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早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター 科学技術とアントレプレナーシップ研究部会
2020
年9
月17
日企業研究者はスペシャリストをめざすべきか?
~ 企業における研究者の外生的な研究テーマ変更が発明の質に与える影響 ~
徳橋和将 ( 早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター ) 吉岡 ( 小林 ) 徹 ( 一橋大学大学院経営管理研究科 )
牧兼充 ( 早稲田大学ビジネススクール )
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター 科学技術とアントレプレナーシップ研究部会
ワーキングペーパーシリーズ
No. 007
Working Paper
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企業研究者はスペシャリストをめざすべきか?
~企業における研究者の外生的な研究テーマ変更が発明の質に与える影響~
徳橋和将 (早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター ) 吉岡 (小林) 徹 (一橋大学大学院経営管理研究科)
牧兼充 (早稲田大学ビジネススクール)
要旨
研 究者は イノベ ーショ ンの源 泉であ る。 したが って、 研究者 のモチ ベーシ ョンの 維持が 企業 にとっ て は重 要である。しか し、企業では 当然ながら 事業方 針の変更に よる外生的な 研 究テーマ 変更が発 生する。
一 方で、 個人内 の多様 性がイ ノベー ション の創 生に効 果が あ るとい われる が、特 定の分 野に 従事し た専 門 家の方 が良い のか、 または 複数の 分野に 従事 して多 様性を 高めた 方が良 い成果 を挙げ るの か、議 論が 分か れている。
以 上の問 題意識 を踏ま え、本 研究 で は上 記議論 を企業 研究者 に当て はめて 、研究 者個人 の研 究開発 経 験 の分野 の多様 性とそ のパフ ォーマ ンスの 関係 を 示す ことを 目的と する 。 目的の 達成に 向け て、本 研究 では 一般財団法 人知的財産研 究教育財団 知的財産 研究所によ る「IIPパ テント データベー ス」を主 に活用 し、 国内業界規 模の大きい電 機業界を対 象にして 不均衡パネ ルデータ (電機企 業 8 社グ ループ 、発明者
最 大52700人 、2000年から2011年の データセット) を構 築した 。研究開発 経験の分野 の多様性は 、出願
特 許の技 術分類 をもと に抽出 した。 そして 、負 の二項 分布お よびロ ジステ ィック 回帰 の 固定 効果モ デル に よ る 重回 帰 分析 を 行い 、 主に 筆 頭発 明 者の発 明 分 野の 多 様性 と 審査 官 引用 数 (被 引 用数) の 関 係 を分 析 した。 多様性 の指標 には、 筆頭発 明者が 経験 した発 明の技 術分野 数と各 技術分 野での 特許 出願数 を基 に算 出したシン プソン多様度 指数を活用 した 。
結 果とし て、筆 頭発明 者の個 人内の 研究 開発経 験の分 野の多 様性の 高さが 、被引 用数に 線形 の正の 影 響 を与え ている ことが 分かっ た。ま た、個 人内 の研究 開発経 験の分 野の多 様性が 高い場 合に は、被 引用 数が 上位 5パーセン タイルに入 るような優 れた発 明の創生に 貢献すること も分かった 。一方で 、 チーム メ ンバー である 共同発 明者に ついて は、そ の経 験 した 分野の 多様性 が一定 の値を 超える と正 の効果 が減 少す る逆U字の事象と なっており 、先行研究と整 合する結果 を得た。ま た、個人内 の多様性が 高い場合 に、被引用無し の発明の創 生の削減/増加に影響す るという仮 説も分析した が、特に 有意差は確 認されな か った。 さらに 、本研 究では 外的妥 当性の 検証 のため に自動 車業界 と 電機 業界の 業界比 較を 実施し 、自 動 車業界 におい ても発 明者の 個人内 多様性 の効 果が一 部示さ れた。 また、 個人内 多様性 の効 果は 自 動車 業界 よりも電機 業界の方が高 くなる可能 性が示さ れた。
以 上より 、外生 的な研 究テー マ変更 を伴 う 企業 研究者 におい ても 、 個人内 多様性 はイノ ベー ション に 重 要な要 素であ り、一 つの研 究分野 に従事 する よりも 複数の 研究分 野に従 事した 方が パ フォ ーマン スが 向 上する 可能性 が示さ れた 。 本研究 結果は 企業 研究者 のマ ネ ジメン トや研 究キャ リア選 択に 示唆を 与え るも のである。
キー ワード: 研究者 、発明、特 許、多様性 、 ダイバ ーシティー
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<目次>
1.はじめに ... 4
2.研究の目的 ... 6
2.1.
イノベーション理論の基礎... 6
2.2.
問題意識と研究の目的... 6
3.
先行研究と研究仮説... 7
3.1.
先行研究 ... 73.2. 本研究の仮説と因果モデル ... 7
4.分析方法 ... 9
4.1.
研究の方針と設計... 9
4.2.
データセットの元データ... 11
4.3.
パネルデータと変数... 13
5.分析結果 ... 18
5.1.
記述統計 ... 185.2.
回帰分析の結果... 21
5.3.
考察と仮説検証結果... 24
6.堅牢性の検証:シンプソン多様度指数 0 を除いた分析 ... 26
6.1.
記述統計 ... 266.2.
回帰分析の結果... 29
6.3.
考察と仮説検証結果... 34
7.外的妥当性の検証:自動車企業を含めた分析 ... 35
7.1.
因果モデルと記述統計... 35
7.2.
回帰分析の結果... 40
7.3.
考察と仮説検証結果... 40
8.結論 ... 43
8.1.
研究のまとめ... 43
8.2.
構成概念の妥当性... 44
8.3.
内的妥当性... 458.4.
外的妥当性... 458.5.
実務への示唆 ... 45謝辞 ... 47
参考文献 ... 48
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1.はじめに
研究者はイノベーションの源泉である。したがって、研究者のモチベーションの維持が 企業にとっては重要である。しかし、企業では当然ながら事業方針の変更による外生的な 研究テーマ変更が発生する。
一方で、個人内の多様性がイノベーションの創生に効果があるといわれるが、特定の分 野に従事した専門家の方が良いのか、または複数の分野に従事して多様性を高めた方が良 い成果を挙げるのか、議論が分かれている。
以上の問題意識を踏まえ、本研究では上記議論を企業研究者に当てはめて、研究者 個人 の研究開発経験の分野の多様性とそのパフォーマンスの関係を示すことを目的とする。目 的の達成に向けて、本研究では「IIP パテントデータベース」(一般財団法人知的財産研究 教育財団 知的財産研究所, 2017)を主に活用し、国内業界規模の大きい電機業界を対象に して不均衡パネルデータ (電機企業 8 社、発明者最大 52700 人、2000 年から 2011 年のデ ー タ セ ッ ト ) を 構 築 し た 。 ま た 、 研 究 開 発 経 験 の 分 野 は 国 際 特 許 分 類 (International Patent Classification : IPC)1を元にした IPC and Technology Concordance Table 2を活 用し、35 種の技術分類に分けた (またはより上位の 5 種の技術分類)。多様性の指標には、
筆頭発明者が経験した発明の技術分野数と各技術分野での特許出願数を基に算出したシン プソン多様度指数を活用した。そして、このデータセットを活用して、負の二項分布およ びロジスティック回帰の固定効果モデルによる重回帰分析を行い 、主に筆頭発明者の発明 分野の多様性と審査官引用数 (被引用数) の関係を分析した。この被引用数は発明の拒絶 理由として過去のある発明を引用した回数である。被引用数の多さは発明の価値の大きさ を示すと解釈でき、実際に後発の発明と類似性があることを意味している。
分析の結果として、筆頭発明者の個人内の研究開発経験の分野の多様性の高さが、被引 用数に線形の正の影響を与えていることが分かった。また、個人内の研究開発経験の分野 の多様性が高い場合には、被引用数が上位 5 パーセンタイルに入るような優れた発明の創 生に貢献することも分かった。一方で、チームメンバである共同発明者については、その 経験した分野の多様性が一定の値を超えると正の効果が減少する逆 U 字の事象となってお り、先行研究と整合する結果を得た 。上記、個人とチームでの多様性の影響の違いは、個 人内の方が多様な知識の結合が結実しやすく、一方でチームメンバ全体での多様性が高い 場合にはメンバー間の対話コストの増加などで知識の結合の限界が早いとも解釈できる。
その他の分析の結果として、個人内の多様性が高い場合に被引用の無い発明の創生の削 減への影響を分析したが、特に有意差は確認されなかった。一方で、チームメンバである 共同発明者の多様性はある点を超えたところで効果が逆になる逆 U 字で有意差が確認され た。これはチームでの多様性は大きく高めるか、またはむしろ全く高めない方が被引用の 無い発明の創生の削減に寄与するといえる 。よって、被引用のない価値の低い発明の低減 には、現状は個人の多様性ではなく、チームとして対応して、様々な視点を取り入れるべ きだと解釈できる。
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World Intellectual Property Organization "International Patent Classification (IPC)", https://www.wipo.int/classifications/ipc/en/ (Last accessed: July 25, 2020).
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World Intellectual Property Organization "IPC and Technology Concordance Table", https://www.wipo.int/meetings/en/doc_details.jsp?doc_id=117672
(Last accessed: July 25, 2020).
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さらに、本研究では外的妥当性の検証のために自動車業界と電機業界の業界比較を実施 し、自動車業界においても発明者の個人内多様性の効果が一部示された。また、個人内多 様性の効果は自動車業界よりも電機業界の方が高くなる可能性が示された。
以上より、外生的な研究テーマ変更を伴う企業研究者においても、個人内 での多様性は イノベーションに重要な要素であり、一つの研究分野に従事するよりも複数の研究分野に 従事した方がパフォーマンスが向上する可能性が示された。本研究結果は企業研究者のマ ネジメントや研究キャリア選択に示唆を与えるものである。
次章からの本論文の構成は次のとおりである。2章では本研究に取り組む問題意識や研 究の目的について述べる。3章では先行研究と本研究の仮説 の整理を行う。4章では研究 方針やデータセットについて述べる。また関連する前提条件などを記載する。5章では分 析結果を示す。6章では5章の結果に対するメカニズムの探索と堅牢性の検証を行う。7 章では、外的妥当性の検証として、自動車企業を含めた分析を行う。 最後に、8章にて本 研究の結論と実務への示唆を述べる。
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2.研究の目的
本章では研究の目的を述べる。まず 2.1 節にて、基礎的なイノベーション理論を整理し、
2.2 節で企業研究者としての問題意識と本研究の目的を述べる。
2.1. イノベーション理論の基礎
イ ノ ベ ー シ ョ ン 理 論 の 基 礎 は Joseph A. Schumpeter が 提 言 し た 新 結 合 (neuer Kombinationen)とされ(Schumpeter, 1926)、既存の知と知の融合から新たな知が生じると 考えられている。そのため、March (1991) や入山 (2015)など様々な経営学者が提言する よ う に 、 知 識 の 幅 を 広 げ る Exploration ( 知 の 探 索 ) と 、 生 じ た 新 た な 知 を 追 求 す る Exploitation ( 知 の 深 化 ) 、 そ し て 知 の 探 索 と 知 の 深 化 を バ ラ ン ス よ く 進 め る Ambidexterity (両利き)が重要といわれる。したがって、イノベーションの創生には、知 の組み合わせを活性化させるための“多様性”が必然的に重要になる。
本研究のテーマでもある個人内の多様性という考え方もイノベーションでは重要とされ る。Bunderson & Sutcliffe (2002)では、職務上の多様性を分類して定めており、個人に ついては Intrapersonal Functional Diversity として、チームにおける個人が狭い職務上 の経験を持つ機能スペシャリストか、または経験が広いジェネラリストなのかに焦点を当 てた。そして、多様性が高いとチームにおける情報共有に有意 差があることを示した。
他にも、Hitt & Tyler (1991)は、幅広い職務経験を持つ経営幹部は戦略的意思決定が優 れるとしている。Cannella, Park & Lee (2008)は、環境の不確実性が増すにつれて、個人 内の職務的な多様性の影響がよりポジティブに強まると示した。
2.2. 問題意識と研究の目的
本節では問題意識について述べる。
研究を推進させるには切磋琢磨するチームの構成も重要だが、最終的にはイノベーショ ンの源泉である研究者個人の能力が優れているほど研究成果を挙げると考えられる。一方 で、企業では当然ながら事業方針の変更による外生的な研究テーマ変更が発生する。それ では、研究者個人はどのような研究キャリアを積めばパフォーマンスを向上できるのだろ うか?科学技術の理解には深い知識が必要条件 と考えられるが、 一方でイノベーションに 関する先行研究に従えば、複数の技術分野を経験し多様性を高める方が良いとされる。 以 下が本研究のリサーチ・クエスチョンである。
RQ:主に一つの技術分野に従事した研究者の方が良い成果を挙げるのか、または研究テー マを変更して複数の技術分野に従事した研究者の方が良い成果を挙げるのか。
以上を踏まえ、本研究では上記リサーチ・クエスチョンの解決に向けて、定量的な分析 アプローチを用いて、外生的な研究テーマ変更が伴う企業研究者の研究開発経験の分野の 多様性とそのパフォーマンスの関係を示すことを目的とする。
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3. 先行研究と研究仮説
本章では、まず 3.1 節にて多様性とイノベーション創生に関する先行研究を整理する。
次に 3.2 節にて、整理した結果および 2.2 節で提示した問題意識を踏まえて、本研究の仮 説を導出する。
3.1. 先行研究
本節では、多様性とイノベーションに関連する文献 Taylor & Greve (2006)、Singh &
Fleming (2010)および吉岡(小林)(2015)を中心に整理する。まず Taylor & Greve (2006) ではコミック業界の分析を行っており、過去に多様なジャンルでの経験を持つほど、パフ ォーマンスの分散が大きく、かつチームよりも個人で多様な経験を持つほど、その分散効 果は大きいと述べている。一方、Singh & Fleming (2010)は特許データの分析を行ってお り、Taylor & Greve (2006)が提示する分散が大きいほど優れた成果と悪い成果の両方の結 果を生じるという考えを取らず別々に分析した結果として、チームの方が(またチームの多 様性が高いほど)、被引用数が無い特許を減少させ、かつ上位 5 パーセンタイルの被引用数 となる優れた発明を生み出すと示した。また、吉岡(小林) (2015)では技術開発とデザイン の協同による効果分析を実施しており、その中の出願特許の分析において、個人およびチ ームともに多様な発明分野での経験は正の影響があるが、多様すぎる経験は負の影響があ り効果が逆 U 字になると示した。Fleming & Sorenson (2001)においても、構成要素間の相 互作用が多いと技術の組み合わせが困難になると述べており、多様性は複雑性とトレード オフになる可能性が述べられている。
上記について個人内多様性に関わる点をまとめると、以下になる。
多様性はパフォーマンスの分散を大きくする。その効果は個人の多様性の方がチー ムの多様性よりも大きい。(Taylor & Greve, 2006)
個人の多様性よりもチームの多様性の方が突出した良い発明を創生し、かつ影響力 が低い発明の創生を減らす。(Singh & Fleming, 2010)
個人およびチームどちらにおいても、発明経験の多様性は発明の品質に逆 U 字の効 果を示す。 (吉岡(小林), 2015)上記先行文献では、個人とチームメンバー間の分析を中心に、多様性の効果が示されて いる。しかしながら、個人内の多様性についても、分散の拡大や正の効果が一部示されて いるが、分析が十分ではない。そのため本研究では 、個人内の研究開発経験の分野の多様 性に深く焦点を当て、上記研究も踏まえて詳細設計を行う。そして、本研究の目的の達成 に向けて次節で提示する仮説の検証を進める。研究の設計については4章で述べる。
3.2. 本研究の仮説と因果モデル
2 章で述べた問題意識及び前節で述べた先行研究を踏まえ、以下に本研究の仮説を示す。
仮説1. 個人内の研究開発経験の分野の多様性が高いと、発明の質が向上する。
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仮説2. 個人内の研究開発経験の分野の多様性が高いと、影響力が強い発明の創生を増や す。
仮説3. 個人内の研究開発経験の分野の多様性が高いと、影響力が低い発明の創生を減ら す。
また、図 1 に仮説を基に設計した因果モデルを示す。本研究では筆頭発明者を発明の主 な貢献者として検討を進める。
仮説 1 については、様々な分野の研究開発に従事してきた経験が発明に与える影響につ いて分析する。少数の技術分野に注力して研究に従事した方が良いのか、様々な分野にチ ャレンジした方が被引用数の多い優れた発明を創生するのかを検討する。仮説 2 および仮 説 3 は仮説 1 に内包される仮説であり、Singh & Fleming (2010)にて分析されたチームの 多様性の効果を踏まえて設定した仮説である。チームから個人内に置き換えて、多様性の 高さが被引用数上位 5 パーセンタイルに含まれる発明の創生に貢献するのか、また引用が ない発明の削減に貢献するのかを分析する。
(出所)筆者作成
図 1 本研究の因果モデル
本研究では図 1 の因果モデルの検証に向けて、特許データを活用した不均衡パネルデー タを構築し、固定効果モデルを用いた重回帰分析を行う 。具体的には、仮説 1 の検証には 負の二項分布モデルを適用し、仮説 2 および仮説 3 の検証にはロジスティック回帰モデル を適用する。その際に、主な被説明変数には出願特許の被引用数、主な説明変数には出願 特許の多様性の指標を活用する。また国内 大手電機メーカーの発明者を分析対象とする。
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4.分析方法
本章では分析方法について述べる。まず 4.1 節では仮説を検証するための研究の方針に ついて述べる。特に研究者個人内の分析のために重要となる、特許データおよび多様性指 標の考え方や方針について詳細を説明する。 次に、4.2 節ではデータセットを構築する際 に活用した 4 つの元データについて説明する。最後に 4.3 節ではデータセットの概要や重 回帰分析を実施するための各変数について説明する。
4.1. 研究の方針と設計
本節では特許データ活用の方針、多様性の指標、評価対象企業を説明する。特に、研究 者個人内の分析を深めることを目的とした先行研究からの追加変更点である、筆頭発明者 の貢献度および多様性の指標について説明する。
4.1.1. 特許データ活用の方針
(1)業績指標としての特許データの妥当性
研究者の代表的業績としては論文と特許が存 在し、これらは公開データとして情報が蓄 積されている。また、当然ながら企業の研究者の場合は事業貢献が必要とされるため、論 文執筆よりも特許出願に強いインセンティブが働く 。したがって企業研究者の分析におい て、論文と特許分析のどちらかを選択する場合は、 研究者の活動を追跡しやすい特許の方 が望ましい。しかしながら、すべての研究活動の成果が特許に反映されるわけではな く、
事業の戦略上の理由から出願を控えるケースや、事業保護を目的とする特許のために事業 貢献度に比べて後述する被引用数が少ないケースも考えられる。また、技術分野により出 願傾向に違いがある。しかし、限界はあるものの、第三者である審査官の評価を含めた統 一された審査プロセスのもと大量の公開データが活用可能であるなど、特許データは評価 指標としての妥当性は高い。実際に、先行研究(吉岡(小林), 2015)においても特許データ が活用され、そして特許出願された発明に対する審査官引用数(被引用数)を評価指標と している。出願された発明の審査において、その発明の 拒絶理由として審査官に被引用さ れる発明は、実際に後発の発明と類似性があることを意味し、他社の事業機会を低減させ、
自社事業の保護に貢献していると考えられる。またその被引用数の多さは発明の価値の大 きさを示すと解釈できる。以上より本研究においても特許データおよび評価指標に被引用 数を活用する。
(2)筆頭発明者の出願特許における貢献度について
本研究では、論文などの第一著者と同じように、発明の 主な貢献者を出願特許の筆頭発 明者と考える。発明者の記載順序が明確に発明の貢献度を示しているわけではない が、当 然ながら、名前の記載順序が早い方が発明者のプレゼンスは高い。また、企業文化にもよ ると考えられるが、代表的な発明者は発明検討、執筆、特許事務所との議論など多くの業 務を担うことが想定される。以上を踏まえると代表 的な発明者は筆頭発明者として記載さ れる可能性が高くなる。したがって、本研究では発明の主な貢献者を筆頭発明者と し、筆 頭発明者以外の発明者を共同発明者として検討を進める。共同発明者については、多様性
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の変数などを制御変数として分析に加えることで、その影響を考慮する。
4.1.2. 多様性の指標
(1)特許分類について
本研究では、出願特許の技術分類を多様性の指標とし、発明者の研究開発経験を測定す る。例えば、発明者が過去数年の間にある分野に特許出願していた場合は、その期間、対 象の研究分野の活動に従事してきたと解釈する。したがって 、本研究では出願特許の適切 な分類が重要となる。
出願特許には国際特許分類 (International Patent Classification : IPC)と呼ばれる 分類コードが付与される。技術が複数にまたがる場合は複数の IPC が付与されるが、代表 的な IPC が筆頭として記載される。IPC コードは最上位の A~H の 8 つのセクションから、
クラス、サブクラス、メイングループ、サブグループと 階層的に細かく分類される仕組み である。Singh & Fleming (2010)、吉岡(小林) (2015)においても IPC を多様性の指標に用 い、多様性とパフォーマンスの関係が示されて おり、IPC は多様性の指標として有効であ る。しかしながら、IPC は分類が細かすぎる傾向にあり、2017 年時点で全体では 7 万種類 以上、サブクラスレベルで 639 種類、クラスレベルでも 130 種類となっている3。分類が詳 細であるため、同じ研究分野における技術適用先の違いだけの場合などを含むと考えられ る。また、IPC は異なるセクションの IPC コードであっても、類似した技術であるケース も存在している。
以上を踏まえて、実際に異なる研究分野を経験していたかをより厳密に計測するために、
本研究では同 WIPO が提供する Technology Concordance Table を活用する。詳細は次節で 後述するが、本テーブルは Sector と呼ばれる 5 種の上位の技術分野と Field と呼ばれる 35 種の技術分野が定義され、IPC コードとの対応付けがされている。
(2)シンプソン多様度指数について
発明者の多様度を正確に計測するには、経験した技術分野の数だけではなく、各分野へ の深化度 (特許出願数)も加味して検討することが望ましい。したがって、本研究では各筆 頭発明者の経験分野数と各分野での 特許出願数をもとにシンプソン多様度指数 (Simpson, 1949)を算出する。本論文でのシンプソン多様度指数は以下の式(1)より算出され、0 から 1 までの値をとる形とした。例えば、経験した技術分野が一つのみの場合は 0 となる。また経 験分野が 2 分野でそれぞれ 9 件と 1 件の計 10 件の特許出願数であった場合には 0.18、2 分 野でそれぞれ同数の出願数の場合は 0.5 となる。これらを踏まえ、本研究ではシンプソン多 様度指数 0.25 未満の場合には主に一つの分野に従事する深化型の発明者とし、0.25 以上の 場合には二つ以上の分野を研究してきた多様型の発明者とする。
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World Intellectual Property Organization "International Patent Classification (IPC) - IT support area - Edition 20170101 – Statistics",
https://www.wipo.int/classifications/ipc/en/ITsupport/Version20170101/transformation
s/stats.html (Last accessed: July 25, 2020).
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式(1) S: 経験した分野の数
ni: 分野 i での特許出願数 N: 総特許出願数
4.1.3.
評価対象主に国内大手の電機メーカーを対象とする。具体的には、株式会社東芝、株式会社日立 製作所、三菱電機株式会社、富士通株式会社、日本電気株式会社、ソニー株式会社、パナ ソニック株式会社、シャープ株式会社の各企業グループを対象とする。大手電機メーカー を選択した理由は以下である。
業界の違いによる分析への影響が考えられる ため、業界を固定。
日本を代表する産業であり、多くの企業研究者を抱えている。
各電機メーカーは、複数事業を抱えているため、研究者は多様な研究開発に携わる機 会を持つ。4.2. データセットの元データ
本節では、データセットの構築に向けて活用したデータベースやテーブルの概要につい て説明する。本研究では、これらを活用して独自のデータセットを構築する。
4.2.1. IIP パテントデータベース
主となる発明データは「IIP パテントデータベース 2017 年度版」(一般財団法人知的財 産研究教育財団 知的財産研究所, 2017)を活用した。IIP パテントデータベースは一般財 団法人知的財産研究教育財団 知的財産研究所にて開発されている。「 IIP パテントデータ ベース 2017 年度版」には 1964 年以降の出願番号を持つ発明が含まれ、出願テーブル、出 願人テーブル、発明者テーブル、権利者テーブル、引用テーブルで構成される(表 1)。
表 1 IIP パテントデータベース 2017 年度版 概要
テーブル名 レコード数 出願テーブル 13,606,306 出願人テーブル 14,676,561 発明者テーブル 27,795,642 権利者テーブル 5,575,260引用テーブル 23,377,968
(出所)
IIP
パテントデータベースマニュアル(
筆者により一部改変)
12 4.2.2. 発明者の名寄せデータ
発明者の名寄せデータには、独立行政法人経済産業研究所の「特許データと意匠データ のリンケージ:創作者レベルで見る企業における工業デザイン活動に関する分析」( Ikeuchi, 2019)において作成されたデータを活用した。本データは、 個人名が名寄せされており、
IIP パテントデータベース 2017 年版に基づいて、発明者固有 id と出願番号を結び付けら れている。また発明者の出願番号における記載順序も 含まれている。
4.2.3. NISTEP 企業名辞書
文部科学省 科学技術・学術政策研究所(NISTEP: National Institute of Science and Technology Policy)が提供する「NISTEP 企業名辞書」は、国内営利企業に関する規模、業 種 など多 岐に渡 る企業情 報を含 むデータ ベース であ る 。本研究 では NISTEP 企 業名辞 書 Ver.2019_1 (文部科学省 科学技術・学術政策研究所, 2019)を活用した。例外はあるが、NISTEP 企業名辞書の掲載企業は、以下5つの条件の内、少なくとも 1 つを含む企業が掲載されて いる。
特許出願数累積 100 件以上
株式上場企業
特許出願数の伸び率大
NISTEP 大学・公的機関名辞書掲載企業
意匠・商標登録数累積 100 件以上また、NISTEP 企業名辞書には親会社名の記載項目があり、グループ企業の抽出が容易と いう利点がある。そのため、本研究では、分析対象とする企業グループの抽出を目的とし て本辞書を活用した。
4.2.4. “IPC and Technology Concordance Table”
WIPO は特許分類である IPC コードを技術分類に変換する対応表“IPC and Technology Concordance Table”を提供している。表 2 に概要を示す。本表では 35 種の Field と呼ば れる技術分野、および 5 種の Sector と呼ばれる上位の技術分野を定義している。前節でも 説明したように、IPC は分類が詳細すぎる。そのため、本研究では 2019 年 7 月最終更新の IPC and Technology Concordance Table (World Intellectual Property Organization, 2019)を活用して、IPC コードからこの技術分類に変換した。注意点として、IPC コード F21 クラス (照明)以下の一部のサブクラスコードに対する技術分野が割り振られていなかっ たため (現在の IPC にも記載されていない)、本研究では他の F21 クラスと同じ技術分野 (Field レベルで“ Electrical machinery, apparatus, energy”, Sector レベルで
“Electrical engineering”)に割り当てて対応する。
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表 2 技術分類表
Sector Field
Electrical engineering
1. Electrical machinery, apparatus, energy 2. Audio-visual technology
3. Telecommunications 4. Digital communication
5. Basic communication processes 6. Computer technology
7. IT methods for management 8. Semiconductors
Instruments
9. Optics 10. Measurement
11. Analysis of biological materials 12. Control
13. Medical technology
Chemistry
14. Organic fine chemistry 15. Biotechnology
16. Pharmaceuticals
17. Macromolecular chemistry, polymers 18. Food chemistry
19. Basic materials chemistry 20. Materials, metallurgy 21. Surface technology, coating
22. Micro-structural and nano-technology 23. Chemical engineering
24. Environmental technology
Mechanical engineering
25. Handling 26. Machine tools
27. Engines, pumps, turbines 28. Textile and paper machines 29. Other special machines
30. Thermal processes and apparatus 31. Mechanical elements
32. Transport Other fields
33. Furniture, games 34. Other consumer goods 35. Civil engineering
(Source: WIPO IPC-Technology Concordance Table)
4.3. パネルデータと変数
本節では、4.1 節の方針に基づき 4.2 節で紹介した各種元データを用いて構築した不均衡 パネルデータおよび各変数について述べる。
4.3.1. パネルデータの概要
本研究では、4.2 節で紹介した IIP パテントデータベース、発明者の名寄せデータ、NISTEP 企業名辞書および IPC and Technology Concordance Table を活用して対象企業グループ における筆頭発明者を分析単位とした 12 年間の不均衡パネルデータを構築した。入社や退 職など様々な状況が想定されるため 12 年間同じ企業に所属するとは限らず、かつ毎年特許 出願するとは限らないために不均衡となる。以下に概要を示す。
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主に「IIP パテントデータベース 2017 年度版」を基に 1990 年~2016 年までのデータを活 用
分析期間:2000 年~2011 年の 12 年間の不均衡のパネルデータ
被引用数の評価期間:出願年を 0 年目として 5 年目の年まで
当該出願特許の筆頭発明者および共同発明者の発明経験の計測期間:出願年の前年まで の 10 年間(各被引用数は過去の出願特許の出願年を 0 年目として 5 年目の年まで)2011 年までを分析対象とした理由は、出願後の評価期間(被引用される期間)を設けるた めである。また、評価期間は出願年を 0 年目として 5 年目の年までとした。例えば 2005 年 の出願特許の評価期間は 2010 年終わりまでとなる。5 年という期間は発明の価値は 5 年で 衰退するとした先行研究 (吉岡(小林), 2015)に従った。
発明経験は当該出願特許の発明者(筆頭および共同ともに)が過去に筆頭発明者として出 願した発明を計測対象とした。これは対象期間においてその研究分野に主として従事してい たと推測されるためである。
次に、対象企業一覧を表 3 に示す。本研究では、NISTEP 企業名辞書(文部科学省 科学技術・
学術政策研究所, 2019)の登録企業の中で親会社と子会社が紐づけられている企業、かつ各企業グ ループで従業員数 5000 名以上のある程度規模の大きいグループ企業までを対象とした。各企業グ ループで対象企業数にばらつきがあるが、グループ会社単位、または親会社に集約して特許出願す るなどの各企業の方針が表れているものと推測する。
また本研究では、出現年が 1 年間のみの発明者は分析対象外としてパネルデータから取り除いて 分析を行う。これは一度しか現れない発明者は、本研究の対象である研究者ではない可能性も高く、
かつ 1 年間のみでは時系列のパネルデータにならないためである。
15
表 3 分析対象企業
主な事業 企業グループ 企業名 総合電機
BtoB 向け 電機企業
東芝 株式会社東芝 日立 株式会社日立製作所
日立アプライアンス株式会社
日立オートモティブシステムズ株式会社 日立金属株式会社
株式会社日立システムズ 株式会社日立ソリューションズ 株式会社日立ビルシステム 三菱電機 三菱電機株式会社
三菱電機ビルテクノサービス株式会社 BtoB 向け
電機企業
日本電気 日本電気株式会社
NECフィールディング株式会社 NECプラットフォームズ株式会社 富士通 富士通株式会社
株式会社富士通エフサス BtoC 向け
電機企業
シャープ シャープ株式会社 ソニー ソニー株式会社
ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社 パナソニック パナソニック株式会社
(松下電器産業株式会社) MT映像ディスプレイ株式会社 三洋電機株式会社
パナソニックシステムソリューションズジャパン株式会社 パナソニックシステムネットワークス株式会社
(出所)NISTEP 企業名辞書をもとに筆者作成
16 4.3.2. 被説明変数
本項では分析で用いる被説明変数について説明する。すべて被引用数に関連する変数であ る。
被引用数 (num_cites
)筆頭発明者の出願特許 1 件/年あたりの被引用数を示す。当該筆頭発明者の 出願特許が複数ある場合はその平均値とする。
被引用数上位 5 パーセンタイルダミー (dummy_cites_p95
)各年の筆頭発明者の出願特許の被引用数が上位 5 パーセンタイルに含まれ る場合に 1 となるダミー変数である。当該筆頭発明者の出願特許が複数あ る場合は一つでも該当する場合は 1 とする。
被引用数ゼロダミー (dummy_cites_0
)各年の筆頭発明者の出願特許の被引用数がゼロの場合に 1 となるダミー変 数である。当該筆頭発明者の出願特許が複数ある場合は一つでも該当する 場合は 1 とする。
4.3.3. 説明変数
本項では分析で用いる説明変数について説明する。すべて筆頭発明者の経験の多様度を表 す変数である。
筆頭発明者のシンプソン多様度指数 (SDI_field / SDI_sector
)筆頭発明者の多様度を示す変数の一つ。筆頭発明者の過去の発明経験分野 数と出願数から算出したシンプソン多様度指数である。Field および Sector レベルの二つの値を算出した。
筆頭発明者のシンプソン多様度指数のダミー変数1 (dummy_SDI_field > 0 / dummy_SDI_sector > 0
)筆頭発明者の多様度を示す変数の一つ。シンプソン多様度指数が 0 以外で 1 となるダミー変数である。少なくとも 2 つの分野で特許出願の経験があ ることを示す。Field および Sector レベルの二つの値を算出した。
筆頭発明者のシンプソン多様度指数のダミー変数2 (dummy_SDI_field ≧ 0.25 / dummy_SDI_sector ≧ 0.25
)筆頭発明者の多様度を示す変数の一つ。筆頭発明者のシンプソン多様度指 数 0.25 以上で 1 となるダミー変数である。0 の場合は 1 の場合と比較して 少数の研究分野に従事する深化タイプの発明者となる。Field および Sector レベルの二つの値を算出した。
17 4.3.4. 制御変数
本項では分析で用いる制御変数について説明する。吉岡(小林)(2015)を参考にして、被説 明変数に対して有意に働くと考えられる変数を記載する。また各年において、当該筆頭発明 者の出願特許が複数ある場合は、その平均値を各変数に設定した。
共同発明者全員のシンプソン多様度指数 (SDI_field_co_inv / SDI_sector_co_inv
) 共同発明者の多様度を示す変数。当該出願特許の全共同発明者の過去の発明経験分野数と出願数から算出したシンプソン多様度指数である。Field および Sector レベルの二つの値を算出した。
筆頭発明者の各技術分野への平均出願数 (depth_field / depth_sector
)筆頭発明者の過去の総出願数を経験した分野数で割った値。経験の深さを 示す変数。
共同発明者全員の各技術分野への平均出願数 (depth_field_co_inv / depth_sector_co_inv
)当該出願特許の全共同発明者の過去の総出願数を経験した分野数で割った 値。経験の深さを示す変数。
筆頭発明者の過去の出願特許1件あたりの被引用数 (num_cites_past
)筆頭発明者の過去の出願特許の総被引用数を総出願数で割った値。
共同発明者全員の過去の出願特許1件あたりの被引用数 (num_cites_past_co_inv
) 当該出願特許の全共同発明者の過去の出願特許の総被引用数を総出願数で割った値。
筆頭発明者の発明経験年数 (invent_age
)筆頭発明者の最初の発明の出願年と考えられる年から当該出願特許の出願 年までを発明経験年数とした。(具体的には発明者の名寄せデータ(Ikeuchi, 2019)の発明者固有 ID の上位四桁を初出願年とした。なお、初出願年が筆 頭発明者でない場合も含まれる。)。
企業ダミー各企業のダミー変数。
業界ダミー電機や自動車など業界分類ごとのダミー変数(第7章で活用)。
技術分野ダミー技術分野ごとのダミー変数。Sector レベルで 5 つの技術分野で設定。
年ダミー年ごとのダミー変数を各年で設定。
18
5.分析結果
本章では、主に定量分析結果を述べる。5.1 節では記述統計、5.2 節では分析結果、5.3 節では考察を述べる。本研究のデータ分析には「Stata/IC 15.1」を活用した。
5.1. 記述統計
パネルデータの記述統計を表 4 に示す。また被説明変数である被引用数(num_cites)の ヒストグラムを図 2 に示す。図 2 の分布より、負の二項分布モデルの重回帰分析を行う。
また図 3 に説明変数である筆頭発明者のシンプソン多様度指数 (SDI_field) のヒストグ ラムを示す。シンプソン多様度指数が 0 の深化型の発明者が多いことがわかる。次に、表 5 に相関行列表を示す。各説明変数は過去の発明分野数またはそれを もとに作成する変数 であるため当然ながら相関係数は高い。
表 4 記述統計
(1) (2) (3) (4) (5)
VARIABLES N mean sd min max
被引用数
num_cites 234,805 1.429 2.086 0 126
被引用数上位
5
パーセンタイ ルダミーdummy_cites_p95 234,805 0.0697 0.255 0 1
被引用数ゼロダミー
dummy_cites_0 234,805 0.558 0.497 0 1
筆頭発明者のシンプソン多様度指数
SDI_field 234,805 0.312 0.270 0 0.932 SDI_sector 234,805 0.157 0.214 0 0.788
筆頭発明者のシンプソン多様度指数のダミー変数
dummy_SDI_field > 0 234,805 0.648 0.478 0 1 dummy_SDI_field
≧0.25 234,805 0.565 0.496 0 1 dummy_SDI_sector > 0 234,805 0.410 0.492 0 1 dummy_SDI_sector≧ 0.25 234,805 0.307 0.461 0 1
筆頭発明者の過去の出願特許1件あたりの被引用数
num_cites_past 234,805 1.681 1.593 0 78
共同発明者全員の過去の出 願特許1件あたりの被引用 数
num_cites_past_co_inv 234,805 0.999 1.344 0 52
筆頭発明者の発明経験年数
invent_age 234,805 11.56 7.190 1 37
共同発明者全員のシンプソン多様度指数
SDI_field_co_inv 234,805 0.204 0.257 0 0.925 SDI_sector_co_inv 234,805 0.113 0.185 0 0.791
筆頭発明者の各技術分野への平均出願数
depth_field 234,805 4.377 4.622 1 387 depth_sector 234,805 6.335 6.784 1 387
共同発明者全員の各技術分野への平均出願数
depth_field_co_inv 234,805 4.057 6.035 0 141 depth_sector_co_inv 234,805 6.909 11.34 0 371.0
(出所)筆者作成
19
(出所)筆者作成
図 2 被引用数のヒストグラム
(出所)筆者作成
図 3 シンプソン多様度指数のヒストグラム(field)
20
表5 相関行列表
Variables (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18)
(1) num_cites 1.000
(2) dummy_cites_p95 0.623 1.000 (3) dummy_cites_0 -0.509 -0.136 1.000
(4) SDI_field 0.007 0.026 0.032 1.000
(5) SDI_sector -0.003 0.011 0.036 0.660 1.000 (6) dummy_SDI_ field>0 0.005 0.030 0.044 0.851 0.540 1.000 (7) dummy_SDI_ field≧25 0.006 0.021 0.022 0.905 0.573 0.839 1.000 (8) dummy_SDI_sector>0 -0.000 0.022 0.049 0.610 0.879 0.615 0.542 1.000 (9) dummy_SDI_sector≧25 -0.001 0.008 0.027 0.603 0.927 0.491 0.585 0.798 1.000 (10) SDI_field_co_ imv 0.088 0.072 -0.034 0.180 0.187 0.146 0.155 0.168 0.166 1.000 (11) SDI_sect or_co_ in v 0.054 0.044 -0.011 0.159 0.302 0.124 0.129 0.268 0.275 0.796 1.000 (12) depth_field -0.012 0.041 0.094 -0.250 -0.156 -0.142 -0.253 -0.078 -0.162 -0.049 -0.023 1.000 (13) depth_field_co_ in v 0.054 0.081 0.034 -0.094 -0.023 -0.055 -0.097 0.002 -0.030 0.201 0.152 0.207 1.000 (14) depth_sector 0.000 0.064 0.096 -0.001 -0.171 0.116 -0.020 -0.097 -0.177 -0.016 -0.053 0.820 0.160 1.000 (15) depth_sector_ co_in v 0.066 0.089 0.024 -0.028 -0.031 0.001 -0.033 -0.010 -0.038 0.321 0.141 0.153 0.853 0.162 1.000 (16) num_cites_past 0.197 0.155 -0.113 0.017 -0.031 0.029 0.019 -0.014 -0.027 0.075 0.022 0.031 0.065 0.062 0.084 1.000 (17) num_cites_past_co_in v 0.174 0.136 -0.095 0.002 0.013 0.008 0.001 0.020 0.011 0.472 0.318 0.031 0.386 0.033 0.377 0.241 1.000 (18) invent_age -0.063 -0.012 0.081 0.208 0.183 0.231 0.167 0.224 0.150 0.015 0.050 0.222 -0.006 0.260 -0.013 -0.013 -0.043 1.000
(出所)筆者作成
21 5.2.
回帰分析の結果表 6 に負の二項分布の固定効果モデルによる重回帰分析の結果を示す。コラム(1)~(3) は Field レベル、コラム(4)~(6)は Sector レベルでの分析である。コラム(1)(4)はシンプ ソン多様度指数の分析結果である。Field と Sector 共に一乗項が正に有意である(二乗項 の有意差は確認できなかった)。したがって、シンプソン多様度指数の影響は線形の正の影 響と解釈される。またコラム(2)(3)(5)(6)では、ダミー変数を用いて深化型と多様型の発 明者の違いを分析した。コラム(2)(5)はシンプソン多様度指数が 0 か否かで(厳密に経験分 野が一つかまたは複数かで)分けて分析した。コラム(3)(6)はシンプソン多様度指数 0.25 を境界として、深化型と多様型の発明者を分けて分析した。結果として、全て のダミー変 数において、有意な正の影響が確認された。
次に表 7、表 8 にロジスティック回帰モデルによる重回帰分析の結果を示す。表 7 コラ ム(1)~(6)は被説明変数に被引用数上位 5 パーセンタイルダミーを用いた分析である。ま た、表 8 コラム(1)~(6)は被説明変数に被引用数ゼロダミーを用いた分析である。また、
表 7 コラム(1)(2)(3)表 8 コラム(1)(2)(3)は Field レベル、表 7 コラム(4)(5)(6)表 8 コラ ム(4)(5)(6)は Sector レベルでの分析である。表 7 の被引用数上位 5 パーセンタイルダミ ーの分析については、Field と Sector 共にシンプソン多様度指数が正に有意な結果となっ た (二乗項は有意ではない)。また、シンプソン多様度指数のダミー変数についても、表 7 コラム(2)(3)(5)(6)にて正に有意な結果となった。一方で、表 8 の被引用数ゼロダミーの 分析では、多様性による有意な影響は確認できなかった。
22
表 6 負の二項分布の固定効果モデルによる重回帰分析の結果
(1) (2) (3) (4) (5) (6)
VARIABLES Num_cites
[field]
Num_cites [field]
Num_cites [field]
Num_cites [sector]
Num_cites [sector]
Num_cites [sector]
SDI_field 0.111***
(0.0154)
dummy_SDI_field > 0 0.0435***
(0.00797)
dummy_SDI_field_≧0.25 0.0475***
(0.00742)
SDI_sector 0.159***
(0.0207)
dummy_SDI_sector_> 0 0.0564***
(0.00863)
dummy_SDI_sector ≧0.25 0.0577***
(0.00849)
SDI_field_co_inv 0.389*** 0.389*** 0.389***
(0.0393) (0.0393) (0.0393) SDI_field_co_inv (squared) -0.302*** -0.299*** -0.301***
(0.0561) (0.0562) (0.0561) depth_field -0.00377*** -0.00443*** -0.00422***
(0.000975) (0.000966) (0.000965) depth_field_co_inv 0.00401*** 0.00399*** 0.00401***
(0.000551) (0.000551) (0.000551)
SDI_sector_co_inv 0.520*** 0.521*** 0.524***
(0.0515) (0.0515) (0.0515)
SDI_sector_co_inv (squared) -0.592*** -0.588*** -0.595***
(0.0920) (0.0921) (0.0921)
depth_sector -0.00253*** -0.00263*** -0.00285***
(0.000681) (0.000684) (0.000676)
depth_sector_co_inv 0.00328*** 0.00326*** 0.00328***
(0.000291) (0.000291) (0.000291) num_cites_past -0.194*** -0.194*** -0.194*** -0.194*** -0.194*** -0.194***
(0.00279) (0.00279) (0.00279) (0.00279) (0.00279) (0.00278) num_cites_past_co_inv 0.0475*** 0.0474*** 0.0474*** 0.0513*** 0.0513*** 0.0513***
(0.00225) (0.00225) (0.00225) (0.00215) (0.00215) (0.00215) invent_age -0.0149*** -0.0145*** -0.0144*** -0.0148*** -0.0148*** -0.0144***
(0.00138) (0.00138) (0.00138) (0.00138) (0.00139) (0.00138)
Constant 1.526*** 1.532*** 1.531*** 1.536*** 1.538*** 1.541***
(0.0324) (0.0324) (0.0324) (0.0323) (0.0322) (0.0322)
Technology dummy Yes Yes Yes Yes Yes Yes
Company dummy Yes Yes Yes Yes Yes Yes
Year dummy Yes Yes Yes Yes Yes Yes
Observations 234,805 234,805 234,805 234,805 234,805 234,805
Number of id 52,700 52,700 52,700 52,700 52,700 52,700
Log likelihood -228555.9 -228566.92 -228561.34 -228551.43 -228559.68 -228557.98
AIC 457175.8 457197.8 457186.7 457166.9 457183.4 457180
Standard errors in parentheses
*** p<0.01, ** p<0.05, * p<0.1
(出所)筆者作成
23
表 7 被引用数上位 5 パーセンタイルダミーに関する ロジスティック回帰の固定効果モデルによる重回帰分析の結果
(1) (2) (3) (4) (5) (6)
VARIABLES Dummy_
Cites_p95 [field]
Dummy_
Cites_p95 [field]
Dummy_
Cites_p95 [field]
Dummy_
Cites_p95 [sector]
Dummy_
Cites_p95 [sector]
Dummy_
Cites_p95 [sector]
SDI_field 0.453***
(0.0682)
dummy_SDI_field_> 0 0.139***
(0.0354)
dummy_SDI_field ≧0.25 0.172***
(0.0320)
SDI_sector 0.514***
(0.0942)
dummy_SDI_sector >0 0.0693*
(0.0380)
dummy_SDI_sector ≧0.25 0.199***
(0.0364) SDI_field_co_inv 1.908*** 1.906*** 1.908***
(0.157) (0.157) (0.157) SDI_field_co_inv (squared) -2.232*** -2.219*** -2.227***
(0.219) (0.219) (0.219) depth_field -0.0518*** -0.0551*** -0.0540***
(0.00404) (0.00401) (0.00400) depth_field_co_inv 0.0146*** 0.0145*** 0.0146***
(0.00202) (0.00202) (0.00202)
SDI_sector_co_inv 1.933*** 1.947*** 1.936***
(0.204) (0.204) (0.204) SDI_sector_co_inv
(squared)
-2.998*** -3.001*** -3.000***
(0.363) (0.363) (0.363)
depth_sector -0.0371*** -0.0386*** -0.0379***
(0.00271) (0.00274) (0.00269)
depth_sector_co_inv 0.0103*** 0.0102*** 0.0103***
(0.00107) (0.00107) (0.00107) num_cites_past -0.388*** -0.386*** -0.387*** -0.389*** -0.387*** -0.389***
(0.0106) (0.0105) (0.0105) (0.0105) (0.0105) (0.0105) num_cites_past_co_inv 0.102*** 0.102*** 0.102*** 0.119*** 0.119*** 0.119***
(0.00921) (0.00920) (0.00920) (0.00879) (0.00879) (0.00879)
Technology dummy Yes Yes Yes Yes Yes Yes
Company dummy Yes Yes Yes Yes Yes Yes
Year dummy Yes Yes Yes Yes Yes Yes
Observations 66,913 66,913 66,913 66,913 66,913 66,913
Number of id 11,044 11,044 11,044 11,044 11,044 11,044
Log likelihood -21318.931 -21333.418 -21326.709 -21345.454 -21358.801 -21345.542
AIC 42697.86 42726.84 42713.42 42750.91 42777.6 42751.08
Standard errors in parentheses
*** p<0.01, ** p<0.05, * p<0.1
(出所)筆者作成24
表 8 被引用数ゼロダミーに関する
ロジスティック回帰の固定効果モデルによる重回帰分析の結果
(1) (2) (3) (4) (5) (6)
VARIABLES Dummy_
Cites_0 [field]
Dummy_
Cites_0 [field]
Dummy_
Cites_0 [field]
Dummy_
Cites_0 [sector]
Dummy_
Cites_0 [sector]
Dummy_
Cites_0 [sector]
SDI_field 0.0112
(0.0337)
dummy_SDI_field_> 0 -0.0107
(0.0171)
dummy_SDI_field ≧0.25 -0.00683
(0.0159)
SDI_sector 0.0672
(0.0463)
dummy_SDI_sector >0 -0.00357
(0.0193)
dummy_SDI_sector ≧0.25 0.0231
(0.0187) SDI_field_co_inv 1.415*** 1.415*** 1.415***
(0.0857) (0.0857) (0.0857) SDI_field_co_inv (squared) -2.539*** -2.539*** -2.539***
(0.123) (0.123) (0.123)
depth_field -0.00263 -0.00317 -0.00304
(0.00253) (0.00252) (0.00251) depth_field_co_inv 0.00868*** 0.00869*** 0.00869***
(0.00123) (0.00123) (0.00123)
SDI_sector_co_inv 1.000*** 1.003*** 1.001***
(0.113) (0.113) (0.113) SDI_sector_co_inv
(squared)
-2.528*** -2.532*** -2.530***
(0.202) (0.202) (0.202)
depth_sector -0.00553*** -0.00610*** -0.00572***
(0.00183) (0.00185) (0.00182)
depth_sector_co_inv 0.00486*** 0.00486*** 0.00486***
(0.000676) (0.000677) (0.000676)
num_cites_past 0.284*** 0.284*** 0.284*** 0.282*** 0.282*** 0.282***
(0.00680) (0.00680) (0.00680) (0.00679) (0.00680) (0.00679) num_cites_past_co_inv -0.109*** -0.109*** -0.109*** -0.104*** -0.104*** -0.104***
(0.00590) (0.00590) (0.00590) (0.00558) (0.00559) (0.00558)
Technology dummy Yes Yes Yes Yes Yes Yes
Company dummy Yes Yes Yes Yes Yes Yes
Year dummy Yes Yes Yes Yes Yes Yes
Observations 198,287 198,287 198,287 198,287 198,287 198,287
Number of id 40,829 40,829 40,829 40,829 40,829 40,829
Log likelihood -76047.979 -76047.838 -76047.942 -76198.579 -76199.614 -76198.869
AIC 152156 152155.7 152155.9 152457.2 152459.2 152457.7
Standard errors in parentheses
*** p<0.01, ** p<0.05, * p<0.1
(出所)筆者作成5.3. 考察と仮説検証結果
上記分析結果より、多様性の高さが被引用数に正の影響を与えることが検証された。そ して、各多様性に関する変数の結果より、少ない分野に従事する深化型の発明者よりも、
多様型の発明者のパフォーマンスが高いことが示された。したがって、仮説 1 は支持され た。また、この結果は IPC コードで多様性の影響を分析した先行研究 (吉岡(小林),2015) の結果を拡張するものであり、IPC よりも明確に技術分類がなされる Technology
Concordance Table (35 分類の field および 5 分類の sector)においても有効であると示し た。しかし、シンプソン多様度指数の二乗項の分析結果 は有意差は示されず、多様性が逆 U 字になるという吉岡(小林) (2015)の結果の支持には至らなかった 。推測される原因は、
分析に用いた技術分類の違いである。本研究の目的が発明者が過去に従事した技術分野の
25
影響分析であるため、本研究では分類数が多い IPC ではなく、技術カテゴリがより厳選さ れた Technology Concordance Table を活用した。結果として、百種類以上の IPC コードか ら 35 種または 5 種の技術分類に変えて分析したため、技術分野の経験の多様さと被引用数 の関係をさらに正確に示したと考えられる。 一方で、チームメンバである共同発明者の多 様性を示す SDI_field_co_inv/SDI_sector_co_inv は、逆 U 字が確認されており、先行研究 を支持する形となった。上記、個人と共同発明者での多様性の影響の違いは、チームの場 合は多様性の増加に伴いチーム内での対話コストが増加するためと考えられる。そのため チームよりも比較的複数の技術の結合が容易な個人内では多様性が線形の正の影響を示し、
チームメンバーである共同発明者の多様性では逆 U 字の効果を示した本研究結果は非常に 妥当であると考えられる。
被引用数上位 5 パーセンタイルへの多様性の影響は、表 7 コラム (1)~(6)のすべての説 明変数にて有意差が確認され、仮説 2 は支持された。一方で、被引用数ゼロダミーについ ては表 8 コラム (1)~(6)で有意差が確認されず、仮説 3 の支持には至らなかった。したが って、個人内の多様性の高さと被引用ゼロの発明との関係は説明できていない。一方で、
共同発明者の多様性を示すシンプソン多様度指数(SDI_field_co_inv/SDI_sector_co_inv) は、逆 U 字の影響として有意差が確認できている。これはチームの多様性が ある程度高い と、被引用数ゼロの発明を減少させることを意味し、Singh & Fleming (2010)の結果と一 部一致する。したがって、チームにおいては、多様性の高さが上位および下位の発明の創 生に良い結果をもたらすが、個人内の多様性の高さは被引用上位の発明の創生には貢献 し、
下位の発明の削減には現時点では貢献するとは言えないと分かった。個人の一人の視点よ りも、チームメンバの複数視点からの異なる意見が発明品質に影響するとも解釈できる。
26
6.堅牢性の検証:シンプソン多様度指数 0 を除いた分析
本章ではメカニズムの探索的な追加分析として、データセットからシンプソン多様度指 数 0 の発明者を除いた分析を行う。
6.1. 記述統計
図 3 に示したように、パネルデータに一度しか現れない発明者はデータセットから除い てはいるが、一つの技術分野に従事するシンプソン多様度指数 0 の発明者が非常に多いこ とが分かる。そこで、一つの技術分野の経験しか持たないシンプソン多様度指数 0 の極端 な深化型の発明者を取り除き、多様性の分析を行う。 表 9 に Field レベルでシンプソン多 様度指数 0 を除いた場合の記述統計を示す。
表 9 Field レベルでシンプソン多様度指数 0 を除いた場合の記述統計
(1) (2) (3) (4) (5)
VARIABLES N mean sd min max
被引用数
num_cites 143,399 1.469 2.111 0 126
被引用数上位
5
パーセンタイ ルダミーdummy_cites_p95 143,399 0.0780 0.268 0 1
被引用数ゼロダミー
dummy_cites_0 143,399 0.569 0.495 0 1
筆頭発明者のシンプソン多様度指数
SDI_field 143,399 0.484 0.178 0.00608 0.932
筆頭発明者のシンプソン多様 度指数のダミー変数
dummy_SDI_field >0 143,399 1 0 1 1 dummy_SDI_field
≧0.25 143,399 0.870 0.336 0 1
筆頭発明者の過去の出願特許1件あたりの被引用数
num_cites_past 143,399 1.739 1.454 0 36.63
共同発明者全員の過去の出願 特許1件あたりの被引用数
num_cites_past_co_inv 143,399 1.022 1.338 0 32
筆頭発明者の発明経験年数
invent_age 143,399 12.93 6.862 1 37
共同発明者全員のシンプソン多様度指数
SDI_field_co_inv 143,399 0.234 0.269 0 0.921
筆頭発明者の各技術分野への 平均出願数
depth_field 143,399 3.991 3.465 1 164
共同発明者全員の各技術分野 への平均出願数
depth_field_co_inv 143,399 3.875 5.461 0 141
(出所)筆者作成
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図 4 に、Field レベルでのシンプソン多様度指数 0 を除いた場合の被引用数のヒストグ ラムを示す。被説明変数である被引用数の分布傾向は変わらず偏っているため、負の二項 分布モデルを活用する。また図 5 に Field レベルでのシンプソン多様度指数 0 を除いた場 合のシンプソン多様度指数のヒストグラムを示す。表 10 に Field レベルでのシンプソン多 様度指数 0 を除いた場合の相関行列表を示す。また、Sector レベルでの記述統計、相関行 列表などの記載は割愛する。
(出所)筆者作成
図 4 被引用数のヒストグラム
(Field レベルでのシンプソン多様度指数 0 の発明者を除いた場合)
(出所)筆者作成
図 5 シンプソン多様度指数のヒストグラム
(Field レベルでのシンプソン多様度指数 0 の発明者を除いた場合)
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表 10 Field レベルでシンプソン多様度指数 0 を除いた場合の相関行列表
Variables (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11)
(1) num_cites 1.000
(2) dummy_cites_p95 0.621 1.000 (3) dummy_cites_0 -0.502 -0.134 1.000
(4) SDI_field 0.002 -0.001 -0.009 1.000
(5) dummy_SDI_ fie ld≧25 0.007 -0.008 -0.035 0.670 1.000 (6) SDI_field_co_ in v 0.084 0.064 -0.037 0.126 0.073 1.000 (7) depth_field -0.001 0.064 0.101 -0.420 -0.408 -0.023 1.000 (8) depth_field_co_in v 0.052 0.082 0.042 -0.127 -0.129 0.265 0.219 1.000 (9) num_cites_past 0.213 0.167 -0.125 -0.024 -0.012 0.079 0.049 0.069 1.000 (10) num_cites_pas t_co_in v 0.170 0.133 -0.093 -0.015 -0.012 0.506 0.037 0.387 0.268 1.000 (11) invent_age -0.069 -0.019 0.077 0.028 -0.059 0.004 0.221 0.019 -0.031 -0.032 1.000
(出所)筆者作成