く論 文)
改善事求の場面における働 きかけ方略の対照研究
一 日本語母語話者 とウクライナ語母語話者の大学生の場合‑
ザ プランナ オ レスタ
1.本稿 の背景 お よび研究 目的
1 .1
は じめに相手 を動か して特定の行動 を させ よ うとす る言語行為 は言語生活で重要 な位 置 を 占めて お り、発話行為理論
( Se ar l e1 979;
柏崎雅世1991;
熊取谷1 995;
山岡2008 )
、対照語用 論( Bl um‑ Kul ka
,他1 989;
『日本語学』 特集 依頼表現1 0‑ 1 41 995 )
、第二言語習得論 (柏 崎秀子1993;
猪崎2000;
守屋2002 )
、社会言語 学 (井出、他1985;
熊谷2000;
熊谷 ・ 篠崎2006 )
等 において多面的に研究 されてい る。働 きかけ行動 を発話行為の観点か らみ る と、《依頼》 か ら 《命令》 までのバ リエー シ ョン がみ られ、指示型発話行為 として括 ることができる。実際の言語使用場面では、《依頼か、《命 令》 といった主要かつ典型的 な発話行為 が な され る場合 もあれ ば、その両行 為 の中間的な 特徴 を持つ言語行為がな され る場合 もあるのだが、後者 は今 なお あま り注 目され ていない
と思われ る。そのひ とつが、《改善要求》 である。
本稿 では、同等の立場 にある相手に対 して行われ る 《改善要求》 に着 目し、 日本語母語 話者お よび ウクライナ語母語話者 の行 う働 きかけの仕方の異同を探 ることにす る。
1
. 2
日本語の指示型発話行為 にみ られ る働 きか けの特徴《改善要求》 は 《命令》、《依頼》 とい う言語行 為の仲 間であ り、話者 が相 手 に特定 の動 きをさせ よ うとしてい るとい う点で、共通す る 目的 を持 ってい る。《改善要求》 に関す る研 究 を概観す る前 に、 日本語母語話者 とウクライナ語母語話者 の指示型発話行 為 の実現 の全 体的な特徴 が指摘 され てい るい くつかの先行研 究 を取 り上げ、本稿 の出発点 となった問題
を提示す る。
相手 に行為 を要求す る 日本語の定型表現 として、行為 が直接求め られ る「〜て くだ さい」
お よび行為が間接的に求め られ る 「〜ていただけませ んか」の よ うな授受動詞 の肯定形 ・ 否定形 を用い る疑問文がある(柏崎秀子
1 993 )
0行為 が直接求め られ る 「〜て くだ さい」の使用 は 《依頼》 にはあま り見 られず、《命令》
にほぼ限定 され るとい う考え方が一般 的で ある (熊取谷
1 995: 1 4)
。柏崎雅世( 1 991 )
は指 示型表現 として 「〜て くだ さい」 を とりあげ、その機 能 を詳細 に分析 してい るO柏崎雅世( 1 991)
による と、 「〜て くだ さい」 に依頼機能 が ある と言 えるのは次 の場合 のみで ある。それは 「助け ̲T.下 さい」、 「お話 を聞かせ てあ ぼて下 さい」の よ うに話 し手 あ るいは他者 に
‑ 1‑
向か う方 向性 を持 った動詞 ・補助動詞が用い られ る ときと、 「喜 虹耳下 さい」の よ うな 自己 完結 的な動作の指す動詞 が用 い られ る場合で 「私のために
」
ない し 「私 の代 わ りに」が共 起す るときである (柏崎雅代1 991 : 89)
0また、一般 に 日本語の依頼 ・要求発話行為 では、授受動詞 の肯定形 ・否定形 のある疑問 文を定型表現 としてい る。柏崎秀子
( 1 993)
は、日本語母語話者 と日本語学習者 に対 して、それ らの表現使用実態調査 を行 った。その結果 、依頼 ・要求 の場 面において、定型表現だ けでな く、む しろ話 し手側 の状況 ・目的 ・願 望や場面の状況及び主題 な どに言及 している 表現 が用 い られ、聞き手の推論 に委ね る場合が多い ことが明 らか になってい る (柏崎秀子
1 993)
0以上か らわかるよ うに、 日本語母語話者 の指示型発話行為 にお いては行為 を直接求める 形式 を用い る場合 は限 られ てお り、相手の行為 を質問形式 で間接 的に求 める表現な らびに 自分側の状況 ・目的 ・願望 を相手に提示 して行為 を遂行 させ よ うとす る場合が少 な くない。
1 . 3
ウクライナ話の指示型発話行為にみ られ る働 きか けの特徴ウクライナ語では、 日本語 に比べて行為が直接求め られ る命 令形が よ り幅広 く用 い られ てい る。指示型発話行為の形式 を分析 した
Dmyt r e nko( 2009)
に挙 げ られ てい る例 を見る限り、命令形は 《命令》、《忠告》のみな らず 《依頼》、《助言》 に も広 く用い られ てい る。
命令形 の用法が多岐にわた ることは、 ウクライナ語 のみな らず スラ ヴ諸言語 にある程度 共通す る特徴である と考 え られ る。その幅広い用法 について最初 に指摘 したのは、 ウクラ イナ語 と同 じくスラヴ語族 に属す るポー ラン ド語 について研 究 した
Wi e r z bi c ka( 1 985 )
であ った。 そ こでは、命令形 に よる依頼 ・要求がニ ュー トラル であることが、英語 との違い と して主張 されてい る。 のちにMi l l s( 1 992 )
も、命令形が ロシア語 において最 も好 まれ る依 頼 ・要求の表現であると、同様 な見解 を示 している。Wi e r z bi c ka( 1 985 )
はまた、働 きかけにおける相手の愛称、対象物 の指小辞の使用 を指摘 し、話者 が直接的な要求のイ ンパ ク トを軽減す る と述べてい る。 そ うす る と、要求 を軽減 す る手段 は述部 の外側 にある とい う前提 がある と言 えるであろ う1。 本稿 では、それ を踏ま えた上で、要求の発話文の述部 の語嚢 自体にも着 目し、その特徴 の記述 を試み る。1 . 4
《改善要求》 とい う発話行為《改善要求》 とい う発話行為 は、ほかの指示型発話行為 と異 なって、話者 は相手に特定 の行為 を求める権利があるとい うことを確信 してい る
( Apr e s j an1 969)
O一見、《命令》 と の区別 が難 しいが、その相違点は次の よ うに説 明できるであろ う。《命令》の場合、話者は 相手 に比べて社会的に優位 な立場 に立つ とい う条件があるが、《改善要求》では力 関係 は本 来必然的な条件 ではな く、相手 に特定の行為 を要求す る権利 は、相手 に よって引き起 こさ れた不都合な状況か ら生 じる。例 えば、足 を踏 まれた とき、漏れ た書類 を提出 された とき、1 日本語 に関 してもこのよ うな考 えが一般である (例 えば、山岡、他 (2010)が挙げ られ る)0
‑2‑
話者 は相手の行為のせ いで被害 を被 ってお り、行為 を求 める権利 があると言 える。
山岡 (2008)は 《改善要求》 が広義の 《依頼》 の一種 であると主張 しなが ら両者 の違 い について次の よ うに説 明 してい る。 「《依頼》 は利害ゼ ロの状態 か らプ ラスの利害 (利益) を得 よ うとす るものであ り、《改善要求》 はマイナスの利害(不利益)の状態 か らゼ ロに戻そ うとす るものである」 (山岡 2008:92)。話者 は強 く行為 を求 め得 る立場 にあるが、それが 働 きかけの仕方 に どの よ うに現れてい るか を見 る意義 があるであろ う。
1 . 5
《改善要求》 に関す る先行研究明確 に 《改善要求》の特徴 に着 目した研 究 としては、山岡 (2008)及び牧原 (2008)の 研究が挙 げ られ る。
山岡 (2008)は発話機能論 の体系化 に向けて、《改善要求》の機能 を果た し得 る発話 を整 理 してい る。山岡 (2008)は、《改善要求》には 《依頼》 として も機 能す る発話機能 (1「遂 行
」2
「命令」3
「意志要求」4
「意志誘 導」5
「可能要求」6
「許可要求」7
「願 望表 出」8
「感情表出」)と、《改善要求》のための間接的な発話機能 (9「感情表 出」10 「状態描写」) が用 い られ てい る としてい る2。牧原 (2008)は、《不満表明》お よび 《改善要求》 にお け る配慮行動 に注 目してい るが、《改善要求》の基本的なス トラテ ジー も区別 してい る。 その ス トラテジーは、① 「自分の不利益 を告知す る」、② 「不利益 をもた らしてい る相手の行為 を告知す る」、③ 「期待 され る望ま しい事態 を反実仮想 として告知す る」、㊨ 「不利益 によ って引き起 こされた不満 の感情 を表明す る」、⑤ 「行為の改善を要求す る」とい う
5
つであ る3。それぞれの分類 は異なっているが、いずれ にせ よ2つの グループに大別 で きると思わ れ る。1)行為が求め られ る表現 → 山岡 (2008)はそれ らを 1,2,3,4,5,6,7,8と細分類 してい る が、牧原 (2008)は③ 「期待 され る望 ま しい事態 を反実仮想 として告知す る
」
と⑤ 「行為 の改善の要求」のみに分 けてい る。2)行為 の要求がない表現 → 牧原 (2008)は① 「自分の不利益 の告知」、② 「相手の行 為の告知」、㊨ 「不満 の感情の表明」に分 けているが、山岡 (2008)は 9 「感情表 出」と 10
「状態描写
」
とに分類 してい る。語用論的な観 点か らい えば、第一のグルー プは、話者 が相手 に してほ しい行為 を言語化
2 山岡 (2008)が挙げている発話機能の例 :1「遂行」 (駅まで迎 えをお願 い します)、2「命 令」 (駅ま で迎えに来て くだ さい)、3「意志要求」(駅まで迎 えに来て くれますか)、4「意志誘導」(駅まで迎 えに 来て くれ ませ んか)、5「可能要求」(駅まで迎 えに来て もらえますか)、6「許可要求」(駅 まで迎 えに来 てもらってもいいですか)、7「願望表出」(駅まで迎 えに来てほ しいんです)、8「感情表出」(駅 まで迎 えに来て くれ る と、あ りがたいんですが)、9「感情表出」(冷房が効 きす ぎて寒いんです)、10「状態描 写」 (あなた、私の足を踏んでます よ)、 (ち ょっ とうるさいんです け ど)0
3 牧原 (2008)が挙げているス トラテジーの例 :(∋ 「自分の不利益 を告知す る」(聞 こえないんです け ど)、
② 「不利益 をもた らしている相手の行為 を告知す る」(うるさいよ)、③ 「期待 され る望ま しい事態 を反 実仮想 として告知す る」(も う少 し静かに して くれ ると うれ しいんだけど)、㊨ 「不利益によって引き起 こされた不満 の感情 を表明す る」 (あー、イ ライ ラす る)、⑤ 「行為の改善 を要求す る」 (静かに して)、
(静かに して くれ る ?)0
‑ 3‑
す るよ うなタイプの働 きかけか ら成 ってお り、第二のグループは、望ま しい行為‑の言及 な しに状況のみ を相手 に提示す るタイプの働 きかけか ら成 ってい る と考 え られ る。 改善要 求において相手 に してほ しい行為 が言語化 され るか否かは、働 きかけの仕方 を特徴づける 大 きな要素であると考 え られ る。 しか し、 この ことについて、具体的な場面にお ける 日本 語母語話者 の使用頻度の高い改善要求ス トラテジーを観察 した論文は、管見の限 り見当た
らないO
また、望ま しい行為‑ の言及 がある場合、行為 が直接求め られ てい る表現であるか、質 問 ・意見の表 出な どの形式で間接的に求 め られている表現であるか とい う相違 も明確 にす る必要があると思われ る。
1 . 6
本稿の 目的本稿の 目的は、対照語用論 の観 点か ら、 日本語母語話者お よび ウクライナ語母語話者の 行 う 《改善要求》 の機能 を担 う発話文の言語形式、その述語 の動詞 の語嚢的な特徴 を考察
し、働 きかけの方略の異同を明確 にす ることである。
2 .
調査の概要2 . 1
場面の設定本稿 では、同 じ集 団に所属す る、同等 の立場 にある相手に対す る 《改善要求》 を取 り上 げ ることにす る。相手が同等であるとい う設定は、力関係 の不釣 り合いによる干渉 を取 り 除 くためである。 また、同 じ集 団の比較的親 しい相手に改善 を求 めることには、話者 が相 手 との良好な関係 を維持 したい とい う動機 があると考えられ、《依頼》 に近い 《改善要求》
になると言 える。 これ について研究す ることは、対照語用論 の理論上の意義 のみな らず、
外国語 としての 日本語お よび ウクライナ語の教育にも示唆的である と思われ る。
《改善要求》の場面 として、共同の作業において相手が 自分の担 当部分 を し忘れ たため 不都合が生 じ、そのためその相手に改善を求める必要が生 じるとい う状況を設定 した。
その詳細は、稿末 に付録 として示 したスケ ッチの資料 も参照 されたいが、以下の通 りで ある。2人の同期の学生が部活で茶碗 を片付 ける作業 をや っている。 1人は茶碗 を箱 に入れ てフタを しめ、も う1人はそれ を棚に しま うとい う役割分担 をす る。1つ 目の茶碗は問題な くしまえたが、2つ 目では、棚 に しま う人はフタが閉まっていない箱 を渡 されたので、相手 にフタを閉めるよ う動作の改善 を求める。
この場面において、相手の行為 によって話者が被 る被害の度合いは低い とはいえ、相手 の行為が 自分の作業 (箱 を棚 に入れ る)の妨 げになるとい う意味では被害を被 ってお り、
ここで相手に動作 を求めることは本質的に 《改善要求》である。
2 . 2
調査方法日常生活で多数の話者 がまった く同 じ状況 に遭遇す るとい う場面は限 られてい る。その
ため、状況 を統一 し、その状況の下で話者 の行 う言語行動のパ ター ンを観察す るためには、
自由会話 の収集ではな く、談話完成テス ト
( DCT)
や ロールプ レー とい う方法が よく用い られ る。 この方法 には上述 の利 点があるものの、欠 点がないわ けではない。すで に指摘 されて いるよ うに、DCT
では話者 同士の相互作用で発展 してい く談話 は収集不可能 であるの と、DCT
お よび ロール プ レーで被験者 が提供す る表現 を私生活 において も用い るか どうかが疑 問である とい う2
点である( Bo xe r & Co he n2 004 )
0しか し、本調査では、母語話者 の頭 の中に存在す るスキーマ を明 らかにす るのが 目的で あるため上述 の短所があるものの、
DCT
法 を本稿 の 目的に合 った方法 として採用す ること に した。ただ し、状況が被験者 にことばで説明 され る従来のDCT
ではな く、スケ ッチ談話 完成テス ト( Ca r t o o nDi s c o ur 畠 eCo mpl e t i o nTe s t )
を用 い ることに した.そ うす ることに よっ て、1)被験者 に十分な文脈 を提示す るこ とを可能 に し、2) ことばによる説 明が被験者 の ア ウ トプ ッ トに与 える影響 を排除 した。 その方法 を積極 的 に取 り入れたⅥ) o n 良 Ke l l o g g ( 2 0 02 )
に よる と、被験者 か らよ り精密な回答 を誘発 できる とい う肯定的な報告がな されている
( Yo o n良Ke l l o g g20 02 )
02 . 3
被験者調査の対象 となった被験者 、調査時期 は次の とお りである。
日本語母語話者(JJ) 一東京在住 の大学生 (学部生、院生)
3 7
名 (男性:9
名 、女性 :28
名)1 8‑3 0
歳 (平均年齢2 2. 7
歳)日本語で書かれたスケ ッチ用紙 による 日本語での回答 ウクライナ語母語話者(UU)
‑リヴィウ (ウクライナ西部の都 市)在住 の大学生 (学部生、院生)
37
名 (男性:5
名 、女性 :3 2
名.)1 8‑3 0
歳 (平均年齢20. 8
歳)ウクライナ語で書かれたスケ ッチ用紙 によるウクライナ語 での回答 調査時期 :
200 9
年6
月〜1 1
月2 . 4
調査手続き調査 を始 める前 に、被験者 にそれぞれ の母語 で調査 の 目的 を説 明 し、同意 を得た。 口頭 で次の留意点 を伝 えた。
・提示す るスケ ッチは、イ ラス トではあ ります が、実際に起 こった出来事 とい う想定 で状 況 を考慮 し、登場人物 「みやび」 (ウクライナ語の場合
「 Na t a l j a」 )
にな りきって、スケッチ
1 3
の吹 き出 しの中のセ リフをお考 え くだ さい。・登場人物 は被験者の言語 の母語話者 です。
・普段話 しているよ うな 自然 な表現の使用が望ま しいです。発話の長 さは問いませ ん。
‑ 5‑
・スケ ッチを見てい るときに状況な どに関 して質問があれ ば、調査者 に尋ねて も結構 です。
その後スケ ッチを提示 し、一つだけ空欄 となってい る吹 き出 しに発話 を書いて もらった.
その際、発話行為 のタイプな どに関 して指示 をせず 、絵 で展 開 してい るス トー リーや前後 の会話の助 けによって 《改善要求》の機能 を果たす発話 を考 えて もらえるよ うに した。
2. 5
分析方法本論では対照語用論的な観点か ら依頼 の分析枠組み を提唱 しているCCSARPプ ロジェク ト
( 石l um‑ Eul ka
、他1989)お よび依頼 の場面における働 きかけ方 を研 究 している熊谷 ・柴 崎 (2006)を参考 に分析 を行 ってい る。その基準は以下の通 りである。(1) 機能的要素‑ の分割 とその分析
まず 、《改善要求》のひ とま とま りの発話 を、 「機能的要素」 とい う 「相手 に対す る働 き かけの機能 を担 う最小部分 と考 え られ る単位」 (熊谷 ・篠崎 2006:22)に分割 した。個々の 機能的要素は、 コ ミュニケー シ ョンの中で担 う役割 か ら大 きく4つの コ ミュニケー シ ョン 機能 に分 け られ る。 それ は、話 を始 める 【切 り出 し】、相手が引き起 こ した状況 を提示 した り相手に相手の行為 を告知 した りす る 【状況‑の訴 え】、望ま しい行為 を相手に明確 に促す
【行動の促 し
】
、そ して相手 に恐縮 の意 を伝 えた り、要求の理 由を述べた りして働 きかけの 印象 を調節す る 【軽減補助 】である。さらに、各 グループ内において、主に述語の形式 を手掛 か りに機能的要素の下位 の分類 を行 った。 日本語の分類 にあたっては山岡 (2008)、柏崎 (1993)も参考 に したが、独 自に 命名 した もの4もある。
(2) 主要行為部の抽 出 とその分析
次に、各発話の
1
つ または複数 の機能的要素か ら、働 きかけの 「主要行為部」( He adac t )
を区別 した。主要行為部 とは、発話 の核であ り( Bl um‑ Kul ka
、他 1989:275)、当該言語行 為 を最 も明確 に実現す る機能的要素である (" t hemo s te xpl i c i tr e al i z at i o no ft her e que s t " )
( Bl um‑ Kul ka
、他 1989:276)。通常、【行動の促 し】が指示型発話行為の主要行為部 にな っている。 例 えば、「財布 を忘れ て しまった。明 日返すか ら、500円を貸 して くれ ない?」とい う発話の場合 、 「お金 を貸 してほ しい」 とい う意 図は 「500円を貸 して くれない?」に 明確 に現れ、それが主要行為部 として採用 され る。 ただ し
、
【行動の促 し】のない働 きかけ もある。発話 が 「財布 を忘れて しまった.…‥」のみである場合、明確 な 【行動 の促 し】は ない。 しか し、昼 ごはんを食べ よ うと友達 と食 堂に来た状況のなかでは、 これ で依頼 にな り得 る。 この よ うに、【行動の促 し】のない働 きかけの場合 、【状況‑ の訴 え】が行為主要 部 まで繰 り上げ られ る。以下、本稿の調査結果 を例 として用い ると、 (a)では 【行動の促 し】が主要行為部 とな る
4これは 「状況確認」、「状況の評価」、「現況のままで行為を続けることの確認」、 「注意喚起」である。
のに対 し、(b)では 【行動の促 し】がないため、【状況‑の訴 え】が主要行為部 まで繰 り上 げ られ る。
(a)犀 のフク卿 よ 。 ・
・ ・
些 岬 いP( J J 2 2 )
【状況への訴 え】 【行動 の促 し】→ 主要行為部
( b)
冴 子、屠 ̲pブタJ野まっTないC
やん( J J 2 8 )
【状況‑の訴 え】‑ 主要行為部
以下は、著者 が試みた分析 の手順である。抽 出 した主要行為部 において、相手 に してほ しい行為が言語化 され るか否か、言語化 され るのであれば、命令形 な どによって行為 が促 されてい るか、間接的な表現で促 されているか とい う観点か ら働 きかけの仕方 を考察 し、
日本語母語話者 とウクライナ語母語話者 とでその使用傾 向を対照 させた。
(3) 述語 の語嚢的な特徴
最後 に、それぞれ の母語話者 は相手 に してほ しい行為 に言及す る際 に、述語 の動詞 とし て どの よ うな語嚢 を選択す るかを分析 した。 当該の行為が具体的に指 し示 され てい るか否 かが分析 の主な対象 となった。
2 . 6
分析項 目この よ うな方法で分析 を行い、 日本語母語話者お よび ウクライナ語母語話者 の働 きかけ における次の点 を比較対照 した (それぞれ を括弧内の節 で考察す る)0
‑ 《改善要求》の機能的要素の全体的な使用傾 向 (→3.1)
‑コミュニケーシ ョン機能か ら見た機能的要素の組み合 わせのパ ター ン (談話構成)(ー3.2)
‑ 【状況‑の訴 え】の機能的要素の種類 (ー3.3)
‑ 【行動の促 し】の機能的要素の種類 (
ー3
.4)‑主要行為部か らみた働 きかけの仕方の特徴 (→
3 . 5 )
一述語動詞 の語嚢的な特徴 と働 きかけにおける役割 (→3.6)3 .
結果 と考察3 . 1
機能的要素の使用傾 向日本語母語話者
( J J )
とウクライナ語母語話者( UU)
が 《改善要求》で用いたすべての 機能的要素を、 コ ミュニケー シ ョン機能別 に以下の表 1に示す。 あわせてその出現数 も記 す。‑7‑
<表
1>
《改善要求》 で用い られ た機 能的要素の全体像コミュニ
ケーシ ョン機能 機能的要素
J J
の代表例 出現敬U
U の代表例 出現数 切 り出 し 感 嘆 あ っ/と あー/あれ/お っ 8Oj
(あっ) 6呼びかけ ねえ花子 /花子 8 Ⅹr(ハニー)ystju (名 前 )/Sone放o
20
状 況 ‑ の 細 分 類 ー フタ開いてるよ23
lY zabula zakryty cju1 2
訴 え
3 . 3
節 ko(rこの箱 を閉 じ忘れてる)obo占ku行動の 細 分 類 → ち ょっ と箱 の フ タ閉
1 9
Zapakuj, bud' 1aska,3 2
促 し
3
.4節 じてもらっていい ? ko(箱 を梱包 してお くれ)robku軽減補助 謝罪 ごめん
7
ProbaE (ごめん)2
理由の 両手 がふ さが って い
3
U meneobydvi rukyzajnjati1 4
説明5 るか ら (両手がふ さがってるか ら)この よ うに
JJ
とUt
Jで用 い られ てい るコ ミュニケー シ ョン機 能の種類 に差 はないが、そ の使用傾 向に相違 がみ られ た。【切 り出 し】では
、U
U には名 前 ・愛称 で相手 に話 しか ける 「呼び かけ」が多 く用い られ る。JJ
は 【状況‑ の訴 え】 と 【行動 の促 し】を同程度 で用 い るの に対 して、UU
は 【行動の 促 し】 を よ り多 く用い る傾 向 にあ る と言 える。 この結果 は、 日本語話者 の不満表 明 を英語 話者 との比較で分析 し、 日本語話者 が状 況 を同定す る とい うス トラテ ジー を英語話者 よ り 多 く用 い る とい う藤森( 1 997)
と似 た よ うな傾 向を示 してい る。【軽減補助 】に関 しては
、JJ
は謝罪 を、U
tJは 自分がなぜ行為 を要求 してい るか とい う、相 手 の引き起 こ した状況 と直接結 びついていない理 由を述べ る とい う相 対 的な違 いが見 ら れ た。
3 . 2
《改善要求》 の談話構成本節 では、【行動 の促 し】お よび 【状 況‑ の訴 え
】
を中心 に 《改善要求》 の談話構成 の特5 「理由の説明」を 【状況‑の訴え】と区別 した理由は、後者 と異なって前者は単独で 《改善要求》にな りにくく、【行動の促 し】を補助するということにある。
‑ 8‑
徴 を取 り上 げ る。《改善要求》 は、【行動 の促 し】お よび 【状況‑の訴 え】の使 用 の有無 に よって
、3
つ のパ ター ンに分 け られ る。【行動 の促 し】のみの 《改善要求》
J J
にも用い られ るが、UU
によ り顕著 にみ られ る特徴であると言 える( J J
の1 6
件対UU
の25
件)0(1) ごめ尤′、ふた厨 め Tぐれ
a ? ( J J 4 )
6( 2)
軸 砂TW, ZaPah
也budW ho mbku. ( UU2 6 )
プ リステ イ‑ナ (名)、舶 する.IMV、 どうか、 箱.ACC フyス テイ‑ナ、ど うj
d
膚 を舶 L,て
暑 ぐk
oその うち、
U
U の働 きかけには 【行動 の促 し】が重複す るもの もあるO(3)
. 牧野t e ! DQ PO mO bT ,
基盤 由 b雌 ko mb ku
, フ リーステヤ (愛称) !手伝 う.IMV. 閉 じる.IMV. どうか 箱.AC(コ、bo me Dl ' t j BE v ko t T J mat y s v u xl j adu. ( UU1 7 )
なぜな ら 私 困難 だ 持つ.INF 引き出 し.ACC
フyヌ ティーナ、手伝 っTo屠、i/きf労し舛樺 ちづ らいか ら,どjか静を厨
L
:て こ お { ko
【状況‑の訴 え】のみの 《改善要求》
これ は
、J J
の半分近 くにみ られたパ ター ンであ り、U
U にはそれ ほ ど多 くない( J J
の1 8
件対
UU
の 7件).(4) ブタ厨 まっ TないcfD
( J Jl )
( 5 ) C l ' E丘o mb hZ DO hBDO Z EPa ko
TI B Da. ( UUI O)
この 箱
. NOM
下手に 閉 じられてい る. PS V
この脚ま
クノ方妻j漂いよoその うち
、J J
の働 きかけには 【状況‑の訴 え】が重複す るものがある。(6) あっ、 これ/好い
T
aげ F.大丈 夫P( J J9 )
【状況‑ の訴 え】 と 【行動の促 し】の組み合 わせ の 《改善要求》
両グループで最 も頻度が少 なかった
( J J
の3
件対UU
の5
件)06事例で 【行為の促 し】部分 を2重下線
、
【状況‑の訴 え】部分 を下線 で示 してある。‑ 9‑
(7) あ、ノ野げ っ磨 Lだ /野あ ーこ
おこう。
(JJ5)( 8) C j t v z abu l B Z BhTV t V ko mb ku ! . . .塾 由 虚 budT hs ka, I( Ut J 25 )
あっ、君 忘れた 閉じる. I NF
箱AC
C。 ... 閉じる. I M
V これ どうか。あっ、箱 を閉め忘れ てい るよO … 閉 じてお くれ !
3 . 3
【状 況へ の訴 え】の機能 的要素 につ いてのJ J
とU
Uの比較【状況‑の訴 え】の機 能 は、好 ま しくない状況、あ るいはそ の状 況 を引き起 こ した相 手 の 行 為 を相 手 に知 らせ る こ とにあ る。 平叙 文 が最 も多 いが、行 為 ・状況 を確認 す る疑 問文 も こ こに入 ってい る。 【状 況‑ の訴 え】 には相手 を動 かす意 図 もあ るが、相 手 に してほ しい行 為 についての言及 はない。以下 に
、J J
お よびU
Uが 【状 況‑ の訴 え】 として用 いた機 能的要 素お よびその代表例 、分類 の基準 となった述語 の形式 を示す。 分類 の際、J J
の機 能的要素 に丸付 き数字 を、U
Uの機能 的要素 にア ラ ビア数字 を振 って 区別す る。<表2> JJの 【状況‑ の訴 え】
機能的要素 代表例 言語形式 (述部)
① 状況提示 ブタ開いてるよo 自動 詞 のテ 形 + な い/い る + よ/
わ よ/ じゃん/ けど
自動詞の過去形 + ままだ + よ/わ (塾 行為提示 フタを閉め忘れているよO 他動詞のテ形+ いる + よ
(塾 現況 のままで行為 を このまま しまっていいの ? 連用修飾語 (様態) + テ形いい (の)
続 けることの確認 +?
④ 状況確認 (開いて るけど)、大丈夫 ? (主語 対象物) 形容詞 十?
⑤ 状況の評価 フタの開けっ放 しはまず い (主語 対象物) 形容詞 (+かな)
<表
3> U
U の 【状況‑ の訴 え】機能的要素 代表例 言語形式 (述部)
Korobkavidkryta.
1 状況提示 箱.NOM 開けられている
. PS V
受動過去分詞 箱が開いてるよoTy zabula zakryty cju korobo6ku.
2 行為提示 君 忘れた 閉じる
. Ⅰ NF
この 箱.ACC 動詞過去形 この箱 を閉 じ忘れているよo現 況 の ま ま で Cju stavyty neEakrytoju?
3 行 為 を続 け る これ.ACC 入 れ る
. Ⅰ NF
閉 じられ て い な い 動詞 不定詞+連用修飾語ことの確認
PS VⅠ NS?
(様態) +?1㌢ 昌eos'zab
u
la?4 行為確認 君 なにか 忘
れ
た ? 動詞過去形+?
「状況提示」、 「行為提示」、 「現況のままで行為 を続 けることの確認
」
とい う機能的要素は JJとU
U とで共通 しているが、JJには状況視点の 「状況の評価」な らびに 「状況確認」、U
U には行為者 に視点の置かれ る 「行為確認」がみ られた。【状況‑の訴 え】の機能的な要素の出現数 は以下の通 りである。
<表
4>
【状況‑の訴 え】の機能的要素の出現数 (JJとU
U との比較)機 要 能 素
的話者
状況提示①1 行為提示②2 ③行為を続 ける現況のままでことの確認3 状況確認④ 行為確認4 状況の評価⑤ 合計JJ 15 5 1 1 ‑ 1 23
表4か らも明 らかであるよ うに、JJは 【状況‑の訴 え】を
U
U に比べて多 く用い る。 そ の うち、「状況提示」すなわち行為者 な しに状況 を相手 に提示す るのがJJには最 も多 く、3
分 の2弱 を占めてい る (JJの23件 の うち 15件①)。それ に対 して、【状況‑の訴 え】はU
U にはそれ ほ ど現れず 、現れ るに して も、状況 とい うよ りは相手の行為が問題 とされ てい る (2,3,4は合わせて12件 の うち9件 となっている)03 . 4
【行動の促 し】の機能的要素 についての JJとU
Uの比較【行動 の促 し】 とい うコミュニケー シ ョン機能 を持つ機能的要素に よって、話者 は要求 の意思 を表 明す る。 【状況‑の訴 え】 と違 って、【行動 の促 し】では話者 は望ま しい行為 に はっき りと言及 してい る。JJお よび
U
U の用いた機能的な要素 は次の通 りである。<表
5>
JJの 【行動 の促 し】機能的要素 代表例 言語形式 (述部)
(丑 直接的要求 フタも閉めて○ 他動詞のテ形 (+ね) (塾 注意喚起 フタは今度か らちゃん と閉めようね. 他動詞の意向形 (+ね)
他動詞のテ形 + くれる?/くれ
③ 協力の尋ね フタ閉めてくれ る?
ない ?/もらえる?
④ 相手行為 のため ちょっと箱のフタ閉めてもらって 他動詞のテ形 + もらって (も)
‑ l l ‑
⑤ 当為の陳
述
閉めて くれ ない とo 他動詞の当為形JJ
の① 「直接 的要求」では、命令形 が省 略 され る親 しい間柄 にお け る7行為指示表現 「〜 て」が用 い られ てい る。② 「注意 喚起」
で は、話者 は意 向形 を用 い て未 来 の行 為 を呼びか けてい る。 ③ 「協力 の尋 ね 」 に入 るの は、授 受動詞 の疑問 ・否 定疑 問形 の尋 ね で あ る。㊨「相 手行 為 のた めの許 可 の尋 ね」 は、相 手 の行 為 に対 して相 手 に許 可 を求 め る よ うな複雑 な表現 で あ る。砂川
( 2 0 06: 31 7 )
の説 明 を借 りる と、親 しさを表 しなが ら丁寧 にお願 い し たい とい う葛藤 の 中で、「〜て も らえます か」 がス トレー トす ぎる と感 じる場 合 、他者 の行 為 に対 して許 可の尋ね表現 を選択す る とい うこ とで ある。<表
6> UU
の 【行動 の促 し】機能的要素 代表例 言語形式 (述部)
1 直接的要求 ZBC閉 じる.yynJⅠ;MV bud'どうか1BSka,pac箱
. ACC
ykuI 動詞 の命令形 (+好意 に訴 え るbud'1askB(どうか)) フタを閉めてお くれo乃′ De mOhla b zBkTyty
行 為 の可能 君
NEG
で きる.ⅠRR 閉 じる, Ⅰ NF
可能 を表す補助動詞 2性 の尋ね kombhu? + 動詞の不定詞
+?
箱
. ACC?
箱 を閉めてもらえない ?自分行 為 の 肋 蓋‑ tebe 昌占e DBXVylyn血 ? 許可求めを表す述語副詞 3 可能
. Ⅰ MPS
君. ACC
もう 一分間 ?許可の尋ね ちょっ と (お願 い して)いい ? (遂行動詞 の不定詞) +?
4 当為の陳述 必象ILeba
Ⅰ MPS
zac閉 じるyynyt. Ⅰ
yNF
ko箱. ACC
FObocyku. 当為 を表す述語副詞 + 動詞の不定詞U
U の 「直接 的要求」 には、動詞 の命 令形 が用 い られ てい る02
「行 為 の可能性 の尋ね」で は可能 を表 す補助動詞 mohtjiで きる)が用 い られ
、3
「許 可の尋 ね」で は 自分 の行為 につ いての許 可が尋ね られ てい る。ところで
、JJ
お よびUU
のいずれ において も、 「直接 的要求」 とそれ以外 の機 能的要素 とで は語用論 的 な違 いが存在 す る。 前者 で は、話者 は行為 の遂行 を相 手 に直接 求 めてい る た め、相 手 には行為 を行 うか ど うか とい う選択肢 が な く、行 為 が一方的 に押 し付 け られ て い る。 一方 、後者 にお いて は、話者 は相 手 に行 為 につ いて尋 ね てい るか、行 為 の必 要性 を7柏崎雅世 (1993:88)。
‑ 1 2‑
述べ てい るかであ るが、行 為 を拒否す る とい う語用論 的 な 自由は相 手 に与 え られ てい る (Leech1983:120)。前者では、命令形 とい う、要求す るための文法的な手段 によって行動 が促 されているが、後者では、それ以外の表現によって行動 が促 されている。本稿 では、
命令形 (あるいは命令形が省略 された表現) を直接的要求 と見なす のに対 して、行為 が要 求 され るそれ以外の表現 を間接的要求 と見なす。
【行動の促 し】の機能的な要素は、頻度の観点か らは次の よ うにま とめ られ る。
<表
7>
【行動の促 し】の機能的要素の出現数 (JJとU
U との比較)機能的 a直接 b注 意 C協 力 d行為 e相 手 行 f自 分 g当為 h願 望 b‑hの
要素
話者 ①的要求1 喚起② ③の尋ね 性 の尋の可能ね2 ④為 の た め尋ねの許 可 の 行 為 の許 可 の尋ね3 ⑤の陳述4 の表出⑥ 合計
JJ 2 2 6
‑
6 ‑ 2 1 17UU
24 ‑ ‑ 4‑
1 3‑
8JJの 【行動の促 し】として最 も頻度が高いのは
C
「協力 の尋ね」
とe「相手行為のための 許可の尋ね」であるO‑方、U
U の場合、a
「直接的要求」が圧倒的に優先 されてい るo3 . 5
主要行為部か らみた働 きか けにおけるJJとU
Uの比較ここまで 《改善要求》 を、【状況‑の訴え
】 、
【行動の促 し】の種類及びその使用傾 向の観 点か らそれぞれ分析 したが、本節ではJJ とUU
の 《改善要求》の実現の特徴 を一般化 し、働 きかけの仕方の観点か ら量的に比較す る。そのために
、2. 5
節 で説明 した よ うに、《改善 要求》が最 も明確 に実現 されている主要行為部 を抽 出 し、そ こで相手に してほ しい行為が 言語化 され るか否か、 され てい るとすれ ば、直接求 め られてい るか どうかを分析す る。そ の結果、働 きかけは3つの型 に分 けられ る。「行動の直接的要求型
」
行為の遂行 が直接要求 され る 【行動 の促 し】のタイプである。相手には行為 を遂行す る か否 か とい う語用論的な選択 の余地がな く、行為 の決定権 が話 し手にある。 「直接的要求
」 a
がここに属 している (JJの2件対t J
U の24件)o(9) あ、フタも閉めて8。
「行動 の間接 的要求型」
相手 に してほ しい行為が言語化 され る 【行動の促 し】が用い られ るが、行為 の遂行 の決
8紙幅の関係で 日本語母語話者の事例のみを示す。
‑ 13‑
! ・ 享 ! 、
( l 汀) 二 畑 ; ・L、 二∵ \∴ ‖ 汗 一・・7!.7 F.廿 'J , て い 、 言 ̲ .:・:, i‑:'
日 大 況 提 示 型 」
こ の タ イ プ 齢 働 き か け U ) 特 徴 は 泡 譲 吉 し 孝 に と っ て 望 ま し い 行 為 が 言 語 化 さ れ な い と い う
十 ∴ 成 ニ:、 ・ し畑 (‑,,:==TLI I/ に.:日 昌 ニ L̲I ,'': ,il・‑ : ・′/̲Jl・: 構 成 t∵ ∴ 亘 ' し.ト ト ト ー1 〜こ廿 日 寸 し 丁 L U '・ 7 1'}い
・ li l1 . 附 き ∴ 立 上 ′ 卜'/ 仁 ′ ・LJ L,日 付 4',了 沖 舶 り り J :昌 L 芦 U L T t: L! 号 L井 と 、1
調 に は 「 行 動 の 直 接 的 要 求 労 勘 が き わ め で 少 な 宅 ∈ 約 5 % う、 《 改 善 要 求》は残 りの 「行
動 が ) 間 接 的 繋 漉 型 」 と 「 状 況 提 示 葦 望 」 で 行 わ れ る 、こ と が ほ と ん ど で 舟〜?愚 とい うことが言 え
る 。 そ れ に 対 し て 、 U W は 約 6 師 表 が 「 行 動 の 直 接 的 要 求 型 」 の 働 きかけを してお り、「行動
酌 間 接 転置勺要 求 型 」 と ぎW状 況 提 示 型 」 と で は 差 が ほ と ん ど 見 ら れ ない。 したがって、それぞ
度 で 用 い て 卜 行 動 の 直 接 的 要 求 型 」 を あ ま り 用 い ない犯に対 して 、UU はち ょうどその逆
鞘 傾 向 を 示 し て い る O
.JJ ∴ 守 こ 況 捉 ・」巧 IJ. . 右 Ti言 、こ . 行 動 了刷 技 的 要大 里」,i,億 左 目行JF:T.1t・h直寸如 /1̲≡要来 里 ・トーirLii吊
は 希 ) o
W u : 「行 動 の 直 接 的 要 求 型」を優先 経絡教職間接的要求型」お よび 「状況提示墾望」の使用
約 度 合 い は 低 い )O
3. 6
動詞の詩集的な特徴以上、3.1か ら 3.5節で言語形式 をもとに分析 を行 った結果、JJ と UU とでは働 きかけ の仕方 に大 きな違いのあることがわかった。
本節 では、動作 ・状態 を指 し示す動詞 に焦点を当てて述部の動詞の語嚢 に違 いがあるか 否かを考察す る。
JJの 37件 の働 きかけの うち、具体的な動作を指 し示す 「ノ野め BI/野めJ哀れ石、ノ野 C石、
J野 ぐ
」
以外 の動詞 が用い られたのは、1件 のみである。(12)茶碗 を しま うときはフタを閉めてお くのが大事なのO今度 か ら気 を̲?̲且てねO(JJ35)
それ に対 して、
UU
の 37件 の働 きかけにおいては、具体的 な動作 ・状態 を指 し示すz ac y J T 7 yt y(
閉 じる/閉めろ), z akT yt y(
閉 じる/閉めろ), z Bbut yZ akT yt y(
閉 じ忘れ る)、軸
(開け られてい る)のみの働 きかけは22件 で、具体的な動作 を指 し示 さない動詞 が生起す る のが、15件 もある。その うち最 も多いのは、話 し手に向か う方 向性 を持 った
do l プ ロ mO ht y
(手伝 う/助 ける)の 使 用 であ る (11件). この動詞 は補助動詞 として述語 の一部 を構 成す る場合( do po mo ht y z B丘T J , l y(
閉 じるのを手伝 う))と.単独で述語 になってい る場合があるO(13) 軸 tyno, .dc!p̲Q̲a?̲Q̲dy
me nL ' bud' 1 3s ha.
(UU2) プ リステ イ‑ナ (秦)、 手伝 う.IMV 私.DAT どうか.プ リステ イ‑ナ、 どうか手伝 ってお くれ。
また、具体的な動作 を指 し示す動詞 が省 略 され 、本来の助動詞 であるはず の動詞 のみ が 用い られてい る働 きかけ も見 られ たO それ は
、z Bbu
tji忘れ る)のみ による 「行為確認」 (義 3を参照)、maZ na(
可能である)のみによる 「自分の行為の許可の尋ね」 (表6を参照)であ る。4 .
結論 と今後の課題本稿では、比較的親 しい同等の立場にある相手に対す る 日本語母語話者(JJ)とウクライナ 語母語話者(UU)の 《改善要求》 を総合的に比較 した結果、次の結論 に至 った。
・ 働 きかけの仕方か らみ る と、JJの 《改善要求》 にも UU の 《改善要求》 にも 「行動 の 直接 的要求型」、 「行動 の間接的要求型」、 「状況提示型」の
3
タイプがいずれ も現れ るO・ しか し、JJと
U
U とでは優先 され る働 きかけのタイプに偏 りが ある。JJは 「行動 の直 接的要求型 」 をほ とん ど用いず、状況 を提示 して遂行すべ き行為 を推測 させ る 「状況提示 型」 を多 く用い る。 また、行為 について相手 に許可 を求 める、尋ね るこ とに よって行為 に 対す る決定権 を相手に委ね る 「行動の間接的要求型」の使用頻度 も高い。それ に対 し、UU は相手 に してほ しい行為 を直接求 める 「行動の直接 的要求型」 を優先 的に用い る。つ ま り、‑ 15‑
《改善要求》 の場面 において
J J
は状況 を提示 し、U
U は行為 を直接求 め る表 現 を用い る可 能性 が高い。・ 述語動詞 の語嚢的な特徴 を分析 した結果
、J J
は当該 の行為 ・状態 を具体 的 に指 し示す が、U
U は行為 を要求す るものの、して ほ しい行為 をはっき り指 し示 さない動詞 (話 し手 に 向か う方 向性 を持 った動詞) を用 い るこ とが少 な くない。本稿 で は、一場面 にお ける 《改善要求》 の実現 を調査 したが、男女差 、親 疎 関係 、上下 関係 に よる変異 は対象 としていない。今後 、場 面 の増加 ・社会 的な変数 の導入 を検討 し、
結果 を よ り一般化 で きる調査 を行 ってい きたい。
また、本稿 において、 日本語母 語話者 とウクライナ語母語話者 の 《改善要求》 を、用 い られ てい る機 能的要素 の分類 とその使 用傾 向、主要行為部 か らみ た働 きか けの仕方 、述語 動詞 の語嚢 的な特徴 とい う観 点 か ら対照 させ たが、それ ぞれ の言語 の話者 が選 択す る表現 と、要求 を和 らげ よ うとす る とい う話者 の意 図 との関連性 を明 らか に してお らず 、今後 は それ らを よ り明確 に したい。 ただ し、今 の段 階で も次の仮説 が立て られ る と考 え られ る。
日本語母語話者 の 《依頼 ・要求》、《不満表 明》 に関 して は、す で に指摘 され てい るの と 同様 に (柏崎
1 993;
藤森1 997)
、《改善要求》 に も行為 を求 める表現 はあま り用 い られ ない傾 向が あ る と言 える。 さらな る検証 が必要 ではあ るが、今 回の調 査 で得 られ たデー タ を見 る限 り、 「状況提示型」
はJ J
の 《改善要求》 の最 も一般的な働 きか けの仕方である と 考 え られ る。そ して、「〜て も らっていい?」、「〜て くれ る?」な どの 「行動 の間接 的要求 型」
の使 用 は 《依頼》 に近 い もので、相 手‑ の要求 を緩和 したい とい う動機 と結びつ いて い る と思われ る。一方 、 ウクライナ語話者 の場 合 、ス ラ ヴ諸語 において は命令形 の使 用 が多 い とい う先行 研 究 の指摘通 り
( Wi e r z bi c ka1 985; Mi l l s1 992)
、本調査 の結果 において も命令形使用 の 《改 善要求》 が最 も多 くみ られ 、ニ ュー トラル な表現 として用 い られ てい る と思 われ る。 ただ し、 U
U は要求 を和 らげ る手段 として動詞 の語嚢 的な選択 を有効 に行 い、話者 ‑ の方 向性 を 持 つ動詞 、具体的 な動作 を指 し示す とは言 えない述語動詞 の語嚢 を用 い る とい う捉 え方 が 妥 当で ある と考 え られ る。ウクライナ語 の細字一覧 (伝 統 的な学術 転写法 を使 用)
Aa=l a ] ,B6=l b ] ,BB=l v ] ,I l r =【 h ] ,ff =l g 1
,皿1 =【 d ] ,Ee =【 e 1 ,cc = 輔e 】 ,X拭=【 孔 33 =[ Z ] , Ⅱ=[ y ] , I i =l i ] ,王 朝 i ] ,鮎 =b ] ,I t R=l k ] , nJ I = l l ] ,MM=l m ] ,HH=l n ] ,Oo =[ o ] ,nI I =l p ] ,Pp= 【 r ] ,cc = l s ] , TT = l t 1 ,yy=l u ] ,
◎卓= l f ] ,ⅩⅩ=[ Ⅹ ]
,Ib =l c ] ,t l t I =l E ] ,I l h =l g ] ,I nI I l =[ 昌 6 ] ,L=[ ' ]
(軟音記号),
I)
E ) =b u】 , S I j I =ba]
略号 (
T imbe r l a ke
(2004) を参考 に)ACC
対格DAT
与格I MV
命 令形I MPS
非人称動詞/非人称 述語 副詞I NF
不定詞
I NS
具格I RR
仮定法NEG
否定助詞NOM
主格PSV
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《資料》
調査で用いたスケ ッチ (日本語版/縮小 したサイズ)
被験者 に提示 した状況の説明 :二人の同期生 (花子 とみやび)は部活 で稽古を します。あなたは 「みやび」
です。