• 検索結果がありません。

港湾環境の整備 と災害時の港湾の役割

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "港湾環境の整備 と災害時の港湾の役割"

Copied!
25
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

港湾環境の整備 と災害時の港湾の役割

村 異 人

目 次 は じめ に

Ⅰ.わが国の港湾概況 と港湾貨物量

Ⅱ.港湾機能と都市経済

Ⅲ.港湾整備 と環境共生型港湾

Ⅳ.災害と港湾

V.

災害時における港湾機能 おわりに

は じ め に

港湾の整備 ・発展が,地域経済 ・地元経済 に貢献す る度合 いは相対 的 に高 いのである。例 えば,横浜経済の20%強は横浜港の動 向に依存 しているのが 実態である。したが って,横浜港の貨物動向に大 きく左右 される状況 にあ り, まさに港湾の整備 と拡充が横浜経済の発展 と成長のためには不可欠の条件 と なるのである。特 に港湾都市 といわれる都市の都市経済の維持 ・発展 は港湾 の整備 ・発展 と密接 な相互依存 関係 を有 す る している と思料 されるのであ る。

また,非常 に密集 した都市生活 に災害が発生 した場合 に物資集散 の基地で ある港湾が,災害時には物資供給の基地 として,あるいは災害救済地 として

(2)

の機 能 ・役 割 を果 たす こ とが強 く求め られ る ようになって来 てい るのであ る。

現在,わが国は成熟社会の段階に進 んでいる と言 われる。 この成熟社会の 中で求め られ る港湾の整備 の在 り方お よび災害時 にお ける港湾 の果 たす役 割 ・機能 を吟味す ることは大いに意義ある もの と考 え られるのである0

本稿では今後の望 ま しき港湾の整備 お よび港湾整備 に伴 う災害時 における 港湾の役割等 について思考する ものである。

. 日本港湾の概況 と港湾貨物量

平成

1 2

年現在 ,わが国には特定重要港湾,重要港湾,地方港湾お よびその 他の港湾 を含め港湾数は

1 1 0 2

港である。平成

1 0

年時では, これ ら港湾 におけ る全 国の港湾取扱貨物量 は約34億 トンであ り, この港湾取扱貨物量の うち貿 易貨物量 は約

1

0億 トンであるか ら,内貿貨物 として約

2 4

億 トンが取 り扱 われ ている。 したが って, これ らの港湾 間で, これ程 の貨物量 の移 出入があ り, また,全 国の

1 1 8

港湾では貿易港 (関税法が指定す る開港 ‑海港) として諸 外国の港湾 と結 び付 いて約

1

0億 トンにも達す る貨物量 を取 り扱 っている。

したが って,港湾での貨物 の保管や積卸作業 と海上運送 との連携が的確 に 行 われることが必要であ り, この的確 な連携 の下で,国内港湾 を含 めて,外

国港湾 との間に貨物の円滑 な物流が実現す るのである。

この ような現状か ら見 る と,港湾は単 に貨物 の集荷 ・集積 の場 としての機 能のみ を果たすのではな く,国内外 の港湾 と連結 して物資の物流基地 として の機能 を十分 に果 た している もの と考 え られるのである。

わが国の場合,海上運送 または航空運送のいずれかの運送方法が選択 され て国際間における貿易貨物運送 を遂行 しているが,実態 は著 しく海上運送 に 依存 しているのである。お よそ

1

0億 トンの貿易貨物量の内,航空運送量 はわ ず か に

2 4 0

万 トン (仝 貿易貨物 量 の

0. 2%)

に過 ぎず ,仝 貿易 貨物量 の約

(3)

99.8%は船舶運送 となっているのである。 ここに海運の果 たす役割があ り, また,わが国の商船隊が必要 とされ存在 しなければならない大 きな理由があ る。 (もっとも日本船社が 自社船 として所有 している日本籍船 は著 しく減少

1) しているのが問題 と考 えられる)

それゆえに,貿易取引の側面か ら見て も海上運送は貿易物品売買取引 を支 えている一大支柱であ り,海運無 くして貿易無 しとする言は至当を得ている のである。

そ して,これほどの大量の貨物量 を取 り扱 う港湾は一国の経済活動 を支 え, 経済発展 を促進 し,港湾内には多角的な機能 を果た している港湾産業が立地

している。すなわち,港湾運送事業,倉庫業,検量 ・検数業,通関業お よび 海運業等の企業体が存在 してお り,これ らの各種港湾産業は港湾内 と港湾外 とを接合 させて港湾物流が円滑 に行 われることに大 きく貢献 しているのであ る。

さらには,港湾の周辺 には,わが国の主要産業 を構成する自動車,電気機 器,化学,鉄鋼,石油等の各産業が,その生産基地 を設置 して生産活動 を展 開 してお り,これ らの生産活動 と港湾物流機能が結合 して,適切 な原材料 の 供給 と製品 ・生産物の適切 な流通 を実現 しているのである。

また,港湾 を一つの面 として,その面が拡大 した背後 には都市が存在 して 巨大な消費地 を形成 している。 この消費地に消費財等の必要 ・必需の物資 を 継続的に供給 しうる機能 を果た しているのが港湾で もある。

この様 に港湾 と都市や国民経済お よび産業 との相互関係 は著 しく密接 して お り,港湾の物流機能が支障な く果たされてこそ,市民生活あるいは日常生 活は滞ることな く,円滑 に豊かな生活 を実現可能 としているのである。

(4)

Ⅰ.

港湾機能 と都市経済

1.運送連結地 としての港湾および存在意義

海上運送 と陸上運送の連結地 として港湾は存在 し機能 してお り, また,人 的交流の場お よび物資集散地 として文化的経済的効用 をもた らす特定空間 と

して位置付 けられるのである。

すなわち,港湾は①流通活動の場,②産業活動の場お よび③都市活動の場 2)

としての多様 な機能 を果た しているのである。

本来,物流 とは生産地 と消費地 との場所的,時間的お よび量的な隔た りを 無 くして,商品の円滑な流通 を実現することである。商品の生産地 と消費地 が同一地域であれば,物流 とい う概念 は成 り立たないのである。したがって, 物流機能 としては(∋場所的調整機能,(参時間的調整機能,(参需給調整機能で

3) ある。

そこで港湾物流 とは, どのように考 えられ得 るのだろうか。港湾は前述 し た物流機能 を有 し,かかる機能 を展開 しているのだろうか。

港湾の区域 をどの範囲に設定するかは港湾 に通用 される法律 により若干の 相違はあるものの,国内生産地か ら港湾内への集荷 または港湾内か らの貨物 の搬出お よび消費地あるいは国内仕向地への貨物移動が広義的には港湾物流

と考 えられるのである。

関税法により 「開港」 として指定 された港湾のみが,いわゆる貿易港 (輸 出入港) として貿易貨物の荷役がで き得 るのであるが,同時に国内貨物の移

4) 出入 もおこなわれている。

港湾内のみでの貨物の移動,保管,荷役等 に限定すれば, ここには貨物 を 媒介 として生産地 と消費地 とを接合する機能 を港湾は有形的には果た してい

ない と言わざるを得 ない。

貨物が港湾 に集荷 され,輸出入お よび移出入 されることは,生産財あるい 32 No.22 2001

(5)

は半製品であれば,港湾 は生産地 と加工地 を結合 し, また,消費財であれば 港湾は消費地 ・需要地 とを結合 させているのである。

今 日,早期納入,無店舗 ,無在庫 お よび少量取引が商業界の潮流であるこ とか ら思考すれば,港湾内 に貨物 を長期 的 に滞留 させ ることは許容 で きず, 早期かつ短期 間内に貨物 を流通 させ ることが強 く求め られるのである した がって,港湾 は単 に貨物の通過地点 に過 ぎず,貨物 の集積地 ・保管場所 とし て機能 しない とい う見方 もある。

確かにジャス ト イン ・タイム戦略 にもとづ く貨物配送 と無在庫 ・無保管 によるマーケ ッテ ィング政策が企業経営の要諦 として求め られている状況か らすれば, より速い運送, よ り早い流通, よ り安い費用,そ して的確 な引渡 しと配送 を至上政策 とす る商業界 にあっては,短期 間であって も港湾 に貨物 (商品) を滞留 させ てお くことは許容で きない ところであろう。 したが って, 運送のために貨物が港湾 に集荷 されるとして も, よ り速い積み卸 しや搬 出入 が要求 されることになる。そ して,港湾貨物の取扱 の主体業者である港湾業 者 (特 に港湾運送事業者) には商業界 のジャス ト ・イ ン ・タイム戦略 に即応 する組織 と情報提供がな し得 る体制 を構築 して港湾貨物の物流役務 を提供す る義務 と責任が課せ られていることは当然である

こうした状況か らすれば貨物の集積地あるいは保管場所お よび物流の場 と して港湾がその位置 を維持 ・確保す ることはかな り困難性 を有す るか もしれ ない。

しか し,輸入促進地域 (FAZ.ForeignAccesZone)や貨物流通セ ンター 等が設置 され,外貿貨物や内貿貨物の集積地お よび移出入地域 としての機 能 と役割 を果た している実態か らすれば,港湾 は貨物の通過点 とす る論 も存す るが港湾 なる場所 は貨物の物流拠点 として存在 し得 ることは間違いない と考

5 )

えられるので

あ る 。

そ して,港湾の周辺 には生産基地が立地 し,その背後 圏には巨大 な消費地 を抱 え,そ こに生活す る人々の 日常の暮 らしを支 えている。

(6)

特 に貿易貨物の流通 においては,国際運送 と国内運送 とを連結 させ た国際 複合運送の下 に,貨物集積 の場 として経済的社会的機能 を港湾 は発揮 し,坐 産す るサービスは著 しく大 きいのである。

また,貿易貨物の取 り扱いにおいては,公安お よび社会風俗上の視点か ら 見 て も水際作戦 による有害物取締の場 として港湾 は位置付 け られ機能 してい るのである。 とりわけ,関税法が指定す る開港 は貿易貨物流通の場 としての みならず,市民の健全 な生活環境 を護 り維持す る役割 を果 た している。

一方,都市開発 と港湾整備 お よび開発 は相互依存 関係が相当に密接である ことが認め られるのである。特 に地方港湾の再 開発 と整備が地域経済 にもた らす経済的効果は計 り知れないのである。

同時 に,今 日では,単 に港湾は貨物流通の場 として存在 し,港湾 に就業 を 求める労働者 をは じめ,港湾産業の専用的企業活動の場所 として利用 される だけではな く,市民 に解放 された憩いの場で,広 く市民が寛 げる広場 として 文化 的雰囲気 を漂 わせ るメセナ として存在 す る。 「港」 と 「市民」 との結 び 付 きの中で,港湾の未来お よび港湾産業の将来的方向が思料 され,社会的有 機体 として存在 しなければな らない。

貿易構造の変化お よび港湾再開発お よび開発見直 しの中で,港湾運送事業 が将来的に発展 して行 くことが重要である。港湾産業 としての港湾運送事業 が,従来の業務枠 に留 まらず,多角的機能 を発揮す ることである。そ して国 際事業化の推進 を図る一方,国内物流 と結合 した事業展 開を行 うことが強 く 求め られている。

2.都市経済 を支 える港湾 と港湾産業

昭和

4 0

年代 の半 ばか ら後半 にかけて,世界の主要定期航路 は殆 どが輸送革 新であるコンテナ輸送が進展 した。

昭和

45

年 にお け る外 貿 定期 航路 の コ ンテナ率 は輸 出で

1 2. 8%

,輸 入 で

1 3 . 7%

であったが,昭和

6 0

年ではそれぞれ

7 4 . 6%,8 1 . 5%

へ と

1 5

年 間で著 し

(7)

くコンテナ化 は進展 した。平成 の時代 に入 る と外航定期航路 では,輸 出は 83%,輸入では89%のコンテナ化率 とな り, コンテナ荷役 を中心 とす る革新 的荷役が,港湾貨物量の大半 を占めるようになった。

一方,今 日の商業界はジャス ト・イン ・タイムの貨物流通 を強 く求めてい る。需要者か らの要請 に応 じた貨物荷捌 きだけでな く,港湾の外側 にある貨 物流通の需要 を喚起すると共に,迅速 にこの需要に対応 し得 る人的技術的ノ ウハ ウを用意 しなければならない。港湾内お よび,その周辺 には数多 くの港

6) 湾産業が立地 している。

この港湾産業の経済活動が地域経済に及ぼす経済効果は高 く,港湾都市の 経済は,まさにこれ ら港湾産業 に支 えられているのである。 この港湾産業の 中で直接 に港湾貨物の荷役 を行 うのが港湾運送事業 (者)である。

7)

港湾運送事業 は他人の需要に応 じて行 われる港湾荷役である。 この需要は あ くまで も輸出入貨物の本船への,あるいは本船か らの貨物の受け渡 しに伴 う港湾荷役 を請負 うもので,他人か らの委託荷役 に過 ぎない。

かかる荷役作業 は港湾内のみで行われるにす ぎず,受け身の待 ちの姿勢の 荷役形態 になって しまうものである。 この ような姿勢ではコンテナ化の時代

には対応で きな くなって しまう可能性が十分 にある。

特 に製品輸入の増大 とコンテナ化の進行 に伴い,需要者 は良質なきめ細か い運送サービスを提供することを港湾運送事業 に要求することになる

このため,需要者の要望 に沿って,需要者所在地 にまで的確 に貨物流通 を 行 う機能 を発揮することが港湾運送事業 には課せ られているのである。

輸入港 に到着 した製品が迅速 に消費市場 に流通することが強 く求め られて いる。埠頭 に到着 した本船か ら手際 よく市場へ搬出され,いち早 く需要者あ るいは消費者の手元 に届 くことが要求 されている。すなわち,製品が港湾か ら素早 く持 ち出されて消費市場 に製品が供給 される物流サービス を提供する ことが港湾運送事業 には要請 される。

このように製品輸入が増加する程,輸入者や小売業者お よび消費者 は多様

(8)

なサービスを要求するのであるか ら,まさに港湾運送事業は港湾 における物 流の軸 として存在 し,その機能 を発揮 しなが らこれ らの要求に応 えて行かな ければならない。

この ような問題 を解決するためには貨物の輸入港到着時か ら受理 までの物 流 におけるサービスが効率的に組合わされ,一貫 した貨物取 り扱いが行 われ ることが必要である。

産業構造の変革お よび消費構造の多様化 ・高度化 によって製品の輸入は増 加 し,少量 ・多品種 の製品が輸入 される。 このため,製品を完全 に運送 し, かつ,適切 に保管するための個別サービスの提供 は言 うまで もな く,製品の 在庫管理,流通加工,情報処理などのサービスを含 む総合的な物流サービス

の提供が製品輸入者あるいは荷主か ら港湾運送事業 には期待 されている。

多品種 ・小 口の製品であればある程,無在庫お よび即納化が強 く要請 され る。 この要請 に港湾運送事業が呼応 しなければ,当事業の将来的展望 は開け て来ないであろう。

陸上運送 と海上運送 とを連結する港湾において港湾運送事業は‑経営体 と して公共的役割 を果た してお り, また,生産するサービス を需要者 に提供 し なが ら,海上運送お よび陸上運送の補完的運送機能 を果た している。

港湾運送事業 は限定 された区域である港湾内でサー ビス を提供 している が,港湾は商品流通 と物流の連結点であるか ら,この連結点 に位置する港湾 運送事業は商品流通 と物流の両分野で経営体 として存在 し機能 を発揮で きる

もの と考 えられる。

したが って,生産者や消費者等 と直接 に結合 して,両者の分野に港湾運送 事業が進出 して新 しい機能 を果 し,従来か らの港湾内のみでのサービス提供 に加 えて新 たな総合的物流機能 を果たす事業体 として脱皮す ることが将来 に 向けて存続するためには必須条件 となるのである。

ここで,横浜港 を卑近な例 として取 り上げて港の経済効果 を概観 して見 よ

う。

36 No.22 2001

(9)

横浜港 における貨物の取扱量 は約

1

3

千万 トン強

( 2 0 0 0

年時)であ り, この うち貿易貨物量が約7千万 トン強,内貿貨物量が6千万 トン弱である。

東京湾内の近 くには東京港,川崎港お よび千葉港等が立地 しているが,横 浜港が横浜市経済に及ぼす影響 または貢献度 は相当に高いのである。製品を 主 とす る国際運送 におけるコンテナの取扱個数では横浜港 は約

2 7 0

万個 で, 世界のコンテナ港のコンテナ取扱順位 では第

1 2

( 2 0 0 0

年現在)である。

横浜港の周辺 には自動車産業,鉄鋼業,石油産業お よび電気機器産業 など の基幹 ・主要産業が生産活動 を展開 している。 また,その背後圏には,横浜 市 をは じめ,東京都,埼玉県,静岡県,山梨県,群馬県お よび長野県等の巨 大な消費地 を控 えている。 これ らの諸都県 と横浜港は緊密 に結合 して,貿易 貨物は言 うまで もな く,国内の他地域向けの貨物の集散 ・集荷地の物流基地 として,その機能 を十分 に果た してお り,各都県の産業振興 に貢献 している のである。

特に横浜市経済にとっては,横浜港が果た している経済的効果は著 しく大 きいのである。

前述 した各種生産産業,港湾運送業や倉庫業お よび海運業等の物流関連産 莱,あるいは港湾の周辺 に立地 して営業活動 を行 っている小売業や飲食業お よびレジャー ・ファッシ ョン関係等の生活文化関連産業が横浜港 を基盤 とし て生産活動お よび巨大な消費活動 を営んでいる。

そこで,横浜経済 との関係 を概観すると,横浜港 と結合する関連産業 に雇 用 されている労働者数はお よそ

2 6

万人であ り,横浜市全体の

2 0 %

を占めてい るのである。そ して,これ ら港湾関連産業が創出す る生産額 は,直接効果で 約

4

3 0 0 0

億 円,波及効果で 1兆

8 0 0 0

億円で,横浜市内総生産額のそれぞれ

2 2 %

,

9

%で,合計では総生産額の

3 0 %

の経済効果 を創出 している。

さらに,生活文化産業 など港 に関わる産業 を含めると直接効果で5兆円, 波及効果で

2

2 0 0 0

億円の生産額 とな り,総生産額の

3 6%

の規模 にも達する のである。 また,税収額で見 ると法人市民税,個人市民税両者で港湾産業関

(10)

連では331億円,港 に関わる産業は434億 円 となるのである。 この税収額 は, 8)

それぞれ横浜市総税収の9%,12%に相当 しているのである。

以上の ような経済状況か らす る と港湾が創 出す る経済効果 は非常 に大 き く,港湾の経済活動 を無視 しては港湾 と密接 な関係 にある都市経済の発展や 活性化 は到底望めないのである。横浜港 を一例 として見 るならば,いかに横 浜港が物流基地 として, さらには生産お よび消費 を拡大 ・発展 させ得 る基地 として横浜市の経済活動 と密接 に結合 していることが判明する。 まさに横浜 港無 くしては横浜経済は存立 し得 ないかを物語 るものである。

Ⅱ.

港湾整備 と環境共生型港湾

1.成熟社会で希求 される港湾

「日本の港 にはもはや国際競争力がない, 日本の代表港であった横浜港や 神戸港 も凋落 して しまった,アジアの拠点港 としての地位 を失 って しまった」

9) と言われている。

1990年代 に入るとアジア経済の急速な発展 (とりわけ東 アジア経済圏の発 展)に伴 いアジア地域の港湾が整備 ・拡張 され, 日本 を取 り巻 く国際海上運 送による物流地図は塗 り替 えられたと言わざるを得 ない側面がある。

そ して,情報社会 を反映 して書類 ・手続 き等の電子化 を中心 として整備 ・ 拡大 されたアジアの諸港 は日本の代表港であった横浜港や神戸港 を凌駕 した のである。

その結果,今 日では,香港港 を筆頭 に して,シンガポール港,高雄港,釜 山港等の各港が最 も競争力 をもち得 る港湾 としての地位 を構築 し世界の港の 中で上位 の位置 を占めるようになって しまったのである。例 えば,コンテナ 取扱港 として世界上位10港の うち5港 を占めている状況 を見 ることがで きる のである。

わが国は貿易立国を標模 しつつ原材料輸入の製品輸出の加工貿易構造 を構 38 国際経営論集 No.22 2001

(11)

築 して輸出中心の貿易政策 を国策 として遂行 して来 たのが従前の姿であっ た。

しか し,輸出増進政策に配慮 しつつ も,今 日では輸入重視 の政策へ と切 り 換 えているのである。特 に製造業がアジア地域 を中心 として製造拠点 を移転

10) したことは,とりわけ,製品輸入 に拍車 をかけたと言わざるを得 ないのである。

すなわち,重厚長大型か ら軽薄短小型の産業構造 に転換 した今 日の 日本の 産業構造の下では,従来型の輸出中心の貿易構造か ら製品輸入 に主眼 を置い た輸入構造 に変革 したのである。 この ような貿易構造の変革にともない,港 湾のあ り方 も変化せ ざるを得な くなったのである。

貿易取引の視点か ら見 ると,先ずは,製品輸入増加 に対処で きる施設や場 所が整備 ・拡充 されることが求め られたのである。一例 をあげると輸入促進 地域 (例 えばForeignAccessZone.FAZ)の整備や港湾流通セ ンターの建設 等は,まさに輸入増大 に対応 し得 る施設 ・設備の整備 ・充実 を実現 した もの

11) である。

また,港湾整備 ・開発の視点で見 ると,単 に埠頭や荷役機械等の整備 ・拡 充だけではな く,市民や住民 に密接 した親 しまれる港湾 として存在 し,人が 憩 うことがで き,市民同士の交流は言 うにお よばず,港,すなわち,自然 と

の交流がで きることが成熟化 した社会では強 く希求 されて くるのである。

換言すると,人間の存在 しない港湾は見捨て られ,社会的施設 として機能 せず,無価値 な場所 としてのみ存在するに過 ぎないのである。

成熟社会 に即応 し,また,情報社会の もとでの産業構造の変革に伴 う新 し い時代 に対処で きる港湾環境 を創造 ・整備す ることが緊要であ り,荷役の効 率化や設備的充実の経済的機能の質的向上 を図ることのみを目的 としてはな

らないのである。

市民の生活環境の高度化 は港湾 に眼が向け られた ときには, より強 く親水 性のある海 と戯れることので きる場所 としての港湾 を求めるようになるもの

と考えられるのである。

(12)

したがって,快適 な港湾環境が整備 された時 に市民や住民 に歓迎 される開 かれた港湾 として立地 し得 るのである。

2.環境共生型の港 (エコポー ト)の創設

社会の成熟化 にともない自然 との共生 を願望 して,人々は精神 的に潤いの ある文化や落ち着いた緑 に満ちた運動可能な緑地帯お よび自然 との触れ合い が容易 にで き得 る新 しい生活空間を求める。

成熟化社会においては港湾開発お よび整備 を実行する場合 にも新 しい生活 環境 に相応する環境整備 を優先 させ ることが第一条件である。

今後の港湾整備 においては沿岸域が特有する自然環境の適切 な保全 を図る とともに,新 しい緑地空間等 を創造 して生 き物や生態系 と共生 し得 る港湾で あることを目指 して整備 されなければならない。すなわち, 自然環境 と共生 し得 る港湾の創出である。港湾が立地する沿岸域は干潟 に代表 されるように 海洋生物や鳥類 にとっては掛け替 えのない生息 し,喰餌 をついばみ,繁殖す る天国である。

また,人間にとって も海水浴や海鳥の観察お よび魚介類等 を採取で きる遊 び と生活の空間で もある。

今後,社会の成熟化が一層 に進展する中で, より高い良質の生活環境 を実 現するためにも,水際域の中核 をなす港湾空間においてアメニチ イ豊かな港 湾環境 を創 出することである。すなわち,快適な港湾空間を創出することで ある。そ して港湾が有する歴史や景観等の 自然環境や地域特性 を活用 しなが ら港湾空間の快適性 を向上 させ る様 な施策 を実行することである。

市民や住民が求めて止 まない理想的な環境共生型港湾 (ECOPORT)とし 12)

ては

1.人々に潤い と安堵感 を与 えて心の解放 を感 じさせ る港。

2.最適 な自然環境が創出されて憩 うことので きる港。

3.干潟や茂みのある海鳥や魚介類等の生 き物が生存で きる港。

(13)

4.良好 な環境の維持 ・管理がなされている港。

緑 と自然 と人間性 に満ち溢れた港が環境共生型港湾である。海辺 に生息す る動植物 と人間が共生 しなが ら,環境への負荷 を最小限に止め, この港湾空 間において経済諸活動が円滑 に展開され,地域経済お よび国民経済の発展 に 寄与 して市民や住民の生活 を向上 させる港湾でなければならない。

自然 に優 しくクリー ンな環境 を創出する環境共生型港湾‑エ コポー トの整 備が要諦であ り,将来の港湾開発 における理想型港湾 として要請 されるので

ある。

豊か さの追求 と自然お よび環境の保全 と調和 は相当に困難であるか も知れ ないが,環境保全 と経済発展 とは調和 させなければならないのである。

環境共生型港湾‑エ コポー トは市民 ・住民か らも歓迎 される職住接近 した 遊び空間のある文化的教育的諸活動が展開で き得 る空間であ り,さらには経 済的産業的立地空間 として存在 して社会的公共的にも有用 な場所 となる筈で ある。

その結果 として地球環境の保全お よび人々の健康的文化的生活の維持お よ び継続的生存が可能 となるものであろう。

このような港湾は経済活動 と産業活動および文化活動が結合する要所 とな り,職住が接近 して活用 される生活空間 として も存在価値 を有するものであ る。

そ して港湾が特有する固有の自然環境や社会的公共的機能 を果たす空間で あることを十分 に認識 した歴史的にも有用 な施設お よび空間である魅力的な 場所 としての環境造 りを推進 して快適 な港湾空間を創造す ることである。

港湾が経済的産業的機能である物流お よび産業基地 としての機能を中心的 に果た しなが ら,将来 において も多様 な社会の需要に応 じて行 く役割 を果た すことは期待 されている。

また,同時平行的に,港湾が良好 な環境の保全 と創造のために新 しい生活 空間としての機能 を発揮す ることが要請 されている。そ して,健全で豊かな

(14)

環境が実現 して将来の世代 に継承 されうる港湾 とな り得 るのである。

したがって,今後の港湾のあ り得 るべ き姿 としては環境 と共生する港湾で あ り経済的産業的機能 と文化的生活的機能 を合わせ持つ空間域 として付加価 値の高い社会的有用 な公共的施設お よび生活空間 として広 く市民 ・住民 に受 容 される港湾でなければならないのである。

Ⅳ.

災害 と港湾

1.災害時における港湾の役割

火山列島の 日本では何時,何処で地震が発生 して大災害 を斎 した として も 何 だ不思議 さは無い と思われる

地震大国である日本 は常 に地震 に備 え,災害発生 に十全の対策 を講 じてお かなければならない。 しか し, どんな準備 を整 え,災害対策 を打 ち立ててい たとして も,現実 に災害が発生 した場合,果た して十分 な救助 ・救済がで き 得 るのであろうか。100%完全でな くとも, 日頃か ら災害 に備 え, 日常生活 の中で災害に対する訓練 を重ね,心身の鍛錬 と準備 を心掛けてお くことは絶 対 に必要 と考 えられるのである。

現実 に災害が発生 した場合 に,救援物資の提僕 ・補給が支障な く円滑 にな し得 るものであろうか。道路は寸断 され,交通機関は完全 に運行で きず,障 害物で町中は瓦磯の山となった状況の下では, 自転車かバイクか,あるいは リヤカーなどを利用する以外 には,物資の運送 ・持ち運 びはで きないのであ る。

この ような状況の中で,港湾は救援物資の保管場所 として,または物資の 補給基地 としての機能 を果た し得 る物流基地 とな り得 るのであろうか。港湾 自体が甚大 な被害 を被 り,港湾 としての機能 を果た し得 な くなることは十分 に予測で きるのである。

この ような予測がで き得 るにも拘 わ らず,港湾 には災害時における物資の

42 ∝)1

(15)

保管 ・供給基地 としての機能 を果たす役割が期待 されているのである。 この 期待 に港湾 は本 当に答 え得 るのであろ うか。

7 0

数年前 に発生 した関東大震災では横浜港 は甚大 な被害 を受 けている。そ の当時,横浜港 の港湾施設 は壊滅 し,完全 に港 の機能は停止 して しまった。

しか し,救援物資の輸送 には海運 に依存せ ざるを得ず,時の政府 は 日本郵 船等の数社の船会社 か ら船舶 を徴用 して救援物資 を積載 して横浜港 に回航 さ せた。

船舶 は東京湾 に集結 したにも拘 わ らず,横浜港が壊滅状態であった うえに, 大半の好 は焼失 してお り, また,荷役 を行 う港湾労働者 も不足 していたため 荷役 はほとん ど不可能な状況であった。約2年の歳月 を要 して震災前の状態 への復 旧工事が敢行 された。港湾が地震等の転変地変で甚大 な破壊 を被 ると

13) 物資の輸送が停止す るのである

都市型直下地震の ような震災で甚大 な災害が発生 した場合 に,港湾は物資 供給の基地, とりわけ救援物資の供給基地 として,その機能 を十分 に果た し 得 るのであろうか。

前述 したように港湾 は①流通活動の場,②産業活動 の場お よび③都市活動 14)

の場 としての多様 な機能 を果た しているのである。

流通活動の場 として災害発生時 に平時 と同様 に機能す ることが港湾 には一 層に期待 されるのである。 この期待 に港湾 は十分 に答 え られ得 るのであろう か。

災害はどんな地域で発生す るか,全 く予測で きないのである。蓄積 された 科学的データで地震の発生区域がある程度 は予測で き得 る状況 にはある とも 言われるが,的確 な予測 はで きていないのである。 ま してや発生 し得 る時 間 ・時期 については全 く予知で きないのである。

もし,港湾 自体が震災 によ り甚大 な被害 を被 った とすれば,港湾機能は完 全に破壊 され.物資供給の基地 としての機能は全 く果 た し得 ない状況 に陥る 筈である。そ うであれば災害時 における港湾の利用 は考慮 の外 にあ り,港湾

(16)

は無用の長物 と化 して しまうのである。

2.災害物資供給基地および耐震性 ある港湾

6年前の1995年 に発生 した阪神 ・淡路大震災 による神戸港の被害状況 をみ る と甚大 な被害 を被 ったのである。埠頭施設である重力式岸壁 は法線が1m か ら5mも全面 に迫 り出 し,天端高 も1mか ら1.2mも沈下 した。荷役機械 では固定式のジブクレー ンお よび移動式のガ ン トリーク レー ンの全 てが被災 したのであった。特 にガン トリークレー ンは,法線の変位 にともなって脱輪 した り,股裂 き状態 ともな り,その他 の係留装置や レール等 も甚大 な被害 を 受けたのである。 また,外郭施設である防波堤の法線の変位 は比較的小 さい ものであったが,天端高が1mか ら2.5mも沈下 したため,防波堤 としての 機能が著 しく低下 したのであった。

神戸港へのアクセスである臨港交通施設の状況 をみると,ハーバ ーハ イウ ェイ,神戸大橋や摩耶大橋 では橋桁 の落下,橋脚の屈折や亀裂お よび破壊が 生 じ,ポー トアイラン ド,六 甲アイラン ドの道路では液状化や亀裂等の破損 が発生 したのである。 さらにポー トライナーや六 甲ライナーなどの新交通 シ ステムは橋脚の破損や桁の落下あるいは駅舎が損傷 を受 け,全 く駅舎 として の機能 を果 たせ な くなったのである。

一般港湾運送事業道路 として通常 は六 甲大橋 ,大阪 との間の運送では湾岸 線 を利用す るが,道路が完全 に被壊 して全 く利用 で きなかった。 1週 間後 に は トラックは通行 で きるようになったが,至 る ところで渋滞が発生 したので ある。

震災が発生 した場合 に被 る被害の深刻 さを神戸港 に見 たが,関東地域 に地 震が発生 したな らば横浜港が甚大 な被害 を被 る可能性 は十分 に予測で きるの である。小 田原地震あるいは相模湾地震の発生の可能性が境やかれている状 況か らすれば,いつ地震が発生 して も不可思議 ではないのである。

ある港湾が神戸港の ように地震 に見舞 われた場合,耐震埠頭等 を整備 して

(17)

いた として も,無傷 の状態で物資の供給基地 と して機 能 し得 るのであろ う か。

過去の歴史に学ぶ まで もな く,一度災害が発生すれば即時的な政済 ・救援 は相当に困難 と考 えざるを得 ないのである。 もちろん耐震岸壁の整備 あるい は通信網体制 をは じめ として,飲料水,食料品等の備蓄 ・用意は個人や行政 を問わず,相当に行 われているもの と考 えられ得 るところではある したが って,今 日の状況は関東大震災の当時 とは著 しく相違 しているか もしれない が,万全 とい うことはないであろう。

物資供給基地お よび物流拠点 としての機能 を港湾が果たすためには,常 に 公共投資や補助 によって必要 な施設の整備 ・拡充が行 われなければな らな

い 。

現時点で,この ような港湾施設の整備 ・拡充 を思考するとき必要なことは, 単に従来通 りの貨物の集積場所 としてのみならず,震災 に備 え,災害 に耐 え 得るだけの,いわゆる耐震性あるいは免震性のある港湾施設が構築 されるこ

とが絶対条件 として要求 されるのである。

したがって,港湾管理者は港湾の管理 ・経営 は言 うまで もないことである が,港湾建設お よび港湾施設の設営や修築 において も震災 ・災害への対応の 視点か ら検討すべ きである。

阪神 ・淡路大震災で神戸港の埠頭施設は大被害 を被 り, コンテナ埠頭 を中 心 とする外貿埠頭の損壊 は甚大であった。大震災の教訓 を生か して港湾施設 および設備の復興 ・改修 においてはもちろんのことであるが,港湾管理者は 常時,震災 に備 えての港湾建設 を検討 し十全の企画 ・設計が行 われなければ ならないのである。

加えて,ハー ド面の強化 ・強靭 さのみを求めるのではな く,港湾物流の観 点から見て,港湾は災害時に備 えた救援物資の備蓄 ・保管の施設 として利用 できうる場所でなければならない。

したがって, この視点か らの港湾建設 と管理 ・運営が港湾管理者 には,今

(18)

後 なお一層 に強 く要望 されるのである。

3.災害時における物流基地 としての港湾

平常時においては,港湾は内外貨物の集積の場所 として存在 し機能 してい る。その周辺 には生産基地が立地 し,背後圏には巨大な消費地 を抱 え,そこ に生活する人々の 日常の暮 らしを支 えているのである。

既 に触れたように港湾の周辺 には電気機器,鉄鋼,化学, 自動車,石油等 の主要産業が生産活動 を展 開 してお り, これ らの生産活動 と港湾物流機能が 結合 して,適切 な原材料 の供給 と生産物の的確 な配送 を可能 としているので ある。

さらには港湾 を点 として,その点の広が りの背後 には都市が存在 して巨大 な消費地 を形成 しているのである。 この消費地 に生活財 をは じめ として,必 要 ・必需の物資 を継続 して供給 しうる機能 を果た しているのが港湾である。

以上の ように平常時においては港湾 と都市や国民経済および産業 との関係 は非常 に深 く,港湾の物流機能が支障な く果たされてこそ,国民生活は存立 し得 ると言えるのである。

そこで,この ような港湾の役割は,平常時にあっては十分 に果た し得 る し, 果たされていなければならない。

万が一,地震等で港湾が大被害 を被 った場合,本来,港湾が果たすべ き機 能は壊滅 し,物流基地 としては全 く役立たな くなって しまうであろう。

阪神 ・淡路大震災 を契機 として,港湾管理者は地震災害に強い耐震強化岸 壁の建設 を進めているが,近未来の災害 に備 えてお くことは欠 くことので き ない防災対策である。

しか し,災害が現実 に発 した後で対策 を講 じることは付 け焼 き刃的である と言わざるを得 ないか もしれない。「備 えあれば憂いな し」 とい う格言 を座 右 に常備 してお くことが大切だと考 えられるのである。

確 かに同一地域では,大地震 は70年か ら100年 を経て繰 り返 されるのか も

(19)

しれない。数十年 または数百年 に一度 しか発生 しない災害であるか もしれな い。 したがって,未知の何十年 に一度 しか発生 しない災害 に備 えて膨大な資 金を投入 して災害 に備 えることは無駄であるか もしれない。その前 に緊急 に 整備すべ き社会施設のために公共投資は投入 されるべ きだ とも考 えることは できるのである。

しか しなが ら,火山列島の我が国では,地震規模 は別 として も常 に地震 は 発生 してお り,大規模地震 は周期 をもって繰 り返 し発生するとも考 えられて いるのである。 したがって,常 日頃か ら小規模地震 ・災害 に備 えての十全の 対策 を講 じてお くことは住民の生活 を守 り,社会資本の焼失 を防 ぐためには 不可欠の条件ではあるが,同時に遠い将来に必ず発生す るであろう大地震へ の防災対策 を打 ち立て,相当な財政負担があった として も,結果 としては市 民の生命 ・財産 を保護 し,地域防災 に役立ち, もって,国土の保全 ・維持 を 図ることに大 きく貢献するもの と考 えられる。価値ある防災対策であ り,効 果のある有効 な公共投資であろう。

港湾において も同様 に考 えられる。上述 したように港湾管理者 は耐震強化 岸壁の建設 を積極的に進めている。 しか し,ある特定岸壁の部分的な強化だ けで十分 に防災対策 を講 じたことになるのだろうか。

たとへば,一例 を考 えるならば,埠頭の液状化防止や上屋 ・倉庫等の耐震 施設,コンテナヤー ドにおける冷凍 ・冷蔵 コンテナ等 の電気系統設備 の安 全 ・防備対策が完全 に施 されていることが もっとも重要なことである

このように安全 ・防備対策が十全 に講 じられていることで,災害時におい て港湾が物流基地 としての機能を発揮で きるのであ り,また,災害発生 に備 えての必要 ・必需物資の備蓄基地 として役立ち得 るのである。 さらには,港 湾内の一角に緊急避難 としての一時的な仮設住宅の設置場所 として利用 し得 るだけの用地 を確保 してお くことも必要だ と考 えられるのである。

これか らの港湾の立地条件 または存在理由を考 えると,従来の様 の内外貨 物の集散 ・集荷地 としてのみの経済的機能のみを果たす場所ではな く,災害

(20)

時には被災者の避難場所 として利用 される場所であることが必然視 されるの である。

港湾 に避難 した人々は,短期 間であって も,港湾内での生活 を余儀 な くさ れる訳であるか ら,この人々に対 して生活物資が迅速 に,かつ円滑 に して十 分 に配分 され,行 き渡 らなければならないのである。

したがって,必要 とされる生活物資 をは じめ,た とへば,仮設住宅用の建 設資材あるいは緊急必需品の備蓄 ・保管 ・貯蔵施設の立地場所 として港湾が 利用 され,災害時には生活的 ・社会的機能 を果たす ことが,なお一段 と期待

されるのが, これか らの港湾であると考 えられるのである。

なお,個人が 日常生活の中で災害 に対 しての防備 を十分 に行 ってお らず, また,防災への関心度が著 しく高 まっていないのが現状である (日本経済新 聞による)。災害がたび重なると人々の防災意識が高揚するか も知れないが, たと‑意識が高揚 したとして も,個人で災害対策 を十分 に行 うことは困難で ある。

V.

災害時 における港湾機能

1.災害時の状況予測

平常時においては港湾は物流基地 としての役割 を十分 に遂行 しているので ある。 しか し,一度,地震等 による災害が港湾 に発生 した場合,港湾は何 ら の被災 もな く,本来の物流基地 としての機能 を果た し得 るであろうか。

現在,岸壁の耐震化 を図って耐震強化岸壁 を中心 とした施設の強化 ・整備 が急迫の対策 として講 じられつつあるが,単 に岸壁 のみの耐震強化 を行 って

も効果がない と考 えられるのである。

港湾内の岸壁以外の場所 における液状化 を防止 し得 る対策 を講 じ,災害時 には緊急避難場所 として利用で き得 る場所 として整備 されてお り, また,災 害時に必要 とされる生活用品 ・必需品などの救援物資の備蓄 ・貯蔵所 として

48 No.22 2001

(21)

機能するように整備 されていることが絶対 に必要だ と考 え られるのである。

したがって,災害発生 に備 えて,港湾整備 を行 う方向に向けての大胆 な計 画 と方針が打 ち立て られ,実現す ることに多大 の費用 を投入す ることが喫緊 の要諦 とされるのである。

大災害 を被 った神戸港 をみると,旧来の埠頭施設であったことも原 因では あろうが,港湾機能は壊滅状態 に陥 り,特 にコンテナ埠頭 の被害 は甚大であ った。 コンテナ埠頭がある六 甲アイラン ドやポー トアイラン ドは陸上部 とは 大橋で結 ばれているため,橋脚等が破損 したことで,港湾 と接合す る幹線道 路の交通止め, また,高速道路 の倒壊で交通 アクセスが麻痔 して しまったの である。 このため,港湾 は完全 に機能停止 となったのである。

道路 を利用 しての救援物資の運送では,到底,円滑 に行 われなか ったこと は言 うまで もない。そ こで船舶 を利用 しての海上運送で救援物資が神戸港 に 向けられたが,損傷 していない在来埠頭 を利用 して,救援物資の荷揚 げを試 みたが,船舶の接岸 に相当な時間を要 した り,接岸 ・荷揚 げ手続 きが円滑 に 行われなかったことである。

たとえ,荷揚 げされて も,物資の荷捌 き ・仕分 けが円滑 に行 われないため, 被災者や被災地への配給や配達 に時間を要 し,救援物資の提供 に困難 をきた

したことである。

このような状況か らす る と,災害時 に港湾が果た して救援物資の供給基地 として機能 し得 るか とい う問題が生 じるのである

港湾 自体が甚大 な被害 を被 った場合 は,他港か ら持 ち込 まれる救援物資 は もちろんの こと,港湾内に備蓄 されている物資の供給基地 として も全 く機能 しないことが予測 されるのである

2.災害時にそなえての港湾の対応

横浜港 を一例 として考 えてみる と本牧埠頭 は橋 のない陸上部 と接合 してい る状態であるので,救援物資の備蓄 ・貯蔵場所 として機能 し得 る と考 え られ

(22)

る。 また,埠頭の損壊が甚大でない限 り,部分的であれ,物資供給の基地 と しての機能は果た し得 るであろう。

15) そこで災害時に対応 し得 るための港湾 とは

(1)岸壁の耐震強化 は必要条件であるが,救援物資の備蓄 ・貯蔵施設が完 備 されていること

(2)港湾 に経済的機能のみを求めず,救援物資の供給基地 としての基盤が 整備 されていること

(3)災害時に備 えての空間が保持 されていること

(4)災害時 には個人 ・団体 を問わず,港湾への出入 りが容易 にな し得 るこ と

(5)常時か ら救援物資緊急利用岸壁 を指定 し,災害時には 自由に岸壁が使 用で きること

(6)複数他港 との間に災害時 における相互の救援物資供給お よび緊急荷揚 げ等の相互扶助協定 を結んでお くこと

(7)港湾利用関係企業 と港湾関係機関 との間で災害時 における情報の提供 および防災訓練等 についての協力連携 を日常的に図ること

(8)市民 ・住民 に対す る災害時 における港湾利用のための宣伝 ・広報活動 を行 うこと

以上の様 に港湾 における幾つかの対応策 を列記 したが,これ らの対応策は 災害発生 に備 えて,港湾管理者や港湾利用者等 に平時の中で心掛け,災害に 備 えるべ き事柄である。

したが って,不幸 に して,現実 に災害が発生 した状況の下で,本当に港湾 は物流基地 として,あるいは救援物資供給 ・補給基地 として,その役割 を果 た し得 るのであろうか。やや,否定的に答 えざるを得 ないのか も知れない。

確かに災害 に備 えて,ある程度の物資 を港湾 に備蓄 してお くことは必要で はあるが,具体的な備蓄量は計量困難であ り,また,港湾施設が利用で きう る度合い も発生 した被害状況如何 で異なって くるので,これまた予測困難 と

50 No.22 2001

(23)

言わざるを得 ないのである。

災害‑の対応策 は種 々立案 され,部分的には実行 されていて も,災害発生 時に港湾が機能 し得 るかは疑問 と言 わ ざるを得 ないのである。「備 えあれば 憂いな し」で,常時,災害 に備 えると同時 に自然 と共生で きる環境 に配慮 し た港湾整備が図 られることが緊要である。

お わ り に

自然環境 に十分 に配慮 して 自然環境 と共生す る港湾整備が強 く求め られて いるのである。海洋生物や海鳥 にとっては干潟 は生存す るためのオアシスで あ り,沿岸域 は市民や住民 にとって も魚介類 を採取 し,海水浴 などで 自然 と 戯れ,海 とい う自然の恐 ろ しさをも知覚で きる遊 び と学びの空間で もある。

自然の生態系 と共生で きる港湾 として整備 し,港湾が有す る歴史や景観等 の 自然環境 や地域性 を活用 して快適 な港湾空 間 を創 出す るこ とが緊要であ る。そ して港湾が社会的公共的役割 を果たす区域であることを十分 に認識 し て市民生活及び住民生活 にとって有用 な施設あるいは魅力的な空間 として存 在 しなければならないのである。す なわち,港湾が良好 な環境保全 と創造の ための新 しい生活空 間 として機 能 を発揮す ることが要請 されてい るのであ る。

さらには,環境 と共生す る港湾 ‑エ コポー トとして沿岸域 に存在す る付加 価値の高い社会的有用性のある公共施設であ り,市民 ・住民 に親近性のある 区域 として立地す ることが, これか らのあ り得べ き一つの姿 として港湾 には 強 く求め られていると考 えられるのである。

港湾は内外貨物の集散 ・物流の基地 としての役割 を果たす とともに地域縁 済にもた らす経済効果は著 しく高 く,港湾の浮沈 に経済活動 は大 きく影響 を 受けるのである。 まさに港の発展 な くして港湾都市の発展 ・成長 は期待 で き ないのである。

(24)

四面 を海 に囲 まれ,お よそ海岸線 は総延長,4万kmに もお よび,約10km 間隔で 1つの港が立地 してい る 日本 においては港湾の整備 ・拡充が行 われな ければ,円滑 な物資 の国際物流 に対処 で きないのである。

特 に 日本 においては貿易貨物 の運送 においては横 浜,神戸 ,大阪,名古屋 , 東京お よび北九州の各港 を主要港 として,貿易貨物 の集散 ・物流基地 として 港湾が立地 していることによ り,年 間10億 トン強の貿易貨物量 の積卸 の荷役 取扱 を可能 としている ものである。10万 トン相 当の コンテナ船が接岸 して貨 物荷役 が行 われ ようとしている近時 においては, この ような荷役形態 に対応 す る埠頭整備 が緊要である。

平時 における港湾の存在価値 は相 当 に高 い ものであるが,緊急時,た とへ ば地震等 の災害発生時 において も港湾が十分機能 して,緊急 ・救済物資の供 給基地 として機能 し,あるいは臨時的住居地 としての役割 を果 たす場所 と し て存在す ることが必要である。

このため には災害 に強い,耐震性 お よび防災性 のあ る港湾 として整備 ・建 設 され,そ して,災害 に対応 で きる食用物資や機材等が常備 ・備 蓄 ・常備 さ れている港湾であることが, これか らの港湾 としては強 く要請 されるのであ る。

1) 日本籍船は昭和47年 をピークとして,コス ト競争力の低下により,漸次, 減少 して平成10年では168隻 とな り, 日本商船隊に占める割合 は,僅かに 8.5%にす ぎない。運輸省海上交通局編 日本海運の現況 平成11年版 P107

‑108 日本海事広報協会 平成11年7月

2)中田信哉 ・長峰太郎 物流戦略の実際 日経文庫 P33‑39 1995年4月 3)中田信哉 ・長峰太郎 前掲書 P33‑39

4)関税法 第21項で輸出入港 を 「開港 OpenPort」 と称 し,現在,5大 港 をは じめ として全国では118港が指定 されている。なお,輸 出入空港 を

52 No.22 2001

(25)

「税関空港 CustomsAirport」 と称 し23空港が指定 されている。

5)輸入促進地域 は 「輸入の促進お よび対 内投資事業の円滑化 に関す る臨時措 置法」 に基づ き,港湾,空港お よび,その周辺地域 において,輸入貨物の蔵 置,加工,展示,運送 を行 い,輸入促進 を目的 として特定地域 を指定す る も のである。2000年現在では,横浜,大阪,神戸,北九州等,全 国21都市が指 定 されている。

6) 港湾産業 としては海運業,倉庫業,梱包業,通関業,港湾運送事業等 々が あ り,業務体系 では荷主系列の業務 と海運 ・船社系列の業務 に分類で きる。

小林照夫 ・三村星人編著 貿易 と港 成山堂書店 P32 1998年7月 7)港湾運送事業法第2条で港湾運送事業 について規定 し

,

「他人の需要」 と

は 「荷主 または船社 (船舶運航業者)か ら港湾運送事業の委託」 を受 けるこ とである。

8) 開発輸入,再輸入,並行輸入お よび個人輸入の様 に多様 的な輸入形態で製 品輸入が増加 した結果,製品輸入比率が上昇 して,2001年8月現在 では62%

の比率 を示 している。 しか し,欧米諸国に比べ る と未 だ低 く,一層 の製品輸 入促進 を図ることが諸外 国か ら要請 されている。

9 )

港湾流通セ ンターの一例 として横浜港国際流通セ ンターを見 ることがで き る。横浜港国際流通セ ンター編 横浜港国際流通セ ンター施設データ1998版 を参照。

10)小林照夫 ・三村真人編著 貿易 と港 成 山堂書店 P61 1998年7月 ll) 小林照夫 ・三村異人編著 前掲書 P18

12)運輸省港湾局編 環境 と共生する港湾 P8 平成6年10月

13)松橋幸一 被災地神戸港の施設 と物流 に関す る実態調査 に基づ く横浜港の 防災上の問題点の研究 横浜市地域研究 P17‑18平成9年9月

14)中田信哉 ・長峰太郎 前掲書 P33‑39

15)三村星人 被災地神戸港の施設 と物流 に関す る実態調査 に基づ く横浜港の 防災上の問題点の研究 横浜市地域研究 P59‑60平成9年9月

参照

関連したドキュメント

うのも、それは現物を直接に示すことによってしか説明できないタイプの概念である上に、その現物というのが、

tiSOneと共にcOrtisODeを検出したことは,恰も 血漿中に少なくともこの場合COTtisOIleの即行

荷役機器の増車やゲートオープン時間の延長(昼休みの対応を含む)、ヤードの拡張、ターミ

港湾外 取⽔池.

明治以前の北海道では、函館港のみが貿易港と して

防災 “災害を未然に防⽌し、災害が発⽣した場合における 被害の拡⼤を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをい う”

対策等の実施に際し、物資供給事業者等の協力を得ること を必要とする事態に備え、

このような環境要素は一っの土地の構成要素になるが︑同時に他の上地をも流動し︑又は他の上地にあるそれらと