第 4 章 燃料噴霧特性によるスモーク排出への影響
4.1 緒 論
直噴ガソリンエンジン(1-6)で,最適な燃焼を得るための混合気分布への重要なキーの 1 つは,筒内の空気流動だけではなく,噴霧特性にある.前章の結果から,如何なる燃料温 度でも,噴霧特性が安定し,微粒化した噴霧が得られるインジェクタが必要とされること が分かった.
インジェクタには様々なタイプがある.例えば,非対称質量分布(8)を含むスワールイン ジェクタ(7),ファン噴霧インジェクタ(9)そしてマルチホール(MH)イジェクタ(10)などが あるが,本章では,以下の3つの異なるインジェクタを対象に検討を行う.
(1) スワール噴霧
(2) ファン(フラット)噴霧 (3) マルチホール(MH)噴霧
各インジェクタの初期評価による特性として,表4-1にはスワールインジェクタ,表4-2 にはファンインジェクタ,表4-3にはマルチホールインジェクタを示す.これらのインジェ クタの初期評価により,マルチホールは,エンジン適合に対し,最も有望であり,各種噴 霧形状を達成する上で最もフレキシビリティーがあることが分かった.噴霧形状の自由度 が高く,噴霧粒径等も優れているMHインジェクタが,今後主流になると予想されるため,
ここではMHインジェクタを主に開発を進める.
ここでのインジェクタの噴霧評価には,1.3L直列4気筒直噴エンジンを用いており,エ ンジン諸元の詳細については,4.3にて述べる.
なお,インジェクタの噴霧解析方法としては,前章同様に,パルスレーザーライトシー
トのMIE scatteringイメージング,または,ストロボスコープ光源を使用したボリューム
イルミネーション噴霧の計測を多く用いた.
Table 4-1 Characteristics of swirl injector 利点 ¾ 量産エンジンに広く用いられ技術が確立している
¾ 比較的低圧で,微粒化が可能
欠点
¾ 雰囲圧力・燃料温度等の運転条件により噴霧形状が極端に変化する
¾ 初期噴霧と呼ばれる粒径の大きな噴霧が生じる
¾ 噴霧形状の自由度が低い
構造
Table 4-2 Characteristics of fan injector 利点 ¾ 噴霧形状が,運転条件によらず安定している
¾ 初期噴霧が見られない 欠点 ¾ 噴霧形状の自由度が低い
構造
Table 4-3 Characteristics of multi-hole injector 利点 ¾ 噴霧形状を自由に設計できる
¾ 噴霧形状が,運転条件に因らず安定している
¾ 初期噴霧が見られない
¾ 空気のエントレイメントが高い 欠点 ¾ 量産実績がなく,現在開発中である Multi
Hole
構造
.2 噴射ノズルとエンジン諸元 4
(1) スワールインジェクタ
スワールインジェクタの利点としては,量産エンジンに広く用いられ技術が確立してが,
欠点
るの
,利点としては,1)噴霧形状が運転条件によらず安定している,
2)初
(MH: Multi Hole)インジェクタ
パターンを自由に設計できる,2)噴霧形状 が,
ン主要諸元,図4-1にエンジン概略図を示す.供試4気筒直噴ガソリン エン
として,1)雰囲気圧力・燃料温度等の運転条件により噴霧形状が極端に変化する,2) 初期噴霧と呼ばれる粒径の大きな噴霧が生じる,3)噴霧形状の自由度が低い,があげられる.
上記のような,欠点を考慮すると,スモークの発生を低減するための噴霧特性を得られ は困難であると考えられる.
(2) ファンインジェクタ ファンインジェクタは
期噴霧が見られない,があげられ,一部の直噴ガソリンエンジンで採用されている.欠 点としては,噴霧形状の自由度が低いことがあげられ,さらなる噴霧特性の向上は難しい と考えられる.
(3) マルチホール
MH インジェクタは,利点としては,1)噴霧
運転条件によらず安定している,3)初期噴霧が見られない,4)空気のエントレイメント が高い,があげられる.但し,量産実績(2002年時点)はなく,現在開発中である.従って,
最適噴霧を得るために可能性の高いインジェクタと考えられる.
(4)エンジン諸元 表4-4にエンジ
ジンは,4弁DOHC(Double Over Head Camshaft),可変吸気VVT(Variable Valve Timing) を有している.全体の開発時間を短縮するため,単気筒ではなく多気筒エンジンを使用し た.エンジンは車両と同じ搭載角度でテストスタンドに取り付けられ,マニュアルトラン スミッションを通して動力計へ締結されている.ピストンは吸気側に混合気成層化のため のキャビティを持ち,その形状はCFD解析や実験によりアイドルから高回転・高負荷まで 安定した成層燃焼が実現できるように最適化されている.また,エンジン運転状態に応じ た最適な空気流動を得るため,独立した吸気ポートに可変スワールコントロールバルブ
(SCV)を採用している.これにより,スワール強度を0~2.5まで連続的に変化させるこ とが可能である.吸気ポートを上下にオフセットして配置することにより,SCV シャフト を吸気2ポートのうちの1ポートのみに貫通させた.これによりSCVによる圧力損失を最 小限に抑えつつ,高いスワール強度と流量係数の両立を実現している.また,高圧燃料イ ンジェクタは吸気ポート下に配置され,気筒軸に対して45度の角度で取り付けられている.
点火プラグは,シリンダ中央に配置される.可変燃圧ポンプの採用により,燃料圧力はエ ンジン運転状態に応じ,8-12MPaの間で最適に制御される.
図4-2には,燃焼室,インジェクタ,点火プラグ,SCVのレイアウトを示し,成層混合 気形
ガソリンエンジンは,1.3L PFI エン
ールバルブ
バルブ
Table 4-4 Engine Specifications
Displacement 1326 cm3
成のコンセプトを示す.基本的に,本エンジンはスワール空気流動を用いたウォール ガイドのコンセプトである.本エンジンでのウォールガイドコンセプトは,圧縮行程後半 にインジェクタより噴射された燃料は,蒸発しながら噴霧の貫徹力,スワール流動と呼ば れる横渦の空気流動により,ピストンキャビティ壁に沿って点火プラグ周辺に運ばれ,広 範囲の負荷・回転数にわたり良好な混合気分布を形成する.これにより,25~60%の高い EGR率で,安定した成層燃焼を実現し,直噴エンジンにとって重要な課題であるNOx排出 量を抑えつつ,10~40%の燃費改善を可能にしている.
図4-3では,エンジンシステム構成を示す.本1.3L直噴
ジンをベースとして改良して作製したエンジンである.1.3L PFIエンジンからの変更 点は以下のとおりである,
1) 可変スワールコントロ 2) 電子スロットル 3) 高流量電動EGR
4) 高エネルギー点火コイル 5) 可変燃圧式燃料ポンプ 6) 直噴用インジェクタ 7) ボールピスト
Displacement/Cylinder 331 cm3
Bore 78 mm
Stroke 69.5 mm
Number of Cylinder In-line 4
Valve train DOHC 4-valve/cylinder
Compression ratio 10.5:1
Figure 4-1 Engine geometry showing the complete engine assembly
High Pressure MH Fuel Injector
Spark Plug Swirl Control Valve
Figure 4-2 A perspective view of the combustion chamber geomet and injector and spark ry locations
Map Sensor
Crank Angle Sensor Cam Angle Sensor EGR Valve
Igntion Coil Parge VSV
Sensor Throttle Position
Throttle Body Electronic Controlled
PCVValve
SCV
Injector
Coolant Temp Sensor
Battery Nox Trap Type Converter
Converter 3Way C.C.
Low Pressure Fuel Pump Sensor Oxygen
VVT High Pressure Fuel Pump Canistor
Vaive 2way
Air Flow Meter AirTemp Sensor
ECM
Intake Air Cleaner
.3 スモークの排出評価点 4
Additional device to base PFI engine Variable SCV (SI=0-2.5)
Electronic throttle body High flow EGR valve High energy ignition coil
h pressure pump On demand controlled hig
Direct injector Bowl piston
Figure 4-3 Engine system scheme
スモークの排出を評価するため使用される代表的なテストポイントを,表4-5と図4-5
日本国内 10-15 モードテストサイクルを走行した場合の代表
する
の単位はN,F0は,転がり抵抗分:96.8N,F2は,風損係数: 0.0373である.
1点を除いて全て成層燃焼運転を行っており,ピストンへの噴霧の
何に
に接続されえている.インテークマニホールドの上流に は,
Table 4-5 Engine operation conditions for moke emission evaluation points Test point Engine spe Operation region に示す.これらは,小型車が
運転条件である.これらの運転条件は,図4-6に示す消費される燃料重量の分布の運転 領域を均等に5分割して,分割した運転領域の中で,燃料消費の重心となる点を選定し,
アイドルとこの選定した5点を代表点とした.この際,車両の走行抵抗(F)は,下記のよう にした.
F = F0 + F2 x V2 ここで,F
これらの代表点は,
衝突が生じる.噴霧がピストンへ衝突しても,燃料噴霧特性により,スモークの排出を如 低減できるかを確認する.
また,図 4-7は,スモークの排出測定用のテストセルを表している.供試エンジンはト ランスミッションを介して動力計
サージタンクを設け,EGR ガスを均一化するとともに,図中①に示すようにヒータを 設置して温度をコントロールし,各気筒に分配している.
ed (rpm) BMEP
1 650 Idle Stratified + EGR
2 1500 189 Stratified + EGR
3 2000 200 Stratified + EGR
4 2000 284 Stratified + EGR
5 2500 331 Stratified + EGR
6 2500 450 Homogeneous + EGR
0 100 200 300 400 500 600 700
1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000
Engine Revolution,rpm
4th 5th
Evaluation Points
30km/h
60km/h
90km/h
60km/h
90km/h
Stratified Lean +EGR
Homogeneous+EGR
BMEP kPa
Engine Revolution rpm
Figure 4-5 Smoke emission evaluation points
0-25 50-75 100-125 150-175 200-225 250-275 300-325 350-375 400-425 450-475 500-525 550-575 600-625 500-750 750-1000 1000-1250 1250-1500 1500-1750 1750-2000 2000-2250 2250-2500 2500-2750 2750-3000
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0
Pa
R
Japanese 10-15Mode/YM0_MTJapanese 10-15M/Suzuki Swift
IDLE
Weight of Fuel Consumption
%
F0=96.8 F2=0.0373 IW=1000
BMEP kPa
Engine Revolution
rpm
Figure 4-6 Distribution of fuel consumption
4.4 計算モデリング詳細
数値シミュレーションには,第2章で説明したものと同様に,General Motors社 R&D
Emissions Bench
Dyno EGR
Valv e
T/M 1
Charge AMP 2
3 5
8 4
6
7
9 1. Heater
2.Throttle 3. EGR pipe
Flow Meter /Meriam Instrument 50MC2-2F
06340
(DC)/General Electric 4. Laminar
5. Plenum
6.Encoder /Dynapar HR525036 7. Pressure Transducer/AVL GM12D 8. Dynamo
9.Smoke Meter/AVL 415S
Figure 4-7 Schematics of test cell
部門で開発された多次元流体解析コード 本コードは非構造完全不連 とができる.接合格子は特に吸気行程の吸気弁可動部分や点火プ ラ
shion(12)でモデル化され,そし て
は,ストロボスコープ光源を使用したボリュ ー
GMTECを用いた.
続接合格子を用いるこ
グ近傍などの詳細な計算を必要とする部分に用いている.また,吸気弁閉じられた後 は,計算時間の低減や圧縮行程の詳細な計算を目的に,吸気行程計算メッシュから燃焼 室内を細分化した圧縮行程計算メッシュへ物理量をリマップする機能を備えている.さ らに,メッシュサイズを最適化するための解適合格子の機能も備えている.ここでは,
この機能を,図4-8に示すとおり,スワールコントロールバルブの詳細を含むのと同様 に,インテークグリッドにバルブモーションを組み込むため使用された.
吸気行程での格子は,138,000 セルから成り立ち,圧縮行程での格子は,84,000 セ ルから成る.図 4-9 に示すとおり,燃焼室内を部分的に細分化して,噴霧部分を約
150,000の格子サイズとし,格子解像度を向上させた.
液体燃料もしくは蒸気燃料が存在する領域を細分化し,それ以外の領域を細分化し ないことにより,計算時間を削減した.
噴霧が液体の段階では,common particle Lagrangian fa
気体の段階へ連結される.インジェクションルーティンは,パルスレーザーライトシ ートのMIE scatteringイメージング,又
ムイルミネーション,Phase Doppler Anemometry (PDA)ポイント計測で比較するこ とで特定のインジェクタを表示するため開発された.ファン噴霧とMH噴霧計算の両方 に対し,TAB ブレークアップモデル(13)は,気相メッシュから独立して修正された O’Rourke(18)の衝突モデルと連結して一定のCkに対し,修正した値で使用した.付着燃 料は,Lagrangian particles(13,14)を使用してモデルされ,そして噴霧と壁面の相互作用につ いては,Stanton and Rutkand(15)のモデルを使用して算出される.噴霧モデリングの重要 な特徴として,連続分布(16.17)の方法で多成分混合として燃料を表示した.これは,気 化と付着燃料質量の予期量に影響し,そして,多成分ガソリンの代わりとしてイソオク タンを使用することは,実験観察(18)に基づいて付着燃料質量で相当な減少を示すこと がわかった.そこで,今回は,揮発性状をインドリンガソリンに合わせるように,パラ メータを設定した.
Figure 4-8 CFD grid showing the intake geometry including the swirl control valve
Figure 4-9 CFD grid showing closed-valve mesh showing improved resolution and local refinement in the vicinity of the spray
4.5 噴霧計測手法
燃料噴霧特性については,General Motors社のR&D部門で開発された基準テスト方法 を使用して詳細に評価した.インジェクタは,光学噴霧チャンバーに取り付けられている 銅製の保持固定具を用いてに取り付けられる.
銅製の保持固定具には,温度制御が可能なカートリッジヒータが取り付けられており,
加熱機能も有している.過熱機構により,インジェクタボデー,インジェクタ先端部,燃 料及びフューエルインレットチューブを含めて温度調整を行い,燃料噴射時に安定した燃 料に調整可能である.
噴霧計測は,表4-6に示すとおり,光学噴霧チャンバーは,窒素雰囲気として,背圧は 101kPaと255kPa,噴霧燃料温度は293Kと363Kで実施した.101kPaの背圧は,全開 時の運転条件での噴霧を模擬しており,255kPaの背圧は,圧縮工程で噴射する成層運転で の代表点としている.計測は,燃料が高温での噴霧特性と比較するため,ベースラインと して293Kの噴霧燃料温度で行う.燃料噴霧計測は,前章で用いたパルスレーザーライトシ
ートのMIE scatteringイメージングと,ここでは図4-10に示すストロボスコープ光源を
使用したボリュームイルミネーションも用いた.ボリュームイルミネーションは,光源に フラッシュライトを使用して噴霧の全体の形状を測定している.雰囲気は大気開放し,燃 料にガソリン(Indolene)を使用しているため,インジェクタの下部に排気用のブロアが設け ている.フッラシュライトは一回の噴霧に対して一回の発光であり,噴射開始から一定の 時間をおいて発光するようになっている.連続噴霧を行うと,噴射開始後のある時刻の噴 霧が止まっているように見ることができるため,肉眼で容易に観測が可能である.フラッ シュライトの遅れ時間は任意に変えることができるため,様々な時刻での噴霧形状を可視 化できる.
ま た , 噴 霧 の 粒 径 と 速 度 を 詳 し く 調 べ る た め , 前 章 と 同 様 に , Phase Doppler Anemometry (PDA)計測も用いた.また,前章と同様に,直噴ガソリンエンジンにおける PDA計測の基準的な計測位置は,インジェクタの先端から50mmとした.この距離は,直 噴エンジン用燃料噴霧の計測には適切な距離と判断して決定した.これは,通常,直噴エ ンジンガソリンの噴霧が初期段階においては,高密度で安定しないことにより,噴霧ノズ ル先端へより近い位置での計測では,重要な噴射タイミングでの,データの消失が多くな るためである.
Table 4-6 Fuel spray condition
Test fuel Indolen gasoline
Fuel pressure 7Mpa
Fuel temperature (Tf) Cold fuel: 293K(20℃) Hot fuel: 363K(90℃)
Injection pulse width 1.5ms
Back pressure 101kPa
255kPa
Pulse Generator Injector Driver Delay & Flash Light Controller
Flash Light
Vacuum Pump Injecto
High-pressure Fuel Pump Fuel Mass
Flow Meter
Camera
Figure 4-10 Schematics of volume illumination
4.6 噴霧観察の結果と考察
一般的代表として.噴霧角50゜のスワール噴霧を選定した.スワー ル噴
されるMIE scatteringイメージの 写真
中実の噴霧でることは,PDA計測でも検証された.高い雰囲気圧下では,噴 霧は
霧の 粒径
(1) 径が認められる.
が高 4.6.1 スワール噴霧
直噴エンジン噴霧の
霧の特徴でも述べたが,スワール噴霧は,一般的に粒径が大きな初期噴霧が生じる.
今回選定したインジェクタは,他のスワールインジェクタと比較して,同等の初期噴霧を 生成するものであり,特別なインジェクタではない.
噴霧構造は,第3章でも一部述べたが,図4-12に示
で見ることが可能である.雰囲気圧が100kPaで,燃料温度が293Kの状態では,噴霧 は,粒径の大きな初期噴霧は消失しており,噴霧形状は,初期円錐形と先端部に環状に巻 き上げられた渦がはっきりと観察できる.これは,位相ドップラー流速計(PDA : Phase Doppler Anemometry )結果から,初期噴霧の後に速度の速い主噴霧が観察され,速度の速 い主噴霧により初期噴霧は押し退けられるようにして環状に巻き上げられた渦になったと 推察される.また,噴霧は,雰囲気圧が255kPaでは,中空というよりはむしろ中実のよう に見える.
この噴霧が
崩壊して,噴霧ノズル先端の直下では初期噴霧角の形状を示すが,高密度の噴流であ る中実の噴霧となる.雰囲気圧と密度がより高いにもかかわらず,噴霧は非常に速く貫徹 する.ここでは,燃料であるIndoleneを363Kに加熱しているが,この加熱が噴霧を崩壊 する影響を与えるいると考えられる.特に,150kPa未満の雰囲気圧で顕著となる.
噴霧特性の定量的な分析として,噴霧の粒径と速度の計測を PDA 計測で行い,噴 については,ザウタ平均粒子径(SMD: Sauter Mean Diameter)で表し,その結果を図 4-13に示す.これらの計測は,噴霧中央 のノズルの出口から下に 50mm の位置で計測さ れた(遅れ分の補正は実施). PDA 計測結果は,0.25ms 間隔で計測され,計測結果は,
20,000 個のデータの平均化処理を行った.計測結果から,100kPa での雰囲気おいて,デ
ータが約1.5と2.5ms間の時間帯で切れているが,100kpaでは,初期噴霧の後にスワール
噴霧の特徴である噴霧が中空となっているため,噴霧存在しないため推察する.
ここで得られたスワールインジェクタの以下のとおりである.
粒径計測の最初の0.5ms間には,初期噴霧に関連した大きな粒
(2) 主噴霧が到達する(1と 2ms の間)際,最大噴霧速度となる.粒径は,雰囲気圧 い場合,少し大きくなる.
(3) 293Kから363Kへの燃料を加熱することにより,どちらの雰囲気圧においても,粒径
減少
が大きく減少している.また,主噴霧に対し,約5から7μm,そして初期噴霧に対し,
約10から15μmの粒径が減少している.
これは,ただ,より速い崩壊と,崩壊によって生じたより小さい液滴による表面張力の の結果だけであるとは考えられない.ノズル内部の流れとフラッシュボイリングによ る変化についても考慮する必要がある.減少した粒径,平均噴霧粒子速度での増加及び噴 霧のより早い到着は,燃料加熱に影響されている.これは,雰囲気圧255kPaでは,加熱と 非加熱(293K)の両燃料状態での噴霧の全体構造は,同等のように見えるが,加熱燃料の場 合は,より微粒化され,より強い噴霧の崩壊と中実噴霧を示す.
Spray pattern Corn angle 50 degrees
Flow rate (cm3/mm) 700
Fuel pressure (MPa) 5
(a) Pamb=100kPa, Tfuel = 293 K
(b) Pamb=255kPa, Tfuel = 293 K
(c) Pamb=255kPa, Tfuel = 363 K
MIE-scattering images 1.2 msec after SOI Figure 4-12 Selected swirl injector details
0 5 10 15 20 25 30 35 40
0 1 2 3 4 5 6
SMD (microns)
(a)
Tf=20 P=1.01 bar Tf=90 P=1.01 bar Tf=20 P=2.55 bar Tf=90 P=2.55 bar
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
0 1 2 3 4 5 6
Tf=363K Pa=100kpa Tf=293K Pa=255kpa Tf=363K Pa=255kpa Tf=293K Pa=100kpa
SMD microns
Time ms
Tf=363K Pa=100kpa Tf=293K Pa=255kpa Tf=363K Pa=255kpa Tf=293K Pa=100kpa
(b)
Tf=20 P=1.01 bar Tf=90 P=1.01 bar
y(g)
Tf=20 P=2.55 bar Tf=90 P=2.55 bar
Velocity Mass-averaged m/s
Figure 4-13 PDA measurements of 50° swirl spray for different fuel temperatures and ambient pressures: (a) SMD, (b) drop velocities
Time ms
4.6.2 ファン噴霧
ファン噴霧は直噴ガソリンエンジン(4)で使用される環境では,運転条件により変化し ない,また,雰囲気のエントレイメント(巻き込み)が高くなる噴霧構造であり,最適な噴霧 形状が得られると思われた.
ファン噴霧は,長方形のスリットの開口により生成され,図 4-14 に示される MIE
scattering イメージは,以下のこの噴霧の独特な特徴のいくつかを表している.
(1) 雰囲気が大気圧状態(a)では,噴霧は,ファン形状(扇型)である6mmシートを形成する.
(2) より高い雰囲気圧と燃料温度(b)では,スワール噴霧では,噴霧形状に大きな変化を引き 起こす状態においても,ファン噴霧の特性は,(a)の大気圧で非加熱燃料温度状態からほと んど変化しない.
(3) しかしながら,雰囲気圧が100kPa状態で燃料温度が高い場合(c)では,噴霧は,構造で
目立った変化を示し,崩壊が認められる.
図 4-13 に,雰囲気圧と燃料温度による平均粒径(SMD)と平均粒子速度の計測結果を示 す.この計測は,噴霧中央でインジェクタ先端部から53mmから下流の位置で行った.結 果は以下のとおりである.
(1) 予測されたとおり,SMD 値は,非加熱燃料では,雰囲気圧の増加に伴い増大し,最初
の1.5ms間は,増大分が大きくなっている.
(2) このSMD値の増大は,5μmと8μm間の範囲にある.後半の粒径は,同様な傾向を示
す.平均粒子速度は,255kPaの高い雰囲気圧では,初期では,低いことが観察される.
(3) 燃料を363Kへ加熱することによりは,特に雰囲気圧が100kPaでは,平均粒径が著し
く減少している.294Kと比較して,全体的に粒径約8μmの減少した.
(4) 粒子速度も,ほぼ同じである.目立った特徴としては,粒子速度が,一旦減少した後,
初期よりも約15m/s速い値に上昇するということである.
Spray pattern Corn angle 60 degree
Flow rate (cm3/min) 680
Fuel pressure (Mpa) 12
(a) Pamb=100kPa, Tfuel = 293K
(b) Pamb=255kPa, Tfuel = 363K
(C) Pamb=255kPa, Tfuel = 363K
MIE-scattering images 1.2 msec after SOI Figure 4-12 Fan injector details
0 5 10 15 20 25 30 35
0 1 2 3 4 5 6
SMD (microns)
Tf=20 P=1.01 bar Tf=90 P=1.01 bar
Time (ms) (a)
Tf=20 P=2.55 bar Tf=90 P=2.55 bar
(a)
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
0 1 2 3 4 5 6
Velocity (Mass-averaged) m/s
Time (ms) (b)
Tf=20 P=1.01 bar Tf=90 P=1.01 bar Tf=20 P=2.55 bar Tf=90 P=2.55 bar
(b)
Figure 4-13 PDA measurements of fan spray for different fuel temperatures and ambient pressures: (a) SMD, (b) drop velocities
Time ms
Tf=293K Pa=100kpa Tf=363K Pa=100kpa Tf=293K Pa=255kpa Tf=363K Pa=100kpa
Tf=293K Pa=100kpa Tf=363K Pa=100kpa Tf=293K Pa=255kpa Tf=363K Pa=100kpa
SMDμm Velocity Mass-averaged m/s
Time ms
4.6.3 マルチホール(MH)噴霧
MH噴霧の最適化形状を見つけ出し,MHインジェクタを実用化することが,直噴ガソ リンエンジンの性能向上に対し,極めて重要と考えられた.MH インジェクタは,ディー ゼルエンジン,PFI (Port-Fuel Injection)エンジンにも共通して使用され,最近では,直噴 ガソリンエンジンの開発(14,16)で見られ始めた.しかしながら,ガソリン直噴エンジンへ適 応する場合,微粒化,貫徹力,雰囲気の巻き込み,そして全体の構造/形が検討することが 重要である.
MHインジェクタにより直噴ガソリンエンジンに対して,最適な噴霧形状を作り出すと 考えられた理由の一つとして,leg(MH インジェクタの個々の噴霧)の個々のターゲッティ ングの方法により,形と全体噴霧の質量分布を自由に設計することができるからであった.
加えて,MHインジェクタの初期評価の際,MHインジェクタは,legの気化燃料の貫徹力 を同等若しくは増加させるにもかかわらず,液滴の長さを減らすことができることを示し た.これは,噴射タイミングや噴霧のターゲッティングの制約があっても,結果的に,ス モークの排出と強い関連がある燃料付着除去の可能性を提示している.また,さらに以下 の理由でMHインジェクタが有望なインジェクタでると考えた.
(1) legがそれぞれ分離されたによる効果的な混合と雰囲気の巻き込みの活用
(2) 良好な微粒化(噴霧孔の長さ/直径(L/D)が十分に小さい時と噴射圧が十分高い時)
(3) 燃料付着へ寄与する初期噴霧の除去
(4) より少ない噴霧崩壊.一般的にスワールインジェクタと異なり,雰囲気圧を上昇しても 噴霧形を維持する傾向
微粒化は,スモークの排出を低減させるためには,優れている必要があり,個々の leg の貫徹力も弱くし,燃料付着を低減する必要がある.個々のlegの貫徹力は,個々のlegm のノズルホールの長さ/直径(L/D)比の強い影響であると考えられる.より大きな L/D 比 は,ホール内へのフローの急速な回転により発生された乱気流を抑制することにより,さ らに強い流れを生成,そしてより幅の狭い噴霧流を引き起こす.
強い貫徹力を持つ噴霧は,低エンジン回転では,層状混合を作り出すことが困難となる.
この運転条件では,噴霧の持つ運動量は,筒内流動の運動量を上回るためである.貫徹力 を弱くするために,燃料噴射圧を下げる方法があるが,燃料噴射圧を下げると粒径が大き くなり,下げることはできない.
スワールやファン噴霧ではできなかった全体の形を設計する自由度も加わることによ
り,MH 噴霧で,適切な噴霧形状を選定することは,噴霧孔の数による全体噴霧への影響 や個々のlegのターゲッティングにより難しいことになる.加えて,各個々legの噴霧孔が,
設計したような粒径や貫徹力にする必要がある,燃料質量や燃料噴霧の運動量の不均衡な 配分もしくは,leg間の貫徹力の差異により,最適な噴射タイミングを選定できなくなる.
(1) MHインジェクタ噴霧孔形状
最も有望なMHインジェクタ噴霧孔形状のみを試作し,テストするために,インジェク タ噴霧孔形状の検討は,CFDで計算を行い,スクリーニングを実施した.スクリーニング を実施した形状は,図4-14 に示されるような,(a)円形,(b)オーバル形,(c)三日月形,(d) 半月形,(e)正方形という一般的な形状とし,各一般形状に対して,噴霧孔の数,インジェ クタの流量(cc/min)を変更して,スクリーニングを行った.(b)オーバル形と(d)半月形につ いては,中央の噴霧孔を,中央legと呼び,周辺の噴霧孔をサイドlegと呼ぶことにする.
スクリーニングを行った結果,図 4-15, 4-16 に示す MH1,MH2,MH3,MH4,MH5 及び MH6のインジェクタの6種類を選定した.なお,噴霧孔の数は,計算結果から全て5個と した.また,図4-17には,噴霧孔の直径に対する長さ(L/D)比を示す.
MH1 インジェクタは,噴霧孔の形状が,オーバル形状になっており,個々のノズルホ ールの長さ/直径(L/D)比は,2.39 と大きな値になっている.なお,3つの中央 leg の噴 霧が,強い貫徹力を示しているのが特徴である.
MH2インジェクタは,噴霧孔の形状が,MH1インジェクタと同様にオーバル形状にな っており,L/D比は2.11とした.また,MH1インジェクタ同様に,3つの中央legの噴霧 が,強い貫徹力を示している.
MH3インジェクタは,噴噴霧孔の形状は,半月状であり,L/D比は1.62とした.MH3 インジェクタは,1つの中央legの噴霧が,強い貫徹力を示していることが特徴である.
MH4インジェクタは,噴噴霧孔の形状は,円形状であり,L/D比は1.43とした.MH4 インジェクタの噴霧の貫徹力は,全てのlegにおいてほぼ同等である.
MH5インジェクタは,噴噴霧孔の形状は,円形状であり,L/D比はMH4と同様に1.43 とした.MH5インジェクタの噴霧の貫徹力は,MH4インジェクタと同様に全ての leg に おいてほぼ同等である.
MH6は,噴噴霧孔の形状は,円形状であり,L/D比は1.0とした.L/D比が小さいため,
噴霧の貫徹力は,最小のものとなっている.なお,MH6のL/Dを1.0に設定ができた理由 としては,図4-17に示すように,噴霧孔のノズル形状は,MH1,MH2,MH3,MH4及びMH5
は,サック型のノズル形状となっているが,MH6は,プレート型のノズル形状となってい るためである.サック型は,燃料の圧力に耐えうる強度を持たせるためには,Lの長さ小さ く,つまり肉厚部を薄くできなかたが,プレート型が,構造上強度的に有利なため,Lの長 さを小さくして,L/D比を小さくすることができる.
ここでは,三日月形状の噴霧は選定しなかったが,三日月形状の噴霧は,オーバル形状 の噴霧と類似した混合気分布形状を生成したため,選定しなかった.
(a)Circular (b) Oval (c) Crescent (d) Half-moon (e) Square Figure 4-14. MH injector design screening
サイドleg 中央leg サイドleg
MH-1 MH-2 MH-3
Spray Pattern
Oval Oval Half-Moon
Flow Rate cc/min 560 690 560
Hole L/D 2.39 2.11 1.62
No. of holes 5 5 5
Fuel Pressure MPa 12 12 12
Stroboscopic volume illumination
Figure 4-15 Selected multi-hole injector details(1)
MH-4 MH-5 MH-6
Spray Pattern
Circle Half-Moon Half-Moon
Flow Rate cc/min 690 690 690
Hole L/D 1.43 1.43 1.0
No. of holes 5 5 5
Fuel Pressure MPa 12 12 12
Stroboscopic volume illumination
Figure 4-16 Selected multi-hole injector details(2)
L D L
Figure 4-17 Length and Diameter of injector hole
MH-1, MH2, MH-3, MH-4, MH-5 MH-6
Nozzle Structure
Sac Type Plate Type Figure 4-18 Nozzle structure of Multi-hole injector
4.7 スモーク排出計測結果
各噴霧タイプでの噴霧観察と考察を行ったので,噴霧特性がスモークの排出にどのよう に影響を確認するために,スモークの排出計測を行った.以下に,それぞれの噴霧につい ての結果を示す.スモークの排出量に単位としては,FSN(Filter Smoke Number)を用いた.
4.7.1 スワール噴霧
スワール噴霧によるスモーク排出結果は,図 4-19 に示す.スワール噴霧では,高いス モークの排出が計測された.スワール噴霧でのスモークの排出が高い要因としては,以下 が考えられる.
(1) 初期噴霧として,噴霧孔先端部に設けられているサック部と呼ばれる燃料溜まりの部 分の溜まった燃料が噴射される.この噴射された噴霧は,旋回成分を持たない粒径の大き な噴霧があり,霧化することなくピストン表面に衝突し,液膜を形成する.
(2) 高い背圧下では,噴霧の幅が狭くなり雰囲気の巻き込みが悪くなる.
(3) 燃料が高温の条件では,貫徹力が強くなり,壁面付着しやすい.
以上の現象は,筒内の空間が十分でない小排気量エンジンでは特に問題となる.従って,
小排気量直噴エンジンには,スワールインジェクタは適さないと考えられる.
0.000 0.200 0.400 0.600 0.800 1.000 1.200
650 rpm Idle
1500 rpm 189 kPa
2000 rpm 200 kPa
2000 rpm 284 kPa
2500 rpm 331 kPa
2500 rpm 450 kPa Operation condition
Smoke FSN
- Swirl Injector -
Figure 4-19 Smoke emission test result
4.7.2 ファン噴霧
ファン噴霧のスモークの計測結果を,図4-20に示す.ファン噴霧のスモークの排出は,
噴霧の観察結果から,運転条件が変わっても,噴霧の貫徹力に変化は少なく,微粒化性能 についても優れていることから,良好な結果となった.
ファン噴霧の欠点である,噴霧形状がファン形状(扇型)にしかできないという自由度が ないことが,スモークの排出以外への影響を与えるかの検証を行うこととした.検証方法 としては,インジェクタ噴霧角(図4-21)によるスモークの排出と燃費への影響を調べた.
結果は,図4-22に示す
図4-22での,EINOx g/kg fuelは,EIはEmission Indexを表し,燃料を1kg燃焼さ せた場合のNOxの発生量を示す.EIHCは同様に,燃料を1kg燃焼させた場合のNOxの 発生量を示す.図から,噴射角55度では45度に対し,燃費が2%,HCが70%,スモー クについては約3倍程度(1500rpm,BMEP189kPa)増加する.これらから,噴射角55度で は,付着燃料が増大していると推定される.図 4-23 に熱発生の比較を示すが,噴射角 55 度では45度に比べ後燃えが多い.ピストン表面の壁面付着量が増大していることがここで も予想される.図4-24にCFDによる壁面付着量の比較を示すが,噴射角55度の場合,壁 面付着が増大していることがわかる.図4-25に噴射タイミングに対するIMEPの変動率を 示す.噴射タイミングに対しての余裕度は噴射角55度の方が高く,タイミングに対する失 火限界が10度程度広いため,制御性は高い.これは,噴射角45度場合,噴霧がピストン キャビティからこぼれているためと考えられる.
以上より,ファン噴霧に関しては,ファン形状(扇型)にしかできないという自由度がな いことから,スモークの排出も少なく,燃費が良好で,排出ガスが少ない最適な噴霧を作 り出すことは困難と考えられる.
0.000 0.200 0.400 0.600 0.800 1.000 1.200
650 rpm Idle
1500 rpm 189 kPa
2000 rpm 200 kPa
2000 rpm 284 kPa
2500 rpm 331 kPa
2500 rpm 450 kPa Operation condition
Smoke FSN
- Fan spray -
Figure 4-20 Smoke emission test result
Injection angle
Figure 4-21 Injection angle
300 320 340 360 380 400 420 440
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
BSFC g/kWh
1500rpm BMEP= 189kPa
2%
Injection Angle 45deg.
Injection Angle 55deg.
EINOx g/kg fuel
0 20 40 60 80 100
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
Injection Angle 45deg.
Injection Angle 55deg.
EIHC g/kg fuel
EINOx g/kg fuel
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 10
()
Injection Angle 45deg.
Injection Angle 55deg.
Smoke FSN
0
Figure 4-22 Effect of Injection angle EINOx g/kg fuel
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60
Injection Angle 45deg.
Injection Angle 55deg
Spark Timing
End of Injection 66 BTDC
Long Tail Combution
Heat Release %
Crank Angle °ATDC
Figure 4-23 Comparison of heat release
0 2 4 6 8 10 12 14 16
-80 -70 -60 -50 -40 -30 -20
Injection Angle 55deg./EOI75 Injection Angle 45deg./EOI65 Injection Angle 45deg./EOI75
Wallfilm Liquid Mass %
Crank Angle °ATDC
Figure 4-24 Comparison of wall-film liquid mass
0 2 4 6 8 10 12 14 16
50 55 60 65 70 75 80 85 90
Injection Angle 45 deg. (EGR37%) Injection Angle 55 deg.(EGR44%)
Misfire
COV of IMEP %
End of Injection CA °BTDC
Figure 4-25 Comparison of COV of IMEP
4.7.3 マルチホール(MH)噴霧 (1)スモーク排出の解析
MH1インジェクタとMH2インジェクタは,噴霧形状がオーバル形状であるが,図4-26 に示すとおり,MH1インジェクタとMH2インジェクタともに,非常に高いスモークの排 出量が発生した.これは,3つの中央のleg(MHインジェクタの個々の噴霧)からの噴霧が,
より大きな粒径であることと粒子速度が速いことにより,多くの燃料付着が発生したもの と考えられる.MH1とMH2のL/D比が大きいことにより,それぞれのlegの噴霧角は小 さくなり,雰囲気の巻き込みが弱くなり,結果として,噴霧の貫徹力が強くなり,また,
微粒化や蒸発が促進されない.図4-27では,MH1インジェクタとMH2インジェクタの中 央legに対する粒径がMH3インジェクタもしくはMH4インジェクタよりも常時大きいこ とを示している.なお,図4-27中の凡例に示す”MH4 circular (avg)”は,MH4インジェク タの全legの平均値を示している.しかしながら,MH1インジェクタとMH2インジェク タは,CFDでの計算では,理想的なインジェクタであったが,逆の結果となった.この違 いは,実際のインジェクタでは,中央legの噴霧粒径が大きく,また,速度が速かったこと によると考えられる.オーバル形状の噴霧は,3つの中央legとサイドleg間の異なる貫徹 力と粒径特性を改善する必要があるため,さらなる検討は行わなかった.また,オーバル 形噴霧は,ファン噴霧と同様に,他の噴霧よりも弱いスワールが最適値となった.これは,
オーバル形状の噴霧もファン噴霧も,噴霧の形状が似ており,噴霧自体の力で混合され,
点火プラグ付近へ運ばれることから,大きなスワールは必要とされなかった.従って,オ ーバル形状の噴霧は,ファン噴霧と傾向が似ていることも,さらなる検討を行なわなかっ た理由である.
MH3インジェクタは,半月形の噴霧であるが,この噴霧は,CFDによる計算では,よ り少ない燃料付着とアイドル運転時には点火プラグ近傍の混合気が安定していることが示 された.これは,優れた着火性と燃焼安定性を向上させることになる.しかしながら,MH3 インジェクタのスモークの排出レベルは,全ての運転条件でファンインジェクタのレベル より高い結果となった.特に,エンジン回転数と負荷が増加するとより顕著である.MH3 インジェクタのスモークの排出が高い理由は,図4-28(b)に示されるとおり,他のlegより もかなり速い速度を持つ中央 leg によるものである.なお,図 4-28 中の凡例に 示 す”side-leg(avg)”は,サイドlegの平均値を示している.従って,この強い貫徹力のため,
燃料付着量の大幅な増加をもたらしている.中央legの粒径は,MH3インジェクタのサイ
ドlegよりも同等,もしくはかなり小さく,中央legの粒径は,原因となっていない.しか しながら,粒径が同等であっても,legの貫徹力が非常に違っている場合,噴射タイミング では,十分に最適化できない.これは,ピストンへの衝突が中央とサイドlegでは,違った タイミングで生じるからである.加えて,燃料質量配分は,強い貫徹力legの方へ多く分配 される傾向にある.従って,MH3インジェクタは,中央legの噴霧の貫徹力が強いことと 燃料重量配分が多いことにより,スモークの排出が増大したと考えられる.
MH4インジェクタでは,それぞれのlegが同等な貫徹力の仕様の噴霧を評価するためと,
噴霧形状が円形の形状が点火性を向上させているという CFD の結果を確認するために,
MH4インジェクタの形状は,円形の形状とした.その噴霧角は,ピストンボールから噴霧 が溢れ出ないように選定された.MH4インジェクタは,高エンジン回転数/高負荷でファン インジェクタと比較して低い値を示すが,低エンジン回転数/負荷で僅かな増加を示す.
MH5 インジェクタは,MH インジェクタと同様に,噴霧形状は,半月形状とした.中 央legの貫徹力を弱めて,他のlegと同等とするために,噴霧孔の内部通路を変更し,中央 leg への燃料流に乱流が生じるようにし,貫徹力の不均衡をなくすようにした.MH5 イン ジェクタの噴霧の粒径と速度は,図4-28に示され,図4-28(a)では噴霧速度と図4-29に示 される噴霧写真での示す.ここで,MH5 インジェクタの噴霧速度は,MH4 インジェクタ やMH3インジェクタのサイドlegより速い.しかしながら,それぞれのleg の貫徹力は,
ほぼ等しい結果となっている.従って,MH5インジェクタでは,内部通路変更を行うこと により,MH3に示される中央legの強く貫徹力の問題を解決したことになる.
MH6インジェクタは,L/Dが1.0となるプレート形ノズルを持つ.MH6インジェクタ は,貫徹力が弱く,燃料付着量が少ない結果であった.燃料付着量の減少により,スモー クの排出が減少した.但し,エンジン回転数が2500rpmで,BMEPが331kPaでは非常に 高いスモークの排出を示した.原因は,不明であるが,エンジンから取り外したMH6イン ジェクタを観察すると,スモークがインジェクタ先端部に大量に付着しており,ある運転 条件では,噴霧が先端部に巻き込まれ,先端部にスモークが大量に付着したのではないか と推定している.
図4-30 は,噴霧孔L/Dとスモークの排出との関係を示す.スモークの排出は,噴霧孔 L/Dにより大きく影響され,噴霧孔L/Dは,スモークの排出を減らすため,1.4以下が要求 される.先にも述べたが,大きな L/D 比は,ホール内へのフローの急速な回転により発生 された乱気流を抑制することにより,さらに強い流れを生成し,より幅の狭いlegを引き起
こす.結果として,噴霧により強い貫徹力が生じ,また,微粒化や蒸発が促進されないた め,燃料付着が増大し,高いスモークを発生する.
(2)MH噴霧の選定
スモークの計測とともに,燃費の計測も行った.結果は図 4-31 に示す.燃費テストの 結果では,MH5が各運転領域で,最も良好な結果を示している.スモークテストでは良好 な結果を示した MH6 は,燃費テストでは,最悪の結果となった.これは,L/D(=1.0)が小 さく,混合気の分散を招いているためと考えられる.本結果とスモークテストの結果から,
噴霧は,MH5を選定することとした.
0.000 0.200 0.400 0.600 0.800 1.000 1.200
650 rpm Idle
1500 rpm 189 kPa
2000 rpm 200 kPa
2000 rpm 284 kPa
2500 rpm 331 kPa
2500 rpm 450 kPa
MH-1 MH-2 MH-3 MH-4 MH-5 MH-6
- Multi-hole spray -
Figure 4-26 Smoke emission test result
Figure 4-27 PDA drop-size measurements for the center plumes of MH1-3 and a plume of MH4.
0 5 10 15 20 25 30
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4
Pamb=2.6bar Tamb=20C Tfuel=90C Time offsets varied for equal arrival time Comparison of MH center legs MH1 ctr-leg
MH2 ctr-leg MH3 ctr-leg MH4 circular(avg)
0 5 10 15 20 25 30
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4
Pamb=2.6bar Tamb=20C Tfuel=90C Time offsets varied for equal arrival time Comparison of MH center legs MH1 ctr-leg
MH2 ctr-leg MH3 ctr-leg MH4 circular(avg)
SMD μm
Time sec
(a)
(b)
Figure 4-28 PDA drop-size (a) and velocity measurements (b) of MH3, MH4 and MH5 injectors at Pamb=2.6bar, Tamb=293K, Tfuel=363K (opening delay of 0.38ms has been subtracted).
5 10 15 20 25
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4
Pamb=2.6bar Tamb=20C Tfuel=90C
MH3 ctr-leg MH3 side-leg (avg) MH4 side-leg (avg) MH5 ctr-leg (avg) MH5 side-leg (avg)
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4
Pamb=2.6bar Tamb=20C Tfuel=90C MH3 ctr-leg MH3 side-leg(avg) MH4 side-leg(avg) MH5 ctr-leg MH5 side-leg(avg)
SMD μm
Time sec
Time sec
Velocity m/s
MH-3 MH-5 Pamb=1.01bar, Tamb=20C, Tfuel=20C
MH-3 MH-5 Pamb=2.55bar, Tamb=20C, Tfuel=90C
Figure 4-29 Volume-illumination pictures of MH3 and MH5 at 1ms ASOI (logic pulse) at ambient conditions and elevated backpressure and fuel temperature.
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
1.2 1.4 1.6 1.8 2 2.2 2.4 2.6
L/D of Injector Hole
Smoke FSN
1500rpm,BMEP189kPa 5Holes Injector TP24Piston
EINOx<10g/kg Fuel Points
L D
Figure 4-30 Hole L/D effect of MH injector
200 220 240 260 280 300 320 340 360 380 400
1500/189 2000/200 2000/284 2500/331 2500/450H
BSFC g/kWh
MH3 MH4 MH5 MH6
Figure 4-31 Fuel economy test results
4.8 まとめ
本章での主な成果は,以下に示すとおりである
(1) 一般的にインジェクタの噴霧特性は,直噴ガソリンエンジンの性能を向上させるために,
極めて重要である.特に,噴霧の噴射後の衝突による結合,貫徹力,雰囲気の巻き込み,
そして噴霧の運動量分布は,インジェクタ選別をする際,注意深く考慮されるべきである.
(2) 小排気量直噴ガソリンエンジンにおいては,スモークの排出は,インジェクタの噴霧特 性に対し敏感である.これは,小排気量エンジンのインジェクタとピストン表面間の距離 が短いことに直接関連する.
(3) 燃料付着量を最低限にするために,MH インジェクタの各噴霧孔(leg)からの貫徹力は,
ほぼ等しい必要がある.さらに,ピストン表面をターゲットとして噴射された噴霧の中で,
最も短い噴霧軌道となる噴霧は,他の噴霧よりも同等もしくは少ない貫徹力を持つ必要が ある.
(4) 最も短い噴霧軌道となる噴霧を,他の噴霧よりも弱い貫徹力とするには,インジェクタ 内部の構造を変更することにより可能となる.
(5) 強い貫徹力噴霧は,必ずしも多くの燃料付着量を生成する訳ではない.微粒化に対して 重要な要素は,雰囲気の巻き込み量であり,これは,直接燃料の気化に影響する.ここで のMH インジェクタは,ファンインジェクタと比較して,少し強い貫徹力であったが,ほ ぼ同等のスモークの排出レベルと結果となった.
(6) スモークの排出は,噴霧孔L/Dにより大きく影響される.噴霧孔L/Dは,スモークの排
出を減らすため,1.4以下が要求される.大きなL/D比では,噴霧孔内への流れが急速な転 回を受けることが少ないため,乱流の発生が抑えられることにより,さらに強い流れを生 成し,そしてより幅の狭い貫徹力の強い噴霧をとなる.強い貫徹力と幅の狭い噴霧となる ことで,雰囲気の巻き込みも少なく,微粒化や蒸発が促進されないため,燃料付着が増大 し,高いスモークの排出を発生させている.
以上をまとめると,MHインジェクタにおいて,ピストン表面をターゲットして噴射さ れた噴霧の中で,最も短い噴霧軌道となる噴霧は,他の噴霧よりも同等もしくは少ない貫 徹力を持つ必要がある.また,噴霧粒径は,できるだけ微粒化されていることが必要であ る.それらを達成するためには,最も短い噴霧軌道となる噴霧孔の内部通路は,他に噴霧 孔よりも乱流を発生させる構造とすることで,貫徹力を他の噴霧と合わせることが重要で
ある.また,微粒化を図るには,噴霧孔の直径に対する長さ(L/D)比が 1.4以下である必要 がある.さらに,CFDによる計算結果から,噴霧孔の数は,5個以上となる.
第4章 参考文献
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