特別寄稿
災害時における港湾機能
村 異 人
はじめに
我 が国は地層 的には火 山層 の上 に浮 かんでい る列 島であるため、周期性 をもって大地震 が発 生す る地震大国であ り、 どこかでいつで も地震 が発生 して もおか しくな く、また地震 か と受 け 止 めなが ら日々の暮 らしを送 ってい る。 また、
列 島の四方 は大海 に囲まれ てお り、その海岸線 はお よそ4万kmに も及 び地球 の 円周 に も相 当 す る長 さを有 し、世界 の中で も上位 を 占め、経 済水域 では世界6位 で、国土面積 の 3倍 に も匹 敵す るのである。
その海岸線 には漁港等 を含 めて約4000の港が 立地 してお り、 お よそ10kmの 間隔 で1港 が点 在 してい る。我 が国にお け る港湾での貨物 の取 扱量は約35億 トンで、その内、約 11億 トンが貿 易量である。特 に貿易貨物 の積 卸ので きる、い わゆる貿易港 は関税法 で指 定 されてい る。2008 年 の時点 で は全 国に120港 が指 定 され 、 関税 法 上で は開港 (openport)と称 してい る。 1 こ の港湾 は、我が国の貿易 を支援す る拠点であ り、
海陸運送の結節点 としての役割 を果た してお り、
日本経済の発展 に多大 な貢献 を果 た してきてい る。我 が国の港湾 はかっては横浜港や神戸港 は アジアの‑ブ港 としての地位 を確保 していたが、
今 日では、残念 なが ら、ハ ブ港 としての港湾力 を失い、アジア地域 に存在 してい る諸港 と比較 す るな らば、港湾力 とい うべ き国際競争力 は後 塵 を拝 してい る。 その一例 が コンテナの取扱量
である。現在 、海上運送 では、製 品貨物 の90%
は コンテナ を利用 しての運送 となってい る。
我が国で もっ ともコンテナ取扱量の多いのは 東 京 港 で約390万TEU、 次 い で横 浜 港 で310万 TEUで あ るo 一方 、世界第 1位 の取扱 量 を示す シンガポール港 は約2400万TEUであ り、次いで 香港港 、上海港、高雄港 であ り、隣国韓 国の釜 山港で も約1000万TEUの コンテナ取扱量である。
コンテナ取扱量で比較す るな らば、格段 の差 が あ り、 これ をもって競争力 とす るな らば 日本 の港湾 の港湾力 は著 しく劣 ってい る といわ ざる を得 ない。 しか し、港湾 は単に コンテナ取 り扱 いの量的比較 だけで港湾力 を把握すべ きであろ うか。 その港湾 が地域経済、 さらには一国経済 の 中で果たす位 置付 け と重要性 を考慮 した上で の役割 を考 える必要がある。
しか し、港湾 は地域経済の振興 と一国経済の 成長 の為 に重要 な分野であ り経済活動 の場 とし て機能 している。 この港湾が災害が蒙 った場合、
と りわけ、地震 に よる災害で破壊 され て港湾 と しての機能 を果 たせ な くなった ときの経済活動 に及 ぼす損害 は甚大である。 ここに災害 に耐 え
うる港湾 の整備 が強 く希求 され る。
本稿 では 自然現象 であ り不可抗力的な災害 に 対 して港湾 は、 どの様 に整備 され るべ きかにつ いて考察す ることを狙 い とす る。
1関税法では、開港 とは 「貨物 の輸 出又 は輸入並びに外国貿易船 の入港及び出港その他の事情 を勘案 して政令 で定め る港」 を称す るo現在、120港が指定 されている。
災害時における港湾機能 1
Ⅰ 港湾の果たす物流機能
港湾 は貨物集積 の場所であ り、実務的には貨 物の積卸が行 われ、貨物流通の、いわゆる港湾 物流の区域 としての役割 を果た している。
物流 とは生産地 と消費地 とを結合 して場所及 び時間の遠隔差 を解消 して、商品の円滑な流れ を可能 とす るものである。 同一地域 内で商品が 生産 され消費 され るのであれば、生産 と消費が ほぼ同一時期或いは期間内に発生す る経済的行 為であるか ら、 「物流」 とい う概念 は発 生 しな いであろ う。
そ こで物流機能 とは①場所的調整機能、②時 間的調整機 能 、③需給調整機 能 を意 味 して い る。 2
港湾 にお ける物流 を考 えると上述 した機能 を 果 し展開をす るだろ うか。貨物 を集荷 し、また 港湾で貨物の積卸を行い、港湾 を経 由 して移 出 入 または輸 出入 を実現す ることは、遠隔地間 と なっている商品の生産地 と消費地 を結び、結果
として生産者 と消費者 を結合 させ てい る。そ し て両者 間には情報の送発信が相互に行われ る。
日本の関税法では貿易港 として貿易貨物の輸 出入及び積卸の可能 な港湾 を 「開港 (openport)
と称 して指定 してお り、 2007年現在 で120港 で ある。 この指定 された港湾内だけで貨物の移動、
保管及び積卸を行 うだけであれば、港湾は生産 地 と消費地 を結合す る粋 としての機能 を果た し ているとは言いがたいのである。
しか し、港湾に貨物が集荷 されて、貨物の輸 出入や移 出入が行われ ることは、その貨物が生 産財或いは半製 品又は部品であれば、港湾は生 産地 と加 工地 とを結合 させ、また、食材や消費 財であれば、完全 に消費地 ・需要地 とを結んで いる。
Ⅱ 物資供給基地 としての港湾
港湾は海上運送 と陸上運送 を連結す る結節点 として機能す ると同時に、港湾が立地す る地元 経済に多大の経済効果 をもた らす経済的効用 を 生み 出す 区域 として存在 してい る。 3 平時にお ける港湾の生み出す経済効果 は大きいが、 この 港湾が地震等の災害に見舞 われて甚大な損害 を 蒙ったな らば、果た して港湾は物資供給の基地、
とりわけ救援物資の基地 として機能す るだろ う か。
港湾 は①流通活動の場 ②産業活動の場 ③ 都市活動の場 としての多角的な機能 を果た して いる場所 の地域空間である
。
4 災害が発生 した 時には、平常にお けると同様 に港湾 は物資流通 の場所 として機能 を果たす ことが期待 され る。平常時においては港湾は内外貨物 の集積 の場 所 として機能 している。また、港湾 を核 として、
その周辺お よび背後 には生産基地があ り、また 巨大な消費地 も存在 してお り、そ こに居住 し生 活 してい る人々の 日常の生活 を支 えている。
こ うしてみ ると港湾は単に貨物の積み卸 しや 保管が行われ、かつ、貨物の集積 の場所 として の機能 を果たす だけではな く、国内外の港湾 と 結合 し物資の供給基地 としての機能 を十分 に果 た している。そ して港湾内には港湾運送事業、
倉庫業、通関業及び海運業等々の港湾産業が存 在 し円滑な港湾物流 を発生 させている。 また、
港湾 を点 として、その背後 には大 きな面が形成 されてい る。す なわち、面 としての都市が存在 し巨大な消費地 を構成 している。 この消費地に 生活財 をは じめ として必需物資を供給す るのが 港湾である。この港湾が震災により大被害を蒙っ たな らば、港湾が本来果たすべ き機能 は破壊 さ
2 中田信哉 ・長峰太郎 物流戦略の実際 日本経済新聞社1995午
⇒港湾の経済効果を横浜港 にみ ると、直接効果 としては、効用創 出効果、所得創 出効果 とともに市全体の約20%の効 果があるo間接効果 を含 めると約30%の効果 を創 出 している。具体的な例 として、 9万 トンクラスのコンテナ船が入 港す ると、その船舶の創 出す る直接効果は約2億5000万円強であ り、 3万 トンクラスの客船であると約2億 円強にな る0
4小林照夫 ・三村異人編著 貿易 と港 成 山堂書店 p28 平成10年
れ、物流基地及び物資供給基地 としての機能は 全 く果たせな くなることは 自明である。
災害が発生 した後で対策 を講 じた として もそ れは 「後の祭 り」であ り、付 け焼 き刃的対処 に 過 ぎない。従 って震災に備 えて港湾においては 耐震強化埠頭及び施設 を整備 してお くことがもっ とも肝心な防災対策である。すなわち、災害発 生後の港湾は、船舶 による緊急物資や避難者 を 輸送できる拠点 としての機能 を果たす ことが期 待 され ると共 に、避難 に備 えての広場や緊急物 資の保管基地 としての機能 を果た しうる防災拠 点 として整備 されてい ることが肝要である。
地震 による災害は決 して回避 できないが、 も し港湾 自体が震災によ り甚大な災害を被 った と すれば、港湾 は完全 に破壊 され、物資供給の基 地 としては全 く機能 しな くなるであろ う。港湾 機能の壊滅 した港湾 は無用の長物 と化 して しま い、海陸運送の結節点 としての機能は言 うに及 ばず、物資供給基地 としての機能 も全 く果た し えない空間 として存在す るに過 ぎな くなる。 し たがって、災害に備 えた耐震力のある災害に強 い港湾施設の整備 が緊要である。
大地震 は70年 か ら100年 の周期で発生す る と も言われ る。或いは数百年 に一度 しか発生 しな いか も知れない。未知の災害発生に備 えて膨大 な資金 を投入す ることは無駄であ り梼跨す るか も知れない。緊急必要な社会施設の整備 のため に公共投資は行われ るべ きであ り、安全 ・安心 の社会施設 を構築す ることが優先 され るべ きで あるとも考え られ る。
しか し、火 山列島の上に浮かぶ我が国は 日常 的に小規模地震 ・災害に備 えた十全の対策 を講 じてお くことは住民の生活 を守 り、社会資本 の 損失 を防止す る上か らも不可欠な条件であると 考 え られ る。将来必ず発生す る可能性 の高い地 震災害‑の防災対策 を立て、相 当な財政負担 を 負 うとして も市民の生命 ・財産 を保護 し救命す ることは、地域防災にも役立ち、国土の保全 ・ 維持 を図ることにもなるのである。
港湾管理者 は港湾埠頭 の耐震化 を積極的に進 捗 させている。例 えば、埠頭の液状化防止や上
屋 ・倉庫等の耐震化施設の整備 、 コンテナヤー ドにおける冷凍 ・冷蔵 コンテナ等の電気系統設 備の安全 ・防備対策 に取 り組んでいるのである。
Ⅲ
耐震埠頭の整備 と強化耐震埠頭 とは関東大震災や阪神 ・淡路大震災 のよ うな大きな被害 をもた らす地震が発生 した 場合 で も、港湾 としての機能 を損な うことのな い よ うに、耐震性能 を特に強化 した埠頭で大規 模震災時には緊急物資や避難者の海上運送の中 核 として機能 し、被害を被 った運送施設が復 旧 す るまでの間、また、復 旧や復興のために必要 で不可欠な間、救援物資の貯蔵 ・保管施設及び 区域並びに運送拠点 として機能す る埠頭である。
す なわち、大規模地震等 による被災時にあって も、利用が出来 る港湾であって、利用が困難 と なるよ うな変形 ・変位 を生 じさせ ない埠頭 であ り、最大規模 の地震直後か ら緊急物資の輸送が 可能 となる埠頭である。地震規模で見 ると、震 度6強〜7強で300年 か ら500年 に1度発 生す る可 能性 のある地震 を想定 し、最大規模 の地震時で も震災直後か ら利用が可能な埠頭 である。物流 拠点 としての機能を港湾が果たす為には、常時、
港湾‑の公共投資がな され、又、必要 ・適切 な 補助金 の交付が行われて必要な施設の整備 が継 続 されなければな らない。 この よ うな港湾施設 が整備 ・拡充がな され るときに必要なことは、
震災に備 えて、その震災が もた らすであろ う大 災害 にも耐 え うるだけの、いわゆる耐震性のあ る、或いは免震力のある港湾施設 の整備が絶対 要件 である。 この よ うな視点に立って港湾管理 者 は、港湾建設や施設 の設営や改築及び修築 を お こなわなけれ ばな らない。 この ことは港湾物 流の観点か ら見 ると港湾は災害時に備 えた救援 物資の備蓄 ・保管の施設 として利用できる区域 でなけれ ばな らないのである。
例 えば、通常の埠頭 は、その使用期間中に発 生す る確率の高い地震を対象に設計 されている。
概ね50年間を使用期間 としている。 したがって、
平時 に頻繁 に発生す る地震 に対 しては、その使 災害時における港湾機能 3
用に対 しては何 ら問題 はないのである。
耐震強化埠頭 は使用期間中に発生す る地震 の 確率は低いが、大きな強度 を持つ地震 を対象 に 設計 されてお り、数百年 に一回発生す る地震 を 対象に設計 されているものである。 したがって、
将来予想 されている東海地震や東南海地震のマ グニチ ュー ド8程度の大規模地震 に対 して も使 用できるよ うに設計 された施設 ・埠頭 である。
関東大震災か らお よそ90年、東南海 ・南海地 震 は100年か ら150年 の間隔でマ グニチュー ド8 程度の地震が発生 してお り、1940年代 に発生 し ていることか ら大規模 な地震が今世紀前半には 発生す ることが予測 されている。
平成13年 には 「東南海地震等 に関す る専門調 査会」が設立 され、予想 され る地震 による被害 等が検討 された。 5 また、中部圏、近畿圏及 び 東海 にお ける太平洋沿岸域等の地震対策が検討 され平成15年 には地震対策大綱が決定 された。
そ して、東南、南海地震防災対策推進地域 とし て21都府県が指定 された。今後、相 当期間東海 地震が発生 しな くて も東海地震 と東南海地震 の 同時発生の可能性 もある。一度地震が発生す る と、地震発生後短時間に且つ連続 して地震が発 生す る可能性がある。例 えば1854年 には、東海 地震の発生後わずか32時間後には南海地震が発 生 してい る。
関東地域では小 田原地震や相模湾地震の発生 の可能性が予見 されている。 も し地震が発生す ると横浜港が蒙 る被害が甚大であることが予想 され る。横浜港に耐震埠頭 が整備 されていた と して も無傷の状態で救援物資の供給基地或いは 緊急避難地 としての機能 を果た しえるであろ う か。
過去の例 を見 ると70数年前 に発生 した関東大 震災で横浜港 は甚大な被害 を受 けてい る。
横浜港の港湾施設 は崩壊 し、港湾機能は完全 に 停止 した。救援物資の運送は急 を要 したが、道 路は寸断 され るか、電信柱や建物の崩壊 による 障害物で物資の陸上運送 は不可能の状態に陥っ たのである。 この よ うな状況の下では海運 によ る港湾 を経 由す る物資運送が期待 され るのであ るが、埠頭施設 の崩壊等で港湾 を利用 しての物 資運送は困難 を極 めたのである。
時の政府 は数社 の船会社か ら船舶 を徴用 して 救援物資を積載 した船舶 を横浜港に回航 させた。
しか し、横浜港の港湾施設 は壊滅状態であ り、
好 も大半が焼失 してお り、港湾労働者 も不足 し たため、貨物荷役 は殆 ど不可能 な状態 に陥って しまっていたのである。震 災前の施設状況に復 旧す るには約2年 の歳月 を要 したのである。
一度災害が発生す ると即時的で迅速な短時間 内での物的救援や人的救済は相 当に困難 とな り うるのである。耐震埠頭の整備や広域避難所の 設定或いは通信網体制の完備 は言 うに及ばず、
港湾 内に飲料水、寝具及び食料品等の備蓄 ・用 意 を常時行 ってい ることが肝要であ り、 自然災 害‑の備 えである。
Ⅳ
地震 と港湾被害地震が発生す ると甚大な被害 を被 る。阪神 ・ 淡路大震災時の神戸港の被害状況 をみ ると以下 のよ うな被害が発生 した。 6
1
岸壁 ・埠頭の被害岸壁で発生 した被害の多 くはケー ソン本体が 海側 に傾斜 し、岸壁が 3mも海面に沈下 した。
ケー ソンの一部 は岸壁背後の埋立地の液状化 に よって陥没 して しまった。
2 防波堤の被害
防波堤の基礎マ ウン ドの液状化 によ りケ‑ ソ
520年4月現在では、緊急物資等輸送で161バース、国際海上 コンテナ ター ミナルで15バースが整備 ・完了 している。
(三大港湾 (東京湾、伊勢湾、大阪湾)及び北部九州 の4地域 の中枢 国際港湾並びに中核 国際港湾 である。) 中核港湾 は北海道、 日本海 中部、東東北、駿河湾沿岸 、中国、南九州及び沖縄 の各地域 の中核 となる港湾 であるo
htth//W.W.W.mlit.go.jp/kowan/anzenansin/Image/03pdt.2009.1.30
6横浜市地域研究 被災地神戸港の施設 と物流 に関す る実態調査 に基づ く横浜港の防災上の問題 点の研究 平成9年 9月
ン本体が2mも沈下 し,傾斜 して防波機能が著 しく低下 した。
3
荷役機械の被害岸壁 の地盤 が液状化 したため、荷役機械 が脱 輪、転倒及び傾斜 した。 コンテナター ミナルで は岸壁の移動や傾斜 によ りガン トリー クレー ン が股引き状態 とな り、挫屈 ・転倒 も した。
その他の係留装置や レール等 も甚大な被害 を 受 け、大型岸壁 をは じめ埠頭施設 は全 く使用で きないほ どに壊滅 して しまった。
船会社の担 当者 の話では 「コンテナ ・ター ミ ナル は完全 に液状化 して しまい、ター ミナル一 面は水面 とな り、進むほ どに水深 は深 くな り、
水 は胸 にまで達 した。幸いに水が引けた所で も 30cm位 の泥状 の堆積物 があった。 ガ ン トリー ク レー ンは海側 に傾 いてお り、脱線 していた。
幸いに実入 りのコンテナの損傷は小 さかったが、
三段積みのコンテナが崩れ落 ちていた。状況 を 見 るまで、オモチャを引っ繰 り返 した よ うな状 態になっているのではないか と心配 していたが、
予測 したほ どの被害でなかった。
4
神戸港復 旧への支援震災が発生す る前の神戸港は横浜港 と並んで 日本の港湾 を代表 してお り、 日本 においてはハ ブ港 としての役割 を果た していた。現在 におい て も貨物取扱量では震災前の水準に復帰 してい ない状況 にある。
震災で被害を被 った神戸港 を元の状態に早急 に復 旧 ・復興 させ ることが被災地神戸の経済を 復活 させ る原動力であ り不可欠な条件であった。
そのために国か ら各種の支援 が行われたのであ る。具体的には
① 神戸港埠頭公社所有のコンテナ及びフェ リー バースに対す る国庫補助 の支援
② 港湾緑地の復 旧に対す る予算制度の創設
③ 神戸市保有の荷役機械 の復 旧のための費用 の一部負担
④ 岸壁、防波堤、荷役機械 、緑地等の復 旧を 行い港湾機能 を早期 に回復す るための予算 前倒 し
⑤ 大水深で高規格の コンテナ ター ミナルの整
備 を行い、国際競争力 を強化 し、耐震強化 岸壁の建設及び防災拠点の整備 を行 う。
⑥ 金融機 関による港湾施設等の復 旧に対す る 低利融資制度や海岸保全施設 の復 旧に対す
る低利融資制度
上記 した各種の神戸港復 旧 ・復興の支援策が 打 ち立て られ、実行 ・実施 された結果,神戸港 は施設の復 旧 ・復興は実現 し、港湾 としての機 能 はハー ドの面では復活 して国際貿易港 として の機能 を発揮す ることができるよ うにな り、再 び 日本のハブ港 を 目指 したが、一旦神戸港か ら 飛散 した貨物は容易には回復 しないで現在 に至
り、国際貿易港 としては後塵を拝する状況に陥っ ている。 もちろん、 この背景 には近隣諸国の著 しい経済発展 と港湾競争力の強化 と拡大が著 し く影響 を及ぼ していることは否定できない。
Ⅴ 災 害 時 の港 湾
現在、 日本 には港湾法が区分 ・指定す る重要 港湾,地方港湾及びその他の港湾 を含 め港湾数 は1102港である。 2008年の時点では全国の港湾 の貨物取扱量は約35億 トンで、 この うち内貿貨 物 は25億 トンであ り,残 りの約10億 トンが貿易 貨物量である。 日本の場合、貿易貨物 は圧倒的 に海 上運送 に依存 してお り、全貿易貨物 量 の 99.7%が海上運送である。
したがって、港湾での貨物の保管、積卸の荷 役 と海上運送 との連携 が円滑かつ的確 に遂行 さ れ ることが絶対的要件であ り、 この連携があっ て こそ、港湾は物資の流通基地 としての機能 を 果 たす ことが可能 とな り、また、災害時に備 え ての物資保管及び備蓄の場所 と施設 として機能
しうるのである。
港湾 は都市経済や地元産業 とは密接 な相互関 係 を有 してお り、平常時には十分に港湾機能 を 果 たす ことができる埠頭 ・岸壁 をは じめ、港湾 施設の整備が行われていることが不可欠である。
地震等が発生す ると都市や市民生活は甚大な 災害を被 るであろ う。早急な災害復 旧及び救護 対策が実行 され ることは当然なことであるが、
災害時における港湾機能 5
このよ うな事態 に備 えて港湾が救難物資を供給 し緊急救援 ・救護及び救済のできる施設であ り、
避難場所である安全地帯 として整備 されそお り、
非常時には提供 され容易 に利用できる場所であ り、施設であることが強 く希求 されているので ある。
火 山列島である 日本は地震の規模 を問わず 常 時地震は発生 してお り、大規模地震 は一定の周 期 をもって発生 している。 この ことは常 日頃か ら地震災害に備 えて十全の対策 を講 じて住民 自 らが 自分 自身 を守 ることを心がけておかなけれ ばな らない。
同様 に港湾 においても港湾管理者 は大規模 地 震 に耐 え うる耐震強化埠頭 の建設 を積極的に推 進す ることが肝要である。 マ グニチ ュー ド8程 度の地震 に耐 え うる埠頭建設は最低限必要であ るが、単に頑強で堅固な埠頭だけが建設 され る だけでは不十分である。
港湾 ター ミナルが被災を受 ける とター ミナル は液状化 し、荷役機械や荷役施設等は破損す る。
このよ うな施設の耐震化 も必要であ り、冷凍 ・ 冷蔵 コンテナ等の電気系統設備 の安全 ・防備 の 対策に万全 を費やす ことは絶対に必要な防災対 策であ り、耐震施設 を完備 して こそ、安全 ・耐 震のある港湾 として十分に機能 しうるのである。
また、上述 した よ うに被災 した人たちの避難 場所であ り、救護施設が整備 されてお り、救援 物資の提供が行われ、暖かい気持 ちの落 ち着 く 住居 として利用できる施設が用意 されている場 所 として港湾が機能す ることが、非常時の時 に は殊更に必要である。 このよ うな用途 に適す る 港湾が建設 されなけれ ばな らない。 7
確かに港湾の第一 に果たすべ き機能は経済的 機能であるが、市民の生命及び財産 を保護 し、
地域防災に役立 ち、更には、国土の保全 ・維 持 を計 り、安心 した生活 を営む ことを可能 とす る ためには、地震 ・津波等の 自然災害に対す る耐 震港湾を建設す るための公共投資は必要であ り、
経済効果ばか りでな く社会的生存的にも大 きな
7横浜浜市地域研究 前掲研究報告書
効果 と価値 を生みだす もの と考 え られ る。
1つの事例 として阪神 ・淡路大震災が神戸港 に及 ぼ した状況 を取 り上げて叙述 したが、横浜 港が関東大震 災で大被害 を蒙った と同様 な被害 を近い将来 に被 る可能性 が予想 され る。 この場 合 に、耐震埠頭 を建設 し耐震施設 を整備 してい た として も、救援物資供給の場所や救護施設 と
して十分に機能 し避難 してきた被災者 に命 の安 全 と生活の安心 ・維持 を完全 に保証 しうるであ
ろ うか。
時代 は異なると言 え、70数年前の関東大震災 では、横浜港の港湾施設 は壊滅 し、完全 にみな との機能 は停止 した。救援物資を陸上運送 しよ うとして も、道路は完全に破壊 し、麻療状態 と なった。船舶 による海上運送で救援物資を運送 す る意外 には運送対策 を講 じることは出来ない 状況 になって しまった。 したがって、時の政府 は数社の船会社 に要請 して船舶 を徴用 して救援 物資を積載 した船舶 を横浜港に向けたのである。
しか し、横浜港 は震災で大被害 を蒙 り、埠頭施 設 は壊滅状態で貨物の陸揚 げは出来ない状況 に あ り、また、荷役 を行 う港湾労働者 も不足 して お り、荷役 は出来ない状況 に陥っていた。その 後、復 旧工事が突貫的に行われたが、震災前の 状態‑の復 旧には約2年 の歳月 を要 したのであ
る。
災害が発生すれ ば、即時的で迅速な救援 ・救 済が行われなけれ ばな らないが、現実は相 当に 困難 を伴 うことになる。耐震埠頭 の整備や容易 に双方連絡が可能な通信機器 の設置及び通信網 の整備 は言 うに及ばず、飲料水、食料品等の備 蓄 ・用意 を港湾内に準備 しておかなければな ら い。
Ⅵ
物資供給基地としての港湾
平常時には港湾は貨物の集積及び積み卸 しの ター ミナル としての機能を十分に履行 してお り、
また、港湾が地元経済にもた らす経済効果 も非
常に大きいのである。
例 えば、横浜港が横浜経済 に及ぼす効果 をみ ると、横浜港 に関連す る産業 に就労 している労 働者数は横浜市全体の20%を占めている。また、
港湾関連産業が創 出す る生産額は、横浜市内の 総生産額の20%を占めてい る。港湾は物流基地 であると同時に、生産及び消費 を拡大す る基地 として地元経済の経済活動 と結合 してお り、港 湾の経済‑の貢献度 は著 しく高いのである。
上述 した よ うに港湾が立地 していて こそ、地 域経済は存在 ・発展す る相乗効果 を港湾は創生 している。 したがって、このよ うな相乗効果 を、
震災が発生 し災害 を被 った場合で も、港湾が創 生す る為 には、常時、災害発生に備 えた対応策 を講 じ実行 されていなけれ ばな らない。そ こで 災害時に備 えて下記の様 な対応策が打 ち立て ら れ ることが必要であろ う。 8
1,埠頭の耐震強化 を行 うことは絶対条件 であ るが、併せて救援物資の備蓄及び貯蔵施設 の完備
2.救援物資の供給基地 としての基盤 の整備 3.災害時時に備 えての緑地や空域 を用意す る
こと
4.災害時においては、港湾関係者以外の、個 人や団体 を問わず、港湾施設 内‑の出入 り の緩和
5.緊急救援物資利用埠頭の複数指定、かつ災 害時にお ける埠頭 の 自由使用の容認 6.港湾施設の利用者及び港湾産業関係業者 間
の災害時における相互の情報提供及び防災 訓練並びに協力連携
7.災害時にお ける他港 との相互の救援物資供 給及び緊急荷揚げ等の相互扶助協定の締結 8.市民に対す る災害時の港湾利用の宣伝 ・広
報活動の実施
災害発生に対処す るために被災者の生命 を守 り、保護す る為 には平時に食料品や飲料水及び 医薬品等 を相 当に港湾内に常備 してお くことが
必要であるが、現実には困難であると言わ ざる を得 ないのであろ うか。 「備 えあれ ば憂い無 し」
であるか ら、十分 な対策が行われなければな ら い。 その結果 として人命 をも守 ることが可能 と な るのである。
災害が発生 した場合 には、まずはその被災地 域の復興 を図 らなけれ ばな らない。す なわち、
早期 の地域経済の復興 は申す に及 ばず、産業の 国際競争力の回復 と維持の観点か ら、基幹的な 国際海上 コンテナ運送 を確保す る為 にも、経済 や産業に重要な役割 を担 う物流拠点 としての機 能 を確保す ることが肝要である。
更には代替輸送に対す る支援が必要である。
災害が発生す る と、道路は寸断 ・陥没 して しま い、橋脚 は陥落 し、その災害の被災地域 を通過 す る陸上交通の機能は全 く停止 して しま うので ある。 このよ うな状況の下で地域間の輸送 を確 保す るため、海上輸送 によ り、被災地域 を迂回 して貨物や被災者 を含む旅客の輸送 を支援す る ことが求め られ、代替輸送機能 を果た し得 る輸 送 システムが整備 されなければな らない。 しか し港湾 自体が災害 を被 り、海上輸送が出来得な い場合 もあるため、 このよ うな 自体 に対応 出来 る代替港湾 を利用 した輸送機能 を確保す ること が肝心である。 このためには他の港湾管理者 と の 日常的な港湾運営上の連携 を構築 して置かな くてはな らない。 9 す なわち、港湾 の連携 の強 化 を図ることである。 わが国には数多 くの港が 存在 し、且つ、隣接 し合 っている。複数の港湾 が近接 してい る地域 では、各港湾が連携 を図る ことで、被災地域の早期復 旧 ・復興 を支援す る ことが可能 とな り、また、物流の停滞 による地 域経済‑の影響 を最小限に食い止 めることもで き、 このために、各港湾間で協力 して代替輸送 を支援す ることが必要である。港湾においては、
代替輸送によ り災害発生後の港湾物流 を確保す るため、利用可能 な埠頭や耐震強化 された埠頭 の相互利用 を行 うための港湾間連携 を強化す る
8hhtps://www.mlit.go.jp/hakusho/transport/heseiO92008/04
9国土交通省監修 数字 で見 る港湾2007 日本港湾協会 p120 2007
災害時における港湾機能 7
ことが肝要である。港湾管理者 が異なる港湾 の 連携 では、国が調整 を図 り、各港 の港湾管理者 間の連携 を実現できるよ うに助言 を行 うべきで ある。 10
また、災害状況についての最新で正確 な情報 収集 と発信が必要である。災害発生後、代替輸 送 として海上輸送網機能 を確保す るためには、
埠頭や荷役機械等の港湾施設の被災状況及び 情 報 を広域的に的確 に収集す ることである。その 収集 した情報 の中で、利用可能 な港湾施設 に関 す る情報 を船会社や港湾運送業者等の港湾利用 者 に提供す ることがもっ とも重要な事項である。
このためにも、 日常の港湾業務 の中で、港湾 関 係者 は情報収集及び提供が出来 うるシステムを 構築 して置かなけれ ばな らず、災害時には、 こ のシステムが活用できることが もっ とも効率的 であ り、効果が期待できるのである。 この よ う なシステムを構築す るための国に課せ られ る役 割 は、国が主体 となって、港湾施設 の被害状況 の収集 を広域的に行い、既存の情報網 を活用 し て、港湾施設 の被害状況 を発信す るシステムを 整備す ることが求め られ るのである。
終わりに
港湾が震災で災害を被 ると、それ による港湾 施設の大規模 な損害が社会及び経済に与える影 響 は著 しく大 きいのである。 同時に災害発生後 の復 旧 ・救援活動 に港湾が果たす役割 も多大の ものがある。従 って耐震設計の強化 埠頭 の耐 震強化及び防災拠点の整備 を行い、地震 に強い 港湾 を建設す ることが何 よ りも肝要である。 そ こで阪神 ・淡路大震災を教訓 として阪神 ・淡路 大震災 よる災害の復 旧 ・復興のために 「港湾 に おける大規模地震対策施設整備 の基本方針」が 策定 され実行 に移 されたのである。基本方針 の 概要は以下の通 りである。
1.緊急物資の輸送確保 のため、港湾背後の人 口規模 、地形的要因を勘案 して、耐震強化
埠頭 の整備
2.震災直後か ら復 旧まで、幹線貨物輸送機能 を確保す るため、国際海上 コンテナ輸送、
多 目的外貿輸送、複合一貫輸送 を担 う港湾 において、耐震強化埠頭 を整備す る 3.復 旧 ・復興の支援拠点 として、耐震強化埠
頭 、多 目的に利用できるオープンスペース と一体 となる防災拠点の整備 と震災時の市 民の安全確保 のための避難緑地の整備 日本は地震列 島であ り、予測 されている大規 模地震 もあるが、いつ何時、規模 を問わない地 震が襲 って くるか も知れず、その可能性 は非常 に高いのである。
日本 には 「災害は忘れた頃にや って くる」 と い う著名 な科学者 の格言があるよ うに 日常茶飯 事的に地震 は発生 している。地震 に対す る住民 の心構 え、準備 は相 当に行 き届いてお り、飲料 水、食料品及び医薬 品等 は家庭の中に常備 して い るのが、大半だ と思われ る。市民の地震災害 に対す る用心深 さや用意周到 さはかな り高ま り、
個別 には対策が講 じられてお り、行政機 関も後 押 し ・支援 をお こない、行政機 関による地震災 害に対す る宣伝 ・広報 も積極的に行われている。
港湾の基本的本来的機能 は貨物集散の基地で あ り、積み卸 しのター ミナルであ り、また、海 外 と結合す る物流基地 としての機能 を完全 に果 たす ことで、経済的役割 を十分 に遂行す るので ある。 しか し、地震等による不可抗力的な災害 が発生 し場合、港湾は被災者 の救済 ・救護 が可 能な場所であ り、施設 として利用できる場所で あることが強 く要請 されてい る。
したがって、災害発生時や緊急時に備 えた港 湾建設及び埠頭整備 が為 され ると共 に、緑地空 間が十分 に整備 されていることである。 また、
災害復 旧や家屋復 旧が完了 して帰宅が出来 るま では、被災者が安心 して生活可能 な居住施設 ・ 場所 として整備 されてい ることが必要である。
今 日においては、港湾は経済的機能 を果た し、
港湾物流の基地 としての機能のみを遂行す るこ
10交通政策審議会 地震 に強い港湾のあ り方 (答 申)p6 平成17年3月
災害時における港湾機能 9 とは、時代の要請 に逆行す ることで、いかに 自
然災害発生に備 えた人命保護 と救済に貢献す る 機能をも果たすべ き社会的任務 を負 ってい ると 思考すべ きである。
以 上