 示 小池 隆一 容 疑 者 『理論 派 』 豊 富 な資 金 力 」 の記 事 の 中 で,「 資 金 の原 資 は第 一 勧 業 銀 行 側 か らの融 資 だ った 」との指 摘 を紹 介 して い る。 さ らに5.19に は「小 池 容 疑 者 側 向 けの75億 円第 一 勧 銀 が全 額 償 却 不 良 債 権 処 理 ず さ ん融 資 浮 き彫 り」 と報 じて い る。
そ して,問 題 の20日 朝 刊 で は,社 説 で 「第 一 勧 銀 は 『総 会 屋 融 資 』 を説 明 せ よ」と主 張 す る一 方,「 東 京地 検 一 勧 融 資 に重 大 関 心 不 動 産 資 金 の 出所 追 及 」 と強 制 捜 査 を見 越 して い る。 その 後 の報 道 とな る と,枚 挙 に暇 が な い。
項 を改 め て,問 題 点 を洗 い出 す こ と と し よ う。
2検 察 冒頭 陳 述 の 内容
各 種 報 道 が 入 り乱 れ る 中 に あ っ て 第 三 者 と し て 最 も頼 れ る の は,検 察 肩 報 で あ ろ う。 従 っ て,議 論 を進 め る 前 に,98.2.2に 東 京 地 裁 で 開 か れ た 一 勧
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事 件 の公 判 で述 べ られ た検 察 冒頭 陳 述 の 要 旨 を紹 介 しよ う。
同 日付 の 日経(夕 刊)は 次 の よ うに述 べ て い る。
総 会 屋 グル ー プ代 表,小 池 隆 一 被 告(54)に た い す る第̲̲̲.勧業 銀 行 の利 益 供 与 事 件 で,商 法 違 反罪 に問 わ れ た元 会 長,奥 田正 司 被 告(66)ら11人 の第2回 公 判 が2日,東 京 地 裁(木 村 烈 裁 判 長)で 開 か れ た。 検 察 側 は 冒頭 陳述 で,約117億 円 の違 法 な迂 回(う か い)融 資 が,奥 田被 告 ら トップ 主 導 で行 わ れ た 点 を詳 述 した。
冒頭 陳 述 に よ る と,小 池 被 告 へ の追 加 融 資 に は当初,審 査 担 当 役 員 だ った 金 沢 彰(62),内 田恒 雄(60)両 被 告 が難 色 を示 した。 しか し,宮 崎 邦 次 元 相 談 役(故 人)と 奥 田被 告 は,第 一 勧 銀 歴 代 首脳 と親 しい元 出版 社 社 長,木 島力 也氏(故 人)の 影 響 力 を恐 れ,小 池被 告 の 要 求 に応 じ る こ
とを決 め,92年9月,都 内 の料 亭 で 木 島氏 に融 資 継 続 を伝 えた。
一 方,94年 暮 れ の大 蔵 省 の検 査 の 際,内 田 被 告 や総 務 部 幹 部 を中心 に, 不 良債 権 化 して いた 小 池 被 告 の融 資 の隠 ぺ い 工作 を行 っ て い た。
(以下 省 略)
検 察圓頭 陳述 の要 旨
第 一勧業 銀行 の利 益供与 事件公判 の検 察側 冒頭 陳 述 の要 旨は次 の通 り。
(敬称略,肩 書 は当時)
〔第一勧業銀行 にお けるいわ ゆる総会屋 との対応 等〕
第一勧 業銀行 で はいわ ゆ る与党総会 屋 に対 して はyゴ ル フや飲 食 等 の接 待,中 元 ・歳暮等 の贈答 を行 うほか,株 主総会 で議長 を務 め る会長 ない し頭 取 や総務部幹 部が会食 を行 うな どして,手 厚 く接 遇 していた。
第一勧業銀行総務 部 では,同 行 の歴代最 高幹部 と親 交 を有す る元 出版社社 長木 島 力也(故 人)が,同 郷 の小池 隆一 を 「隆 ち ゃん」 と呼 び,日 ごろか ら,同 人 を引 き立 てていた こ とか ら,小 池 を木 島 の まな弟子 と認 識 して い た。
木 島 は昭和46年 の合 併以 前か ら第 一銀行 の井上 薫会 長 や 日本 勧 業銀 行 の 横 田郁頭取 と親 密で,宮 崎邦次頭取 の時 か ら第一勧 銀の幹部 らが木島 を囲ん で年2,3回 マー ジャン大会 を開 くようになった。
〔犯行 に至 る経緯 等〕
第一勧 業銀行 が小 池か ら有価 証券 取 引資 金 と して30億 円の融 資 を要 深淵 ・第一勧銀頭取達の犯罪167
求 され た経 緯 等
小 池 は,野 村証 券 の 口座 に資 金 を投 入 して利 益 を提 供 させ よ う と考 え,資 金 を第 一 勧 業 銀 行 か ら調 達 す る こ と とし,平 成4年7月 上旬 ご ろ,同 行 総 務 部 を訪 れ,同 部 総 括 次 長 の被 告人 渋 谷竜 夫 に対 し,30億 円 を上 限 とす る継 続 的 な融 資 を強 く要請 した 。
1.被 告人 金 沢彰 らが 小 池 に対 す る30億 円 の融 資 に反 対 した状 況 等
被 告 人 金 沢 や 内 田恒 雄 は,融 資 の実 行 を承 認 しなか っ た。小 池 は,木 島 の 事 務 所 を訪 ね,同 人 に第 一 勧 業 銀 行 最 高幹 部 らへ の 口添 え を依 頼 した。
1.被 告人 奥 田 正 司 らが 小 池 に対 す る融 資 を指 示 した経 緯 等
平 成4年9月4日 の 「吉 兆 」 に お け る会 食 で は,木 島 が被 告人 奥 田 と宮 崎 に向 か っ て 「例 の件 は よろ し く頼 む 」 と述 べ て小 池 に対 す る新 規 融 資 の 実行 方 を依 頼 。 宮 崎 は 「わ か りま した 」 と言 って約 束 し,奥 田 も これ に同 調 す る 趣 旨 で うな ず い た。
1.審 査 担 当 役 員 の 金 沢 らが 奥 田の 指 示 を受 け融 資 を承 認 した経 緯 等 金 沢 及 び 内 田 は,融 資 の実 行 に難 色 を示 した が,会 長 及 び頭 取 が融 資 に応 ず る意 向 を示 して い る以 上,審 査 担 当役 員 と して は右意 向 に従 わ ざ る を得 な
い と考 え,方 針 を変 更 。 金 沢,内 田,渋 谷,被 告 人 田 中 賢二 の間 で,第 一 勧 銀 が,大 和 信 用 を通 じ小甚 ビル デ ィン グ名 義 あ て に融 資 を実 行 す る迂 回融 資
が ま とま った 。
1.第 一 勧 業 銀 行 が 大 和 信 用 に対 して 実質 的債 務 保 証 を約 束 した状 況 大 和 信 用 は,極 め て 回収 不 能 の危 険性 の 高 い融 資 で あ った こ とか ら迂 回 融 資 へ の協 力 に難 色 を示 した 。 この た め,同 行 が 債 務保 証 を行 った と同 様 の経 済 的効 果 を もた らす措 置 を とる こ とに な った 。
1.第 一勧 業 銀行 が 小 池 に対 す る個 別 貸 し出 し を実 行 した経 緯 等
奥 田 は,同 行 が 実 質 的 な債 務 保 証 を した上 で迂 回融 資 を行 う もの で あ る こ とを認 識 した上 「分 か りま した。総 務 の 方 で き ち ん と管 理 して や って 下 さ い」
と述 べ て,実 行 に移 す こ とを了承 し,宮 崎 も同様 に了 承 した 。
これ を受 けて,渋 谷 は平 成4年10月 上 旬 ご ろ,小 池 を総務 部 に呼 び,「融 資 は,大 和 信 用 経 由 で対 応 し ます が,窓 口 は 当行 に な ります 。 この融 資 に つ い て は,最 終 的 に 当行 が責 任 を持 つ こ とにな って い るの で,返 済 の 方 は よ ろ し くお願 い し ます」 と述 べ,小 池 は 「分 か りま した 。 銀行 さ ん に は迷 惑 をか け ませ ん」 と返 答 した。
〔犯 行 状 況 〕
1.極 度貸 し出 しの共 謀 が 成 立 した経 緯
小 池 は,平 成5年4月 上 旬,融 資 を極 度 貸 し出 し に変 更 の上 継 続 す る こ と を要 請 した。 猪 爪 博 ら は,金 沢,内 田恒 雄 に 「総 務 部 と して は応 諾 せ ざ る を 得 な い」 と了 承 を求 め た と ころ,内 田 ら は 「や む を得 な い だ ろ うな 」 と承
168国 際 経 営 論 集No.16・171999
認 。 「この こ とは総 務 部 か ら会 長,頭 取 に も報 告 して お くよ う に」 と指 示 し た。
宮崎 は 「分 か りま した 。 それ で進 め て くだ さい」 と了承 した。 また猪 爪 ら は奥 田 に対 し 「小 池 氏 か ら資 金 融 資 に つ い て継 続 依 頼 が あ り宮崎 会 長 に も了 解 い た だ き ま した」 と報 告f奥 田 は機 嫌 を損 ね る と,小 池 が株 主総 会 を紛 糾 させ るお それ が あ る こ とか ら,迂 回融 資 を継 続 して い くこ とを 了承 した
。 第 一 勧 業 銀 行 で は,前 回 の大 蔵 省 検 査(MOF検)が 平成2年10月 に行 わ れ た こ とか ら,従 前 の慣 行 に よれ ば4年 後 の平 成6年 秋 に 同行 に対 してMOF 検 が 行 われ る こ とが予 想 され て いた 。平 成6年9月 ご ろ,被 告人 猪 爪 及 び被 告人 草 島 道 能 は,同 行 本 店 内 にお いて,審 査 担 当役 員 の 被 告 人 内 田及 び被 告 人寺 沢 に対 し,過 去 のMOF検 等 に お い て第 一 勧 業 銀行 が検 査 逃 れ の た め の 工 作 を行 って きた状 況 等 に つ い て説 明 した上 ,今 回 のMOF検 の対 応 策 に つ い て指 示 を仰 い だ。
被 告 人 内 田 に お い て,被 告人 猪 爪 及 び 被 告人 草 島 に対 し,小 甚 ビル デ ィ ン グ名 義 あて の ゴル フ場 関 連 融 資 及 び小 池 嘉 矩 あ て の 全 融 資 に つ き利 息 の 支 払 い の延 滞 状 況 を解 消 させ た上,右 各 融 資 を小 池 嘉 矩 名 義 あ て に一 本 化 し 一 本 化 した 当 該 小 池 嘉 矩 名 義 あ て の 融 資 をMOF検 の検 査 対 象 か ら は ず す,
こ とを内 容 とす る検 査 逃 れ の た め の 工 作 を行 う よ う指 示 し
,被 告 人 寺 沢 も
「小 池 に,う ち とは関 係 の な い とこ ろか ら借 りて こ させ て延 滞 利 息 を払 わ せ れ ば よ いの で は な い か」 旨述 べ て,右 工 作 をす る こ とに賛 成 した。
これ を受 けて ・被 告 人猪 爪 及 び被 告 人 草 島 は,MOF検 逃 れ の た めの 具 体 的 な 方法 につ いて検 討 を重 ね,ス キー ム を取 りま とめ た。
被 告 人 内 田 は,平 成7年1月 ご ろ,被 告人 奥 田 に対 して,平 成6年 度 下 期 にお け る不 良 債 権 処 理 の見 通 し を報 告 した 際,被 告 人 奥 田 は,「当行 か ら直i接 融資 して い る もの は,そ の 方 針 で整 理,縮 小 して も らい た い 。大和 信 用 を通 じて融 資 して い る もの に つ い て は,資 金 の管 理 を十 分 行 い なが ら これ を継 続 して も らい た い 」旨述 べ て,本 件 迂 回 融 資 に つ い て は 当面 継 続 して い くこ と を指 示 した。
1.罪 証 隠 滅 の状 況 等
第一 勧 業 銀 行 総 務部 は,証 券 取 引等 監 視 委 員会 の野 村 証 券 等 に対 す る調 査 が 進 展 して きた こ とに危機 感 を持 ち,同 行 の 関係 者 が事 情 聴 取 を受 け る事 態 に備 え て,平 成8年12月 ころ,① 小 池 は第 一 勧 業 銀 行 の株 主 で あ るが
,商 法 改 正 後 総 会 屋 活 動 は して い な い② 同行 の小 甚 ビル デ ィ ン グ名 義 あ て及 び小 池 嘉 矩 名 義 あ て の 融 資 は 小 池 と は 無 関 係 で あ る③ 大 和 信 用 か ら小 甚 ビ ル デ ィ ング 名義 あ ての 融 資 につ い て,同 行 は単 に融 資 を紹 介 しただ けで あ り,迂 回融 資 で はな く,貸 し出 しの 詳 細 も把 握 して い な い な ど とす る内容 虚 偽 の想 定 問 答 集 を作 成 し,こ れ に基 づ い て同行 の会 長,頭 取 そ の他 の 関係 役 員 や 総
深 淵 ・第 一 勧 銀 頭 取 達 の犯 罪16g
務 部 の歴 代 幹 部 ら と口裏 合 わ せ を行 った 。
第 一 勧 業銀 行 で は,小 池 に配 慮,何 ら債 権 回収 の手 段 を講 じて こな か っ た 事 実 を糊 塗(こ と)す るた め,平 成9年1月 下 旬 こ ろ,急 遽(き ゅ う き ょ)小 池 側 と交 渉 して担 保 に入 っ た株 式 を処 分 す る こ と と し,勧 角証 券 を通 じ,証 券
4社 株 式30万 株 を含 む これ らの株 式 を売 却 して同 行 の債 権 に充 当 した。
(出所)日 本 経済新聞,1998年2月2日 付(夕 刊)。
98.2.2の 日経 新 聞 は,本 事 件 の 流 れ を,下 記 の よ う に 図 式 化 して 見 せ て くれ る。
第 一 勧 業 銀 行 の 利 益 供 与 事 件
・著一鯉
元出版 社社長 木島力 也氏
(故入)
「
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,・ 霧
騨 馨
元会長 宮崎 邦次
奥 田正 司被 告 元相談役(故 人)
ぴ 資を指小
歴 代 トップ と親 交
確醗 灘
92年9月都内で会 食,小池被告への 融資継続依頼株 鵬 会に協力
一
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1圃(起 分 〕 」譜
響 ・:一.獲鶴
難各社
i30万 株
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所 得元 役 員 ら10被 告
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直接 融資
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総 会屋 小池隆 被 告
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野村証券
山 一証 券
大和証券
瞭 講
(出所)日 本経済新聞,1998年2月2日 付。
と もあれ,参 議 院 予 算委 員 会 に お け る参 考 人 招 致 にお け る近 藤 克 彦 頭 取 ・ 宮 崎 邦 次 相 談 役 へ の 質 疑(5.28),衆 議 院 予 算委 員 会 にお け る近 藤 頭 取 へ の 質 疑(6.5)の 内容 は,口 裏 合 わ せ の虚 偽 の 回答 だ った こ とが 分 か る。
東 京 地 検 特 捜 部 は,6月5日 第 一 勧 銀 役 員 ら4人(猪 爪 博,渋 谷 竜 夫,草 島 道 能,真 鍋 卓 史 ら総 務 関 係 者),6月10日 元 副 頭 取 ら4人(金 沢 彰 元 副 頭 取,内 田恒 雄 元 副 頭 取,田 中 賢二 元 専 務,寺 沢 康 行 元常 務)を 相 次 い で逮 捕 した。6月11日 の 日経 新 聞 は,一 勧 担 当 役 員 の流 れ を次 の図 で 示 して い る。
第 一 勧 業 銀 行 は,5月22日,総 会 屋 へ の融 資 の責 任 を取 る形 で近 藤 克 彦 頭
170国 際 経 営 論 集No.16・171999
第 一勧 銀,審 査 ・総 務 担 当役 員
叢 一 響
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総 田 中 元 専 務 務
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総 務 部 次 長 圃 渋 谷
兀取 締 役
(出 所)日 本 経 済 新 聞,1998年6月11日 付 。
常務総務部長
薪 橋 支 店 長 総 務 部 長 取 締 役 総 務 部 長 鮪開■翻聡・鱒蜘・・朋圏開1レ■→ ■ ■→
取 と奥 田 会 長 が 引 責 辞 任 し,藤 田一 郎 副頭 取 が 頭 取 に,摩 尼 副 頭 取 が会 長 に そ れ ぞ れ昇 格 す る6月27日 付 の人 事 を決 め た(5月23日 付 日経 等)。
しか し,内 定 人 事 発 表 の 記者 会 見 で藤 田氏 は審 査 担 当役 員 だ った 際,問 題 の総 会 屋 関連 の融 資 を知 っ て い た事 実 が判 明 した 。 同 行 は役 員 らが逮 捕 され た6月5日 の記 者 会 見 で は,予 定 通 り人 事 を進 め る と して い たが,批 判 の 高 ま りに こた え られ な い と判 断 した 。 そ して,「 第 一勧 銀 首脳 が総 退 陣 『藤 田頭 取 』白紙 に 総 会屋 融 資 専務 以 上 引 責 へ 」(6月8日 付 日経)と な った。 藤 田 氏 は,特 捜 部 か ら6月10日 参 考 人 と して事 情 聴 取 を受 け,13日 逮 捕 され る に 及 ん で,頭 取 就 任 は ご破 算 とな った 。
6月11日 付 同紙 で は,次 期 頭 取 に内定 した杉 田 力 之 常 務 が10日 ,記 者 会 見 し,問 題 融 資 が 「組 織 ぐる み 」 の もの で あ る こ とを認 め,謝 罪 した。 事 件 と のか かわ りあ い につ い て は 「昨 年12月 に不 良 債 権 と して今 回 の 融 資 を知 っ た が,担 当 外 な ので 総 務,審 査,融 資部 門 に任 せ た」 と直 接 の 関与 を否 定 した
。 副 頭 取 に内定 した 金 子 崇輔 専 務 な ど他 の4人 の代 表 取締 役 は い ず れ も 「事 件
深淵 ・第一勧銀頭取達の犯罪171
に は全 く関与 して い な い」 と述 べ た 。
6月17日 の 日経 紙 で は,95年 半 ば ご ろ,宮 崎 邦 次 前 相 談 役(13日 付 で辞 任) が,奥 田正 司 前 会 長 を会 長 室 に呼 び出 し,2人 同 席 の場 で 元 副 頭 取 の金 沢 彰 容 疑 者 か ら総 会 屋 向 けの 問 題 融 資 に つ い て説 明 を受 けて い た こ とが16日,関
係 者 の話 で 分 か っ た,と 報 じて い る。 また,6月26日 に は元副 頭 取 の金 沢彰 容 疑 者 が95年3月,退 任 の直 前,宮 崎 ・奥 田 氏 に小 池 容 疑 者 向 け融 資 報 告 が 行 わ れ た こ と,翌27日 に は小 池 容 疑 者 向 け う回融 資 報 告 を歴代 審 査 担 当 役員
が数 回,92年 以 降,宮 崎 ・奥 田氏 に行 って い る こ とが指 摘 され て い る。
そ の 間,i捜 索 の手 は宮 崎 ・奥 田氏 に も及 び,6月27日 午 後 宮 崎 邦 次 前 相 談 役 と奥 田 正 司 前 会 長 か ら参 考 人 として事1青聴 取 を し,28日 も午後 か ら約8時 間 に わ た って行 わ れ,宮 崎 氏 は29日 午 前 零 時 す ぎ帰 宅 した 。 同 日朝 首 つ り自 殺 を図 り,夕 刻 死 亡 した 。 杉 田頭 取 らへ の遺 書 に は,「 責任 を全 うす る」と書 か れ て い たが,帰 宅 の車 中 で関 係 者 に 「特 捜 部 に記 憶 に な い こ とを聴 か れ て
い る」 と洩 ら して い た とい う(6.30日 経 紙 ほか)。
そ して,7月4日,奥 田正 司 前 会 長 が 逮 捕 され た こ とで新 局 面 を迎 えた 。 捜 査 の進 展 に よ り判 明 した事 件 の 内容 は,前 掲 の検 察 の 冒頭 陳 述 に尽 きる訳 だ が,容 疑 者 達 は大 筋 で あ る い は全 面 的 に この 内容 を認 め て い る とい わ れ る。
従 っ て,こ の 内 容 か ら問 題 点 を整 理 して ゆ くの が,次 の課 題 とな ろ う。
た だ し,98年1月14日 の東 京 地 裁 の公 判 で は,藤 田 一郎 被 告 は 「共 謀 した こ とはな い 」 と して起 訴 事 実 の0部 を否認 した うえで,全 体 的 な認 否 は保 留 した 。 元 副頭 取,金 沢彰 被 告,元 常 務,寺 沢 康 行 被 告 も認 否 を留 保 した。2 月20日 の公 判 で は藤 田被 告 ら3人 は無 罪 を主 張 した 。
同 日付 の 日経新 聞(夕 刊 〉で は,「 各 被 告 間 の共 謀 焦 点 に」 と題 して,次 の よ うに解 説 して い る。
第 一 勧 業 銀 行 に よ る利 益 供 与 事 件 で起 訴 され た 元幹 部 被 告11人 の 罪状 認 否 が 出 そ ろ った 。 奥 田 正 司 元 会 長 以 下8人 が 起 訴 事 実 を認 め た一 方,
藤 田一 郎 被 告 らは 「共 謀 」 を否 認,会 長 ら トップ 主 導 に よ る 「銀 行 ぐる 172国 際経営論集No.16・171999
み の不 正 」 との検 察 側 構 図 と対 峙(た い じ)す る姿 勢 を示 した 。
検 察 側 は 冒頭 陳 述 で総 務,審 査 両部 門 が せ め ぎ合 い な が ら,最 終 的 に は トップ の意 向 を受 けて約117億 円 の う回 融 資 が 実 行 され た 経 緯 を詳 述 した。 この 中 で藤 田被 告 に つ い て も,審 査 担 当 役 員 に就 任 した際 と,翌 年 度 の二 度 にわ た っ て,小 池 被 告 へ の う回融 資 をや め る機会 を逃 し,そ の時 点 で融 資 実 行 を指 示 した とされ る奥 田被 告 ら との 間 で共 謀 が 成 立 し た,と 指 摘 した。
藤 田被 告 は 当初,総 務 部 側 の融 資 継 続 要 請 に難 色 を示 した とい わ れ る。
トップの意 向 と もされ た不 正 融 資 を結 果 と して容 認 した こ と を共 謀 と さ れ た こ とに は納 得 で きな い のか,「 他 被 告 と共 謀 した こ とは な い」と して 無 罪 を主 張 。
また,融 資 が関 連 ノ ンバ ン クか ら小 池被 告 の 親 族 企 業 へ の う回融 資 の 形 で行 わ れ た こ と もあ り,こ の 日認 否 を行 った3被 告 は いず れ も 「第 一 勧 銀 か ら小 池被 告 へ の融 資 とは知 らな か った 」 と主 張 した 。
今 後 藤 田被 告 らの 公 判 で は,他 被 告 の証 人 尋 問 な どで どの よ うに 「銀 行 ぐるみ」 の共 謀 が各 被 告 の 問 で 重 ね られ て い った の か,立 証 が積 み 重 ね られ る こ とにな ろ う。
3見 え隠 れ す る様 々 な 問題
今 まで,事 件 発 生 とその 経 過,検 察 冒頭 陳 述 の 内容 と見 て きた 。 そ こに は 様 々 な問 題 が 見 え隠 れ す るの だ が,い ま一 つ 明 確 さ を欠 く。 も とよ り,検 察 は犯 罪 の 立 証 が 目的 で あ り,銀 行 は最 小 限 の 説 明 に留 め よ う とす るか らだ が , 論 者 は銀 行 員30年 の キ ャ リア を基 に,こ れ を解 剖 して み よ う。
(1)罷 り通 っ た 異 例 の 融 資 形 態
な ぜ,一 勧 の 会 長,頭 取 と い う トッ プ が こ の よ う な 犯 罪 を 引 き起 こ した の 深淵 ・第一勧銀頭取達の犯罪173
か とい う根 本 的 な疑 問 は先 へ 措 く として,一 番 の疑 問 はな ぜ この よ うな 異例 の融 資 形 態 が,都 銀 上 位 行 の 中 で罷 り通 った の か とい う こ とで あ ろ う。
98.1.12(東 京 地 裁 公 判)の 日経 新 聞(夕 刊)は,「 第 一 勧 銀 事 件 背信 の117 億 円提 供 トップ主 導,審 査骨 抜 き 奥 田 ・木 島会 談 融 資 打 ち切 り覆 す 」 の 見 出 し と共 に,次 の表 を掲 げ る。
第一勧銀利益供与 事件 の経過 85年3月
89年2月
90年9月
92年4月 9月
10月
93年5月 94年9〜10月
96年1〜2月
〈97年 〉 3月 5月20日
23日
第一勧銀六本木支店 に小 池被 告の実弟が経営す る 「小甚 ビル デ ィ ング」名 義の 口座 開設(93年 営業第一部 に移動)
四大証 券120万 株 の購入資 金 として小甚 ビル名義 で約30億 円 を融 資
大蔵省 の検査逃 れのため,ゴ ル フ場 の事 業主体 の ライベ ックス社 を通 じて小池被 告側 に約25億 円 をう回融資
奥 田正 司被告 が頭取,故 宮崎邦 次前相談役が会長 に就任 小池被 告への融資残高が88億 円に
奥田被 告 と故宮崎前相談役が う回融資 を了承
小池被告側 にノ ンバ ンク 「大和信用 」な どを使 った う回融 資 を始 め る
小池被告 に30億 円 までの無審査 で貸 し付 ける特別融 資枠 を決定 大蔵省検査逃 れのため,大 和 信用か ら小池被告側 に約6億 円 を融 資。 その後,大 和信用 の約6億 円 を肩代 わ り。小 池被 告 は, ゴル フ場 関連 融資の延滞利息分 の返済 にあて る
日銀考査で,小 池被告へ の融資 について虚偽報告
6月5〜13日 10日 29日 7月4日
28日 29日
小池被告関連融資 の不 良債権,約75億 円 を間接償 却 東京地裁特捜部 が野村証券事件 で第一勧 銀本店 を捜索
藤 田一郎被 告 を頭取 とす る新体制 を発表(藤 田被告 の逮捕で 白紙 撤 回 に)
特捜部 が商 法違反容疑 で藤 田被告 ら10人 を逮捕 新体制 を改 めて発表
故宮崎前相談役が 自殺 奥 田被告逮捕
特捜部 が第一勧銀 を銀行 法違反 で略式起訴
大蔵 省 が94年10〜12月 の大 蔵検 査 で第 一勧 銀 か ら飲 食接 待 を受 けていた 当時の金融検査幹部 ら2人 を戒告処分
174国 際 経 営 論 集No.16・171999
30日 大蔵省が第一勧銀 を行政処分
一
(出所)日 本 経済新 開,1998年1月12日 付。
98年1月26日 午 後,東 京 地 裁 で 開 か れ た 総 会 屋 グ ル ー プ 代 表,小 池 隆 一 被 告 の 第2回 公 判 で,検 察 側 が 行 っ た 冒 頭 陳 述 要 旨 か らの 引 用(下 記)。
〔商 法 改 正 後 の被 告 の 活動 状 況 〕(敬 称 ・呼称 略) 第 一 勧 業 銀 行 に対 す る活 動
被 告 は83年 ごろ総 会 屋 活 動 を再 開後,第 一勧 銀 の歴 代 最 高 幹 部 ら と親 交 の あ った 元 出版 社 社 長 木 島 力 也(故 人)を 後 ろ盾 に 同 行 で の地 位 を固 め て い っ た。
第一 勧 銀 で は88年3月,麹 町 支 店 の不 正 融 資 事 件 が 報道 され,6月 の株 主 総 会 の紛 糾 が危 ぐされ た こ とか ら,総 務 部 は木 島 を通 じ被 告 に協 力 を依 頼 。株 主 総 会 は混 乱 もな く約1時 間 で 終 了 した。
被 告 は活 動 再 開後,有 価 証 券取 引 の 資 金 が 必 要 とな り,実 弟 の小 池 嘉矩 名 義 あ てで85年3月26日,同 行 営 業第 一 部 か ら1億 円 の融 資 を受 けた。
その 後91年7月 まで の 問,嘉 矩 名 義 で45回,136億6千 万 円 の 融 資 を受 けた 。 さ らに株 式 会 社 小 甚 名 義 で も87年2月27日,同 行 六 本 木 支 店 か ら1億4千 万 円,88年 まで 同 支 店 か ら6回,48億4千 万 円 に及 ぶ 融 資 を受 け た。
被 告 は89年1月 下 旬,証 券4社 株 各30万 株 の購 入 資 金 と して,小 甚 ビル デ ィ ン グ名 義 で31億6千 万 円 を融 資 して ほ しい と要 請 。応 ず る との 回 答 を得,証 券
4社 株 を買 い 付 け,4社 の株 主 提 案 権 を行 使 し う る地 位 を取 得 した 。
投 資 用 リー スマ ン シ ョンの建 設販 売 を して い た ライ ベ ッ ク ス は,山 梨 県 牧 丘 町 で ゴル フ場 開発 を進 め て いた が,被 告 は事 業 へ の参 画 を計 画 。90年8月 ごろ 同行 を訪 れ,45億 円 を融 資 して ほ しい と要 請 した が,担 保 割 れ の状 態 を解 消 し な い限 り新 規 融 資 は困 難 との 回答 を受 けた 。木 島 が 折 衝 した結 果,担 保 割 れ の 解 消 資 金 を同 行 が ラ イベ ッ ク ス を通 じて被 告 に追 加 融 資 す る こ とに な り,90年
9月 に 同行 新 宿 西 口支 店 か ら ラ イベ ッ ク ス あ て に地 元 対 策 費 の 名 目で25億 円 の融 資 が 実行 され,そ の ま ま被 告 に転 貸 され た。
〔犯 行 の経 緯 と状 況 〕
1.第 一 勧 銀 か ら う回 融 資 を受 け る よ うに な った状 況
被 告 は,野 村 証 券 の 口座 に さ らに資 金 を投 入 し利 益 を提 供 させ よ う と,92年 7月 上 旬 ごろ,第 一勧 銀 に対 し,株 の購 入 資 金30億 円 を融 資 す る よ う要 求。 同 行 の 審 査 担 当役 員 で専 務 の 金沢 彰 らはz被 告 へ の 融 資 は既 に 巨額 の担 保 割 れ を 抱 え て お り,承 認 し な か っ た 。 被 告 は 元 出 版 社 社 長 に 同 行 会 長 の 宮 崎 邦 次 お よ び 同行 頭 取 の 奥 田 正 司 へ の 口 添 え を依 頼 。 元 社 長 は92年9月,2人 と会 食 し, 被 告 に融 資 す る よ う約 束 を取 り付 けた。
第 一 勧 銀 は,大 和 信 用 を通 じ,小 甚 ビル デ ィ ン グ名 義 で う回融 資 す る こ とに
深 淵 ・第 一 勧 銀頭 取 達 の 犯 罪175
した。被 告 は,こ の う回融 資 に よ り,86回 にわ た り延 べ207億9千 万 円 余 の 融 資 を受 けた。 時効 にか か って い な い52回 分,合 計117億8千2百 万 円 を起 訴 した。
(出所)日 本経 済新聞,1998年1月27日 付。
1)商 法 違 反 の 利 益 供 与
当 初,近 藤 頭 取(当 時)ら は,「 総 会 屋 で な く,弟 へ の 融 資 」 と弁 明 して い た が,こ れ は全 くの 虚 偽 で,初 め か ら総 会 屋 へ の 商 法 第266条,497条 違 反 の 利 益 供 与 で あ る こ と を,第 一 勧 銀 側 は 認 識 し て い た 。 こ の こ とは,一 々 説 明 す る まで も な か ろ う。
2)小 甚 ビル デ ィ ングの 実 体
雑 誌 『選 択 』(97.5)は 小 甚 ビ ル に つ い て,次 の よ う に 述 べ て い る 。 同 社 は資 本 金4500万 円,融 資 の1年3カ 月 前 の87年12月 に 設 立 され た ば か りだ 。 役 員 は す べ て 親 族,92年2月 時 点 の 従 業 員 は た っ た1人 な の で あ る 。 別 表 は 民 間 信 用 調 査 機 関 が 調 べ た 小 甚 ビ ル の 業 績 だ が,収 入 の 多 く を不 安 定 な 有 価 証 券 売 買 に頼 り,年 収 は 多 くて1,2億 程 度 。88年9 月 期 に続 き,90年9月 期 は金 利 負 担 の た め8762万 円 もの 欠 損 を 出 す 有 り 様 だ っ た 。
株 式 会社 「小 甚 ビル デ ィン グ」 の 業 績 の 推 移
決算期 収入高 経常利益 当期利益 配 当(%) 申告所得
88年9月 未詳 os,137 06,137 無配 一
89年9月 109,000 7,719 x,969 無配 『
90年9月 234,725 os7,s2s △87,628 無配 一
91年9月 110,000 未詳 欠損計上 無配 一
(出所)民 間信 用 調 査機 関 調 べ,単 位 は千 円,△ は欠 損 金,推 定 値 を含 む。
この こ とか ら,同 社 が 巨額 融 資 を受 け る に値 す る よ うな大 会 社 で はな い こ とは一 目瞭 然 で,第 一 勧 銀 は 「小 甚 ビル は小 池 隆0代 表 の ダ ミー会 社 」 で あ る こ とを十 二 分 に承 知 の上 でi迂 回融 資 に踏 み切 った とい え る。
176国 際 経 営 論 集No.16・171999
3)迂 回融資 あ るいは分割 貸金
前 項 で迂 回融 資 の こ とが 出 て きた が,こ れ は貸 し出 し先 を ど こか に紹 介 し た とい っ た単 純 な こ とで はな い 。 特 に,第 一 勧 銀 の場 合,直 接 本 人 に貸 せ る よ うな状 態(期 限 返 済 の遅 延,利 息 不 払 い等 で,即 刻返 済 を迫 られ る状 態) な の で,関 連 ノ ンバ ンク に 「迂 回」 融 資 させ て い る。 しか も,口 頭 に よ る債 務 保 証 を行 って い るの で あ る。 関 連 貸 付 が 数 力店 に分 散 して い る の も,疑 問
で あ る。
とい う こ とは,実 質 同一 名 義 人 に対 す る 「分 割 貸 金 」 に ほ か な らな い。 論 者 は都 市 銀 行 で3力 店 の支 店 長 を経 験 して い るがt支 店 長 として最 もや って はい け な いの が,分 割 貸 金 で あ る。 あ る融 資先 に対 し これ 以 上 の貸 金 増 が 困 難 な とき,支 店 長 専行 限 度 内 で関 係 会 社 に融 資 し,本 体 を持 ち堪 え させ る。
これ は融 資 判 断 を誤 らせ る もの で,勿 論 行 規 違 反 で あ る。
な お,迂 回融 資 は小 池 被 告 に 「転 貸 」 さ れ た な ど と平 然 と して語 られ て い るが,こ れ は銀 行 法,出 資 取 締 法 等 に違 反 す る「浮 き貸 し」(正 規 の手 続 を と
らな い貸 出)行 為 に他 な らず,も とよ り許 せ る もの で は な い。
4)利 息 の追 い貸 し
規 定 通 りの返 済 が 出 来 な けれ ば,期 限 の利 益 を喪 失 して返 済 期 限 が 繰 り上 げ られ る。6カ 月(現 在 は3カ 月)以 上 利 息 の 支払 い が滞 れ ば延 滞 貸 金 とな る。 これ を,本 部 自 ら利 息 の 追 い 貸 しを して い るの だ か ら,話 に も何 に もな らな い。 丸 で,「 貸 付 べ か らず 集 」の オ ンパ レー ドで あ る。 しか も,審 査部 抜 きで総 務 部 の独 走 で,こ れが 行 わ れ て い るの で あ る。
審 査 機 能 は全 く働 かず,銀 行 は完 全 にお手 上 げ状 態 で あ る。
5)31億 円融資 に無担 保状 態許容の疑問
これ は,前 掲 の 『選 択 』 で も指 摘 して い る こ とだ が,31億 円融 資 は事 実 上 , 無 担 保 で実 行 され た の で はな いか,と い う疑 念 だ。 同誌 は い う。
株 を担 保 に した多 額 融 資 の場 合,ま ず 別 の株 を担 保 に して 融 資 を受 け, 購 入 した 株 を改 め て担 保 として差 し替 え る のが 普 通 だ。 と ころが 今 回 は,
深 淵 ・第 一 勧 銀 頭 取 達 の犯 罪177
一 勧 の融 資 に対 し,小 池代 表 側 が 担 保 として差 し入 れ た の は,こ の融 資 で 購 入 した 株 券 の預 か り証 だ けだ った。 担 保 とな る株 券 の現 物 引 き渡 し まで に4日 以 上 か か るた め の措 置 で,「後 で株 券 その もの が 差 し入 れ られ た」 と一 勧 側 は説 明 して い るが,こ れ こそ一 勧 と小 池 代 表 が 親 しか っ た 何 よ りの証 拠 なの で あ る。
論 者 は,上 記 の事 実 関 係 を知 らな い が,証 券 会 社 が この 買 い 注 文 を どん な 方 法 で受 けた の か も疑 問 が あ る。 金 融 専 門紙 の 「ニ ッキ ン」(週 刊)97.6.13 が,第 一 勧 銀 の行 内調 査 中 間報 告(要 旨)(6月5日 公 表)を 掲 げ て い る。 そ の 中 で,総 務 部 は六 本 木 支店 に融 資 を要 請 。 購 入 株 式 が担 保 で あ る 「持 ち込 み担 保 」 で あ った が,四 大 証 券 株 とい う優 良担 保 だ った の で審 査 部 に 申請 。 審 査 部 で は"30万 株 の持 つ意 味"ま で は考 え なか った,と 書 い て い る。 正 に, 破 格 の特 別 扱 い だ っ た の で あ る。
s)当 初 か ら田0%の 担保評価
株 式 担 保 の貸 出 は,株 の価 格 変 動 を考 慮 して,担 保 評 価 の割 掛 け を60〜70
%と す るの が,銀 行 の常 識 で あ る。 しか し,こ の融 資 は実 質100%の 担 保 評 価 を行 っ て お り,バ ブ ル の 崩壊 に よ り株 価 が 下落 す る と共 に巨 額 の担保 不 足 に 陥 っ て お り,い か に特 例 の融 資 だ った か を物 語 っ て い る。
7)融 資 手続 きの異例 さ
この他 に も,本 件 融 資 の異 例 さ を示 して い る事 例 は数 多 い 。例 え ば,
一連 の融 資 は総 務 部 主 導 で行 わ れ た が,猪 爪博 容 疑 者(92年 後 半 か ら 95年 前 半 まで総 務 部 長,そ の 間取 締 役,常 務 に昇 格)ら は審 査,融 資 部
門 の決 裁 を経 るた め 「りん議 書 」 を作 成 し,提 出 して い た(97.6.7日 経 夕刊 よ り)。
同 行 の 内部 事情 に詳 しい関 係 者 に よ る と,39回 の融 資 の う ち数 回 につ い て,内 田恒 雄 容 疑 者(元 副 頭 取,審 査 担 当)ら は,総 務 部 幹 部 の 手 書 きの メ モ だ けで決 裁 の手 続 きを済 ませ て いた 。 メモ は,融 資 額 や 使 途 の 概 略 を記 した だ けで,総 務 部 幹部 か ら提 出 され て い た。
178国 際経営論集No.16・ ユ71999
同行 内部 で は小 池 容 疑 者側 へ の融 資 は 「総 務 部 案件 」 と して特 別 扱 い され,融 資 の りん議 書 を作成 す る営 業 部 門 は,総 務 部 幹 部 らの 指 示 に従 う しか なか っ た とい う。 また,歴 代 の 審 査 担 当役 員 ら も,後 任 者 に決 裁 の重 要性 な どを引 き継 い で い た(97.6 .12日 経 よ り)。
い ず れ も審 査機 能 が いか に無 力 化 して い た か を雄 弁 に物 語 っ て い る。
な お,第 一 勧 銀 の 内 規 で は,91年2月 以 降 通 常 の追 加 融 資 の場 合,2億 円 以 下 は審 査 役,10億 円以 下 は担 当部 長,50億 円以 下 は担 当役 員 が それ ぞれ 決 裁 し,50億 円 を超 え る場 合 は,常 務 会 の 決 裁 が 必 要 。
しか し,多 額 の不 良 債 権 を抱 えて い る顧 客 につ い て は,担 当役 員 で も5000 万 円以 下 の 決裁 権 限 しか な く,5000万 円 を超 え る と常務 会 にか け られ る。
小 池 容 疑 者 側 へ の 融 資残 高 は92年9月 時 点 で88億 円 に達 し,利 払 い も同年 7月 末 か らス トップ して お り,内 規 に基 づ く と,追 加 融 資 は不 可 能 な状 況 だ った(97.6.8日 経)。
また,94年10月 の 約6億 円 の無 担 保 融 資 も,審 査 部 門 の強 い反 対 を押 し切 り,総 務 部 主 導 で行 わ れ た。 これ は,本 体 の大 蔵 省 検 査 逃 れ の た め,関 連 ノ ンバ ン ク経 由融 資 を この6億 円 に か ぎっ て急 遽 直 接 貸 し付 け を行 っ た もの で, 最 終 的 に 回収 不 能 とな った もの で あ る(97.6.2日 経 よ り)。
② 一 勧 に よ る大 蔵 ・日銀 検 査 逃 れ
第 一 勧 銀 事 件 の中 で 不 可 解 な もの に,大 蔵 省 検 査,日 銀 考 査(日 銀 の場 合 は検 査 で な くて 考 査)を 銀 行 ぐるみ で 回避 しよ う と した こ とが あ る。 この根 本 に はMOF担(大 蔵省 担 当一 都 銀 の企 画 部 門)の 存 在 を許 す よ うな大 蔵 省 の 裁 量 行 政 の問 題 が あ る。裁 量 行 政 下 で は,当 局 に何 事 も一 々 お伺 い を立 て る 必 要 が あ っ た の で あ る。 現 に,佐 伯 三 和 銀 行 頭 取(全 国銀 行 協 会 会 長)は,
同行MOF担 の行 き過 ぎた活 動 の 責任 を取 っ て,97年 期 中辞 任 して い る。
97年7月29日,大 蔵 省 は第 一一勧 業 銀 行 が総 会 屋 へ の融 資 を隠 す工 作 を した 94年10月 か ら12月 にか け て の検 査 の際,同 行 か ら接 待 を受 け て い た と して,
深 淵 ・第 一 勧 銀 頭 取 達 の犯 罪179
当時 の担 当検 査 官2人 を戒 告 処 分 に して い る(7.30日 経)(な お,後 に過剰 接 待 を受 けた2名 の大 蔵 高級 官僚 が 自主 退職 して い る)。
さ ら に,大 蔵省 の 汚職 事件 で,金 融 検 査 部 長 補 佐,谷 口敏 美 容 疑 者 が,銀 行 局 総務 課 幹 部 時代 の94年 春 ご ろ,当 時 の三 菱 銀 行 の金 融 新 商 品 の認 可 を巡
り,審 査 を甘 くす るな どの便 宜 を図 って い た こ とが分 か った 。 また,今 回 の 捜 査 を通 じて,前 大 蔵 省 金 融 証 券 検 査 官 室 長,宮 川 宏 一 容 疑 者 が,第 一 勧 業 銀 行 側 の依 頼 で金 融検 査 の 際,総 会 屋 グル ー プ代 表,小 池 隆 一 被 告 向 けの不 正 融 資 の 問題 点 を握 りつぶ す な ど,第 一 勧 銀 側 の 隠ぺ い工 作 に協 力 して い た
こ とが 明 らか に な っ た。
宮 川 容 疑 者 は,「 担保 不 足 の ま ま,総 会 屋 向 けの融 資 が行 わ れ て い る」な ど と小 池 融 資 の 問題 点 を指摘 した部 下 の 報 告 をi握りつ ぶ し,最 終 報 告 書 に は何 も記 載 しな か った(98.2.17日 経)。 な お,第 一 勧 銀 が 大 蔵 検 査 を事 前 に察 知 し小池 融 資 の 隠 ぺ い工 作 を行 っ た こ とは,当 初 か らい わ れ て い た こ とで あ る (下記98.1.27日 経 記 事 参 照)。
審 査 担 当 の元 常 務 寺 沢康 行 被 告 は「MOF検 は,3年 強 のサ イ クル で 実 施 され て お り,間 隔 か らみ て年 度 内 に実 施 され る と予想 され てい た こ と」
と説 明。「小 池 被 告 に対 す る融 資 を打 ち切 る と,総 会 が荒 れ る恐 れ が あ る と思 った 」 と し,延 滞 利 息 を追 加 融 資 す る な どの 隠ぺ い策 を練 った こ と を明 らか に して い る。
1)護 送船団型検 査 に限界
この見 出 し は97.6.9の 日経 新 聞 の記事 か ら取 った もので あ る。
そ して,日 経 紙 は次 ペ ー ジ に あ る よ うな表 を掲 げ て い る。
記事 の 主 旨 は こ うで あ る。
大 蔵 省 は90年9月 と94年10月 第 一 勧 銀 の検 査 に入 った が,2回 と も総 会 屋 グル ー プ 向 け融 資 を見 逃 した。 特 に94年 の検 査 で は第一 勧 銀 が 総 会 屋 グル ー プ 向 け融 資 の一 部 を不 良債 権 と して 申告,大 蔵 省 も認 定 して いた とみ られ る だ け に,「 なぜ 見 抜 けな か っ た の か 」 との批 判 は強 い 。
180国 際経営論集No.16・171999
大蔵 省検査 と日銀考 査への第一勧銀の対応
対 応 結 果
90年9月 大 蔵 省
別会社 を経 由 した う回融資 で総会屋 グルー プ向 けの延 滞債権 を優 良債権 に
発見 で きず 91年8月
日 銀
総会屋 グループ向 け融資 を延 滞債権 リス トに記載 せず 発 見で きず
94年10月 大 蔵 省
関連 ノンバ ンクに よる融資 や銀行本体 による追加 融資 で総会 屋 グルー プ向 け延滞債権 を減額
一部 を不 良 債権 と認定 96年1月
日 銀
総会屋 グルー プ向 け融 資 を延 滞債権 リス トに記載 した が,取 引 の詳細 は説明 せず
一部 を不良 債権 と認定
(出 所)日 本 経 済 新 聞,1997年6月9日 付 。
大 蔵 省 検 査 が 官民 の な れ合 い体 質 の 中 で甘 い検 査 にな って いた 。規 制 金 利 時代 にで きあ が っ た護 送 船 団 方式 で,経 営 と検 査 と指 導 が一 体 だ った 。
総 会 屋 との 関 係 に も銀 行 界 の甘 さが見 られ る。 あ る都 銀 総 務 部 長 は 「金 が 絡 む トラブ ル を解 決 す る た め,銀 行 は創 業 以 来,総 会 屋 を仲 介 と して使 っ て
きた 」 と洩 らす。
規 制 緩和 で金 融 機 関 の行 動 を 自由化 す る代 わ りに,罰 則 の厳 しい欧 米 型 の 金 融 行 政 へ の転 換 が 迫 られ て い る。
2)大 蔵 省 ・日銀検 査 に甘 さ
こち らは,97 .6.6の 朝 日新 聞 記事 か ら取 っ た もの だ。 曰 く, 大 蔵 省 や 日銀 の検 査 の甘 さの 問題 も指 摘 され て い る。
第 一 勧銀 は う回 融 資 や利 息 分 の追 い貸 し とい った 手 法 で,総 会 屋 側 へ の融 資 を不 良債 権 リス トか らはず し,大 蔵 省 へ の報 告 を回 避 した。 大 蔵 省 も疑 惑 が 表 面 化 す る まで,問 題 を把 握 で きな か った。 日銀 の場 合 は,
リス トア ップ は され て い た が,総 会 屋 側 へ の 融 資 だ とは気 付 か なか った 。 都 銀 の行 員 は 「大 蔵 の 目な ん て節 穴 。 も と も と自己 申告 べ 一 ス だ し, 大 蔵 も よ くみ て な い」,「MOF担(大 蔵 省 担 当)か ら検 査 日が 事 前 に入 る の で,隠 ぺ い な どの準 備 は い くらで もで き る」 な ど と語 る。
深淵 ・第一勧銀頭取達の犯罪181
大 蔵 省 は 「検 察 当 局 の 捜 索 と違 い}あ くまで 任 意 。 第 一 勧 銀 ク ラ ス だ と,貸 し出 しの相 手 先120万 件 の 中 か ら延 滞 債 権 の リス トを出 して も らっ て お り,前 段 階 で不 正 直 な部 分 が あ る と調 査 に は限界 が あ る」 と し,日 銀 も 「考 査 す る側 に総 会 屋 の 予備 知識 で もな い と,解 明 は難 しい」 と, 検 査 の不 完 全 を認 め て い る。 こ う した 「隠 ぺ い 」 を防止 す るた め に銀 行
法 に定 め られ た罰 則 は50万 円以 下 の罰 金 だ けだ 。
上 記 に関連 して,松 下康 雄 日銀 総 裁(当 時)は97.5.28日 の記 者 会 見 で,
「91年8〜9月 の前 々 回 の(日 銀)考 査 で,『 小 甚 ビル デ ィン グ』 と小 池 嘉矩 向 け融 資 の調 査 表 が提 出 され なか った こ とが判 明 した 」 と発 言,一 勧 は96年 1〜2月 の 日銀 考 査 で は,問 題 とな っ て い る融 資 の資 料 を提 出 した。 「(日銀 は)不 良 債 権 として早 期 の処 理 を促 した が,遺 憾 なが ら翌 年 に先 送 りされ た」
と同行 の対 応 も批 判 した。
・一 方 で 「日銀 は,債 務 者 が 総 会 屋 と深 い関 係 に あ る こ とは知 る立 場 に な く, 認 識 で きなか った 」「大 都 銀 の貸 し出 しは膨 大 。一 定 期 間 で考 査 す る に は相 手
の協 力 が 不 可 欠 」な ど と話 し,日 銀 考 査 の 限界 も示 した(97.5.29日 経)。6.14 記 事 で は,藤 田容 疑 者 が 内 田容 疑 者 に押 し切 られ,前 回 の考 査 で 「・一般 向 け
の融 資 」 と虚 偽 の報 告 を させ て いた,と 報 じ られ て い る。
⑧ 業 務 停 止 命 令 と業 務 改善 命 令
大 蔵 省 は,97年7月30日,野 村証 券 と第0勧 業 銀 行 に対 し,8月6日 か ら 最長 で 約5カ 月間 の一部 業 務 停 止 命 令 な どの行 政 処 分 を決 めた。 第一 勧 銀 は 個 人 向 け を除 く新 規 融 資 開拓 を年 末 まで停 止 す る ほか,国 内外 の 営 業 拠 点 新 設 を1年 間認 め な い。都 市銀 行 の 国 内業務 で は初 め て の ケ ー ス で あ る。
第 一 勧 銀 に は,法 令 違 反 な どに対 す る銀 行 法27条 の業 務 停 止命 令 を初 め て 発 動 。 国 内営 業 所 で の新 規 融 資 の 開拓 と,公 共債 の 引 き受 け ・入札 を年 末 ま で禁 止 す る。 た だ,住 宅 ロー ン,消 費 者 ロー ンな ど個 人 向 け融 資 は命 令 の例 外 とす る。信 用秩 序 へ の影 響 に配 慮 して預 金 業 務 に も支 障 が 及 ば な い よ うに
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した 。
また,第 一 勧 銀 に は銀 行 法26条 の業 務 改 善 命 令 として来 年8月 まで 営 業 拠 点 の新 設 を認 め な い。 そ して,9月19日 まで に業務 改 善 の報 告 書 を提 出 す る よ う指 示 した。 内部 管 理 の 充 実 や 法 令 の遵 守 につ い て 具 体 策 を求 め る(97 .
7.31日 経 ほか)。
行 政 処 分後1週 間 で,第 一 勧 銀 で は預 金 の 流 出 が 続 くな ど,影 響 が 出 て い る。6月 の企 業 向 け貸 し出 しは,前 月 比 で約100億 円減 少 した。減 っ た の は同 行 だ けで あ る。 企 業 の 流 動 性預 金 や 個 人 預 金 の流 出 も多 か った よ うで,業 績 へ の 影 響 は大 きか った とい え よ う。
な お,東 京 地検 は,大 蔵 省 の検 査 を意 図 的 に免 れ た と して,第 一 勧 銀 を銀 行 法 違 反(検 査 忌避)罪 で 略 式 起 訴 。 これ を受 け て東 京 簡 裁 は罰 金50万 円 の 支 払 い を命 令 した。 第 一勧 銀 は同 日中 に納 付 した。
大 蔵 省 は,当 時 の審 査 担 当役 員 らの4人 に つ い て も東 京 地 検 に告 発 して い た が,特 捜部 で は 「トップ ダ ウ ンで行 わ れ た利 益供 与 事 件 を隠 す た め の,付 随 的 な犯 行 。 個 人 の 責任 を問 うの は妥 当 で は な い」 な ど と して起 訴 猶 予 処 分
と した(97.7,29日 経)。 な お}大 蔵 省 は,検 査 虚 偽 報 告 に懲 役 刑 ほ かの 罰 則 強 化(罰 金 上 限 を個 人 は300万 円,法 人 は2億 円 に大 幅 引 き上 げ)を 予定 して い る(97.9.26ニ ッキ ン よ り)。
第 一 勧 業 銀 行 は,97年9月19日,大 蔵 省 に対 し業務 改善 計 画 書 を提 出 した (以下,97.9.26ニ ッキ ン記 事 よ り)。
第 一 勧 銀 の業 務 改 善 計 画 に は3「 融 資 業 務 規 範 」の 明文 化 や 「コ ン プ ラ イ ア ンス(法 令 遵 守)責 任 者 」,法 令 遵 守 の た めの 第 三 者 に よ る特 別 顧 問 の新 設 な ど再 発 防止 に向 けて,管 理 強 化 の具 体 策,ス ケ ジ ュー ル が盛 り 込 まれ た。
計 画 で は経 営 ・本 部 組 織 の刷 新 につ い て,行 内業 務 監 査 委 員 会 な ど各 組 織 の 役 割 を説 明 。 各 経 営 組 織 で は多 数 決 を採 用 し,決 定 事 項 に は その 構 成 員 が連 帯 責 任 を負 う形 で,意 思 決定 と責任 を明 確 に した。
深 淵 ・第 一 勧 銀 頭 取 達 の犯 罪183
総 会 屋 な ど との取 引 に つ い て,弁 護 士 が 「反 社 会 的 」 と判 断 した与 信 取 引 が18件,28億 円 あ る こ とが 明 らか に され た 。 この 取 引 は 「利 益 供与 な どの不 法 な取 引 で は な い」(広 報 部)と しなが ら も,取 引解 消 の努 力 は 弁護 士 な どの協 力 を得 なが ら法 令 に則 って行 って い く。 営業 店 で新 し く 発 生 す る与 信 取 引 に は,社 会 的責 任 の観 点 か ら事 前協 議 制 を導 入 す る。
与 信 以 外 の取 引 で は,総 務 部 窓 口の 雑 誌 ・広 告 ・物 品 の す べ て約600件 を中 止 。総 務 部 以外 で も不 合 理 な場 合 は原 則 として 断 った。 業 務 上 の必 要性 が 乏 しい約140団 体 か ら も退 会 した。
審 査 管 理 体 制 に関 して は,融 資 業務 を行 う行 員 が 守 るべ き 「融 資 業務 規 範jを10月 に策 定 。 審 査部 門 の専 門 性 ・決 裁 権 限 の強 化,責 任 の 明確 化 で 独 立性 を強 め る。 業 務 監 査 は,7月31日 に新 設 した行 内 業務 監 査 委 員 会 や 与 信 監 査 室 が 中心 とな って充 実 ・強 化 を図 っ て い く。 与 信 監 査 室 に は臨 店 機 能 が あ り1年 ご とに内 部 監 査 を実 施 し,是 正 な どの指 示 ・勧 告 を行 う。
内部 検 査 で は,今 まで一 定 の ル ー ル の も とで抽 出検 査 を して いた 貸 出 約 定 書 を98年2月 か ら順 次 す べ て検 査 す る こ とにす る。
役職 員 が,よ り法 令 を遵 守 す る よ う各 部 室 店 に 「コ ンプ ライ ア ンス管 理 者 」 を下期 か ら設 置 す る。 「責 任 者 」 に は部 室 店 長 が 「管 理 者 」 に は副 部 長 な どの次 席 者 が就 く。 「第 一 勧 銀 行 員 として の倫 理 行 動 基 準 」も下 期
に は見直 して 法 令 遵 守 を徹 底 す る。
今 回 の 不 正 で は内 部 検 査,監 査 が機 能 しな か った こ とを踏 ま え,業 務 の改 善 状 況,内 部 管 理 の強 化 状 況 を外 部 か ら検 証,評 価 して も ら う。 こ の た め第 三 者 の特 別 顧 問2人(法 律 学 者,弁 護 士 各1人)を 迎 え る。 特 別 顧 問 は,各 施 策 の実 行状 況 の監 視,助 言 な どを行 い,当 局 へ の報 告 書 に も所 見 を付 す。 また,特 別 顧 問 と監 査 役 会 は外 部 特 別 委 員 を任 命 し, 法 律,会 計 面 か らの外 部 チ ェ ック を強 化 す る。 外部 特 別 委 員 は行 内 業務 監 査 委 員会 に参加 し,特 別 委 員 の判 断 で 必 要 が あれ ば委 員 会 を招 集 す る
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権 限 を持 つ 。
第 一 勧 業 銀 行 は97年7月21日,本 店 で 杉 田力 之 頭 取 就 任 後 初 の 臨 時 支店 長 会 議 を開 い た。 冒頭 挨 拶 に立 った杉 田頭 取 は 「今 回 の不 祥 事 の責 任 は経 営 陣 にあ る。 この 反 省 を踏 ま え,再 発 防 止 に万 全 を期 し,清 洌 で 透 明 性 の高 い経 営 を長 期 にわ た り確 保 す る こ とが,当 行 が現 在 直 面 す る最 大 の 課題 」 と し, 内部 監 査 体 制 の充 実,新 設 の経 営 会 議 を 中心 として行 内 の権 限 ・責 任 の 明確 化 を図 る決 意 を述 べ た(97.7.25ニ ッキ ンよ り)。
事 件 後1年 余 を経 過 し,行 政 処 分 も8月6日 か ら解 除 に な り,99年 度 か ら 新3力 年 中期 計 画 の ス ター トを前 に して,杉 田頭 取 は語 って い る(98 .9.4 ニ ッキ ン よ り)。
昨 年5月20日 に家 宅 捜 索 を受 け,6月10日 に新 体制 を発 表 した が,6 月27日 の株 主総 会直 後 に,宮 崎 元 会 長 の大 変 不 幸 な逝 去 もあ っ た。 さ ら に,7月30日 に は大 蔵省 か ら銀 行 法26条 ・27条 の行 政 処 分 を受 けた。 こ の間,皆 さん か ら ご叱正,ご 批 判 を受 けた 。
個 人 預 金 は,昨 年9月 末 まで に約4千8百 億 円減 少 した 。 個 人 預 金 全 体 の ボ リュー ム か らす る と,大 打 撃 を被 っ た わ けで はな いが ,個 人 預 金 は信 用 のバ ロ メー タ ー だ け に,こ うい う事 件 でわ れ わ れ の先 輩 が長 年築 い て きた信 用 を失 うの を 目の 当 た りに して ,非 常 に辛 か っ た。
10月 の支 店 長 会 議 で 「信頼 回復 特 別 運 動 」 の展 開 を決 めた の も,お 客 さに改 め て お詫 び し,併 せ て個 人 預 金 の ば ん 回 を図 りた か った か らだ。
お か げ さ まで10月 か ら98年3月 末 にか け て約5千5百 億 円増 加 し,お 客 さ まを ほ ぼ取 り戻 す こ とが で きた。
で は,何 故 この よ うな 不祥 事 が 発 生 した の か,と な る と,根 は もっ と深 い と こ ろに あ りそ うだ。 そ れ を次 項 目以 下 の テ ー マ とし よ う。
深 淵 ・第 一 勧 銀 頭 取 達 の犯 罪185
4一 勧 首 脳 が は ま っ た 陥 穽
野 村 証 券 の総 会 屋 に対 す る利 益 供 与事 件 は(97.6)5日,総 会 屋 側 に 巨額 の融 資 を続 け て い た第 一 勧 銀 役 員 らの逮 捕 で,銀 行 と証 券 の トップ企 業 が か らん だ大 型 経 済 事 件 に発 展 した 。両 社 と も経 営 首脳 自 らが 総 会 屋 と接 点 を持 って お り,経 済 界 とヤ ミ世 界 との つ なが りの根 深 さが さ らけ出 され た。 経 済 の 血 液 に例 え られ る金 融 の分 野 に広 が る不 祥 事 は,日 本 経済 の 陰 に 「負 の 系 譜 」 が流 れ続 けて い る こ との あか しだ,と 書 き出 して朝 日新 聞(97.6.6)
は,次 の よ うに解 説 す る。
第 一 勧 業 銀 行 に よる総 会 屋 側 へ の利 益 供 与 事 件 の 背 景 に は,「 信 用第 一 」 と言 い な が ら,ひ た す らス キ ャ ンダル の発 覚 を恐 れ,総 会 屋 との癒 着 を続 け て きた 金 融 界 の体 質 が あ る。
「1983年 の商 法 改正 前 は,毎 月末 集金 に来 る総 会 屋 の行 列 が で き,総 務 部 で現 金 を渡 して い た 」 と,あ る都 市 銀行 幹 部 は振 り返 る。
「ス キ ャ ンダ ル を恐 れ る銀 行 が総 会 屋 へ の 資金 提 供 を始 め,そ れ をメ ー カ ー な どが まねた 」 として,あ る弁 護 士 は 「ル ー ツ」 は銀行 に あ る と指 摘 す る。
近 藤克 彦 頭 取 は歴代 トップが 小 池 容 疑 者 を紹 介 した総 会 屋(元 出版 社 社 長,故 人)と 親 交 を重 ね て い た こ とを認 め て い る。 この総 会 屋 が第 一一 勧 銀 に食 い込 ん だ きっか け は は っ き り しな いが,69年 に 旧第 一 銀 行 と旧 三 菱 銀行 の合 併 話 が 第 一側 の反 対 で つぶ れ た際,総 会 屋 が合 併 つ ぶ し に 暗 躍 した,と もいわ れ る。
第 一 勧 銀 の利 益 提供 が現 金 授 受 とい う単 純 な形 で は な く,銀 行 の本 来 業 務 で あ る正 常 な 「融 資 」 を装 って 行 った と され る。 「融 資 とい う形 な ら,利 益 提 供 か ど うか は,0見 わ か りに くい。 総 会 屋 もそ こにつ け込 ん だ の で はな い か 」 との指 摘 もあ る。
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以 下,的 を 絞 っ て,本 事 件 の 「謎 」 に 迫 ろ う。
(1)第0勧 銀 が 陥 った 「闇 の構 図 」
事 件 発 生 か ら間 もな く,東 洋 経 済新 報 社 の 月 刊 誌 『金 融 ビ ジネ ス 』97年8 月号 は,上 記 テー マ で 特 集 号 を組 ん だ。 その 中 で,5月23日 の辞 任 発 表 記 者 会 見 で,近 藤 克 彦 頭 取 が,「 死 後 も呪 縛 が 解 け ず対 応 を変 え る こ とが で きな か った 」 と して,一 連 の問 題 融 資 の背 景 を,紹 介 者 の 元 出版 社 社 長 で総 会 屋 で もあ った故 木 島 力 也氏 の影 響 力 に絞 って説 明 した 。
木 島 氏 は伝 説 の フ ィ クサ ー,故 児 玉 誉 士 夫 氏 に近 く,そ の グル ー プ の一 員 と して大 きな総 会 屋 事 件 に関 わ って いた。 その 木 島 氏 にか わ い が られ て いた とい うの が小 池 隆 一 氏 だ。 第 一 勧 銀 が らみ の事 件 で あ ま り問 題 に な らな か っ た もの に,当 時 の会 長,藤 森 鐵 雄 氏 の実 の妹 が経 営 す る旅 館 が倒 産。 そ の処 理 に手 間 取 っ た件 が あ る。 その処 理 の過 程 は大 変 複 雑 な もの だ った よ うだ
。 1969年,第 一 銀 行 ・長 谷 川 重 三 郎 頭 取 と三 菱 銀 行 ・田 実 渉 頭 取 は両 行 の合 併 に動 く。 これ に対 し,当 時,代 表 権 もな い会 長 に祭 り上 げ られ て い た井 上 薫氏 が 猛 反 発 し,合 併 白紙 化 に向 け巻 き返 しに転 ず る。 その 際,井 上 会 長 は 実力 者 児 玉誉 士 夫氏,木 島 力 也 氏 の力 を借 りた 。 合 併 頓 挫 後 ,長 谷 川 頭 取 は 退 任 し,井 上 氏 は頭 取 に返 り咲 き,2年 後 の第 一 銀行,日 本 勧 業 銀 行 の合 併
を成 功 させ る。
88年 に藤 森 会 長,羽 倉 信 也 頭 取 が退 き,中 村 一郎 会 長 一 宮 崎 邦 次 頭 取 体 制 に な るが,第 一 出 身 の 宮崎 頭 取 は合 併 後,秘 書役 ,秘 書 室 長 を歴 任 して お り, 井 上 氏 の下 で総 会 屋 との太 い パ イ プ も持 っ て い た。
結 局,第 一 勧 銀 は,合 併 以 来 の 旧第 一 側 と旧勧 業 側 の水 面 下 で の 闇 闘 ,ま た,そ れ を覆 い 隠 そ う と してバ ラ ンス重 視 体 質,隠 蔽体 質 か ら最 後 まで抜 け きる こ とはな か った。 近 藤 前頭 取 辞 任 に伴 い,一 度 は役 員 会 で 決 まっ た藤 田 副頭 取 の 頭 取 へ の昇 格 も,た す き掛 け人 事 の 中 で,旧 第 一 側 の近 藤 前 頭 取 が 任 期 途 中 の た めi次 も旧第 一 側 の副 頭 取 か ら,と す るバ ラ ンス人 事 に他 な ら
深淵 ・第一勧銀頭取達の犯罪187
な い 。
(2)合 併 体 質 か ら来 る の か 一一 一人 事 の 甘 さ
旧 第.̲̲..銀の 案 件 に は 旧 勧 銀 の 行 員 は 遠 慮 す る,他 人 に う ら まれ る く ら い な ら ば 厳 し くチ ェ ッ ク は し な い 。 甘 い 人 事 が こ う し た 風 土 を築 い た 。 競 争 意 識 の 薄 い 保 守 的 な 人 事 が 行 内 の チ ェ ッ ク の 甘 さ を 招 き,構 造 腐 食 を助 長 し て い
く,こ う 日経 紙(97.6.8)は 分 析 す る。 そ し て,大 学 生 の 間 で は 「第 一 勧 銀 は 行 内 競 争 が な い の で い い 」 とい わ れ,皮 肉 に も人 気 が あ っ た,と 指 摘 す る。 次 は,そ の 記 事 に載 せ た 第 一 勧 銀(DKB)首 脳 の 「た す き掛 け」 人 事 の 有 り様 で あ る 。
第 一 勧 業 銀 行 歴 代 首 脳 76年8085go9597
7fi/1282/685/489/4
(D)村 本周三(ri繋 贔 躍
(D)藤 森 鉄 雄 (K)羽 倉 信 也 (K)中 村 一 郎 (D)宮 崎 邦 次 (K)奥 田 正 司 (D)近 藤 克 彦
長
■ ■■■ ■ 頭 取 響騨魍量コ闘 相 言炎役
96/4 C幽■■ ■0圏 闘欄■0
(アルファベ ットは出身行:Dは 旧第一銀行,Kは 旧日本勧業銀行) (出所)日 本経済新聞,1997年6月8日 付。
も っ と も,人 事 に 限 らず,第 一 勧 銀 は 「も と も と脇 が 甘 く,お っ と り し て い る 銀 行 だ 」 との 定 評 が あ る よ う で あ る。
合 併 前 後 の 「ツ ケ 」 が 井 上 薫 ・横 田 郁 両 トッ プ 以 降,裏 社 会 と の 腐 れ 縁 と し て 続 き,五 代 に わ た る歴 代 の 首 脳 陣 も気 付 い て い た が,呪 縛 か ら逃 れ ら れ ず,結 果 的 に26年 も の 長 い 間 遮 断 す る こ とが で き ず,大 き な 犠 牲(宮 崎 氏 の 自殺)を 強 い られ る こ とに な っ た(97.7.4ニ ッ キ ン)。 宮 崎 氏 は 遺 書 の 中 で
「6月13日 の 相 談 役 退 任 の 日 に 身 を も っ て 責 任 を全 うす る決 意 を い た し ま し 188国 際経営論集No.16・171999
た 」 と,約2週 間前 に 自殺 を決 意 して い た こ とを明 らか に して い る(ニ ッキ ン同 日付 別 項 記 事)。
奥 田正 司会 長 は,退 任 時 の記 者 会 見(5月23日 。 逮 捕 前)で,「 経 営責 任 を とるの は トップ に問題 が 十 分 伝 わ っ て こな い組 織 作 りを して きた こ とへ の反 省 」 で道 義 的 な もの で あ る こ とを強 調 した,の だ か らあ きれ て し ま う。
対 等 行 同士 の合 併 だ った が故 に,極 力,組 織 内で もめ事 を起 こさ な い,厳 しい 追 及 は避 け る,人 事 も公 平 に分 け合 う 同 行 の基 本 戦 略 は,他 の都 市 銀 行 に比 べ て穏 や か な イ メ ー ジ を作 り上 げて きた 。 だ が,結 局 そ れ は問 題 先 送 り,あ るい は臭 いモ ノ に はふ た を す る行 風 を も醸 成 して し まっ た,と 日経 編 集 委 員 藤 井 良 広 氏 は コ メ ン トす る(97.5.24日 経)。
③ 「四大 証 券 への 提 案 権 」 につ なが る融 資 実 行 の 謎
因 み に,小 池 被 告 は97.12.2の 初 公 判 で起 訴 事 実 を全 面 的 に認 め て い る。
小 池 被 告 は第 一 勧 業 銀 行 か らの 巨額 融 資 を元 手 に3証 券 各 社 に運 用 を一任 し た 。 しか し,バ ブ ル崩 壊 に よ る証 券相 場 の 急落 で損 失 は膨 れ あ が り,小 池 被 告 は補 て ん要 求 の牙(き ば)を む く,と 同 日付 日経 夕 刊 は解 説 す る。
小 池 容 疑 者 は89年2月,第 一 勧 銀 か ら約31億 円 の 融 資 を受 け,野 村 ,大 和, 日興,山 一 の 四大 証 券 株 を30万 部 ず つ計120万 株 購 入 。実質 的 に各 社 に対 して
「株 主 提 案 権 」を持 つ大 口株 主 とな った 。 六 本 木 支 店 は融 資 額 の規 模 か ら本 店 審 査部 門 に 「四 大 証 券 株30万 株 購 入 の た め」 と使 途 を明 記 した 「りん議 書 」 を提 出 した(97.6.3日 経)と 報 道 され て お り,第 一勧 銀 が 当初 か ら 「小 池 融 資 」 の影 響 力 を認 識 して い た こ とが明 らか に され て い る。
92年4月 か ら六 本 木 支店 分 の 融 資 が 延 滞 。 総 務 部 で協 議 しy営 業 第 一 部 へ 移 管 され て い る。第 一 勧 銀 側 は担 保 の約120万 株 を保 有 し続 け,野 村 証 券事 件 が発 覚 す る97年2月,3月 まで 処 分 をせ ず,小 池 容 疑 者 は大 口株 主 と して,強 い影 響 力 を持 ち続 け る こ とに な っ た(97 .6.14日 経)。
この 背 景 と して,日 経 紙(97.6.16)は,「 小 池 案 件 清 算 へ 火 花 」 と題 し 深淵 ・第一勧銀頭取達の犯罪189