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Kyushu University Institutional Repository

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

チクリン ヲ トリマク チイキケイカン ノ ホ ゼン ニ シスル チイキジュウミン ニ ヨル  タケ ノ リヨウカノウセイ ニ カンスル ケン キュウ

栗田, 融

Faculty of Design, Kyushu University

https://doi.org/10.15017/17128

出版情報:Kyushu University, 2009, 博士(芸術工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第7章 竹林を取り巻く地域景観の保全に資する地域住民による竹の利用可能性  本章では、1 章で示した主要な研究目的「⑤地域住民による竹の利用機会を活用パターン として設定すること」に対応するため、4 章・5 章および 6 章の結果を踏まえて、地域住民に よる竹の利用機会としての「活用パターン」を導くことで、地域住民による竹の利用機会を 増やす可能性を検討し、竹林を取り巻く地域景観の計画的な保全に寄与するための 1 つの方 法として地域住民による竹の利用可能性を示した。 

 

7̶1  地域住民による竹の利用機会における活用条件の整理 

本節では、大分県における地域住民による竹の利用機会の視点から、4 章「立地特性から みた地域住民が関わりやすい竹林の条件」および 5 章「地域住民による竹の利用を促す条件」

の結果を踏まえ活用条件を整理した。4 章において導かれた利用対象者の中の地域住民に対 する関わりやすい竹林の関与タイプと、5 章で導かれた地域住民による竹を利用しやすい方 法と竹の利用を促す条件を整理し、表 7̶1 に示した。 

活用母体にかかわらず、低度加工・低度技術といった“専門的な技術を要しない竹材の利 用”が最も「有効な活用方法」である。また、伐り出された竹材の利用であることから、「地 域住民が関わる対象となる竹林の関与タイプ」は直接には対応しない。活用母体別にみると、

小・中学校では竹細工を習うなどの“専門的な技術を要する竹材の利用”が利用しやすい順 位として高く、市民活動団体では“竹林での活動”が利用しやすい順位として高い。小・中 学校の“竹林での活動”に対して「地域住民が関わる対象となる竹林の関与タイプ」は、安 全性の確保等から関わりやすさへの制約が最も小さい竹林である“関与容易 A タイプ”が妥 当と考えられ、技術者や技能者のサポートがあるなど利用状況によっては関わりやすさへの 制約が小さい竹林である“関与容易 B タイプ”も対象となる。市民活動団体の“竹林での活 動”に対して「地域住民が関わる対象となる竹林の関与タイプ」は、 “関与容易 A タイプ”

“関与容易 B タイプ”が考えられ、技術者や技能者のサポートがあるなど利用状況によって は関わりやすさへの制約がややある竹林の“関与可能 A タイプ”も対象となる。「竹の利用を 促す条件」は、いずれの方法に対しても挙げられた時間の不足、技術者の不足、道具の不足、

継続することが困難という共通する利用時の課題に対応した“活動しやすい環境作り”であ る。 

   

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7̶2  地域住民による竹の利用機会としての活用パターンの設定 

本節では、大分県における地域住民による竹の利用機会としての「活用パターン」を検討 するため、7̶1 で整理した活用条件を基に 6 章の結果を踏まえ類型化し、表 7̶2 に示した。

また、「地域特性」ごとに“都市化傾向”と“過疎化傾向”の地域とに分けて図化し、図 7̶1 に示した。 

「地域特性」が“都市化傾向”にある地域では、「活用母体」を“小・中学校”とした場合、

“竹材の利用”が有効な「活用方法」であり、「共同活動」の組み合わせも含め 2 つの「活用 パターン」①と②が設定できた。“市民活動団体”を「活用母体」とした場合は、“竹材の利 用”と“竹林での活動”が有効な「活用方法」として考えられる。さらに、“小・中学校”と の「共同活動」の組み合わせを含め 4 つの「活用パターン」③~⑥が設定できた。“都市化傾 向”にある地域では、①~⑥の計 6 つの「活用パターン」が設定できた。 

「地域特性」が“過疎化傾向”にある地域では、「活用母体」を“小・中学校”とした場合、

“竹材の利用”が有効な「活用方法」であり、“市民活動団体”との組み合わせだけでなく“都 市化傾向地域の小・中学校”との「共同活動」も考えられることから 3 つの「活用パターン」

⑦~⑨が設定できた。「活用母体」を“市民活動団体”とした場合は、“竹材の利用”だけで なく“竹林での活動”も有効な「活用方法」として考えられる。さらに、“過疎化傾向地域の 小・中学校”と“都市化傾向地域の小・中学校”との「共同活動」の組み合わせを含め 6 つ の「活用パターン」⑩~⑮が設定できた。“過疎化傾向”にある地域では、⑦~⑮の計 9 つの

「活用パターン」が設定できた。 

以上から、「地域特性」や「活用母体」に応じて地域住民による竹の利用に期待する成果を 反映させることで、地域住民による竹の利用機会としての「活用パターン」が“都市化傾向”

にある地域の 6 パターン、“過疎化傾向”にある地域の 9 パターン、計 15 パターンが設定で きた。 

設定された「活用パターン」①~⑮の「地域住民が関わる対象となる竹林の関与タイプ」

についてみると、“竹林での活動”では、地域住民の利用を前提としていることから関わりや すさへの制約が小さい“関与容易 A タイプ”“関与容易 B タイプ”か、関わりやすさへの制約 がややある“簡易可能 A タイプ”の竹林が対象となる。“市民活動団体”が“小・中学校”と の「共同活動」で“竹林での活動”を行う場合には、関わりやすさへの制約が小さい“関与 容易 A タイプ”“関与容易 B タイプ”の竹林が対象となる。ただし、継続した取り組みにより 技術や技能が活用母体に蓄積されれば、地域住民の関われる竹林の関与タイプが増えていく

(4)

ことも予想される。“竹林での活動”に該当する「活用対象となる竹林の管理目的」は、“景 観保全林”を主体に“林産物生産林”も含まれる。“竹材の利用”の場合には、“竹林での活 動”時に伐竹された竹材を使うことと、竹材供給者が伐竹・整竹した竹材を使うことが考え られるが、いずれの竹材の入手方法であっても竹林が活用されることとなる。この場合「活 用対象となる竹林の管理目的」は、“景観保全林”“林産物生産林”だけでなく“環境林”も 対象となる。 

 

表 7̶1  地域住民による竹の活用条件 

 

表 7̶2  地域住民による竹の活用パターン 

 

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      図 7-1  地域住民による竹の利用機会としての活用パターン 

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7̶3  竹林を取り巻く地域景観の保全に資する地域住民による竹の利用可能性 

本論では、地域住民による竹の利用機会を増やす可能性を検討し、以下の諸点を明らかに した。 

3 章では、大分県における竹林を取り巻く状況の把握を通じて、地域資源である竹林およ び竹に対し、産業資源としての利用だけでは生活環境を維持し竹林を取り巻く地域景観を保 全する上で十分ではなく、今後は地域住民を含めた利用者を広く求め、人々と竹林との新た な関わりを支援するまたは創る必要があることを示した。 

4 章では、大分県における竹林の立地状況の把握を通じて、「竹林で活動しやすい傾斜度」

「接近しやすい建物・集落から竹林までの距離」「作業しやすい道路から竹林までの距離」を 関わりやすさの難易度条件として竹林の関与タイプを類型し、立地特性からみた地域住民が 関わりやすい竹林の条件を明らかにした。地域住民が関わりやすい竹林は、竹林の立地特性 による関わりやすさへの制約が小さい“関与容易 A タイプ” “関与容易 B タイプ”、関わり やすさへの制約がややある“関与可能 A タイプ”であることを示した。 

5 章では、大分県における地域住民による竹に関するこれまでの利用事例の把握を通じて、

地域住民による竹の利用を促す条件を明らかにした。地域住民による最も「利用しやすい方 法」は、低度加工・低度技術といった“専門的な技術を要しない竹材の利用”であることを 示した。さらに、小・中学生を対象とした取り組みでは、“専門的な技術を要する竹材の利用”

も「利用しやすい方法」であり、市民活動団体を母体とした取り組みでは、“竹林での活動”

も十分に「利用しやすい方法」であることを示した。また、竹を「利用しやすい方法」に共 通して挙げられた「利用時の課題」に対応した活動しやすい環境作りを行っていくことで、

地域住民による竹の利用機会が増える可能性を示した。 

6 章では、地域住民による竹の利用に期待される成果と地域特性および活用母体との関係 を明らかにした。地域住民による竹の利用に期待される成果の地域特性と活用母体別にみら れる特徴から、地域住民による竹の利用機会を増やすために有効な取り組み方として、2 つ の方法を示した。1 つは、竹の利用に期待される成果の地域特性による違いに着目し、過疎 化傾向にある地域の取り組みに、都市化傾向にある地域の人々が参加し竹を利用する機会を 持つ方法である。1 つは、竹の利用に期待される成果の活用母体による違いに着目し、小・

中学校を核とした場において、地域を超えた市民活動団体によるサポートにより竹を利用す る機会を持つ方法である。 

本章では、4 章・5 章および 6 章の結果を踏まえて、地域住民による竹の利用機会としての

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「活用パターン」を“都市化傾向の地域”で 6 パターン、“過疎化傾向の地域”で 9 パターン、

計 15 パターン設定した。地域住民が竹林を直接利用する場合には、関わりやすさへの制約が 少ない立地特性の竹林が前提となり、“景観保全林”を主体に“林産物生産林”も対象となる ことを示した。さらに、地域住民が竹林から伐り出された竹材を利用する場合には、“景観保 全林”および“林産物生産林”からだけでなく“環境林”から伐り出された竹材も対象とな るため、全ての竹林が間接的に関わりの対象となることを示した。 

このような「活用パターン」の設定により、次の点で竹の利用可能性を示すことができた。 

・地域特性に応じた“景観保全林”としての管理に適用することが可能であること 

・竹の「利用時の課題」に対応した活動しやすい環境作りを行っていくことで、地域住民の 利用機会を計画的に増やせること 

・竹林での活動だけでなく、竹材の利用を促進させることも、“景観保全林”に留まらず“林 産物生産林”“環境林”といった竹林の管理のあり方に寄与できること 

これまで明らかにしてきた以上の結果を踏まえ、大分県における地域住民を含む人と竹林 との新たな関わりを図化し、図 7̶2 に示した。大分県における竹林を取り巻く人の関わりは、

日用的な自家利用といった簡潔な関係に留まらず、多くの竹産業従事者が連関し合って成立 していた。しかし、国産竹の需要低下などからその関係が崩れてきており、竹林の放置化が 進行している。結果的に、「人と竹林との関わりの様」である竹林を取り巻く地域景観の変容 として顕在化してきている。そして、隣接地への侵入被害も含め生活環境が保持していた有 益な機能が喪失する傾向にあり、人の手による管理を前提とした竹林を取り巻く地域景観の 計画的な保全が求められている。図 7̶2 に示したように、これまでの竹林を取り巻く人の関 わりに地域住民による新たな関わり方が求められる。さらに、本論で導かれた地域住民によ る竹の利用機会を増やす可能性が、竹林を取り巻く地域景観にどのように反映されるか図化 し、図 7̶3 に示した。地域住民を含む人と地域資源である竹林との新たな関わり方として、

地域住民が直接関わる対象となる竹林である“景観保全林”だけでなく、“林産物生産林”お よび“環境林”も間接的に関わる対象であり、竹を扱う技術者・技能者を初めとした竹産業 従事者の関わりとも結びついていく可能性が想定される。 

本研究で導かれた竹の「活用パターン」は、“景観保全林”として管理される竹林と地域住 民との新たな関わり方として竹の利用機会を増やす可能性を示すものであり、「竹林を取り巻 く地域景観」の計画的な保全に寄与するための 1 つの方法を提供することにつながると考え る。 

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図 7-2  竹林を取り巻く人々の新たな関わり   

 

  図 7-3  竹林を取り巻く地域景観の保全に寄与する人々と竹林との新たな関わり 

 

参照

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