第 6 回複合構造の活用に関するシンポジウム
(42)超軽量コンクリートを用いた鋼・コンクリート 合成構造浮体の研究
清宮 理
1・木原 一禎
2・前川 勉
3・田村 一美
41正会員 早稲田大学教授 理工学部社会環境工学科(〒169-8555 東京都新宿区大久保3-4-1) E-mail:[email protected]
2正会員 三菱重工業株式会社 鉄構建設事業本部(〒108-8215 東京都港区港南2-16-5)
E-mail:[email protected]
3三菱重工業株式会社 広島製作所(〒730-8642 広島市中区江波沖町5-1)
E-mail:[email protected]
4正会員 三菱重工業株式会社 広島研究所(〒730-8642 広島市中区江波沖町5-1)
E-mail:[email protected]
浮体構造物は,海水交換性により環境への影響が小さく地震に強いことから,浮桟橋等に広く利用されている.近 年,公共投資の効率的運用が求められている中,海洋環境下で耐食性に優れて管理の容易な,かつ,経済的に優れた 構造物の開発が重要な課題となっている.本文では,浮体の軽量化による経済性改善を目的とした比重約 1.5 の超軽 量コンクリートと鋼との合成構造による浮体構造物を対象とし、超軽量コンクリートの耐久性試験結果,超軽量コンク リートを使用した合成梁の力学特性に関する載荷実験について述べ,最後に,浮桟橋への適用例を紹介する.
Key Words : super light-weight concrete, floating structure,steel-concrete hybrid structures
1. はじめに
合成式浮体構造物は,鋼・コンクリート合成部材 により浮体を製作し杭、チェーンなどで海上に係留 する構造形式で桟橋や防波堤などの海洋構造物に使 用される。海水交換性により環境への影響が小さく,
地震に強い利点がある.近年,公共投資の効率的運 用が求められている中,海洋環境下で耐食性に優れ て管理の容易な,かつ,経済的に優れた構造物の開 発が重要な課題となっている.
このような背景のもと,浮体構造物の軽量化によ る全体物量の低減,吃水が小さくなることによる係 留外力低減(係留装置の簡素化)等を目的として,超 軽量コンクリート(密度約 1.5kg/l)を用いたオープ ンサンドイッチ構造の浮体構造物の研究開発を行っ た.本論文では,その成果として,超軽量コンクリ ートの耐久性と耐荷力に関する試験結果と,浮桟橋 への適用例について報告する.
2. 超軽量コンクリートの性状
2.1 超軽量コンクリートの目標仕様
超軽量コンクリートの目標仕様を以下のように設 定した.
密度:1.5g/l±0.1 設計基準強度:30N/mm2 スランプ:18cm
2.2 使用材料
超軽量コンクリートに使用した材料を,表-1 に, 比較のための普通コンクリートに使用した材料を, 表-2 に示す。
表-1 超軽量コンクリートの使用材料
材 料 絶乾密度
(kg/l) セメント 高炉セメントB種 3.04 粗骨材 軽量粗骨材 1.29 軽量細骨材 1.7 細骨材 硬質パーライト 1.26 混和剤 高性能 AE 減水剤 −
表-2 普通コンクリートの使用材料
材 料 表乾密度
(kg/l) セメント 高炉セメントB種 3.04 粗骨材 石灰岩砕石 2.72 細骨材 石灰岩砕砂 2.65 混和剤 高性能 AE 減水剤 −
2.3 配合
試験練りを行い,上記の仕様を満足する超軽量コ ンクリート(AP)の配合を決定した(表-3).なお,
比較のための普通コンクリ−ト(N)(後述する載荷試
42−1
42−2 験に使用)の配合も合わせて示す.
超軽量コンクリートの粗骨材,細骨材は全て絶乾 状態にして練り混ぜたものである.従って,粗骨材,
細骨材が練り混ぜ時に吸水することを考慮すると, 実質的な水セメント比はおよそ 35%となる.なお, 粗骨材,細骨材の練り混ぜ時の吸水率は,骨材のメー カ推奨値(粗骨材,細骨材とも 5%)としたが,コンク リート密度の実測値と配合設計上の密度はほぼ一致 した.
文献 1
比重 W/C
55%
56.5%
40%
40%
37.5%
約 35%
:N
:AP 本試験
表-3 超軽量コンクリートの配合 単位量(kg/m3)
ケー ス
W/C (%)
Air
(%) W C S1 S2 G Ad AP 45.0 5.0 190 422 266 131 465 4.2 N 56.5 4.5 175 310 831 - 965 3.2 注)G :粗骨材 S1:細骨材 Ad:高性能AE減水剤(AP)
S2 :細骨材(パーライト) Ad:AE減水剤(N)
2.4 コンクリートの性状
フレッシュコンクリートの性状を表-4 に,硬化 コンクリ−トの性状を表-5 に示す.表-5 より圧縮 強度はいずれも目標値(設計基準強度 30N/mm2)を満 足している.また,超軽量コンクリートは普通コン クリートに比べ引張,曲げ引張,せん断強度及びヤ ング率は小さく,一般の軽量コンクリートと同様な 結果となった.
表-4 フレッシュコンクリートの性状 ケース スランプ
(cm)
空気量 (%)
密度 (kg/m3)
気乾密度注)
(kg/m3) 備考 AP 19.0 4.6 1530 1490 超軽量 コンクリート N 16.5 4.3 2320 2240 普通 コンクリート 注)28 日間水中養生後に取出し,2 週間室内に静置後計測.
表-5 硬化コンクリ−トの性状 圧縮強度
(N/mm2)
ヤング率 (104N/mm2)
引張強度 (N/mm2)
曲げ引 張強度 (N/mm2)
せん断 強度 (N/mm2)
ケース
7 日 28 日 28 日 28 日 28 日 28 日 AP 27 36 1.51 2.8
(1/12.9) 4.4 (1/8.2)
4.7 (1/7.7) N 24 34 2.62 3.4
(1/10.0) 7.2 (1/4.7)
6.9 (1/4.9) 注)括弧内は,圧縮強度(材令 28 日)に対する比率を示す.
2.5 超軽量コンクリートの耐久性試験結果 (1)促進中性化試験結果
促進中性化試験を行った.試験は促進試験槽(温 度 20℃,炭酸ガス濃度 5%)内に試験体(10cmφ×
20cm)を保存し,3カ月経過後,試験体を半割れにし て直ちに中性化深さを計測した.結果を表-6 に示す.
普通コンクリートに比較して,超軽量コンクリートの 中性化深さは非常に小さい.これは, 普通コンクリー トの水セメント比(56.5%)に比較して,超軽量コンクリ ートの水セメント比(実質水セメント比約 35%)が小さ く,セメントマトリクスが非常に緻密なためと考えら
れる.
表-6 促進中性化試験結果 ケース 中性化深さ(mm) AP(超軽量コンクリート) 1 以下
N(普通コンクリート) 14.2
(2)塩化物イオン浸透試験
電気泳動法による促進透過性試験を行った.試験 は,拡散セル(容量 1 リットル,正極側 0.3N の NaOH 溶 液,負極側 3%の NaCl 溶液)の中央に配置した試験 体(10cmφ×3cm 厚のコンクリート)に直流電圧を負 荷し,負極側から正極側へ移動した塩化物イオン濃 度を,原則として1日おきに2週間程度計測した.
試験結果を図-1 に示す.超軽量コンクリート (AP)の方が普通コンクリ−ト(N)と比較して,塩化 物イオン濃度が非常に小さくなった.これは前述の とおり水セメント比の違いによるものと考えられ,
文献 1)に示された結果からも,このことが裏付け られるものと考えられる.
水セメント比が異なるため単純な比較はできない が,強度を同程度に確保すれば超軽量コンクリート も普通コンクリ−トと同等以上の耐久性の性能を確 保できるものと考えられる。
図-1 塩化物イオン濃度計測結果
(3)透水試験
窒素ガスを用いた加圧透水試験機を用いて促進試 験を行った.試験体は 15cmφ×30cm とし,圧力容 器内に設置して加圧水を作用させた.加圧水の圧力 は 1.5MPa として 48 時間作用させた後,試験体を取 り出し,直ちに半割にして水の浸透深さから透水係 数を算出した.
試験結果を表-7 に示す.透水係数も他の試験結 果と同様に,水セメント比の小さい超軽量コンクリ ート(AP)が普通コンクリート(N)に比較して非常に 小さくなった.
表-7 透水試験結果 ケース 平均浸透
深さ(cm)
透水係数
(x10-4cm2/s) 備考 AP 1.2 9.6 W/C=約 35%
N 3.6 46.3 W/C=56.5%
42−3
3. 鋼・コンクリートハイブリッド梁の載荷 試験
3.1 試験概要
超軽量コンクリートを使用した鋼・コンクリ−ト ハイブリッド(RCH)梁の載荷試験を行い,耐力の確 認を行った.模型は浮桟橋の側壁及び底版を想定し,
部分的に取り出した実物大梁模型とした.模型の概 要を図-2 に示す.模型 1 と2の違いは,軸方向の鉄 筋量である.
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 5 10 15 20 25
変位 (mm)
荷重 (KN)
AP-T1
N-T1
0 5 10 15 20 25 30 35 40
0 10 20 30 40 50 60 70
変位 (mm)
荷重 (KN)
AP-C2 AP-C1
N-C1
模型 1:鉄筋 a=D16(SD295A),鉄筋 b=D16(SD295A) 模型 2:鉄筋 a=D10(SD295A),鉄筋 b=D16(SD295A)
図-2 試験模型(単位:mm)
(2)試験ケース
試験ケースは模型の種類(模型 1,2),載荷方向の 組み合わせにより表-8 の 5 ケースとした.なお,
載荷方向は浮体側壁の一般部(内部補剛材間の正曲 げを受ける部分)及び内部補剛材部(内部補剛材で支 持され,負曲げを受ける部分)をそれぞれ想定したも のである.
一般部 :正曲げ載荷(鋼板引張,図-3(a) 補剛材部:負曲げ載荷(鋼板圧縮,図-3(b)
各模型とも両端単純支持の 2 点載荷(4 点曲げ)と し,載荷は漸増載荷とした.
図-3 試験模型 表-8 試験ケース
ケース 模型
の種類
圧縮強度 (N/mm2)
ヤング率 (104N/mm2)
材令
(日) AP-T1 模型1 36.6 1.51 42 正曲げ
シリーズ N-T1 模型1 35.2 2.63 45 AP-C1 模型 1 36.6 1.51 42 N-C1 模型 1 35.2 2.63 45 負曲げ
シリーズ
AP-C2 模型2 36.6 1.51 42
(3)載荷試験結果概要
表-9 に最大荷重,破壊形態を図-4,図-5 に各シリ ーズの荷重と変位の関係を示す.ひび割れの発生経過 は,正曲げシリーズ,負曲げシリーズともほぼ同様で,
まず,スパン中央付近に曲げひび割れが生じ,荷重 を増大していくにつれ,ひび割れが進展あるいはほ ぼスタッド位置に新たなひび割れを生じ,最終的に はせん断破壊を生じた.超軽量コンクリートを使用 したケースと普通コンクリートを使用したケースの 違いはほとんど無く,鋼板が引張となる正曲げのケ ースでは,普通コンクリートを使用したものより,耐 荷力,変形性能とも優れていると言える.
コンクリート スタッドφ16x50L 鉄筋 a 鉄筋b
図-4 荷重と変位の関係(正曲げシリーズ)
図-5 荷重と変位の関係(負曲げシリーズ)
表-9 各ケースの最大荷重,破壊の状況 ケース 載荷
方向
ひび割れ 荷重(kN)
最大荷重
(kN) 破壊形態 AP-T1 正曲
げ 42 86.5 引張鉄筋降伏前に せん断破壊 N-T1 正曲
げ 35 77.2 せん断破壊 AP-C1 負曲
げ 3 29.8 引張鉄筋降伏後,せ ん断破壊
N-C1 負曲
げ 11 29.0 引張鉄筋降伏後,せ ん断破壊
AP-C2 負曲
げ 16 30.7 引張鉄筋降伏後,せ ん断破壊
4. 超軽量コンクリートを使用した RCH 浮桟橋 の実施例
(a)正曲げ載荷(鋼板引張)
300
(b)負曲げ載荷(鋼板圧縮)
300
2000 100
100
100 50 50
250 150
80 150
10@200=2000 100 6
鋼板 6t
2200
42−4
4.1 浮桟橋概要
超軽量コンクリートを使用した RCH 浮桟橋を紹介 する.本浮桟橋は,平成 15 年度工事で竣工し,写真-1 に示すように熊本港に設置されている。浮桟橋諸元 を表-10 に示す。
表-10 RCH 浮桟橋諸元
長さ 30m
幅 5m
高さ 2.7m 乾舷 1.6m
4.2 超軽量コンクリート使用の利点
超軽量コンクリートを浮桟橋に使用することで, 次のような利点がある.
(1)経済性向上
軽量化により,浮体の喫水の低減がはかれる(図- 6).
(a)普通コンクリート使用 (b) 超軽量コンクリート使用 図-6 浮桟橋断面の比較
(2)ライフサイクルコストの低減
軽量化により海水面下の浮桟橋の高さ(吃水)が小さ くなり,係留外力が減少し係留系の維持管理費が低減 する.また今回の配合のコンクリート材料の耐久性に も優れており補修期間の長期間化が図れる。
(3)バリアフリーへの貢献
乾舷(海水面から浮体天端までの高さ)を大きくでき (排水量を一定とした場合),浮桟橋と陸地をつなぐ連絡 橋(渡り橋)の勾配を緩やかにすることができる.このた め連絡橋での走行、歩行が容易となる。
4.3 超軽量コンクリートの施工
本超軽量コンクリートは,骨材を絶乾状態で使用して おり,ポンプ圧送ができない。このため,施工にあたっ ては,バケットを使用して打設を行った.今後大量にコ ンクリートを打設する場合などでは配合などの見直し が必要である。
5.まとめ
(1)比重 1.5 程度,圧縮強度 35N/mm2程度の超軽量コンク リートの中性化,透水性及び塩化物浸透性の特性は,ほ
写真-1 供用中の RCH 浮桟橋
ぼ同程度の強度を有する普通コンクリ−トに比較し て,非常に優れた性状を示した.超軽量コンクリー トでは,骨材の脆弱さをカバーするために水セメン ト比を小さくしてセメントマトリクスの強度を上げ ており,組織が緻密になったためと考えられる.
(2)超軽量コンクリートを使用した RCH 梁は,同等の 強度を有する普通コンクリ−トを使用した同構造の 梁と比較して,同等以上の変形性能,耐荷力を示した.
謝辞:本研究は日本財団の助成を受け,(財)沿岸開発
技術研究センター内に設置された「超軽量コンクリ ート等による浮体構造物の研究委員会(委員長:早 稲田大学清宮教授)」のもと実施した研究成果を一 部とりまとめたものである.研究に際しては委員会 によるご指導・ご助言を頂いた.関係各位に厚く御 礼申し上げます.参考文献
1)沿岸開発技術研究センター:浮体構造物技術マニ ュアル、平成 3 年 3 月
2) 沿岸開発技術研究センター:超軽量コンクリー トを使用した RC ハイブリッド浮体構造物の設計・
施工マニュアル,平成 14 年 3 月
3) 沿岸開発技術研究センター:平成12年度超軽 量コンクリート等による浮体構造物の研究、平成1 3年度3月
4)横田弘 他:高性能軽量コンクリ−トによる港湾 構造物建造に関する考察,軽量コンクリ−トの性能 の多様化と利用の拡大に関するシンポジウム論文集,
日本コンクリ−ト工学協会,2000.8.
Study on the Floating Structure with Super Light-weight Concrete
Osamu KIYOMIYA,Kazuyoshi KIHARA,Tsutomu MAEKAWA and Kazumi TAMURA
For the development of a steel/concrete hybrid floating structure using super light-weight concrete, durability tests and loading tests were carried out. This paper presents the high durability of super-light- weight concrete and high load resistance of the steel/super light-weight concrete hybrid beams by static loading test . Finally an example of the floating structure using super light-weight concrete is presented.